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目次 1. ベクトルに関する基本事項 ベクトルとスカラー 座標系とベクトルの成分表示 ベクトルの内積 ベクトルの外積 ベクトルの三重積 場の考え方と流束の概念 スカラー場とベクトル場 流束と流束密度

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I 編 ベクトル解析

・ 電磁気学の学習には、ベクトル解析の知識と場の考え方の理解が必須となる。 以下、本編では、電磁気学を学ぶ前に、ベクトルに関する基本事項を復習す る。また、スカラー場、ベクトル場の考え方に慣れる。 ・本編をまとめるにあたって、以下の文献を参考にした。 参考文献 宮島龍興訳 ファインマン物理学III 電磁気学 岩波書店 (1969). 砂川重信 電磁気学 岩波書店 (1977). 砂川重信 理論電磁気学(第3版) 紀伊国屋書店 (1999). 小出昭一郎編 電磁気学演習 裳華房 (1981). 今井功 電磁気学を考える サイエンス社(1990).

Harry Lass Vector and Tensor Analysis, McGraw-Hill, (1950). 安達忠次 ベクトルとテンソル 倍風館 (1957).

犬井鉄郎 偏微分方程式とその応用 コロナ社(1957). 小出昭一郎 物理と微積分 共立出版 (1981).

中村純 物理とテンソル 共立出版(1993) .

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目次 1.ベクトルに関する基本事項 …1 1.1 ベクトルとスカラー …1 1.2 座標系とベクトルの成分表示 …1 1.3 ベクトルの内積 …5 1.4 ベクトルの外積 …10 1.5 ベクトルの三重積 …15 2.場の考え方と流束の概念 …18 2.1 スカラー場とベクトル場 …18 2.2 流束と流束密度 …23 3.場の微分 …48 3.1 スカラー場の勾配 …48 3.2 ベクトル演算子 …57 3.3 ベクトルの発散 …59 3.4 ベクトルの回転 …77 3.5 勾配ベクトルの発散 …83 3.6 回転によって定義されるベクトルの発散 …85 3.7 まとめのQuiz …87 4.ベクトルの積分 …94 4.1 線積分 …94 4.2 面積分 …113 4.3 ガウスの定理 …122 4.4 ベクトル場の循環 …139 4.5 ストークスの定理 …146 4.6 渦なし場と湧き口無し場 …160 4.7 まとめのQuiz …162

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1.ベクトルに関する基本事項

1.1 ベクトルとスカラー

単に大きさのみが意味を持つ物理量をスカラー量と呼ぶ。これに対して、大 きさだけではなく向きを持っている物理量をベクトル量と呼ぶ。ベクトル量と スカラー量とを区別するために、ベクトル量に対しては、 A , JGA (1.1.1) などの表記を用いる。また、以下、ベクトルの大きさを A= A (1.1.2) で表すことにする。 問 これまで学んできた物理量の中から、スカラー量及びベクトル量の例をで きる限り多く挙げよ。

1.2 座標系とベクトルの成分表示

ここでは、主として3 次元直交座標系におけるベクトルを考える。 まず、図1.2.1に示した簡単な直角座標系を用いて、ベクトルに関する 基本事項、ベクトル解析を学ぶ上で重要となる概念や言葉の定義を行う。 (a) (b) 図1.2.1 3次元ユークリッド空間における直角座標系

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右手座標系 図1.2.1に示すような座標系を右手座標系あるいは単に右手系と呼ぶ。 右手系では、図1.2.1に示したように、x 軸を y 軸の方に回転するとき、右 ねじの進む方向をz 軸の正の方向にとる。 基本単位ベクトル 図1.2.1に示したx 軸、y 軸、z軸の正の方向に向かう大きさが1である 三つのベクトル、i, j, k を基本単位ベクトルと呼ぶ。 ベクトルの成分表示 上に定義した基本単位ベクトルを用いて、3 次元空間における任意のベクトル 量は、

A=Axi+Ayj+Azk (1.2.1)

と表される。このとき、AxAyAzを、各々、ベクトルの x 成分、y 成分、z 成 分と呼ぶ。このときベクトルA の大きさは、 2 2 2 x y z AA = A +A +A (1.2.2) 図1.2.2 ベクトルの成分表示 問 ベクトルA を、その大きさA 割ることによって得られる A A の意味を考えよ。

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位置ベクトル 空間の点P を考え、座標原点 O から点 P に向かうベクトル r=OPJJJG (1.2.3) を位置ベクトルと呼ぶ。点P の座標を(x, y ,z)とするとき、位置ベクトルは、 r=xi+yj+zk (1.2.4) と表すことができる。 図1.2.3 位置ベクトル 問1 3次元空間に点 P( , , )x y z が与えられたとき、点 P の位置ベクトルr の方 向を向く単位ベクトルは、 r r ただし、 r= r = x2+y2+z2 (1.2.5) で与えられることを確かめよ。 問2 3次元空間に点P ( , , )x y z が与えられたとき、原点 O と点 P を結ぶ直線の 方向を向き、大きさがA のベクトルは、次式で表現できることを確かめよ。 ( ) A r = r A 問3 3次元空間の点P ( , , )x y z において、ベクトル A が与えられている。その 方向は、点P の位置ベクトルの向き、その大きさは、原点から点 P までの距離 r の2乗に逆比例(A K r K const= / ,2 = .)するとき、ベクトルA を、 , rr 及び K を 用いて表現せよ。

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問4 空間の点P( , , )x y z 及び点 Q1 1 1 ( , , )x y z の位置ベクトルを、各々、 2 2 2 1 1 1 1 2 2 2 2 OP x y z OQ x y z = = + + = = + + r i j k r i j k JJJG JJJG (1.2.6) とするとき、次の問に答よ。 (1)点P から点 Q へ向かうベクトルは、次式で与えられることを確かめよ。 2 1 PQ= −r r JJJG (1.2.7) (2)2点間の距離は、次式で与えられることを確かめよ。 2 2 2 2 1 ( 2 1) ( 2 1) ( 2 1) PQ = r − =r xx + yy + zz JJJG (1.2.8) (3)点Q において、ベクトル A が与えられている。その方向は、ベクトル PQJJJG と同じ向き、大きさは、2点間の距離の2乗に逆比例する。比例定数をK とするとき、ベクトルA は、次式で与えられることを確かめよ。 2 1 2 1 2 1 2 1 2 2 2 2 3/ 2 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 ( ) ( ) ( ) ( ) [( ) ( ) ( ) ] x x y y z z K K x x y y z z − − + − + − = = − − + − + − − r r i j k A r r r r (1.2.9)

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1.3.ベクトルの内積

内積の定義 ベクトルの内積(スカラー積)は、以下の式で定義される。 cosθ ⋅ = A B A B (1.3.1) ここで、 AB は、各々、ベクトルA 及び B の大きさ、θ はベクトル A と B とのなす角である。 図1.3.1 ベクトルの内積 交換法則、分配法則 ベクトルの内積については、以下の交換法則及び結合法則が成り立つ。 ⋅ = ⋅ A B B A (交換法則) (1.3.2) ( ) ⋅ + = ⋅ + ⋅ A B C A B A C (分配法則) (1.3.3) 次節で定義するベクトルの外積については、交換法則は成立しない。

