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モジュール 造技術 ( ラ ネート 配線技術など ) 結晶 S 系太陽電池 ( 単結晶 多結晶 ) 住 用民生用公 用メ ソーラー 薄膜 S 系太陽電池 ( 非晶 結晶 ) ( 半導体材料 属電極材料 明電極 材料 ) 化合物結晶系太陽電池 (Ⅲ- GaI P ) 化合物薄膜系太陽電池 (CIS/C

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TECHNO

TREND

ル製造などの太陽電池セルそのものに関わる太陽電池セル 技術、太陽電池セルをモジュール(パネル)に仕上げるた めのモジュール技術、太陽電池の出力管理、系統への連結、 設置、管理・監視等の太陽電池を効率的に使用するための 発電システム技術に大別することができる。 (1)太陽電池セル技術  太陽電池セルとしては、図 2-2 に示すように、種々の材 料が提案・実用化されている。以下に、代表的な太陽電池 セルの概要を示す。 ①結晶シリコン系太陽電池  結晶シリコン系太陽電池には、単結晶シリコン、多結晶 シリコンを用いたものなどがある。単結晶シリコンは、原 材料のコストが高いが、変換効率が高く、変換効率の理論 限界は約 30%とされている。多結晶シリコンは単結晶シ リコンに比べて変換効率では劣るが、単結晶シリコンより 安価に製造できる。また、三洋電機(パナソニック)が開 発した HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin layer) (HIT は三洋電機株式会社の登録商標)型太陽電池は、結 晶シリコンウエハの両面に、非晶質シリコンを形成したハ イブリッド型で、変換効率が高いことが特徴である。 ②薄膜シリコン系太陽電池  薄膜シリコン系太陽電池は、通常、CVD 法(Chemical Vapor Deposition:ガス状の気体原料を化学反応させ、基 板上に薄膜や微結晶を堆積させる)により製造され、一般 抄 録 太陽電池を用いた太陽光発電は、従来の化石燃料によ るエネルギー利用から再生可能エネルギーへの移行の 中でも特に注目されており、近年、急速に身近なもの となってきている。同時に、太陽電池をめぐる技術開 発動向や市場環境は、日ごとに大きく変化しており、 今後、国家間、企業間の競争が激化していくと考えら れる。  平成24年度特許出願技術動向調査「太陽電池」では、 特許出願動向、研究開発動向、市場環境、政策動向、 標準化動向を調査・分析し、太陽電池分野において日 本が取り組むべき課題と、今後目指すべき技術開発の 方向性について提言をまとめた。本稿では、調査結果 の一部を紹介する。

特許庁特許審査第一部調整課審査調査室

安藤 達哉

太陽電池

─平成 24 年度特許出願

 技術動向調査の紹介─

1.

はじめに

 近年、従来の化石燃料によるエネルギー利用から、環境 にやさしい再生可能エネルギーへの移行が進められてい る。さらには、福島第一原子力発電所の事故をきっかけと して、世界的に原子力発電に対する見直しの動きがあり、 ますます再生可能エネルギーが注目されている。そうした 中で、豊富な太陽エネルギーを利用する太陽光発電に対す る期待がこれまで以上に高まっている。タービン発電機の ような駆動部を必要とせず、クリーンなイメージがある太 陽電池を用いた太陽光発電は、再生可能エネルギーの中で も特に注目されており、着実に普及拡大している。同時に、 今後、国家間、企業間の競争がますます激化していくと考 えられる。このような状況の中で、如何にして、我が国が 技術競争、産業競争において優位性拡大又は劣位性回復を 行っていくかが重要である。  こうした背景から、平成24年度の特許出願技術動向調査 において、太陽電池を採り上げて、我が国が向かうべき方 向性を明らかにすべく、特許出願動向、研究開発動向等の 調査を行った。本稿では、その調査結果の一部を紹介する。

2.

太陽電池関連技術の概要

 太陽電池は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直 接電力に変換するデバイスである。太陽電池の技術俯瞰図 を図 2-1 に示す。太陽電池に関する技術は、セル材料やセ

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料コストが高いが、30%以上の変換効 率が可能である。 ④化合物薄膜系太陽電池  化合物薄膜系太陽電池には、ⅡⅥ族 化合物やⅠⅢⅥ2族化合物などが用いら れる。  ⅡⅥ族化合物薄膜系太陽電池として は、米国のファーストソーラーが CdTe を用いた太陽電池を多く生産している。 日本国内では、カドミウムに対して公 害物質としてのイメージが強いため、 一部では研究が行われているものの、 製造販売する企業はない。  ⅠⅢⅥ2族化合物薄膜系太陽電池とし ては、日本の昭和シェル石油(ソーラー フ ロ ン テ ィ ア )が 多 く 生 産 し て い る CIS(CuInSe)を用いた太陽電池や、ガリウムを加えて吸 収スペクトルを調整した CIGS(Cu(In,Ga)Se2)を用いた 太陽電池が普及している。これら CIS 系太陽電池は、薄 膜シリコン系太陽電池よりも変換効率が高いため、盛んに 研究開発が行われている。 ⑤有機薄膜系太陽電池  有機半導体を用いた有機薄膜系太陽電池は、印刷プロセ 的に、結晶シリコン系太陽電池と比較して、シリコンの使 用量及び製造に要するエネルギーが少ないが、変換効率の 面では劣る。CVD 法は、工程の自動化や大面積化が比較 的容易であり、コスト低減が期待できる。 ③化合物結晶系太陽電池  化合物結晶系太陽電池は、一般的にⅢⅤ族化合物(GaInP、 GaAsなどの単結晶)が用いられ、単結晶シリコン以上に材 図2-1 太陽電池の技術俯瞰図 図2-2 主要な太陽電池の材料による分類 応用 産業 結晶Si系 太陽電池 (単結晶, 多結晶) 薄膜Si系 太陽電池 (非晶質, 微結晶) 化合物 薄膜系 太陽電池 (CIS/CZTS CdTe) 化合物 結晶系 太陽電池 (Ⅲ-Ⅴ族, GaInP等) 有機薄膜系 太陽電池 住宅用 民生用 メガソーラー 大面積 製造コスト低減 変換効率の向上 応用分野への適合性向上 ︵軽量化、フレキシブル化など︶ 耐久性・信頼性向上 フレキシブル 軽量 公共用 素子材料技術 (半導体材料,金属電極材料, 透明電極,基板材料) 素子細部技術 (積層型,集積型,電極構造, 反射防止膜,裏面反射膜など) 素子製造技術 (薄膜形成技術,結晶製造技術, 量産化技術) 太陽光発電システム 色素増感型 太陽電池 モジュール技術 モジュール細部(フレーム、封止材、バックシート、インタコネクタ、接続箱、         保護回路、接着剤、ガラス板など) モジュール製造技術(ラミネート、配線技術など) 太陽電池素子 〔課題〕 次世代 太陽電池 非晶質シリコン 積層型 ⅢⅤ族(GaInPなど) 単結晶シリコン 擬似単結晶シリコン 多結晶シリコン 球状シリコン 微結晶シリコン 結晶シリコン系 薄膜シリコン系 化合物結晶系 化合物薄膜系 シリコン系 化合物系 有機薄膜系 色素増感型 有機系 (Si,C,Geを含む) 次世代型 太陽電池 量子ドット型など ⅡⅥ族(CdTe) ⅠⅢⅥ2族(CIS系) ⅠⅡⅣⅥ2族(CZTSなど)

