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Plasmalogen乳化液の静脈内注入による組織内分布について 利用統計を見る

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(1)

札幌同誌  0〔3),104〜106(1956)

Plasmalogen乳化液の静脈内注入に

     よる組織内分布について

     笠 問 将 栄

札幌医科大学生化学教室 (主任 大野教授〉

On th e Plasmalogen Distribution Following lntravenous          Injection of lts Emulsion

       By

      MAsAyosHI KAsAMA

  DepuaTtment o.f Biochemisto y, Sappuoro Univers it?y of Medticine        (Chief二Prof. K. OHNo)

 The author investigated the distribution into several tissues following in七ravenous injection of emulsified plasmalogen and obtained the following results.

 In brain and liver, a remarkable increase of plasmalogen eontent was reeognized.

 In spleen, kidney, lung, heart, stomaeh and musele a slight increase was reeognized.

 But in intes七ine no change of plasmalogn content was seen.

 From the above results it was revealed that plasmalogen, when injected, is distributed throughout va−

rious tissues with七he exception of the intestine. The studies failed to reveal a particular tissue with a specific affinity to plasmalogen in eomparison with the speci fic uptake of phospholipids (lecithin and eep−

halin) as seen jn ]iver.

 既に燐脂質(Lecithin, Cephalin)の乳化液の注入後にお ける体内の分布に関して(Pasternak&Pagei),その他2)・

3)の突験があり,著者も先に脳より分離せる燐脂質を用い て各組織について詳細に検討を行なった。

 しかしながら,燐指質の一つであるが体内における正常 の分布において1・ecithinと異にしており,その生機的意 義も.Leeithinと異なっていると考えられるplasmalogen 似下P1と記す)についてはいまだ何等の究明も行なわれ ていない。著者は生体内のPlの代謝及び脂質代謝におい てP1のもつ意義の究明を行なう可く実験を行なっている が,既にその一環として,種々の測定法を詳細に検討して 方法を確立し,また微量定量法を考案し,その方法を用い てPl乳化液の注射後の血中の変動を追求しているが,今 回は更に注射せられたPlが体内各組織に如何なる分布を 示すかを究明する 可く実験を行なった。

 正常時においては,Plは肝には少なく,脳,神経に多い ことが知られているが,注入された時には生体内において 如何なる運命を辿るか,即ち含量の多い組織に特に集中的 に分布するか,或は各組織に一様な分布を示すかを究明

し,更には増加したPlが分解して正常値に戻るに要する 時聞1約経過を追求した。しかしてこれらの実験より得た成 績によりPlの生機約意義の解明を行なわんとした。その

104

結果を報告する。

実験動物並びに方法

 動物は白鼠(150〜200g)を用い,股静}脈にPl乳化液4 cc(生理的食塩水に て1.5%とした)を注射し,3,10,22時 間及び44時間後に殺して,組織を手早く秤量後100倍量 の95%E七一〇Hにて抽出(50℃)しそれぞれの抽出液につい てFeulgenの新1/U t)でPlの測定を行なった。

 抽出液の適当量を試験管にとり滅圧乾澗後,永酢酸1cc を加えて30秒5σ℃に加温し完全に試料を溶解する。次い で2N HCI 1 cc加えて50T℃で2分間水解する。室温に冷 却後2.2N NaOH l cc添加し,〕更にSehiffの試薬10 cc加 えて1時問室温に放置発色せしめた後,稀釈液(Sehiffの 試薬よりフクシンのみを除いた液)20cc加え,更にiso−

amylalcohol 10 cc加えて充分振盈し,アミルアルコール 層を比色定量する。かくして得られたplasma1量を1.8倍

してPl量を算出する。

         実験成績

注射後3,10,22,44時間に測定した各組織内Pl含量は それぞれ第1表に.示される。

 3時間においては肝,脾,脳,肺,Il軽,心,筋,胃の順

(2)

10巻3号 笠間一一Plasmalogenの組織内分布 105

第1表 Plasmalogen注入後の各時間における組織内plasmalogen含量の変動       (A)

時聞

(hrs.)

 bT(対照)

 3 10 22 44

V山

組蟹量IPI総量

..!g)一 ,

1.74 1.76 1.44 1.58 1.41

(坦9}

9.4

13.3 11.9 12.6 7.6

PIIrk/100g組織

.T .r .(.m g. ..).

