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中年期女性の自己分化とアイデンティティ,精神的健康との関連 : 母親との関係に注目して

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Academic year: 2021

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(1)中年期女性の自己分化とアイデンティティ,精神的健康との関連           一母親との関係に注目して一. 学校教育研究科 教育臨床心理コース.     MO4092G  上石 美紀.

(2)                  目次 はじめに・・・・・・・・・・・・・…  9・・・・・・・・・・・・・・…  1. 第1章 先行研究の概観・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  3  第1節 中年期とは・・…  9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  3.  (1) ライフサイクルにおける中年期の定義 3  (2) ライフサイクルにおける中年期の意味 3.  (3) 中年期に見られる諸変化 4.  (4) 中年期の発達課題 5  第2節 中年期におけるアイデンティティの危機・・…  D・・・・・・…  6.  (1) 中年期に体験される心の変化 6  (2) アイデンティティの揺らぎとしての中年期危機 7.  (3) アイデンティティ再体制化における二面性 8  (4) 関係性の変容から捉えるアイデンティティ 8  第3節 自己分化と親子関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  9.  (1) 自己分化の定義と中年期における自己分化の意義 9  (2) 親子関係の変遷と中年期における親子関係 10  (3) 母親、父親が娘に与える影響 12.  (4) 青年期における親子関係とアイデンティティ 13.  (5) 臨床例からみる中年期女性 13 第H章 中年期女性の自己分化とアイデンティティ、精神的健康との関連についての実  証的研究(研究1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  15.  第1節 目的・・・・・・・・・…  6・・・・・・・・・・・・・・・… 15  第2節 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  16  第3節 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  19.  第4節考察…  9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 27 第皿章 中年期女性とその母親との関係についての質的研究(研究H)・・・…  34.  第1節 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 34.  第2節方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 34  第3節結果・・・・・・・・・・・・・・…  D・・・・・・・・・・… 35  第4節 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 47 第IV章 総合考察・・・・・・・・・・…  9・・・・・・・・・・・・・…  57 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・…  9・・・・・・・・・・…  59 参考文献 図表一覧 付録.

(3) はじめに  女性は、結婚、出産、育児などで、他者に合わせて自分のライフスタイルを変えなけ ればならない。しかし、一方で、ライフスタイルの多様化に伴い、様々な選択肢があり、 それを、積極的に、もしくは消極的にでも決断をしなければならない。そのようなとき、. 必ず「後悔」というものが付きまとってくる。中年期はその「後悔」が一気に押し寄せ てくる時期なのではないかと思う。.  中年期は「人生の正午」と言われ、人生の折り返し地点と捉えられている。折り返し の地点に立って、今まで自分が生きてきた道を振り返り、「なぜこんなことをしたのだろ う」「やり直せたらいいのに」と思うのではないだろうか。そう思うことは、これまでの. 人生を否定することになり、ひいては、その人生を歩んできた自分自身を否定すること でもある。.  多かれ少なかれ自己の有限性を感じながらも、多くの人々が、日常生活を難なくこな し、自分の人生に新たな意味を付与し、生き生きと人生を謳歌している。しかし、一方 で、自分の人生を肯定的に見ることができず、それからの人生を気持の上で放棄したり、. 意味がないものとしてしか捉えられない人もいる。中年期において、人生の意味や「自. 分とは何者か」ということを改めて問い直すことは大切であると思われる。それに安易 で表面的な解決を持ってきても、うわぺだけの適応としか言えないだろう。.  上に述べた中年期危機をうまく乗り越えられた人と、そうでない人の差は一体何なの だろうか。中年期危機をアイデンティティの危機と捉えると、今までの自分の生きてき. た道に対する積極的な関与と、これからの自分の生きる道に対する積極的な関与がそれ を乗り越えるために必要と考えられる。っまり、自分の人生に主体的に関われるカであ り、自分の人生は誰のものでもなく自分のものであり、それに対して責任を持てること なのではないかと筆者は思った。.  人生について考えると、私達は一人で勝手に生まれてくるわけではない。そこには、. 父親、母親など家族がいて、自分を育んでくれるものがいる。初めは受身的でも、その 中で、私達は自分の人生をだんだん自分のものとして主体的に生きることができるので あろう。しかし、源家族と濃密な関係であったりするあまり、自分の人生を自分のもの として捉えることが難しくなることもある。例えば、ライフイベントに限って言えば、 自分の希望する進路ではなく、親が希望する進路に進むなどである。.  そこで、中年期に立ち戻ってみると、中年期において獲得することが望ましいとされ る個人的権威(Williamson,D.S.,1991)は、自分の人生を主体的に生きることにつな. がると言われている。個人的権威は、源家族と自己分化しながらも親密な関係をもてる というものである。.  そこで、本研究では、中年期女性が、どのようなアイデンティティの危機を感じ、そ. 1.

(4) してどのようにそれを乗り越えていくのかについて概観し、中年期女性を対象として、. 重要な他者との自己分化が中年期危機、精神的健康とどのように関連するのかを検証し ていくこととする。.  また、中年期女性とその母親に焦点をあて、その関係がどのように変化するのか、そ して変化の中で、中年期女性は何を感じ、何を考えるのかということについて質的に研 究していきたいと思う。. 2.

(5) 第1章 先行研究の概観 第1節 中年期とは  第1節では、本研究が対象とするr中年期」について述べていきたい。まず本研究で の中年期の定義をし、その中年期がライフサイクルの中でどのような意味をもつのかを. 述べる。加えて、中年期の変化として、どのような心と体の変化があるのか、ライフサ イクルの中で中年期に期待される発達課題について述べていく。. (1)ライフサイクルにおける中年期の定義.  中年期は、成人中年期と同等と考えられるが、成人期自体もどう定義するかは、難し い問題である。年齢的には成人と認められても、行動において大人とはいえない人々も. 社会には大勢見られる。従って、年齢基準だけで成人期を区分することは、困難な面も 多い。Levinson(1978)は、社会生活への適庵の仕方や社会学的な必要行動の観点から、. 成人期の各段階を区分している(図1−1)。Levinson(1978)は、図1−1に示したよう. に、男性のライフサイクルにおいて、成人期には40∼45歳の人生中間の移行期と60∼. 65歳の成人期後期移行期という2つの大きな転換期が存在するとしている。また、 Levinson(1996)によると、女性にも、男性のライフサイクルとほぼ同様の発達プロセス. が見出された。また、図1−2の既婚女性のライフサイクルのモデル(井上・江原,1999). を見てみると、40代は、末子が中学に入学し、子どもに手のかからなくなっていく時期. である。また、60代は、夫の定年退職や、子どもとの同居生活を始めるなど、生活に変. 化の起こる時期である。そこで、本研究では、40から65歳を中年期とし、その心理的 側面を見ていくことにする。. (2)ライフサイクルにおける中年期の意味.  一昔前までは、人問の一生は、成長一最盛一老化という一つの大きな山のイメージで. 捉えられてきた。しかしながら、人生80年時代を迎えた今日では、人生は2っの大き な山をもつと考えられる。すなわち、青年期から中年期までが第一の山であり、向老期 から現役引退後へ向けての第二の山が存在している。中年期はその第一の山のピークで. あるとともに、第二の山への移行期にあるという2つの重要な意味を持っている。  また、Jung(1931)は、人間の一生を太陽の変化にたとえ、中年期を「人生の正午」と 呼び、太陽が頭上を通過するときとみなした。『人問の頭上を太陽が通過するときに起こ. る変化は、わずかなものかもしれないが、そこには決定的な変化がある。つまり人間の. 影が、今までとは逆の方向に映し出されるのである。ここにおいて、我々が午前中に抱 いていた理想や価値のすべてが逆転し、それ以降は、それまで抱いていたのとは違った 価値観に沿って、自分自身を作り上げていかねばならないのである』(Jung,1931)と述べ. 3.

