博 士 ( 理 学 ) 川 口 敦 吉
学 位 論 文 題 名
A Study of the Origin of the Open Circuit Voltage in Organic Bulk Heterojunction Solar Cells
(有機バルクヘテロ接合太陽電池における開放端電圧の起源に関する研究)
学位論文内容 の要旨
現在,地球上では有限な化石資源に 代わるクリーンで持続可能なエネルギー源が求められ ている,その有カな候補のーっとして 太陽電池があげられているが,その中でも有機物を用 いた有機バルクヘテロ接合太陽電池は 作製法の簡便さ,低作製コスト可能性,材料の多様性 から次世代の太陽電池として注目を浴 ぴている.ところが,そのエネルギー変換効率は現在 のところ5‑8%程度と低く,そもそも光起電カの発生メカニズムも 完全には明らかになって いない.
有機バルクヘテロ接合太陽電池における開放端電圧(%。)の起源については以前から議論さ れているが,様々な起源が提唱されて いて議論の余地がある.物理的観点から光起電カのメ カニズムを明らかにすることは重要で ,これは有機バルクヘテロ接合太陽電池の素過程を明 らかにすることになる.本研究は,有 機バルクヘテロ接合太陽電池の開放端電圧の起源を明 らかにするために,玩。のモデルを提 案し,アクセプター材料をPCBMに固定してドナー材料 を 代 え て デ バ イ ス を 作 製 し , 作 製 し た デ バ イ ス の 電 流 電 圧 特 性 の 測 定 を 行 っ た . 有機バルクヘテロ接合太陽電池とは 電子供与体(ドナー)分子と電子受容体(アクセプタ ー)分子を混ぜたものを活性層に使用 してその活性層を仕事関数の異なる電極で挟んで作製 した太陽電池である,片側の電極には透明電極を用いている.透明電極側から光は入射する.
ド ナ ー の 最 高 被 占 分 子 軌 道(HOMO) 準 位 と 最 低 空 分 子 軌 道(LUMO)準 位 の 差 で あ る HOMO‑LUMOギ ャ ッ プ 以 上 の エ ネ ル ギ ー を 持 つ 光 子 を 吸収 する とド ナー のHOMOから ドナ ー のLUMOま で 電 子 が 励 起 さ れ る . ド ナ ー のHOMOに は 正 孔 が , ド ナ ー のLUMOに は 電子 が形成する,有機半導体は比誘電率が3‑5程度で室温では電子と正孔はクーロンカにより束縛 されフレンケル励起子を生成する.こ の励起子が拡散してドナーとアクセプターの界面にた どり っく と電 荷の 移 動が 起こ り, ドナ ーのLUMOにい る電 子がアクセプターのLUMOに移動 しド ナーのHOMOの正孔とクーロンカによ り束縛され新たに電荷移動励起子を生成する.こ のドナーとアクセプターの界面で生成 した電荷移動励起子は電子と正孔に分離し自由キャリ アとなる.自由なキャリアは仕事関数 の異なる電極によって作られた内部電場によってドリ フトしてそれぞれの電極にたどりっく .これが有機バルクヘテロ接合太陽電池のメカニズム として今のところ考えられている.
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有 機 バ ル ク ヘ テ ロ 接 合 太 陽 電 池 に お け る 瑤 。 の 起 源 は 両 電 極 の 仕 事 関 数 差が 玩 。 と なる Metal‑Insulator‑Metal (MIM)モ デ ル と ド ナ ー のHOMO(D)と ア ク セ プ タ ーのLUMO(A)の 差 が 玩。 と な る モデ ル で 説 明き れ て い る. そ れ ぞ れの モ デ ル を支 持 する実 験事実 があり %。の 起源 は明 ら か に ぬっ て い な い. そ こ で ,我 々 は , 有機 バ ル ク ヘテ ロ 接 合 太陽 電 池 に おけ るVocを 説 明 す る 新 し い モ デ ル を 提案 し た . 我々 の 提 案 する モ デ ル では 仕 事 関 数の 異 な る ニっ の 電 極 に よ っ て ド ナ ー と ア ク セ プタ ー が 混 同し た 層 が 挟ま れ た 構 造を し て い る. 正 孔 を 取り 出 す 陽 極
(アノ ード〕の 仕事関 数( anode)は電子を取り出す陰極(カソード)の仕事関数(4cathod。)よ り も 深 い . ド ナ ー と ア ク セ プ タ ー のHOMO準 位 とLUMO準 位 の 関 係 は 以 下 の よ う に な っ て しヽる.
LUMO(D)冫LUMO(A)冫HOMO(D)冫HOMO(A)
我々の モデルで は取り うる最 大のVocは 有効内蔵電位(effective built‑in potential)によって決ま り , anode,4cathode LUMO(A),HOMO(D)の そ れ ぞ れ の 位 置 関 係 で 以 下 の4通 り が あ る . 1. cathode≧ILUMO(A)I冫IHOMO(D)I> @modeの場合,
%。〓 lle ECT二ニl/e ([HOMO(D)I ‑ ILUMO(A)I)十l/e既,
こ こ で ,8は電 荷 素 量 ,ECTは 電 荷 移動 励 起 子 のエ ネ ル ギ ー,EBや −0.3 eV)は 励 起 子 の束縛 エネルギーである.
