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地域住民の健康の価値観と健康教育のアプローチに関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)「地域住民の健康の価値観と健康教育のアプローチに関する研究」 キーワード:健康日本 21 地域住民 アンケート調査 健康教育 九州大学大学院人間環境学府 発達・社会システム専攻 2HE00079W 蒲池 千草 【概要】 わが国の健康の施策として、旧厚生省(現厚生労働省). 2. 健康目標値への行動変容につながる健康教育のアプ. ローチ方法について検討をする。. は「21世紀における第三次国民健康づくり運動」いわ. これらの目的を達成するためには、 「健康日本 21 ガイ. ゆる 「健康日本 21」 を 2000 年 4 月からスタートさせた。. ドブック」に示されている「一次予防」に重点を置いた. 本研究は、この運動が特色として打ちだした健康目標値. 「住民参加型健康づくり」を実施している対象が必要で. 到達や住民主体の健康づくり等の課題について論述した. ある。2000 年 4 月にスタートした「健康日本 21」は、. ものである。. 多くの市町村ではまだ取り組んでいなかった。 その中で、. わが国の平均寿命は近年急速に伸び、人口構成は「少. T 市保健センターは「健康日本 21」のガイドブックに沿. 子・高齢化」している。特に高齢者人口の増加は「寝た. って、住民を対象に 2000 年 3 月から「アンケート調査. きり」や「痴呆」の要介護状態の予備軍として、社会問. (対象者 600 名 回収率 97%) 」と「健康推進委員の育. 題となっている。21 世紀の健康づくり運動はこのような. 成」 (委員 30 名)に取り組んでいた。そこで、筆者はこ. 「少子・高齢社会」を受け、生活習慣の改善や健康の増. の活動に参加し、追加調査として「世代・年齢別アンケ. 進、疾病の予防など「一次予防」に重点を置く施策を強. ート調査(対象者 180 名 回収率 36%)」を実施した。. 力に推進していく事を目標にしている。旧厚生省(現厚. 第 1 章では、健康づくりの連続線として今日に影響を. 生労働省)はこれらの「第三次国民健康づくり」を「住. 及ぼしている、明治以降の行政主導型の「国民の健康づ. 民参加型健康づくり」として、1)個人の健康観に基づ. くり」の歴史とそれが今日の「国民健康づくり」とどの. いた主体的な取り組みの推進と、それを地域社会全体で. ように連携しているのかを調べた。一つは「国民の健康. 支援する、2)健康寿命の延伸のため、個人の健康値を. 観」として「国家の働き」と「国民の働き」に分け、そ. 「具体的目標」として提示する。そして、その取り組み. の動きを健康づくりの側面から見た。二つ目は、日本の. を健康関連の機関・団体が支援していく、この 2 つを柱. 特徴である経済発展と急速な高齢社会化によってもたら. として、 2010 年の 10 年間を活動目標の目途としている。. した「国民の健康観」である。一つめの「国家の動き」. 国民一人ひとりが主体的に健康づくりをするために、健. と「国民の動き」であるが、 「国家の動き」としては国家. 康目標値の設定と、その到達のためにマスメディアの活. が国民の健康を「公益」として健康の保持増進をしよう. 用、市町村保健センターの支援体制などを進めていく方. とする時、どのような方策が国民に遂行されるのかを分. 針である。. 析した。一方、 「国民の健康観」を「国民の動き」から見. 健康づくりは、一つの価値観によって健康行動を押し. ると、明治時代以降、資本主義の発達はサラリーマン層. 付けるものではなく、健康づくりのための豊富な選択肢. を生み出し、文化生活という新しいライフスタイルを目. を用意し、個人の考え方や価値観を大切にすることから. 標とする健康行動を生んでいった。その後、 「健康行動」. 出発する必要がある。従って、健康教育には、多くの健. の 2 つの動きと日本経済の発展で日本は世界一の長寿国. 康情報発信と情報公開を基本に「どれが最も自分に適し. となった。そして、二つ目は、日本の特徴である経済発. ているか」を自己選択できるようにしていくことが重要. 展と急速な高齢社会化によってもたらした「国民の健康. になってくる。 「健康日本 21」に取り組んだ市町村の地. 観」である。 「少子・高齢社会」の新たな健康観として、. 方策定の計画と実施内容の検討は、今後取り組みを予定. 「選ばれる命」「死の自己決定」「脅かされる命」「生き. している市町村の策定に参加する専門家に有効な働きを. る力を問われる時代」等、健康観は新たな時代を迎えて. すると考える。 そこで本研究は以下の 2 つを目的とした。. いることについて論述した。世界有数の長寿国の一つと. 1 地域住民の健康の価値観に基づく「健康目標値設定」. なったわが国は、「健康」であることだけを追い求めるの. の課題を明らかにする。. ではなくて、個人にとって健康の意味するところを考え.

