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デジタル情報の管理 -デジタル情報 を継続的に保存 ・利用す るために〜

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(1)

デジタル情報の管理

‑デジタル情報 を継続的に保存 ・利用す るために〜

大域 博光 I

は じめに 〜迫 られ るデジタル情報への対応 ‑ 1 デ ジタル情報 の問題点 を理解す る

Ll

デ ジタル情報 に必要 な利用環境

1 ‑ 2

利用環境 の移行期

1 ‑ 3

記録 メデ ィアの耐久性

2

デジタル情報 を管理す る

2 ‑ 1

記録 メデ ィア

2 ‑ 2

デー タファイル形式 2‑3 管理情報の記録

2 ‑ 4

デジタル情報の保全

おわ りに 〜電子 自治体制度の中での公文書館 の役割 〜

は じめに 〜迫 られるデ ジタル情報 への対応 〜

「デジタル情報 は恒久的保存 に適 さない」 と言 われ る。 た しか に、数百年前 の記録が特別 な保存措 置 を施 さな くて も現在 まで残 っているのは、"紙 と墨'‑等 の保存性 の よい記録 メデ ィアが使 われていた か らであろ う。その ように言 われなが らもデ ジタル情報 を全 く保有 していない資料保存機 関は少 ない のではないだろ うか。それは、デ ジタル情報 の利便性や流通性 の良 さが、情報 を欲す る側 の要求 に適 合 しているか らである。更 に行政組織 においては、電子 自治体政策の中で、文書事務 の効率化 のため の電子文書 システム も波及 して きている。 これか らは、好 む と好 まざる とに関わ らず、デジタル情報 が複製資料 として、 またはオ リジナル資料 として増 えて くる事が確 実である。その ような状況 におい て 「デジタル情報 は恒久的保存 に適 さない」 ことを理 由に、デジタル情報へ の対応 を棚上 げに したま まだ と、 まさに数年後 にそのデジタル情報が利用 で きない状態 になってお り、記録管理者がその責任 を果た していない ことになる。

本稿 は、恒久的保存の面で課題 の多いデ ジタル情報 に対 し、 どの ような管理 を施せ ば継続的 な利用 が可能になるのか検討す る。

1 デジタル情報の問題点 を理解 する

何故、 「デジタル情報は恒久的保存 に適 さない」 と言 われるのか。デジタル情報の問題点 を整理 し、

継続的な保存 ・利用 のための方向性 を考 える

1 ‑ 1

デ ジタル情報 に必要 な利用環境

デジタル情報 は、'■0'■と"1"の数値信号 の配列が、 さまざまな形式 に準 じてデー タフ ァイル として棉

T財団法人沖縄県文化振興会公文書管理部公文書専 門員

(2)

成 される。 よって、デ ジタル情報 を保存す るには、その数値信号 を記録す るメデ ィアが必要 になると ともに、その内容 を表現す るのに、その記録 メデ ィアの再生装置 (記録 メデ ィア ドライブ) とデー タ ファイル を解析 す るための アプ リケー シ ョンソフ ト、及 びそれ らが稼動す るコンピュー タシステムが 必要 になる。

す なわち、人間は、記録 メデ ィアを直接読み取 ることがで きないので、その記録 メデ ィア及 びデー タファイルに対応 した利用環境 を必要 とす る。

図1 デ ジタル情報の利用環境

1 ‑ 2

利用環境 の移行期

記録 メデ ィア とその利用環境 は、一対 を成 して利用が可能 となる。記録 メデ ィアだけを保存 してい て も、対応 した利用環境が なければその情報 を利用す ることはで きない。

しか し、デ ジタル情報 の利用環境 には、 これ まで主流 として用 い られた ものが、技術 の進歩等 によ り徐 々に、 または急速 に一般社会 か ら姿 を消 してい ('r移行期'‑があ り、 この移行期 を過 ぎた後 に、旧 采の利用環境 を継続的 に維持管理 してい くことは、困難である。 この ことが冒頭 に述べ た 「デジタル 情報 は恒久 的保存 に適 さない」 と言 われる大 きな要 因である。