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内積に関する重要な性質 内積の定義から 2 2 ⋅ = = A A A A (1.3.4) 0 ⊥ → ⋅ = A B A B (1.3.5) 基本単位ベクトルについての内積 1 ⋅ = ⋅ = ⋅ = i i j j k k (1.3.6) 0 ⋅ = ⋅ = ⋅ = i j j k k i (1.3.7) ベクトルの成分による内積の表現 x y z A A A = + + A i j k (1.3.8) x y z B B B = + + B i j k (1.3.9) x x y y z z A B A B A B ⋅ = + + A B (1.3.10) (Ax Ay Az ) (Bx By Bz ) ⋅ = + + ⋅ + + A B i j k i j k ( ) ( ) ( ) x x x y x z A B A B A B = i i⋅ + i j⋅ + i k ⋅ ( ) ( ) ( ) y x y y y z A B A B A B + j i⋅ + j j⋅ + j k ⋅ ( ) ( ) ( ) z x z y z z A B A B A B + k i⋅ + k j⋅ + k k ⋅ 問1 次の二つベクトルについて、その内積を求めよ。 (1)A= + −3i ( 1)j+2 ,k B= −( 2)i+ −( 5)j+6k (2)A= + + −2 1i j ( 3) ,k B= + +5i j 2k 問2 次の二つベクトルについて、そのなす角θ の余弦(cosine)を求めよ。 (1)A i j B i = + , = (2)A i j k B i j= + + , = + + −( 1)k 問3 次の二つのベクトルは、互いに直交することを示せ。 4 ( 2) , 3 3 ( 6) = + − + = + + − A i j k B i j k 問4 ベクトルの成分表示を用いて、内積について交換法則、式(1.3.2)、分配法 則、式(1.3.3)が成り立つことを確かめよ。 問5 質点が力F=Fxi+Fyj+Fzk の作用のもとで、∆ = ∆ + ∆ + ∆r xi yj zk だけ変位 した。このとき、この力がした仕事∆W をベクトルの内積を用いて表せ。

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内積と有効成分の概念 ベクトルA の x 方向の成分は、 A と x 方向の単位ベクトル i との 内積を用いて、 x A = ⋅A i と表すことができる。 二つのベクトルA B がある。, 図1.3.2に示すように、ベ クトルA をベクトル B の方向の 成分とB に垂直な方向の成分の 二つ分けて考える。このとき、AB 方向の成分は、 (ベクトルA の B 方向成分)= Acosθ = Acosθ となる。これを、ベクトルA のベクトル B への投影(projection)と呼ぶ。これ は、A と B との内積を用いて簡単に A B B あるいは BA B と表現することができる。さらに、B B/ は、ベクトルB の方向の単位ベクトル であるから、 (ベクトルA の B 方向成分)=A e B BB e BB の方向の単位ベクトル と表すことができる。 上で定義したベクトルの投影は、ベクトル A が、B の方向に対してどれだけ の大きさを持ち得るかと言う意味を持つ。したがって、ベクトルA の B 方向へ の有効成分という言い方をすることもある。有効成分の概念は、非常に重要で あり、今後、しばしば用いる。 図1.3.2 ベクトルの投影

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問6 次の二つベクトルについて、ベクトルA の B に対する投影を求めよ。 (1)A i j= + +2 ,k B i j = + (2)A= + −2i j 2 ,k B=2k 問7 ベクトルA と B がある。このとき、A の B に垂直な方向の成分を表すベ クトルは、次式で表されることを説明せよ。 ( B) B − ⋅ A A e e ただし、eB = B B 問8 質点が図に示すような軌道を運動する。点P において質点に働く力を F と し、接線方向の単位ベクトルをt で表す。 (1)力F の接線方向の成分F をベクトルの内積を用いて表せ。 t (2)接線に垂直な方向の成分を表すベクトルF を求めよ。 n 問9 質点が図に示すような軌道を運動する。点P において質点に働く力を x y z F F F = + + F i j k とし、点 P の位置ベクトルをr= + +xi yj zk とする。このとき、 この力F に関して、その位置ベクトルの方向の成分が ( / ) ( / ) ( / ) x y z F x r +F y r +F z r ただし、r = x2+y2+z2 で与えられることを示せ。

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問10 屋根に置かれた太陽光パネルに、図(a)に示すように太陽光が入射して いる。図に示すように、太陽光線の方向を向き、その大きさが光の強度に比例 するようなベクトルをh とする。このとき、図(b)に示すようにベクトル h を屋根 に垂直な成分h と平行な成分n h に分けて考える。屋根の面に垂直な方向の単位t ベクトルをn で表すとき、h をn h と n の内積を用いて表せ。 (a) (b)

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1.4 ベクトルの外積

(1.3.1)で定義したベクトル A と B との“内積”(スカラー積)を A B と⋅ 表現した。これに対して、ベクトルの外積は、 ≡ × C A B (1.4.1) と表現する。ベクトルA と B との内積(スカラー積) ⋅A B の結果として得ら れる量は、スカラー量であった。外積 A B によって得られる量 C は、以下、× 定義するように、方向と大きさを持つベクトル量である。 外積の定義 図1.4.1に示した2つのベクトルA、B を考える。この2つのベクトルの 外積から得られる新らたなベクトル量C の大きさ及び方向は、以下、i)、ii)のよ うに定義される。 図1.4.1 i) C の方向 C の方向は、図1.4.1に示したように、2つのベクトル A、B がつくる平 面に垂直な方向で、かつ、ベクトルA をベクトル B に向かって回転するとき、 右ねじの進む方向とする。ただし、回転角θは、180°(πラジアン)より 小さい方をとる。

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ii)C の大きさ C の大きさは、図1.4.1に示したベクトル A、B によってつくられる平行 四辺形の面積で定義する。図1.4.2に示すように、ベクトルA、B によって つくられる平行四辺形の高さh は、A と B とのなす角をθとすると、h= Bsinθ である。一方、底辺の長さ L は、ベクトルの大きさL= A に等しい。したがっ て、A、B によってつくられる平行四辺形の面積S は、S =Lh= A Bsinθ で与え れる。これからベクトルC の大きさは sinθ ≡ C A B で与えられる。 図1.4.2 外積によって得られるベクトルCの大きさ このようにして定義されるベクトルC を A と B との外積(あるいは、ベクト ル積)と呼ぶ。外積は、上で述べたように、A B と表す。定義× i)、ii)からベク トルの外積は、ベクトルA、B の大きさ AB 及びA と B とのなす角θを用 いて sinθ = × = C A B A B I (1.4.2) と表すこともできる。ただし、上の式でI は、ベクトル A、B の両方に垂直な向 きの単位ベクトル(I =1)である。