(2) なければいけない状況になってきた。現在、健康観には. 炎などのいろいろな成人病を引き起こすので、早期の体. 病気との共存も含まれており、病気と共に主体的な個人. 重コントロールに取り組む必要がある。②運動について. の生き方を肯定することが、 QOL を重視した健康観には. は、 「運動をしている人」は 44.5%と基準値よりも高か. ある。人々が健康信仰の境地から離脱する重要性を述べ. った。 「運動で腰や関節を痛めたことのある人」 は回答者. た。. の 29.2%であった。高齢者増加の現在、適切なスポーツ. 第2章では、 「健康日本 21」の健康目標値に対して、. グッズなどの紹介も重要である。又、職場での運動に「参. T 市のアンケート調査結果と「T 市の到達基準値策定」. 加する」と回答した人は 91.5%であった。回答者の. に照らして T 市民の健康観と健康行動の問題点と課題を. 70.3%が何らかの仕事に従事しているので、運動・健康. あげた。健康観の調査項目については、 「健康日本 21」. づくりは職場との連携が必要であると考える。③こころ. で取り上げている①栄養・食生活②運動③休養・こころ. の健康づくりについては、ストレスの焦点は「人間関係」. の健康づくり④健康診断・疾患⑤歯⑥タバコ⑦アルコー. 53.7%であった。しかし、ストレス解消法は「友達との. ルである。又、世代・年齢別アンケート調査では T 市民. 気楽な会話」46.2%が最も多く、 「人間関係」を基本に「こ. を対象に 6 つに年齢区分し、各 30 名(合計 180 名)を. ころ」に視点があることがうかがえた。④健康診断・疾. 無作為で選出し実施した。主な調査項目は、①食事・運. 患については、 健康診断の受診率は健康 70∼80%と高か. 動②休養③嗜好品④歯⑤健康生活の必要性⑥健康補助食. った。検診結果を自分の健康管理に役立てている人は. 品⑦メディアの健康情報等である。. 73.5%であった。⑤歯については、歯 24 本以下は 41.5%. 第 3 章では、これらの結果を踏まえ、専門家として住. と歯の保有率は基準値よりも低かった。⑥タバコについ. 民主体の健康活動をするにはどのような方策が必要であ. ては、タバコと肺がんとの関係を認識している人は. るかを検討し、次の 3 点を挙げた。一つはアンケート調. 96.4%と高かったが、心臓病との関係は 33.0%と基準値. 査結果を見ながら、 「第3次国民健康づくり (健康日本2. の 40.5%より低かった。タバコの煙の害については副流. 1) 」の特徴である、地域住民の健康目標値達成と自己責. 煙に害があると認識している人は 50.7%であった。家庭. 任についての考えかたである。二つめは自己責任を伴う. での分煙対策は 25.6%がなんらかの対策をとっていた。. 日常生活の健康行動の改善・改良・向上を基本とした、. 何もしていない家庭は 35.8%であった。職場での分煙は. 健康教育の実施方法として「参加接近法」を取り上げ記. 「分煙している」は 29.7%、 「分煙していない」は 30.8%. 述した。三つめは「健康行動」の基盤となる地域住民の. であった。 日本は長い間、 分煙をしていない状況である。. 「健康観」についてである。資本主義の進展の中で「豊. タバコをすう、すわないは個人の自己選択であるが、情. かさと高齢社会」になった日本は、従来の疾病中心の健. 報提供を強化する必要性を感じた。⑦アルコールについ. 康観のみでは多くの不健康人を作り出す危険性がある。. ては、 「週4∼5回」と「毎日飲む」をあわせると 31.7%. 「健康日本21」は「住民主体の健康づくり」として発. であった。また「飲む」と回答した人の1日の飲酒量は. 想転換の立場をスローガンとしているので、それにふさ. 1合以上が 59.1%であった。アルコールについては個人. わしい「新しい健康観」の導入が必要になる。そこで新. の耐性もある。また、祝い事や会食の場面で飲まれるこ. しい健康観と健康行動について述べ、医療従事者として. とが多いので、 「節度ある飲酒量」 について啓蒙をしてい. 住民主体の健康づくりを支援する方策について論述した。. く必要がある。 (2)年令・世代別アンケート調査の回答によると、①. 地域住民への「アンケート調査」と「世代・年齢別ア ンケート調査」の結果、次のような結論を得た。 