では、 どの ように対処すれば よいのであろ うか。デジタル情報 を一定期 間 (数年程度)だけ利用す るには、利用環境 を維持管理 してい くことが可能か もしれない。 しか し継続的な保存 ・利用 を実現す るには、その時代 とともに変化す る利用環境 を維持す るのではな く、移行期 を適切 に捉 え、記録 メデ ィ ア と記録 されてい るデー タファイルの形式 を、変化 した新 しい利用環境 に対応 で きる ものに変換す る 措置 を施す ことによって可能 になる。

また、新 しい利用環境 に対応 で きる ものは、移行期 と移行期 の間の"移行周期'‑が最 も長 く安定 した 記録 メデ ィアやデー タファイル形式 を選定す ることが、適正 な管理 を継続 してい く上で重要である。

(3)

図2 記享景メデ ィア とデータファイルの普及性

‑ 移行周期 ‑

‑移行期‑‑ ‑移行期‑

移行期 には、新 しい記録 メデ ィアやデー タフ ァイル形式が旧来の もの に変 って普及す る。移 行期 を過 ぎると、旧来の記録 メデ ィアやデー タ形式 を利用す ることが困難 な状況 に陥 る。

1‑3 記録 メデ ィアの耐久性

記録 メデ ィアは物理的な ものである限 り劣化が免れない。現在 のデ ジタル情報 の記録 メデ ィアは、

紙やマイクロフィルム等 のアナログ情報の記録 メデ ィア と比べ、耐久性が劣 る上、長期保存の実績 も ない。 また、 アナログ情報 の記録 メデ ィアは徐 々に、そ して部分 的 に劣化す るが、デ ジタル情報の記 録 メデ ィアが劣化す る と全ての情報が読めな くなる。 この耐久性が劣 る とい うことは、管理 の面か ら いえば記録 メデ ィアの交換周期が短い とい うことである。 しか し、デジタル情報 は記録 したデータフア イルを劣化 させ ることな くメデ ィアを交換 ・変換1す ることが可能であ る。 この こ とは、デ ジ タル情 報 に最適 な記録 メデ ィアの選択権 を与 えていることになる。現時点での最適 な記録 メデ ィアがその最 終型ではない。デ ジタル情報 は、デー タファイルをその時代 の最 も保存性 の良い記録 メデ ィア‑複写

を繰 り返 し、継続 的に保存 してい くことがで きるのである

1同 じ種類の別 メデ ィアへ移 し変 えることを'メディア交換一、別の種類 のメデ ィア‑移 し変 えることを‑メデ ィア変 換日とする。

(4)

3

記銀 メデ ィアの交換 周期

i 紙 一一一(修復)‑

1 0 0

年〜

l

マイクロフィルム マイクロフィルム 】 マイクロフィルム

5 0

‑1 0 0

5 0

〜1 0 0

年 ?

5 0

〜1 0 0

C D ‑ R 等

ィア l 次々世代 メデ ィア

2 0

〜 5 0 年

50

100年 ?

l o

o牛 ‑?

デ ジ タル情 報 の記 録 メ デ ィア にお い て、現 時 点 で最 も保 存 性 が優 れ て い る とい わ れ て い る CD‑Rで も、紙 や マ イ クロ フ ィルム と比べ る とメデ ィアの交換 周期 は短 い○

しか し、数年後 には、マ イクロフ ィルム以上 の耐久性 を持 つ新 しいデ ジ タル情報 の記録 メデ イ

2 デ ジタル情 報 を管理 す る

前 章 で は、 デ ジ タル情 報 の恒 久 的保存 に関す る方 向性 を述べ た。本 章 で は、具体 的 に どの ような管 理 を行 えば よいか、 デ ジ タル情報 の管理 方法 を表

1

に ま とめ た。以下 は、表 1で記 した事項 の根拠等

を補足 す る

2‑1 記録 メデ ィア (管理 方法1.1)

