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今村 健太郎 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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全文

(1)

氏 名 いまむら けんたろう

今村 健太郎

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

甲第

1648

学位授与の日付

平成

29

3

21

学位授与の要件

学位規則第

4

条第

1

項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

The nature of the white opaque substance within colorectal neoplastic epithelium as visualized by magnifying endoscopy with narrow-band imaging

(NBI 併用大腸拡大内視鏡検査で観察される大腸上皮性腫瘍の 白色不透明物質(White opaque substance)の正体)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

八尾 建史

(副 査) 福岡大学 教授

向坂 彰太郎

福岡大学 教授

長谷川 傑

福岡大学 准教授

平井 郁仁

内 容 の 要 旨

【目的】

NBI 併用大腸拡大内視鏡検査で観察される大腸上皮性腫瘍の白色不透明物質(White opaque substance)の正体が脂肪滴であるか否かを求める。

【対象と方法】

2012 年 5 月から 2013 年 2 月に福岡大学筑紫病院で治療予定の大腸上皮性腫瘍(癌・腺腫) を対象とし、治療前に,NBI 併用拡大内視鏡検査を行い、大腸上皮性腫瘍の腫瘍表層に WOS が存在するか否かを判定した。そして判定した部位から狙撃生検を施行した。生検し た標本をすぐに凍結し、凍結した標本から作成した切片に Oil-red O を用いた脂肪染色 を施行した。染色後すぐに顕微鏡で観察し、腫瘍表層に脂肪滴の有無を判定した。内視 鏡で観察された WOS の存在と組織学的な脂肪滴の存在の相関を求めた。また、パラフィ ン標本から抗 Adipophilin 抗体を用いた免疫染色を行い、0il-red O 染色と同様に内視鏡 で観察された WOS の存在と組織学的な脂肪滴の存在の相関を求めた。

【結果】

連続した WOS 陽性 40 病変、連続した WOS 陰性 40 病変を解析対象とした。Oil-ed 0 染色

では、WOS 陽性群で 47.5% (19/40)、WOS 陰性群で 5% (2/40)に陽性所見を認めた (P <

(2)

0.009, Fisher's exact test)。また、免疫染色では adipophilin の発現は WOS 陽性群で 100% (40/40)、 WOS 陰性群で 62.5% (25/40)に認めた (P < 0.001, Fisher's exact test)。

【結論】

本研究によりはじめて、内視鏡により視覚化される WOS の正体は、大腸腫瘍上皮に集積 した脂肪滴である可能性が明らかとなった。

審査の結果の要旨

本論文は、NBI 併用大腸拡大内視鏡で観察される大腸上皮性腫瘍の白色不透明物質 (White opaque substance: WOS) の正体に関する臨床研究であった。

1. 斬新さ

本研究により NBI 併用大腸拡大内視鏡で観察される WOS の正体は、大腸上皮性腫瘍に集積し た脂肪滴であることを世界に先駆けて証明した。

2. 重要性

正常の大腸上皮に脂肪滴が集積することはない。しかしながら、今回の研究で NBI 併用大腸拡 大内視鏡で観察される WOS の正体は、大腸上皮性腫瘍に集積した脂肪滴であることがはじめて 明らかとなった。

3. 研究方法の正確性

研究方法の正確性:試験実施計画書を作成し、福岡大学研究倫理審査委員会 (IRB)で審査を 受け、UMIN(ID000011220)に登録した後に研究を開始した。本研究は、前向き観察研究で、正 確に行われていた。

4. 表現の明確さ

表現の明瞭さ:試験の背景、方法、結果、考察ともに明瞭に表現されていた。

5. 主な質疑応答

Q:WOS の陽性と陰性の定義が明確ではないのではないか。腫瘍の 1 カ所でも陽性部位が 確認されたら陽性とするのか。

A:観察部位を一定の腫瘍の最肛門側の観察領域を設定し、その領域における陽性または 陰性の判定を行いました。

Q:複数個病変を認める際の評価、対応はどうするのか。

A:複数個病変を認めるときは、最大径の病変を対象とし、研究に組み入れました。

(3)

Q:複数個病変認める際に、一つの病変に WOS が認めるときは他の病変でも WOS を認める のか。

A:今回の研究では全病変を NBI 併用拡大観察を施行していないため、解りません。

Q:上皮内の脂肪滴の集積と発表したが、上皮細胞内ではないか。

A:説明不足でしたが、上皮細胞内の脂肪滴集積です。

Q:脂肪滴が集積していることの意味合いは明らかではないのか。悪性度との関連はどう なのか。

A:以前、我々が後ろ向きに検討を行った結果、大腸腺腫よりも大腸癌に、粘膜内癌より 粘膜下層浸潤癌に WOS 陽性率が高い結果となりました。したがって悪性度が高いほど WOS の陽性率が高いということが判明しています.現在、前向き研究を行いより高いエベデン スで本知見を証明しているところです。

Q:脂肪染色 (oil red-O 染色)と免疫染色で脂肪滴を観察したが、プレゼンテーション の写真を見ると形態が違うのではないか。免疫染色では微小な脂肪滴の集積で、oil red- O 染色では本当の脂肪滴のように見える。