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分配法則 ベクトルの外積については、次の分配法則が成り立つ。 ×( + )= × + × A B C A B A C (1.4.3) 基本単位ベクトルについての外積 × = × = × = i i j j k k 0 (1.4.4) × = i j k 、 j k i 、 × = k i j× = (1.4.5) ベクトルの成分による外積の表現 x y z A A A = + + A i j k x y z B B B = + + B i j k (A By z A Bz y) (A Bz x A Bx z) (A Bx y A By x) × = − + − + − A B i j k (1.4.6) (Ax Ay Az ) (Bx By Bz ) × = + + × + + A B i j k i j k ( ) ( ) ( ) ( ) x x x y x z x y x z A B A B A B A B A B = i i× + i j× + i k× → k+ −j ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) y x y y y z y x y z A B A B A B A B A B + j i× + j j× + j k× → − +k i ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) z x z y z z z x z y A B A B A B A B A B + k i× + k j× + k k× → j + −i (A By z A Bz y) (A Bz x A Bx z) (A Bx y A By x) = − i+ − j+ − k 外積の計算は、以下のように行列式を用いると、簡単に計算することができる。 x y z x y z A A A B B B × = i j k A B (1.4.7) y z z x x y z y x z y x A B A B A B A B A B A B = i+ j+ kijk (A By z A Bz y) (A Bz x A Bx z) (A Bx y A By x) = − i+ − j+ − k

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外積に関する重要な性質 外積の定義から // → × = A B A B 0 (1.4.8) × = A A 0 (1.4.9) × = − × A B B A (1.4.10) 内積については、交換法則が成り立つが、外積については交換法則は成立しな い。ベクトルB A の大きさは、ベクトルの× A B の大きさと等しいが、方向は× 逆向きになる。 問1 次の二つベクトルについて、その外積を求めよ。 (1)A= + −3i ( 1)j+2 ,k B= −( 2)i+ −( 5)j+6k (2)A= + + −2 1i j ( 3) ,k B= + +5i j 2k 問2 次の二つベクトルについて、そのなす角θ の正弦(sine)を求めよ。 (1)A i j B k= + , = (2)A i j k B i j= + + , = + + −( 1)k 問3 次の二つのベクトルの両方に垂直な方向の単位ベクトルを求めよ。 3 ( 1) 2 , ( 2) ( 5) 6 = + − + = − + − + A i j k B i j k 問4 屋根に設置された太陽光パネルについて、図の各辺のベクトルが、 2 , 3 = − + = A i k B j で与えられえるとき、次の問いに答よ。 (1)太陽光パネルの面積を求めよ。 (2)この太陽光パネルの面に垂直で、かつ、屋内を向く単位ベクトルを求め よ、

z

y

x

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問5 図のように粒子が円運動している。このとき、図の点 P における円の接 線方向のベクトル(図のθ が増える向きを向く)を、この点の位置ベクトルr と z 方向の単位ベクトル k を用いて表せ。 問6 等速円運動する粒子の速度ベクトルvの方向は、円軌道上の各点で、円の 接線方向を向く。ここで、角速度ベクトルωを次のように定義する。 方向:粒子の回転方向にねじを回すとき、右ねじが進む方向。 大きさ:単位時間あたりの回転角ω(=dθ / )dt 。 (例えば、回転方向が問5のような場合、ωkとなる。回転の速さは同じで、 向きが、問5とは反対であれば、ω=ω(−k となる)) この円軌道上の点P ( , , )x y z における粒子の速度ベクトルは = × v ω r となることを確かめよ。ただし、r は点 P の位置ベクトルである。 問7 問6では、円運動の速度ベクトルが角速度ベクトルと位置ベクトルの外 積によって表現できることを示した。今まで、学んできた物理学や工学の中で、 他にベクトルの外積を用いて表現することのできる物理量をできるだけたくさ ん挙げてみよ。 問8 A=

(

A A Ax, y, z

)

B=

(

B B Bx, y, z

)

C=

(

C C Cx, y, z

)

とする。このとき、外 積について、式(1.4.3)の分配法則が成り立つことを、式の右辺、左辺を、各々、 計算し、比較することにより確かめよ。

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1.5 ベクトルの三重積

1.5.1 スカラー三重積 ベクトルA とベクトルB C× との内積 ( ) ⋅ × A B C (1.5.1) を考える。式(1.5.1)の演算の結果得られる量は、スカラー量であり、式(1.5.1)を スカラー三重積と呼ぶことがある。 スカラー三重積は、幾何学的には図1.5.1に示すように、ベクトルA、B 及びC によって囲まれる平行六面体の体積に等しい。 図1.5.1 このことは、以下のようにして確かめることができる。 外積の定義から sinθ S ≡ × = = S B C B C I ISS = B Csinθ (1.5.2) 先に外積の定義の項で述べたように、ベクトルS の大きさS は、B、C のつくる 平行四辺形の面積、また、I は、この平行四辺形がつくる面に垂直な方向の単位 ベクトルである。これと、内積の定義から

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cosα Sh ⋅ = = A S A Sh= A cosα (1.5.3) ただし、αはA と S とのなす角であり、従って、図1.5.1からわかるよう に、Acosα は、平行六面体の高さに等しい。以上から、スカラー三重積は、図 5.1の平行六面体の体積V に等しく、 ( ) Sh V ⋅ × = = A B C (1.5.4) であることがわかる。 上の幾何学的説明から明らかなように、スカラー三重積について、 ( ) ( ) V ⋅ × = × ⋅ = A B C A B C (1.5.5) が成立することが容易にわかる。 問1 次の三つのベクトルに対して次の問に答よ。 5 , 5 , 2 5 = + = − + = + + A i j B i j C i j k (1)三つのベクトルで囲まれる平行六面体を図示せよ。 (2)ベクトルA、B がつくる平行四辺形の面積を求めよ。 (3)(2)の平行四辺形を底面とし、さらに、ベクトルC が囲む平行六面体の 高さを求めよ。 (4)(2)、(3)の結果からこの平行六面体の体積を求めよ。 (5)(A B C を計算し、(4)の結果と比較せよ。× )⋅ 1.5.2 ベクトル三重積 以下の式(1.5.6)で定義されるベクトルの三重積、 ( ) × × A B C (1.5.6) は応用上重要であり、電磁気学でもしばしば現れる。式(1.5.6)で定義される三重 積は、ベクトル量であり、上のスカラー三重積と区別して、ベクトル三重積と 呼ばれる。 ベクトル三重積は、次のように変形することができる。 ( ) ( ) ( ) × × = ⋅ − ⋅ A B C A C B A B C (1.5.7)

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外積の順序を入れ替えた次のベクトル三重積(A B× )×C の値は、 (A B× )× =C (A C B⋅ ) −(B C A⋅ ) (1.5.8) となり、 ( ) ( ) × × ≠ × × A B C A B C (1.5.9) であることに注意する必要がある。 問1 式(1.5.7)が成立することを次の手順で確かめよ。 x y z A A A = + + A i j k 、B=Bxi+Byj+Bzk 、C=Cxi+Cyj+Czk とする。 (1)P B ×C= を求めよ。 (2)Q = A × P を求めよ。 (3)Q に

(

A B Cx x xA B Cx x x

)

i+

(

A B Cy y yA B Cy y y

)

j+

(

A B Cz z zA B Cz z z

)

k 0 を加= え、αijk の形にまとめよ。 (4)(3)よりQ=(A C B⋅ ) −(A B C を導け。(各成分ごとに計算するとよい) ⋅ ) 問2 三つのベクトルE B v の間に、次の関係が成立するとき、, , + × = E v B 0, ただし、vB0は、零ベクトル ベクトル三重積の公式を用いて、次式が成立することを確かめよ。 2 B × = E B v ヒ ン ト : E v B 0+ × = の 両 辺 に B を 外 積 す る 。 こ の と き 、B 0 0× = か ら ( ) × − × = B E v B 0 となる。