現 在 、 デ ジ タル情 報 の記 録 メデ ィア には、FD,HD,MO,ZIP,CD‑ROM,CD‑氏,DVD‑RAM...と様 々 な メデ ィアが存 在 す るが 、今 後 も進歩 を続 け、次 々 と新 しい記録 メデ ィアが誕生 す る。 これ らの記録 メデ ィアの 中か ら継続 的保存 に適 した もの を選定 す るには、 メデ ィアの寿命 が大 きな要 因 になる。 メ デ ィアの寿 命 とは、物理 的耐 久性 だ けで な く、移行周期 の長 さで あ る

[記録 メデ ィアの選定 要 因]

△ 耐 久性 :劣 化 ・損傷 に強 い

△ 普 及性 :主流 の記録 メデ ィア と して利 用 されてい る

△ 汎用性 :利用環境 の制約 が少 ない

△保 護性 :記録 され た情報 を更新 で きない

△記憶 容量 :多 くの情 報 が記録 で きる

△携 帯性 :記録 メデ ィアの 出納 が容易2

△低 価格 :記憶 容量 に対 す る単価 が安 い

2 全てのデジタル情報を常時、直接的にアクセス可能な状態にできない場合、紙やマイクロフィルムと同様に保管 庫に収めて出納することになる

(5)

これ らの事 を総合的 に判断 し、現時点で最 もデジタル情報 の保存用記録 メデ ィアに適 している記録 メデ ィアは

、‑ ' CD‑ R

日だ と言 える。

CD‑ R

は有機色素3へ記録 す る ことによ り、磁気 や電気 による影響 を受 ける こ とが な く、一度記録 された情報 を変更で きない事が、保護性 に優 れている といえる。 また、現在 ほ とん どの コンピュー タ に標準装備 されている とともに、利用環境 に依存 しない ファイルシステムを使用す ることがで きる4。

2 ‑ 2

デー タファイル形式 (管理方法

1 . 2 ) 2 ‑ 2 ‑ 1

静止画像系 の ファイル形式

文書、図書、写真等 のアナログ情報 をデジタル化す る際 に保存 す るデー タファイル形式 には

、BM

P, TI FF, GI F, J PEG, PI CT

…な どがあるが、記録 メデ ィア と同 じように、選定す る際の重要 な要 因は、

普及性 と汎用性である

( 1 )TI FF

ファイル

ハー ドウェアや ソフ トウェアに依存せず、幅広 い種類 の アプ リケーシ ョンがサ ポー トしている。 ま た、柔軟性が高 く、かつ多 くの情報 を保有す ることがで きるデー タ形式 なので、デー タ容量 は大 きく なるが、生成時の情報損失が最 も少 な く、 オ リジナル情報 を正確 に記録す ることがで きるファイル形 式である

( 2 )J PEG

ファイル

J PEG

ファイル も

TI FF

フ ァイル同様 、ハ ー ドウェアや ソフ トウェアに依存 しない。 また、圧縮率 に応 じて画像が劣化す るが、その分 ファイル容量が小 さ く、最 も普及性 と汎用性 があるイ ンターネ ッ

トブラウザ

( I nt e r ne t Expl ol e r

Ne t s c ape Navi gat e r )

で参照で きる。 また、 イ ンターネ ッ ト上で利用 で きる とい うことは、継続的 に利用 されるファイル形式 とい うことであ る

2 ‑ 2 ‑ 2

電子文書 (テキス ト系)のデー タファイル形式

Mi c r osof t ‑ Wor d

や ジャス トシステム一太郎 な どの ワープロソフ トで作成 された電子文書 は、専用 のアプリケーシ ョンソフ トを必要 とす るため、その ままのデー タファイル形式で保存 していたのでは、

デー タファイルの移行周期が短 くなる上、利用 で きる環境 も極端 に制 限 される。 よって、電子文書 の 作成時 または受入時 に、汎用 的なファイル形式へ変換 して保存 しなければな らない。

3CD‑Rは、記録層 に使用 される有機色素の種類 によって も、耐久性が異 なって くる

・シアニ ン系 :CD‑Rの初期の頃か ら採用 されてお り、それだけに信頼性がある。

・フタロシアニ ン系 :外的要因に強 く、通常の湿度や光度ではほ とんど変化 しない

・アゾ系 :最近使われるようになった色素で、耐光性や耐熱性 にす ぐれている

4 CD‑Rのサ イズや特性 などは、統一規格があるが、情報 を記録する形式 は、ISO9660,Joliet,ROMEO,HFS,UDF ど複数存在する。 これ らの記録形式の中でISO9660は、オペ レーシ ョンシステム等 に制約 される事が無 く、CD‑R 誕生時か らの実績がある

