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雑誌名 久留米大学コンピュータジャーナル

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(1)

著者 江藤 智佐子

雑誌名 久留米大学コンピュータジャーナル

巻 31

ページ 19‑28

発行年 2017‑02‑01

URL http://hdl.handle.net/11316/583

(2)

要旨 要旨 要旨 要旨::::

本研究では、教員としての態度、能力を育成することを目的とした教職「教育指導演習」の授業事例 を検討することである。具体的には、教育方法として教育現場を想定したロールプレイングと、自分を 客観視し相対化することで自己成長を促すコーチングについて、ICTを活用した事例を取り上げること にする。教職「教育指導演習」では、旧科目である教職「総合演習」での「総合的な学習の時間」の授 業実践を視野に入れつつ、クラス運営や生徒指導、進路指導などの内容を横断的に学習する授業内容で 行うことにした。

授業内では教員としての意識醸成のために、常に教員として考え振る舞うロールプレイング形式で行 った。ICTの動画機能を活用したセルフコーチングでは、気づきを促す省察的学習を実践することで、

態度能力の育成につながった。

1. 研究の 研究の背景と目的 研究の 研究の 背景と目的 背景と目的 背景と目的

1.1 研究の背景 研究の背景 研究の背景 研究の背景

教職課程において集大成となる科目は

4

年次の「教育実習」といっても過言ではない。しか し、この「教育実習」において、

2008

年度頃から実習校からのクレームが年々増加し、母校 実習したにもかかわらず実習校からの評価が「

D

(不可)」判定という事例も生じるようにな った。実習校からのクレームで多い内容は、大別すると

3

タイプほどある。一つは、遅刻、欠 席、身だしなみの乱れなど、教員以前の社会人としてのマナーの欠如に対する指摘である。二 つ目は、担当教科に対する学力不足である。板書や実習日誌での文章の乱れ・誤字だけでなく、

担当教科に対する学力低下に対する指摘である。そして三つ目は、生徒指導や発問への対応が できないという柔軟性、状況対応能力欠如に対する指摘である。さらに、指導案の書き方や授 業運営に関する技能に対する指摘もあるが、教育実習が初めての実践の場ということもあって か、前述の

3

タイプのクレームに比べ、実習校からは要望に近いレベルに落ち着いている。こ のように、実習校からのクレームが多いタイプを類別すると(教員としての)態度の欠如、(教 科に関する専門の)知識不足、(横断的な対応)能力不足と言い換えることができる。

教員養成系ではない久留米大学のような私立大学では、教職課程の科目(中・高免許)にお いても「演習」の授業は

2

年次の「教材研究」、

3

年次の「教科教育の研究」、そして

3

年次後 期の教職「教育指導演習」くらいであり、約

9

割は講義科目中心となっている。教職「教育指 導演習」は、「教育実習」に出る前の直前の演習科目として「教科教育の研究」と共に教職課 程カリキュラムの中で重要な技能、態度育成の授業という役目を担っている。

ICT を活用した省察的学習 を活用した省察的学習 を活用した省察的学習 を活用した省察的学習

-教職 教職 教職 教職「教育指導演習」における教授法に焦点をあてて 「教育指導演習」における教授法に焦点をあてて 「教育指導演習」における教授法に焦点をあてて 「教育指導演習」における教授法に焦点をあてて- - - -

Study of Reflective Learning using ICT:

Focusing on Teaching of Instruction exercises for Teacher-Training Course Student

江藤 智佐子

Chisako Eto

†久留米大学 文学部

Faculty of Literature Kurume Univ.

[教 材 研 究]

(3)

1.2 研究の目的 研究の目的 研究の目的 研究の目的

経験学習や実践的学習においては、実践することに注力し、そこで身につけるべき能力の 獲得を検証することが難しくなっている。演習科目においても同様の現象がみられる。演習科 目の評価は主観的な側面が出やすいため、評価がしやすいように技能の獲得に目が向けられが ちだが、横断的な学習をすることで能力の獲得にもつながってくる。

そこで、本研究では、教員としての態度、能力を育成することを目的とした教職「教育指 導演習」の授業事例を検討するものである。この授業は「教科教育」が教科に関する指導を中 心とした授業であるのに対し、「教育実習ができるための知識、技能、態度が身についたか」