A: Oil red-O 染色は脂肪そのものを染色するのに対し、抗 adipophilin 抗体を用いた 免疫染色は膜蛋白を染色するため、見え方が異なるのではないかと推測されます。

Q:免疫電子顕微鏡では普通の脂肪滴は円型の形状をしているが、今回の結果では違う形 態を呈している。処理の過程でそうなったのか。Adipophilin の発現はある種の蛋白を観 察しているのだと考えられるが、小胞体が拡大したものを観察しているのかもしれない。

Adipophilin 免疫染色は完全な脂肪滴になる前の前駆段階を観察しているのかもしれない。

A:補足ではありますが、免疫電子顕微鏡で胃の上皮性腫瘍を観察した場合は、胃腺腫は 形状が比較的均一でありますが、癌の場合は腺腫に比べ形状が不整です。ご指摘のように、

蛋白の発現異常がのみを観察している可能性も否定できません。

Q:(脂肪滴が集積する病態に関しては)合成が多いのか、分泌が減少しているのか。

A:我々は、胃上皮性腫瘍に対して遺伝子検索を行いましたが、蓄積する遺伝子群に比べ て、消費する遺伝子群の発現が抑制されるため、脂質が蓄積していることが判明しました。

Q:ライソゾームと結合して消化される可能性がある、その機能が低下すると脂肪滴が集 積する可能性がある。

A:わかりました。

Q:以前、胃上皮性腫瘍で脂肪負荷試験を行っていたが、大腸上皮性腫瘍の場合はどうな るのか。

A:現在、薬学部創剤学教室・松永和久先生が、大腸癌動物モデルによる脂肪吸収メカニ

ズムに関する研究を開始し、検討しています。

(4)

Q:同じ腫瘍で観察する時期によって、食事の前後などで WOS の付き方は異なるのか。

A:今回の研究では検討出来ていません。

Q: WOS が陽性で、脂肪滴が陰性の症例が半数近く認められたが、その症例は何を観察し ているのか。

A: 脂肪滴の密度が低かったため、NBI 併用拡大内視鏡で視覚化されなかったと考察し ました。

Q: 脂肪滴はアルコール脱水で消失するので、凍結切片で染色した方がよかったのでは ないか。

A: Oil red-O 染色については、全例、凍結標本を染色に用いました。

Q: もし、この現象が吸収が原因であれば、上皮下に集積するのではないか。今回の結 果のように脂肪滴が細胞内と、細胞外に存在するのでは意味合いが違ってくる。

A: 脂肪滴の発現は、管腔から脂肪を吸収するのか、血中からの供給からなのか結論は 出ていません。我々は胃上皮性腫瘍では吸収される可能性があることは証明しました。大 腸のエネルギーの大部分は脂肪酸であり、腸内細菌などの影響による腸内環境の変化によ り左右される可能性がある。今後、検討予定です。

Q: 仮に吸収が原因の時は、リンパ管でも脂肪が確認されなければならない。複数病変 がある際は、同じ腸管内に存在するのに WOS の有無が異なる事は考えにくく、吸収説は考 えにくいのではないか。

A:右側結腸に短鎖脂肪酸が多いとの報告もあり、占居部位に依存している可能性もある ため今後の検討が必要と考えます。

Q: 腫瘍の中でも WOS 陽性部位と陰性部位が混在しているのか。

A: 混在しています。

Q: 同一病変で WOS の陽・陰性で組織が異なるのか。また、深達度の違いはあるのか。

A: WOS の形態に関して前向き試験が進行中であり、今後発表予定です。右側結腸に浸潤 癌が多く、悪性度が高いほど WOS 陽性率が高い傾向があります。

Q: 脂肪滴が浮かび上がるような波長はないのか。

A:血管は特異的な波長があるが、WOS の場合は白い光を投射しても狭帯域光観察でも視 覚化されず、波長依存性はありません。物理的にミー散乱を起こすため、光を投射すると 強い後方散乱を起こすため白色の物質として視覚化されると考えています。

Q: 脂肪滴を蛍光顕微鏡で観察すると Green に観察される。ライソゾームなど自家蛍光 がある。蛍光顕微鏡の波長でみると良いのではないか。

A:了解しました。

(5)

Q: 大腸の正常上皮では観察されないのか。

A:観察されません。腫瘍のみに観察されます。

Q: 陰窩の深い部位には adipophilin の発現は観察されなかったのか。

A:今回の検討では観察されませんでした。しかし、胃癌の場合では陰窩に観察されるこ ともあり、脂質代謝異常に関連する遺伝子がさらに変異しているのではないかと考えます。

Q: 大腸上皮性腫瘍で pit pattern 分類があるが、違う視点で臨床に応用できる部分は ないのか。

A:WOS の形態により診断が可能であると考えます。WOS の形態は上皮の構造を反映して いると考えますが、今後の検討が必要です。脂質代謝異常が組織の発生、病態に関係して いるとも考えられます。

本論文は、斬新さ、重要性、研究方法の正確性、表現の明快さにおいて優れており、学

位論文に値すると評価された。

参照

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