(6) ている。このプロセスをユングは、「個性化のプロセス」と呼んだ。「人生の午前」であ. る人生前半期の人間の発達が、職業を得、社会に根づくこと、配偶者を選択し、子ども. をもうけ、自分の家庭を築くことなど、対外的な自己確立に方向付けられているのに対 して、人生の午後における発達は、そのためにこれまで抑圧してきた内なる欲求や自分 自身の本来の姿を見出し、それを実現していくことによって達成されていくのである。. (3)中年期に見られる諸変化.  このように中年期はライフサイクルにおいて大きな転換期であるとする見方が注目さ. れてきた。実際、中年期は、生物学的にも、社会的、心理的にも、また家族発達の側面 から見ても、変化の多い時期である。身体的には体力の衰えを感じ始め、職業的には自. 分の能力や地位の拡大に限界が見え始める時期であり、さらにまた、若い頃に設定した 自分の「人生の夢」とその達成度について、改めて問い直される時でもある。多くの家 庭では、子どもたちは青年期に達し、自立しようとしている。夫婦関係について言えば、. 子の巣立ちに伴って、父親役割、母親役割を通してではなく、夫、妻としての関わりが 必要になってくる。.  中年期はストレスの多い危機的な時期であることを示唆した医学的、心理学的研究は 多く、中年期は、極めて多様な精神障害が多発する年代として注目されてきた。「例えば、. 30代後半から40代半ばにかけて、神経症の発症率はピークを迎え(Rosenberg&F&rre11, 1976)、アルコール依存症で入院する者は、45歳∼57歳が最も多い(Moon&Palton,1963)。. 医学的に見れば、心身症や心気症的訴えは、中年期に急増し(Blumentha1,1959)、胃潰. 瘍の発症率は40代が最高であり、過剰緊張や心臓発作もまた、中年期に急増している (Rosenberg&Farre11,1976)」(岡本,1995)。.  それに加え、女性には50歳前後には、「更年期」といわれる時期がある。更年期とは、. 閉経という生理的な変化に対する心理的適応の過程が進む期間のことをさすが、その生 理的変化に伴う心身の不調は、しばしば更年期障害と呼ばれる。閉経の時期にっいては、. ほぼ40代後半から50代前半のどこかの年齢で閉経する人がほとんどで、その平均年齢 は51歳である。この時期、多くの女性は自律神経系の症状をあらわす。易刺激的状態、. 特に血管循環系の症状、気分の変動、めまい、苛立ちなどがみられる。これらは内分泌 系の不均衡によるものであるが、これに対する心理的、ひいては心身症的な反応は、多 少とも退行した情緒状態に陥りやすいといわれている(小此木,1998)。.  中年期の家族の発達的危機は、子どもの成長・自立にともなって引き起こされること が多い(岡本,2002a)。その代表例として、子どもの自立への動きに伴う母親役割の喪 失などが問題となる「空の巣症候群」があげられる。「空の巣症候群」とは、子の巣立ち、. 特に、子ども全員が家を離れることが母親にとって喪失感や抑うっ感を伴った深刻な危. 機となることを指している。中年女性が直面するこのような危機は、有職女性よりも専. 4.

(7) 業主婦の方が大きいといわれている。深沢(1979)は、中高年女性の心理と病理を分析 して、有職女性よりも専業主婦の方が、「自分に対する評価」を脅かされ、不安に陥りや. すいことを指摘し、その理由として、一つに「主婦であること」に対する評価が曖昧で あること、二っめに専業主婦の多くに見られる「他者を通じて生きる」態度をあげてい る。. (4) 中年期の発達課題.  中年期において発達の上で課題とされることは、研究者によってさまざまな見解があ る。中年の危機を論じた最初期の研究者であるJung(1931〉は、太陽を人間的な感情と意. 識をもつものとして比喩的に論じ、40歳前後を人生の後半に至る転換期としての重要性 があると説き、「人生の正午」と呼んだ。先述の通り、太陽は正午の絶頂に達したときか. ら下降が始まり、午後には自身の光を回収するかのように甥っていくが、人も青年期に. 外に向けていたエネルギーを自身に回収し、内面に光を当てなければならない。このと. き「午前のすべての価値と理想の転倒」に見舞われて矛盾に陥る、という。Jungによ れば、このような人生の後半にさしかかる時期の危機的な変化は無意識に起源をもち、. 意識と無意識を含んだこころ全体の統合に向かうこと(個性化Individuation)によっ て克服されていかねばならない。このような意識と無意識、特に集合的無意識がぶっか り合う中で、それを統合していくという、二っの心理的契機の相剋が人生のある時期に. 極期に達した後に変容していくのが人問の精神の自然史的なり行きであるという見方は 今日、中年期を考える際のほぼ基本的パラダイムとなっている(松浪・熊崎,2001)。  また、Jung,C.G.(1951)によれば、人間は本来、両性具有的な存在であり、中年期以. 降はそれまで潜在していた方の性の特性が顕在化する、つまり男性はより女性的な側面. が現れ、女性はより男性的な側面が表面化する。Jungのこの考えによるならば、女性 においては、男性機能、あるいはアニムスの統合が必要となると考えることができる。  Levinson(1978)は、中年期の課題として、①若さと老い、②破壊と創造、③男らしさ. と女らしさ、④愛着と分離という対極的なものの解決をあげている。これらは、相対立   ウ. する概念のように見えて、実は人間の一生を通じて心の中に共存しているものである。. 人生半ばの峠に立ったとき、この対極的なもののどちらもが体験され、意味を増してき て、心の中で拮抗するという。  また、Erikson,E.H.(1982)は人生の各時期に固有の葛藤を危機として提示したが、中. 年成人前期では親密性対孤立、成人中期では世代性対自己陶酔、成人後期では統合性対 絶望が発達課題となる。.  飯田・佐藤(1988)は、これまでの中年期に関する諸研究によって明らかにされた発 達課題、あるいは精神療法におけるテーマを文献的考察や臨床経験を基礎に中年の変動 期を次の3つの発達課題の中に捉えている。一つ目が、「社会的役割の変換」、二っ目は. 5.