1.本研究の第1の目的である“T 市住民の健康の価値. ストレスは年齢の若い人ほど「はい」の回答が多く、69 才代では「なし」の回答が多かった。 「死にたいほどのス トレス」を感じた人は 10 人に1人であった。②「活動・. 観に基づく健康行動の特徴としては. 運動で大切なもの」については、回答者 65 名中、複数. (1)T 市のアンケート調査の回答によると、①栄養・. 回答で運動 42 名、歩行 38 名、が多かったが、17 才で. 食生活については、 「1 日の食事回数3食以上」 は 87.2%、. は 5 人、21 才では1人、69 才では6人が「社会活動」. 「家族と楽しく食事を取っている」84.8%であった。い. をあげ、関心を示していた。③依存性の強い「タバコ」. つも楽しく食事をとっている状況が結果として出ていた。. 「アルコール」については年齢に関係なく、関連する疾. しかし、性別 BMI によると、肥満の割合が男女共に 40%. 患についての知識不足が多かった。 「タバコ」 との関係で. で基準値よりも高かった。肥満は糖尿病、心臓病、関節. は「肺がん」は 58 人の 89.1%と高かったが、 「胃潰瘍」.

(3) は 11 人の 17%、 「脳卒中」は 14 人の 21%、 「心臓病」. 3.本研究の第2の目的である、地域住民の健康への行. は 20 人の 30%と、その関連性についての認識は低かっ. 動変容につながる健康教育のアプローチ方法については、. た。 「アルコール」の「胎児」への影響についての認識は. 調査結果から健康教育に影響する因子として 3 つ存在す. 回答者 65 人中 49 人の 75%が「影響する」と回答した。. ると考えた。 ①健康の目標値と目標設定の意義である 「地. 未成年者の「身体発育への影響」についての認識は「影. 域住民の健康の自己責任」 の考え方である。 「個人が健康. 響がある」は 40 人の 61%、 「いいえ・どちらともいえな. 責任を負う」ということで生活をより健康的に律するこ. い」は 23 人の 35%であった。 「タバコ」 「アルコール」. とは、個人の行動責任を強く求めると同時に国家や地方. については、健康への影響について認識が低いまま、自. の役割である情報提供や社会制度を変える、生活環境を. 己選択されている傾向にあった。④雑誌・テレビ等の健. 整えるという重要な社会施策が必要となる。健康づくり. 康情報については、回答者 65 人中「関心がある」は 38. に「自己責任」を導入するならば、それと平行して、運. 人、 「健康情報を日常生活に取り入れる」は 23 人、 「健. 動しやすい都市環境整備、労働時間の短縮、夜勤労働の. 康情報は信用する」は 27 人であった。年齢が高いほど. 削減など、より健康的な生活生活が選択できる「社会的. 健康情報に関心が高く、日常生活に取り入れて、健康行. 予防対策」を強力に推進していく「健康づくり運動」の. 動を変えようとする傾向が強かった。⑤健康補助食品に. 活動が地域で必要となる。②「住民とともに考える健康. ついては、65 人中 19 人が「健康のためによい」と回答. づくり」としての強力な活動推進力を発揮することが期. していた。 「健康補助食品の使用」については、16 人が. 待できる中間年齢層の住民参加 ③従来からの「疾患中. 「よく使用している」と回答している。その内訳は 17. 心」の健康観から、個人のライフステージに対応した健. 才 1 名、21 才 1 名、29 才 2 名、36 才 5 人、53 才 2 名、. 康観や個人の主観的コントロール能力の観点から見た健. 69 才 5 名と各年令で使用していた。. 康観や年齢や障害に応じた自立度や役割遂行能力に観点. 2. 「健康目標値設定」の課題”については、. をおいた健康観などを取り入れた、自分自身に適した健. ①鳥栖市の健康推進委員とその諮問機関で、各健康項目. 康観の選択である。これらの 3 つの因子を育て、健康行. についての目標基準値設定に取り組んだが、決定には多. 動変容につながる健康教育として、地域住民の「参加と. くの追加資料とその分析が必要である。たとえば、実態. 対話」の教育法を取り入れることは健康教育効果が高い. 調査として、健康指標の場合はアンケート調査結果に加. と考えられる。