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TECHNO

TREND

出力の安定化対策が重要になってくる。住宅用の発電シス テムでは、住宅の屋根等に設置された太陽電池モジュール から得られた電気の蓄電や商用電源系統への接続を効率良 く行う技術が重要になる。

3.

産業政策動向

 太陽電池については多くの国が、研究開発、導入・普及 のための産業政策を導入している。各国の政策動向につい て、以下に紹介する。 (1)日本の政策動向 ①エネルギー政策  日本のエネルギー政策に関する基本政策である「エネル ギー政策基本法」(2002年)に基づき策定された「エネルギー 基本計画」の 2010 年の改定では、2030 年までに、電源構 成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能 エネルギー由来)の比率を約 65%にするとともに、2020 年までに一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギー の割合を 10%に高めることを目標に掲げた。  その後、2011 年 3 月の福島第一原子力発電所の事故を 踏まえ、脱原子力依存を目指した見直しが行われ、国家 戦略担当相を議長とし、各府省の閣僚をメンバーとする「エ ネルギー・環境会議」を新たに設置してエネルギー戦略を 進めていくこととなった(2011.10.21 の閣議決定)。エネ ルギー・環境会議は、2012 年 9 月に、省エネルギー・再 生可能エネルギーといったグリーンエネルギーの使用率 を最大限に引き上げることを通じて、原発及び化石燃料 への依存度を抑制することを基本方針とした「革新的エネ ルギー・環境戦略」を策定し、その中で、太陽光発電につ いて、2013 年以降、2030 年まで平均で約 3GW /年導入 す る こ と を 目 標 と し て い る(2012 年 の 導 入 見 込 み は 2GW)。 ②太陽電池の導入促進政策及び技術開発政策  太陽光発電の導入促進政策には、補助金や税制優遇と いった太陽光発電システムの導入支援策、電力会社への再 生可能エネルギーの利用義務に関わるもの及び発電された 電力の買取義務に関わるものがある。  我が国では、2003 年の「電気事業者による新エネルギー 等の利用に関する特別措置法」で RPS 制度(Renewables Portfolio Standard)が導入され、電力会社等への一定量 の利用義務付けが行われた。2009 年には太陽光発電の固 定価格買取制度(FIT(Feed-in Tariff)制度)がスタートし、 太陽光発電設備による余剰電力を、住宅用について電力料 金の 2 倍程度の価格(48 円 /kWh)で 10 年間買い取ること スによる製造が可能で、軽量、フレキシブルといった特徴 を 有 す る。 当 初 は、 太 陽 光 の 利 用 効 率 が 低 か っ た が、 1991 年に p 型と n 型の有機薄膜を共蒸着などによって混合 することで、太陽光を多く吸収できるバルクヘテロ接合型 太陽電池が開発され、有機薄膜系太陽電池の基礎が確立さ れた。有機薄膜系太陽電池は製造コストが安価であるため、 更なる変換効率の向上が期待されている。 ⑥色素増感型太陽電池  色素増感型太陽電池は、酸化チタン等の酸化物半導体の 表面に吸着させた色素により光を吸収し、励起した電子を 酸化物半導体へ移動させることにより発電する。吸着させ る色素を変えることによって、様々な色の太陽電池を製造 できる。製造が簡単で材料も安価なことから、大幅な低コ スト化が見込まれる。しかしながら、電解液に蒸発しやす い有機溶媒を用いるため、耐久性が課題となっており、電 解液の固体化などが研究されている。 ⑦ナノテクノロジー系太陽電池  次世代型の太陽電池として、量子ドット型太陽電池等 のナノテクノロジーを利用した太陽電池の研究が行われ ている。  量子ドット型太陽電池については、カナダの研究機関か ら、硫化鉛の量子ドットで変換効率が 7%のものが発表さ れている(2012 年 12 月現在)。国内では、新エネルギー・ 産業技術総合開発機構(NEDO)のエネルギーイノベーショ ンプログラム「太陽エネルギー技術研究開発」において、 ポストシリコン超高効率太陽電池の研究開発として、量子 ナノ構造太陽電池の研究開発が行われている。 (2)モジュール技術  モジュール技術は、太陽電池セルを、表面保護材(ガラ ス等)と裏面保護材で挟み、周囲にアルミ等のフレームを 取り付け、封止材で封止するための技術である。太陽電池 セルは、水分や酸素などに触れると、セル自体が劣化した り、金属電極が酸化して剥がれることがあるため、太陽電 池の耐久性を向上させるために、モジュール技術が重要な 要素となる。表面の保護材には、雨やホコリ、ヒョウ、小 石等から保護する機能が求められる。また、セルに外部か ら過大な電圧がかからないように、保護回路などの電気部 品が取り付けられる。 (3)発電システム技術  太陽光発電システムには、大きく分けて大規模な太陽光 発電所と、住宅用の発電システムがある。大規模な太陽光 発電所では、天候などによる出力変動も大きくなるため、