(8) 「発達早期に由来する心理的葛藤の解決」、三つ目は「自らの限界と死の受容」である。. 二つ目の課題について言及すると、中年期には、口唇期的依存欲求やエディプス・コン プレックスを、乳幼児期や青年期までとは質的に異なったレベルで扱うことが求められ る。青年期の危機は発達早期に由来する心理的葛藤の外面的解決をめぐるものであるの. に対し、中年期の危機はその内面的解決に重心が移動する点において基本的な相違があ る。. 第2節 中年期におけるアイデンティティの危機.  第2節では、中年期においてアイデンティティがどのような危機に遭遇し、それをど のように乗り越えていくのかについて述べていきたい。特に本研究では重要な他者との 自己分化と中年期危機との関連を見ていくことを目的とするため、アイデンティティを 再体制化する上での関係性について重点をおいて述べたいと思う。. (1)中年期に体験される心の変化.  中年期は生涯にわたってっづく心の禿達プロセスの中で、自己のあり方が、根底から 問い直される転換期であるといえる。中年期にどのような心の変化を体験するのか、岡 本(1985)に沿って述べていきたい。.  岡本(1985)は、40代に体験された変化として報告されたものをまとめ、中年期の 否定的変化は以下の4つの側面に顕著に現れていると述べている。.  1)身体感覚の変化  中年期の否定的変化を最も如実に認識させるのは、体力の衰えである。自分の身体に 関する感覚や感情は、自己イメージを形成する大きな要であり、身体イメージはアイデ ンティティの感覚とも深く関連している。体力・気力の低下など身体感覚の変化は、ア イデンティティの基盤を脅かし、再認識させるものである。.  2)時問的展望のせばまりと逆転.  中年期に体験される否定的変化の第2の特徴は、将来に対する時間的展望に関するも のである。「残り時間が少ないという限界感の深まり」や「何かをやり始めるにはもう遅 すぎる」という感覚は、時問的展望のせばまりを表している。また、近親者や友人の死、. 中でも父親の死は、自分の寿命を意識する大きなきっかけとなり、多くの人々は、親の 死によって「自分があとどれだけ生きられるか」と、自分に残された寿命を考える。こ. れらは、今まで生きてきた年齢ではなく、これから生きられる年数の方がより重要にな り、死の側から自分の年齢を考えるようになったことを意味している。これは、「時間的 展望の逆転」という現象である。.  3)生産性における限界感の認識.  第3の否定的変化は、仕事における限界感の認識である。中年期にある職業人にとっ. 6.

(9) て、体力の衰えと時間的展望のせばまりによる自己の限界感を最も痛切に感じるのは、. 自分がどこまで業績を上げられるか、定年退職までにどこまで出世できるか、という職 業や仕事においてである場合が多い。また限界感の認識による焦りに加えて、停滞感も 現れる。.  4)老いと死の不安.  第4の特徴は、老いと死の不安である。40代を過ぎると、自分が老いていくことや、 死へ近づきつつあることへの関心や不安は高まり、老いと死は現実味をもって感じられ るようになる。. (2)アイデンティティの揺らぎとしての中年期危機.  このような自己に対する否定的変化や否定的な自己意識は30代までは、ほとんど体 験されなかったものである。人は、自分の生命、人生に与えられたよく働ける時間、体 力、能力などは無限ではないことは、頭で理解しているつもりでも、30代まではなかな かそれを身をもって実感することはむずかしい。しかしながら、中年期の入り口におい て体験されるこのような変化は、そのことを痛切に思い知らしめる。それはいわば自己. の有限性の自覚である。中年期の入り口において体験されるこのような否定的な自己意. 識は私たちに、自分の人生はこれでよかったのか、本当に自分がやりたいことは何なの かという自己の生き方、あり方そのものについての内省と問い直しを迫るものである。. それは今までのアイデンティティではもはや自分を支えきれないという自覚であり、ア イデンティティそのものの危機である(岡本,2002b)。.  岡本(1997)は中年期のアイデンティティの揺らぎと再達成として、図1−3にあげ るモデルを提示している。このモデルは「これまでのアイデンティティの揺らぎ・崩壊 (アイデンティティ拡散)→自分の生き方の見直し・将来の生き方の模索(モラトリア. ム)→軌道修正・軌道転換により、再び主体的に関与できる生き方の獲得(アイデンテ ィティ達成)」という、アイデンティティの揺らぎと再達成のプロセスとして理解するこ. とができる。中年期の人々がみんなこのプロセスの最後である、アイデンティティ達成. に到達できるかと言えばそうではなく、中年期のさまざまな心身の変化を体験して、不. 安定な状態にとどまっている人や、これまでの自分の生き方やこれから人生後半期の将 来展望にっいて納得できないまま、その自己探求を放棄してしまった人も少なからず見 られる。また自己内外のさまざまな変化にも関わらず、このアイデンティティの危機が. 認知されない人もある。このような人にとっては、体力の衰えや子どもの巣立ちなどの さまざまな出来事が自己を問い直す契機ならず、自己のあり方とは切り離されてやり過. ごされてしまう。このような人にとっては、自己探求は行われないか、ごく浅いレベル で終わってしまう。いかに深く自己の内的危機を認知するかということが、心の発達に とって重要であると考えられる(岡本,2002b)。. 7.

(10) (3) アイデンティティ再体制化における二面性  近年、西欧の男性的自我の発達を念頭においた分離一個体化、自律性を発達の指標と. する従来の人間発達観のみでなく、人とのつながりや相互協調性、配慮やケアといった. 関係性の視点からの心の発達を捉えようとする発達観が注目されている。最近のアイデ ンティティ研究においても、アイデンティティの発達を、これまで強調されてきた個体. 化の次元のみでなく、関係性の文脈から捉えなおそうとする試みが増加している。全人 格的な発達を捉える上で、関係性という視点が大いに貢献することは言うまでもない。.  岡本(1997)は、表1−1に示すように、成人期のアイデンティティ発達には、「個と してのアイデンティティ」の確立・深化のみでなく、「関係性にもとづくアイデンティテ ィ」の発達の2つの軸、および両者のバランスのとれた統合が重要であると考えている。. 第1の軸は、個としてのアイデンティティの発達である。これは、「自分とは何者である. か」「自分は何になっていくのか」という個の自立・確立が中心的テーマである。第2の. 軸である、関係性にもとづくアイデンティティの発達の中心的テーマは、「自分は誰のた めに存在するのか」「自分は誰の役に立っのか」という問題である。個としてのアイデン. ティティと関係性にもとづくアイデンティティは相互に影響を及ぼし合い、深い関連性 を持っている。例えば、他者の成長や自己実現への援助ができるためには、個としての. アイデンティティが達成されていることが前提であろうし、反対に、他者を世話する営. みを通して養われる生活や人生のさまざまな局面に対応できるカ、自我の柔軟性やしな やかさの獲得などは、他者への深い関心や関与を通じて得られた、個としてのアイデン ティティの成熟性といえる。. (4) 関係性の変容から捉えるアイデンティティ.  以上のように、個と関係性の2っの側面は、生涯にわたって同等の価値をもち、両者 の相互作用の中でアイデンティティは発達していくと考えられる。さらに両者は、男女 を問わず、アイデンティティの発達にとって不可欠の側面である。しかしながら、アイ デンティティの「現れ方」(杉村,1999)や、成熟したアイデンティティの様態をどう. とらえるかという問題にっいては、現在のところ、さまざまな見解の相違がある。例え ば、Josselson,R.L.(1992,1994)や杉村(1999)は、個としてのアイデンティティは、. 関係性の中に包含され、関係性の中から現れると捉えている。杉村(1999)は「アイデ ンティティ形成をするきっかけは、両親・友人・恋人といった他者との関係性の中にあ り、このような関係性は、アイデンティティを形成するための不可欠な“土壌”として. 存在する」と述べている。それに対して、前述のとおり、岡本(1997,1999)は、「個. としてのアイデンティティ」と「関係性にもとづくアイデンティティjのバランスと統 合が、成人期のアイデンティティの成熟した様態であるというスタンスに立っている。. 8.