専門家が住民からの日常に即した情報発. えて血圧・肥満度、総コレステロール・HDL 値、血糖. 信から健康観をよみとり、住民の参加的学習から相互学. 値、受療状況など、また環境因子などでは運動施設、歩. 習へと支えていくのは専門家の健康教育の役割であると. 道の整備状況、交通状況などである。これらは容易く資. 考える。専門用語などが地域住民の「参加と対話」の教. 料として入手できないので、その地域の基準値設定には. 育法の小さなバリアになっている事がある。住民サイド. やや困難を要した。今回は「食事」に項目をしぼって. のコミュニケーションの困難が生じれば「参加と対話」. QOL・健康の指標作成をした。②健康調査項目が多すぎ. は難しくなる。小さなバリアを見出すには「住民の視点. て基準値設定に至らないケースが多い。優先順位を検討. から考える事」が求められる。 「バリアへの感受性」を身. し、重点項目から実施する必要がある。推進ガイドブッ. に付けるには、住民を講師にして、専門家の気がつかな. クに沿ってアンケート項目をつくっていくのであるが、. い点を指摘してもらうことである。このように、健康教. 健康調査項目が日常生活全般に渡っているため、質問項. 育での「健康づくり」は実施主体が住民である事を専門. 目が多く、結果はでても目標基準値設定に取り組むため. 家は十分に認識して、よいパートナーシップが育つ努力. の、多くの追加資料とその分析が必要である。そのため. として、十分な対話を取り入れた健康教育方法が有効で. に、基準値設定に至らないケースが多い。優先順位の検. あると考える。. 討と重点項目の選別が必要となる。③アンケート調査結. 以上が T 市の「健康日本 21」の展開活動に参加して. 果による基準値設定は配布や回収方法の影響、健康項目. 得た結論である。. の適切性を考えると地域の実情を反映しているとはいえ. 本研究は厚生労働省が 10 年ごとに打ち出す「国民健. ない。また、日常生活習慣に関する項目が多く、個人の. 康づくり」の目的・特徴とその経過を追い、国民にとっ. 健康観や個人の環境を反映した項目が少ない。従って、. ての健康生活実施の効果をみようとしたものである。特. 地域集団の目標値設定をどの程度にするのかは困難を要. に世界でも例にない速度で高齢社会になったわが国は本. する。. 当に国民の健康問題を解決の方向に導いてくれるのかを.

(4) 検討した。 「健康日本 21」のガイドラインに沿って、健 康目標値に掲げている項目について地域住民へのアンケ ートを実施し、必要な健康教育・健康学習を地域の自治 体(健康保健センターが中心)と住民が一緒になって、 検討し住民主体の健康活動を展開するものであった。現 実には T 市のアンケート調査は「健康づくり運動推進委 員」である地域住民の協力を得て実施できた。健康基準 値の設定については、 「健康目標値設定」の課題”で述べ たごとく、適切性において、やや困難を要した。特に「健 康日本 21」の目標設定の意義は、国民に健康についての 価値づけをおこなうことであった。この価値づけは 3 つ の方向性をもっていた。一つは疾病・障害など個人の心 身の状態についての価値づけ、二つめは喫煙、運動、学 習等個人の生活様式の選択についての価値づけ、三つめ は自然環境、労働条件、保健・医療サービスなどの社会 環境についての価値づけである。アンケート調査で、こ れらをみいだすことは難しいので、健康行動調査内容や 方法を改めて検討する必要があることを強く感じた。 今回のアンケート調査結果は、方法や回収率でバイヤ スがかかり、正確な結論とはいえない。しかし、今回の アンケート調査や基準値設定プロセスは健康推進委員に とっては、 住民活動の重要な動機づけになった。 今後は、 高齢人口の一層の増加を地域で対応する為に、住民リー ダーの健康づくり力量形成の研究が課題となる。 【主な参考文献】 (1)多田羅浩三編『健康日本 21 推進ガイド』ぎょうせい 2001 年 (2)氏平高敏他 『健康づくり支援』 法律文化社 2000 年 (3)新井弘明他『健康の政策科学』医学書院 2000 年 (4)地域医療振興協会他訳『健康のための行動変容』法研 2001 年 (5)厚生統計協会編『国民衛生の動向』46 巻9号 1999 年.

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