非破壊検査による現場計測データを活用した長期使 用水圧鉄管の材料特性評価と健全度診断技術に関す る研究
著者 川村 文人
発行年 2019‑12
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00027512
(論文博士) 審 査 要 旨
氏名 川村 文人 生年月日(西暦) 1959年11月 7日
論文題目 非破壊検査による現場計測データを活用した長期使用水圧鉄管の材料特性評価と 健全度診断技術に関する研究
(1,000字程度)
本論文は,水力発電設備において長期使用された水圧鉄管を対象に,現場計測可能な非破 壊検査技術により得られるデータを基に,長期使用水圧鉄管の材料特性(強度,破壊靱性お よび腐食鋼材の残存強度)の評価と健全度の診断の妥当性と有用性を検証したものである.
まず水圧鉄管の母材の強度について検討したところ,化学組成の把握により十分に推定が可 能であることを明らかにした.ただし,化学組成は,分析位置ならびに分析手法により炭素 量の分析精度が異なるため,データ数を増やし,統計学的手法により精度向上を図る必要が あることも示した.次に,母材の化学組成と破壊靱性値には高い相関性があることから,化 学組成の把握により母材の破壊靭性値の推定が可能であることを明らかにした.一方,溶接 継手部の破壊靭性値については,現状,化学組成のみから推定するには信頼性に乏しく,加 工硬化の影響を考慮する必要があるが,母材部と溶接金属部の破壊靭性値には相関性がある ことから,加工硬化による影響を定量的に評価することにより溶接継手部の破壊靱性値を非 破壊的に推定できる可能性を見出した.さらに腐食材の残存強度に関しては,超音波作用荷 重直角方向の最小平均板厚で評価できることを明らかにした.ここで,最小平均板厚は,現 場において計測される平均板厚から板厚補正量(1.5×標準偏差)を減ずることで算出でき ることも提案した.なお,水圧鉄管のコンクリート小支台接触部のような外面より直接腐食 調査ができない箇所においては,SH 波を用いた超音波検査により実構造物の腐食を一定の 精度で予想できることを明らかにした.最後に,それらの結果を踏まえて,既設の水力発電 設備の材料特性評価と健全性診断に関する本成果の今後の展開の可能性について述べてい る.
本論文は,水力発電設備に供されている長期使用水圧鉄管の維持管理に必要な多くの知見 を与えており工学的に有用であると判断できる.
以上の結果より,本論文は博士号の授与に十分な内容を有していると判断した.また,口 頭試問によって申請者が博士号の授与にふさわしい学力を有することも確認した.よって,
博士(工学)の学位授与にふさわしいものと認められる.