分担研究報告書番号20
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厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)
プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班 分担研究報告書
国立感染症研究所感染病理部における PML の病理組織検体の解析
研究分担者:鈴木忠樹 国立感染症研究所感染病理部 研究協力者:高橋健太 国立感染症研究所感染病理部 研究協力者:佐藤由子 国立感染症研究所感染病理部 研究協力者:片野晴隆 国立感染症研究所感染病理部 研究協力者:中道一生 国立感染症研究所ウイルス第一部 研究分担者:西條政幸 国立感染症研究所ウイルス第一部 研究協力者:長谷川秀樹 国立感染症研究所感染病理部
研究要旨
進行性多巣性白質脳症 (PML) の確定診断 (definite PML) のためには、生検脳あるいは剖検脳か らの組織の病理学的検索が必要である。国立感染症研究所感染病理部では、全国の大学および医療 機関から依頼される PML の病理組織検体の検査を行っている。解析では HE 染色と免疫組織化学 による形態学的検索に加え、組織からのJCウイルス (JCV) ゲノムの遺伝子検索を併用して確度の 高い病理組織診断を行い、平成 3年から平成 28年 12月末までに 54 例のPMLの診断を確定した。
平成28年は16例の検索依頼があり、9例でPMLと確定診断された。平成28年の9例のPML確定 時の年齢は平均60.3歳で、基礎疾患として自己免疫性疾患3例、後天性免疫不全症候群と血液系悪 性腫瘍がそれぞれ 2 例に認められた。なお、脳の組織学的検索にて PML と診断確定された症例の 中には、脳組織採取前の脳脊髄液からの検索において、JCVゲノムが検出限界以下であったものも 含まれていた。
A.研究目的
進行性多巣性白質脳症 (PML) は脳のオリゴ デンドロサイトにJCウイルス (JCV) が溶解感 染し、その結果、脱髄が起きて発症する疾患で ある。PMLの確定診断 (definite PML) のために は、生検脳あるいは剖検脳からの組織の病理学 的検索が必要である。
国立感染症研究所感染病理部では、全国の大 学および医療機関から依頼される PML の病理 組織検体の解析をしており、HE 染色と免疫組 織化学による形態学的検索に加え、組織からの
JC ウイルス (JCV) ゲノムの遺伝子検索を併用
して確度の高い病理組織診断を行っている。本 研究では、国立感染症研究所感染病理部におい て PML 症例の病理学的解析を行うとともに、
現在までに診断を確定した PML 症例について レビューを行い、患者背景情報と病理組織診断 を照合することにより、日本における PML の 病 理 の 実 態 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し 、
「PMLの診断基準・重症度分類策定・改訂のた めの疫学臨床調査」として情報を共有する。
B.研究方法
材料は、臨床的に PML が疑われ国立感染症 感 染 病 理 部 に 解 析 依 頼 の あ っ た 生 検 脳 あ る い は 剖 検 脳 の ホ ル マ リ ン 固 定 パ ラ フ ィ ン 包 埋
(FFPE) 検体あるいは凍結検体で、平成3年から
平成28年12月末までの全85例。FFPE検体の 未染標本から HE 染色、特殊染色にて形態学的 解析を行い、免疫組織化学にてJCVタンパク質 の発現を確認した。また FFPE 切片あるいは脳 凍結検体より核酸を抽出して、JCVゲノムにつ いて組織からのリアルタイム PCR にてコピー 数の定量を行った。
(倫理面への配慮)
国 立 感 染 症 研 究 所 感 染 病 理 部 の 病 理 組 織 を 用 い た 病 原 体 検 査 は 感 染 研 レ フ ァ レ ン ス 業 務
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— 79 — と し て 国 立 感 染 症 研 究 所 ヒ ト を 対 象 と す る 医
