• 検索結果がありません。

労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の法的位置付け及び法的効果について(2・完)-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の法的位置付け及び法的効果について(2・完)-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
26
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

j「論

−−−−1 ・−−−−j

   労働関係の法律の分野における

  事業主に対する指針の立法絞策上の

法的位置付け及び法的効果について(2・

寺  山

目  次 問題意識の所在 一 検討の対象となる指針等 二 対象となる各指針(以上第27巻第2号) 三 指針の法的位置付け一実体規定に関する立法学的分析  1 個別の法律ごとの実体規定の在り方   ① 雇用対策法関係   ② 平成19年の法改正前の雇用対策法関係   (3)職業能力開発促進法関係   (4)男女雇用機会均等法関係   ⑤ 平成18年の法改正前の男女雇用機会均等法関係   ㈲ 育兄介護休業法関係   ⑦ 労働時間等設定改善法関係   ㈲ パートタイム労働法関係   ㈲ 平成19年の法改正前のパートタイム労働法関係  2 実体規定における事業主の義務の内容とその程度   (1)実体規定の類型化    ① 事業主の努力義務    ② 事業主の配慮義務    ③ 事業主の任意性を伴う原則的な義務    ① 事業主の措置義務    ⑤ 事業主の義務

心 フ ̄巳 う 一 一五八

(2)

一五七 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2づ訟(寺山)   (2)指針の補充性  3 実体規定の改正に伴う指針の有無   旧 平成19年の改正雇用対策法の場合   (2)平成16年の改正育児介護休業法の場合 四 指針の法的効果一根拠規定に関する立法学的分析 I  根拠規定における2つの類型 ① 事業主型の構文   (2)行政型の構文  2 根拠規定の法的意味合い   旧 根拠規定の規定振り   (2)指針の包含性  3 根拠規定の変選   旧 外国人労働者指針の場合   (2)新パートタイム労働指針の場合 五 指針の立法絞策上の意義一終わりに代えて(以上本号) 前号(寺山洋一「労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の 立法政策上の法的位置づけ及び法的効果について(1)」香川法学第27巻 第2号,平成19年9月)では,本稿において検討の対象となる指針等の 範回並びに指針の根拠規定及びそれに関連する実体規定に関し,最近の労 働立法に係る新旧対照表を参考にしつつ,論述を行った。  そこで本号では,前号において提示した指針の根拠規定及びそれに関連 する実体規定の具体的内容に検討を加えることにより,指針の立法政策上 の法的位置付け及び法的効果について考察を進めたい。  そのため,下記三では,主に実体規定に関する立法学的分析を通じて, 指針の法的位置づけについて,また,下記四では,主に根拠規定に関する 立法学的分析を通じて,指針の法的効果について考察を試みることとす る。 27−3・4−371(香法2008) 一 38 −

(3)

三 指針の法的位置付け一実体規定に関する立法学的分析  1 個別の法律ごとの実体規定の在り方  指針の法的位置づけを考察するに当たって,まず,個別の法律ごとの実 体規定について検討を行うこととする。  ところで,指針に関述する実体規定の粂項については,当該指針の根拠 規定の中に示されているのが通例となっている。末尾に掲げた貢料〔根拠 規定の構造〕は,個別の法律ごとの根拠規定について,法律番号の古い順 に並べたものであり,特に最近,その見直しが行われた重要な根拠規定 を加えている。  そこで以下,資斜に掲げられた根拠規定(1∼9)の順に,指針に関達 する実体規定(波線の箇所)の具体的内容について検討を行うこととする。  田 雇用対策法関係  雇用対策法(昭和41年法律第132号)第9条に基づいて, ① 青少年の雇用機会の確憚等に関して事業主が適切に対処するための指  針(平成19年厚生労働省告示第275号) ② 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するた  めの指針(平成19年厚生労働省告示第276号。以下「外国人労働者指  針」という。)       田 という2つの指針が定められている。        (2)  ①の指針に係る実体規定は,雇用対策法第7粂であり,その具体的内容 として,青少年の雇用機会の確保等について,事業主の努力義務が規定さ れている。        (3)  また,②の指針に係る実体規定は,同法第8粂であり,その具体的内容 として,外国人労働者の雇用管理の改善及び離胆時の再就職援肋措置につ いて,事業主の努力義務が規定されている。 一 五 六

(4)

一五五 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完バ寺㈲ (2)平成19年の法改正前の雇用対策法関係 雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律(平成19年 法律第79号)による改正前の雇用対策法第12粂に基づいて,労働者の募 集及び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることについて 事業主が適切に対処するための指針(平成13年厚生労働省告示第295号。 以下「年齢制限緩和指 −一 針 という。)が定められていた。 この指針に係る実体規定は, 当該法改正前の雇用対策法第7粂であり,       (4) その具体的内容として,労慟者の募集及び採用時における年齢にかかわり のない均等な機会の付与について,事業主の努力義務が規定されている。 (3)職業能力開発促進法関係 まず,職業能力開発促進法(昭和肘年法律第64号)第10粂の2第3 項に基づいて,①実習俳用職業訓練の適切かつ有効な実施を図るため事業 主が講ずべき措置に関する指針(平成18年厚生労働省告示第514号)が 定められている。  ①の指針に孫る実体規定は, 実質的には同条第1項及び第2頂であり,       ㈲ その具体的内容として,労働者の実践的な職業能力の開発及び向上の促進 について規定されている。そして,実体規定の中核である同粂第1項の構 文を見ると 「事業主は, ∼するもの    (6) _ 必要に応じ,∼促進するものとする」とされて いる。この「∼するものとする」という規定例は コ ︲qり KJいニュアンスの義務 を意昧するとともに「必要に応じ,」としていることから,当該構文の 法的意昧合いとしては,事業主の任意性を伴う原則的な義務と考えられる。  次に,同法第10粂の5に基づいて,②労慟者の職業生活設計に即した 自発的な職業能力の開発及び向上を促進するために事某主が講ずる措置に 関する指針(平成13年厚生労働省告示第296号)が定められている。       (7) ②の指針に係る実体規定は,同法第10条の3及び第10条の4であり, その具体的内容として,労働者の瞰業生活設計に即した白発的な職業能力 の開発及び向上の促進について規定されている。そして,両粂の規定振り 27−3・4−369(香法2008) 一 40