という到達目標以外は、各担当教員の裁量にゆだねられている段階であるため、演習を通して 科目横断的な運営が可能となっている。そのため、「総合的な学習の時間」を想定した、授業 運営やアクティブラーニングを実践することも可能である。具体的には、教育現場を想定した ロールプレイングと、自分を客観視し相対化することで自己成長を促すコーチングの手法を情 報教育センターに設置されている機材等の

ICT

を活用した事例を取り上げることにする。

2. 教職課程における「教育指導演習」の位置づけ 教職課程における「教育指導演習」の位置づけ 教職課程における「教育指導演習」の位置づけ 教職課程における「教育指導演習」の位置づけ

「総合的な学習の時間」の指導方法を目的とした教職「総合演習」(

3

年次後期)は、

2008

(平 成

20

)年

11

月改正、

2009(

平成

21)

4

1

日施行の教員免許法の一部改正

[1]

によって、新設・

必修化された「教職実践演習」と「履修カルテ」が導入されることによって「教職に関する科 目」の位置づけから省かれることになった。

「教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令(平成

20

年文部科学省令第

34

号)」(以下

「改正省令」という)

[1]

は、

2008

(平成

20

)年

11

12

日に公布され、翌

2009

(平成

21

)年

4

1

日から施行され、四年制大学では

2013

(平成

25

)年度から全面実施されることになっ た。久留米大学においても

2010

(平成

22

)年度入学生から「改正省令」に基づいた教職課程 科目にカリキュラムに変更された。この「改正省令」は、「今後の教員養成・免許制度の在り 方について」(平成

18

7

11

日中央教育審議会答申)[2]の内容を受け、具体的に免許法に おいて改正を行うものであった。

この改正により、教職課程において最低限の科目等の改正が必要になった点は、①「総合演 習」が「教職に関する科目」ではなくなり、教育実習の後に②「教職実践演習」(

4

年次後期)

が「教職に関する科目」として新設され、その受講前提条件として「学生が普通免許状に係る 所要資格を得るために必要な科目の単位を修得するに当たっては、認定課程の全体を通じて当 該学生に対する適切な指導及び助言」を行うために③「履修カルテ」を導入することを義務付 けるものであった。「改正省令」の主な変更点をまとめたものが、表1である。

「改正省令」では、従来の教職「総合演習」の継続的な開設について、教職課程の位置づ けは変更されたものの、「平成

22

4

1

日から開始する教職課程においても、『教職に関す る科目』に準ずる科目として、『教科又は教職に関する科目』の中に位置づけた上で、引き続 き開設することも可能である」という見解も示していた。

久留米大学の教職課程ではこの「改正省令」を受け、「教職課程運営委員会」そして「教職 課程委員会」で審議を経た結果、新たに「教職に関する科目」として「教職実践演習」を

4

年次後期に新設し、既存の教職「総合演習」を閉講した上で、

3

年次後期にそれに変わる履修 必修科目として科目区分を「教科又は教職に関する科目」に配置した教職「教育指導演習」(

3

(4)

年次後期)を新設し、

2010

(平成

22

)年度入学生よりこの「改正省令」に対応することとな

った

[3]。つまり「教職に関する科目」の必修科目の数は変えず、履修必修という形で教職「総

合演習」の代わりに科目区分を変えて教職「教育指導演習」を同じ学年に配当する対応を行っ たのである。

ではなぜ

3

年次後期に教職「教育指導演習」が新たに配置されたのだろうか。それは、毎 年発生する

4

年次の「教育実習」での実習校からのクレーム対応がその背景にあったからであ る。久留米大学の教職課程では、「教育実習」に必要な教科に関する知識や技能を育成する教 科教育に関する科目の指導を英語、国語、地理、歴史(一部を除く)以外は主に非常勤講師が 担当している。これは多くの私立大学においても同様の課題となっている。教職課程には

4

年次に「教育実習」があるが、週

1

回の授業時間数で授業ができるまでの技能、態度能力を育 成することは困難である。そのため、教職課程を履修している学生対応として、実習でクレー ムが出ないレベルの最低限の学力と能力を身に付けさせるためには、授業時間外の学生指導が どうしても必要になってくる。授業時間外での対応や学内施設の利用申請、休暇中の時間を使 っての学生指導など授業科目外での対応が増えることは、熱心な非常勤講師であればあるほど 指導上の限界も生じてくる。また、