540.1 756 0 828.0 800.0 542.1

組織重量

 (湿)

 (g).L

9.38 9.02 7.16 8.06 8.23

PI総量

(mg)

2.30 4.68 5.58 3.86 2.10

Pl量/100g組織

(rng>

24.5 51.8 77.6 48.0 25.5

組織重量

 (湿)

 工9L

1.67 工11 1.25 1.11 1.68

Pl総量 Pl量/100g組織

(mg) 1 (mg)

1.80 1.89 2.12 1.60 1,80

107.5 170.1 169.2 144.0 109.0

(B)

 o

(対照)

 3  10

22 44

1.20 1.47 工.12

1.24 1.55

2.00 3.78 2.46 2.68 2.50

166.0 257.1 219.6 216.0 160.0

O.76 0.86 0.59 0.65 0.91

1.24 1.85 1.25 1.44 1.41

162.0 212.4 221.4 221.5 155.0

(C)

O.39 0,23 0.36 0.21 0.45

O.50 0,63 0.99 0.62 0.61  t一一

126.5 273.6 275.0 297.0−

129.6

 o

(対照)

 3 10 22 44

80.1 92.2 103.5 90.0 78.4

1.35 1.30 1.25

111

1.20

にそれぞれ増量を来しており腸には何等の変化も認められ

ない。

 即ち脳では総湿13.3mg, mg%では756 mg%で正常値 の1.5回忌増量を示し,肝では総置4πmg及び51.8 mg%

脾では0.63mg,及び273 mg%で正常値の2倍の増量を 来す。更に腎では総:旦1.89mg及び170 mg%,また肺 は総丑3.78及び257.1 mg%,心では総量1.85 mg, 及び 212.4mg%筋では93.2 mg%でそれぞれ正常値の1.5倍量 の増加を来している。また胃は総量1.25mg及び96.1mg

%で軽度の増加を示す。

 しかし,腸では正常値と何等変らず,これらの組織には 注入せられたplasmalog6nの認めうる蓄積はないようで

ある。

 更に10時間後においても脳は総;量12mg及び828mg%

で増量が認められ,肝でも総量5.6mg及び77.6 mg%で

1.11 1.25 1.80 1.50

101

82.0 96.1 144.0 117.0 85.0

3.22 3.43 1.82 1.11 3.05

2.10 1.88 1.06 0.91 1.90

65.5 54.9 58.5 60.7 62.5

 なお著明な増加が認められる。脾もまた総量1.Omg及び  280 mg%と増加を示す。また腎.肺,心もなお,それぞれ

総量2.1,2.46,1.25mg及び169.O,219.6 mg%となお著明  な増加を示す。、更に軽度ながら胃では総量1.8mg,及び  144mg%,また筋は103 mg%と対照に比し増加が認めら  れる。

 ,腸では変化が認められない。

x

  22時間後においては前記の増加を示した組織では10時  間値より総量,mg%ともにやや低いが何れもなお増加が  認められる。

  腸では変化が認められない。

  44時聞値は各組織ともに正常値に復している。

  以上の成績は注射によって体内に導入せられたPlは脳,

肝,腎,脾,肺,心,胃,筋の各組織に程度の差はあるが  分布する。ただ腸のみは量的の変化は全く認められない。

(3)

106 笠間一Plasmalogenの組織内分布 札幌医誌1956

 先に著者は燐脂質注射後の各組織を分析した結果,肝に 注入した燐脂質の大半が分布はするがしかし他の組織にも それぞれ分布することを認めた、

 今回は脳神経系に多く存し生機的意義もレシチンとは異 なるであろうと考えられているplasmalogenを注射した 場合にこれら注入Plが体内に如何に分布するか,レシチ

