九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
水素の液化およびスラッシュ化に関する研究
大平, 勝秀
https://doi.org/10.11501/3175111
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第3章 磁気冷凍法による水素液化に関する研究
1.1 緒 白
磁気冷凍法は超伝導マグネットの発生する強磁場を作業物質である磁性 体に印加, 除去するサイクルを繰り返して寒冷を発生する方法であり、 カ ルノーサイクルに近いサイクルを容易に実現できるため、 ガスの圧縮, 膨 張の繰り返しによるガス圧縮式冷凍に比べ原理的に高い効率が可能である。
また、 気体に比べて極めてエントロビー密度の高い固体である磁性体を用 いることから小型化が可能になる。磁気冷凍に使用される磁性体(例えば、
ガドリニウム ・ ガリウム ・ ガーネット, Gd3GaS0I2, 略称G G G)はヘリウ ムの沸点 (4.2 K)付近で大きな磁気エントロピ一変化を表すため、 これま で実験室レベルで超流動ヘリウムの生成やヘリウムの液化(32)に成功してい る。 現在、 磁気冷凍の高効率に着目し、 ヘリウム沸点より高い温度での利 用、 例えば水素や天然ガスの液化に磁気冷凍サイクルを使用することが検 討されているが、 液化実験の報告はなく、 開発途上である。 磁気冷凍法を 水素液化に適用する場合、 次の3項目が主な開発項目と考えられる。
(1)液体水素温度より高温領域で大きな磁気エントロビー変化を表す磁性 体の開発
(2)超伝導工学の進展に伴い10テスラ(T)程度の磁場発生が容易となっ たが、 強磁場を発生する超伝導マグネット装置の製作費, 運転費の 低コスト化
(3)高効率な冷凍サイクルを実現する上で必要となるサイクルの特性把握 と磁性体 (固体)の排熱, 吸熱に係る伝熱機構の性能向上
本研究では磁気冷凍法による水素液化技術の実用化を目的として、(2)項,
(3)項につき基礎実験を実施した。(2)項の実施内容として、 強磁場(例えば 10テスラ前後)を発生する超伝導マグネットへ供給する電流を超伝導変圧 器を介することにより、 励磁電源装置の低電流化、 即ち小型化, 低コスト 化が可能となるため、 超伝導変圧器の試作を行ない、 超伝導マグネットと 組合せた励磁特性実験を実施した。 その結果、 超伝導変圧器の特性が明ら かとなり、 その実用性が確認された。 超伝導変圧器を使用することの他の
A斗戸、J
利点として、 常温から液体ヘリウム温度への供給電流が大幅に低減でき、
電流リードからの発熱, 侵入熱等を小さくできる。 その結果、 蒸発ヘリウ ムガスの量を少なくでき、 運転費の低コスト化も可能となる。
次に、 高温領域で大きな磁気エントロビー変化を表す磁性体の開発は進 められているが、 開発途上であるため、(3 )項においては従来ヘリウム温度 付近で使用されているGGGを磁性体に選定して、 磁気冷凍法による水素 液化実験を実施した。 磁性体の励磁速度変化によるサイクル特性および第 2章で得られた水素の凝縮熱伝達特性の結果を踏まえ、 水素を液化する熱 サイフォン型ヒートパイフを設計し、 その特性について評価した。 (33)(34)
戸、JベJ
1.2 超伝導変圧器の開発に関する研究
3.2.1 超伝導変圧器の特徴と開発状況
従来、 超伝導変圧器を利用した例として、 超伝導マグネットに使用す る線材の開発を目的に、 線材の単尺試料に大電流(例えば数10 KA)を 通電してその特性を研究する装置として報告されているが、 (35)(36) 超伝 導変圧器を介して超伝導マグネットを励磁した報告はない。 本研究では 超伝導変圧器と変圧器の二次側電流で励磁される超伝導マグネットを設 計, 試作し、 実際に超伝導マグネットを励磁してシステムの構成, 動作 性能, 電源駆動モードおよび永久電流モードでの運転確認を行ない、 実 用性について評価した。 (37)
3.2.2 超伝導変圧器と超伝導マグネットの設計 ・ 製作
図3 - 1は超伝導変圧器と超伝導マグネットシステムの等価回路であ り、 常温部電源, 超伝導変圧器, 超伝導マグネット(負荷コイル)より 構成される。 超伝導変圧器, 超伝導マグネット, 超伝導変圧器の二次側
と超伝導マグネットを接続する線はすべて超伝導線である。
超伝導マグネットに超伝導変圧器を接続したとき、 一次側回路, 二次 側回路に次の関係式が成立する。 ただし、 L]' L2はLcと相互に磁場の影 響を受けないものとする。
dI7 _ _ dI ')
V1 = L , 7 --J -M --L
dt dt
- (3・1)
dI 1 _ dI ') _ dI ') V) = Mーよーム一一ι=L_一一乙
ー dt "- dt l- dt
