長崎大学教育学部紀要一教育科学一 第71号 23‑38(2007年3月)
父親 の子育 て態度 と家族 システムに関す る研究
‑FACESⅢ でみ る現代家族 の特徴 一 宮 崎 正 明
*1富 永 ちはる
*2Re s e ar c honaf at he r ' sc hi l d‑ r e ar i ngat t i t udeandf ami l ys ys t e m
‑Thef e at ur eoft hepr e s e ntagef ami l ywhos e e sbyFACESⅢ‑
Mas aakiMI YAZAKI Chi har uTOMI NAGA
問題 と目的
近年,子 ど もに関わ る事件 ・事故 が相次 ぎ,子 ど もの様 々な心理 的問題へ の取 り組 みが 検討 されて い る。 核家族化 が進 む中,子育 てを家庭 だ けでな く地域 で担 お うとい う動 きが あ り,父親 の子育 て参加 を促す取 り組 みを行政 が推進 して いる。
これ まで,家族 システムに関 して は,様 々な視点 か ら研究がな されて きて いる。 西 出 ・ 夏野 (1997)は, 自殺 や不登校 な ど子 ど もの様 々な心理 的問題 と思春期以前 の子 ど もの抑 密状態 との関連 を問題視 し, 馨症 状 を抑密等価症 (depressiveequivalents)と して, 罪 行 や学習困難 な ど他 の行動上 の問題 を示 す (Cytryn&McKnew,1972),不登校 や攻撃 的 行動 と結 びっ いて い る (Brumback&Weinberg,1977)とす るな ど, 成人期 の抑密 に比 べて多彩 な問題 を呈す る ことが多 い と述 べ,子 ど もの抑密 には母親 によ る家族 システムの 機能状態の認知が子 どもの抑密感 に影響を及ぼ していると報告 している。また,Ohannessian, Lerner,Lerner& Alexader(1994)は家族適応 と情緒適応 との関連 につ いて,家族 に不 満 を持っ者 は抑馨感 や不安 が高 くな ると報告 して いる。
父親 の育児参加 に関す る研究 で は,福丸 ・無藤 ・飯島 (1999)は,乳幼児期 の子 ど もを 持っ父親 と母親 を対象 に仕事観 や子 ど も観 と父親 の育児参加 との関連 を研究 し,仕事観 で は父親 の方 が 自分 の中で何 よ り大切 な もの と捉 えてお り, さ らに制約感 ・負担感 が伴 うも の,家族 を養 う手段であ り働 くことは義務 であ ると多面 的に捉 え る傾 向 も強 い と して いる。
子 ど も観 につ いて は,母親 の方 が,子 ど もを育 て るの は大変 だが一方で充実感 を感 じると い う両面 的 な感情 を持 っ ことが明 らか とな っ‑た。 また,父親 の方 が,子 ど もを 「社会 的存 在」 と捉 え る傾 向が強 く, これ は子 ど もとの接触 や世話 の機会 が母親 に比 べて少 ないため 子 ど もを観念 的 に捉 え る傾 向が あ り, また社会 で働 いて い るとい う経験 が関係す ることが 考 え られ ると説明 して いる。 さ らに,父親 の育児参加 と仕事観 ・子 ど も観 との関連 につ い て は,父親 の 「仕事 中心」 の仕事観, 「無 関心 ・低価値」 の子 ど も観 が関連 す る ことを示 し, これ らは自分 の中で仕事 と子育 てを どのよ うにバ ラ ンスを とるかを表す因子 と して注 目 して いる
。
「仕事 中心」 の仕事観 には昇進制度 の厳 しさが関連 し,仕事 と子育 てのバ ラ ンスを とるその背景 に職場要 因が影響 してい ると して い る。 仕事 には自己実現的要素 と家*1長崎大学大学院教育学研究科指導教員 *2平成13年度長崎大学大学院修士論文の一部である。
現在,長崎大学 「学生何でも相談室」カウンセラ‑
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族 を養 うとい う経済的手段 の要素 が あ るが, 日本 の男性 は働 くことに稼 ぎ手 と しての責任 を強 く感 じてい るとい うIshii‑Kuntz (1992)の国際比較研究 と合 わせて, 「子 ど もと も関 わ りたいが職場 で も厳 しい競争 が あ り,家族 を養 うために も仕事 にか な りのエネルギーを 注 ぐことにな らざるを得 ない,その結果親 としての役割 を納得で きるまで果たせないとい っ た葛藤 を抱 えた父親像 が見 えて くる」 と述 べて い る。 「無 関心 ・低価値」 の子 ど も観 の背 景 には経済 的な満足度 が関連 し,長期 にわた る不況 や過去最悪 の失業率 とい う社会状況 の 中で子 ど もとの時間 よ りまず家族 を養 うことを優先せ ざるを得 ない とい う父親 の存在 を示 してい る。 また,鹿嶋 (1993)は 「会社 に尽 くす仕事人間が望 ま しい男性 の生 き方 とされ て いたが,最近 は特 に若 い男性 を中心 に会社依存型人生 を見直 し家庭 や地域社会 での活動 を大切 に しよ うとす る男性 が増 えて い る」 と指摘 して いる ことを踏 まえ,福丸 ら (1999) はさ らに 「仕事 を持っ親 に とって職業人 や親 と しての役割 に どのよ うな意味を感 じ,バ ラ ンスを とってい くか とい うことが実際の育児行動 に関連す る こと, さ らに育児行動 の背後 には職場 や経済 的 な要 因 とい った社会状況 も関連す る」 と示 した。 そ して,「父親 の育児 参加 が父親 のみ な らず母親 の育児 負担感 や否定 的感情 の軽 減 につ なが るため重要 で あ る (相木 はか,1994)が,単 に父親 の意識改革 を望 むだ けで な く父親 を取 り巻 く職場 な どの 社会状況 を含 めて育児参加 を捉 え る必要 が あ る」 と指摘 してい る。
