STD(sexually transmitted disease )
としてのアメーバ性肝膿瘍
修練医 佐藤誠祐
概要
• STD について
• 肝膿瘍について
• ケースレポート 2 例
• まとめ
性行為感染症①
( STD : sexually transmitted disease )
• 性行為で感染する感染症全般を指し、原因となる病原 体は多岐にわたる。
(細菌・ウイルス・寄生虫など)
• 性行為には SEX 以外にも種々の行為が含まれる
• 厳密には従来の性病とは定義が違う
(性病とは梅毒・淋病・軟性下疳・鼠径リンパ肉
芽腫症を示す)
性行為感染症②
• 代表例
性器クラミジア・性器ヘルペス・梅毒 尖圭コンジローマ・淋病
これらの疾患は厚生省にて毎年発生動向が調査されている その他にも
HBV
・HCV
・HIV
・赤痢アメーバなどが存在する性行為感染症③
• 最近、性風俗の乱れから STD が増えているといったこ
とがよく言われているが本当にそうなのか?
→平成 13 年をピークとして年々低下傾向
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000
平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年
男性>女性
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
淋菌
0 100 200 300 400 500 600700 800 900 1000
梅毒
3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000
尖圭コンジローマ
女性>男性
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 50,000
性器クラミジア
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000
性器ヘルペス
0 100 200 300 400 500 600 700
平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年
ウイルス性肝炎
D型 C型 B型
•
全体としてはそうかもしれないが、若い世代に限って言えば増え てきているのではないか?100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
梅毒
60歳以上 55~59 50~54 45~49 40~44 35~39 30~34 25~29 20~24 15~19 10~14 5~9歳 0~4歳
0 5000 10000 15000 20000 25000
平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 総数
淋菌
60歳以上 55~59 50~54 45~49 40~44 35~39 30~34 25~29 20~24 15~19 10~14 5~9 0~4歳
1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000
尖圭コンジローマ
60歳以上 55~59 50~54 45~49 40~44 35~39 30~34 25~29 20~24 15~19 10~14 5~9 0~4歳
0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000 50000
平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 総数
性器クラミジア
60歳以上 55~59 50~54 45~49 40~44 35~39 30~34 25~29 20~24 15~19 10~14 5~9 0~4歳
2000 4000 6000 8000 10000 12000
性器ヘルペスウイルス
60歳以上 55~59 50~54 45~49 40~44 35~39 30~34 25~29 20~24 15~19 10~14 5~9 0~4歳
0 200 400 600 800 1000 1200
HIV感染者
200 400 600 800 1000 1200
HIV HIV10代 HIV20代
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年
アメーバ赤痢
• HIV 、アメーバ赤痢は他の STD と異なり
右肩上がりに増加傾向を示す
肝膿瘍 (Liver abscess)