(5)

についても,上記①の指針の場合と同じ構文をしており,それ故,当該構 文の法的意昧合いとして仏事業主の任意性を伴う原則的な義務と考えら れる。  殼後に同法第士2条の2第2項に基づいて,③労働者の熟練技能等の 習得を促進するために事業圭が講ずる措置に関する指針(平成18年厚生 労働省告示第516号)が定められている。       (8)  ③の指針に係る実体規定は,同条第1項であり,その具体的内容とし て,労働者の熟練技能等の効果的かつ効率的な習得による瞰業能力の開発 及び向上の促進について,事業主の努力義務が規定されている。  (4)男女雇用機会均等法関係  まず,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する 法律(昭和47年第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)第10 条第1項に基づいて,①労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に 関する規定に定める事項に関し,事業主が適切に対処するための指針(平 成18年厚生労働省告示第614号。以下「新男女雇用機会均等指針」とい       ㈲ う。)が定められている。  ①の指針に係る実体規定は,同法第5条から第7条まで及び第9条第1        (聯 項から第3項までであり,その具体的内容として,性別を理由とする差別 の禁止,性別以外の事由を要件とする楷置(問接差別の禁止)及び婚姻, 妊娠,出産等を理由とする不刊益取扱いの禁止等について,事業主の義務 が規定されている。  次に同法第11粂第2項に基づいて,②事業主が職場における性的な 言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき楷置についての指針(平 成18年厚生労働省告示第615号。以下「セクハラ防止措置指針」という。) が定められている。       ㈲)  ②の指針に孫る実体規定は,同粂第1項であり,具体的には,徴場にお ける性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置について,事某 一五四

(6)

一 互ニ 労働関係の法律の分野における事業圭に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完パ寺山) 主の措置義務が規定されている。  最後に,同法第13条第2項に基づいて,③妊娠中及び出産後の女性労 働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるように するために事某主が講ずべき措置に関する指針(平成9年労働省告示第 105号)が定められている。       (12)  ③の指針に係る実体規定は,同粂第1項であり,女性労働者が保健指導 又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために必要 な措置について,事業主の措置義務が規定されている。  (5)平成18年の法改正前の男女雇用機会均等法関係  雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及 び労働基準法の一部を改正する法律(平成18年法律第82号)による改正 前の男女雇用機会均等法第21粂第2項に基づいて,事業主が職場におけ る性的な言勁に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項について いっ 針(平成10年労働省告示第20号。以下「セクハラ防止配慮指針」と 。)が定められていた。  この指針に係る実体規定は,当該法改正前の男女雇用機会均等法第21        回 条第1項であり,その具体的内容として,事業主が職場における性的な言 動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項について,事業主の 配慮義務が規定されていた。  (6)育児介護休業法関係  育見休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法 律(平成3年法律第76号。以下「育児介護休業法」という。)第28条に 基づいて,子の養育又は家族の介護を行い,又は行うこととなる労働者の 朧業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずベ き措置に関する指針(平成16年厚生労働省告示第460号。以下「新育児        (14)介護休業指針」という。)が定められている。 27−3・4−367(香法2008) 42

(7)

 この指針に孫る実体規定のうち,その条項が根拠規定に明示されている ものは,同法第21条から第27条までであり,その具体的内容として,育 見休業等に関する定めの周知等の措置(第21粂),雇用管理等に関する措 置(第22粂),三歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労 働者等に関する措置(第24条)及び再雇用特別措置等(第27条)につい ての努力義務,労働者の配置(第26条)についての配慮義務,勤務時間 の短縮等の楷置等(第23条)についての措置義務が規定されている。  (7)労働時間等設定改善法関係  労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号。 以下「労慟時間等設定改善法」という。)第4粂第1項に基づいて,労慟 時間等設定改善指針(平成18年厚生労働省告示第197号)が定められて いる。       匿  この指針に係る実体規定は,同法第2条であり,その具体的内容とし て,労慟時間等の設定の改善を図るために必要な措置について,事業主及 びその団体の努力義務が規定されている。  (8)パートタイム労働法関係  短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。 以下レヽ匹トタイム労働法)という。)第14条第1項に基づいて,事業主 が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指 針(平成19年厚生労慟省告示第326号。以下「新パートタイム労働指針」       帥という。)が定められている。  この指針に係る実体規定は,同法第3条第1項の事業主が講ずべき雇用 管理の改善等に関する措置等であり,具体的には,パートタイム労働者の 雇用管理の改善等に関する措置等について努力義務が規定されている。 ︸ 百心

(8)