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(2)海外の産業政策 ①欧州における導入促進政策  欧州での太陽光発電導入施策は、各国により個別に決め られている。余剰電力買取制度、RPS制度、太陽光発電シ ステム購入時の補助、税制面での優遇措置を採用している 国もあるが、FIT制度が主要な導入促進施策となっている。  ドイツにおける固定価格買取制度は、1991 年の電力供 給法による買取制度の導入、2001 年の再生可能エネルギー 法による FIT 制度開始、及び 2004 年の再生可能エネルギー 法改正による買取価格の引き上げと電力の大規模需要家 への減免措置の導入の 3 段階を経て発達してきた。  図 3-2 に示すように、2006 年に太陽光発電の電力買取 価格を大幅に上げてから、2010 年まで、太陽光発電シス が電気事業者に義務化された。2012 年の 7 月からは「再生 可能エネルギー法」による FIT 制度が始まり、事業者から の 42 円 /kWh での全量買取が始まった。同制度では、発 電用のメガソーラーを含め、設置容量が 10kW 以上の設備 で発電した電力の全量を 20 年間固定価格で買い取ること を義務付けており、太陽光発電の導入が急速に進むことが 予想されている(図 3-1)。  日本の太陽光発電技術開発の国家プロジェクトは 1970 年代のオイルショック以降に本格化し、サンシャイン計画 (1974 〜 1992 年)及びニューサンシャイン計画(1993 〜 2000 年)において、結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコ ン太陽電池、CIS 太陽電池、有機系太陽電池(色素増感、 有機薄膜)の技術開発が行われてきた。2001 年以降も継続 して、NEDO 等により研究開発プロジェクトが行われて いる。 図3-1 日本の太陽光発電導入促進施策と導入量の推移 図3-2 ドイツにおけるFIT買取価格と太陽光発電システムの単年度導入量及び太陽光発電システム価格の推移 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012〔年〕 太陽光発電導入支援補助金制度 終了 再開 再生可能 エネルギー法による 固定価格買取制度 太陽光発電導入支援補助金制度 余剰電力買取制度 2012年7月 2009年11月 RPS法 2003年 日本の太陽電池の単年度導入量 (MW) システム価格 (百ユーロ/kW) 単年度導入量 <3kW屋根置き買取価格 (ユーロセント/kWh) 100∼1,000kW地上設置買取価格 (ユーロセント/kWh) 0 10 20 30 40 50 60 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 当たり単価 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 (MW/y) 導入量 kWh

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延長された。  米国での電力買取の主な施策は RPS 制度であり、29 州 とワシントン DC で実施されており、さらに 8 州では利用 目標量を設定している。州別に見ると、カリフォルニア州 が電力小売売上高の 33% を再生可能エネルギーで賄うこ ととしており、米国太陽光発電市場における中心となって いる。余剰電力買取制度は 43 州とワシントン DC で、FIT 制度はワシントン州とカリフォルニア州など 6 州で行われ ている。  太陽電池の産業育成施策としては、連邦政府レベルによ る投資税控除、助成金支給及び生産設備に対する税額控除 が太陽光発電産業への投資を振興する重要な役割を担って いる。また、米国でのベンチャー支援は太陽光発電の産業 育成の一助となっている。 ③中国における導入促進政策  太陽光発電システムの導入支援策としては、2009 年に 設置された「ゴールデンサン(金太陽)プロジェクト」が代 表的で、大型太陽光発電モデル事業への補助金政策が打ち 出されている。同プロジェクトと「建物における太陽光発 電に対する補助金制度」により電力買取制度が導入された ことにより、太陽電池の国内導入量が大幅に増加した。さ らに、2011 年 7 月には、中央政府により FIT 制度が導入 された。  その結果、2011年度の年度累計太陽電池導入量が2.2GW であった中国の太陽電池導入量は、2012 年 10 〜 12 月の四 半期だけで 2.25GW となっており、今後、中国は世界最大 の太陽光発電マーケットとなることが予想されている。

4.

市場動向

(1)太陽電池の導入状況  太陽電池の国別単年度導入量と累積導入量の推移と予測 を図 4-1、4-2 に示す。世界の太陽電池の累積導入量は 2011 年 末 ま で に 約 70GW に 達 し て お り、 こ の 内、 約 30GW が 2011 年に導入されている。  特に、欧州各国の太陽電池導入量が多いが、これは、前 述した欧州各国の太陽電池の導入を促進する施策の効果に よるものと考えられる。また、太陽電池の世界最大の生産 国である中国は、近年、自国への導入量を増やし、世界の 主要な市場へと成長している。太陽電池の市場は、図 4-1 〜図 4-3 にも示されるように、各国の産業政策や太陽電池 の価格動向等により大きな影響を受けるため、短期的な市 場規模の予測は困難であるが、長期的には、オセアニア、 南米、アフリカ等の経済成長圏も含め、今後も世界の太陽 電池の導入量は増加するものと考えられている。 テムの導入量は毎年大きく伸びた。そして、同図に示す ように、導入量が増加するにつれ太陽光発電システムの 価格は低下した。太陽光発電システムの価格の低下を考 慮して FIT 制度での電力の買取価格は毎年見直されてき たが、2009 年に入ってからの急激な太陽光発電システム 価格の下落は、太陽光発電設置の経済性を大きく改善し、 市場の急速な拡大をもたらした。  このため 2010 年に入ってからは、買取価格を短期的に 見直すことが行われ、買取価格も大幅に下げた。その結果、 2011 年の設置量は 2010 年と同レベルにとどまった。一方 で、太陽光発電システムの価格は下がり続け、2012 年の 第2四半期には1,776ユーロ/kW(約17万円/kW)に達した。 それを受け、2012 年 6 月には、FIT 制度の修正法案が成立 し、買取価格を 20 〜 30%引き下げるとともに、累計設備 容量が 52GW に達した時点で買取を中止することとした。  イタリアでは、2002 年より RPS 制度を導入し、大規模 発電設備については RPS 制度に基づき支援を進める一方 で、2005 年以降、太陽光発電設備及び太陽熱発電設備に ついては FIP(Feed-in Premium)制度(電力卸市場価格に プレミアムをつけて高く買い取る制度)を、小規模再生可 能エネルギー発電設備については FIT 制度を導入してい る。2007 年に太陽光発電への補助金交付が開始されたが、 2010 年一杯で打ち切られた。  2010 年に 2.3GW であった太陽光発電の導入量は、2011 年には 9GW に急増した。その結果、2012 年の 6 月以降分 の補助金枠まで使い果たされたため、2012 年下期の大型 太陽光設備への支援を中止した。  スペインでは、1994 年に FIT 制度が導入された。2007 年 6 月には、太陽光発電への助成を大幅に増加させ、その 結果、太陽光発電システムが過剰に導入された。このため、 2008 年には電力買取価格を引き下げ、2009 年には買取対 象設備の年間上限枠を設定した。その結果、太陽光発電の 導入量は減少した。2011 年には、保守政権への政権交代 により、FIT 制度に基づく新規買取の一時凍結を 2012 年 1 月に決定した。 ②米国における導入促進政策  米国では連邦・州・地方の各レベルで様々な奨励プログ ラムや政策が設けられており、これらの組合せによって太 陽光発電市場が成長してきた。  太陽電池購入支援制度としては、連邦政府の補助金 (キャッシュグラント、2011 年で終了)のほかに、州レベ ルでの補助金制度が、カリフォルニア州ソーラーイニシア ティヴ(2007 〜 2017 年)など、8 州とワシントン DC で行 われている。また、太陽光発電システムの設置者に対する 所得税控除が、2008 年 10 月の金融安定化法で 2016 年まで