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2.場の考え方と流束の概念

2.1 スカラー場とベクトル場

例えば、今、我々がいる部屋の温度T を考える。部屋の温度は、一般に場所に よって異なる。冬であればストーブの近くでは暖かく、離れたところでは寒い。 部屋の温度は、空間の各点( , , )x y z によって異なり、分布 ( , , ) T x y z を持っている。このように、物理量が空間の各点ごとに決まり、空間分布を持 っているものを場と呼ぶ。 温度は方向を持たないスカラー量であり、温度場はスカラー場の典型的な例 である。より一般に、考えているスカラー量をϕで表すことにする。ϕが、空間 位置ごとに定まり、空間分布している場合をスカラー場と呼ぶ。すなわち、ス カラー場は、空間の座標の関数として、 ( , , )x y z ϕ と表すことができる。 物理量がベクトルの場合でも、同様に、空間の各点ごとにベクトルが ( , , )x y z A のように定まり、空間にベクトルが分布しているような場合、ベクトル場と呼 ぶ。 定常場と非定常場 上の例では、スカラー量、ベクトル量が時間に依存しない場合を考えた。こ のような時間に依存しない場のことを、定常場と呼ぶ。先ほどの部屋の温度場 の例では、ストーブをつけた後、十分時間がたてば、温度分布は時間に依存せ ず定常的な分布となる。しかし、ストーブをつけた直後では、部屋の温度分布 は時々刻々変化していく。このように、物理量が空間座標だけではなく、時刻t にも依存し、 ( , , , )x y z t ϕ 、A( , , , )x y z t と表されるような場合を、非定常場と呼ぶことがある。 問1 スカラー場の例をできる限りたくさん挙げよ。 問2 ベクトル場の例をできる限りたくさん挙げよ。

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ベクトル場の例 電磁場 この授業の本題である電場、磁場も、方向と大きさを持つベクトル量であり、 ベクトル場の典型的な例である。 流れ場 もっとも身近なベクトル場の例として、流れ場が考えられる。例えば、TV の 天気予報で見られる風速v( , , )x y z は、日本各地の空気の流速を表すベクトル場で ある。天候が時事刻々変化する場合、風速の場は場所のみではなく時間にも依 存する非定常場v( , , , )x y z t と考えることができる。さらに、海流なども大きなス ケールでの流れ場の例である。 (a) (b) 図2.1.1 流れ場の例 (a)日本各地における風速の場、 (b)太平洋の海流の場

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ミクロなスケールで考えると、血管中の血流速度もベクトル場の例である。 血管の断面で考えると、血管壁の近傍では流速は遅く、中心付近に向かって流 速は、速くなる。 図2.1.2 血管中の血流 我々が今まで、力学で扱った質点の運動では、質点の位置( , , )x y z は時間の従 属変数であり、質点の位置は、時間の関数として、( ( ), ( ), ( ))x t y t z t で与えられ た。すなわち、質点の運動では、位置( , , )x y z は特定の軌道を表していた。 上の流れ場の例でわかるように、流れの速度を“場”としてみるとき、位置 ( , , )x y z と時間 t は独立変数である。すなわち、位置 ( , , )x y z はあくまでも時間t とは独立に空間の点を指定するもので、質点の運動の場合のように、特定の軌 道上の点を意味するものではない。場の考え方では、空間全体にわたって速度 “場”が与えられており、時刻t とは独立に位置 ( , , )x y z を指定でき、そして、そ の位置で速度vがどうなっているかを問題にする。日常的な言い方をすると、流 れの速度を、空間全体にわたるパターンとして認識する考え方と理解できる。 場の可視化 スカラー場の可視化 スカラー場を直感的にわかり易く表現するために、2次元の場では考えてい る物理量が等しい値をとる点を結んでできる、いわゆる等高線図がよく用いら れる。上の温度場の例では、等温線図ということになる。また、天気図の等圧 線なども、身近な例である。 空間3次元の場合には、等高“面”となる。例えば、点光源から等方的に発 せられる光の強度分布は、点光源を中心とする球面になることが直感的に推測 される。

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ベクトル場の可視化 一方、ベクトル場の場合には、すでに図2.1.1及び2.1.2に示した ように空間の各点でのベクトルの方向と大きさを矢印を用いて表すことが多い。 この場合、矢印の長さをベクトルの大きさに対応させる。 このような矢印による方法以外に、例えば、流れの場の例では、図1.2. 3のように流線と呼ばれる線を用いて表すこともある。流線上の各点において、 その接線の方向は速度ベクトルの向きを向く。非定常場では、各点における速 度ベクトルは、時々刻々と変化するから、流線のパターンも時々刻々と変化す る。流線による方法では、各点におけるベクトルの大きさを示すことは、なか なか容易ではない。しかし、流れの全体の様子を把握するには極めて有効であ る。 このような流れ場に対する流線とのアナロジーから、電磁気学では、電場、 磁場の様子を直感的に表すのに、後で述べるような電気力線、磁力線などがし ばしば用いられる。力線の本数によって、ベクトルの大きさを表すような工夫 もなされている。 図2.1.3 流線によるベクトル場の可視化 スカラー場やベクトル場の様子を理解するためには、式だけではなく、等高 線図や矢印図などを自分自身で描いてみることが、きわめて大切である。

(24)

問3 2次元のスカラー場 ϕ( , , ) 16 (x y z = x2+y2) が与えられている。このとき、 ( , , )x y z C const. ϕ = = は、空間中の曲線(等高線)の式を与える。ϕ =0, ϕ =7, ϕ=12の三つ場 合について、上のスカラー場の等高線を描け。 問43次元のスカラー場 ϕ( , , ) exp[ (x y z = x2+y2+z2)] について、z=0の平面上で、等高線の概略を図示せよ。 問52次元のベクトル場 A( , )x y =A x yx( , )i+A x yy( , )j について、以下の二つの場合を考える。 (1)A x yx( , )=x, A x yy( , )= y (2)A x yx( , )= −y, A x yy( , )= x 各々の場合について、ベクトル場の様子を( , )x y 平面上で直感的にわかり易く、 示せ。 *次の各点で、矢印を用いてベクトルの様子を表すこと。 1 1 1 1 ( , ) (1,0),( , ),(0,1),( , ), 2 2 2 2 x y = − ( 1,0),( 1 , 1 ),(0, 1),( 1 , 1 ) 2 2 2 2 − − − − − 2 2 2 2 ( , ) (2,0),( , ),(0, 2),( , ), 2 2 2 2 x y = − 2 2 2 2 ( 2,0),( , ),(0, 2),( , ) 2 2 2 2 − − − − −

(25)