核家族化,少子化,女性 の社会進 出によ る共働 き夫婦 の増加 など社会状況 の変化 に対応 し,父親 と して母親 と共 に協力 ・分担 し合 って子 ど もを育 てたい とす る父親 たちの増加 は, 善悪 の け じめを きちん とっ けて親子 間を分離 ・切断 しなが ら子 どもの 自立 を育 て る父性原 理 か ら考 えて も,家族 システムには喜 ば しい ことと思 われ る。 しか し,単身赴任せ ざるを 得 ない,家族 を優先で きない とい った, まだ まだ厳 しい昇進制度 や不況 の社会状況 との狭 間で,妻 や子 ど もを抱 えた父親 たちが葛藤 を抱 えなが ら自分 に課せ られ た役割 を限 られた 時間の中で果 たそ うと して い るとも思 われ る。
子 ど もの精神保健 や福祉 の分野 で は,不登校,家庭 内暴力,幼児 ・児童虐待, い じめ等 の問題 が社会 的 な関心 の対象 にな ってお り, それ らの原因 を追求 し,解 明す ることによ っ て,的確 な対処方法が熟慮 され る必要 が あ る。岡堂 (1992)は 「これ までの原因追及 では, 通常一 つか二 つ の原因 を取 り上 げて,行動面 の障害 に関す る因果関係 が説明 され るのが常 であ った」 と指摘 し,単純 で線型 な認識論 で は人 間の複雑 な心理現象 の把握 には不適切 で あ ると批判 して い る。 したが って,1970年代 か ら急速 に発展 して きた家族療法 で は,原因 Aは,直線的 に結果Bを生 じさせ るので はな く,AとBとが相互 に影響 を与 え合 う円環 的 な連鎖 の過程 の一部 と考 え,子 ど もの心理行動的 な問題 や障害 は,例 えば母親 の過保護 の 結果 だ と見 るので はな く, システムとしての家族全体 の症状 と して把握 す る。 したが って, 家族療法 にお ける心理 的援助 の対象 は, クライエ ン ト個人 を含 む家族全体 とな る。
本研究 は,子 ど もたちが学校 や社会 に適応 して い くための心 の基盤 と しての 「家族 の在 り方」 に着 眼 し, 特 に父親 の子育 て態度 につ いて の主 観 的 ・客観 的評価 と家族 システ ム (凝集性 と適応性) との関係 を考察 す る ことを 目的 とす る。
方 法 1.調査対象
N大学教育学部 附属幼稚 園全 園児 の父親 ・母親各146名, 同附属小学校5年生 とその
宮崎 ・富永 :父親の子育て態度と家族システムに関する研究 25
父親 ・母親各127名,6年生 とその父親 ・母親各118名,同附属 中学校2年生 とその父親 ・ 母親各206名 の合計1645名 を対象 に実施 した。 本研究 で は, 家族 内で の比較 のため両親
と子 ど もを対象 と して い るが,質 問紙 の配布 の際 の子 ど ものプ ライバ シーを配慮 して, 母子家庭,単身赴任 家庭 も含 めた学級単位 で実施 し,母子 家庭 に は, 日本語版FACES
Ⅲのみを封筒 に入 れて配布 した。
2.手続 き
質問紙法 による調査。質 問紙 は,次 の2種 よ り構成 されて い る。 1)父親 の子育 て態度 に関す る調査
<父親 の子育 て態度の評価 >
福丸 ・武藤 ・飯長 (1999)の研究 「乳幼児期 の子 ど もを持っ親 にお ける仕事観,子 ども観 :父親 の育児参加 との関連」 を参考 に し, 「①夫 (または父親) の子育 て に対 す る気持 ちはど うか,②夫 (または父親) の今 の子育 て参加 につ いて ど う思 うか」 と い う,子育て態度 を評価す る 2つ の質 問を設定 し,① につ いて は 「とて も消極 的だ と 思 う」「やや消極 的だ と思 う」「やや積極 的 だ と思 う」「とて も積極 的 だ と思 う」 の4 段階評価 とその理 由をたずねた。② につ いて は 「全然で きて いない, とて も不満足 で ある」「あま りで きて いない, やや不満足 であ る」「まあまあで きて い る, やや満足 し て い る」「十分 で きて い る, とて も満足 して い る」 の4段 階 とその理 由をたずねた。
2つ の質 問 に関す る回答 を組 み合 わせて, 「消極 一不満群 (以後評価1とす る)」「消 極 一満足群 (以後評価2とす る)」「積極 一不満群 (以後評価3とす る)」「積極 一満足 群 (以後評価4とす る)」とい う4群 に分類 した。
<子育 て観 につ いて >
福丸 ・武藤 ・飯島 (1999)の研究 「乳幼児期 の子 ど もを持っ親 にお ける仕事観,千 ど も観 :父親 の育児参加 との関連」 を参考 に, 「充実 ・自己実現」「制約 ・負担」「仕 事 中心」「経済的手段 ・義務」 とい う仕事観 の 4因子,「充実 ・楽 しみ」「社会 的存在」
「生 きが い」「無 関心 ・低価値」 とい う子 ど も観 の4因子 を取 り入 れなが ら,本研究 の 回答項 目を作成 した。
父親 ・母親 の子育て観 を探 る質 問 と して,(丑仕事 と子育 て につ いて ど う思 ってい る か,②子 どもとはどんな存在か (父親 ・母親用),父親 とはどんな存在 か (子 ど も用)
とい う 2つの質 問 を設定 した。(丑につ いて は 「自分 (夫,父親) に とって仕事 をす る ことが大切 なので,子育 て は妻 (自分,母親) に任 せて仕事 を優先 させ たい」「自分 (夫,父親) が経済 的 に家庭 を支 え る ことが大切 なので,子育 て は妻 に任 せて仕事 を したい」「自分 (夫,父親) に とって は子育 て も大切 なので, な るべ く定 時で帰宅 し て子育 てを分担 したい」「男性 に も子育 て の時間,子育 ての休暇が欲 しい。 そ して十 分子 ど もと関 わ りたい」「その他」 の5段 階で たず ねた。 尚,質 問文 は対象者 に合 わ せて表現 を変 えてたずねた。② につ いて は,父親 ・母親 には 「自分 にはや るべ きこと が他 にあ って,子 ど もはあ ま り大 きな価値 を持 たない」「子 ど もを持 っ ことで初 めて 社会 的 に認 め られ,子育 て は次世代育成 のため大切 で あ る」「子 ど もは自分 に とって 生 きが いであ り, とて も大切 で あ る」「子 ど ものおか げで 自分 も成長 す るので,人生 に充実感 を与 えて くれ る存在 で あ る」「その他」 の 5段階 で たず ね た。 子 ど もには,
