博 士 ( 理 学 〕 山 田 修 史
学 位 論 文 題 名
Effect of Pressure on Superconductivity and Structural Phase Transitions in Laz ̲xMxCu01 (M ‑‑ Ba, Sr)
(La2 ー エ M エ Cu04 (M=Ba , Sr) の 超 伝 導 と 構造相転移の圧力効果)
学位論文内 容の要旨
§
1
.序 論
1986
年 に 最 初 の 高 温超 伝 導 酸 化 物La2, .Ba Cu04が 発 見 され て 以 来 、 数 多くの 高い 超 伝 導 転 移温 度Tc
を 持っ 酸 化 物 か 見っ か っ て い る 。 し か し、 こ れ らの 物 質 に お ける 超f云 導 の 発 現 議 構 は 、 現 在 の と こ ろ ま だ 明 ら か に な っ て い な い 。 現 在 、 そ の 発 現 機 償 の 解 明 の 糸 口 を 得 る た め に 、 超 伝 導 と 結 晶 構 造 の 関 係 に 興 味 が も た れ て い る 。
Laと ・ .H、CuOdの 毋 結 晶 で あ るLa2 Cu04は 、 高 温で 正 方晶 (THT.1/空 間群 :I4/ロmロ)
系 に 属 す るKえNiFa型 構 造 で あ る が 、 約530Kて 酸 素 八 面 体 が(110) あ る い は(110)軸 を 中 じ 、 と し て 僅 か に 傾 き 、 斜 方 品 (0HT.a/ 空 間 群 :Cmca) と な る 。 THT相 か ら0HT相 へ の 相 転 移 温 度Toは 、 置 換 量xの 増 加 と 共 に 減 少 し 、 x>0.2で はTHT相 が 低 温 ま で 安 定 に な る 。
La
ご ,Sr
。Cu04
系(La
ーSr
系 ) のOMT
相 とTHT
相 に お け る超 伝導 の性質 を知 ること は、こ の 系 の 結 晶 構 造 と 超 伝 導 と の 関 連 性 を 考 える 上 で 興 味 探 い。
特 に、 低 温 まで
THT
相 が 安 定 と な るx>0.2
の 領域 で は 、 系 の 振 舞 い が金 属 的 で あ るに も か か わ らず 、 超fi
導 が 抑 制 さ れ る 傾 向 に あ る 。 こ の 超 伝 導 の 抑 制 は 「THT
相 は 本 質 的に 超 伝 導 に なら な い 」 た め で あ る と い う 主 張 も あ る が 、そ も そ も
x>0
.2
の 試 料 で は 相 分 離 や 酸索 欠 損 な ど か 起 こ り 易 い た め 、現 状 で は モ の 超 伝 導 特 性 を 明 ら か に す る こ と か困 難 て あ る と思 わ れ る 。
そ こ で 、
本 研 究の 目 的 の1っと し て 、x<0.
2
の 良質 な 試 料 に 圧 カを 加 え てTHT
相 を 低 温 ま で 安 定 化 さ せ 、そ の 超 伝 導 特 性 を マ イ ス ナ ― 信 号 の 瀾 定 か ら 調 べ た 。
とこ ろで、Laミ・Ba、Cu04系 (La―Ba系 )の
x 0
.1l一0.14
の領 域では、 低温(<6 0K) で 酸 素 八 面 体 が(110)
と(Il0)軸 の ま わ り で傾 き 、 OMT相 か ら低 温 斜 お 晶 (OLT. /空 間41
群 :
Pccn
) 相 へ と 転 移 す る 。 超 伝 導 転 移温 度Tc
は 、 こ の 構造 相 転 移 に 伴 って 著 し く 低 下 す る 。こ の
Tc
の 低 下 はOLT
相 へ の 転 移 に 伴 っ て フェ ル ミ 準 位 の 状憩 密 度 が 滅 少す る た めあ る 。また 、
圧カ を 加 え て こ の構 造 相 転移を 抑制す ると
Tc
は著し く上昇 する 。 本 研 究 で は 、OLT
相 へ の 構 造 相 転 移 と 超 伝 導 に 対 す る 圧 カ 効果 に つ い て 、 超 伝 導 特性 は マ イ ス ナ ー 信 号 の 瀾 定 か ら 、 構 造 相 転 移 に つ ・ い ては 熟 膨 張 率 と電 気 抵 抗 の 瀾定 か ら 詳し く調 べ た 。
一 方 、
La
―Sr
系 で もx=0.115
付 近 でTc
が わ す か に低 下 す る 現 象が 児 っ かっ て い る が 、La
―Ba
系 と 違 っ てX
線 回 折 実 験 で はOLT