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図4-1 太陽電池の国別単年度導入量の推移と予想 図4-2 太陽電池の国別累積導入量の推移と予想 図4-4 太陽電池の生産地域別生産量の推移 図4-3 中東、アフリカ、南米、オセアニア地域での太陽電池導入量の推移と予想 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 2 00 7 年 実績 2 008 年 実績 2 009 年 実績 2 010 年 実績 2 011 年 実績 2 01 2年 予測 政策主導 2 013 年 予測 政策主導 2 014 年 予測 政策主導 2 01 5 年 予測 政策主導 2 01 6 年 予測 政策主導 その他 オーストラリア 韓国 フランス 中国 米国 スペイン 日本 イタリア ドイツ (GW) 0 50 100 150 200 250 300 350 400 2 00 7 年 実績 2 008 年 実績 2 009 年 実績 2 010 年 実績 2 011 年 実績 2 01 2年 予測 政策主導 2 013 年 予測 政策主導 2 014 年 予測 政策主導 2 01 5 年 予測 政策主導 2 01 6 年 予測 政策主導 その他 オーストラリア 韓国 フランス 中国 米国 スペイン 日本 イタリア ドイツ (GW) 0 5 10 15 20 25 30 35 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 その他 中国・台湾 欧州 米国 日本 生産量 (GW) 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 導入量 中東 現状ベース 中東 支援強化 アフリカ 現状ベース アフリカ 支援強化 南米 現状ベース 南米 支援強化 オセアニア 現状ベース オセアニア 支援強化 (MW)   (2)太陽電池の生産状況  太陽電池の世界の生産地域別生産量の推移を図 4-4 に示 す。太陽電池の世界全体の生産量は 2000 年代後半より急 激に増加し、2011 年には約 32GW に相当する太陽電池が 生産された。日本は他国に先行して太陽電池の生産を行っ ており、生産量自体は増加し続けているが、2005 年以降、 中国に急速にシェアを奪われた。そして、2011 年には、 世界全体の太陽電池生産量の 54%を中国が占めるに至っ ている。中国の生産量拡大の背景には、欧州の市場拡大や、 欧州から中国への技術導入によるコスト削減等が挙げら れる。

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由に、FIT 制度の見直しが行われ、これまで世界最大であっ た欧州の太陽電池市場は急速に縮小傾向にある。また、欧 米では一部の中国の太陽電池製品にダンピングの恐れがあ るとして調査が始まり、米国では既に反ダンピング税が課 せられ、中国製品にとっての逆風となっている。  欧州での市場の縮小と生産設備の増強、そして、過剰生 産による結晶系シリコン太陽電池の価格低下と在庫の増加 は、中国の太陽電池メーカー自身の経営をも圧迫し始め、 2012 年の 4 〜 6 月期には、中国の太陽電池メーカーの多く が赤字に転落し、地方政府が救済に乗りだす状況に追い込 まれている。  太陽電池の世界のセル材料別生産量の推移を図 4-5 に、 中国・台湾のセル材料別生産量の推移を図 4-6 に示す。両 図から、近年の太陽電池の生産量拡大は、中国・台湾にお ける結晶シリコン系太陽電池の生産量拡大に起因するとこ ろが大きいということが分かる。  中国の太陽電池メーカーによる市場の拡大を上回る設備 能力の増強は、製品価格の急速な低下をもたらし、その結果、 欧州各国の太陽電池メーカーの経営を圧迫し、業界最大手 のドイツのQセルズも経営破綻に追い込まれた(図4-7)。  一方、欧州では、経済不安の影響や FIT 制度を運用す る上で発生する政府の財政負担、電気料金の値上げ等を理 図4-5 全世界の太陽電池のセル材料別生産量の推移 図4-6 中国・台湾の太陽電池のセル材料別生産量の推移 図4-7 太陽電池産業を取り巻く世界の情勢 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 数量 (MW) CdTe CIS系 薄膜Si系 結晶Si系 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 CdTe CIS系 薄膜Si系 結晶Si系 数量 (MW) カリフォルニア中心の メガソーラー 地方政府支援 シリコン、 セル・モジュ ール製造設備 能力増強 ジョイントベンチャー 巨大産業化 FIT導入(2011/07中央政府) 中国内メガソーラー市場の 拡大を狙う→2012年4Qには 世界最大市場に! 欧州PV市場の 縮小(2012) メガソーラーで PVの大量導入 2009 ∼ 2010 2010 ∼ 2011 FIT(2004-、2006買取価格アップ) メガソーラー市場 FIT大幅引き下げ メーカー破綻 Qセルズ他 太陽電池輸出 装置輸出 価格低下 大量導入 ドイツ 中国 アメリカ 日本 欧州 2012年2Qには 16円/kwh(利率3%) Si系で第2グリッド パリティをほぼクリア NY証券市場上市 資金調達 ・太陽電池開発、  1974 サンシャイン計画 ・実用化、住宅用中心の設置 ・設備補助・余剰電力買取 ・RPS(2003)FIT(2009)    ↓   FIT(2012)メガソーラー市場 ダンピング 提訴 Si、太陽電池の 製造装置メーカー

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示す。太陽電池に関する特許出願件数は、2004 年には合 計 3,000 件弱であったが、その後急激に増加し、2008 年に は 1 万件を超えている。出願人国籍別に見ても、各国の出 願件数は増加し続けており、近年生産量を拡大した中国も、 当初は出願件数が少なかったが、徐々に出願を増やし始め ている。また、日本は早い段階から継続して出願していた ことが分かる。  太陽電池の出願先国別の出願人国籍別出願件数を図 5-2 に示す。いずれの国も、自国の次に米国への出願件数が多 いが、中国は特別自国への出願傾向が強く、海外への出願 はほとんどない。  日米欧中韓台以外の主な出願先国における出願人国籍別 の出願件数比率を図 5-3 に示す。欧米は、日米欧中韓台以 外の経済成長圏へも積極的に出願しているが、日本から経 済成長圏への出願は少ないことが分かる。

5.