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「お父 さん の ことに, あま り興 味が ない。 お父 さんが いな くて も私 は育 って いける」
「社会 の未来 を担 うのは私 たちだか ら, お父 さんが私 を育て る ことは当然 であ る」「私 に とってお父 さん はか けがえのない存在 で, とて も大切 であ る」「お父 さん のおか げ で 自分 も成長 す るので,人生 に充実感 を与 えて くれ る存在 で あ る」「その他」 の5段 階で たずねた。
<対象者の背景 >
父親 に 「家族構成」,母親 に 「母親 の就労状況」,子 どもに 「兄弟 の数」 を尋 ね た。
2)家族 システムの測定
ミネ ソ タ大 学 の オ ル ソ ン ら (OIson,D.H.et.,1985)の 円環 モ デ ル (fig.1) に基 づ い た 自 己 報 告 式 の質 問 紙 で あ るFACESⅢ (Family Adaptability and Cohesion EvaluationScalesⅢ)を草 田 ・岡堂 (1993)が和訳 した 「日本語版FACESⅢ (草 田 ・ 岡堂,1993)」を用 いた。
凝集性
低
向 無秩 序
低
遊離 分 離 結合 豚着
ロ バ ラン ス群
E
= コ 中間群E=]
極端 群Fi9.1 円環 モ デ ル (OIsonetalり1985)
宮崎 ・富永 :父親 の子育て態度 と家族 システムに関す る研究 27
草 田 (1995)は,本尺度 の信頼性 と妥 当性及 び円環 モデルのカー ブ リニア仮説 を健 康 な大学生 と青少年 の犯罪者 を対象 に検討 した。 その結果,凝集性尺度 のα係数 が . 80,適応性尺度 のα係数 が .77,尺度全体 のα係数 が .86と高 い信頼性 が認 め られ, 特 に凝集性尺度 は安定性 も高 い と確認 して いる。 また,因子分析 によ り2因子 (凝集 性因子 ,適応性 因子) が見 出 され, 因子構造 も01son(1985)のオ リジナル版 とほぼ 同様 で あ ることを確認 して いる。 円環 モデルのカー ブ リニア仮説 につ いて は実証 され ず,健康群 と臨床群 とを弁別す る弁別的妥 当性 は支持 されない結果 が出たが,凝集性 を リニアな尺度 と して単独 で用 い ることは十分可能 であ ると示 して いる。
この 日本語版
FACES
Ⅲ は,奇数番号 の10項 目は凝集性 を,偶数番号 の10項 目は適 応性 を測定す る項 目を表す。Na18とNo.20の質問項 目は,01sonのオ リジナル版 とは違 っ て回答 しやす いよ うに逆転項 目とな って いる。 回答形式 は5段階評定 (1点 :ま った くない, 2点 :たまにあ る, 3点 :ときどき あ る, 4点 :よ くあ る, 5点 :いっ もあ る) を用 いて い る。 逆転項 目の2項 目につ いて は,集計段階 において得点 を反転 して いる。3.調査期間
2001年6月か ら7月 の問 に実施 した。
4.回収率及 び有効 回答数
調査用紙 は1645枚配布 し,1309枚 回収 した。 回収率 は79.57%で あ った。 それぞれ の 回収率 は,幼稚 園97.95%,小学校72.65%, 中学校79.13%で あ ったが,家族 内での比較 を行 うため父親 と母親 と子 ど もの回答用紙 が揃 って いない ものや
FACES
Ⅲの20項 目に1つで も空欄 が あ る ものを除 き,有効 回答 が得 られ た891名 (54.16%)を本研究 の対象 と した (Tablet)0
Tablel 調査 の依無数 と回収率 お よび有効 回答数 (率)
父 親 母 親 子 ども 有 効 回 答 数 (率) 依 頼 数 回 収 率 幼 稚 園 114 114 117 228(78.08%) 292 97.95
小 学 校 117 117 351(47.76%) 735 72.65
中 学 校 104 104 104 312(50.49%) 618 79.13
結果及 び考察
1.子育 て観,子 ども観 と父親 の子育 て態度
父親 の子育て態度 に対 す る評価 を全体で比較 す るため,x2検定 を行 った結果,人数 の偏 りは有意 で あ った (x2(21)‑95.53,p<.01)。 そのため, さ らに残差分析 を行 った 結果,Table2に示す通 り,有意 な差 が確認 され た。
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Table2 父親 の子育 て態度 に対する評価 の残差分析結果
評価1 評価2 評価3 日̲̲"寧唾̲4""
消極一不満群 消極一満足群 積極一不満群 消極一満足群 幼 稚 園 父 親
幼 稚 園 母 親 小 学 校 父 親 小 学 校 母 親
小 学 校 子 ど も ‑2.573* 中 学 校 父 親 2.928** 中 学 校 母 親
中 学 校 子 ど も 3.231**
5.185** ‑3.171** 3.462** 2.056* ‑2.062*
‑2.753**
2.510* 2.204* ‑4.066**
‑3.136** 1.998*
注 *p<.05 **p<.01