一 (3-2)
相互インダクタンスMは結合係数Kを考慮して
M=K(L,L2)1/2
として表わされる。 また巻線比nは
一(3-3)
n =(L ,IL2)1/2
として定義される。 従って、
一 (3-4)
M=KL,ln=nKL2 一 (3-5)
fo 戸、J
[Superconducting transformer]
Primary coil
L 2
1
L1 Secondary coil V2Lc Load
coil
Voltage Current Inductance
Mutual inductance Coupling coefficient
トシステムの等価回路
ツ
VILMK
超伝導変圧器と超伝導マグネ 図3 1
- 57-
となる。(3-2)式より電流増幅率mは
d11/ dl M KLI IlKL2
f71=dI2/df=Lc+L2 =f1(Lc+L2)=Lc+L2 一(3-6)
と表わされる。
表3 - 1に製作した超伝導変圧器と超伝導マグネットの諸元を示す。
本研究では超伝導変圧器の二次側コイルと超伝導マグネットのインダク タンス(L2' Lc) をほぼ同じ値にした。 超伝導変圧器の一次側巻線 には 外径0.52 mm のNbTi極細多芯線を採用し、 二次側巻線と超伝導マグネ ットにはNbTiの成形撚線(高さ1.6 mm, 幅2.8 mm), 7本ストランド を使用している。 超伝導変圧器は空心ソレノイドコイルを重ね合せた構 造にしており、 二次側巻線が一次側巻線の内側に入る設計になっている。
また、 一次側巻線は10層巻であり、 二次側巻線, 超伝導マグネットは 4層巻いた後に、 その上に別にもう一層巻くことにより、 実験に応じて 超伝導変圧器/超伝導マグネットの接続を4層/4層, 1層/1層の組 合せにできる(インダクタンスを変化できる)構造となっている。 超伝 導変圧器の断面図を図3 - 2に示す。 ボビン等には非磁性体の材料を採 用した。 超伝導変圧器と超伝導マグネットは軸を直角に配置することで、
磁気的に相互干渉しないようにした。 図3 - 3に外観図を示す。
3.2.3 実験装置
図3-4は実験装置の系統図を示す。 実験装置は超伝導トランス, 超 伝導マグネット, 励磁用電源装置(35 YX30 A), 超伝導変圧器の一次側 を保護するための保護低抗, 二次側をクエンチさせ、 永久電流モードに 移行するためのクエンチヒータ 超伝導マグネットの電流を測定するた めのホール素子, 超伝導変圧器への供給電流を測定するシャント抵抗,
液体窒素で冷却された輔射シール ド板, 真空断熱のための真空容器 等か ら構成される。 各部の温度は磁場による誤差が少ないカーボングラス抵 抗温度計にて測定した。 クエンチヒータは NbTi 線の上にマンガニン線 を密巻きしており、 マンガニン線に電流を供給することにより超伝導か ら常伝導に転移させる。 ホール素子は超伝導マグネットの中心部に設置
00 戸、J
v、
、。
Superconducting Wlre (NbTi) Inner diameter
(mm) Outer diameter
(mm) Height (mm) Inductance (mH)
Number of turns Mutual inductance
(mH) Coupling
coefficient
表3 - 1
Super- Super-
Super- cond ucting conducting
conducting
Secondary Load coil
Secondary Load coil Primary coil
c 0 il c 0 i 1
Ten田layer Four-layer One-layer
φ0.52 1.6H x 2.8W (Stranded 7 wires)
114.4 90.0 90.0 102.9 1 02.9
123.4 102.8 102.8 106.1 1 06. 1
97.0
298 1 .16 1 . 1 2 0.080 0.080
1794 137 135 33 33
14.3 3.93
0.769 0.805
超伝導変圧器と超伝導マグネット(負荷コイル)の設計仕様
図3 - 2 超伝導変圧器と超伝導マグネット (負荷コイル)の断面図
図3 - 3 超伝導変圧器 と 超伝導マ グ ネ ッ ト
Liquid He supply line
Gauss meter He gas
recovery line Safety valve
Power supply for quench heater
P
「一一一了ア一寸7-
I __j L
l「l「I I I i
l ト一一寸オ
I I レ
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」11
:
; Load coilし一一一一一一一一一一一一一一一一一一J
l
!