一 五 一 労働関係の法律の分野における事栗主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完戸寺山)  (9)平成19年の法改正前のパートタイム労働法関係  短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律  (平成19年法律第72号)による改正前のパートタイム労働法第8粂第1 項に基づいて,事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のため の措置に関する指針(平成5年労働省告示第n8号。以下「旧パートタイ ム労慟指針」という。)が定められていた。  この指針に孫る実体規定は,当該法改正前のパートタイム労働法第3粂 第1頂の事業主が講ずべき雇用管理の改善等のための措置であり,具体的 には,パートタイム労慟者の雇用管理の改善等を図るために必要な措置に ついて努力義務が規定されていた。  2 実体規定における事業主の義務の内容とその程度  田 実体規定の類型化  上記1では,個々の法律ごとの実体規定を取り上げたが,ここでは,そ れらの実体規定について,事業主の義務の内容とその程度に着目し,その 類型化を試みることとする。  そうしてみると,実体規定における事業主の義務の内容とその程度につ いては,次に述べるように,事業主の努力義務,配慮義務,任意的な判断 を伴う原m的な義務,措置義務及び義務という,5つの類型に分けること ができると考えられる。   ① 事業主の努力義務       ㈲  第一は,事業主の努力義務であり,雇用対策法第7粂及び第8粂,平成 19年の法改正前の雇用対策法第7粂,殲業能力開発促進法第12条の2第 圭項,育兄介護休業法第21条,第22条,第24条及び第27条,労働時間 等設定改善法第2条,パートタイム労働法第3粂第1項並びに平成19年 の法改正前のパートタイム労働法第3粂第1項に見られる。この事業主の 努力義務という類型は,5つの範暗の中で多数を占めるものである。  例えば,雇用対策法第7粂は,「事業主は,…(青少年が)有する能力 27−3・4−365(香法2008) 一 44

(9)

を正当に評価するための募集及び採用の方法の改善その他の雇用管理の改 善並びに実践的な職業能力の開発及び向上を図るために必要な措置を講ず ることにより,…に努めなければならない」としている。 ` 〃 心 の場合 ︱ ︱ G をしており ・ム司 「その他の」という例示を表す法令用語を用いる規定の仕方 それ故,事業主が講ずる「雇用管理の改善」として,「募集 及び採用の方法の改善」といった例を掲げているのみで,その内容が網羅 的かつ限定的に示されているとはいえない。また,「実践的な職業能力の 開発及び向上を図るために必要な措置」という文言についても,その内容 が具体的に示されているとはいえず,事業主による判断の余地が残されて いると考えられる。  さらに「努めなければならない」 該措置が講じられる程度については, れていると考えられる。   ② 事業主の配慮義務 という語意として,事業主により当 多少なりとも事業主の判断に委ねら  第二は,事業主の配慮義務であり,平成18年の法改正前の男女雇用機       ㈲会均等法第21条第1項及び育児介護休業法第26条に見られる。  例えば,平成18年の法改正前の男女雇用機会均等法第21粂第1項は,  「事業主は,…女性労慟者がその労働条件につき不刊益を受け,又は…女 性労働者の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な配慮をし なければならない」としている。  この場合,「∼のないよう…必要な配慮」という規定の仕方をしており, それ故,事業主が配慮する事項について,具体的に示されているとはいえ ず,事業主による判断の余地が残されていると考えられる。  また,「配慮」という語意として,事業主により当該配慮がなされる程 度については,多少なりとも事業主の判断に委ねられているところもある と考えられる。  ③ 事業主の任意性を伴う原則的な義務 第三は,事業主の任意性を伴う原則的な義務であり 職業能力開発促進 一五〇

(10)

一四九 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完バ寺山) 法第10条の2第1項及び第2項,同法第10条の3及び第10条の4並び に男女雇用機会均等法第5条から第7条まで及び第9条第1項から第3項 までに見られる。 例えば, 職業能力開発促進法第10粂の2第1項は,「事業主は,必要に 応じ,実習俳用職業訓練を実施する j 心 とにより …労働者の実践的な職業 能力の開発及び向上を促進するものとする」とし,同条第2項は,その実 習併用職業訓練について,業務の遂行の過程内で行う職業訓練(OJT)と 職業訓練又は教育訓練(公共職業能力開発施設で行われる職業訓練,認定 職業訓練又は事業所外で行われる適切な敦育訓練を指す。)とを効果的に 組み合わせて実施するものであって,これにより習得された技能及び知識 についての評価を行うものとされている。  この場合,職業訓練(OJT)と職業訓練又は敦育訓練の組合わせの方法 については,多少なりとも事業主の判断に委ねられており,また,組み合 わされる敦育訓練についても,事業所外で行われる適切な教育訓練(同項 第3号参照)とされている。それ故,事業主が講ずる事項が,網羅的かつ 限定的に示されているとまではいえず,事業主による判断の余地が残され ていると考えられる。  また,「必要に応じ」という語意として,事業主により当該事項が講じ られる程度等については,事業主による任意的な判断が認められていると 考えられる。   ④ 事業主の措置義務        叫  第四は,事業主の措置義務であり,男女雇用機会均等法第 及び第13粂第1項並びに育児介護休業法第23条に見られる。 11条第1条 例えば, 男女雇用機会均等法第11条第1項は,「事業主は,…労働者か らの相談に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管 理上必要な措置を講じなければならない」としている。 tp 心 の場合, をしており [その他の]という例示を表す法令用語を用いる規定の仕方 それ故,事某主が講ずる措置として,労働者からの相談への 27−3・4−363(香法2008) ∠L6

(11)

対応,体制の整備といった例を掲げているものの,当該措置の内容が,網 羅的かつ限定的に示されているとはいえず,事業主による判断の余地が残 されていると考えられる。   ⑤ 事業主の義務  第五は,事業主の義務であり,男女雇用機会均等法第5条から第7条ま で及び第9粂第1項から第3項までに見られる。例えば,同法第5粂は,  「事業主は,労働者の募集及び採用について,その性別にかかわりなく均 等な機会を与えなければならない」としている。  この場合,いかなる事例について,性別にかかわりのない均等な機会と 判断されるのかが,具体的かつ限定的に示されているとまではいえないと 考えられる。  (2)指針の補充性  上記①では,実体規定における事業士の義務の内容とその程度につい て,立法学的観点から考察を加えたが,それによれば,5つに類型化され た実体規定には,ある共通点が見られる。  それは,実体規定において,事業主が講ずる楷置や配慮する事項につい て,文理上,網羅的かつ限定的に示されているとまではいえず,また,そ うした措置等が講じられる程度について,事業主による判断の余地が残さ れている,という共通点である。  これを逆にとらえれば,指針には,事業主が講ずる楷置等を分かりやす く具現化するとともに,それに沿った事業主の取組みが円滑に進むように する,という役割が期待されていると考えられる。この意昧で,事業主に 対する指針は,労働・雇用絞策に沿った形で,行政が法律を円滑に施行す るための効果的手法の一つと考えられよう。  こうした実体規定とのかかわりで指針の性格をとらえるならば,実体規 定の内容を袖充するという点,すなわち,袖充性という特徴が指摘できる のではなかろうか。 一四八

