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有限の水平上向き面上の膜状凝縮熱伝達の理論解析

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(1)

長崎大学工学部研究報告 第23巻 第40号 平成4年12月 35

有限の水平上向き面上の膜状凝縮熱伝達の理論解析

茂地 徹 山田 ?

・金丸 邦康**

・時田 雄次***

An Analysis of Film Condensation Heat Transfer on a Finite−Size Horizontal Plate Facing Upward

      by

Toru SHIGECHI*, Kuniyasu KANEMARU**

Takashi YAMADA*and Yuji TOKITA***

  An analysis has been made of two−dimensional, steady−state,1aminar film condensation heat trans−

fer on a finite−size horizontal plate facing upward in a stagnant saturated vapor, taking into account the effect of the plate edge. The boundary−layer equations for the condensate film on the plate are solved using an integral method. The effect of inclination angle of the vapor−liquid interface at the plate edge upon the thickness of condensate film and the heat transfer rate is examined for the solutions obtaineα.

And the solution obtained under the condition of minimum condensate film thickness, which is shown to be equivalent to that at the inclination angle of 90 degrees, is presented in terms of the average Nusselt number.

1.まえがき

 有限の水平上向き面上の定常膜状凝縮においては,

冷却面は常に安定な凝縮液膜で覆われ,液膜内の液体 は平板の中心部から端部へと流れてゆき,端部から流 下することがこれまでの実験Dで観察されている.こ のような有限の上向き水平面系の熱伝達係数:を予測す る場合に,傾斜面にも適用できるように修正された,

体積力駆動対流に基づくヌッセルトの凝縮液膜理 論2)を形式的に適用しても,平板に平行な方向(水平方 向)の体積力が存在しないので対流熱伝達係数の大き さは零となり,ヌッセルトの理論から対流熱伝達係数

(凝縮液膜厚さは有限であることが実験で観察されて いるから,実際には「ある有限値」をとると推定され る)の大きさに関して有益な情報を得ることはできな

い.従って,有限の上向き水平面系に対して対流熱伝 達係数の現実的な大きさを確定するためには,体積力 駆動対流に基づいた凝縮液膜理論とは異なる観点から,

流動・伝熱のメカニズムについて理論的検討を加える 必要がある.

Leppert−Ni㎜03)は,有限の平板に沿う錨液の流 れは凝縮液膜の厚さの変化に起因して発生する静圧勾 配によって駆動されると仮定して理論解析し,ヌッセ ルト数の理論解を求めた.しかし,その解は平板の中 心と端部での凝縮液膜厚さの比δL/δ。を未決定のまま 含む不完全なものである.なお,彼らは実験データを 整理するために,δ乙/δo≦0.4の範囲でヌッセルト数の 近似解を得ている.

 本研究では,静止飽和蒸気中に置かれた有限の上向

平成4年9月30日受理

 *機械システム工学科(Department of Mechanical Systems Engineering)

**、通講座・工業物理学(Applied Physics Laboratory)

***蝠ェ大学工学部(Faculty of Engineering, Oita University)

(2)

き水平平板上の2次元定常層流膜状凝縮熱伝達を,Le・

ppert−Nimmoと同様に液膜内の液体の流れは液膜厚 さの変化に起因する静圧勾配によって駆動されると仮 定して,特に境界条件として平板の端部での気液界面 の傾斜を考慮した理論解析をプロフィル法(境界層積 分法)で行い,まず,平板の端部での気液界面の傾斜 角が凝縮液尊母さと熱伝達に及ぼす影響を明らかにし,

次にその結果に基づいて熱伝達が最大となる場合の ヌッセルト数の理論解を求めた結果について報告する.

主要記号

9

1ノ*

々1,々2

P

丁ω

∠7む z4,び Z衡 灘,〃

α

β1〜β3

γ1,γ2 δ

δo

δL

λ

μ

ρ

添字

L max

min

γ

:定圧比熱

:重力加速度

:グラスホフ数,式⑳

:熱伝達係数

:相変化数,式(33)

:修正相変化数,式(32)

:定数,式(29),式(3①

:平板の半幅

:凝縮潜熱

:ヌッセルト数

:圧力

:プラントル数

:温度

:飽和温度

:表面温度

:温度差=7む一丁ω

:⑰,〃)方向の速度成分

:代表速度

:座標軸(Fig.1)

:傾斜角

:定数

:定数

:凝縮液膜壁さ

:平板中心での凝縮液膜厚さ

:平板端部での凝縮液膜厚さ

:熱伝導率

:粘性係数

:動粘性係数

:密度

:液体(凝縮液)

:最大値

:最小値

:蒸気

:局所値

平均値

2.理論解析 2.1基礎式

 Fig.1に示すように,温度乃の静止飽和蒸気中に置 かれた幅2L,一様温度Tz〃の水平上向き冷却面上で の2次元定常膜状凝縮を考える.冷却面は平板中心で 最大厚さを有する安定な凝縮液膜で覆われている.解 析に際して次の仮定を設定する.