(6)

前 述 した静止 画像系 の フ ァイル形 式 に変換 す る こ とも可 能 だが 、 テキス ト系 の電子文書 は文字 デー タで構 成 され る為 、画像 フ ァイ ル よ りフ ァイル容量 が小 さ く、 ネ ッ トワー ク配信 時 の負荷 が軽 減 され る上 、記録 され てい る文字列 を検 索 す る こ とも可 能 であ る。 よって、 その特性 を維持 で きる フ ァイル 形式 を選 定す る。

( 1 )PDF

フ ァイル

PDF

フ ァイル は、文字 コー ドを扱 い なが ら も5異 な る利用環境 にお い て も、 オ リジナ ル文書 とほぼ 同様 の レイ ア ウ トを表現 す る こ とが可 能 で あ る。 また、参 照 用 ア プ リケ ー シ ョンで あ る

「 Ac r o b a t Re a d e r

」 も無 償 で配付 され て お り、 イ ンター ネ ッ ト上 の異種 環 境 間でや りと りす る際 の フ ァイル形 式 と して最 も主流 とな って い る。 しか し

、PDF

フ ァイル は

Ad o b eS y s t e ms

社 の独 自規格 で あ る こ と か らその継 続性 が不 安 に思 われ るが 、規格 自体 が 公 開 され てお り (利用 は無償 ) 、 ここまで世 界 中で 認 め られ てい る規格 が 、今後 、互換 性 な く放 棄 され る とい うこ とは考 えに くい。

( 2 )ⅩL

系 フ ァイル

HTML, SGML, ⅩML

は、 いず れ も電 子 文書 と して汎用 性 ・普 及性 の あ る フ ァイル形 式 であ り、環 境 や時代 を越 えて利用 され うる電子 文書 の規格 を求 めて 、国際 的 に進 め られてい る規格 であ る。 ただ

し、現 時 点 で は オ リジナルの レイア ウ トを保 持 す る面 にお いて

PDF

フ ァイル には劣 ってい る

2‑3 管理情報 の記録 (管理 方法2

. 1 )

所 蔵 す るデ ジ タル情報 の移行期 は、記録 メデ ィアや デ ー タフ ァイル毎 に異 な って訪 れ る。

よって、移 行期 に適正 な移 行作 業 を行 うため に、記録 メデ ィア管 理 票 (表2)6とデー タフ ァイル管 理 票(表

3 )

を作 成 す る と と もに、記録 メデ ィア 目録 デ ー タベ ース (表

4

) に記録 メデ ィア に関す る情 報 を記録 す る。 また、デ ジ タル情報 の移 行期 は、現 在 の担 当者 の時 に訪 れ る とは限 らない。 これ ら管 理 票 は、 どの ようなデ ジ タル情 報 を所 有 していて、 どの ような処 置 をいつ 頃行 えば よいのか、次 の担 当者 が判 断す るため に も必要 となる。

また、効率 的 な管理 を継続 してい くには、 デ ジ タル情報 を生成 ・受 入時 に、様 々 な記録 メデ ィアや デー タフ ァイル形 式 な どを混在 させ ない事 が重 要 で あ る。

l JP DF

ファイルについて

文字データを扱 うファイル形式には問題が多い。コンピュータでの文字の取 り扱いは、それぞれの文字にコー ド を割 り当てて管理する。和文文字のコー ド体系には

J I S、S h i f t ‑ J I S、EUC

が存在 し、それぞれの文字コー ド割 り当 てがこのコー ド体系 によって異なる。よって、作成 した環境 とそれを表示する環境が違うと全 く違 う文字が表示 さ れることになる

6 記録メディア管理票は、同一メディアでも製品毎に記述 しなければならない。それは、デジタル情報の記録メディ アは、安定期に達 してないため、どんどん新製品が出現する。そこである日

