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学位論文題名Study on Water Distribution Management of丿flaj Irrigation Systems of Oman

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) ア ブ ド ゥ ラ セ イ フ ア ル ガ フ リ

     学位論文題名

Study on Water Distribution Management     of 丿flaj Irrigation Systems of Oman

(オマーン国アフラジ灌漑システムにおける水配分管理に関する研究)

学位論文内容の要旨

  乾燥・半乾燥地域は地球上の陸域の約4割を占め,7億の人口を擁している。またその土 地の6割は発展途上国に位置しており,これらの地域における持続的農業の堅持は地域の安 定と発展のために不可欠である。乾燥地における水資源の利用と管理は,生物生産ひいては 人間の生存そのものを左右する極めて重要な要素である。

  アラビア半島東部に位置するオマーン国では,アフラジ(aガづ,複数形はファラジヵ匈)

とよばれる独特の灌漑農業が営まれてきた。アフラジそのものは,水源から農村集落と農地 に導水する水利施設のことを指し示すが,そこには特有の水利用形態に対応した水管理シス テムが備わっており,なおかっその管理には地域農民が自ら管理する,いわば農民参加型管 理が実践されてきた。本研究はアフラジにおける水管理の面について,その配分の平等性担 保の仕組みや,干ぱっ時の対応,近代化に伴う水配分システムの変化の実態,灌漑効率の評 価を,フイールド調査をっうじて明らかにし,乾燥地特有の水利システム管理のあり方につ いて検討したものである。

1.年間降水量が100 ‑‑‑200mmにすぎないオマーン国で古くから利用されてきたアフラジ   灌漑システムについて概括した。現代においても3千を越える様々な規模のアフラジが   オマーン国内において利用されており,これらは水源の種類により3タイプに大別され   る。湧水を起源とするアイニ・アフラジ(Aini aflaj),表流水を起源とするガイリ・アフ   ラジ(Ghaili aflaj),それにワジ(涸れ川)の伏流水や地下水を起源とするダウディ・ア   フラジ(Daudi a凪めである。このうちダウディ・アフラジは,イランやアフガニスタン   などにみられるカナート灌漑に類似のものである。

    アフラジの水は,干ばっに対応しうる利用形態がとられている。流水はまず生活用水   として集落で用いられた後,永年生作物(主にナツメヤシ),ついで一年生作物(穀類,

  野菜など)に灌漑される。すなわち,干ばっ時にはまず人聞の生存を確保した後,永年   生作物の枯損を防ぎつつ,水量に応じた一年生作物の作付がなされる。アフラジの水管   理システムは管理責任者(ワキル)を筆頭とした農家組織に依っており,農家はそれぞ   れが所有する水利権に応じた水配分を得ることとなる。

2.アフラジの水は,多くの場合,水量べースではなく時間ベースで配分される。これは干   ばっ時においても平等に水を行き渡らせるための工夫のーっである。アサル(athar)と   よばれる基本時間単位が用いられており,理論上,1アサルは30分となっている。また   ー つの灌漑ローテーションはドーラン(dawran)とよばれ,地区によって異なるが,通   常4日問ないし20日問で1ドーランとなっている。

    時計のない時代から,ローテーション灌漑をできるだけ正確に行うため,農家はさま

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ざまな方法を採ってきた。伝統的によく使われてきたのは太陽と星の運行を用いる方法 である。季節による太陽高度の違いと日長変化に対応する工夫のなされた日時計が広く 用いられてきた。近年,機械時計(クロノグラフ)が一般化しても,保守的な農村社会 ではすぐに時計利用には移行せず,段階的移行にとどまっている。すなわち,時計導入 以前の計時システムから,一部天体運行を使いつつ日単位で時計を利用するシステム,

さらに恒常的に時計を利用するシステムへと変化してきている。いっきに時計利用ヘ移 行 しな いの は, 大き な水 利権 を有 す る農 家の 既得 権に 配慮 して いる ためである。

  3.日長変化や流量変動に対応しつつ,水配分の公平性を保っため,地区毎に農家は様々な     工夫をしてきた。天体運行を使うことにより季節毎に生ずる昼夜の単位時間長の差異を     最小限にするためには,灌漑ローテーションを常時組み替えることで対応している。干     ばつ時の流量減少には,分配する支線水路の数を制限し,灌漑口ーテーションの単位で     ある ドーランを2倍.3倍する,あるいは用水を水槽に一時貯留することで水路損失を     減少させる,などの方法が採られている。事例調査を行った地区では,地形的制約もあ     って非常に複雑な水配分ルールが設けられていた。しかし水配分を時間べースに頼って     いる以上,正確な計時がもっとも重要なことでありながら,時計を使わなぃ伝統的方法     では不正確さは排除しきれていない。