特許出願動向

 本調査では、データベース Derwent World Patents Index(トムソン サイエンティフィック リミテッドの登録 商標)を使用し、当該データベースに収録された全ての出 願先国を対象に、優先権主張年を基準に、2004 年から 2010 年に出願された特許を調査対象とした。なお、2009 年以降は、PCT 出願の国内段階移行時期による遅れや、 データベース収録の遅れ等により、全データが取得されて いない可能性がある点に留意する必要がある。 a.全体動向  太陽電池の出願人国籍別出願件数の年次推移を図 5-1 に 図5-1 太陽電池の出願人国籍別出願件数の年次推移 a)オーストラリアへの出願 d)ブラジルへの出願 b)インドへの出願 e)南アフリカへの出願 c)メキシコへの出願 図5-2 太陽電池の出願先国別の出願人国籍別出願件数 図5-3 出願先国別−出願人国籍別の出願件数比率 (太陽電池の材料を明示した出願と、集光型と発電システムに関連する出願件数を集計した。ただし、有機薄膜系と色素増感型とナノテクノロジー系を除いている) 2,989 3,622 4,993 6,830 10,571 11,061 9,073 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 出願年(優先権主張年) 日本 米国 欧州 中国 韓国 台湾 その他 合計 優先権主張 2004-2010年 出願人国籍 出願件数 米国 欧州 中国 韓国 台湾 その他 443 その他 326 1,176974 37 31 16 35 台湾 526 516 240 19 122 722 韓国 785 664 402 21 4,247 22 51 110 4,070 728 中国 1,234 1,093 384 345 173 欧州 1,347 1,509 5,082 61 432 123 米国 1,852 4,133 1,296 199 891 615 271 73 日本 9,988 748 602 28 291 86 日本 出願人国籍 出願先国 日本国籍 55件 10.5% 米国籍 224件 42.9% 欧州国籍 153件 29.3% 中国籍 11件 2.1% 韓国籍 6件 1.1% 台湾籍 10件 1.9% その他 63件 12.1% 日本国籍 28件 7.8% 米国籍 176件 49.2% 欧州国籍 125件 34.9% 中国籍 4件 1.1% 韓国籍 4件 1.1% 台湾籍 1件 0.3% その他 20件 5.6% 日本国籍 16件 10.5% 米国籍 75件 49.0% 欧州国籍 50件 32.7% 中国籍 3件 2.0% 韓国籍 0件 0.0% 台湾籍 0件 0.0% その他 9件 5.9% 日本国籍 1件 2.9% 米国籍 9件 25.7% 欧州国籍 15件 42.9% 中国籍 1件 2.9% 韓国籍 0件 0.0% 台湾籍 0件 0.0% その他 9件 25.7% 日本国籍 0件 0.0% 米国籍 9件 15.0% 欧州国籍 41件 68.3% 中国籍 1件 1.7% 韓国籍 1件 1.7% 台湾籍 0件 0.0% その他 8件 13.3%

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TECHNO

TREND

 表 5-1 に、出願人別の出願件数上位ランキングを示す。 太陽電池の生産量が多い中国籍出願人としては、中国科学 院が 24 位となっている。ランキング上位に中国の太陽電 池メーカーはなく、2010 年に年間生産量が 1.5GW を越え 世界 1 位の太陽電池メーカーとなった中国のサンテックパ ワーからの出願件数は、91 件であった。なお、同社は、 欧州市場の縮小の影響を受け、2012 年の第 1 四半期には 資産に占める負債の割合が 82%に達し、第 2 四半期には赤 字に転落した。このため 2012 年 8 月には最高経営責任者 が交代し、行政に対して事業継続に必要な協力依頼が行わ れた。 b.グローバル出願  太陽電池は、世界中で生産・設置される製品であり、グ ローバルな特許出願が求められる。  そこで、本調査では、国際競争力を評価するために、特 許ファミリー中に自国以外への出願を含むものを特許ファ ミリー単位(発明単位)で集計した件数をグローバル出願 件数、発明単位の全出願件数に対するグローバル出願件 数の比率をグローバル出願比率と定義して出願動向を調 査した。太陽電池の出願人国籍別グローバル出願件数と グローバル出願比率の年次推移をそれぞれ図 5-4、図 5-5 に示す。  日本国籍出願人のグローバル出願件数は上位で推移して いる。一方、日本国籍出願人のグローバル出願比率は、 2004 年の 16%から 2008 年の 30%に上がっているものの、 欧米国籍出願人と比較すると依然として低い水準にある。 表5-1 出願人別出願件数上位ランキング 順位 出願人名称 出願件数 1 シャープ 1,376 2 三洋電機 1,024 3 京セラ 731 4 LG電子(韓国) 710 5 E. I. デュポン(米国) 667 5 アプライド マテリアルズ(米国) 667 7 三星電子(韓国) 534 8 三菱電機 511 9 富士フイルム 430 10 三星SDI(韓国) 428 11 ジェネラル エレクトリック(米国) 411 12 住友化学 392 13 三菱重工業 383 14 フラウンホーファー研究機構(ドイツ) 359 15 アルバック 317 15 ソニー 317 17 ファースト ソーラー(米国) 302 18 サンパワー(米国) 288 19 フランス原子力庁(フランス) 277 20 LGイノテック(韓国) 273 21 フジクラ 272 22 ITRI(台湾) 269 23 BASF(ドイツ) 266 24 中国科学院(中国) 262 25 大日本印刷 251 26 半導体エネルギー研究所 244 27 カネカ 243 28 サンゴバン・グラス・フランス(フランス) 233 29 パナソニック 231 30 プリンストン大学(米国) 230 図5-4 太陽電池の出願人国籍別グローバル出願件数の推移 図5-5 太陽電池の出願人国籍別グローバル出願比率の推移 0 100 200 300 400 500 600 700 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 台湾 グローバル出願件数 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 グローバル出願比率 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 台湾