(11) 見解の相違はあるものの、ライフサイクルを通した「関係性」そのものの発達・変容プ ロセスを検討することは、有益であろう。.  永田(2003)は、40代一60代の既婚男女に半構造化面接を行い、重要な他者との関 係性の再体制化プロセスを分析している。その結果、成人期の関係性の様態には、再体. 制化完了型、現状満足型、否認・軽視型の3タイプが見出され、最も成熟した関係性様 態である再体制化完了型は、重要な他者との関係における転機(危機)を契機に、自分 自身の在り方を主体的に問い直し、積極的にその解決に取り組んでいることが示唆され た(岡本,2004)。.  また、永田(2002)は、40代一60代の既婚男女に半構造化面接を行い、幼児期・児 童期、思春期・青年期、成人中期のそれぞれのライフステージにおいて有した複数の重 要な他者との関係の重要度について肯定的、中立的、両価的、否定的で評定している。. その結果、否定的関係から否定的関係への連続は認められず、関係性が変化するという. 可能性が示唆された。一方で、肯定的関係から、肯定的関係への移行、両価的関係から. 両価的関係への移行も多く認められ、関係性の連続性も示唆された。しかし、関係の連. 続性については、ライフサイクルにわたり肯定的な関係が維持されるのは、肯定的な関. 係を有しているから後の発達段階においても肯定的な関係を有する、という単純な図式 ではなく、肯定的な関係の構築には、重要な他者との関係における葛藤への取組みや、. 他者からの自分自身への影響の意識化が大きく関係していることが示唆されている。. 第3節 自己分化と親子関係  第3節では、本研究で用いる自己分化の定義を行い、中年期において自己分化はどの ような意義を持つのかにっいて述べる。そして、特に中年期女性とその両親との関係に ついて見ていきたい。. (1)自己分化の定義と中年期における自己分化の意義  Bowen,M。(1976)は、個人が家族システムの中で他の家族メンバーの感情や思考や 不安に巻き込まれず、自分自身のポジションを確立することを自己分化(dif琵rentiation ofself)と呼んで重視した。また、Bowen,M.人間は情緒システム(emotionalsystem)と. 知性システム(intellectual system)から成り立っていると考え、自己分化とは、この2. つのシステムがどの程度分化して機能しているか、それとも融合して機能していないか を表す概念であるとも述べている。自己分化度(1evel of dif館rentiation of se10が高い、. すなわち、情緒システムと知性システムが分化しており、その両方を機能的に使うこと. ができる人の場合、ストレス状況や葛藤状態や不安にあっても、適切に対処できる可能. 性が高く、症状や問題を呈する可能性が低い。また、自己分化度が低い、すなわち、両 システムが未分化で融合しており十分に機能しない場合、情緒システムに支配されやす. 9.

(12) く、ストレス状況や葛藤状態や不安に対して脆弱で、何らかの心身の症状や問題を呈す. る可能性が高く、さらに安定した2者関係を築くことが難しいと言われている。このよ うに自己分化という概念は、個人の心身の症状や行動上の問題を理解する上で重要であ るだけでなく、家族との関係性の問題を理解する上でも非常に重要な概念である。  また、エリクソンの世代性の概念を踏まえつっ、Willi&mson,D.S.(1991)は、老年期の. 親との関係の変化に焦点を当て、世代間の階層的境界(intergenerationalhierarchic&1. boundary)、すなわち、親に保護される、世話してもらうという一種の上下関係を終結. させ、人間として対等な仲間としての関係を築き、家族システムにおける個人的権威 (Persona1Authorityinthe Family System)を獲得することがこの段階の課題である と述べている。個人的権威の獲得とは、生まれ育った源家族からの自己分化を達成し、. 同時に親密な関係を築くことである。そして、自分の人生は誰のものでもない自分自身 のものであり、自分の責任で生きていくという強い確信を持っことでもある。しかし、. 源家族からの自己分化と親密性の間には、様々なパラドキシカルなジレンマが横たわっ. ている(野末,1996)。例えば、両親の愛情関係が自己の存在の源であることとその重. 要性を認めながら、両親間の葛藤や問題に巻き込まれ三角関係化(trangulation)に陥 らないで、両親夫婦の関係には両親自身で責任を持ってもらうことができるかなどのさ. まざまなジレンマがある。それを生き抜き、個人的権威を獲得することによって、自分 自身は親とは全く違う存在であり、個性をもった一人の人間であるという主体的な感覚 を強く持つのと同時に、両親や源家族に対する愛着や思いやりや配慮を示すこともでき. る。また自分は自分の家族を築き大切にしていくが、同時に源家族の一員でもあるとい う所属感ももてるのである。. (2)親子関係の変遷と中年期における親子関係.  ライフサイクルにおける親子の愛着・親密性と分離・分化の問題は、これまで乳幼児 期と青年期の二つに焦点が当てられてきた。乳幼児期には、母親と一体化していた世界 から抜け、自分が母親とは異なる存在であることを発見し、父親を含めた三者関係を形 成することになる。この段階では、物理的にも心理的情緒的にも、子どもの親に対する. 依存は非常に強く、親子の関係は一種の上下の階層関係になっている。そして、子ども が両親に対して愛着を持てることが重要な課題となる。.  ところが青年期になると、子どもは家族外の人間や社会との交流が中心となり、親と は違う価値観や生活態度を身につけ、親とは違う自分の側面を強調し、時には一時的に. 親を否定したり価値を下げたりすることもある。そして、物理的にも親から離れ、心理 的情緒的な依存は相対的に小さなものとなり、自立の方向に歩み出していく。また親と の関係も上下関係というのではなく、大人対大人のある程度対等な関係に変化していく。.  そうした親子関係がその後もずっと変わらずに続いていくわけではなく、成人してか 10.

(13) らも、親との関係で様々な葛藤や問題を抱える可能性はある(野末,1996)。特に、成 人期から中年期にさしかかる頃になると親の老年期と重なり、親を物理的に世話したり、. 心理的情緒的にサポートするような変化が始まり、世代間の役割交代が起こってくる。. この成人期から中年期の段階が、ライフサイクルにおいて親子関係が変化する第三のタ ーニングポイントである。.  また、成人期から中年期は、自分自身に子どもができ、親として子どもを育てること が重要な課題となる。そして自分が親の立場になり子育てに取り組んでいく中で始めて、. 子どもとしての目からだけでなく、親としての目を通して幼い頃からの自分と親との関. 係を見つめなおすことにもなる。さらに、自分が生まれ成長してくる中で起こった出来 事やそれに対する親の思いを聞いたり、親自身の幼い頃からの源家族や親族との関係や その中での葛藤や悩みや痛み、そして、親の人生における様々な出来事とその個人的な. 意味について話し合い分かち合うことが非常に大きな意味を持っ。そうすることで、そ れまで知らなかった親の一面を新たに発見することになる。そして、精神内界の親イメ. ージが修正され、親に対する理解や見方が変わったり、ある体験や出来事に対する意味 づけが変わったり、親を許す気持や感謝する気持が出てき、現実との親との関係も変わ りうるのである。.  また、親に対する見方は、親という役割やそれに対する期待や幻想と照らし合わせた 子どもの見方であって、親を親としてしか見られない面がある。しかし、親子でこうし た話合いと分かち合いを通して、親という役割の背後にある一人の人間としての弱さや 痛みや苦しみや悲しみ、あるいは生きていく中で背負ってきたものの重み、人間として の強さや優しさあたたかさに触れることができる。それは、親としての親との別れであ り、子どもとしての自己との別れでもある。また一人の人間としての親を再発見しそれ を受容することであり、親を一人の男性・女性としてみることでもある。  また、中年期になれば、年老いた親が病気などによって介護を必要とするようになる。. 子どもとしてその世話をすることは、誰にとっても辛く悲しいことであり、心理的身体 的にストレスフルなことである。しかし、Rabin,C.,Bressler,Y,&Prager,:E.(1993)によ. ると、個人的権威を獲得できていない人ほど、そうした親の世話に対して強い心理的負. 担を感じる。その要因としては、自分が心理的に子どもであるために、親が老いっつあ りいずれは永遠の別れがやってくるという現実を受け入れがたく、できれば目を背けた. いという気持が強くあるということと、あるいは、まだ憎しみや恨みが未解決であるの に、一方で親の世話もしなければならないという、非常に強烈な葛藤を抱えているとい うことが考えられる。.  親子関係の発達として落合(1995)の研究に触れておく。落合は、親子関係を切り口. として心理的離乳に至る過程を分析し、心理的離乳への5段階過程仮説を提出した。親. 子間の心理的距離の大きさの変化に注目して、親子関係を5段階に分けたものである。 11.