(12)

一四七 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完バ寺山)  3 実体規定の改正に伴う指針の有無  指針の立法政策上の意義を考察するに当たっては,指針がいかなる場合 に改廃されるのか,という点について検討することが有益と考えられる。  そこで,上記1の(1)から㈲までにおいて,実体規定の具体的内容が法改 正により変更されることに伴って,それに関逓する指針が廃止され,又は 指針の内容の一部が削除された場合を探してみると,次に述べる二つの例      坤 が見られる。  (1)平成19年の改正雇用対策法の場合  まず,平成19年の法改正前の雇用対策法第12条に基づいて,年齢制限 緩和指針が定められていたが,当該法改正により,当該指針に係る実体規 定について,事業主の努力義務が義務に移行するとともに,当該指針の根 拠規定(同条)が削除されることに伴って,当該指針も廃止されている(図 表1参照)。  そして,現行の雇用対策法第10条では,「労働者の募集及び採用につい て,厚生労働省令で定めるところにより,その年齢にかかわりなく均等な 機会を与えなければならない」とし,その委任省令により,募集及び採用       聯に係る年齢削限禁止の除外事項が定められている。  これに関し,平成19年の改正雇用対策法の係る国会審議において,「現 行法に基づく年齢指針では除外事由として十項目を定めておりますが,新 たに定めます省令(委任省令のこと…筆者注)におきましては,企業の雇 用管理の実態も踏まえまして,必要最小限の場合に限定する方向で検討し      尚ていきたい]との政府答弁がなされている。  これは,当該法改正により,事業主の努力義務が義務に移行するに際し て,募集及び採用に係る年齢制限禁止に関し,その委任省令で定める除外 事項の範囲を必要最小限の場合に限定するという労働・雇用政策の方向性 と,後述する指針の包含性(四の2の②)という特徴が相容れないという 立法政策上の判断がなされたものと考えられよう。 27−3・4−361(香法20㈲ 一 48

(13)

 (2)平成16年の改正育児介護休業法の場合  次に,平成16年の法改正前の育見介護休業法第25条では,子の看護の ための休暇の措置について,事業主の努力義務が規定されており,その努 力義務の具体的内容である看護休暇に関する事項が指針に定められてい た。  その後,平成16年の改正育見介護休業法により,子の看護のための休 暇の措置についての努力義務が,子の看護休暇の中出があった場合におけ る事業主の義務に変更されるとともに,これに伴って,旧育児介護休業指 針の中から子の看護休暇に関する事項が削除されている(図表1参照)。  これは,当該法改正により,事業主の努力義務が義務へ移行するに際し て,実体規定において事業主の講ずる措置の内容が具体的かつ限定的に明 示されるようになったため,指針の袖充性(前述三の2の(2))という特徴 図表1 実体規定の改正と指針の有無との関係   実体規定の具体的内容    事業主の努力義務 〔具体例〕 o平成19年の法改正前の雇用対  策法第7条  (事業主の貴務) o平成16年の法改正前の育児介  護休業法第25条   (子の看護のための休暇の措   置) + 法改正 による移行   実体規定の具体的内容     事業主の義務 〔具体例〕 o平成19年の法改正後の雇用対  策法第10条  (募集及び採用における年齢   にかかわりない均等な機会   の嬉保) o平成16年の法改正後の育児介  護休業法第16粂の2及び第16  条の3  (千の看護休暇の申出等) + − − − ヽ ゝ X //実体規定`X 1 1 − I に係る − − “ F r   /旨針なし 一 − − ’1 一 四 六

(14)

一四五 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完バ寺山) を活かす素地がなくなったという立法政策上の判断がなされたものと考え    湖 られよう。 四  1 ︲ ︲li ︲ ’15

針の法的効果一根拠規定に関する立法学的分析

根拠規定における2つの類型  根拠規定の構文を検討するために,末尾〔資料〕の各根拠規定の法的効 果に関係する部分(ゴシック体の箇所)を見比べてみると,次のように,2 つの類型に犬別することができる。  (1)事業主型の構文  一つは,「∼に関し(て),事業主が適切に対処するために必要な(指針)」 という構文であり,雇用対策法第9条(貢料の1),平成19年の法改正前 の雇用対策法第12粂(資料の2),男女雇用機会均等法第10粂第1項(資 料の4)及び労働時間等設定改善法第4条第1項(貴料の7)に見られる。  この構文では,[事業主が適切に対処するため]としているように,事 業主が実体規定の内容に洽った対処ができるようにするという点に比重が 置かれており,いわば事業主型の構文ととらえることができよう。  (2)行政型の構文  もう一つは,「∼の適切かつ有効な実施を図るため事業主が講ずべき措 置に関する(指針)」という構文であり,職業能力開発促進法第10粂の2 第3項,第10条の5及び第12粂の2第2項(貢料の3),男女雇用機会 均等法第11粂第2項及び第13条第2項(責科の4),育見介護休業法第 28粂(資科の6),パートタイム労働法第14条第1項(資料の8)並び に平成19年の法改正前のパートタイム労働法第8条第1項(貢料の9)      閤に見られる。  この構文では,「適切かつ有効な実施を図るため」としているように, 行絞が実体規定の内容の円滑な実施を図ることができるようにするという 27−3・4−359(香法2008) 一 50

(15)