2.2 流束と流束密度

ベクトル場に関連して重要な概念として、流束(flux)及び流束密度 (flux density) がある。図2.2.1のように、流体、例えば水の流れの場を考え、 仮想的な領域を考える。この領域中に水の湧き出しや吸い込みがなければ、こ の領域中の水量は、この領域の表面を通して流入する水量と、表面を通して流 出する水量との差によって決まる。 このようにある領域中に含まれる水量を評価するためには、考える領域の表 面を通しての水の流入、流出を計算する必要がある。後で具体的な例で詳しく 説明するが、簡単にいってしまうと、考えている物理量に対して、流束は、こ の表面“全体”を通過する物理量の値であり、流束密度は、“単位面積あたり” に通過する物理量の値である。上の例のように、考えている物理量が表面を通 過する水量の場合には、もちろん、考える時間の長さによっても異なってくる。 このような場合、“単位時間あたり”に考えている面を通過する水量で、流束及 び流束密度を定義する。 図2.2.1 流れ場における流束の概念と流体の質量の保存 流束及び流束密度の概念は、もともと水のような流体の流れ場について考え られてきた。しかし、一般のベクトル場、例えば、エネルギーの流れ、電場、 磁場などについても、同じような考え方が適用できる。

(26)

上で述べた流束の概念は、物理量の保存則を考える上で極めて重要な概念で あり、第3章のベクトル場の発散、或いは、第4章のベクトル場の面積分やガ ウスの法則と密接な関係がある。

(27)

2.2.1 太陽からのエネルギー流

身近な例として、太陽から地面に向かう“エネルギーの流れ”の例を用い、 流束及び流束密度の概念を説明する。 エネルギー流束 図2.2.2に示すように、地面におかれた太陽光パネルを考える。このパネ ルの面全体に単位時間あたりに入射するエネルギーを、太陽光の“エネルギー” の流束と呼ぶ。これを、W で表すことにすると、f W の単位は J/s、すなわち、f ワットW である。 図2.2.2 地面におかれた太陽光パネル エネルギー流束W は、太陽からのエネルギーの流れの方向によって違ってくf る。図2.2.3(a)のように、エネルギーの流れ(入射光)の方向が、パネル の面に垂直な場合にエネルギー流束は最も大きい。図2.2.3(b)のように傾 きを持つ場合には、面を通過するエネルギー流束は、明らかに小さくなる。 (a) (b) 図2.2.3 エネルギー流の方向とエネルギー流束の大きさ

(28)

このことは、次のように理解することができる。今、このパネルの面積がSで あるとする。図2.2.3(b)の場合に、点線で示すように入射光の方向に垂直 な仮想的な面を考える。この入射光に垂直な面を通過する光のみが、パネルに 到達する。点線で示したエネルギー流に垂直な面の面積、すなわち、実効的な 受光面積S′は、パネルの実際の面積S よりも小さく、 cos S′ =S θ (2.2.1) となる。ここで、θ は面に立てた法線ベクトルn とエネルギー流の方向とのなす 角である。 式(2.2.1)から、エネルギー流の方向に対して、パネルの面が傾いている場合に は、パネルの受光面積が、cosθ の分だけ実効的に減少したと考えることができ る。結果として、この場合のエネルギーの流束W ′ は、垂直な場合の流束f W に対f して、cosθ の分だけ減少し、 cos f f W′ =W θ (2.2.2) で与えられる。 エネルギー流束密度 (空間的に一様な場合) エネルギーの流れの方向に垂直な面を、単位時間、単位面積あたり通過する エネルギーの大きさを、“エネルギー”の流束密度という。上の例のように、流 れが一様の場合には、流束密度hは流束W を面積 S で割って、 f f W h S = (2.2.3) で与えられる。単位は、W/m2である。逆に、流束密度hが与えられれば、流束 は f W =hS (2.2.4) から計算できる。

(29)

(分布がある場合) 一般には、空間の各点、各点でエネルギーの流れの向きと大きさは、同じと は限らない。そこで、空間のある点において、この点を囲み、流れの方向に垂 直な微小面積を考える。その面積∆Sは十分小さく、面上でエネルギーの流れは、 ほぼ、一様とみなすことできるものとする。 図2.2.4 流れのベクトル場と空間の各点における微小面積要素∆S このとき、この面に対する流束を∆Wf とすると、流束密度は式(2.2.3)と同様に して、 f W h S ∆ = ∆ (2.2.5) で与えることができる。 また、逆にhが与えられば、∆Wf は式(2.2.4)と同様にして、 f W h S ∆ = ∆ (2.2.6) から計算できる。 図2.2.5 微小面積要素∆Sが流れと垂直ではない場合

(30)

さらに、式(2.2.1) (2.2.2)で議論したように、流れの方向が面の法線ベクトルに 対して、θ だけ傾いている場合に面を横切る流束∆W ′f は、 cos cos f f WW θ h S θ ∆ = ∆ = ∆ (2.2.7) となる。 エネルギー流束密度ベクトル ここで、エネルギーの流束密度“ベクトル”を次式で定義する。 f h W S ∆ = ∆ h e (2.2.8) S ∆ :面積 ∆Wf :面積∆Sを単位時間あたり通過するエネルギー h e :流れの方向の単位ベクトル すなわち、エネルギー流束密度ベクトルは、 方向 :流れの方向 大きさ:流れの方向に垂直な面を 単位時間、単位面積あたり通過する“エネルギー” で定義されるベクトル量と理解することができる。 流束の内積による表現(1) 流束密度に流れの向きe を持たせ、ベクトルh h を定義すると、考えている面 を通過する流束は、面が流れに垂直か否かを区別する必要はない。h と面の法線 ベクトルn の内積を用いて、次のように簡単に表現することができる。 f W S ∆ = ⋅ ∆h n (2.2.9) cos h θ S = ∆

(31)

面に対する有効成分の概念 先に、面が流れの方向に対して垂直でない場合の流束の減少は、エネルギー 流を受ける実効的な面積の減少として理解した。 ここで、別の見方をしてみる。図2.2.6に示すように、ベクトルh を、面 に垂直な成分と平行な成分に分けて考える。面に平行な流れの成分は面を通過 することはできない。第1章の内積とベクトルの有効成分の項で考えたように、 面に垂直な成分のみが流束に寄与する。式(2.2.9)の内積 ⋅ h n (2.2.10) は、このことを数学的に表現していると考えることができる。 図2.2.6 面の法線ベクトルに対する有効成分 面積ベクトル 式(2.2.9)で、nS をひとかたまりと考え、面積ベクトルと呼ぶ。すなわち、空 間のある点のまわりの面積要素∆Sに、その法線ベクトルn の方向を持たせ、新 たにベクトル量∆Sを定義する。これを面積ベクトルと呼ぶ。すなわち、 S ∆ = ∆S n (2.2.11) 大きさ:考える面の面積 ∆S 方向 :その面に対する法線ベクトル n の方向

(32)

図2.2.7 面積ベクトル 流束の内積による表現(2) エネルギー流束密度ベクトル h 及び 面積ベクトル ∆S を、各々、式(2.2.8)、 (2.2.11)のように定義すると、面を横切るエネルギー流束は、この二つの内積 として、 ∆Wf = ⋅ ∆h S (2.2.12) のように簡単に表現できる。 法線ベクトルの選び方 これまで面に対する法線ベクトルの向きを、あいまいに扱ってきた。ここで、 法線ベクトルの向きの選び方を整理しておく。 (閉曲面の場合) 選択肢は二つある。 1)閉曲面の“内側”から“外側”に向かうように選ぶ(外向き法線) 2)閉曲面の“外側”から“内側”に向かうように選ぶ(内向き法線) 一般には、上の1)、すなわち、 図2.2.8のように閉曲面の内側から外側 に向かう向きに、法線ベクトルの向きを選ぶ。 外向き法線ベクトルをn 、内向き法線ベクトルを ′n とする。両者は単位ベクト ルであり、大きさは変わらず、向きが逆なだけである(n′ = −n )。従って、内向 きに法線ベクトルを選んだとしても、ベクトルh との内積は、 ( ) ′ ⋅ = ⋅ − = − ⋅ h n h n h n (2.2.13) となり、内積の値(絶対値)は、変わらず、その符号が変わるだけである。