、「 ○

○系の有機色素を用いているCD‑

Rは、書 き込み後10年で劣化することが判明」などと発表されることもあるかもしれない。その際に、所蔵 している CD‑Rの中から効率的に該当する製品を抽出できるためである。

(7)

2 ‑ 4

デジタル情報の保全 (管理方法

2 . 2

及び

2 . 3 )

デジタル情報の保全業務 として、記録 メデ ィアの劣化 ・損壊時のメデ ィア交換、移行期のメデ ィア 変換、及び移行期のデータファイル形式変換がある。

これ らの保全業務にかかる経費、すなわちデジタル情報の維持経費は、高価 なものだと思われがち である。物品的な面でいえば

、CD‑ R

1

1 0 0

円以下の価格である。記録 メディアの交換 ・変換 にか かる処理は、コンピュータが行 う為、人的労力はほとんどい らない。同様 に、データファイル形式の 変換においても同 じ事がいえるが7、データファイル形式の変換 には、情報の劣化が起 こる。 よって、

繰 り返すが、移行周期の最 も長いデータファイル形式 を選定することが重要である。

おわりに 〜電子 自治体制度の中での公文書館の役割〜

電子 自治体制度の中では、電子文書が作成か ら保存 まで統合管理 されるとともに、情報公開制度 に 対応 し、ネッ トワークを介 した検索 ・公開サービスが確立 される。そこでは、公文書館の主業務 とし て存在 した

引渡」、 「評価選別」、 「目録作成」 とい う業務が効率化 され、軽減あるいは必要が無

くなる。 しか し、 「保存」 とい う業務が効率化 されたわけではない。その ような制度の中で公文書館 はこれまで以上に情報の継続的保存 にかかる比重は大 きくなるであろう。

従来の紙文書は、保存スペースの制約か ら、文書の 「保存期間」 を設けて 「廃棄の決定」 を行い、

「公文書館‑の引渡」が必要であった。紙文書が電子文書 に変わることにより、保存スペースの制約 から解放 され、 「物」 としての移動の必要性はな くな り、 「現用文書」 と 「非硯用文書」の境界 も薄 れてい く。ネットワーク上で共有 された電子文書の管理では、保管場所 ‑管理部署 という関係は変化 し、各共有段階 (「課共有文書 :各課管理」‑ 「組織共有文書 :文書課管理」‑ 「県民共有文書 :公 文書館管理」)により管理体系が整備 されてい くであろう。その中で公文書館 は、最終の共有段階の 管理 を担 う。それは、継続的保存 とい う重要な、そ して困難な役割である。

また、電子文書 を扱 う公文書館 に求め られる役割の1つに、情報の 「信頼性の確保」がある。電子 文書は、それだけで 「物」 として存在 しないため、 「オリジナル」 と 「複製」の区別が物理的にはで きない.電子文書は、完全な同一体が簡単 に作 れるため、 「複製」 とい うよりも同一体の 「増殖」で あ り、紙文書特有のオリジナル性であった 「この世 に1点 しかない‑・」 とい う物 としての希少価値 は 意味を持たない。電子文書 に要求 されるのは、その情報の信頼性である。情報は広 く普及 されてこそ 活 きるが

、 1

、2

、3

次資料 と複製が増殖すると、その情報の信頼性 に不安がでて くる。特 にイ ンターネッ トの世界ではそ うである。その ような状況 において電子文書の信頼性 は、電子的(技術的) 保護だけでな く、情報 を提供する側の情報管理体制が大 きく影響する0

(おお しろ ・ひろみつ)

7静止画像 デー タファイル形式 は、多種 に存在す るが、その ファイル形式の変換 を一括 で処理で きるソフ トウェア が多 く存在する。

(8)

表 1 デ ジタル情報の管理方法

デ ジタル情報の管理方法

デジタル情報 を継続的かつ合理的 に保存 してい くため に必要 な事項 を記す。

1 デ ジタル情報の保存

デジタル情報 は、次の記録 メデ ィアやデー タファイル形式で保存す る。

1.1 保存用記録 メデ ィア

( 1 )