相 へ の 構 造 相 転 移 は 見 っ か っ て い な い 。モ こ で 、 こ のx=0.115付近の
Tc
の低 下の原 因を調 べるた めに 、 20kbar下 でのLa−Sr 系 の 電気 抵 抗 の 測 定 を行 な っ た 。§
2
. 実 験 方 法試 料 は 酸 素 釁 囲 気 中 で の 固 相 反 応 法 に よ り 作 製 し た 。
焼 成 は
1060
−1150
℃ で24
時 間 行 な っ た 。 圧 カ の 発生 に は ピ ス トン と シ リ ン ダー を 使 用 し 、低 温 ま で一 定 圧 カ を 保 持 で き る
Swenson
型 の プ レ ス を 用 い た 。電 気 抵 抗 は 直流 四 端 子 法 によ り 、
熱膨 張 率 は 銅 を 参 照 物 貰 と し た
2
― ス ト レ イ ン ・ ゲ ージ 法 に よ り 測定 し た 。超 伝 導 転 移 温度
Tc
は 、 交 流 法 に よ るマ イ ス ナ 一 信号 の 瀾 定 よ り 決め た 。圧 カ 実 験 を 行 うに あ た り 、
圧 カ セ ル 内 で の り ー ド 綜 の 断 線 と 圧 カ 媒 体 の 漏 れ と い う 瀾 定 技 術 上 の 問 題 があ っ た が 、
圧 カ シ ー ル の 形 状 と サ イ ズ の 最 適 化 を 行 う こ と に よ り 、
圧 カ 実 験 の 成功 率 を 飛 躍 的に 向 上 さ せ る こ と が で き た 。
§3. 実 験 結 果 と 考 察
(i) La−Sr系 に お け るTHT相 の 超 伝 導 に つ い て
THT相 か ら0HT相 へ の 構 造 相 転 移 に 伴 い 熟 膨 張 率 に は 大 き な 異 常 が 現 れ 、 そ の 異 常 が 現 れ る 温 度 は 圧 カ を 加 え る こ と に よ り 大 き く 低 下 し た 。 高 圧 下 で の 熟 膨 張 率 の 測 定 か ら 、Sr濃 度 が0.17と0.19の 試 料 で は 、 そ れ ぞ れ12kbar、 6kbarでOMT相 は 抑 制 さ れ ( 少 な く と も )20K以 下 ま でTHT相 が 安 定 と な る こ と が 分 か っ た 。 高 圧 下 て の マ イ ス ナ ー 信 号 の 測 定 よ り 、 xく0.206の 試 料 のTcは 低 圧 領 域 で は 圧 カ と 共 に 上 昇 す る が 、 あ る 圧 カ 以 上 で は 殆 ど 圧 カ 依 存 性 を 示 さ な く な る こ と が 分 か っ た 。 こ のTcが 殆 ど 圧 カ 依 存 性
を 示 さ な く な る 臨 界 圧 力Pcは 、 熱 膨 張 寧 か ら 調 べ た0FIT相 が 抑 制 さ れ る 圧 カ と よ く 一
42
致 す る 。 ま た 、Pcの 前 後 で 、 マ イ ス ナ ― 信 号 の 大 き さ に 変 化 は 見 ら れ な い 。 こ れ ら の こ と か ら 、 高 圧 下 で 低 温 ま で 安 定 化 さ れ たTHT相(P>Pc) は0HT相 (P〈Pc) と 同 様 に バ ル ク の 超 伝 導 を 示 す こ と が 明 ら か に な っ た 。 こ の こ と は 、LaーSr系 に お け る 「THT相 は 、 バ
ル ク の 超 伝 導 を 示 す か 否 か 」 と い う 問 題 に 対 し て 重 要 な 手 掛 か り を 与 え る も の と 思 わ れ る 。 ま た 、Pc以 下 のOMT相 で は 圧 カ を 加 え る こ と に よ りTcが 上 昇 す る の に 対 し 、 Pc 以 上 の THT相 に な る とTcが 殆 ど 圧 カ 依 存 性 を 示 さ な く な る こ と か ら 、 OMT相 で は 超 伝 導 が 抑 制 さ れ て い る こ と が 分 か る 。0HT相 で はToと Tcが 逆 の 圧 カ 依 存 性 を 示 す こ と か ら 、 0HT椙 で の 超 伝 導 の 抑 制 倣 酸 棄 八 面 体 が 傾 く こ と と 関 連 し て い る も の と 思 わ れ る 。
(ii) OLT相 と 超 伝 導 に っ い て
a.LaーBa系(X at0.125)の 超 伝 導 と 結 晶 構 造