(33)

図2.2.8 外向き法線(実線)と内向き法線(破線) 図2.2.8の外向き法線ベクトルn を、法線ベクトルとして選ぶと、 ベクトルh の方向が、図2.2.9 (a)のように閉曲面の内側から外側に向か う場合、すなわち、h の方向が閉曲面に対して“流出”する方向であれば、 内積h n は正 (h n⋅ >0) (2.2.14) 一方、図2.2.9 (b)のようにベクトル h の方向が閉曲面の外側から内側に 向かう場合、すなわち、h の方向が閉曲面に対して“流入”する方向であれば、 内積h n は負 (h n⋅ <0) (2.2.15)

(34)

(a) (b) 図2.2.9 外向き法線と流入、流出の場合の内積の符号 一般には外向きに法線ベクトルを選ぶが、もし、内向き法線ベクトルを選ん だ場合でも、上で述べたように、内積の絶対値は同じで、その符号が外向き法 線の場合と逆転するだけである。 要は、1)を選ぶか、2)を選ぶかの問題は、流出の場合に対して流束の値 (すなわち、内積h n の値)を正にとるか、流入の場合に流束の値を正に選ぶか⋅ の問題である。 外向き法線 :面を横切る流束が“正” ∆Wf = ⋅ ∆ >h n S 0→“流出” 内向き法線 :面を横切る流束が“正” ∆Wf = ⋅ ∆ >h nS 0→“流入” ただし、後の問3,4でみるように、領域内のエネルギーの増減を考える場 合には、流出か流入かは、重要な問題になる。

(35)

(開曲面の場合) 開いた曲面の場合、閉曲面の場合のように内向き、外向きの区別をつけるこ とはできない。一般に、図2.2.10(a) に示すように、ベクトル h の向きと 法線ベクトルn のなす角が鋭角になるように選ぶのが一般的である。このように 選べば、h n⋅ >0となる。 (a) (b) 図2.2.10 開曲面に対する法線ベクトル 注)後のストークスの定理のように、閉曲線で囲む曲面(図2.2.11)の 向きを考える場合には、閉曲線の向きに沿って巡回するときに、右ねじの進む 方向に法線ベクトルを選ぶ。 図2.2.11 閉曲線が囲む曲面に対する法線ベクトル

(36)

問1 受光面積S=5m2の太陽光パネルを考える。次の問に答よ。 (1)エネルギー流束密度h=10W/m2のとき、エネルギー流束を求めよ。 ただし、光は面に対して垂直に入射しているものとする。 (2)エネルギー流束Wf =100Wのとき、エネルギー流束密度を求めよ。 問2 次の図に示す各場合について、面積ベクトルを求めよ(括弧を埋めよ)。 (1)∆ = ∆S Sn、∆ =S

( )

n=

( ) ( ) ( )

i+ j+ k (2)∆ = ∆S Sn、∆ =S

( )

n=

( ) ( ) ( )

i+ j+ k

(37)

問3 流束の概念は、物理量の保存を考える場合に重要な概念であることを、 この章のはじめに述べた。空間に図のような直方体がある。 (1)各々の面S S1, , ,2S6 に対する面積ベクトル を求めよ。 例)∆ = ∆ ∆S1 x yk (2)この直方体の各面を通して、エネルギーが流入、流出している。時刻t に おいて、各々の面に対するエネルギー流束密度ベクトルは、各面上では、 一様で次のように与えられる(単位:W/m2)。 1 =2 , 2 =5 , 3 =10( ),− 4 =10( ),− 5 =10 , 6 =20 h k h k h j h j h i h i このとき、各面に対する流束 1 2 6 1 1, 2 2, , 6 6 f f f W W W ∆ = ⋅ ∆h S ∆ =h ⋅ ∆S … ∆ =h ⋅ ∆S を求めよ。ただし、∆ = ∆ = ∆ =x y z 1mとする。 (3)(2)の場合について、この直方体の表面全体にわたる流束を求めよ。 1 2 3 4 5 6 f f f f f f f W W W W W W W ∆ = ∆ + ∆ + ∆ + ∆ + ∆ + ∆

(38)

(4)(2)の場合について、この直方体の中に含まれるエネルギーは、 増えるか? 減るか? それとも変化しないか? ただし、この直方体の領域内部におけるエネルギーの発生や消滅はなく、 表面からのエネルギーの流入、流出のみによって内部のエネルギーの量 は決まるものとする。 ヒント:領域内に、エネルギーの発生源、及び、吸収源が無ければ、領 域内のエネルギーの総量は、表面からのエネルギーの流入と流出のバラ ンスによって決まる。(3)で求めた∆Wf は、単位時間あたりに表面か らこの領域から正味流出するエネルギーの量である。(外向き法線を選 択した場合、∆Wf > なら流出、0 ∆Wf < なら流入であることを思い出0 す)。 領域内のエネルギーをQ (J)とする。t時間あたり表面を通して、こ の領域に“流入”するエネルギー∆ は、 Q f Q W t ∆ = −∆ ∆ 従って、単位時間あたりのQ の変化は、次式で与えられる。 f Q W t ∆ ∴ = −∆ ∆ ただし、∆Wf の前の負号は、流束∆Wf の符号の定義を流出を正に選ん でいるためで、流出すると領域内のエネルギーは減少する(∆ < )。Q 0 このため、負号をつけておく必要がある。

(39)

問4 (領域内に発生・消滅がある場合) 図のような円筒形をしたガラス容器の中に、光吸収セルを置く。このセルが単 位時間あたりに吸収する光エネルギーの大きさを cell Q t ∆       で表すことにする。ただし、セルに吸収された光のエネルギーは、セルにおけ る化学反応に使われ、全て消費されてしまう。また、ガラス表面における光の 反射、光の吸収はない。次の問に答よ。 (1)このガラス容器表面全体にわたる正味の流束∆Wf で表す。このとき、こ の円筒形の容器内に含まれる光のエネルギーの時間変化 Q t ∆ ∆ を、∆Wf 、及び、(∆Q/∆t)cellを用いて表せ。 (2)今、ガラス容器の上面における光のエネルギー流束密度が次のように、 ( ), 10W/m2 T =hThT = h k 与えられる。容器を通過する光は、光吸収セルの部分については、セル によって全て吸収される。一方、セル以外の部分は、そのまま透過する。 また、側面からの光エネルギーの流入、流出はない。 このとき、上面及び底面における流束 TOP, BOTTOM f f W W ∆ ∆ を求めよ。ただし、 容器及びセルの半径を、各々、a1 =0.1m,a2 =0.05mとする。 (3)(2)の条件のもとで、ガラス容器内部のエネルギーの総量の時間変化は なくなり、定常に落ち着いている。すなわち、 0 Q t= ∆ このとき、(∆Q/∆t)cellを求めよ。

(40)