(1)平板上の凝縮液膜は平滑気液界面を有する層流境  界層とみなすことができる.

(2)表面張力は無視できる.

(3)物性値は一定である.

凝縮液膜に関する質量,運動量およびエネルギーの保 存則から次式が得られる.

募+審一・

{畔)ll欝

筋(傷+・号)一聯

境界条件:

 〃=0:π=o=0     7「=7物

〃一δ・劣一・

    PL=Pγ     T=7も

畷1、一猛∬劾

::::::::::1: 弔

・ ・stagnant   ・9 ・

: :saturated :y. 1 :  .

vapO.r,.●     ●            し     ●

●     ・

D     ●

o     .

E     o

Llquid δo δ VLu

δL

9 :X

L Tw

@   L

α

1

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(6)

(7)

(8)

(9)

(1①

δ

x=+L X

Fig.1 Physical model and coordinate system

(3)

有限の水平上向き面上の膜状凝縮熱伝達の理論解析

 平板から遠く離れた撹乱されていない蒸気に関して,

静圧は次式で表される.

一・四一 セ一・    (1D

式(3)と式⑳を式(8>の適合条件を介して組み合わせると,

式(2)の右辺の凝縮液の平板に沿う静圧勾配は次のよう に得られる.「

誓一銘㌔一・檎    (12>

さらに,凝縮液と蒸気の密度は一定であるから,式(12>

は次のように書かれる.

勢(・・一・・)・窪    (13)

式(13)は,有限の平板に沿う凝縮液膜内の静圧勾配は液 膜の流動方向の厚さ変化により確立されることを意味

しており,静圧勾配が負となる,つまり凝縮液が平板 の中心から端部へと流れるためには,液面影さは流動 方向(灘の正の方向)に減少しなければならないこと がわかる.式(13)を式(2)に代入すると,液膜の運動量の 式は次のようになる.

仇(傷+〃1多)一一(仇一・嬬+聯(14)

2.2 プロフィル法による理論解

 式(14)と式(4)を,式(1)および関連する境界条件を用い てそれぞれ積分すると,次式のようになる.

  立  砒

      一〇       (15)

       OPL    ∂シ

 次に液膜内の速度と温度のプロフィルを次のように 仮定する.

 z6=z4必¢)(η)       (17)

 無一丁=∠1πθ(η)      (18)

ここで,既は灘のみの関数で代表速度,∠乃は飽和温 度と表面温度の差を表し,ψとθは次式で定義される ηのみの関数である.

 η≡シ/δ       ⑳  式(17)と㈹を式(15)と⑯に代入し,〃をηに変換すると,

δと翫に関する次の連立常微分方程式を得る.

仇{ρ@一郭∬副

+(仇一・嗣審+磯!

α・老∬・{(7』一丁)+⊥}吻一々翌!一・(1⑤

37

〆禦一&・(1)翫4!無)

+・(1_ργ    ρL)δ劣棚筆一・  (20>

(     /β3+β2   6P。、4 Ts)ゴ!無)+薫δ一・ (2D

ここに,β1,β2,β3,γ1およびγ2.は数値定数で,それぞれ

次のように定義される.

呵 グ4・     (22)

β・イ卿      (23)

・θ吻     (24)

、炉劣!     (25)

炉盟      (26)

式(20>と(21)の微分方程式の初期条件は次のように与えら れる.

 灘=0:δ=δo,z砒=0       (27)

式(20),(21)および(27)の厳密解は,次のように得られる.

チー研鵠i研)(喜)鴨F(ξ)4ξ (2⑳

ここに,δ。は後で決定される未定のパラメーターで,

々1,ん2,Gγ(グラスホフ数)および∫∫*(修正相変化数)

は,それぞれ,次のように定義される.

    3β2

       (2の  々戸   2γ1(一γ2)

島≡{4『3(1」}廟(一η)   (30)

・G・≡誓(1一ρF    ρL)     (3D

 H*≡≡

       (32)

    、PγL 1+ β3/β2)17

π≡砺z       ・ (33)

式㈱の積分中の被積分関数F(ξ)は定数パラメターω を含む次の関数である.