• 肝臓外から細菌や原虫などが肝内に進入、増殖し た結果、肝臓に膿瘍が形成された病態。
• 原因:細菌、アメーバ、真菌、癌
感染経路
• 胆道性
例:細菌性肝膿瘍
• 門脈性
例:アメーバ性肝膿瘍、癌に伴う肝膿瘍
• 肝動脈性
例:敗血症に伴う肝膿瘍
•
その他(外傷性、医原性、隣接臓器からの直接浸潤)細菌性肝膿瘍①
• 総胆管結石や膵胆道系悪性腫瘍による胆管閉塞に伴い、
胆管内で胆汁うっ滞が起こり、そこに腸内細菌が感染、
胆管炎を引き起こし、上行性に肝内におよんで膿 瘍を形 成する。
• この場合、多発膿瘍を形成することが特徴。稀に虫垂 炎、クローン病、潰瘍性大腸炎などの腸管感染症に際
し、細菌が 門脈を経由して肝内に到達し膿瘍を形成する
場合もある。
細菌性肝膿瘍②
• 起因菌
E.coli(GNR) Klebsiella spp.(GNR)
Streptococcus anginosus group (GPC) Enterococcus spp.(GPC)
Bacteroides spp.(anearobic bacterium)
アメーバ性肝膿瘍
• 赤痢アメーバ (Entamoeba histolytica) の感染によるも ので、経口摂取された嚢子が小腸で脱シストして大腸 の腸粘膜に原虫が侵入、潰瘍性病変を形成することに より感染が成立。
• 大腸の潰瘍性病変から腸間膜静脈を介して門脈性に肝
臓へと至り膿瘍が形成される。多くは単発膿瘍であ
る。
真菌性肝膿瘍
• 発熱性好中球減少症 (FN:febrile neutropenia) の患者が 広域抗菌薬を投与された後、白血球数が回復してくる までの間に膿瘍が生じることがある。
• この場合原因の多くは Candida であり、病変は多発性膿
瘍である。
赤痢アメーバ①
•
寄生性の原虫であり、病原種(Entamoeba. histolytica
)と 非病原種(E. dispar
)の2
種類が存在する。赤痢アメーバ②
•
中南米・アフリカ・南アジアが主な流行地であり、世界的には年 間5000
万人の人間が罹患し、その内の4~10
万人程度が死亡する。
•
感染症のうち症状を示すのは5
~10%
とされる。症状は大腸粘膜 の潰瘍病変によっておこる粘血便、下痢、しぶり腹(テネスムス)、鼓腸、排便時の下腹痛が 主体である(腸管アメーバ)。典 型例ではイチゴゼリー状の粘血便となり、数日~数週間の間隔で 憎悪と寛快を繰り返す。増悪例では腸穿孔を起こす事があ る。ま
腸管外アメーバ
•
腸管外アメーバは腸管部から赤痢アメーバが血行性に転移する ことにより起こる。肝臓、肺、脳、皮膚などに膿瘍を形成す る。肝がもっとも頻度が高く、発熱、上腹部痛、食欲不振、悪 心、嘔吐などの症状が見られる。(アメーバ性肝膿瘍の
50
%では発熱しかみられない)•
膿瘍形成の詳細腸病変の一部からアメーバが血行性に肝に到達し、門脈の分 枝で塞栓を起こし、その分布域に梗塞巣を形成する。これら は血管壁を破り、小型の播種性肝壊死巣 が生じる。そして合 体により幾つかの容積の大きい膿瘍が出来上がる。
感染経路
•
感染嚢子(シスト)に汚された飲食物等を経口摂取すること により感染する。シストは小腸で脱嚢して栄養型となる。栄 養型は運動性があり,大腸の組織などを食べて増殖し,大腸 粘膜に集落を形成し,潰瘍性病変が生じる。栄養型は大腸内 で被嚢しシストとなって糞便中に排出され感染源となる。•
肛門と口唇の接触でも感染が成立するため、男性同性愛者に 流行が見られており、STD
(性感染症)の側面を有する。•
男女計約3000
人の報告では経口感染が約15
%、性的接触が約性的接触における感染経路
•
膣性交では感染することはない•
口で肛門を愛撫することにより、相手が感染者であれば、ほぼ100
%感染する•
肛門性交をして、その後ペニスを洗わずフェラチオをすることに より、相手が感染者で有れば、ほぼ100
%感染する•
近年は性的接触の多様化に伴い女性にも感染が増えている予防
•
シストに汚染された食物や水の摂取をさけることが 確実。•
有効なワクチンはない•
消毒は塩素の場合,細菌を殺すには十分な濃度でも 赤痢アメーバの嚢子は殺せない。しかし,水を煮沸 するかテトラサイクリンハイドロペリオキオジド錠 剤で処理すれば(1L
当たり1
~2
錠)、嚢子は死ぬ。アメーバ性肝膿瘍感染における年齢・性差
•
アメーバ性肝膿瘍の発症には、年齢・性差が影響していることが 知られている。小児での発症例は少なく、95
%以上は成人が占め ている。成人においても、特 に18
~50
歳の男性の罹患率が高い。
•
無症候性感染例には性差は認めないが、肝膿瘍症例の男女比は 2:1~10