保存用 のデジタル情報 を記録 メデ ィアに保存す る場合 は、

「 CD‑ R

」 を使用す る。

( 2 )CD‑ R

へ記録す るファイル形式 を

「 I SO9 9 6 0

」 とす る。

1 . 2

保存用 デー タファイル形式 (1)静止画像 ファイル

文書 、図書 、地図、写真 な どのアナ ログ情報 をデジタル化す る際のデー タファイル形式は、

「 TI FF

ファイル」 または

「 JPEG

ファイル」 とす る。

( 2 )

電子文書 フ ァイル

電子文書 の ファイル形式 を

「 PDF

ファイル」 とす る。

( 3 )

その他 のデー タファイル

音声 、動画、デー タベース な どについては、別途定め る。

1 . 3

閲覧用 デジタル情報

別 にオ リジナル情報 を保有 し、その利便性 の向上 を図 った複製物 としてのデジ タル情報 は、1.1 項及 び

1 . 2

項 で定 めた もの とは別 に、利用形態 に即 した記録 メデ ィア及 びデー タファイル形式 を使 用で きる もの とす る。

2 デ ジタル情報の管理

保存 したデ ジタル情報 を次の要領で管理す る。

2. 1

管理情報の記録

(1)保存 した記録 メデ ィアの製品別 に 「記録 メデ ィア管理票」 を作成す る0 ただ し、既 に作 成済みの同製品 を使用す る場合 は作成 は必要 ない。

(2)保存 したデー タファイルの形式別 に 「デー タファイル形式管理票」 を作成す るO ただ し、既 に作成済みのデー タファイル形式 を使用す る場合 は作成 は必要 ない。

(3)所蔵資料 目録 デー タベ ース に、保存 した記録 メデ ィアのメデ ィア種別、 メデ ィア特性 、記録 日付等 を入力す る

2 . 2

デジタル情報 の保全

2. 2. 1

記録 メデ ィアの損壊 防止

(1)デ ジタル情報 は、利用時の損壊防止のため、保存用 と閲覧用 の二つの記録 メデ ィアに保存す る

(2)閲覧用記録 メデ ィアが利用 で きな くなった場合 には、保存用記録 メデ ィアか ら新 しい記録 メ デ ィアへ情報 を複写 し、常 に、保存用 と閲覧用 の二つの記録 メデ ィアを保持す る。

(9)

2 . 2 . 2

記録 メデ ィアの劣化防止

(1)6ケ月周期 で、記録 メデ ィアの製 品別及 び保存環境別 に部分抽 出 して再生 を試み、劣化 を検 査す る。 また、その際 に利用不能 な記録 メデ ィアを発覚 した場合 には、同一条件 の記録 メデ ィ

アの メデ ィア交換 を行 う。 また、 「記録 メデ ィア管理票」 の メデ ィア交換周期 を見直す。

( 2 )1

年周期 で、所蔵資料 目録 デー タベ ースか ら、記録 メデ ィア管理表 の記録 メデ ィア とメデ ィ ア交換周期 をもとにメデ ィア交換周期 に達 した記録 メデ ィアを抽 出 し、対象 となる記録 メデ ィ アに対 し、 メデ ィア交換 を行 う。

2 . 2 . 3

デジタル情報の利用環境 の変化

所蔵す るデ ジタル情報 の利用環境 を維持 す る事 が困難 な場合 、所蔵す るデ ジ タル情報 の記録 メデ ィアやデー タファイル形式 の変換 をお こな う。 また、 その際 に使用す る新 しい記録 メデ ィ アやデータファイル形式 は、継続的保存 に適 した もの を選定す る

3

デジタル情報の利用提供

デジタル情報 は、館 内 コンピュー タや イ ンターネ ッ トを利用 して利用者へ提供す る。

3

.1 デジタル情報の閲覧

(1)館 内 において利用者が、デ ジタル情報 の閲覧 を希望 した場合 には、 「沖縄 県公文書館管理規 則

(以下規則 とい う)第

8

条及び第

9

条の規程 に準 じ、閲覧用の記録 メディアを館内 コンピュー

タを用いて閲覧提供す る。

(2)ただ し、専用の利用環境が構 築 されている場合 は、別 に定め る要領 に準 じる

3 . 2

デジタル情報の複写

(1)利用者が 、デ ジタル情報 の紙‑ の複写(出力)を希望 した場合 には、 「沖縄 県公文書館管理規 則」(以下規則 とい う)第10条の規程 に基づ き定めた.簡 易複写日の扱 いに準 じる。