F(ξ)一彦(ξ卜ω一ω/3)

ω=E+{・一讐}{2(詣劉甜

式㈱から,次ρ表現が得られるので,

{2(一γ2)β1/(γ1β2)}H*

劣 研(1十ん2、厚*ん1Gγ)(まア/F(δ/あ)

舎一際響)P/{臨F(ξ)ず

式(胸は次式のように書くことができる.

靴蕊F(ξ)dξ τ一 ユF(ξ)礁

(鋤

(35)

(3の

(37)

(38>

 次に平板中心での凝縮液膜厚さδ。を定める必要が ある.そのため,本研究では,平板端部での境界条件 として次式を指定する.

釜L一一・・nα    (39>

(4)

ここで,αはFig,1に示すように,平板端部で気液界面 が水平面となす傾斜角で,0≦α≦90。とする.式(36>と(37)

を式㈲に適用すると

・・nα一o浬(1十々2、厚*々1Gγ)P{臨F(ξ)4ξ戸

    ×F( 1δL/δ。)     ㈹

となる.従って,∬/五とδ/」しの関係が式ω,(37)および

(3⑳により完全に確定する.

 熱伝達係数は,得られた液膜厚さδから次のように 計算される.

局所値:

毎≡孟訊一(一γ2 δ)溢    ω

平均値:

万≡士∬駄一(『γ2 L)瀧∬去ぬ   @2)

 また,平均ヌッセルト数く勉=ぬ・L/λLは次式で計 算される.

一)渉(編縞鯵

2.3最小液膜厚さの理論解

 式(37)は無次元厚さ∠。=δo/しと、4L=δ4Lを導入す ると次式のように書き直される.

ムーo躍(瀞H*}115/{∬1。。F(ξ)dξ戸 q4)

式㈲において,∠oは,付録で示されるように,π*の

正の値に対して∠乙=∠L。、.で最小値」。。、,をとり,∠。。、.

と∠乙m、,は,それぞれ,次のように定まる.

      ⊥畿ll一(旦3)柵

漏一際響)}喉、両F(ξ)ぜ 降口i旦3)朝鳶

 液膜厚さが最小の場合には,平均ヌッセルト数は,

後で示すように最大となり,次式で表される最大値 翫maxをとる.

職+η){研(々1σ71十々2、厚*)}恥

      忍、毒F警)礁

      @8>

    ×

      {磁F(ξ)ぜ

 さて,式㈲の条件を式(36)に適用すれば,次の関係が 得られる.

慕L一一∞     @9>

一方,式㈲でαを90.に設定すると,上式が得られる.

以上のことから,最小液膜厚さの条件[式㈲]下で得 られる解は,平板端部での境界条件としてαを90.に設 定して得られる解と同等であることがわかる.

3.結果と考察

3.1速度と温度のプロフィル

 本解析では,液膜内の境界条件を満足する速度プロ フィルψと温度のプロフィルθを次のように与えた.

 ¢)(η)=2η一η2       (50)

 θ(η)=1一η      (51)

これらのプロフィル関数から,数値定数が次のように 定まる.

 β1=8/15,β2=2/3,β3=1/4  γ1=2,   γ2=一1

 々1=1/2,  々2=・=1/30

また,式(32)の修正相変化数∬*と式(35)のパラメーター ωは次のように計算される.

      (52)

 H*=   Pη(・+詞

…暑Hζ号    (5鋤

3.2 平板端部であ気液界面の傾斜角の影響  平板端部での気液界面の傾斜角αが凝縮液膜厚さ

と平均ヌッセルト数に及ぼす影響をFig.2(a)と2(b)に 示す.縦軸のδ/しの高さはα=90。の場合に最も小さ

くなり,灘/乙=1の近傍を除けばαが10。まで減少して

0.015

0.010

0.005

0

   7

Gr=109, H★=0.Ol α=0.1degree α鶉0.2 α=1.0

δ α

α=2.0

α=10

α=90

      0       0.5       1.0        .x/L

Fig.2(a) Effect ofαon condensate film thickness

(5)

有限の水平上向き面上の膜状凝縮熱伝達の理論解析 39

1.0 10  30  50 70 90   0.9

ま。.8 優0・7

t≧。.6

0.5

Gr=109

H★=0.001

★=0.Ol H★=0.1

    0    0.5    1  20 40 60 80        α [degree]

Fig.2(b) Relationship between ハ伽/〈伽(α=90。)

     andα

もほとんど増加しない.αがさらに10まで減少するに つれて,δ/しの大きさは急に増大し,Fig.2(a)にみられ るように,液膜の形状は平坦になっていく.ヌッセル

ト数の比1鞄/1鞄(α一goo)とαの関係をFig.2(b)に示 す.Fig.2(a)で示される液膜の大きさから予測される ように,ヌッセルト数の比はα=90。で最大値をとり,

α瓢1。とα=0日間で急激に減少する.従って,液膜厚 さと熱伝達に及ぼすαの影響は,αが非常に小さい場 合,特に,α=1。とα一〇の間で顕著に現れ,αが10。以

上の場合には,実際上無視することができる.このこ とは,最小液膜厚さの解,つまり境界条件がα=90。の 場合の解は,平板端部で気液界面が水平に近い場合(α

≦1。)を除けば,αの広い範囲で有効であることを示唆 している.