父親 の子育 て観 は子 ど もの成長 と共 に変化す る。 幼児期 まで は子 ど もの世話 や家事 の 分担 に積極的 に取 り組 む父親 が多 く,家族 を経済 的 に支 え る責任 を果 たす ことを重要視 す ると同時 に子 ど もは自分 の 「生 きが い」 であ り,父親 と して子育 ての責任 を果 たす た めに子 ど もと関 わ る時間 を持 ちたい とい う子 ど も観 を持 って いる。児童期 の子 ど もを持 つ父親 に とって も子 ど もは 「生 きが い」 で あ り,仕事 を休 んだ り早退 した りす る必要 は ないが早 めに帰宅 して子 ど もとの時間 を大切 に したい とい う子育 て観 を持 っている。 子 ど もが中学生 にな ると父親 は,我 が子 を社会 の一員 と して捉 え,一人前 の社会人 と して 育てな ければな らない とい う責務 を感 じ始 め る。 したが って,子育 て よ り仕事 を優先 さ せ よ うとす る父親 は減少 し,大切 な時期 で ある我 が子 の子育 てを妻任せ に して はな らな いとい う意識 の高 い子育 て観 が見 え る。 一方,子 ど もたちは青年期 に入 り,親 か らの心 理的離乳 の手段 と して親 を避 け,親 や大人 たちの価値観 を批判 し,衝突 を繰 り返す よ う にな る。 本研究 で も,父親 の存在 につ いて 「無 関心 ・低価値」 な回答 が多 く見 られ, こ のよ うな回答 を してい る子 どもの父子 関係 は必 ず しも良 い関係 とは言 い難 い。高 い理想 の子育 て観 と難 しい現実 との狭 間で,路頭 に迷 う現代 の父親,母親 の姿 が見 えて くる。
しか し,子 ど もたちが父親 の接 し方 によ り良 い関係 を求 めて いる様子 も伺 え る。 いっ ま で も子 ど も扱 いす るよ うな父親 の接 し方 は,「か まい過 ぎ
」
「しつ こい」 と敬遠 されて い るが,「会話」や 「遊 び」,「ア ドバ イス」 を求 め る意見 も記述 されて い ることか ら,「必 要 な ときに関わ って くれ る時間的 ゆ とり, 自分 の意見や考 えを受 け入 れて くれ る精神 的 ゆ とり,落 ち着 いてふれ あ うための空間的 ゆ とり」 を父親 との コ ミュニケー シ ョンの中 に求 めて いると考 え られ る。2. 日本語版 FACES日の信頼性 と妥 当性 の検討
日本語版FACESⅢの尺度 の信頼性 を検討 す るため に,凝集性尺度,適応性尺度,尺 度全体 の クロ ンバ ックのα係数 を算 出 した結果,凝集性尺度 と尺度全体 の信頼性 を得 る ことがで きた (順 に.87,.63,.85)。 また,草 田 (1995)の結果 と もほぼ一致 して い る (順 に.80,.77,.86)。適応性尺度 のα係数 が草 田 (1995)の結果 よ りも低 くな り,信頼 性 が得 られなか ったため,不適 当な変数 を特定 す るための補助的 な分析 を行 うと,項 目 No.18を削除 した場合 の相 関係数 は‑0.14,削除後 のα係数 は.69,項 目No.20を削除 した場 合 の相 関係数 は‑0.10,削除後 のα係数 は.69とい う結果 が得 られ,削除前 よ りもα係数
宮崎 ・富永 :父親の子育て態度と家族 システムに関する研究 29
の値 が大 き く,相関係数 も他 の変数 に比 べて低 い ことがわか った。念 のため,尺度全体 のα係数算 出後 の補助 的分析 を行 い,不適切 な変数 の有無 を調 べた結果,削除後 の相 関 係数 の絶対値 が0.4を満 た さないの はNo.18(‑0.2948)とNo.20(‑0.1871)の2つで あ り, 削除後 のα係数 が削除前 の.85よ り大 きい値 とな るの もNo.18(.8699)とNo.20(.8670)の
2つであ る。 したが って,回答 の しやす さを配慮 した逆転項 目のNa18とNo.20の2項 目が, 適応性尺度 と して適切 で あ るか ど うか再検討 す る必要 が あ ると言 え る。
次 に,因子的妥 当性 を検討す るため,家族機能 に関す る20項 目につ いて主因子解 を し, さ らにバ リマ ックス回転 を行 った。 その際,01sonetal.(1985),草 田 (1995)の結果 と同様 に,抽 出因子 は2と した。 その結果,Table3に示 す よ うに,項 目No.3,No.16, No.18,No.20を除 いて,01sonetal.(1985),草 田 (1995)の結果同様,第1因子 に凝集 性項 目,第 2因子 に適応性項 目がそれぞれ高 い因子負荷量 を示 した ことか ら,因子 的妥 当性 が確認 され た と言 え る。
Tab暮e3 バ リマ ックス回転後 の因子負荷量
No. 項 目 第1因子 第2因子 共 通 性
13.家族 で何かをす るときは,みんなでや る。
9.私 の家族では, 自由な時間は,家族 と一緒 に過 ごしている。
ll.私 の家族 は,お互 いに密着 している。
5.私 の家族 は,みんなで何かをす るのが好 きである。
15.私 の家族 は,みんなで一緒 に したいことがす ぐに思いっ く。
7.家族 の方が,他人 よ りもお互 いに親 しみを感 じている。
19.家族がまとまっていることは, とて も大切である。
17.私 の家族では,何かを決 めるとき,家族の誰かに相談す る。
1.私の家族 は,困 ったとき,家族 の誰か に助 けを求 める。
2.私 の家族 では,問題の解決には子 どもの意見 も聞いている。
4.私 の家族 は,子 どもの言 い分 も聞いて しっ けを している。
8.私 の家族では,問題の性質 に応 じて, その取 り組みを変えている。
12.私 の家族 では,子 どもが 自主的に物事 を決 めている。
10.私 の家族 は,叱 り方 について親 と子で話 し合 う。
14.家族 の決 まりは,必要 に応 じて変わる。
6.家族 を引 っ張 ってい く者 (リーダー) は,状況 に応 じて変わ る。
3.家族 は, それぞれの友人を気 に入 っている。
16.私 の家族では,家事 ・用事 は必要 に応 じて交代す る。
18.私 の家族では,みんなを引 っ張 ってい く者 (リーダー)が決 まっている。
20.私 の家族では,誰がどの家事 ・用事をす るか決 まっている。
0.675 0.320 0.558 0.660 0.222 0.485 0.657 0.281 0.511 0.647 0.301 0.509 0.614 0,359 0.506 0.566 0.152 0.343 0.562 0.214 0.362 0.548 0.350 0.423 0.421 0.419 0.353 0.191 0.643 0.450 0.206 0.618 0.424 0.311 0.508 0.355 0.156 0.508 0.282 0.223 0.506 0.306 0.218 0.478 0.276 0.120 0.464 0.230 0.326 0.303 0.198 0.268 0.371 0.209