(14) この5段階の親子関係は、子どもの成長とともに順に変化していくと考えられている。. 表1−2に示す。1段階が「抱え込む親との関係」、2段階が「守る親との関係」、3段階 が「成長を念じる親との関係」、4段階が「手を切る親との関係」、5段階が「対等な親 子関係」である。これらは落合・佐藤(1996)によって実証的に研究された。それによ ると中学生と大学生・大学院生とでは親子関係は対照的であり、質的な転換が見られた。. つまり、中学生では上述の2段階目までの関係が多いのに対し、大学生・大学院生では 5段階が多く、親が対等に子どもと接し、時には頼ることもあるという関係になってい た。しかし、対象者は中学生から大学院生までであり、成人期以降、5段階から新たな 発達を遂げるであろうことが示唆されたものの、推測の域を出ていない。. (3)母親、父親が娘に与える影響.  第2節では、アイデンティティには個と関係性という二つの側面があると述べてきた。. 福島(1993)によれば、女性は特に発達において、他者との関係性が重要であり、結婚 や出産といったさまざまな出来事によって自己の再構築を求められることになるが、こ の女性の自己形成において特に重要となってくるのが、“関係性”の再体制化である。特. に、女性の場合は、親子の結びつきが幼少期はもちろんのこと青年期以降も維持され、. アイデンティティ発達や心理的適応において、その関係が様々な機能を果たすことが分 かっている。例えば、女性は親との信頼関係を軸にして自己の確立に至る傾向がある(福. 島,1992)、娘は常に母親の視点との対比で自己の視点を捉え、相互調整を続ける (Josselson,1996)、母親と成人の娘の肯定的な関係が母娘双方の適応状態のよさと関. 連している(Umberson,1989,1992)といった実証的知見が得られている。  女性に限って、幼少期からの親子関係の変化を見ていく。Chodrow,N.(1978)は、「女. 児の場合は、母親への依存、愛着、共生の上に父親へのエディプス的愛情が加わる」と. 述べている。そのため、女児の母親からの分離は、男児よりも困難で、母親との結合状 態と同一視は長く続くと考えられる。したがって娘は、家族の情緒的側面や養育的側面 を担っている母親の存在や気持を、乳幼児期から非常に強く取り込むことになる。また、. 母親も外にエネルギーが向かう活動的な息子よりも、自分のそばに置きやすい同性の娘 とのかかわりの方が深くなりやすいものと考えられる。.  男性は「外的世界に向かって、重要な対象を捜す準備ができている」(Chodrow,1978). が、女子は家族以外の対象に向かう前に、「家族関係の中で関わり合いに直面しなければ. ならない。母親との同一視や連続感は女の子を安心させるが、これは母親から離れてア ンビヴァレントな依存的・前エディプス的調子を帯びた関係を打破しようとする女子の 欲求との間に葛藤を引き起こす」(Chodrow,1978)。したがって、青年期における母親. からの分離は、女子の方が男子よりも葛藤が強いために難しく、その解決は容易ではな. い。そのため、その葛藤を経ないまま、就職や結婚などしても母親と濃密な関係を維持 12.

(15) している双子親子といった存在も見受けられる。.  このように、母親からの自立が、アンビヴァレントな感情を抱くゆえに難しい娘にと って、父親がその存在を示し自立を援助することは、青年期の娘に対して重要な役割を. 果たす。上地(1981)も「母親から機能的に自立しようとする自信や、母親とは違う独 自の考えがもてるようになるほど、自己肯定、自己主張、独立が可能になるし、自立に. 関して父親と葛藤が少ない関係が、母親からの自立を支えるものとして重要」と述べて いる。.  (4)青年期における親子関係とアイデンティティ.  浴野(1993)の大学生を対象とした研究によると、男子の場合、アイデンティティ達 成度が高いものは、父親との意識レベルでの同一視が強かった。しかし、母親との同一. 視とは関連がみられなかった。女子の場合、アイデンティティ達成が高いものは、父親 と母親の両者との同一視が強いという結果が得られた。現在の女性は職業志向性が強く、. 職業人である父親への同一視を行い、社会的視野や生き方を取り入れようという姿勢が うかがわれる。また、家庭人となったときの女性モデルとして、母親との同一視は重要. な意味をもってくるのであろう。この時期の同一視というのは、過去のものであり、内 在化されたイメージでもある。.  また、春目(2000)は、父娘関係と、自我同一性との関連にっいての先行研究をまと. め、以下の2点が、女子青年の自我同一性に関連することとして述べている。一っは、 自我同一性や従来男性性や男性役割と言われてきた積極的な態度は、父親と同一視する ことで獲得される、2っ目に、女子の自我同一性形成の過程には、父親からの愛情供給・. 援助が重要な役割を果たしているのではないかということをあげている。. (4)臨床例からみる中年期女性  重宗(2004)は、中年期女性3人との面接を通して、共通して見られることとして、そ. れぞれが青年期に抱えていた未解決だった問題が、棚卸されてくることをあげている。. 中年期に至るまで、子育てやキャリアを積むことに多忙な中で直面せずに済ませてきた. 親との葛藤が露呈してくると述べている。また、幸(1986)は、中年期女性4人との面 接調査を行い、4人が夫婦関係における葛藤を主訴としているが、しかし、各事例の内 界を探ってみると、葛藤の背後には各自の親との関係の問題が潜んでいることを見出し ている。そして、発達の過程で個人の内面に作り上げられた内なる親イメージが、個人 の自我に影響を与えていると述べている。村嶋(2000)は、基本的な安心感の乏しさを、. 身体性を排除した知的防衛の強い生き方で抑圧し、自己の不全感を感じ続けてきたクラ. イエントとの面接過程を報告している。クライエントは、流産を契機に、知性優位の生 き方を問い直さざるをえなくなり、来談に至った。クライエントには、早期母子関係に. おける心の病理、のみこまれる不安があったが、クライエントが排除してきた情緒的な 13.

(16) 揺れを自分の中に感じながらセラピストが同行することで、情緒的に傷っきやすいとこ ろ、身体的に欠けていたところを受け入れるようになり、現実の母親を受け入れること ができるようになった。. 14.