4.2つの ファラジにおいて,その灌漑効率を評価するための調査をおこなった。2002年5   月 から2003年4月 にわ たる ほば1年間 の観測では,両地区の総降水量 は50 mmを下回   り,流量も逓減傾向にあった。この聞,ひとつのアフラジでは流量の減少に対応して2   つの支線に同時に通水せず1支線のみの通水とし,それぞれの支線が有する9日および   10日というドーラン(灌漑ローテ ーション)を統合して19日のローテーションが組ま   れた。干ばっが深刻になったときには,さらに倍の38日のドーランが組まれるに至って   いる。

    一つの灌漑区単位で水需要量と供給量の比を取り,これを需要供給比(D/S,Demand/   Supply Ratio)とした。需要量には基幹作物であるナツメヤシの水消費量を文献値から採   用し算出した。供給量には各地区のアフラジの幹線水路で実測した流量を用いた。一つ   のアフラジでは年べースでみた場 合,D/Sが1をやや上回ったことから,供給不足の傾   向がうかがえた。月べースでは冬季に0.6以下,夏季には1.0以上となる季節変化をみせ   た。もう一方のアフラジでは年べ ースでD/Sが大きく1を下回り,供給過剰にあること   が判明した。ただしこの灌漑区の土壌はシルト質で透水性が大きいため,灌水頻度を多   くする必要があり,供給量も多くなっていた。作物の水需要は蒸発散量の変動によって   大きく季節変化するのに対し,アフラジによる灌水口ーテーションは固定的である。灌   漑 頻 度 , 灌 水 量 , 灌 水 時 間 を 調 整 す るこ とに よる 灌漑 効率 向上 の余 地が ある 。 5.アフラジ灌漑は,極度の乾燥条件下で人間が生存しかつ農業を営むために生み出された   システムのひとっであり,その管理方法には水配分の合理性と平等性を担保するための   さまざまな工夫が盛り込まれていることが明らかとなった。水源の特異性と乾燥地とい   う立地条件を反映して,干ばっに対応した水供給がなされていたが,その一面で水需要   に 柔 軟 に 対 応 し た シ ス テ ム と は な っ て い な い 点 も 明 ら か と な っ た 。     乾燥地では,農村社会の存続基盤はひとえに水利システムにあり,オマーン国でも農   村社会の持続と発展のためには,根幹にあるアフラジ水利システムの維持と近代化が不   可欠である。そのためには伝統的計時システムから時計計時への移行と,既存水利権の   調整が重要である。また灌漑効率の向上のためには,需要に応じた水管理が行えるよう   なシステムの導入や,一時貯留施設の設置も検討に値する。

    近年,オマーンでも石油エネルギを用いた地下水(深井戸)の利用が増加しているが,

  短期的に生産の増大をもたらしても,地下水位の低下,枯渇,塩水浸入といった問題を

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引き起こすことは必定である。農業生産を基本としつつ,地域社会の安定と持続を保証 してきたアフラジシステムという数千年に及ぶ人類の知恵を生かすことが肝要である。

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学位 論文審 査の要旨 主査

副査 副査 副査

助教授 教授 教授 教授

井上 長澤 長谷川 長南

    京 徹明 周一 史男

     学位論文題名

    Study on Water Distribution Management     of ノ flaj Irrigation Systems of Oman

(オマーン国アフラジ灌漑システムにおける水配分管理に関する研究)

  本 論文は7章からなり、図80、表27、引用文献118を含む195頁の英文論文である。他 に参考論文8編が添えられている。

  アラビア半島東部に位置するオマーン国では,アフラジ(印づ,複数形はファラジカ幻)

とよばれる独特の灌漑農業が営まれてきた。アフラジそのものは,水源から農村集落と農地 に導水する水利施設のことを指し示すが,そこには特有の水利用形態に対応した水管理シス テムが備わっており,なおかっその管理には地域農民が自ら管理する,いわば農民参加型管 理が実践されてきた。本研究は、乾燥地における水資源の利用と管理のあり方の一典型とし てアフラジの水管理を位置づけ,水配分の平等性担保の仕組みや,干ばっ時の対応,近代化 に伴う水配分システムの変化の実態,ならびに灌漑効率について明らかにしたものである。

1.年間降水量が100〜 200mmにすぎないオマーン国で古 くから利用されてきたアフラジ   灌漑システムについて概括した。アフラジでは,干ばっに対応できるよう、水はまず生活   用水として集落で用いられた後,永年生作物(主にナツメヤシ),ついで一年生作物(穀   類,野菜など)に灌漑される。アフラジの水管理システムは管理責任者(ワキル)を筆頭   とした農家組織に依っており,農家はそれぞれが所有する水利権に応じた水配分を得るこ   ととなる。