‑0.405 ‑0.098 0.174
‑0.250 ‑0.087 0.070 No.18, No.20は逆転項 目である。 寄与率 (%) 19.73 15.38
しか し,問題 と して取 り上 げたいのは,No.3,No.16,No.18,No.20の4項 目につ いてで あ る。 岡堂 (1993)は著書 「心理検査学」 の中で, 日本語版FACESⅢ作成 時 の予備調 査 において,因子分析 で この4項 目に問題 が あると し,再検討 ・訳文 の修正 を行 った と 記 して い る。 つ ま り,修正 された4項 目が本研究 において も再度因子分析 において問題 点 と して挙 げ られ た ことにな る。 特 に適応性尺度 に関 して は,質 問項 目自体 の改訂 を, す なわちオ リジナル版 に こだわ らず,独 自に質問項 目を作成 す る必要 が あると指摘 して
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い ることか ら,本研究 において さ らに質問項 目の改訂 の必要性 が明 らか とな った といえ る。 最後 に,下位尺度問 の相関 を求 めた ところ,全体 の凝集性 と適応性 の相関係数 γは .53とな り正 の相 関 を示 した。 この結果 は,01son etal.(1985)の結果 (γ‑.03)とは 異 な り,草 田 (1995)の結果 (γ‑.62)とは一致 したため,家族機能 にお ける凝集性 と 適応性 とは互 いに独立 した次元 で はない ことを示 して いるとい う草 田 (1995)の結果 を さ らに示 唆す る もの とな った。 また,凝集性 の高 い位置 に多 くの家族 が位置 し,適応性 は中間付 近 に位 置 して い る結 果 が得 られ,01son etal.(1985)の カー ブ リニ ア仮 説 (凝 集 性 , 適 応性 共 に中間 の レベ ル を最適 とす る仮説 ) は支持 され ず,Green etal. (1991a,1991b)の 「凝集性 の次元 は家族機能 と リニアな関係 にあ るが,適応性 の次 元 は家族 機能 とはなん の関係 もない」 とす る結果 や,Hampson etal,(1991) の 「凝集 性尺度 が主 に リニアな傾 向 にあ るのに対 し,適応性尺度 は リニアな傾 向が少 ない」 とす
る結果 に近 い形 とな った。
3.家族 システム (円環 モデルによる家族 の16タイプの分類) 1)16タイプの分類基準 の検討
岡堂 (1993)は,分類基準 の結果 につ いて, 「調査対象 が専 門学校生 ・大学生 と限 られてお り, しか も人数 が少 ないため, あ くまで も暫定基準 であ り,標準化 に向 けて の‑資料 であ ることに留意 して欲 しい」 と述べて い る。 草 田 ・岡堂 (1993)による日 本語版FACESⅢの作成 にお ける16タイプの分数基準 の設定 につ いて調 べ た と ころ, 原版01sonの標準偏差 を基準 に4分割 した ことがわか った。 そ こで,01son(1985) の分 類 基 準 に よ る得 点 範 囲 に基 づ い た分 類 (01son基 準 と表 示 ) と, 草 田 ・岡堂 (1993)の分類基準 による得点範 囲 に基づ いた分類 (草 田 ・岡堂基準 と表示), そ して
%を近 づ けた分類 (%基準 と表示) の3分類法 で本研究 の対象家族 を分類 して検討 し た (Table4)。
Table4 0lsonのFACESlllと日本語版FACES日,本研究 の分類基準
(,)内 は被験者数 01son 日本語版 本研究(891) 本研究(891) 本研究(891) FACESⅡ(2453) FACESⅢ(491) 01son基準 草田・岡堂基準 %基準 凝集性(Cohesion)
遊離(Disengaged) 分離(separated) 結 合(connected) 勝者(Enmeshed) 適応性(Adaptability)
硬直(Rigid) 構造化(Structured) 柔軟(flexible) 無秩 序(Chaotic)
Range % Range % Range % Range % Range % 10‑34 16.3 10‑24 17.52 10134 33.33 10‑24 5.05 10‑30 17.96 35‑40 33.8 25‑31 30.14 35‑40 32.66 25‑31 16.95 31‑37 31.54 41‑45 36.3 32‑38 34.01 4ト45 22.67 32‑38 33.33 38‑44 35.80 46‑50 13.6 39‑50 18.33 46‑50 11.34 39‑50 44.67 45‑50 14.70 10‑19 16.3 10‑23 15.89 10‑19 4.38 10‑23 12.57
20‑24 38.3 24‑28 28,31 20‑24 12.35 24‑28 29.97 25‑28 29.4 29‑34 42.97 25‑28 25.81 29‑34 43.10 29‑50 16.0 35‑50 12.83 29‑50 57.46 35‑50 14.37
草 田 ・岡堂 の結果 に比べて本研究 の対象 家族 の凝集性が非常 に高 くなるが, 岡堂 らの 調査対象者 は専 門学校生 ・大学生 であり,本研究 の対象家族が幼稚 園児 ・小学生 ・中学 生 を持っ家族 であることか ら,子 どもの年齢が幼 いほど,家族 で一緒 に過 ごす時間や機会 が多 く,凝集性 も高 くなると考 え られ,先程 の分散 分析 の結果 か らも校種 間 の有意 差 が
宮崎 ・富永 :父親 の子育て態度 と家族 システムに関す る研究 31
認 め られた。 したが って,本研究 では(丑草 田 ・岡堂 (1993)の 日本語版FACESⅢを使 っ た研究 であ り, ②対象家族 の子 どもの年齢 が低 いので凝集性 は高 いとい う結果 は当然で あるとの理 由か ら草 田 ・岡堂 (1993)の分 類基準 を採用 した。 同様 に,適応性 について も,草 田 ・岡堂 の分類基準 による本研究 の分類結果 は,01son (1985)の結果 と%値がほ ぼ近 い もの となっていることか ら,草 田 ・岡堂 (1993)の分類基準 を採用 した。