点に比重が置かれており,いわば行政型の構文ととらえることができよう。  2 根拠規定の法的意味合い  (1)根拠規定の規定振り  上記1では,指針の根拠規定において,2つの類型があることを明らか にしたが,ここでは,それらの法的意味合いについて検討を行うこととす る。  最初に,事業主型の構文の例として,労働時間等設定改善法第4粂第1 項を取り上げてみよう。  同項では,「適切に対処するために必要な指針(…筆者略…)を定める」 としており,事業主が講ずる楷置の具体的内容を厚生労働省令で定める, とはしていない。すなわち,指針では,事粟主が講ずる措置に直接かかわ る事項のみを取り上げることが求められているわけではなく,むしろ,事 業主によって当該措置が円滑に進められるような事項を,幅広く盛り込む ことが求められていると考えられよう。  その意昧で,指針の根拠規定が事業主型の構文の場合においては,そも        叫 そ払指針の法的拘束力を想定していないものと考えられる。  次に行絞型の構文の例として,育児介護休粟法第28粂を取り上げて みよう。  問項では,「その適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項 を定め」としており,事業主が講ずる楷置の具体的内容を厚生労働省令で 定める,とはしていない。したがって,上記の労慟時問等設定改善法第4 条第1項の場合と同様に,事業主によって当該措置が円滑に進められるよ       鯛 うな事項を,幅広く盛り込むことが求められていると考えられよう。  その意昧で,指針の根拠規定が行政型の構文の場合においても,そもそ も,指針の法的拘束力を想定していないものと考えられる。  この点,旧パートタイム労働指針では,労働基準法など他の労働者保護 法令に規定されている事項を重ねて指針に盛り込んでいたが,新パートタ 一四四

(16)

一四三 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完バ寺山) イム労働指針では,そうした部分について削除されている。  この理由について,平成19年の改正パートタイム労働法に孫る行政通 達では,「これは,改正前の指針(旧パートタイム労働指針のこと…筆者 注)が短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律制定当時の同法の位 置づけを犬きく反映しており,短時間労働者には一般的な労働者保護法令 が適用されないといった誤解を避けるため,他の労倶関係法令の規定を確 詰的に規定し,そのことを周知し,短時間雇用管理者にこれらの事項を管 理させることにより短時開労働者の雇用管理の改善等を図ることに主眼が    叫 あった」としている。  (2)指針の包含性  上記(1)では,根拠規定における2つの類型について,立法学的観点から 考察を加えたが,それによれば,事業主型の撰文及び行絞型の構文には, ある共通点が見られる。  それは,事業主型の構文であれ,次の行絞型の構文であれ,それらの指 針には,事業主が講ずる措置等に直接かかわる事項のみを取り上げること が求められているわけではなく,むしろ,事業主によって当該措置等に 洽った取組みが円滑に進められるような事項を,帽広く盛り込むことが求 められている,という共通点である。  前述した旧パートタイム労慟指針の場合であれば,当該指針の中に,他 の労働者保護法令に規定されている事頂を重ねて盛り込むか否かは,事業 主によって雇用管理の改善等の措置(平成1.9年の法改正前のパートタイ ム労働法第3粂第1項参照)が円滑に進められるために帽広に盛り込ん でおく事項として適切か否かという立法政策上の判断に帰せられることと なる。  このように政府の労働・雇用政策の考え方を,指針の内容に適切に反映 させることが可能となるのは,上記①で述べた根拠規定の規定振りによる ものである。 27−3・4−357(香法2008) 52 −

(17)

 こうした根拠規定とのかかわりで指針の性格をとらえるならば,帽広く 有益な事項が包含されるという点,すなわち,包含性という特徴が指摘で きるのではなかろうか。  3 根拠規定の変遷  上記1及び上記2では,根拠規定の具体的内容に着眼し,その類型化及 び法的意味合いについて検討を行ったが,ここでは,根拠規定がどのよう な法律や行絞通達に基づくのか,という点に着目し,行政通達に基づく指 針から法律に基づく指針への移行がなされた場合について検討を行うこと とする。  このような根拠規定の変選が行われたものとしては,次に述べる2つの 例が見られる。  (1)外国人労働者指針の場合  まず,外国人労慟者指針の前段階として,既に行政通達の形式で,「外        坤 国人労慟者の雇用・労働粂件に関する指針」が定められていた。  そうしてみると,外国人労働者指針に至るまでの経緯は,行政通達に基 づく指針を,個別法に基づく指針(外国人労働者指針)に移行したものと, とらえることができよう(図表2参照)。 平成5年 図表2 外国人労働者指針に至るまでの経緯        平成19年 行絞通達に基づく指針 平成19年の法改正後の雇用対策 法第9粂に基づく指針 (外国人労働者指針)  (2)新パートタイム労働指針の場合  また,新パートタイム労働指針の前の旧パートタイム労働指針の前段階 として,既に告示の形式で,国家行政組織法第14粂第1項に基づいて, 一四二

(18)

根 ` 7 -こ を挙げる 拠規定の格上げとされる立法絞策の一つであり れを広い視野から見た なお,上記(1)及び(2)で見てきたような根拠規定の変遷は,一般的に, とができよう。 特徴が故に,その前段階にある行絞通達に基づく指針の内容を,比較的容 こうした根拠規定の変遷が行われ得る要因として,指針の包含性という 平成珀年 平成19年の法改 正後のパートタ イム労働法第14 条第1項に基づ く指針  (新パートタイ ム労働指針) く 易に,それに続 告示に基づく指針に盛り込むことが可能となるという点 `〃 こ 本稿の特色は, ︰ ︰ 一 ず 旨針の立法政策上の意義を考察するため,個々の指針の 一 54 − 27−3・4−355(香法2008) 五       ㈲ ともできるのではなかろうか。 場合,労働・雇用政策の目的を段階的に実現するという,労働立法におけ る漸進性の一例として,とらえるこ ︲ ︲ 4 4 ・ w