2. ILUMO(A)I冫 cathode冫IHOMO(D)I冫4anod。の場合,
%。= lle (IHOMO(D)I ‑ @cathode).
3. 4camode三ILUMO(A)I冫4anode冫IHOMO(D)Iの場合,
皖。= l/e(舳ode―ILUMO(A)I).
4. ILUMO(A)I冫4cathode冫4anode冫IHOMO(D)Iの場合,
%。=1/ビ(舳。dc ‑ 4cathode).
我 々 の モ デ ル の 正 当 性 を 評 価 す る た め に , ア ク セ プ タ ー 材 料 をPCBMに固 定 し て ドナ ー 材 料 を5種 類 の ポ リ マ ー(P3HT,P30T,PTAA,MDMO‑PPV,F8T2)に そ れ ぞ れ 代 え て デ バ イ ス を 作 製 し 電 流 電 圧 特 性 の 測 定 を 行 っ た , ア ノ ー ド に はITO/galss基 板 にPEDOT:PSSを スピ ンコートしたものを使用し,カソードにはAlを用いた.
ド ナ ー にP3HTを 用 い た 場合 は ,2の 場 合 に相 当 し , %。 はHOMO(D)と cath。deの 差 で 決まる こ と が 予 想 さ れ る . さ ら に ド ナ ー をP30T,PTAA,MOMO‑PPV,F8T2と 代 え て い く とHOMO(D) がぬ。d。よりも深くなるため,4の場合に相当し,玩。はぬ。d。と姦ヨth。d。の差で決まり一定値にな る こ と が 期 待 さ れ る . 実 験 か ら 得 たVocは 期 待 し た 傾 向 を 示 し , ド ナ ー のHOMO(D)の 位 置を 深 く す る に っ れ て 増 加 し ,HOMO(D)の 位 置 が 電 極 の仕 事 関 数 より も 深 く なる と 一 定 の値 を 示 した.この実験結果は我カのモデルと良い一致を示した.
し た が って , 我 々 のモ デ ル に よれ ば ,玩 。を最 大化する には上 述の1を 実現す るよう に4anode をHOMO(D)準 位 よ り も 深 く し ,@cathod。 をLUMO(A)よ り も 浅 く す る 必 要 が あ る . さ ら に , HOMO(D)‑LUMO(A)ギ ャ ッ プ を で き る だ け 最 大 に す る こ と で % 。 が 大 き く な る こ と が 期 待 さ れる.
最後に、有機バルクヘテロ接合太陽電池の瑤。は有効内蔵電位(effective built‑in potential)によ って 決 ま り ,4anode, cathode,LUMO(A),HOMO(D)のそ れ ぞ れ の位 置 関 係 で上 述 の4通 りが あ ―52―
ることを明らかにし,有機バルクヘテロ接合太陽電池の玩。の起源を明らかにした.
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学位論 文審査 の要旨 主査 教授 石橋 晃 副査 教授 伊土政幸
副査 教授 末宗幾夫(情報科学研究科)
副査 講師 近藤憲治
学 位 論 文 題 名
A Study of the Origin of the Open Circuit Voltage in Organic Bulk Heterojunction Solar Cells
( 有機 バル クヘ テロ 接合 太陽電 池に おけ る開 放端 電圧 の起 源に 関す る研究)
有機バルクヘテロ接合太陽電池の開放端電圧Vocの起源を明らかにするために、ア クセ プタ ー材 料をPCBMに 固定 してド ナー材料を5種類のポリマー(P3HT、P30T、 PTAA、MDMO‑PPV、F8T2.)にそ れぞれ 代えてデバイスを作製し電 流電圧特性の測 定を行ない、有機バルクヘテロ接合太陽電池の開放端電圧はカソードとアノードの両 電極の仕事関数と活性層に 用いるドナーのHOMOとアクセ プターのI UMOの位置で 決まることを明らかにした。これにより開放端電圧を最大にするには、アノード電極 をド ナー のHOMO位 置 より も深 くして カソード電極をアクセプタ ーのLUMO位置よ りも 浅く する とと も に、 ドナ ーのHOMOとアクセプターのLUMO間 のエネルギーギ ヤップを大きくするという重要な指針が得られた。申請者が、本学位申請論文におい て成し遂げた、有機バルクヘテロ接合太陽電池における開放端電圧の起源の同定は、
有限な化石資源に変わるクリーンで持続可能なエネルギー源が柬められている現状に あって,新しい地平を切り拓くものであり,この業績は有機光電変換素子・太陽電池 研究の新しい展開に寄与するところ大なるものがある。
これを要するに、著者は、有機バルクヘテロ接合太陽電池における開放端電圧の起源 の同定について新知見を得たものであり、有機光電変換素子・太陽電池研究に対する 新しい展開に貢献するところ大なるものがある。
よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。