2)現代家族の特徴 (円環 モデルによる家族 の16タイプの分類結果)
日本語版FACESⅢによる各家族 の凝集性尺度得点,適応性尺度得点 を基 に16タイプ の分類 を行 った結果,Table5, 6に示すように,柔軟 一勝者 (19.19%),柔軟 一結合 (18.74%),構造化 一結合 (13.36%)の順 で多 く布 置 されている。 いずれ も家族機能 が最 もよ く働 く健康状態が布置 されやすいとされているバ ランス群 と中間群 に属す るタ イプである。 4番 目に多 い無秩序 一膠着 は,問題 のある家族が布置 されやすいとされて いる極端群 に属す るタイプであ り,極端群 (n‑138)の72.46% (n‑100)を占めている。 円環 モデルでは,バ ランス群 ・中間群 ・極端群 のどれに該 当す るかによって問題 のあ る家族 と問題 のない家族 との弁別 に有効 であるとされているため,本研究 の対象家族 の 中で,無秩序 一腰着 に全体 の11.22%布 置 した という結果 は,注 目され るべ き結果であ る。 また,全体 としての偏 りを直接確率計算法で分析 したところ,バ ランス群 と中間群 との間 には有意 な差 は認 め られず (p‑.190), 中間群 ・極端群 間,バ ランス群 ・極端群 間 にはそれぞれ有意 な人数差が認 め られ (共 にp‑.000,両側検定),バ ランス群 ・中間 群 に位 置す る人数 に比べ, 極端群 に位 置す る人数 の方 が有意 に少 ない ことが明 らか と なった。
Table5 3分別 の人数 と割合
バ ランス群 中 間 群 極 端 群 n 395 358 138
Table6 家族 の16タイプの分類
幼稚園 小学校 中学校
16タイ プ 父親 母親 父親 母親 子 ども 父親 母親 子 ども 全体 % バ ランス群
柔軟 一結合 柔軟 一分離 構造化 一結合 構造化 一分離 中間群
無秩序 一結合 無秩序 一分離 柔軟 一腰着 柔軟 一遊離 構造化 一腰着 構造化 ‑遊離 硬直 一結合 硬直 一分離 極端群
無秩序 一腰着 無秩序 ‑遊離 硬直 一腰着 硬直 一遊離
27 13
1 1
26 14
3 5
1020415241
20907022 25010F=
3011日H
2 4 22 16
4 4 7
2 3 1 9 6
11 9 15
40029580r:nHH
O0318153(ソ山
30419165日リ 2048日H00l1 24020日リ
23 19 2 3
9 9 5
15 5 11
9 9 8
418092242
41904425日H 7162415890231
0020 1
7011 496474378437
11 70996416 11 149788388316169320907134F:
53164559276133 1 207920561012日り0044 012
日H
32 長 崎大学教育学部紀要 一教育科学 一 第71号
円環 モデルか ら見 た現代家族 の特徴 と して は,凝集性 は高 く,適応性 は凝集性 に比 べて低 い。特 に子 ど もが幼 い母親 はど子育 て に関わ る時間が長 く,父親 も協力 して具 体的 に子 ど もの世話 や家事 に関わ ることが多 いため,幼稚園家族が最 も凝集性が高 く, 小学校,中学校 とな るにつれ低 くな り,中学校子 ど もは最 も低 い。 また,母親,父親, 子 ど もの順 に凝集性 は低 くな る。 適応性 は,校種,父母 による差 はないが,子 ど もの 適応性 は低 い。家族 の16タイプの分類 で は, バ ランス群 と中間群 が多 く,極端群 は少 ない。特 に 「柔軟 一腰着」,「柔軟 一結合」が多 い ことか ら,適応性 は 「柔軟」で中間, 凝集性 は 「結合」「腰着」 と高 い家族が多 い といえ る。 極端群 の中で 「無秩序 一腰着」
が全体 の11%を 占め る結果 は,今後検討 す る必要 があ るといえ る。
4.家族 の凝集性 ・適応性 を高 める要因の検討
家族 の凝集性 と適応性 は,周 囲 のい ろいろな要因が絡 み合 う中で多少 の影響 を受 けて 形成 されてい る。 家族 の凝集性 と適応性 を高 め る要因を明 らか にす るため,対象者 の背 景 と して調査 した項 目を説 明変数 と し,凝集性得点 または適応性得点 を 目的変数 と した 重 回帰分析 を行 った。重 回帰分析 で は説 明変数 間 に高 い相 関があ ると多重共線性 とい う 現象 が起 こり偏 回帰係数 の解釈 が難 しくな るため, クラス ター分析 によ って説明変数 の 類似 を調べ,説 明変数 を 「校種」「役割」「世代世帯」「母親 の就労」「消極 一積極」「仕 事 と子育 て」「子 ど もの存在 (父)」「子 どもの存在 (母)」の8つ と し, 目的変数 を 「凝 集性」 または 「適応性」 と して,変数増滅法 によ り重回帰分析 を行 った。
まず, 「凝集性」 につ いて は,重相 関係数0.4603, 分散比F(66884)‑20.72,p<.01で, あて はま りは有意 であ り,家族 の凝集性 を高 める要因 と して6変数が選択 された (Table7)。
Table7 凝集性 の重 回帰分析結果 (n=891) 標準 偏 回帰 係数 F 値 消極 一積極
校種 役割
子どもの存在 (父) 仕事 と子育て 母親 の就労
0.301
‑0.193
‑0.141 0.108 0.082
‑0.077
95.665** 36.818** 20.842** 12.773** 7.139** 6.292*
「消極 一積極」, 「子 ど もの存在 (父)」, 「仕事 と子育 て」 は3変数 の得点 が高 いほど 家族 の凝集性得点 は高 くな るといえ る。 逆 に 「校種」,「役割」, 「母親 の就労」 は, こ の3変数 の得点が高 いほど凝集性が低 くなるといえ る。 ただ し,役割 の得点化で は,父 ・ 母 ・子 ど もの順 で高 くなるので,子 ど もが最 も凝集性 を低 く評価 してい ると考 え られ る。