旨針の立法政策上の意義一終わりに代えて

一四一 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完戸寺山) パートタイム労働者の処遇及び労働条件等について考慮すべき事項に る指針(平成元年労働省告示第39号)が定められていた。 また さらに当該指針の前段階として,既に行絞通達の形式で, 叫 関す ノ々− 卜 タイム労慟対策要綱が定められており,当該要綱の第3として「パートタ 図 イム労働に関する指針」が記されている。 そうしてみると 達に基づく指針を 新パートタイム労働指針に至るまでの経緯は,行政通 一般的な国家行政組織法に基づく指針に移行し,さら にこれを,個別法に基づく指針(旧パートタイム労慟指針及び新パートタ イム労働指針)に移行したものと とらえる ty 心 とができよう(図表3参照)。 図表3 新パートタイム労働指針に至るまでの経緯 昭和59年 行政通達に基づ く要綱(指針を 含む。) 平成元年 国家行絞組織法 第14条第1項に 基づく指針 平成5年 平成19年の法改 正前のパートタ イム労働法第8 条第1項に基づ く指針  (旧パートタイ ム労働指針)

(19)

内容白体に目を向けるのではなく,むしろ,指針の根拠規定及びそれに関 連する実体規定に着眼し,それらの規定に関して,立法学的観点から分析 を加えるという点にある。  具体的には,上記三において,まず,個々の法律ごとの実体規定の在り 方を検討し,次に,それらの実体規定における事業主の義務の内容とその 程度に着目して,5つの類型化を試みた。  また,その類型化という検討作業の中から,指針の袖充性という性格を 明らかにするとともに,実体規定の改正に伴う指針の有無について分析を 行った。  また,上記四において,指針の根拠規定の構文に関し,2つの類型とし て整理し,次に,根拠規定の規定振りについての検討作業の中から,指針 の包含性といケ匪格を明らかにした。加えて,根拠規定の変選についての 分析を行った。  こうした論考の思考過程を省みれば,指針の立法政策上の意義を考察す るには,その根拠規定及びそれに関達する実体規定を解明することが有意 義であり,それはとりもなおさず,最近の労働立法を立法学的観点から分 析することに他ならないことに気づく。  例えば,昭和から平成にかけての労働立法の特色の一つとして,罰則を 伴う義務規定(労働基準法等)に加えて,罰則を伴わない義務規定(育児 介護休業法等),更には,努力義務,配慮義務又は措置義務といった,事 業主の種々の義務の形態が登場してきている。本稿で論じた事業主に対す る指針は,こうした事某主に対する義務の多様化という立法事象について 一体として理解するための視座を提供するものと考えられる。  就業形態や働き方が多様化しつつある現代の雇用社会において,労働関 係の法律の分野における事業主に対する指針は,その重要性を一層帯びつ つある。本稿が,事業主に対する指針に関し,立法学的観点からの考察の 先駆として広く役立つことができれば,望外の幸せである。 一四〇

(20)

労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完言寺山) 巾 ② ⑤ 困 ⑤ ㈲ これらの指針は,本稿(1)の執筆時点では制定されていなかったものである。 本稿巾103頁参照。 同上。 本槙巾102頁参照。 本稿田101頁参照。  例えば,前田正道擢『ワークブック 法制執務 全訂』(ぎょうせい,昭和58年) 639頁では,汗…するものとする]は,「…しなければならない」がある一定の義務 付けを意昧するのに対して,通常は,それより若千弱いニュアンスを表し,一般的  な原則あるいは方針を示す規定の述語として用いられる。]としている。 ⑦ 本稿田99頁−101頁参照。 ㈲ 本稿巾99頁参照。 ㈲ 新男女雇用機会均等指針の薗段階として,平成拐年の法改正前の男女雇用機会均  等法第10条第1項に基づいて,募集及び採用並びに配置,昇進及び教育訓練につい  て事業主が適切に対処するための指針(平成10年労働省告示第19号。以下「旧男  女雇用機会均等指針」という。)が,さらにその前段階として,平成9年の法改正前  の同法第12条に基づいて,事業主が講ずるように努めるべき措置についての指針(昭  和61年労働省告示第4号)が定められていた。 (1o)本稿(1)n3頁一n5頁参照。 頗 本稿(1)112頁参照。 ㈲ 本稿(1)n1頁参照。 ㈲ 本稿(1)112頁参照。 ㈲ 新育兄介護休業指針の前段階として,育見介護休栗法第28条に基づいて,子の養  育又は家族の介護を行い,又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両  立が図られるようにするために事業主が講ずべき捺置に関する指針(平成14年厚生  労働省告示第13号。以下「旧育見介護休業指針」という。)が,さらにその前段階  として,事業主が講ずべき措置に関する指針(平成7年労働省告示第108号)や事  業主が講ずべき措置に関する指針(平成3年労働省告示第73号)が定められていた。 I 本稿①97頁−98頁参照。 ㈲ 新パートタイム労働指針は  ある。 ㈲  一三九 末H 本 副)の執筆時点では削定されていなかったもので  労慟関係の法律の分野における努力義務規定について,ソフトローというアプロ ーチから幅広く論及するものとして,荒木尚志「労働立法における努力義務規定の 機能一日本型ソフトロー・アプローチ?−」中嶋士元也先生還暦記念論集『労働関 係法の現代的諜題』(2004年,信山社)19頁−45頁,荒本尚志「労慟法におけるハ −ドローとソフトロー:努力義務規定を中心に」ソフトロー研究第6号25頁−49 頁,荒本尚志「努力義務規定にはいかなる意義があるのか」日本労働研究雑詰525 27−3・4−353(香法2008) 一 56

(21)