(17) 第H章 中年期女性の自己分化とアイデンテイティ、精神的健康との関連に ついての実証的研究(研究1) 第1節 目的.  第1章で述べてきたように、中年期危機はアイデンティティの危機と考えられ、ライ フステージの中で、アイデンティティを問い直すことの必要性に迫られる時期であると. 考えられる。人生80年といわれるようになった今目、青年期に獲得したアイデンティ ティで人生を歩むことは難しい。人生の折り返し地点と言われる中年期においてアイデ ンティティの問い直しは、人生を豊かに生きていく上で重要である。すなわち、アイデ ンティティの危機そのものは、臨床的にみても何ら問題のないことである。しかし、そ. のアイデンティティの危機をうまく乗り切ることができず、アイデンティティ拡散の状 態になってしまえば、精神的健康に影響が及び、何らかの症状を呈する可能性もある。.  このアイデンティティの危機をうまく乗り越え、より適応的なアイデンティティを再 構築していける人と、アイデンティティの危機を乗り切ることができず、精神的健康が 低下する人がいる。その両者の違いは何なのかについて考えていきたい。それを考える 上での視座として、自己分化という概念を用いたいと考えた。.  Marcia(1966)が提唱したアイデンティティ・ステイタスによると、より発達段階の進. んだアイデンティティ・ステイタスは意志決定までの主体的な模索期間である危機 (crisis)を経験し、そして選択された対象へ自己投入(commitment)している。つま. り、アイデンティティが拡散状態にならないためには、主体的に危機を経験し、そして. その危機に対して自己投入していることが重要となる。自己分化という概念は主体的に. 意志決定する、主体的に自分の人生と向き合うという土壌がどれだけあるかを測るもの であると考える。自己分化とは、先に述べたとおり、親密性とならんで個人的権威を獲. 得するために不可欠なものであり、個人的権威の獲得は中年期において重要な役割を果 たす。自己分化は、自分の人生を誰のものでもない、自分のものとして生きるのに必要 なものである。.  また、第1章第2節で述べてきたように、女性にとって特にアイデンティティの再体 制化には、「個としてのアイデンティティ」のみならず、「関係性にもとづくアイデンテ. ィティ」の確立・深化が必要であり、その二っは互いに影響を及ぼしながら再体制化さ. れると考えられている。杉村(1999)は、他者との関係が、その時期のアイデンティテ ィの再構成に様々な影響を及ぼすといい、その他者として、両親、夫、子どもをあげて いる。.  そこで、第H章では、中年期女性において、中年期危機の程度と身近な重要な他者、 ここでは実の両親、配偶者、子どもとの自己分化の程度が関連するのかについて検討し. たい。また関連があれば、誰との自己分化の度合いが中年期危機に影響を与えるのかに 15.

(18) ついて検討したい。. 第2節 方法 (1)調査対象者および手続き.  調査対象者は、中年期(40∼65歳)の女性である。筆者の友人、知人、その母親を対. 象とした。調査時期は、2005年9月上旬から10月上旬であった。質問紙の配布は、筆 者による直接配布、また筆者が依頼した友人、知人を通じて配布した。無記名とし、質 問紙は封筒に入れてもらうようにし、プライバシーに配慮した。.  回収した質問紙のうち、回答に不備が見られたもの、対象年齢に該当しなかったもの. は削除し、最終的に150部を本研究のサンプルとして分析の対象とすることにした。回 収率は95%であり、有効回答率は89%であった。.  年齢の内訳、結婚年数、子どもの有無などの調査対象の属性を表2−1に示す。. (2)質問紙の内容  質問紙には以下の5つの尺度を用いた。 1)精神的健康を測る項目.  Goldberg(1970)が作成し中川・大坊(1985)が邦訳した、GHQ(General Health Questionn&ire)の短縮版30項目版を使用した。本尺度は、神経症症状、うっ症状、そ の他を正確に把握、評価することができ、神経症の病態変化に鋭敏に対応した得点変化 を示し、病的状態にあっては高いスコアを、精神健康状態にあっては低いスコアを示す ように考案されており、長時間持続する性格傾向や将来病気になると不安になっている 患者の不安定度は、反映されない工夫が加えられている(中川,1985)。これらの質問項. 目に対する回答はその程度に応じ、4段階のうち1つを回答するようになっている。 2)中年の危機状態を測る項目.  精神病院で神経症と診断された40代から50代の患者のカルテから長尾(1990)が作成 した尺度を、串崎(2005)が改訂した中年期の危機状態尺度(改訂版)21項目を用いた。串. 崎(2005)は長尾(1990)が作成した42項目から成る尺度を統合・整理し、21項目を分析. の対象としている。本研究ではその21項目を用いることとした。.  この尺度は、将来に対する焦り、過去を否定し新しい生き方を望む態度、自他の死や 将来の有限性に対する不安、自信のなさや空虚感に関する項目からなる。採点方法とし ては、あてはまらない(1点)∼あてはまる(5点)の5段階で評定し、得点が高い方が中年 期の危機状態が高くなるように構成されている。. 3)アイデンティティ・ステイタスを測る項目  加藤(1983)によって開発された、アイデンティティ・ステイタス判定尺度(Identity statusscale)12項目を使用した。 16.

(19)  Marcia(1966)は、意志決定までの主体的な模索期間である危機(crisis)を経験した かどうかと、選択された対象へ自己投入(commitment)しているかどうかによってアイデ. ンティティを捉えるアイデンティティ・ステイタスを作った。これはアイデンティティ. の発達過程を段階的に理解する際に有用である。そこで、この方法を質問紙化した加藤 (1983)のアイデンティティ・ステイタス判定尺度12項目を使用した。この尺度は、人 生に関する決断を主体的に下してきたかどうかについてたずねる「過去の危機」、現在何 か目標を持って打ち込んでいるものがあるかどうかをたずねる「現在の自己投入」、これ. から先の人生において打ち込めるものを積極的に探しているかどうかをたずねる「将来 の自己投入の希求」の3つの下位尺度(各4項目)から構成されている。それらについて 6件法(まったくあてはまらない=1点∼まったくそのとおり=6点)で得点化し、図4・1. にあてはまる各ステイタスに分類する。その分類はMarciaの定義に従って、「過去の危 機」とr現在の自己投入」が共に高得点であればr同一性達成(A)」、r現在の自己投入」 は高得点だが「過去の危機」が低得点であれば、「権威受容(F)」、「現在の自己投入」. が低得点で「将来の自己投入の希求」高得点なら「積極的モラトリアム(M)」、「現在の 自己投入」と「将来の自己投入の希求」が共に低得点であると「同一性拡散(D)」に分. 類される。また「同一性達成(A〉」と「権威受容(F)」との間に「A−F中間」、「積極. 的モラトリアム(M)jとr同一性拡散(D)」との間にrD−M中間」という中間地位 がそれぞれ設けられている。M&rcia(1966,1980)によるアイデンティティ・ステイタス. の特徴を表2−2に、本尺度により判定される6つのアイデンティティ・ステイタスに. ついては表2−3に示す。  本尺度は、加藤(1983)においては、対象は主として大学生程度とされているが、清水 (2004)が、41歳から60歳の女性に適用し、妥当性が認められている。. 4)既婚者の実父、実母、配偶者、子どもとの自己分化の度合いを測る項目  既婚者用自己分化インベントリー(mf£erentiation of Self Inventory)(平木・岸・野. 末・安藤,1998)70項目を使用した。.  平木ら(1998)により尺度の下位因子として、6因子が抽出され、それぞれ第1因子「母. 親との自律的親密さ」、第2因子「父親との自律的親密さ」、第3因子「カップル間の自. 律的親密さ」、第4因子「世代間の融合」、第5因子「両親との三角関係化」、第6因子 「情緒的遮断」であった。また第3因子「カップル問の自律的親密さ」の中にカップル. に関すること、子どもに関連することの2っのまとまりが見出されたため、今後分析に おいて、便宜上第3因子を「カップル間の自律的親密さ(カップル)」と、「カップル間の 自律的親密さ(子ども)」として用いることとする。同様に第4因子「世代問の融合」に. おいても、母親に関すること、父親に関すること、子どもに関することの3つのまとま りが見出されたため、便宜上第4因子をそれぞれ、「世代間の融合(母親)」、「世代間の融. 合(父親)」、「世代間の融合(子ども)」として用いることとする。表2−4に6因子とそれ 17.