問5 地面に対してα の角度を持つ屋根に設置した太陽電池のパネルを考える。 座標軸を図のように選ぶ。このとき次の問いに答えよ。 (1)パネルの面の法線ベクトルを、基本単位ベクトルi j k 及び, , α で表せ。 ヒント:第1章 1.4 問4のように各辺をベクトルで表現し、 外積を用いると簡単に求まる。 (2)太陽からのエネルギー密度が h=hxi+hz(−k) で与えられるとき、太陽電池の出力パワーを、h h Sx, , , ,z α ηで表せ。ただ し、ηは光のエネルギーから電気への変換効率を表す。 (3)太陽からのエネルギー流束密度ベクトルが、 h=h0(−k ) 2 0 5W / m h = で与えられるとき、パネル面上でのエネルギー流束を求めよ。 このとき、太陽電池の出力は何ワットになるか。ただし、パネルの面積 をS=10m2、電気への変換効率ηを20%(η=0.2)とし、α =30 とする。

(41)

問6 (点源からの放射) 図に示すように、座標軸の原点にある点光源から、等方的かつ一様に、単位時 間あたり、W ワットの光のエネルギーが放射されている。次の問いに答よ。 f (1)原点から半径r の球面上での光のエネルギー流束密度hを、W r を用いてf, 表せ。 * 等方的かつ一様に放射されているから、面上でエネルギー流束密度は 同じと考える。 (2)(1)の球面上の点( , , )x y z におけるエネルギー流束密度ベクトルh を、こ の点の位置ベクトルr 、及び、W r を用いて表せ。(ヒント:この点で球f, 面に垂直な方向の単位ベクトル、すなわち、面の法線ベクトルは、r/ rと 表せる)。

(42)

2.2.2 流体の例

流体、例えば、水の流れを考え、流束及び流束密度ベクトルに対する理解を さらに確かなものとする。 流束 今、図2.2.12に示すような定常的な流れ場の中に仮想的な面を考える。 上の太陽光の例では、考えている面に単位時間あたりに入る“エネルギーの 量”を問題にし、これを“エネルギーの流束”と呼んだ。 この例では、面を単位時間に通過する“流体の量(質量)”を問題にし、これ を“質量流束”、或いは、単に“流束”と呼ぶ。ここでは、(質量)流束を、“記 号M ”を用いて表すことにする。f M の単位は、f kg / s である。 図2.2.12 流体と質量流束 流束密度ベクトル 先のエネルギーに関する流束密度ベクトルは、式(2.2.8)のように与えられた。 流体の流れ場における流束密度も、同様な考え方で定義できる。すなわち、空 間の各点における流束密度ベクトルは、流体の流れに垂直な面を、単位時間、 単位面積あたり横切る流体の質量として、以下のように表すことができる。 f v M S ∆ = ∆ f e (2.2.16) f M ∆ :速度ベクトルvに垂直な微小面積∆Sを通過する流束 v e :考えている点における流れの方向の単位ベクトル

(43)

この場合には、e は流れの速度ベクトルv vの方向と考えることができる。また、 流束密度ベクトルf の単位は、kg/(m s) である。 2 実は、後に詳しく述べるように、式(2.2.16)で定義した質量流束密度ベクトル f は、空間中の各点での流体の密度ρ及び速度vを用いて、 ρ = f v (2.2.17) ρ:流体の密度 v:流速ベクトル と表される。f は、空間の各位置での密度ρ( , , )x y z 及び速度v( , , )x y z に依存する ベクトル場f( , , )x y z と考えることができる。 面と速度ベクトルが垂直な場合の流束 ∆Mf 式(2.2.17)の関係は、式(2.1.16)の分母の∆Mf、すなわち、速度ベクトルv と垂 直な面を単位時間に横切る流体の質量について、さらに詳しく考察することに よって導くことができる。そこで、空間のある位置に、図2.2.13に示す ように、速度ベクトルv に垂直な微小面積Sを考えることにする。ただし、前 と同様、面積∆Sは十分小さく、考えている点の近傍及びこの面上で流れの速度 vは一様であるとする。 図2.2.13 速度ベクトルと垂直な面を横切る流束 ∆Mf

(44)

流体の速さは v[m/s]であるから、微小時間 t∆ の間に、流体はv t m∆[ ]だけ移動 する。従って、図2.2.9に示した底面積∆S [m2]、高さv t m∆[ ]の円柱の領域 (体積∆ = ∆V ( S v t)( ∆ = ∆ ∆ [m) v S t 3])に含まれる流体は、この面を通過すること ができる。ここで、流体の単位体積あたりの質量、すなわち、密度をρ[kg m/ 3] すると、この面を t∆ 時間当たり、横切る流体の質量 M∆ は、密度に体積を かけて 3 3 [ ] [kg] [ ] [ ] M kg V m v S t kg m ρ ρ ∆ = × ∆ = ∆ ∆ (2.2.18) となる。 従って、この面を単位時間に通過する流体の質量、すなわち、この面を通過 する流束∆Mf[kg/s]は、式(2.2.18)の両辺を時間∆tで割って、 f M kg M v S t ρ s ∆   ∆ = = ∆ (2.2.19) となることがわかる。これから、この面を通過する単位面積、単位時間あたり の流体の質量は、∆Mfを面積∆Sで割って、 f M v S ρ ∆ = ∆ (2.2.20) となる。式(2.2.17)で与えられる流束密度ベクトルfv の大きさと一致するこ とがわかる。 面A と速度ベクトルとが垂直でない場合の流束 エネルギー流束の例、式(2.2.9)でみたように、空間の各点で流束密度ベクトル ρ = f v が与えられば、面が速度ベクトルに対して傾きを持つ場合の流束は、 ( ) cos f MS f θ S ∆ = ⋅ ∆ =f n ∆ (2.2.21) cos f M′ ρv θ S ∴ ∆ = ∆ (2.2.22)

(45)

から計算することができる。 式(2.2.21)は、次の直感的な考え方からも理解できる。速度ベクトルvが面に 対して傾きを持つ場合には、図2.2.14(a)に示したように、側線の長さ v t∆ の斜めに傾いた円柱に含まれる流体が、∆t時間当たりこの面を通過する。図 2.2.14(b)に示すような等積変形の考え方を用いると、この斜めの円柱の 体積は、底面積が同じ∆Sで、高さv t∆ cosθの直円柱の体積 ( ) ( cos ) cos V S v t θ v θ S t ∆ = ∆ × ∆ = ∆ ∆ (2.2.23) に等しいことがわかる。 (a) (b) 図2.2.14 流体が面を斜めに横切る場合 従って、∆t時間当たりこの面を通過する流体の質量∆ は、 M cos M′ ρ V ρv θ S t ∆ = ∆ = ∆ ∆ (2.2.24) になる。単位時間あたりにこの面を通過する流体の質量、すなわち、流束 / f MMt ∆ = ∆ ∆ は、上の式を∆tで割ることにより、この場合 cos f M M v S t ρ θ ′ ∆ ′ ∆ = = ∆ ∆ (2.2.25) で与えられる。θ π= / 2の場合、すなわち、流れが面と垂直な場合には、 f M′ ρv S ∆ = ∆ となり、式(2.2.19)に一致する。

(46)