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 次に、太陽電池のモジュール要素別出願人国籍別出願件 数を図 5-7 に示す。出願人国籍別に見ると、日本国籍出願 人は、封止材と裏面保護材に関する出願件数が特に多い。 一方、他国と比較すると、集光型太陽電池と関連の深い光 学素子に関する出願は少ない。  また、本調査では、太陽電池関連の注目技術として、a) 裏面電極技術、b)HIT 技術、c)集光型太陽電池技術、d) 発電システム、e)封止材、f)裏面保護材を取り上げた。 これらの注目技術の出願人国籍別出願件数比率を図 5-8 に 示す。出願件数では、日本は、裏面保護材と封止材、HIT 技術で優位にある一方で、集光型太陽電池と発電システム 関連技術に関する出願は、欧米と比較して少ない。 c.技術区分別動向  太陽電池のセル材料別出願人国籍別出願件数を図 5-6 に 示す。出願人国籍別に見ると、日本国籍と韓国籍、台湾籍 出願人は色素増感型太陽電池に関する出願件数が最も多 い。欧州国籍と中国籍出願人は結晶シリコン系太陽電池、 米国籍出願人は化合物薄膜系太陽電池に関する出願件数が 最も多い。  セル材料別に見ると、色素増感型太陽電池に関する特許 出願は、6 割弱が日本国籍出願人によるものである。また、 ナノテクノロジー系太陽電池、化合物結晶系太陽電池及び 化合物薄膜系太陽電池に関する特許出願は、米国籍出願人 が最も多く出願している。 図5-6 太陽電池の材料別の出願人国籍別出願件数 図5-7 モジュール要素別の出願人国籍別出願件数 5 4 11 11 15 39 その他 11 52 35 56 67 234 複合系 10 38 41 142 100 135 447 124 ナノテクノロジー系 195 943 203 2,672 色素増感型 289 379 74 80 388 150 583 624 895 有機半導体系 29 19 138 341 206 479 1,056 777 化合物薄膜系 58 40 52 93 270 163 化合物結晶系 36 薄膜シリコン系 1,253 575 357 250 397 150 30 結晶シリコン系 1,376 832 627 392 478 126 69 日本 米国 欧州 中国 韓国 台湾 その他 出願人国籍 技術区分─太陽電池の材料 14 その他 147 66 91 50 78 31 103 光学素子 198 502 330 310 173 168 端子箱 225 120 259 85 37 18 17 19 22 114 保護回路 87 101 5 5 素子補強構造フレーム 42 17 16 4 5 223 105 173 63 42 16 4 3 裏面保護材 1,022 210 154 103 75 19 8 27 87 87 201 195 485 表面保護材 74 83 18 5 220 266 757 封止材 15 80 39 26 2 161 配線シート 13 17 4 34 23 130 79 283 リード線 台湾 その他 欧州 韓国 米国 中国 日本 出願人国籍 解決手段−モジュール要素(中分類) a)裏面電極構造技術 d)発電システム b)HIT技術 e)封止材 c)集光型太陽電池技術 f)裏面保護材 図5-8 注目技術の出願人国籍別出願件数比率 日本国籍 291件 32.3% 米国籍 227件 25.2% 欧州国籍 171件 19.0% 中国籍 35件 3.9% 韓国籍 152件 16.9% 台湾籍 15件 1.7% その他 11件 1.2% 合計 902件 日本国籍 1,536件 17.3% 米国籍 1,706件 19.3% 欧州国籍 2,515件 28.4% 中国籍 1,352件 15.3% 韓国籍 1,102件 12.4% 台湾籍 343件 3.9% その他 300件 3.4% 合計 8,854件 日本国籍 79件 56.0% 米国籍 23件 16.3% 欧州国籍 9件 6.4% 中国籍 8件 5.7% 韓国籍 21件 14.9% 台湾籍 1件 0.7% その他 0件 0.0% 合計 141件 日本国籍 757件 53.2% 米国籍 266件 18.7% 欧州国籍 220件 15.5% 中国籍 74件 5.2% 韓国籍 83件 5.8% 台湾籍 18件 1.3% その他5件 0.4% 合計 1,423件 日本国籍 584件 14.8% 米国籍 883件 22.4% 欧州国籍 876件 22.3% 中国籍 592件 15.0% 韓国籍 555件 14.1% 台湾籍 286件 7.3% その他 158件 4.0% 合計 3,394件 日本国籍 1,022件 64.4% 米国籍 210件 13.2% 欧州国籍 154件 9.7% 中国籍 103件 6.5% 韓国籍 75件 4.7% 台湾籍 19件 1.2% その他 3件 0.2% 合計 1,586件

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TECHNO

TREND

6.

研究開発動向

 本調査では、論文データベース JSTPlus(独立行政法人 科学技術振興機構の登録商標)を用いて太陽電池に関する 論文の調査を行った。調査対象は、2004 年〜 2011 年に発 行された論文誌に掲載された論文である。  太陽電池に関する論文の研究者所属機関国籍別論文発表 件数推移を図 6-1 に示す。年間の発表件数合計は、2004 年 に 684 件であるが、その後増加し、2011 年には 2,790 件に 達している。日本の機関からの論文発表件数は、2008 年 以降、中国、韓国、台湾に抜かれ、主要 6 か国(地域)中 で最も少なくなっている。  特に、集光型太陽電池システムに関する論文発表件数の 年次推移を見ると(図 6-2)、2011 年に各国からの論文発 表が急増している中で、日本からの論文発表は該当がない という状況である。  また、ナノテクノロジー系太陽電池に関する論文発表件 数(図 6-3)を見ると、2011 年に入り、各国でナノテクノ ロジー系太陽電池に関する研究開発が急速に進められてい ることが分かる。  ここで、主な調査項目についての出願人国籍別特許出願 件数と研究者所属機関国籍別論文発表累積件数の一覧を表 6-1 に示す。  全体的な傾向として、日本は、特許出願件数が多く、論 文発表件数が少ない。逆に、欧州は、特許出願件数が少な く、論文発表件数が多い。米国は、化合物系太陽電池やナ ノテクノロジー系太陽電池等の特定の分野において、積極 的に研究開発を行っていることが伺える。また、韓国は色 素増感型太陽電池の特許出願が目立って多い。

7.