学 研 究 倫 理 審 査 委 員 会 の 判 断 に 則 り 実 施 し て いる。検体受付に際しては、検体を国立感染症 研究所に検査のために送付すること、検査の余 剰 検 体 は 匿 名 検 体 と し て 他 の 研 究 で 使 用 す る ことがあることも含めて、依頼機関において、
国 立 感 染 症 研 究 所 感 染 病 理 部 の 書 類 も し く は 依 頼 機 関 に お け る 同 様 の 文 章 に よ る 説 明 と 同 意を得ている。
C.研究結果
全85症例中、54例でPMLの診断確定となっ た。なお平成 28 年は 16 例の検索依頼があり、
9例で PMLと確定診断された。平成 28 年の 9 例については、7例が生検検体、2例が剖検検体 からの解析で、PML確定時の年齢は平均60.3歳 であり、基礎疾患として自己免疫性疾患 3 例、
後 天 性 免 疫 不 全 症 候 群 と 血 液 系 悪 性 腫 瘍 が そ れぞれ2例に認められたが、多発性硬化症での natalizumabあるいはfingolimod使用症例は認 めなかった。また、脳の組織学的検索にて PML と診断確定された症例の中には、脳組織採取前 の脳脊髄液からのリアルタイム PCR 検索にお いて、JCVゲノムが検出限界以下であったもの も含まれていた。なお、平成28年度以降は依頼 者に PML 症例登録システムへの登録の有無を 確認しており、10例中 9例が PML症例登録シ ステムへの登録症例であった。
D.考察
国立感染症研究所感染病理部で病理学的に診 断確定された PML 症例のレビューは本邦にお ける PML の疫学的背景を反映するもので、臨 床 調 査 に お い て 重 要 な 情 報 に な る と 考 え ら れ た。また組織学的に診断確定された PML 症例 の中には、脳組織採取前の脳脊髄液検索におい て JCV ゲノムが検出感度以下であった症例も 認められたが、脳脊髄液の採取時期や病変部位 との関係、脳脊髄液検査で陰性とされたため脳 生 検 に 至 っ た 症 例 が 多 く 含 ま れ る こ と 等 の 要 素が関与する可能性が考えられた。
E.結論
国立感染症研究所感染病理部では形態学的検 索と遺伝子検索を併用し、PML確定診断のため
の 脳 組 織 検 体 か ら の 病 理 学 的 解 析 を 継 続 し て おり、現在までに 54 例の診断確定となってい る。今後も確度の高い病理学的解析を継続し、
「PMLの診断基準・重症度分類策定・改訂のた めの疫学臨床調査」として情報を共有していく ことが重要である。
[参考文献]
1) 高 橋 健 太, 鈴 木 忠 樹, 中 島 典 子, 飛 梅 実, 佐藤由子, 片野晴隆, 長谷川秀樹. 脳炎・脳症 の病理. Neuroinfection 19:32-39, 2014.
F.健康危険情報 該当なし
G.研究発表 1.論文発表
1) Takahashi K, Sekizuka T, Fukumoto H, Nakamichi K, Suzuki T, Sato Y, Hasegawa H, Kuroda M, Katano H. Deep-sequence identification and role in virus replication of a JC virus quasispecies in patients with progressive multifocal leukoencephalopathy. J Virol 91:e01335-16, 2017.
2.学会発表
1) 石井淳子, 川本未知, 藤原 悟, 船津尭之,
今 井 幸 弘, 奴 久 妻 聡 一, 高 橋 健 太, 中 道 一 生, 幸原伸夫. 全身性エリテマトーデス加療中に頭 部 MRIで散在性点状T2高信号病変を呈し進行 が 見 ら れ て い な い 進 行 性 多 巣 性 白 質 脳 症 の 一 例. 第21回日本神経感染症学会総会・学術大会, 金沢, 10.21-22, 2016.
H.知的財産権の出願・登録状況(予定を含む。) 1.特許取得
なし
2.実用新案登録 なし
3.その他 なし