Ba濃 度 が0, 11か ら0. 14の 試 料 のTcは 、 OLT相 へ の 転 移 に よ り 著 し く 抑 制 さ れ て い る 。 こ れ ら の 試 料 に 圧 カ を 加 え てOLT相 へ の 転 移 を 抑 制 す る とx=0.125の 試 料 を 除 い て Tcが30K以 上 ま で 大 き く 上 昇 し た 。 一 方 、x=0.125の 試 料 のTeは 、 OLT相 へ の 構 造 相 転 移 が 14kbar以 上 で 消 失 す る に も か か わ ら ず 、 20kbarに お い て も 他 のBa濃 度 の 試 料 のTc に 比 べ て 著 し く 低 い (Tc〜10K) こ と が 分 か っ た 。 ま た 、 こ の 試 料 の14kbar以 上 で の 電 気 抵 抗 の 温 度 変 化 は 、 他 のBa濃 度 の 試 料 に 比 べ て 、 低 温 (S100K) で 弱 く な る 。 こ の こ と は 、 電 子 系 に な ん ら か の 強 い 散 乱 が は た ら い て い る こ と を 意 味 し て お り 、x=0.12
5 の試料では、OLT 相への構造相転移に加えて、 この散乱も超伝導を抑制しているもの と思われる。
b.La−Sr系(X a0.115)の 超 伝 導 と 結 晶 構 造
La―Sr系 のx=0.115付 近 に お け るTcの 低 下 はLa―Ba系 に 比 べ て 小 さ い が 、 そ の 原 因
がこれまで予想されてきたようにLa ―Ba 系と同様な溝遣相転移によるものとすれば、
圧カを加えることでその捕造相転移を抑制し、Tc の低下を取り除くことができるもの と期待される。 しかし、La 一Sr 系のx=0.115 付近のTc の低下は圧カに殆ど依存しないこ とが分かった。Tc が低下する試料は、 高圧下におけるLa ― Ba 系のx=0 .125 の試料と同様 に低温での電気抵抗の温度変化が弱いことから、 La −Ba 系のx=0.125 の試料と同様な電 子系に対する散乱機構によりTc が抑制されている可能性が考えられる。
*l: Tetraganal of High Teuperature, *2: Orthorho:bic of Fliddle Temperature
*3 : Orthorhombic of Low Tern perature‑
43ー
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 伊 土 政 幸
副 査 教 授 塩 崎 洋 一 副査 助教授 熊谷健一
学 位 論 文 題 名
(La2―xHxCu04(H=Ba,Sr) の 超 伝 導 と 構 造 相 転 移 の 圧 カ 効 果 )
La2‑xMxCu04 ( H =Ba .Sr )は最初に発見された銅酸化物高温超伝導体で、その母結晶 であるLa2 Cu0 _は、 約530K でCu 原子を囲む酸素八面体が(110 )あるいは(iTo )軸の回り にわず かに傾 くこと によっ て正方 品から 斜方晶へ と捕遺 変化す る。 この構造相転移の 転 移温 度 To はx の増 加 と 共 に減 少 し 、 x> 0.2 で は正 方 品相が 低温まで 安定と なる。
La2 ・xM _ Cu04 ではx 冫 0.06 で超 伝導が 現れるが 、x> 0.2 の 正方品 相で再び超伝導が消失 すると の報告 があり 、 高温 超伝導 の発現 と結晶 構造と の関連性 を考える上で大きな興 味が持たれてきた。 しかし、 低温まで正方品相となるx> 0.2 の領域では、 試料に相分 離 や酸 素 欠 損 が起 こ り 昜 くな るた め 正 方晶相の 超伝導 がバル ク的か 否か さえ未 解 明というのが現状である。 一方、La ーBa 系(M=Ba )の0.1 くx く0 .14 では、 低温(‑ 60K ) で酸素 八面体 が(110 )と(110 )軸の回りに同時に傾き超伝導転移温度Te が著しく低下す る。 この結果は、 格子系と電子系との間に強い結合が存在することを示しており、 多 くの研 究者の 関心を 纂めてきた。 また、La‑Sr 系のx=0 .115 付近でも、 La‑Ba 系ほど顕 著でないが、Te の低下が見られることが知られている。
申請者 は、 正方晶相 の超伝 導特性 に関す る信頼 性の高 い結果 を得るため、La ―Sr 系
のx く0.2 の試料 に高圧を 加えて 低温ま で正方 品相を 安定化 させ、 その超伝導特性を調
べ た 。