2,オマーン各地のアフラジにおける水配分ルールの実態を調査した結果、アフラジの水は,

  多くの場合,水量べースではなく時間べースで配分され、ローテーション灌漑が行われて   いた。これは干ばっ時においても平等に水を行き渡らせるための工夫のーっであることを   明確にした。また時間べースのローテーション灌漑をできるだけ正確に行うためには、正   確な計時が必要であるが、そのために機械時計のない時代から採られてきたさまざまな方     ―1342―

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法 に つ い て紹 介し た。 特に 伝 統的 に使 われ てき た 太陽 と星 の運 行 を用 いる 方法 につ い て、

そ の 方 法 と内 容を 各地 のア フ ラジ につ いて 詳細 に 調査 した 。ま た 近年 ,時 計が …般 化 して   も, すぐ に時 計 利用 には 移行 せず 段 階的 移行 にとどまっているが 、その理由が農村社会の 保 守性 と、 複雑 な 水利 権に ある こと を 明ら かに した 。

3.日 長 変 化や 流量 変動 に対 応 した 、公 平な 水配 分 のた めに アフ ラ ジ組 織が おこ なっ て きた 様 々 な 工 夫を 示し た。 例え ば 、天 体運 行を 使う こ とに より 季節 毎 に生 ずる 昼夜 の単 位 時間 長 の 差 異 を最 小限 にす るた め には ,灌 漑ロ ーテ ー ショ ンを 常時 複 雑に 組み 替え るこ と で対 応 し て い るこ と、 干ば っ時 の 流量 減少 には ,分 配 する 支線 水路 の 数を 制限 し, 灌漑 口 ーテ ー シ ョ ン の 時 間 間 隔 を2倍‑3倍 す る , あ る い は 用 水 を 水 槽 に 一 時 貯 留 す る こ と で 水 路損 失 を減 少さ せる , など の方 法が 採ら れ てい るこ とを 示 した 。

4.2つ の フ ァ ラ ジ に お い て , そ の 灌漑 効率 を評 価 した 。灌 漑区 単 位で 水需 要量 と供 給 量の 比 を求 め, これ を 需要 供給 比(D/S,Demand/Supply Ratio)とし た 。年 べースでみた場合,

D/Sが1を や や 上 回 る 、 供 給 不 足 の 傾 向 に あ る ア フ ラ ジ と 、D/Sが 大 き く1を 下 回 り , 供 給 過 剰 の アフ ラジ があ るこ と が判 明し た。 作物 の 水需 要は 蒸発 散 量の 変動 によ って 大 きく 季 節 変 化 する のに 対し ,ア フ ラジ によ る用 水供 給 は固 定的 であ り 、灌 漑頻 度, 灌水 量 ,灌   水 時 間 を 調 整 す る こ と に よ る 灌 漑 効 率 向 上 の 余 地 が あ る こ と を 見 出 し た 。 5.ア フ ラ ジ灌 漑は ,極 度の 乾 燥条 件下 で人 聞が 生 存し かつ 農業 を 営む ため に生 み出 さ れた   シス テム のひ と っで あり ,そ の管 理 方法 には 水配分の合理性と平 等性を担保するためのさ ま ざ ま な 工夫 が盛 り込 まれ て いる こと を示 した 。 水源 の特 異性 と 乾燥 地と いう 立地 条 件を 反 映 し て ,干 ばっ に対 応し う る水 供給 がな され て いる もの の, そ の一 面で 水需 要に 柔 軟に 対 応し たシ ステ ム とは なっ てい ない 点 も明 ら、 かに し た。

  乾 燥 地 では ,農 村社 会の 存 続基 盤は ひと えに 水 利シ ステ ムに あ り, オマ ーン 国で も 農村 社 会 の 持 続と 発展 のた めに は ,根 幹に ある アフ ラ ジ水 利シ ステ ム の維 持と 近代 化が 不 可欠   であ る。 その た めに は伝 統的 計時 シ ステ ムか らの脱却と,既存水 利権の調整が重要である   こと 、灌 漑効 率 の向 上の ため に, 需 要に 応じ た水管理が行えるよ うなシステムの導入や,

  一時 貯留 施設 の 設置 を検 討す る必 要 があ るこ とを 示 した 。  

  以上 のよ うに 、 本論 文は オマ ー ン国 の伝 統的 な灌 漑システム・アフラジ の水管理の特性を 多 様な 視点 から 明 らか にし たも の であ り、 乾燥 地に おける水利システムの あり方を考える上 で重要な示唆を与えるものである。よって,審査員一同は,Abdullah Saif AI一Ghafriが博士(農 学)の学位 を受けるに十分な資格を有す るものと認めた。

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参照

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