( 2 )

利用者が、デジ タル情報 のデ ジタル記録 メデ ィアへ の複写(複製作成)を希望 した場合 には、

規則 第

1 0

条の規程 に基づ き定めた1.複写許可 申請‑●の扱 いに準 じる。

3. 3

デジタル情報 の出版掲載等

利用者が 、複写 によ り入手 したデ ジタル情報 を、 出版物等へ掲載 を希望す る場合 には、規則 第

1

1条の規程 に準 じる。

3

.4 デジタル情報の貸 出

利用者がデジタル情報 の貸 出 を希望す る場合 には、規則第

1 2

条の規程 に準 じる。

(10)

表 2 デ ー タ フ ァイル管理 票

デ ー タフ ァイル管理票

版 作 成 日 作 成者 責任者

No

H1 5 / 0 2 /1 0 0 0 1

チー デー タフ ァイル形式

TⅠ FF

フ ァイル

デー タタイプ □文字 ■静止画像 □音声 □動画

□ その他[ ]

デー タ特性 ・ハ ー ドウエアや ソフ トウエアに依存 しない

・幅広 い種 類 の アプ リケー シ ョンがサ ポー トしてい るo

・静止画像 を最 も精細 に記録で きる○

・非圧縮 デー タ

・情報量 が多い ため、 フ ァイル容量 が大 きい

デ ー タ圧縮 『未使用

□使 圧 縮 方式[ ]

ッ ト

必ず記述す ること○)オペ レーテ ィング システム(バー ジ ョン等 に制約 が あ る場 合 は

・ WⅠ NDOWS

,

・ MAC‑ OS

アプ リケー シ ョンソフ ト (バ ー ジ ョン等 に制約 があ る場 合 は

必ず記述す ることo)

・ Ad o b e Ph o t o S h o p( WⅠ N, MAC)

・他 、幅広 い ソフ トが対応

(11)

3

記 録 メデ ィア 管 理 票

記録 メデ ィア管理票

作 成 日 作 成者 責任 者 No

H1 5 / 0 2 /1 0

001

7‑ メデ ィア種 別 CD‑R

製 品名 MⅠTSUⅠGOLD

規格

記憶 容量 Or650angeBookParMB tⅢ Ver3.0

構 造 フ タロシアニ ン系 の有機 色材 を使 用

形 式

交換 周期 (想定寿 命) 15 劣化検 査(部 分抽 出) 6ケ月周期

メデ ィア特性 フ ァイル システ ム

・CD‑Rは有 機 色 素 に記 録 させ る ため 、磁 気 や電 気 に よる影響 を受 け る こ とが ないo

・有機 色素 に一 度記 録 され た情 報 は、変 え る事 が で きないo

・フ タロ シアニ ン系 の有機 色 素 は外 的要 因 に強 く、通常 の湿 度 や光 度 で は ほ とん ど変化 しないo

ⅠSO9660

フ ァイル シス テム特性 記録 速 度

・国際標 準化機 構(ⅠSO)に よる国際標 準 規 格

・OSに依 存 しない(Windows,Macで動作 可 )

・フ ァイル名半 角8文 字 、拡 張子3文 字 の制 限有 り

4

倍 速

デ イア ドラ イブ ・CD‑Rドラ イブ

・CD‑ROMドラ イブ

CD‑Rの物 理 的寿 命 は、20‑100年 とい われ てい るが 、 そ の実績 が ない ため、交換 周 期 を15年 と

(12)