(20) ぞれの質問文にっいて示す。.  以下に下位概念を平木ら(1998)を参考にして述べる。. 「自律的親密性」:自他の境界を持ちっっも、他者に近づくことができる対人関係能力で. ある。自他の境界が曖昧な融合や、反対に堅固な境界を持ち、他者と近づけない孤立と は異なる。. 「融合」は知性システムと情緒システムが未分化で、自他の境界が曖昧であり、対人関 係の中で他者に巻き込まれたり、あるいは他者を巻き込んだりすることである。 「両親との三角関係化」:両親夫婦の不安定な二者関係に子どもが巻き込まれ、三角関係. を形成することで、両親夫婦間の葛藤やストレスを軽減することである。 「情緒的遮断」:源家族への未解決な愛着や依存を抱えた融合的な関係の反動として、極. 端に源家族から距離をとったり、関係を疎遠にしたり、関わらないようにして、葛藤を 回避することである。.  得点化については、全くそうではない(1点)∼非常にそうだ(6点)の6件法で行い、. 得点が高い方が自己分化が高いことを示すようにした。. 5)自尊感情を測る項目  Rosenberg(1965)が作成し山本・松井・山成(1982)が邦訳した、自尊感情尺度(Self−. Esteem Sc&1e)を使用した。本尺度は、自己への感情的評価の測定尺度であり、10項目 から構成されている。.  自尊感情とは、自尊、自己受容などを含め、人が自分自身にっいてどのように感じて いるか、その感じ方のことであり、自己の価値と能力に関する感覚および感情である。  Rosenberg(1965)は、自尊感情について、他者と比較することによって優越感や劣等. 感を感じることなく、自分自身で自己に対する尊重や価値を評定する程度であると考え ている。そして、自尊感情には、自分にっいて「非常によい」と考えることと、自分に. ついてrこれでよい」と考えることの2つの意味があるが、後者のrこれでよい」と感 じる程度が自尊感情の高さを示しているとした。自尊感情はさまざまな社会的・心理的. 適応との関連も深く、重要な内的側面の1っであるいえる(山本ら,1982)。また、梶 田(1988)は、「自尊心は、心理的な土台として不可欠なものであり、これを十分もたない. ままで生きていくことは困難である」と述べている。.  この尺度は、構成概念妥当性、内容的妥当性も高く、尺度の一次元性は保証されてい る(山本ら,1982)。得点化は5件法を用い、得点が高い方が自尊感情が高くなるように 構成されている。. 6)調査対象者の属性を尋ねる項目  年齢、配偶者の有無、子どもの有無と人数、職業、職業以外の社会的活動(ボランティ. アやサークルなど)の有無、現在同居している家族、現在の実父、実母の状態、などを記 載する項目を設けた。 18.

(21) 巻末に質問紙を付す。. 第3節 結果. (1)尺度および項目の検討. 1)GHQ30について  GHQ30の総得点の平均値は7.58、標準偏差は6.01となった。 2)中年期の危機状態尺度について (a)因子分析と信頼性の検討.  全21項目に対して、因子分析(主因子法・varimax回転)を行ったところ、固有値 が1以上になる因子が4因子抽出された。いずれの因子負荷量が0.4未満であるもの、 因子負荷量のうち、最大のものと、他の因子負荷量との差が0.05未満の項目を削除する. こととした。その結果、項目4、12、14、17が削除された。因子分析の結果を表2− 5に示す。累積寄与率は38.2%であった。.  続いて、信頼性の検討をするため、クロンバックのα係数を求めたところ、αニ0.80 となり、十分な内的整合性が認められた。下位因子に関しても、第1因子αニ0。72、第2. 因子α=0.68、第3因子α=0.59、第4因子αニ0.58となり、ある程度の内的整合性が認 められたといえる。 (b)因子の命名.  抽出された第1因子は、5項目からなっており、「自分の死や配偶者の死にっいて考え る」、「私の人生は死に向かって突き進んでいるような気がする」など、死という人生の. 終わりについて考えたり、「後どれくらい生きられるか考えて将来の計画を立てるように. なった」など、時問的展望が、現在から未来に向かうのではなく、未来から現在に向か っており、時間的展望の逆転を表すものに負荷が高く、「時間的展望の狭まりと逆転」と 命名した。.  第2因子は、5項目からなっており、「親が亡くなることを考えると耐え切れない気 持になる」、「配偶者に先立たれるかもしれないと思うと辛い気持ちになる」、「今、私が. 突然死んだら、遣り残したことが多くて悔いが強く残るだろう」など、親や配偶者など の死、自分の死に関する不安を表しているので、「死に対する不安」と命名した。.  第3因子は、4項目からなっており、「これまでの生活や人生に満足しているので、こ れからもこのまま歩き続けたい(逆転項目)」、「これからも今までの生き方を変わらず続. けたい(逆転項目)」など、これまでの生き方を変えたい、今までの人生に満足していな いことをあらわしているので、「これまでの人生の否定」と命名した。.  第4因子は、3項目からなっており、「何でも物事を始めるのがおっくうだ」など、新 しいことを始めることに限界を感じていることや、自分の体力などに限界を感じている ことを表している項目に負荷が高いので、「限界感」と命名した。 19.