こ の 高 圧 実 験 で は 、
x
く0.2
の 良 質 の 試 料 を 用い るこ と がで きる た め信 頼性 の 高 い デ ー タ が 期 待 で き る 。ま た 、
La
ーBa系 の低 温構 造 相転 移に 関 して 、 高 圧実 験か ら 構 造 相 転 移 と 超 伝 導 と の 間 に 競 合 関 係 を 明 かに し、詳細 な研 究 を行 った 。
高 圧 実 験 は 、
ビ ス ト ン ・ シ リ ン ダ ― と ス ウ ェ ン ッ ン 型 プ レ ス を 組 み 合 わ せ た 定 荷 重 方 式 の 圧 力 装 置 で 行 っ た 。 高 圧 下 の 超 伝 導 と 構 造 相 転 移 の 様 子 は そ れ ぞ れ 交 流 磁 化 率 と ス ト レ イ ン ・ ゲ ー ジ 法 に よ る 熱 膨 張 率 の 瀾 定 か ら 調 べ ら れ た。
その 結果 、
x
く0.2 06
のTe
は 低 圧 域 で は 圧 カ と 共 に 上 昇 す る が 、あ る 臨 界 圧 カ
Pe
以 上 で 殆 ど 圧 カ 依 存 を 示 さ な く な る こ と を 見 っ け た 。Pe
以 上 で は 斜 方 品 相 は 完 全 に 抑 制 さ れ 低 温 ま で 正 方 晶 相 が 安 定 に な る こ と 、Pe
の 前 後 で マ イ ス ナ 一 信 号 の 大 き さ に 変 化 が 見 ら れ な い こ と を 示 し 、 高圧 下 の正 方晶 相 はバ ルク の 超伝 導を 示 すこ とを 結 諭し た。この 結果 は 、 これ ま で 論 争 と な っ て い た 正 方 晶 相 の 超 伝 導 に 関 す る 問 題 に 決 着 を っ け る も の と 高 く 評 価 で き る 。
ま た 、
Pe
以 下 で は 圧 カ に よ りTo
が 低 下 す る と逆 にTe
が 上昇 する こ とか ら、斜方 品 相 で は 酸 素 八 面 体 が 傾 く こ と に よ り
Te
が 低 下 す る と 結 諭 し た 。一 方 、
La
―Ba
系 のO.l
くx
くO
.14
の 領 域 に 対 する 高 圧実 験か ら 、 高圧 下 で低 温の 構 造 相 転 移 を 抑 制 す る と 、x=0.125
の 試 料 を 除 く とTe
が30K
ま で 上 昇 す る こ と を 確 認 し た 。し かし 、
x 0
.125
の 試料 で は2GPaの 圧 カを 加え て 構造 相転 移 を完 全に 抑 制しても、Te
が 他 のBa
濃 度 の 試 料 に 比 べ て20K
も 低 い こ と を 明 ら か に した 。さ らに 、 構 造相 転移 を 抑 制 し た 場 合 の 電 気 抵 抗 の 温 度 依 存 性 か ら
x=0.125
の 試 料 で は 電 子 系 に 強 い 散 乱 機 構 が 存 在 す る こ と を 見 っ け 、こ の 散 乱 が 超 伝 導 の 抑 制 に か か わ っ て いる と 結諭 した 。
こ の 結 果 は
x
〜0.125
で は 構 造 相 転 移 以 外 に も 超 伝 導 を 抑 制 す る 原 因 が 存 在 す る こ と を 示 し た も の で 、こ の 分 野 の 今 後 の 研 究 を 方 向 づ け る 上 で 重 要 な 発 見 と言 え る。
一 方 、
La
―
Sr
系に おけ るTe
の 低下 は 、 La−Ba系と 異なり、 圧カに 依存しない。 ま た、 電気抵抗の 温 度 変 化 が 高 圧 下 に お け るLa
―Ba
系 のx=0.125
の 試 料 と 類 似 し て い る こ と か ら 、La
−Sr
系 のTI
・ の 低 下 も 電 子 系 に 対 す る 強 い 散 乱 に よ る 可 能 性 が 強 い こ と を 指 摘 し た 。以上 のよ う に、
申 請 者の 研究 は
La2
−xHx Cu04
(H=Sr
,Ba) 系に おけ る 構造 相転 移 と超 伝 導 に 関 す る 問 題 に い く っ か の 新 し い 知 見 を 与 え た も の で あ る 。参 考 論 文
6
編 は い ずれも本研究に関連するもので国際学術誌に発表されている。
よって、 審査貝一同は申請者が博士(理学)の学位を受けるに充分な資格がある ものと露めた。
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