表4 記録 メデ ィア 目録 デ ー タベ ー ス

当 メデ ィア メデ ィア 記録 日 用途 利用 データ形式 メデ ィア データ レ、

ード

種 別 種 別 制 限 記録票No 記録票NQ

0 0 0 0 0 1 2 5 3 2

CD‑R

1 9 9 5 /1 0 /1 0

保存 な し TⅠFF

0 0 1 0 0 1

0 0 0 0 0 1 2 5 3 3

CD‑R

1 9 9 6 / 0 5 / 0 8

利用 な し PDF

0 0 1 0 0 3

館 の所 蔵資料 目録 の デー タベ ース は、複 製物 や重複 物 の管理 を適正 に行 うため に、 タイ ト 年代 等 の コ ンテ ンツ情 報 と、上記 の メデ ィア情 報 の

2

つ の デ ー タベ ースで構 成 され る80 メデ ィア情 報 には この他 に、所 在 情 報 (書 庫 、書 架 、収 納 等 )や受 入情 報 (受 入 先 名 、受入先 との取 決事 項 な ど)

参考文献

若林 宏 F最新 フ ァイル形式 と文字 コー ドの基 本 と仕組 み』(秩 )秀和 シス テム

デ ジ タル著作権 を考 え る会 rデ ジ タル著作権jソフ トバ ンクパ ブ リッシ ング(樵 ) 柿 井弘 『デ ジカメ写真 「あ とで困 らない」 整理 と保存術 」(秩 )技術 評論社

オ レンジ フ ォー ラムホ ームペ ー ジ

ht t p: //www. c d s 2 1 s o l ut i o ns . o r g/ ma i n/ o s j /

総務省 ホームペ ー ジ

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バ沖縄県公文書館の所蔵資料 目録データベースの構造や制御について、 『沖縄県公文書館研究紀要第2

「公文書 日録情報のデータベースモデル 〜階層構造を持つ目録情報のリレーショナルデータベースでの実相

」に詳細を 記述 している。

図 2 記享 景メデ ィア とデータファイルの普及性 ‑ 移行周期 ‑ ‑移行期‑ ‑ ‑移行期‑ 移行期 には、新 しい記録 メデ ィアやデー タフ ァイル形式が旧来の もの に変 って普及す る。移 行期 を過 ぎると、旧来の記録 メデ ィアやデー タ形式 を利用す ることが困難 な状況 に陥 る。 1 ‑ 3 記録 メデ ィアの耐久性 記録 メデ ィアは物理的な ものである限 り劣化が免れない。現在 のデ ジタル情報 の記録 メデ ィアは、 紙やマイクロフィルム等 のアナログ情報の記録 メデ ィア と
図 3 記銀 メデ ィアの交換 周期 i 紙 一 一 一( 修復)‑ 1 0 0 年〜 l マイクロフィルム マイクロフィルム 】 マイクロフィルム 5 0 年 ‑1 0 0 年 5 0 年 〜1 0 0 年 ? 5 0 年 〜1 0 0 年 C D ‑ R 等 】 次 世 代 メ デ ィア l 次々世代 メデ ィア 2 0年 〜 5 0 年 5 0 年 〜 1 0 0 年 ? l o o牛 ‑? デ ジ タル情 報 の記 録 メ デ ィア にお い て、現 時 点 で最 も保 存 性 が優 れ て い る
表 1 デ ジタル情報の管理方法 デ ジタル情報の管理方法 デジタル情報 を継続的かつ合理的 に保存 してい くため に必要 な事項 を記す。 1 デ ジタル情報の保存 デジタル情報 は、次の記録 メデ ィアやデー タファイル形式で保存す る。 1
表 2 デ ー タ フ ァイル管理 票 デ ー タフ ァイル管理票 版 作 成 日 作 成者 責任者 No 初 H1 5 / 0 2 /1 0 0 0 1 チ ー デー タフ ァイル形式 TⅠ FF フ ァイルデー タタイプ □文字 ■静止画像 □音声 □動画□ その他[ ] デー タ特性 ・ハ ー ドウエアや ソフ トウエアに依存 しない ・幅広 い種 類 の アプ リケー シ ョンがサ ポー トしてい る o 夕 ・静止画像 を最 も精細 に記録で きる○ ・非圧縮 デー タ ・情報量 が多い ため、
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参照

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