2015

年度頃まで実習中に発生したクレーム対応は、

4

年次 のみを担当する「教育実習」全体指導の専任教員にその対応が迫られていたため、

3

年次まで の学生状況が分からず、過重な負担となっていた。専任教員が主要科目(特に演習科目)を担 当する方が望ましいが、教職課程が各学部教育の課題として取り扱われていなかったこと、そ して教職課程の運営が文学部のみが主に担当しているという偏りも「教育実習」でのクレーム 実態が各学部にフィードバックされず対応が遅れたり、問題の減少につながらなかったりする 要因にもなっていた。

実習校からのクレーム対応という観点からも、「教育実習」において最低限の知識、技能、

(5)

態度を身につけるために、

3

年次後期に実習前指導の意味を兼ねた教職課程の科目が必要であ ることが、「教職課程運営委員会」「教職課程委員会」で協議され、「教育指導演習」が「総合 演習」に代わる科目として

3

年次後期に位置づけられるようになったのである。

3. 教員と 教員としての態度能力の育成 教員と 教員と しての態度能力の育成 しての態度能力の育成 しての態度能力の育成

講義などの座学中心の授業で態度能力の育成や自発的な学習を行うことは容易ではない。教 職課程の開講科目の中でも少人数の演習科目である「教科教育の研究」では、主に教材研究と 模擬授業を行っている。つまり、教科に関する専門的な知識と模擬授業の技能を習得すること に主眼が置かれて授業構成となっている。そこで、教職「教育指導演習」では、旧科目である 教職「総合演習」での「総合的な学習の時間」の授業実践を視野に入れつつ、「教科教育の研 究」ではあまり注力されないクラス運営や生徒指導、進路指導などの内容を横断的に学習する 授業内容を行うことにした。

本章では、教職「教育指導演習」の中でも、態度能力を育成するための教育方法として、ロ ールプレイングとスマートフォンなどの

ICT

機器を用いた授業実践事例を中心に検討したい。

対象とする授業は、

2015

2016

年度の教職「教育指導演習」で動画機能を活用した教育方 法の事例である。2015、2016年度の受講生は各

9

名(商学部、経済学部、法学部、文学部)

であった。

3.1 ロールプレイング ロールプレイング ロールプレイング ロールプレイングによる による による による教員意識の醸成 教員意識の醸成 教員意識の醸成 教員意識の醸成

久留米大学「教職課程運営委員会」では、毎年

10~ 11

月の学園祭の時期にその年に実習を 行った学校からの意見聴取を行う「教育実習懇談会」を実施している。これは、実習校からそ の年の教育実習生の実情や大学への要望等の意見交換を行う取組みである。その懇談会の際に 実習校から毎年挙げられる内容には、「教員としての意識の欠如」、「社会人としてのマナーや 常識の欠如」など、学生気分を引きずったまま実習に臨む学生へのクレームが指摘される。大 学の授業を見てみると、授業前の挨拶はなく、校内で挨拶をする学生も少ない。また服装も自 由であり、授業態度も

90

分姿勢を正して授業を受けている学生を見るほうが珍しいくらいで ある。このような学生文化の中で日常を過ごしている学生に、週

1

2

回の教職課程の授業で

「教員」を意識させることは難しい。学生ではなく教員としての意識を持ってもらうためには どのようにすればよいのか、試行錯誤の結果、授業内の服装と敬称を変えること、つまり見た 目や型を変えることで、学生気分との切り替えを図ることにした。

身だしなみについては、学生ではなく「毎回教壇に立って、生徒指導の練習をします。授 業内では常に『教師として』周囲に認められる身だしなみ、言葉遣い、態度・振る舞いが求め られます」という基準を設け、シラバスに明記した。この基準をもとに初回から

3

回目の授業 くらいまでは、「生徒指導」での服装指導というテーマのグループディスカッションと相互評 価による指導練習を行った。ワークでは服装指導だけでなく、実習予定校の校訓、校則に関す るレポート課題とディスカッションによって、生徒指導の演習も同時に行った。また、スーツ 着用が定着した頃に、数回「ビジネスカジュアルデー」も設け、スーツ以外の服装でも教壇に 立って教員に見えるかを相互評価で実施した。

次に、ロールプレイングによる学生気分との切り替えである。教職「教育指導演習」では、

受講中の学生に対し、「○○先生」と「先生」という敬称で呼ぶことにした。また、授業設定

(6)

で、教室に入ったら大学ではなく職員室もしくは自分が担当しているクラスの教室と考え、教 員としての言葉遣い、立ち居振る舞い、考え方で行動するという状況設定を行った。つまり、