0.4

3.3最小液膜厚さの理論解

 Fig.3(a)と3(b)に,大気圧の飽和水蒸気に対する最小 液膜厚さδmi.の分布と最大平均熱伝達係数砺。.の計 算例を示す.液膜厚さδmi,は平板中心で最大値をとり,

幅2しまたは温度差∠乃が増加するにつれて厚くな るが,熱伝達係数編。、はその逆の傾向を示す.また,

Fig.4から,液膜厚さの比(δ/δ。)mi。の分布は0<H*≦

0ユの範囲でコσ方向に相似であることがわかる.

 熱伝達に関する式㈹の数値計算結果をFig.5に示す.

図中の実線で示される厳密解は,0〈H*≦0.1の範囲に 対して,±0.5%の精度で,次式で近似することができ

る.

 1V乞4max=0.821(1十6.23H*)一1/8(Gγ/11*)1/5       (54)

 ちなみに,運動量の式(14)で慣性項を無視すると,次 式の解が得られる.

 1>セ4max=0.821(G7/1ノ*)1/5       (55)

この式はNimmo−Leppert1)が(δ4δ。)≦0.4の範囲で

冒0.3

.≡

0.2

0.1

0

saturated steam (0.lMPa),α=90。

一〜 簡一_

  _   \

  葡一一

『贈口̀〜̀ここ:こさ

       、\\

  \ぐ、

   瓢

     論

      △Ts=10 K       △Ts=20K

一一一一一一一一 「Ts=・30 K

一一一 「Ts=40 K

一\

2:L=10

  mm

2】」=20mm

Sここ\一印一△艶=50K

\こミ\

        、

      ミ

2:L=40㎜

2:L=80

  ㎜

0 10 20 30 40

X[mm]

Fig.3(a)Distributions of condensate film thickness

(6)

10000

8000

N @6000

ε

≡≧

 ×4000

 薯 卜=

2000

0

saturated steam(0.lMPa)

α=90。

2毛ミ  ユ0〜P〜η

2:Lミ20

2L≒40 2Lミ80

    10    20    30    40    50       △Ts[K]

Fig.3(b) Average heat transfer coefficients

提案した近似式と一致する.

4.むすび

 静止飽和蒸気中に置かれた有限の上向き水平平板.ヒ の層流膜状凝縮熱伝達を,平板の端部の効果を考慮す るため境界条件として平板の端部での気液界面の傾斜 角を導入して理論的に解析した.その結果,最大熱伝 達は平板端部で気液界面の傾斜角が90。に等しい場合 に得られることが明らかとなった.さらに,その最大 ヌッセルト数の精度よい近似式を提案した.

.≡

8

1.0

0.5

0

      参考文献

1)B.Nimmo and G. Leppert;Heat Transfer l970,

 Elsevier Pub.,6, No. Cs2.2,(1970).

2)W.Nusselt, Zeits;VDI,60,541−569,(1916).

3)G.Leppert and B. Nimmo;Trans. ASME, J,

  Heat Transfer,90,178−179,(1968).

α=90。

H★=1.0 H★=0.1 H★=0.01 H★÷0

     0       0.5       1.O       x/L

Fig.4 Relationship between(δ/δo)min and(灘/∠,)

付録 液膜厚さ、40の最小値の存在について・

 本研究で採用された式(5①の速度分布と式(51)の温度分 布に基づいて計算された式㈹の∠。と∠しの間の関係

をFig. A1に示す.図から明らかなように,∠oは正の π*の値に対して常に最小値を有する.

弓2.0 ε

LO

       、

        ヘ      ソ

        \紫野

         ヘ      ノ

      ノω冒8/503(H★冒0.01)      /●minimum point        ノ      エ       ノ              !    (△L/△o)=(ω/3)3一ω   ω=0(H★→・0)    /

10

α=90。

ω=8/3(H★→・oo)

 話 1∫

9

o辛1.o

0.1

Present Solution,Eq.(48)

   0       1.0         2.0        △し/[H★(1+k2H★)/(k1Gr)]1!5

Fig. AI Relationship between∠o and∠L, Eq.@4)

  0.01       0.1         1.O       H★

Fig.5 Average Nusselt Number

参照

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