I ㈲ ㈹ 号70頁−73頁がある。  また,努力義務規定から義務規定への移行に関する立法絞策を論ずるものとして, 寺山洋一「労働の分野における努力義務規定から義務規定への移行に関する立法政 策について」季刊労働法199号116頁−エ40頁参照。  「その他の」の用語について,前田・前掲注㈲620頁では,汗その他の」の前にあ る字句が「その他の」の後にある,より内容の広い意味を有する字句の例示として, その一部を成している場介に用いられる」としている。  平成19年に成立した労働契約法(平成19年法律第128号)第17粂第2項参照。  行政の解説書における「措置義務」の用例について,例えば,平成3年の育児休 業等に関する法律の制定当初は,「事業土の行うべき義務又は努力義務」としていた が(高橋栃太郎編著『詳説 育兜休栗等に関する法律』(労務行政研究所,平成3年)  278頁,桧原亘子『詳説 育児・介護休栗法』(労務行政研究所,平成8年)445頁),  その後は,「事業主が講ずべき措置義務又は措置努力義務」と変わっている(厚生労  働省雇用均等・児童家庭局編『改訂新販 詳説 育完・介護休業法』(労務行政,平  成14年)592頁)としている。   なお,「楷置」の用語について,法令用語研究会編『法律用語辞典 第3販』(有  斐閣,2006年)886頁では,「ある問題に対する対策,施策等その問題を処理するた  めにとられるもろもろの手段をまとめていう場合が多いjとしている。 贈 他方,指針に関連する実体規定が改正された場合において仁指針が存続する例  も見られる。   例えば,平成9年の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確憚等のた  めの労働省関係法律の整備に関する法律(平成9年法律第92号)により,前掲注㈲  の事業主が講ずるように努めるべき措置についての指針に係る実体規定について,  事業主の努力義務が義務に移行したことに伴って,当該指針が廃止され,旧男女雇  用機会均等指針が定められることとなった。   また,平成18年の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関す  る法律及び労働基準法の一部を改正する法律により,セクハラ防止配慮指針(本文  三の1の㈹参照)に係る実体規定について,事業主の配慮義務が措置義務に移行し  たことに伴って,当該指針が廃止され,セクハラ防止措置指針(本文三の1の困参  照)が定められることとなった。   これらの場合は,指針に係る実体規定の改正が行われたとして仏なお指針の袖  充性が要請されるという立法政策上の判断がなされたものと考えられよう。 蝉)この点,男女雇用機会均等法第5粂は,「労働者の募集及び採用について,その性  別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」としており,雇用対策法第  10条の規定とは,「その○○にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と  いう構文の点において同様であるが,委任省令の形式ではなく,指針の形式が採ら 一 一 一 一

(22)

一三七 労慟関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完言寺山)  れている。 匈)官報(号外)平成19年4月12目○第166回国会衆議院会議録第21号7頁。 (24)育児介護休業法に係る指針の例であるが,指針に盛り込むべきか否かの判断基準  に関し,行政の解説書(高橋・前掲注岡278頁)では,「本粂第一頂の「講ずべき措  置」のなかには,育児休業の取得に関する事項は含まれません。これは,本粂第二  条から第七条までの育見休業の権利に関する規定は労働者がその意思表示により育  児休業をすることができるようにするための民事的な効果を第一の目的として設け  たものであり,第ハ粂から第十一条までに規定する事業主の講ずべき措置が国が一  定の政策目的で設けた努力義務又は義務であるのとはその趣旨を異にする」として  いる。   この考え方を推し量れば,指針に関連する実体規定(事業主の努力義務,配慮義  務,措置義務等)については,国の労働・雇用政策目的で設けられた事業主の義務  という共通の性格を有するものと考えられよう。 聯 なお,平成19年の改正職業能力開発促進法第10粂の5では,「その有効な実施」  を「その適切かつ有効な実施」に改めているが,この「適切かつ」が加わることに  より,その法的意昧合いが変質するものではなく,行政型の構文に合わせるための  形式的な文言の変更と考えられる(本梅1)99頁参照)。 (26)この点,現行の労慟契約法には,関達する指針が定められていないが,その検肘 (26)この点,現行の労慟契約法には,関達する指針が定められていないが ̄,ぐの俑  段階である「今後の労働契約法削の在り方に関する研究会報告書」(平成17年9  15日)においては,「労働契約法制における指針は,それ白体は法的拘束力はない  のの,労使当事者の行為規範としての意昧はあると考えられる」(第1の2の(4)) 月 心︶と  されていた。   仮に,この報告書の考え方を基にある法律の実体規定を想定してみると,もし,  その実体規定が,主に事業主等に対する行勤規範としての性格を有するのであれば,  当該実体規定に関巡し,政府の労働・雇用政策に洽った指針を策定するとともに,  当該指針を踏まえた行政指導等による履行確保という法的枠組みが考えられよう。   他方,その実体規定が,主に裁判規範としての性格を有するのであれば,行政の  関与を広く認めるような指針の策定という法的枠組みは難しいものと考えられよう。 (27)例えば,育児介護休業法に係る指針に盛り込む事項に関して,平成3年の事栗主  が講ずべき措置に関する指針に係る行政の解説書(高橋・前掲注岡278頁)では,事  業主の行うべき義務又は努力義務「の規定に関しその努力目標や努力するにあたり  配慮すべき事項」とし,平成7年の事業主が講ずべき措置に関する指針に係る行政  の解説書(松原・前掲注顛445頁)では,指針となるべき事業主について「事業主が  講ずべき措置を実施するに当たり,当然の前提として道守すべき事項,及び望まし .︶ .︶ もの又は留意が必要であるものとして配言すべき事項の双方が含まれる」として る。 27−3・4−351(香法20㈲ 58 −

(23)