(22) (c)各因子の尺度得点と、その合計の相関分析.  各因子の尺度得点と、4因子の尺度得点の合計(以下、総得点)の相関係数を、表2 −6に示す。総得点と、各因子の尺度得点間の相関係数は0.50∼0.81となり、強い正の. 相関を示され、1%有意であった。また各因子の尺度得点相互間の相関係数は0.13∼0.51 であった。. 3)アイデンティティ・ステイタス尺度にっいて.  加藤(1983)に沿って、6つのアイデンティティ・ステイタスに分類した結果を表2 −7に示す。70%の対象者がD−M中間地位に分類された。  また、加藤(1983)が想定した3つの下位因子「現在の自己投入」「過去の危機」「将来 の自己投入の希求」について、信頼性を検討するためにα係数を求めたところ、「現在の 自己投入」はα=0.75、「過去の危機」はαニ0.49、「将来の自己投入の希求」はα=0.45 であった。. 4)既婚者用自己分化インベントリーについて  平木ら(1998)に従い、6因子ごとに信頼性を検討した。第1因子「母親との自律的親 密さ」α=0.92、第2因子「父親との自律的親密さ」α=0.90、第3因子「カップル問の 自律的親密さ」α=0.95、第4因子「世代間の融合」α=0.71、第5因子「両親との三角. 関係化」α=0.80、第6因子「情緒的遮断」α=0.84であり、高い内的整合性が認められ た。. 5〉自尊感情尺度について.  全10項目に対して、因子分析(主因子法・varimax回転)を行ったところ、固有値 が因子1に大きく偏りを見せたため、1因子を採用した。さらに、因子負荷量が0.4以 上であることを基準とし、それ以下の因子負荷量を示す項目を削除した。その結果、項. 目6、項目8が削除された。因子分析の結果を表2−8に示す。累積寄与率は39.7%で あった。.  続いて、信頼性の検討をするため、8項目に対して、クロンバックのα係数を求めた ところ、αニ0.85となり、内的整合性が保たれていることが示された。  逆転項目を考慮し、8項目の項目ごとの得点の加算をもって、自尊感情の得点とした。. (2)年齢と中年期の危機状態尺度との関連.  調査対象者の年齢の幅は25歳と大きいと考えられ、年齢と中年期の危機状態との相 関分析を行った。その結果、年齢と中年期の危機状態には有意な相関は見られなかった。. その結果を表2−9に示す。年齢と中年期の危機状態尺度の散布図を図2−1に示す。. 中年期の危機状態尺度の下位因子と年齢の散布図を図2−2∼2−5に示す。それを見 ると、調査対象者は40∼65歳と年齢に幅があったが、年齢と中年期の危機状態に関連 は認められないことが分かった。. 20.

(23) (3)実父と実母の現在の状態と、自己分化インベントリーの下位因子との関連.  実父と実母の現在の状態(健康に暮らしている・軽い病気を患っている・重篤な病気 を患っている・病気で他界した・事故で他界した)と自己分化の下位因子である、「母親 との自律的親密さ」と「父親との自律的親密さ」、「世代間の融合(母親)」、「世代問の融. 合(父親)」との関連を調べた。実母の現在の状態を独立変数、「母親との自律的親密さ」 を従属変数として1要因分散分析を行ったところ有意差はなかった(F【5,137】=1.06)。. 実母の現在の状態を独立変数、「世代間の融合(母親)」を従属変数として1要因分 散分析を行ったところ、有意差は認められなかった(F【5,137】=0.57)。実父の現在. の状態を独立変数、「父親との自律的親密さ」を従属変数として1要因分散分析を行 ったところ、有意差は認められなかった(F【4,1301=0.94)。実父の現在の状態を独. 立変数、「世代問の融合(父親)」を従属変数として1要因の分散分析を行ったとこ ろ、有意差は認められなかった(F[4,1301ニ1.22)。.  以上より、現在の実父と実母の状態によって、父や母との自己分化は変化しない ことが分かった。. (4)中年期の危機状態尺度とGHQ30、自尊感情尺度との関連.  中年期の危機状態尺度の総得点とその下位因子にっいて、GHQ30と自尊感情尺度 との相関分析を行った。その結果、中年期の危機状態尺度の総得点とその下位因子. とGHQ30は強い正の相関が認められた。中年期の危機状態尺度の総得点とその下 位因子と自尊感情とは強い負の相関が認められた。いずれも1%水準で有意であった。. その結果を表2−10に示す。  以上より、より深刻な危機状態にある人は精神的健康度が低く、より深刻な危機 状態にある人は自尊感情が低いことが分かった。. (5)自己分化インベントリーの下位因子間の相関分析.  自己分化インベントリーの下位因子で相関分析を行った。その結果を表2−11に 示す。その結果、「母親との自律的親密さ」と「世代間の融合(母親)」歯はやや強い. 負の相関にあり、母親との自律的親密さが高いほど、母親との世代間の融合も高い という結果になった。一方、「父親との自律的親密さ」と「世代間の融合(父親)」*. は弱い負の相関にあり、有意ではなかった。これより、父親との自律的親密さと父 親との世代問の融合は関連していないことが分かった。.  また、「カップル問の自律的親密さ」は「母親との自律的親密さ」とやや強い正の 相関をもち、「父親との自律的親密さ」とは相関関係が認められなかった。「母親と. の自律的親密さ」と「父親との自律的親密さ」には強い正の相関が見られた。 21.

(24)  「カップル間の自律的親密さ」は「情緒的遮断」*と弱い正の相関関係にあった。. また「カップル問の自律的親密さ(子ども)」と「両親との三角関係化」*はやや強 い相関関係にあった。.  「世代問の融合(子ども)」*は「世代間の融合(母親)」禽とは正の相関関係にあ ったが、「世代間の融合(父親)」歯とは関連がみられなかった。 需を付記した因子は、その得点が高いほど、尺度得点が高い方が、その傾向が少ないということを示す。例えば、. 「世代問の融合」であれば、世代間の融合をしていない方が「世代間の融合」の尺度得点が高くなる。. (6)子どもの年齢とカップル間の自律的親密さ(子ども)との関連  子どもの年齢は、2歳から41歳とかなりの幅があり、子どもの年齢が「カップル間の 自律的親密さ(子ども)」に影響を及ぼしているのではないかと考えた。長子の年齢と「カ. ップル間の自律的親密さ(子ども)」の相関分析を行った。その結果、相関係数r=0.090. となり、相関関係は認められなかった。次に、子どもの末子の年齢と「カップル間の自 律的親密さ(子ども)」の相関分析を行った。その結果、相関係数はr=一〇.090となり、. 相関関係は認められなかった。.  また子どもの年齢と「世代間の融合(子ども)」の関連を調べるために、長子の年齢 とr世代間の融合(子ども)」の相関分析を行ったところ、r=0.090であり、相関関係 は認められなかった。末子の年齢と「世代閲の融合(子ども)」の相関分析を行ったが、 r=0.077となり、相関関係は認められなかった。. (7)自己分化インベントリーと中年期の危機状態尺度との関連  自己分化インベントリーの下位因子の平均値を算出し、平均値より高い群を高群、. 平均値より低い群を低群とした。各下位因子の高群、低群を独立変数として、中年 期の危機状態尺度の総得点を従属変数としてt検定を行った。.  その結果、第1因子「母親との自律的親密さ」を独立変数としたとき、有意差は 認められなかった(tニ0.56,d僧139)。第2因子「父親との自律的親密さ」を独立変数 としたとき、有意差が認められた(t=3.35,df』131,pく0.01)。第3因子の更に下位に. 設けられた「カップル問の自律的親密さ(カップル)」を独立変数としたとき、有意 差が認められた(t=1.02,df』131,p<0.05)。第3因子の下位に設けられた「カップル. 問の自律的親密さ(子ども)」を独立変数としたとき、有意差が認められた(t=3.52,. df』131,pく0.01)。第4因子「世代間の融合」を独立変数としたとき、有意差が認め られた(tニ5.59,d.f=117,p<0.01)。第4因子の更に下位に設けられた「世代間の融合 (母親)」を独立変数としたとき、有意差が認められた(t=3.84,df=139,pく0.01)。第. 4因子の更に下位に設けられた「世代間の融合(父親)」を独立変数としたとき、有 意差が認められた(t=4.51,df』132,p<0.01)。第4因子の更に下位に設けられた「世 22.

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