標準化動向

 太陽電池は、世界的に流通している製品であり、国際標 準に適合していない製品は市場の流通の制約を受ける可能 性もある。したがって、国際標準化活動に積極的に取り組 み、国際標準を自国に有利なものとすることが、世界に市 場を展開する上で重要である。  太陽電池関連技術の国際標準化は、国際電気標準会議 (IEC: International Electrotechnical Commission)の第 82 小委員会(IEC/TC82)で審議されている。IEC/TC82 に は六つのワーキンググループがあり、テーマごとに分担し て審議している。各ワーキンググループの委員の国籍別内 訳を表 7-1 に示す。委員の国籍別内訳を見ると、米国とド イツが特に多い。日本の委員数は、韓国や中国よりも少な く 29 か国中 7 番目となっている。  所属機関別に委員数を見ると、諸外国はおおむね半数が 図6-2 集光型太陽電池システムの論文発表件数推移 図6-3 ナノテクノロジー系太陽電池の論文発表件数推移 図6-1 研究者所属機関国籍別論文発表件数の推移 100 200 300 400 500 600 700 800 900 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 発行年 研究者所属機関国籍 論文発表件数 その他 日本 米国 欧州 中国 韓国 台湾 5 10 15 20 25 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 論文発表年 論文発表年 研究者所属機関国籍 その他 日本 米国 欧州 中国 韓国 台湾 発表件数 論文発表年 研究者所属機関国籍 その他 日本 米国 欧州 中国 韓国 台湾 発表件数 10 20 30 40 50 60 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 論文発表年 論文発表年

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表6-1  主要調査項目における出願人国籍別出願件数(のべ件数)と研究者所属機関国籍別論文発表件数(2004-2011年の累計) 表7-1  IEC/TC82の委員構成(2012.11.26にIECのHPに掲載の情報による) 出願人国籍・研究者所属機関国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 台湾 全体 特許出願件数(全体)論文発表件数(全体) 16,0581,100 9,8391,454 9,8733,389 4,4351,442 6,398914 1,929643 セル 特許 結晶シリコン系 1,376 832 627 392 478 126 論文 結晶シリコン系 115 88 326 54 57 32   特許 HIT技術 79 23 9 8 21 0   論文 HIT技術 3 2 10 2 4 0   特許 裏面電極型 291 227 171 35 152 15   論文 裏面電極型 0 7 17 1 1 2 特許 薄膜シリコン系 1,253 575 357 250 397 150 論文 薄膜シリコン系 101 87 245 42 32 32 特許 化合物結晶系 163 270 93 52 40 58 論文 化合物結晶系 20 73 64 20 8 21 特許 化合物薄膜系 777 1,056 479 206 341 138 論文 化合物薄膜系 116 217 353 103 80 43   特許 ⅠⅢⅥ2 657 673 345 130 307 114   論文 ⅠⅢⅥ2 64 98 141 44 50 21   特許 ⅠⅡⅣⅥ2 73 74 41 17 6 14   論文 ⅠⅡⅣⅥ2 11 8 10 8 4 1   特許 ⅡⅥ 24 384 158 46 32 22   論文 ⅡⅥ 10 103 50 26 17 4 特許 有機薄膜系 895 624 583 150 388 80 論文 有機薄膜系 137 301 710 338 236 156 特許 色素増感型 2,672 203 289 379 943 195 論文 色素増感型 375 195 561 563 328 219 特許 ナノテク系 124 447 135 100 142 41 論文 ナノテク系 41 100 111 79 32 39 モジュール 特許 集光型太陽電池 548 883 876 592 555 286 論文 集光型太陽電池 16 31 99 27 3 20 特許 封止材 757 266 220 74 83 18 論文 封止材 5 6 12 2 0 4 特許 バックシート 485 195 201 87 87 27 論文 バックシート 1 3 2 0 1 1 特許 配線技術 1,071 411 439 86 155 30 論文 配線技術 1 2 4 0 1 0 システム 特許 発電システム 1,536 1,706 2,515 1,352 1,102 343 論文 発電システム 127 282 768 129 62 65   特許 管理・監視 334 311 402 209 179 57   論文 管理・監視 22 39 98 17 20 20   特許 システム設計 172 250 222 130 97 25   論文 システム設計 22 52 121 27 19 11 WG WG1 WG2 WG3 WG6 EG7 JCWG 総計 機能 用語 非集光型モジュール システム 周辺機器(BOS) 集光型モジュール 村落電化など

コンビーナー JP US GB,AU US,ES US ZA,MY

委 員 国 籍 US 18 11 9 24 4 66 DE 2 23 15 9 12 2 63 ES 1 7 8 6 15 1 38 KR 3 6 10 10 4 2 35 CN 15 7 3 2 3 30 CA 1 7 5 4 4 21 JP 1 7 5 4 2 19 IT 1 7 3 2 3 2 18 FR 1 3 3 3 3 13 AT 5 4 3 12 AU 1 2 3 3 3 12 CH 6 1 3 10 GB 1 3 2 2 1 1 10 DK 1 1 3 1 1 7 IL 1 1 1 2 5 ZA 1 1 1 3 PT 3 3 CZ 1 1 1 3 その他 4 3 3 5 2 17 ※各調査項目について、件数が最も多い国籍の件数から−20%以内の国籍を着色。

