卒業論文/制作説明書
日本の主観的幸福感と対人関係についての研究
A Study on the relation of well-being and personal relations
1W080548-4 吉田 圭都 指導教員 長 幾朗 教授
YOSHIDA Keito Prof. CHOH Ikuro
概要: これまで幸福度として国民総生産量(GDP)や、エンゲル係数が利用されてきた。しかし近年は、経済発展 率が高いことが幸せであるということと同義ではなくなってきた。日本のGDPは高いが、自殺率も他国に比べて 高い。男性の20代から40代前半、女性の10代後半から30代前半の死因のトップは自殺である。この現状で幸 福度が高いとは言い難い。本研究では、日本の幸福度を高めるために必要なことは何かを考えることを目的とし て行った。各国の幸福度についての指数やその他のデータを調べた結果、親密な人間関係と幸福感との間に深い 関係があるということが考えられた。そこで、今回は幸福度に影響与える項目の中から、対人関係という 1つの 項目に注目し、幸福度との関係についてアンケート調査を行い、相関関係の表をもとに分析した。
キーワード:主観的幸福感、対人関係、間人度
Keywords: well-being, personal relations, the contextual
1.幸福度と関係のある項目とは
ブータンで作られた国民総幸福量(GNH)、人間 開発指数(HDI)、日本の「幸福度に関する研究会」
などの指標から幸福度に影響する項目は、文化、
教育、健康、人間関係、政治、自由の権利などが 考えられる。特に幸福度に関する研究会では、幸 福感を直接問う質問に対する回答を「主観的幸福 感」としているので、今回はこの「主観的幸福感」
について考えたい。
そしてその他にも面積、人口密度平均寿命、電 気利用量と主観的幸福感との相関関係を調べた が、関係性は見られなかった。一方で、家族や友 人との関係にたいする質問と主観的幸福感との 間に相関関係が見られた。そこで本研究では日本 の幸福度を高めるため、主観的幸福感と対人関係 との関係を、分析を行うのが妥当だと考えた。
図 1:幸福度指標試案体系(内閣府)
2.各国の取り組みについて
ここは、1章で調べた幸福度ランキングの高順 位の3カ国━ブータン、デンマーク、フィンラン ドについて取り上げている。結果以下の共通点が あることが分かった。
①政府に対する信頼度が高い。国政で教育費の無 料化、医療費が安いまたは無料など、国民の生活 を手厚く支援している。
②文化的背景を感じる生活スタイル:チベット仏 教を重んじるブータンでは、家族・親戚・周囲の 人を大切にする。デンマークは家族との居る時間 が長い。また、自由を大切にするデンマークでは 核家族化が進んだ際も柔軟に高齢者対策を行い、
高齢者ケア付住宅での生活を老人も楽しめるよ うになっている。フィンランドもまた、過去にス ウェーデンやロシアに占領され翻弄されていた 背景から、自由を大切にしている国だ。そのため 核家族が当然で親子別々に暮らしている世帯が 多い。
これらのことから、ブータンのように身近にい る人との関わりを集団として大切にする国、個人 の活動を重視しながら周りとも関わる個人主義 の国のどちらも幸福度が高いため、文化に適応し た対人関係を築くことが、幸福度に繋がるのだろ うと考える。
2 3.日本について
宗教・哲学的背景として、東洋では儒教・仏教 の人との関わりの中で喜びを感じる考えが生ま れた。日本では儒学という学問として広く知れ渡 った。そのなかで良き行いとされる徳目には、人 を思いやるということの「仁」、親に従うという ことの「孝」、年長者に従うということの「悌」、
仁を具体的な行動として表した「礼」などどれも 人との繋がりを大切にしたものである。
また、日本は過去に村・町を存続させるために 集団で意見を纏める必要性があったことから、今 も他者との関係性を自己概念の一部として取り 組む傾向がある。集団の言いなりになる「間人主 義」とは違い「間人主義」といわれている。
そして今日の日本の幸福感に対しては内閣府 が国民生活選好度調査を行っている。そこでは
「幸福度を高めるために有効な手立てに関して」
は、「家族との助け合い」「自分自身の努力」「友 人や仲間との助け合い」の順で有効だと考えられ ている。これらは身近な人との関わりが幸福度を 高めることと関係があるとみることができる。
以上のことから、文化にそくした間人主義的な 人間関係を構築することが幸福感と関係してく ると考えた。
図2:幸福度を高めるために有効な手立て
(内閣府) 4.アンケート調査
①調査対象者:早稲田大学の日本人学生69人(男性:
31人、女性:38人)を対象とした。
②調査時期および手続き:2012 年1 月26日~
29 日に調査用紙への記入、またはインターネッ
ト上で10~15分程度のアンケートを行った。
③調査方法と内容:主観的幸福感と対人関係構築 能力、日本的対人関係(間人主義、思いやり)につ いて、それぞれ質問を行った。
表 1 はアンケートから得られた結果を相関図 にしたものである。この表から、全体的な主観的 幸福感は、対人関係構築能力との相関係数が0.39 となり、ややみられた。これはまた、反対に間人 主義思考と思いやり思考とは相関関係が殆ど見 られなかった。対人関係構築能力は、思いやり思 考(相関係数 0.44)と間人主義傾向(0.38)に相関関 係が見られた。
5.おわりに
これらのことから全体的な主観的幸福感は、対 人関係構築能力と関係があり、その対人関係能力 は思いやり思考や間人主義傾向と関係があるこ とがわかった。間人主義傾向や思いやり思考も直 接全体的な主観的幸福感と相関があると予想し ていたが、予想とは異なる結果となった。
表1:主観的幸福感と対人関係との相関関係
図3:主観的幸福感と対人構築能力、
日本的対人関係の構成図