授業時間中すべてが教員として振舞い考えるロールプレイングという設定である。服装を変え ることで他の授業との切り替えもできるようになり、授業中の態度や姿勢も身だしなみを整え ることで変化してきた。また、受講生たちも「先生」と呼ばれることで回を重ねるたびに、態 度が変化してきた。なぜなら授業中に先生らしい態度や言葉遣いができないことがあると、そ の場で「○○先生」から「○○さん」に敬称を変えて呼ぶことで、どのような態度・振る舞い・

考え方が教員としてふさわしくないかが敬称で分かるようにしたからである。

授業中に教員として考え、行動することが要求されるため、ディスカッションの事例も学 校のリスクマネジメント、クライシスマネジメントを想定した解決策を検討したり、課題解決 型の

PBL

を実践したりした。毎回、臨機応変な対応と「教員として」の姿勢や意見が問われ るため、緊張感を持って授業に臨むことが増えることで、授業回数を重ねるたびに、教員とし ての自覚や振舞を受講生間で意識の共有が育成されてきた。授業回数が半分を超える頃になる と、免許取得のみが目的の資格志向の学生は、このクラスでの教育実習に対する意識とモチベ ーションについてこられなくなるか、意識を変えるかの選択が迫られるようになってくる。受 講学生間でのチェック機能が働き、ぶら下がりのままで授業を受講できないという認識を相互 に持つように変化してくるのである。

3.2 気づきを促す 気づきを促す 気づきを促す 気づきを促す ICT の活用 の活用 の活用 の活用

ドナルド・ショーン

(2008)

は、「反省的実践家」と称し、日々の実践を相対化することを説 いている[4]。自らの実践を客観視する省察は、現在リフレクションとも呼ばれ、経験学習や 体験授業の振り返り等で活用されるようになった。

コーチング(

Coaching

)は、スポーツで用いられる指導方法の一つであったが、現在ビジネ スの現場や教育現場でも活用されるようになり、「相手の能力を最大限に引き出すコミュニケ ーション・スキル」として、また目標達成のためのサポートスキルとしても注目されるように なっている

[5]。コーチのサポートを借りずに自ら設定した目標に向かって PDCA

サイクルを 回すスキルがセルフコーチングである。教員は、教室に入ると誰の助けを借りることもできな い。そのため、元兼(

2015

)が指摘するように、教師として成長し続けるためにはキャリアデ ザインという視点と生涯にわたり学び続ける教師像を持つことが教師に求められる資質・能力 となっている

[6]

。教師として現場で教育を担当するうえで、成長し続けるためにはこのセル フコーチングのスキルを身につけることは必要である。

そこで、ロールプレイングと同時に情報教育センターに設置してある電子黒板や

ICT

機器 を活用し、セルフコーチングも取り入れることにした。なお、電子黒板は、佐賀県の教育実習 では必須の教材として使用されているため、佐賀県で教育実習を行う際は、実習前から電子黒 板に慣れ、板書練習をする必要がある。

セルフコーチングで主に利用した

ICT

機器は、動画機能である。当初模擬授業の動画撮影 には、ビデオカメラを用いていたが、プレビューによる自己採点の際も、全員の動画データを コピーし、受講生に配布するのに時間がかかっていた。そのため、大学生のスマートフォン所 持率が

9

割を超えたこともあり、

2015

年度からはスマートフォンの動画機能を活用すること にした。このスマートフォンの動画機能を使うというアイデアは、「教科教育の研究(福祉)」

(7)

を担当している片岡靖子氏(文学部社会福祉学科・准教授)と

FD

を行っている際に、アドバ イスいただいたものである。

教師役の学生が所持するスマートフォンを使って、模擬授業の内容を生徒役の一人が撮影す ることで、自分の授業を動画記録として残すことが可能となった。また、動画をプレビュー採 点する際も本人所持のデータがあるため、自由に何度でも再生することができる。セルフコー チングは自分を客観視することが目的であるため、撮影した動画を再生する場合、最低

3

日以 上の間をあけることを条件とした。

3.3 評価方法 評価方法 評価方法 評価方法

模擬授業では、相互評価、自己評価、教員評価の異なる

3

つの観点からの評価方法をとるよ うにした。

相互評価は、授業に参加し、その場で評価する他者評価から始める。授業後、生徒役をした 学生が図

1

の評価シートの

6

つの観点(指導案、授業内容、板書・教材、熱意、声の大きさ、

態度・服装・アイコンタクト)で尺度評価をし、総合的な観点でのコメントを記入する。

その後、授業を担当した教師役の学生に対するフィードバックとして、授業への評価と改善 点を指摘しあう意見交換を行う。指摘を受けた学生は、翌週までに指摘された内容について改 善レポートを作成して提出する。尺度評価の中には、客観的な数値目標として声の大きさをデ シベル計で測定することも