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TECHNO

TREND

 また、「5. 特許出願動向」の項では、中国の主要企業に よる特許出願は少なく、中国の太陽電池メーカーは特許 を活用してシェアを獲得したのではないことが明らかに なった。  そして、低価格な結晶シリコン系太陽電池を大量に生 産することでシェアを獲得した中国の太陽電池メーカーは、 過剰生産による太陽電池の急速な価格低下と過剰在庫に より、自身の経営を圧迫され始めており、シェアは獲得 したものの、事業として成功したとは言い難い状況となっ ている。  一方、日本の太陽電池メーカーは、図 5-1 から読み取れ るように早い段階から太陽電池の研究開発を始めていたた め、技術的優位性があると考えられ、シェアは減少してい るものの、厳しい市場環境の中、太陽電池の生産量を着実 に伸ばしている(図 4-4)。  しかしながら、近年では、中国籍出願人も出願を増やし 始め(図 5-1)、また、論文発表件数で見ると、日本は既に 中韓台に抜かれて日米欧中韓台のうち最下位となっている (図 6-1)。また、海外への展開について見ると、日本国籍 出願人による特許出願先は、日米欧中韓台に偏っており、 市場を見据えた出願がなされていない可能性がある(図 5-2、図 5-3)。加えて、集光型太陽電池など特定の分野に おいて、日本は世界の研究開発動向及び国際標準化活動に 乗り遅れている傾向もある(図 6-2、表 7-1)。  このように、太陽電池の分野において日本がこれまでに 築いてきた技術的優位性は、急速に脅かされつつある。本 調査では、このような状況を踏まえ、日本が取り組むべき 課題と、今後目指すべき技術開発の方向性について提言を まとめた。本稿では、その一部を以下に紹介する。 【提言1】基本的な技術についての強いグローバル特許 の獲得推進  日本国籍出願人は、グローバル出願件数が、米国、欧州、 中国、韓国及び台湾と比較して多く、グローバル出願比率 も向上しているが、論文発表件数では欧州、米国、中国に 対して後れを取っており、根源的な技術開発が停滞してい る可能性がある。太陽電池の普及が急速に進む中で、今後 は、重要技術の研究開発に力を入れて技術力の底上げを図 るとともに、当該重要技術に基づいて、権利として強い特 許をグローバルに獲得していくことが、国際競争力強化の ために必要である。(図 5-4、5-5、6-1) 【提言2】経済成長圏における戦略的な特許取得の推進  太陽光発電は、日米欧のみならず、オセアニア、南米、 アフリカを含む世界中でその導入が大きく進展していくこ とが予想されている。日本の太陽電池産業の大幅な発展を 民間企業所属の委員だが、日本は、民間企業所属の委員数 が 19 人中 4 人にとどまっている(表 7-2)。  国別にグローバル出願件数と委員数の関係(図 7-1)を 見ると、日本は、特許出願件数の割に委員数が極端に少な いことが分かる。また、特許出願件数及び論文発表件数か ら見て日本の研究開発が遅れている可能性がある集光型太 陽電池や発電システムについても、関連するワーキンググ ループが立ち上がっており、各国が積極的に同分野に関連 した国際標準化活動を行っていることが伺える。このよう に、日本は、特定の分野において、研究開発に加えて国際 標準化活動にも乗り遅れている傾向がある。

8.

今後の課題と研究開発の方向性

 図 4-4 に示したように、日本は他国に先行して太陽電池 の生産を行っていたが、2005 年以降は急速に中国にシェ アを奪われた。中国のシェアが拡大した背景には、「3. 産 業政策動向」の項で述べた産業政策による欧州の市場拡大 (図 4-1)や、欧州から中国への技術導入によるコスト削減 等が挙げられる。 表7-2  国別のWG参加者の所属機関別人数 *日本の公的機関にJEMA を含む 図7-1  ICE/TC82 ワーキンググループ委員数とグローバル 出願件数の関係 米国 ドイツ スペイン 韓国 中国 日本 民間企業 32 32 16 21 16 4 認証機関 14 17 1 0 0 5 公的機関 12 11 13 10 9 9 大学 5 3 5 3 2 1 不明 3 0 3 1 3 0 国別計 66 63 38 35 30 19 0 10 20 30 40 50 60 70 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 太陽電池関係の特許出願件数(グローバル出願) 日本 米国 ドイツ 中国 韓国 カナダ フランス スペイン WG 委員数

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太陽電池メーカー等が一丸となって太陽光発電の研究開発 と市場獲得に向けた取組を着実に行い、激変する環境の中 にあっても揺るがない日本の地位を築き上げること、ひい ては、日本の太陽光発電技術が世界へ普及し、環境にやさ しい持続可能な社会の実現に貢献することを強く望む。本 調査がその一助となれば幸いである。 実現するためには、将来、太陽電池の市場として大きく伸 びると期待されている経済成長圏への参入が必要であると ころ、これらの国に対する日本国籍の特許出願件数で見る と、米国籍や欧州国籍と比較して劣勢である。将来の市場 拡大を意識し、経済成長圏への特許出願件数の増加を図る べきである。(図 4-3、図 5-3) 【提言3】国際標準化の積極的推進  グローバルな知的財産活動と国際標準化活動について、 主要国間で比較すると、日本は知的財産活動には積極的で あるが、国際標準化活動は活発とはいえない。今後は、知 的財産活動と国際標準化活動は、国際競争力を獲得するた めの両輪と位置付け、太陽電池関連企業は国際標準化活動 にも積極的に取り組むべきである。さらに、国際標準化活 動の推進を引き続き国家戦略に位置付けて、国から積極的 支援を行い、官民一体となって国際標準化活動に取り組む ことが必要である。(表 7-1、表 7-2、図 7-1) 【提言4】総合的なシステム関連技術開発の推進  太陽電池市場の 80%以上を占める結晶シリコン系太陽 電池セルは、中国製品が大量に出回ったことにより、低価 格化が進んでいる。今後は、より付加価値を増した総合的 なシステム事業としての取組をより一層進め、管理・監視 技術等を含めたシステム関連の技術開発を推進し、国際的 に特許を取得していくべきである。同時に、システム化に 際しては、インターフェース規格などの標準化が重要であ り、国際標準化における日本の主導的な活動が望まれる。 (図 5-8d)、表 7-1) 【提言5】集光型太陽電池の研究開発及び商品開発の推進  太陽光を効率的に利用できる集光型太陽電池は、直達光 の比率が低い我が国の気候には不向きなことから、その研 究開発は欧米に後れを取っている。しかし、集光型太陽電 池は、近い将来に海外で大きく普及する可能性がある。今 後の世界市場の獲得競争に出遅れることのないように、集 光型太陽電池の基礎的な研究開発及び商品開発を、中期的 な取り組み課題と位置付け推進していくべきである。(図 6-2、表 7-1)

9.

おわりに

 本稿では、太陽電池について、平成 24 年度の特許出願 技術動向調査の結果の一部を紹介した。世界で太陽電池の 研究開発競争、市場獲得競争が激化する中で、日本の政府、

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安藤 達哉

(あんどう たつや) 平成19年4月 特許庁入庁(特許審査第一部ナノ物理) 平成22年4月 審査官昇任 平成24年10月 特許審査第一部調整課審査調査室(併任)

参照

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