  また,平成14年の旧育見介護休業指針に孫る行政の解説古(厚生労働省雇用均等・  見童家庭局・前掲注岡592頁)では,事業主が講ずべき措置義務又は措置努力義務の  規定以外にも,「各事業所においてもそれぞれの実情に即して講ずることが望ましい  措置や請求権となっている制度についても事業主の方で一定の留意をすることによ  り制度の実効性がより高まるような事項があるため,この法律に開する事項につい  て広く厚生労働大臣が指針を定める」としている。 圈「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行に  ついて」(平成19年10月1目付け基発第1001016号・職発第1001002号・能発第  1001001号・雇児発第1001002号)第3の10の(3)のイ 尚 平成5年5月26日付け基発第329号・職発第414号・能発第128号 ㈲ 昭和59年12月3日付け発基第97号 ㈲ 旧パートタイム労働指針に至るまでの経緯については,桧原亘子r短時間労慟者  の雇用管理の改善等に関する法律』(労務行政研究所,平成6年)43頁−122頁参照。 聯 労働立法における漸進性については,努力義務規定から義務規定への移行など種々  の系統が見られると考えられるが,本稿の趣旨から外れるため,改めて総合的に論  ずることとしたい。 一 一 一 一   l . ノ ヘ

(24)

一三五 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法絞策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完バ寺山) 〔資料〕 1 雇用対策法  (指針) 根拠規定の構造 第九粂 厚生労慟犬臣は、前二灸言寂嶮亜事 に必要な指針を定め、これを公表するものとする。 2 平成19年の法改正前の雇用対策法  (指則 第十二粂 厚生労働大臣は、美訟ドス宗燎亜里 し、事業主が適切l こ対処するため し、事業主が適切C こ対処するた めに必要な指針を定め、これを公表するものとする。 3 職業能力開発促進法 第十粂の二(第一項及び第二項 賂) 3 厚生労働大臣は、前頂に夫尚する実習俳用瞰業訓練の適切かつ有効な実施を図る  ため事業主が講ずべき措置に関する指針を公表するものとする。 第十条の五 厚生労働犬臣は、前二条の規定により労働者の瞰業生活設計にFミした白 して、そ ・͡͡- の適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を公表するものとする。  (熟練技能等の習得の促進) 第十二粂の二(第一項 賂) 2 厚生労働大臣は、前項の規定により゛勤者の熟練才一能等の習得を促進するために  事業主がjずる措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を  公表するものとする。 4 男女雇用機会均等法  (指計〉 第十条 厚生労働犬臣は、意互丿縁坦  肖に定める事項に関し、事業主が追切に対処するために必要な指針(次頂において   「指針」という。)を定めるものとする。  (第二項 略)  (職場における性的な言勣に起因する問題に関する雇用管理上の措置) 第十一粂(第一項 賂) 2 厚生労働大臣は、前 周して、その適切 かつ有効な実施を図るために必要な指計(次項において「指針」という。)を定める ものとする。 27−3・4−349(香法2008) 一 60 −

(25)

 (第三頂 賂) 第十三粂(第一項 略) 2 厚生労働犬臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に掲して、 かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。) ものとする。 (第三項 略) 5 平成18年の法改正前の男女雇用機会均等法  (職場における性的な言勁に起因する問題に関する雇用管理上の配慮) 第二十一粂(第一項 賂) 2 厚生労働犬臣は、前 項において「指針」という。)を定めるものとする。 (第三項 賂) 6 育児介護休業法  (指針) 第二十八条 厚生労慟大臣は、第ニナこ その適切 を定める し万亘:匹㈲針(次 たら癩鳶丈でり規定に基ブき 志が講ず 一三四 帽乱しス、その適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項を定め、これ を公表するものとする。 7 労働時間等設定改善法  (労働時間等設定改善指針の策定) 第四条 厚生労働犬臣は、黄二急仁寓や互畢 レ、事業主及びその団体が適切に 対処するために必要な指針(以下「労働時間等設定改善指針」という。)を定めるも のとする。 (第二項から第四項まで 略) パートタイム労働法 j 針 指 ぐ 第十四粂 厚生労慟大臣は、 めるもののほか、第三条 第六粂から第十一条まで、第十二条第一頂及び前条に定 厘且尽しし、その追切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この節において  「指針」という。)を定めるものとする。 (第二頂 賂)

(26)

一三三 労働関係の法律の分野における事業主に対する指針の立法政策上の 法的位置付け及び法的効果について(2・完パ寺山) 9 平成19年の法改正前のパートタイム労働法 第八粂 厚生労慟犬臣は、前二粂に定めるもののほか、厘且泉慾ニニ し、その適切かつ有効な実施を図るために 必要な指針(以下この節において「指針」という。)を定めるものとする。 (第二項 略) (悩考)個別の法律ごとの根拠規定について、法律番号の古い順に並べたものであり、   最近、その見直しが行われた重要な根拠規定も加えている。     また、波線の箇所は、指針に関連する実体規定を示す部分であり、ゴシック体   の箇所は、指針の法的効果に関係する部分である。 27−3・4−347(香法2008) 一 62

参照

関連したドキュメント

12―1 法第 12 条において準用する定率法第 20 条の 3 及び令第 37 条において 準用する定率法施行令第 61 条の 2 の規定の適用については、定率法基本通達 20 の 3―1、20 の 3―2

・関  関 関税法以 税法以 税法以 税法以 税法以外の関 外の関 外の関 外の関 外の関係法令 係法令 係法令 係法令 係法令に係る に係る に係る に係る 係る許可 許可・ 許可・

この問題をふまえ、インド政府は、以下に定める表に記載のように、29 の連邦労働法をまとめて四つ の連邦法、具体的には、①2020 年労使関係法(Industrial

るものとし︑出版法三一条および新聞紙法四五条は被告人にこの法律上の推定をくつがえすための反證を許すもので

析の視角について付言しておくことが必要であろう︒各国の状況に対する比較法的視点からの分析は︑直ちに国際法

EC における電気通信規制の法と政策(‑!‑...

[r]

本指針の対象となる衛生事業者の範囲は、生活衛生関係営業の運営の適正化 及び振興に関する法律(昭和 32 年法律第 164 号)第2条第 1 項各号に掲げ