:1と男性に多い 。•
アメーバ性肝膿瘍に性差が認められる原因は明らかではないが、アルコール摂取量、免疫応答の差異、ホルモンの影響などが考え られている。
症例①: 53 歳男性
• B
月上旬より感冒症状が出現。38
から39 ℃の発熱が
続き、近医にて原因不明の感染症の診断にて、LVFX
を処方され内服。•
一時改善認めるも、内服終了後再燃。全身倦怠感出 現し発熱を再度認めたため、近医にて抗菌薬をSTFX
に変更。内服中は症状改善みられたが、終了後再び 症状増悪した。食事、飲水できず2
週間で10kg
体重 が落ちたため心配になりK
大学病院1・2次救急外 来を受診。バイタル:体温
38.3 ℃
血圧117
/68mmHg
心拍数107/min
SpO2 96%
(RA
)身体所見:
Lung
:no rale
Heart
:no sig murmur
Abd
:soft
&flat BS moderate
no pain no tenderness
既往歴:喘息(最終発作
1
、2
年前)下肢静脈瘤手術後(
10
年前)生活歴:若い頃より風俗通いを習慣としており、 26 歳時に 現在の妻と結婚してもなお、月に 2 回程度の風俗通いを続 けていた。昔からレミング(肛門を舐める行為)を行っ ていた。以前より、原因不明の発熱を繰り返しており、
いずれもかかりつけ医で抗菌薬内服にて症状が改善して
いた。 A 月上旬(来院の5週間前)に行った風俗店で風
俗嬢にレミングを施行後、初めてコンドームを付けずに
肛門性交を行った。 A 月下旬(3週間前)にも同じ風俗
嬢に対して同様の行為を行っている。
血液検査
Hb 10.6 g/dl plt 342000
WBC 20900
(Band 2.0 Seg 84.0 Eo 0.0 Baso 0.5 Mono 4.0 Lympho 9.5
)Na 132 mmol/L K 4.9 mmol/L Cl 98 mmol/L Ca 8.6 mmol/L BUN14.0 mg/dl Cr 0.61 mg/dl TP 6.6mg/dl Alb 2.6mg/dl
T-Bil 1.9 ALP 2127 γ-GTP 563 U/I CHE 198 AST 67 U/I ALT 104 U/I CRP 20.4 PCT 1.01 ng/dl
Flu A
(-
)B
(-
)HIV
(-
)HB
s(-
)HCV
(-
)肝膿瘍(赤痢アメーバ
r/o
)の診断で消化器内科に緊急入院。入院後、経皮的肝膿瘍ドレナージを施行。穿刺により黄白色で 異臭の強い膿汁
120
ml
の排液を認め培養提出。→アメーバの栄養体は確認されず。
その後も数回ドレーンからの排液を検査にまわしたが栄養体は みつからなかった。
赤痢アメーバ抗体:
1600
倍→抗体は既知の感染を示すが現在進行形で感染しているかはわ
からない。症例②: 54 歳男性
• C
月23
日頃から38 ℃台の発熱認めていたため、 C
月25
日かか りつけ医受診。インフルエンザチェック行うも陰性であり、ロキソニン処方され経過を見ていたが改善乏しかった。
•
発熱持続していたためC
月28
日再度かかりつけ医受診し血液 検査行ったところWBC22000
、CRP21
と炎症反応の上昇認 め、精査目的に翌D
月1
日K
大学病院外来を受診する方針と なった。3
月1
日の朝3
時頃体温が40 ℃まで上昇認め、不安に
思いK
大学病院1
・2
次救急外来受診。バイタル:体温
38.8 ℃ 血圧 145/83mmHg
心拍数117/min
身体所見:
Lung: no rale
heart: no significant murmur
abd: soft&flat tenderness in epigastralgia
ext: no edema heel drop test(+)
既往歴:胃潰瘍
生活歴:宅配業者配達員、未婚、同性の友人
4
人と同居、
タイに友人がいて頻繁に渡海していた
Hb 11.8g/dl Ht 34.9% RBC 371x10 4 / Plt 38.3 x10 4 / WBC 22900/
Na 136mmol/l K 3.5mmol/l Cl 104mmol/l
BUN 8.0mg/dl Cr 0.75mg/dl eGFR 86ml/min TP 6.3g/dl T-Bil 0.6mg/dl
γ-GTP 80IU/l AST 41IU/l ALT 53IU/l LDH 226IU/l CK 35IU/l
CRP 34.5mg/dl PCT 1.0ng/dl
腹部 CT
•
画像所見より肝膿瘍の診断(単発、円形よりアメーバ疑い)となり消化器内科緊急入院。