次 に,適応性 で は重相 関係数0.2382,分散比F(4886)‑13.32,p<.01で,重 回帰式 のあて は ま りは有意 で あ り,家族 の適応性 を高 め る要因 と して3変数 が選択 された (Table8)。
Table8 適応性 の重 回帰分析結果 (n=891)
標準 偏 回帰係数 F 値 消極 一積極 0.170 26.552** 役割 一0.130 15.807** 世代世帯 ‑0.076 5.426*
宮崎 ・富永 :父親の子育て態度 と家族 システムに関す る研究 33
「消極 一積極」 は,得点 が高 い ほど家族 の適応性得点 は高 くな るといえ る。 逆 に 「役 割」,「世代世帯」は, この2変数 の得点 が高 いほど適応性 が低 くな るといえ る。 つ ま り, 子 どもの方 が適応性 を低 く評価 し,2世代世帯 よ りも3世代世帯,4世代世帯 と世代数 が増 え るほど家族 の適応性 を低 く評価す る要因 とな る ことが いえ る。
ここで, 「子 ど もか らみた父親 の存在」 も検討 す るため,小 中学校 の親子 のみで重 回 帰分析 を行 った。
まず凝集性 で は重相関係数0.4505,分散比F(8651)‑20.72,p<.01で,垂 回帰 式 の あて はま りは有意 で あ り,家族 の凝集性 を高 める要 因 と して7変数 が選択 され た (Table9)。
Table9 小 ・中学校家族 の凝集性 の重回帰分析結果(n=663)
標準偏 回帰係数 F 値 消極 一積極
役割
父親 の存在 (千) 子 どもの存在 (父) 母親 の就労
仕事 と子育て 校種
0.314 75.272**
‑0.174 24.549** 0.143 16.048**
0.099 7.688**
‑0.080 5.166** 0.083 5.278*
‑0.070 3.875*
「消極 一積極」,「父親 の存在 (千)」,「子 ど もの存在 (父)」,「仕事 と子育 て」 は,4
変数 の得点 が高 い ほど家族 の凝集性得点 は高 くな るといえ る。 しか し, 「役割」, 「母親 の就労」,「校種」 は, この3変数 の得点 が高 いほど凝集性 が低 くな るといえ る。 大人 よ り子 ど もの方が,特 に中学生 の方 が母親 が常勤務 で あ るほど家族 の凝集性 を低 く評価 す るといえ る。
次 に,適応性 で は重相 関係数0.2574,分散比F(5654)‑9.29,p<.01で,重 回帰式 のあて はま りは有意 で あ り,家族 の適応性 を高 め る要因 と して4変数 が選択 され た (TablelO)0
TablelO 小 ・中学校家族 の適応性 の重回帰分析結果(n=663)
標準偏 回帰係数 F 値 0.175 21.124**
‑0.139 13.369** 0.103 7.228**
‑0.095 6.139* 消極 ‑積極
役割
父親 の存在 (千) 世代世帯
「消極 一積極」, 「父親 の存在 (千)」は,得点 が高 いほど家族 の適応性得点 は高 くな るといえ る。 逆 に 「役割」,「世代世帯」 は, この2変数 の得点 が高 いほど凝集性 が低 く な るといえ る。 つ ま り,子 ど もの方 が適応性 を低 く評価 し,2世 代世帯 よ りも3世代,
4世代 と世代数 が増 え るほど家族 の適応性 を低 く評価 す る要 因 とな る ことが いえ る。
以上 の結果か ら,凝集性 を高 め る要因 と して は,①父親 の子育 て態度 につ いて本人 ま た は家族 による評価 が高 い こと,②父親 が子 ど もを 「生 きが い」 と感 じた り, 「子 ど も のおか げで 自分 も成長 で きる」 と両面的 な子 ど も観 を持っ こと,③子 ど もが父親 を 「か けがえのない大切 な人
」
「自分 の人生 に充実感 を与 えて くれ る人」 とポ ジテ ィブな父親 観 を持っ こと,④子育てを優先 し,子 どもとの時間 を大事 にす る子育 て観 を持っ ことが 挙 げ られ る。 適応性 を高 め る要 因 と して は,①父親 の子育 て態度 につ いて,本人 また は 家族 が 「積極 的で あ る」 と評価す る こと,②父親 が子 ど もを 「生 きが い」 と感 じた り,34 長崎大学教育学部紀要一教育科学一 第71号
「子 ど ものおか げで 自分 も成長 で きる」 と両面 的 な子 ど も観 を持 っ ことが挙 げ られ る。
5.父親 の子育 て態度 と家族 システムの関係
A要 因 (3校種 3役割) のB要 因 (子育 て態度4群) ごとにC要 因 (家族 システム, 凝集性 と適応性) の分散 分析 を行 った結果, 校種役割 ×父親 の子育 て態度 の交互作用 一(F(21,837)‑1.75,p<.05),父親 の子育 て態度 ×家族 システムの交互作用 (F(3,837)‑15.47,p<.01), 校種役割 ×家族 システムの交互作用 (F(7.837)‑7.21,p<.01)が有意 であ った。
39 37 35
⊂q
茎 33 31 29 27
手 幼稚園父親 ー 幼稚園母親
▲ 小学校父親 棉 ‑小学校母親
Ⅹ 小学校子ども ラ 中学校父親 + 中学校母親
一 中学校子ども
評価
1評価 2 評価3 評価4
父親の子育て態度
f i g.2 校種役割 ×父親 の子育て態度群 の結 果
1)校種役割 ×父親 の子育 て態度群
父親 の子育 て態度群 ごとの水準誤差項 を用 いて校種役割 の単純主効果 を検定 した結 果,4群すべてにおいて有意 であった (1:F(3,8,7)‑10.01,2:F(3,8,7)‑4.72,3:F(3,837)‑6.39,