2016

年度から取り入れた。なぜなら、教育実習で声が小さいとい う指摘を実習校から受けることがよくあるからである。声の大きさを改善する指導をしても本 人はどの程度の音量が求められているかわかりづらいという指摘があった。そのため、

30

40

人教室でマイクを使わずに後ろの席まで聞こえる大きな声という水準を

70

デシベルとした。

理想的な数値目標は

70

デシベルとしたが、平均

60

デシベルを維持することを基準とした。

次に自分の模擬授業を撮影した動画を再生して採点する自己評価である。これがセルフコー チングに相当する。評価内容は、図1に示すように相互評価と同じ項目である。自己評価が終 わった後、「自分の授業を振り返って」を記入し、省察を行う。

最後に、教員が模擬授業の内容、学生の相互評価、自己評価の

2

つのシートをもとに総合的 に評価を行う。

このように、一回の模擬授業の評価を、①他者評価(直後とその後の採点)、②自己評価(振 り返りシート)、③指摘事項に対する改善計画、④改善計画を実施できているかを相互評価す るディスカッションと最低

4

回の省察的学習を行うことで、自己の成長を促す

PDCA

サイク ルをまわすようにした。他者評価の後に自己評価を行い、そして記入による相互評価だけでな く、それを踏まえたディスカッションを行うことで、受講生相互での授業に対する意識が高ま ってきた。授業開始時点から相互評価と自己評価を行うことで変化した行動例は次のとおりで ある。

①授業での遅刻、欠席はゼロ。授業開始時間

15

分前までには全員が自発的に教室で 授業準備をするようになった。(早く教室に来て電子黒板で板書練習をしたり、授 業後の昼休みを使って漢字書き取りゲームなど、楽しくお互いが学べるゲームをし たりと、受講生同士が積極的に学び合える環境づくりができるようになった。)

②受講生同士のチームワークが生まれ、お互いを高め合うために忌憚の無い指摘をし 合えるようになった。

(8)

③人の話を聴く、話す、声かけをするなど、場面に応じてメリハリのある行動が取れ るようになった。

また、スマートフォンの動画機能を使ったセルフコーチングについて、2016年度受講生

9

名の

VTR

を用いた省察に対する意見をとりまとめたのが表

2

である。

「スマートフォンの動画機能を使ったセルフコーチング」について

5

段階評価で尋ねたと ころ、

9

名のうち

7

名が「

5

とてもよい」、

2

名が「

4

よい」と、全員が肯定的な回答をしてい た。また、「

5

とてもよい」「

4

よい」と回答した理由を尋ねたところ、「客観的に自分を見る ことができる」、「気づかなかったことに気づくことができる」、「後になって自分を見ることが できる」など、自分を相対化することに役立っていることがわかった。さらに、「自分が映っ

(9)

ている動画を見て、ギャップを感じた」ところを尋ねると、できている「つもり」だった自分 ができていないという事実を知るきっかけになったという意見が見られた。

この動画機能を用いたセルフコーチングは、授業の中間時点に

1

回、

10

回目以降

1

回の計

2

回行った。表

2

の振り返りに対する意見は

2

回目の撮影をプレビューしての感想である。

1

回 目の振り返りの際は、内容に対する評価というよりは、できているつもりだった身だしなみさ えもできていなかったという事実を認識する段階であったが、

2

回目になると自分を客観視し、

具体的な改善策を考えられるようになった。

また、「動画機能を使ったセルフコーチングを今後活用しようと思いますか」と尋ねたとこ ろ、約

9

割が「活用する」と回答していた。

14

回目の授業では、この

VTR

振り返りシートをもとに、コーチングスキルを使った振り返 りワークとグループディスカッションも行った。演習を定着させるためにはワークごとにリテ ラシー(話す、書く、聴く)を用いた省察を行うだけでなく、科目横断的な授業への転用を意 識し、理論等による意味づけを行うことも必要である。

