九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
社会性アメーバと植物菌根系における協力行動の数 理的研究
内之宮, 光紀
https://doi.org/10.15017/1654674
出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(理学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
(様式 6 2)
氏 名 内之宮 光 紀
ま
命 文 名 Mathematical study of cooperative behavior in social amoeba and plant・mycorrhizal system
(社会性アメーパと植物菌根系における協力行動の数理的研究)
論 文 調 査 委 員 主 査 九 州 大 学 教 授 巌 佐 庸 面
リ 査 九 州 大 学 教 授 舘田 英 典
高
リ 査 九 州 大 学 准 教 授 粕 谷 英 一 i¥ll] 査 九 州 大 学 准 教 授 佐竹 暁 子
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
自然界では、いずれの生物も同種の他個体と、そして他の生物種と相互作用している。学位申 請 者 は 、 細 胞 性 粘 菌 ( 社 会 性 ア メ ー パ ) に お け る ア メ ー パ 細 胞 間 の 自 己 犠 牲 行 動 、 お よ び 陸 上 植 物 が土中の菌根菌との聞で示す相利共生的相互作用について進化の結果を数理的に解析した。
第 1は 、 社 会 性 ア メ ー パ の 利 他 行 動 の 研 究 で あ る 。 餌 で あ る バ ク テ リ ア が な く な っ た と き に 、 ア メーパは集合し、そののち子実体を形成する。集合した細胞のうち一部が柄になり、{也が胞子にな る。前者は後者を持ち上げ、その移動分散を助けるが、柄の細胞は死んでしまうので、自己犠牲、
つまり利他行動の例として注目されてきた。これまでの理論モデ、ノレは細胞分化に関する細胞閑相互 作用の機構は全く考えないものであった。集合した細胞は、 Differentiation‑inducingfactor‑I (DIF‑1)
という化学シグ、ナルを交換し、他の細胞に柄になるように仕向けることを通じて、柄と胞子との分 化比率を制御している。申請者は、 DIF‑1の 生 産 お よ び DIF‑1を 受 け て 柄 に 分 化 す る よ う に 応 答 す る と い う 反 応 機 構 を 数 理 モ デ ル 化 し 、 そ こ に 働 く 自 然 淘 汰 が ど の よ う な シ グ ナ ル 分 子 生 産 量 と 応 答 感 受 性 を 進 化 さ せ る か を 求 め た 。 そ の 結 果 、 異 な る 系 統 の 細 胞 を 混 ぜ た と き の 現 象 を 説 明 す る こ と が で き た 。 さ ら に 異 な る 系 統 が 混 ざ っ て 一 つ の 子 実 体 を 形 成 す る 種 に お い て は 、 混 合 が 生 じ な い 場 合に比べてシグナル分子をより多く生産し、シグナルへの感受性が低下することが示した。
第
2
に 、 陸 上 植 物 と 菌 根 菌 と の 共 生 的 相 互 作 用 の 研 究 が あ る 。 植 物 は 光 合 成 の 産 物 を 菌 根 菌 に 供 給 し 、 菌 根 菌 は リ ン な ど 土 中 の 栄 養 塩 類 を 効 率 よ く 吸 収 し て 一 部 を 植 物 に 供 給 す る 。 こ の と き 自 ら が獲得した資源のうちどの程度を相手に与えるように進化するかを数理的に解析した。申請者は、こ れ ま で の 理 論 研 究 と 異 な り 、 植 物 が 小 さ い 芽 生 え の と き で 全 体 で 指 数 的 に 増 大 す る 状 況 で の 動 的 最適化の計算をおこなった。その結果、相手から受け取る資源の自分にとっての重要性が高いほど、
相手に分ける資源比率が増えることが示された。
以 上 の 研 究 は 、 生 物 の 形 態 形 成 に 関 連 し た 数 理 生 物 学 に つ い て 重 要 な 貢 献 で あ る 。 よ っ て 、 本 論 文は博士(理学)の学位論文に値するものと認める。