4:F(3,837)‑5.75, すべてp<.01)。 LSD法 を用 いた多重比較 によれば,評価 1で は, 幼稚 園父親 が小学校子 ども以外 の群すべてを有意 に上 回 っていた。 評価 2で は, 幼稚 園父 親 が中学校父親以外 のすべての群 を有意 に上 回 っていた。 評価 3で は, 幼稚 園父親 が 幼稚 園母親 ・小学校父親以外 のすべての群 を有意 に上 回 っていた。 評価4では,幼稚 園母親 が幼稚 園父親 ・小学校母親以外 のすべての群 を有意 に上 回 っていた。 また, 幼 稚 園父親では評価 1が他 の3評価 を有意 に上 回 っていた。 幼稚 園母親 では評価4が他 の3評価 を有意 に上 回 り,次 いで評価 1が評価2と評価3を有意 に上 回 り,評価3が 評価2を有意 に上 回 った。小学校母親 と中学校母親 では評価 1と評価4が他 の2評価 を有意 に上 回 った。 小学校子 どもは評価 1が他 の3評価 を有意 に上 回 り,評価2と評 価4が評価3を有意 に上 回 った。 中学校父親 は評価1と評価 4が他 の2評価 を有意 に 上 回 った。 中学校子 どもは評価1が評価2を有意 に上 回 っていた (MSe‑17.05,p<.05)
宮崎 ・富永 :父親 の子育て態度 と家族 システムに関す る研究 35
(fig.2)。評価4より評価 1の方が高 い幼稚園父親 については,我 が子が幼児期 に してす でに自分 の子育 て態度 を 「消極 的で不満足 である」 と低 く評価す る父親 が多 い理 由 と して, 無意識 の うちに 自分 の孤立 と母 子 の密着 を感 じ凝集 性 を高 く評価 しやす いと考 え られ る。 子 どもが幼 い頃の母子 関係 は境界が暖味でお互 いが纏綿 としていることがあ り得 るため, 母子 関係 が父親 を極端 に遊離 させ,母子密着 ・母子共生 が生 まれやすい (平木,1992)。 そのため,父親 が母子密着 を 自分 の家族 の凝集性 と して高 く評価 しや すい ことが考 え られ る。 また, 中学校父親 は評価 1よ り評価2の方 が高 い結 果 が出て いることか ら,子育 てに対 して 「消極 的だけれ ども満足 である」 と自己評価す る父親 の 家族 はど母子密着 が凝集性 の高 さとして父親 に評価 されやすいと考え られ る。 このよう な父親 には家族 の問題が捉え られに くく,父親 としての家族への積極 的な関わ りに欠 け るため,ますます母親 は母子関係 を強めて父親 を遊離 させて しまう可能性 を表 している。
2)父親 の子育て態度群 ×家族 システム
まず,父親 の子育て態度群別 に家族 システムの単純主効果 を検定 した結果,評価 1 (F(1,837)‑318.66),評価2 (F(1.837)‑175.74),評価3 (F(1,837)‑69.86),評価4 (F(1,837)‑209.96) のすべての群 において,凝集性か ら適応性 にかけて有意 に低下 した (すべてp<.01)。
1 9 7 5 3 1 9 7 5 4 3 3 3 3 3 2 2 2
ut
2 9 m
凝集性 適応性
家族 システム fig3. 父親の子育て態度 ×家族 システムの結果
次 に,家族 システムごとの水準別誤差項を用 いて,父親の子育て態度群 の単純主効果を 検定 した。 その結果,凝集性 (F(3,837)‑20.63), 適応性 (F(3,837)‑4.37)共 に有意 であった
(共 にp<.01)。LSD法を用 いた多重比較 によれば,凝集性 においては評価 1と評価4が評 価 2と評 価 3を有 意 に上 回 り, 評 価 2は評 価 3を有 意 に上 回 って いた (MSe‑ 41.05,p<.05)。 また, 適応性 においては評価 4が評価2と評価3を有意 に上 回 り,評価
1は評価 2を有意 に上 回 っていた (MSe‑24.88,p<.05)(fig.3)。 父親 の子育て態度の評 価が 「消極 一不満」 または 「積極 一満足」である家族 は凝集性 ・適応性 は高 いと思われ,
36 長崎大学教育学部紀要一教育科学一 第71号
父親 が子 育 てに積 極 的で家族 が満足 していると家族 集 団 の魅 力が高 まって集 団 にとどま る時 間 も長 くなるため, 凝集性が高 まることが考 え られる。 しか し,子 育 てに対 して消極 的な父親 に対 して不満 に思 う家族 も,母親 と子 どもの強 いまとまりを持っために凝集性が 高 くなることが結 果 として表れている。 このような家族 は父親が家族か ら孤立 しやす く, 世 に言われる 「父親 不在 家族」 としてさまざまな問題が生 じて くると考え られる。
3)校種役割 ×家族 システム
まず,校種役割別 に家族 システムの単純主効果 を検定 した結果,幼稚 園父親 (F(1,837)‑ 138.94),幼 稚 園 母 親 (F(1,837)‑211.90), 小 学 校 父 親 (F(1,837)‑117.92), 小 学 校 母 親 (F(1,837)‑87.62), 小学 校 子 ども (F(1.837)‑66.77), 中学校 父 親 (F(1,837)‑51,91), 中学 校 母 親 (F(1,837)‑49.61), 中学 校子 ども (F(1,837)‑53.62)すべての群 において, 凝集 性か ら適 応性 にか けて有意 に低下 した (すべてp<.01)。
壬 幼稚園父親
♯ 幼稚園母親
▲ 小学校父親
♯ 小学校母親
Ⅹ 小学校子ども e 中学校父親 + 中学校母親
一 中学校子ども
凝 集性
fig4. 校種役割 ×家族 システムの結果
適応性 家族システム
次 に, 家族 システムごとの水準 別 誤差 項 を用 いて, 校 種役 割 の単純 主 効 果 を検定 し た結果, 凝集 性 (F(7,837)‑6.53,p<.01),適応性 (F(7,837)‑2.27,p<.05)共 に有意 であった。
LSD法 を用 いた多重 比較 によれば, 凝集 性 においては幼稚 園父親 と幼 稚 園母親 が他 の 群 より有意 に上回 り,小学校父親が中学校子 どもを有意 に上回 った (MSe‑41.05,p<.05)。
また,適 応性 で は幼 稚 園父親 が中学 校母 親 以外 のすべての群 を有 意 に上 回 り, 中学校 母親 は幼稚 園母親 を有意 に上 回 った (MSe‑24.88,p<.05)(fig4)。 この結 果 は,先 に述 べ た結 果 同様 , 子 どもが幼 い父 母 ほど家 族 の凝 集 性 は高 く, 子 ど もの成 長 と共 に凝集