ンと異なる分布を示すか或はまた,同様の分布を示すか,

また更には体内に導入せられたPlの運命について検索す べく実験を行なった。注射後のPlの血液中濃度の変化に ついては既に発表したが,血中濃度の変化とPlを摂取し た組織内のPl濃度の変化の相関関係も追求すべく注射後 の3,10,22,44時聞後に各組織のPl量を分析した。

 実験成績は前述の如き結果が得られた。即ち3時間後の 脳,肝,腎,肺,心,脾,筋,胃,腸の分析値は腸以外の 各組織に程度の差こそあるが何れも明かに増量しているこ とを示している。しかし燐脂質注射の際の肝の如く注射Pl の特に集中分布した組織はないが,増量の著明な組織は脳,

肝であった。

 また3時聞後の体内の増加量は注入したPl量のほぼ1/5 であるが,血中Pl量はなお17 mg%の値を示す。(全血量 を体重の1/13とするとほぼ15ce,血漿は7ccでそのPl 全量は約12日目存することになり注射量の1/5である)従 ってこの閥に注入されたPlのほぼ3/5が分解されたこと になる。

 更に10時間値は脳,肝,肺,心,腎,脾,筋,及び胃は 未だ何れも増量を示しているが,腸は変化を示さない。し かして増量は3時聞における量より低く,そのほぼ2/3を 示す。従ってこの閻に更に分解が進行しているがその速度 は急速に減じていることが知られる。この間の血中濃度 の変化を見るに組織の変化と並行し面面な阻隔を示してい

る。

 22時間値においては上述の増加を示した各組織にそれ ぞれなお増量が認められるがその程度は10時聞値に比較 すると小であった。従ってこの間に更にPlの分解が行な われるがその速度は更に緩除になる。血中P1濃度の変化 も注射後短時間の闇の減少度に比して10時間以後は極め て緩徐な減少を示しており組織の変化と同様な傾向を示

す。

 44時間後には血L中Pl濃度は正常値に復するが,この際

の組織含量も全く正常値を示す。

 かくの如く,注入Plは脳,肝,腎,肺,心,脾,筋及 び胃には明かに分布する。しかし腸では全々変化ない。し かして分解は注射後短時間に急速に行なわれ(3時間では 既に約60%が水解される〉以後は前々に滅配することが知

られて40時向後に全く増量が認められなくなる。

 燐脂質(Leci七hin及びCephalin>注射後の分解は主とし て肝で行なわれることが知られるが,これら注入されたPl の分解はどの組織で行なわれるかは著者の得た結果ではレ シチン等の場合の如く判然としないが,恐らくは脳及び肝 が他の組織よりも多く摂取することより,このごつの組織 が注目される。しかし他の組織における分解も否定するも のでない。

 Pl乳化液を白鼠の股静脈に注射後の注入Plの組織の分 布を調べたところ次の如き 結果を得た。

 1.脳,肝に大きな増量が認められた。

 2.脾,腎,肺,心,胃及び筋にもそれぞれ増量が認め られなかった。

 3.腸には量的変化は認められなかった。

 即ち腸以外の脳,肝,脾,腎,肺,心,胃及び筋に注入 PIは分布することが明かとなった。しかしレシチン注射 時の肝の如く特異的に摂取する組織はPl注射時には認め

られなかった。

 更に注射後3,10,22時聞及び44時聞と時問をおいて組 織含量を測定した結果は,」血中PI濃度の変化と同様の変 化を示すことが知られた。即ち注射後短時間のうちに急速 に注入PIの分解がおこり(3時問後に約60%が分解され る)以後分解速度は除々となり40時聞後には全く正常値 に復する。しかして注入Plの分解は脳,肝に大であろう と推定されるが他の組織においても分解されうることは当 然考えられる。

       (昭和31.9.11受付)

1) Pasternak &. ?age: Biochem. Z, 252, 254(1932).

2) Heaven &. Bale: J. Biol. Chem. 129, 23(1929).

3)坂上:札幌甘酒5,224(1954).

4) Feulgen &. Grunberg: Z. physiol. Chem. 287, 2  (1951).

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