4. まとめと まとめと今後の課題 まとめと まとめと 今後の課題 今後の課題 今後の課題

4.1 まとめ まとめ まとめ まとめ

教職「教育指導演習」に関する授業実践事例について、授業自体を教育現場という設定をす ることで、授業内での振る舞いをすべて教員として考え、行動するロールプレイングとして捉 える授業を実践した。これは講義型の授業と異なり、こちらが想定しないケースに直面するこ ともあるが、学生への敬称を「先生」と呼び、服装を整えるようにするだけでも学生気分を切

(10)

り替え、受講生同士が主体的に学ぶ姿勢が生まれ始めるという効果にもつながった。

また、情報教育センターの

ICT

機材を活用することで、従来とは異なる学びの可能性も広 がった。今回は動画機能を用いたコーチングという授業開発事例を取り上げたが、この教育方 法の目的は「気づき」である。主体的に学ぶ姿勢を醸成するためには、本人が「気づき」、そ こから何を学ぶかということが課題となってくる。授業中の使用が制限されているスマートフ ォンも、使用方法を工夫すれば、高価な電子機器を導入することなく授業教材として有効活用 できる。しかし、授業内での使用に関しては、学生の授業に臨む姿勢が確立してからの導入が 適切だろう。

4.2 今後の課題 今後の課題 今後の課題 今後の課題

教職「教育指導演習」の到達目標は「教育実習ができる知識・技能・態度を身につけること」

である。「教育実習」で授業ができるためには「わかる」(知識)だけでなく、「できる」(技能)、 そして能力(態度、コンピテンシー)の

3

つの要素を修得することが不可欠である。なぜなら 教職課程での授業成果は、大学内に評価にとどまらず、実習校での査定授業や教育実習評価と いう外部評価につながっているからである。

語学の授業時間よりも少ない授業時間数で、技能や態度・能力を育成することには限界があ る。授業時間以外でどれだけ受講生たちが自主的に学び、能動的に学ぶスイッチを入れること が課題となってくる。この学生が主体的、能動的に学ぶためのスイッチはどこにあるのだろう か。またどのような刺激を与えれば、自分軸から相手軸で考える共感力を生み出すことができ るのだろうか。本研究の対象となった教職「教育指導演習」では、学生の主体性を引き出すた めに最も効果的だったのは、受講生同士のピアトレーニングであった。授業の初回では規範意 識を認識してもらうために教員は強い指導を行ったが、授業回数を進めるうちに徐々に受講生 に教員の役割を移乗し、受講者間のピアトレーニングを促した。また、教員としてのロールプ レイングを通して、相手の立場になって考える共感力を養うことを意図した「隠れたカリキュ ラム」も行っていた。受講生同士のピアトレーニングを、グループディスカッションやアクテ ィブラーニングを組み合わせて用いることで、徐々に本人たちからのやる気を引き出すように したところに授業運営の意図があった。

本稿では、ロールプレイングによる教員意識の醸成と「気づき」を促す

ICT

を活用した省 察的学習に焦点をあてたが、それらをうまく機能させるための背景として、授業内にはクラス 運営のために必要な様々な要素(

HR

、服装指導、生活指導、日誌の採点、学級通信の作成な ど)を場面設定として取り上げ、横断的・複合的に行っていた。そのプロセスは、一人の学生 が教員になるまでのキャリアデザインを想定したプログラムとしていた

[6]

。教員になるまで の時間軸を縦糸として、学校生活を横糸として横断的に授業運営することで、「総合的な学習 の時間」を自ら体感することで、学生たちが主体的に学ぶ姿勢へと変化したのではないだろう か。

今回、態度・能力がどの程度授業前後で身についたかという評価の検証までは行えなかった。

社会人基礎力や教員の資質などの指標を参考に、授業前後でどのような能力がどの程度身につ いたか検証する必要があるが、今後の課題としたい。

(11)

参考文献 参考文献 参考文献 参考文献

[1]

文部科学省初等中等教育局,「教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令及び教員免 許更新制の実施に係る関係告示の整備等について(通知)」(平成

20

11

12

日),

2008 [2]

中央教育審議会

,

「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成

18

7

11

日中

央教育審議会答申),

2006

[3]

久留米大学教職課程委員会,教職課程履修の手引き,

2009

2012

[4]

ドナルド・ショーン

,

省察的実践とは何か:プロフェッショナルの行為と思考

,

柳沢昌一・

三輪健二監訳

,

鳳書房

, 2007

[5]

岸英光監修・安部哲也編著,コーチング力が見につくトレーニングノート,総合法令出版,

2004

[6]

元兼正浩監修,教職論エッセンス-成長し続けるキャリアデザインのために-,花書院,

2015

参照

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