流束の内積による表現 エネルギー流束の場合と同様、質量流束についても、流束密度ベクトルf と面 積ベクトル∆Sの内積を用いて、次のように表すことができる。 f M ρ ∆ = ⋅ ∆ =f S v⋅ ∆S (2.2.26) 問7 密度がρ、流れ場が、v=vxi+vyj+vzk で与えられるとき、x軸に垂直で、 面積∆ = ∆ ∆ の長方形(ただし、S y z ∆ ∆ は、各々、 y 方向及び z 方向の辺の長y z, さ)の面を横切る流束が、 x v y z ρ ∆ ∆ で与えられることを示せ。ただし、流体の密度をρとする。 問8 前節問3のエネルギー流束の例を参考に、水の流れの中に置かれた仮想 的な直方体に含まれる水の質量の時間変化 M t ∆ ∆ を 、 各 々 の 面 に お け る 流 束 密 度 ベ ク ト ルρ1 1v2 2v , ,… ρ6 6v と 面 積 ベ ク ト ル 1, 2, , 6 ∆SS … ∆S を用いて表せ。ただし、領域の中には、水の湧き出し、水の吸 い込みはないものとする。 問9 問8で考えている領域中に水の湧き出しがあり、単位時間当たりの湧き 出し量を source M t ∆       で表すとき、領域内の水量の時間変化 M t ∆ ∆ はどうなるか? 前節問4のエネルギー流束の例を参考に考えよ。

(47)

問10 (線源からの湧き出しと流束) 密度ρ(=const.)の流体について、点( , , )x y z における速度場が ( , , )x y z =v x y zx( , , ) +v x y zy( , , ) +v x y zz( , , ) v i j k 2 ( , , ) ( / ) x v x y z =K x R , ( , , ) ( / 2) y v x y z =K y R , ( , , ) 0v x y zz = 2 2 R= x +y で与えられるとき、次の問いに答えよ。 (1)z 軸に垂直な平面上で速度場の概略を、ベクトル図として図示せよ。この 速度場は、z 軸上に一様に分布する湧き出し(線源)から、 ( , )x y 平面上 で放射状に流れ出る速度場であることを確かめよ。 (2)点( , , )x y z における流速の大きさv= v は、z 軸から考えている点までの距R= x2+y2 にのみ依存し、かつ、R に反比例して減少する / , v= v =K R K const= . ことを示せ。 (3)(1)2)から点( , , )x y z にお ける速度が、 ( , , )x y z K R R   =     R v で与えられることを示せ。た だし、ベクトルRは、z 軸かz 軸のまわりを囲む半径 R の円筒面までの距離を大 きさとし、円筒面に垂直な方 向を向く、次のベクトルを示 す。 x y = + R i j (3)z 軸のまわりを囲む半径 R 、高さ L の円筒の表面を、単位時間あたり通過 する水量(流束)は、R によらず一定であることを示せ。 (4)(3)からz 軸上の水の湧き出し(単位長さ当たり)から、単位時間当た りに湧き出している水の量M を求めよ(f M をf ρ,Kを用いて表せ)。

(48)

問11 (点源からの湧き出しと流束) 密度ρ(=const.)の流体について、速度場が 2 ( , , )x y z K , x y z r r   =   = + +   r v r i j k で与えられるとき。次の問いに答えよ。 (1)速度場の概略を図示し、この速度場は原点にある湧き出し(点源)から、 等方的に流れ出る速度場であることを確かめよ。 ( 2 ) 流 速 の 大 き さv= v は 、 原 点 か ら 考 え て い る 点( , , )x y z ま で の 距 離 2 2 2 r= x +y +z にのみ依存し、かつ、r に反比例して減少する。 2 2 / v= v =K rK const= . ことを示せ。 (3)原点を囲む半径r 球の表面を、単位時間あたり通過する水量(流束)は r によらず一定であることを示せ。 (4)(3)から原点にある水の湧き出しについて、単位時間に湧き出している 水量M を求めよ(f M をf ρ,Kを用いて表せ)。

2.2.3 一般のベクトル場の場合

これまで、エネルギー及び流体の質量の流れを表すベクトル場、 ( , , )x y z hf( , , )x y z に対して、空間中の考える面を横切る流束が、ベクトルh 、或いは、f と面積ベ クトル∆Sの内積によって表されることを学んだきた。また、§2.2.1の問 3、4、§2.2.2の問8、9、10、11などの具体例でみたように、流 束の概念は物理量の保存と密接な関係があり、流束から領域内部の発生、消滅 量を知ることもできる(§2.2.1の問4、6、また、2.2.2の問8、 9、10、11など参照)。 このような流束や流束密度の概念は、h や f に限らず一般のベクトル場にも対 して考えることができる。すなわち、ベクトル場 ( , , )x y z A が与えられたとき、空間中にある面(面積∆S)についてベクトルA の“流束”

(49)

を、この面の法線ベクトルn に対するベクトルの有効成分を考え、 S ⋅ ∆ A n 、或いは、A⋅ ∆S (2.2.27) と定義する。 もともと、流束や流束密度の概念は流体力学において用いられてきた概念で ある。この授業の本題である電磁気学における電束密度や磁束密度の概念も、 本章で取り上げたエネルギーの流れや流体の流れとのアナロジー(類似性)を 考えていくと、理解しやすいことが多い。 繰り返しになるが、第3章のベクトル場の発散や第4章の面積分、さらには、 ガウスの法則の意味を考えていく上で、本章で説明した流束の概念は大切な概 念である。

(50)

3.場の微分

3.1 スカラー場の勾配

スカラー場に関連する重要な概念として勾配(gradient)の概念がある。 2次元の温度場の例 勾配の概念を、図3.1.1に示す2次元の温度場T x y の例を用いて説明( , ) する。図3.1.1で点P ( , )x y と点 P から少しだけ離れた点 Q (x dx y dy+ , + )の 位置ベクトルを、各々、r r とする。 , ′ x y = + r i j (3.1.1) (x dx) (y dy) ′ = + + + r i j (3.1.2) 図3.1.1 2次元温度分布と温度勾配 今、点 P から点 Q まで移動するときの温度差dTは、点 P の温度 ( , )T x y と点 Q の温度T x dx y dy( + , + )から、 ( , ) ( , ) dT T x dx y dy= + + −T x y (3.1.3)

(51)

で与えられる。ここで、T x dx y dy( + , + )をTaylor 展開すると ( , ) ( , ) T T T x dx y dy T x y dx dy x y ∂ ∂ + + = + + ∂ ∂ (3.1.4) となる。これを、式(3.1.3)に代入して温度差dTT T dT dx dy x y ∂ ∂ = + ∂ ∂ (3.1.5) で与えられる。この式の右辺は、二つのベクトルの内積として、 ( T T ) ( ) dT dx dy x y ∂ ∂ = + ⋅ + ∂ ij i j (3.1.6) と考えることができる。 すなわち、点P と点 Q の温度差は、次の式で定義される勾配ベクトル、 T T T x y ∂ ∂ ∇ ≡ + ∂ ij (3.1.7) と点P から点 Q への変位ベクトル(dr r= −′ rdr=dxi+dyj (3.1.8) の内積として、 dT = ∇ ⋅ rT d (3.1.9) と表すことができる。 勾配(ベクトル)は、ベクトル量であり、方向と大きさを持つ。

参照

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