Vacuum/Liquid N2:
」一一一一一一一一一一一 一一一一一一一一 一一一一一一一一」
Cryostat
Liquid He level indicator
: Shunt l resistor Rs
I I
Protection resistor Rp
Power supply 35V x 30A
Vacuum
nドm Hu nμt
図3 4 実験装置
- 61-
され、 ホール素子の出力電圧から超伝導マグネットの電流を算出する。
超伝導変圧器と超伝導マグネットの接続等すべての接続は半田接続を行 っている。
3.2.4 実験結果と考察
超伝導変圧器の一次側巻線両端に励磁用電源装置から電流を流 すと、
その電流の 変化速度と自己インダクタンス, 二次側巻線との 相互インダ クタンスに応じた両端電圧が発生し、 二次側巻線, 超伝導マグネットに 電流が流れる。 一次側励磁電流を20 Aまで変化させた時の超伝導マグ ネットの励磁電流を図3 - 5に示す。 二次側巻線と超伝導マグネットの 組み合わせを4層巻/4層巻, 1層巻/1層巻とした場合、 各々の増幅 率mは最小2乗法により実験結果から推定 すると6.38と23.85 であり、
本実験結果は(3-6)式より計算して得られる値6.27と24.56に理論的にほ ぼ一致する結果が得られた。
励磁電源装置の電流をステップ状に変化させた場合の超伝導マグネッ ト( 1層巻)の電流 応答特性を図3 - 6に示す。 本実験は超伝導マグネ ットが電源駆動運転される場合の磁場上昇, 下降特性に相当する。 超伝 導マグネット電流の上昇は一次側巻線の電流上昇に対し、 約5秒程度遅 れて定常状態に達している。 電流 下降時も約5秒程度の遅れが観測され た。
図3 - 7は超伝導マグネットが クエンチした場合を想定して、 クエン チヒータを作動させて励磁電流の減衰特性を取得した結果である。 クエ
ンチヒータを作動させると減衰初期の 開放エネルギーをクエンチ部で吸 収し、 約2秒後に二次側巻線でクエンチパックが生じている。 超伝導マ グネットのエネルギーを開放し、 電流値が零となった時点でクエンチヒ ータをOFFとして、 一次巻線の励磁電流を下げて 行くと超伝導マグネ ットに逆起電力が発生し、 ほぼ同じ値の逆電流が流れる。 以上の手順で 永久電流モードに移行することが確認された。 次にクエンチヒータを再 びONにすると、 ほぼ同様の減衰特性で超伝導マグネットの励磁電流が 下降する。
7h fhu
図3 - 8は励磁電流を約29 Aとした場合の励磁電流減衰特性である。
電流値が大きくなっても図3 - 7とほぼ同じ特性を示している。
図3 - 9は図3 - 7で説明した同様の手順で永久電流モードを実現し、
永久電流モードに転移してからの超伝導マグネットの電流値が時間経過 と共に減衰する状況を示している。 永久電流モード運転中、 何ら問題は 発生しなかった。 1時間放置した結果 、 超伝導マグネット, 超伝導変圧 器の4層接続では減衰量を確認できなかった。 しかし1層接続では各々 のインダクタンスが極めて小さく(約8X10-5 H)、 励磁電流が大きくな
ったため超伝導マグネットと超伝導変圧器の半田接続部での抵抗の影響 が顕著に表われたと考えられる。 図3 - 9の結果を二次側巻線と超伝導 マグネットの合計自己インダクタンスL(H)と内部抵抗R(Q)の閉 回路におけるLR放電として解析する。 電流減衰値は
I=Ioe-CRIL)1 一(3-7)
に従うから、 自己インダクタンスの合計値1.6 X 10-4 Hに対してR =8.4 X 10-9 Qと計算される。 この抵抗値は従来の半田による接合抵抗の値と オーダ的にほぼ一致しており、 発生磁場の減衰 が半田接合によるわずか な内部抵抗によるLR放電によることを示している。 超伝導マグネット を電源駆動モードで運転する場合、 この減衰は問題無いが 、 永久電流モ ードで運転する場合、 接続方法に超伝導接続を採用することで磁場の時 間安定性が実用上十分実現できると考えられる。
qJ fhU
of coils
卜\
Secondary coil Load coil。 One-Iayer One-Iayer
• Four-Iayer Four-Iayer Combination
500
(〈)よ 400
Current amplification factor 6.38 (Measured value) 6.27 (Calculated value)
Current amplification factor 23.85 (Measured value) 24.56 (Calculated value)
300
200
100 oυ℃回O一半OHCω」」コO
25 20
11 (A)
励磁電流増幅率 15 Current of primary coil
5
10
3
5
図
- 64-
Sequence of operation
一一 : Current of primary coil
一一:Current of load coil
Cふ
Time500
ノ... .
.. ト・一一一一- A,I 八Uハ
:C山rent of8>
load coil
+ ・:
Current of > F 〈primary coil ←
- 300
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. : Voltage of 6・5υ 寸30 -0 0
primary coil
ゐ
〉L-、 0 くJ七の0200
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」。 。コ。 5 4E』 ハU 15 0 「O 10
-2
15
Time
t(sec) Time
t(sec)
図3 - 6 励磁電源装置による超伝導マグネットのステップ応答特性
- 65-
土500
r ' - ' ,
1 st Quenchf \ /
2nd Quenchf fといι\ …、ふ
I ;'戸 Timei f
- :Current of prim仰∞il 一一: Current of load coil l.一.J尽� : Quench heater ON 土5
士100
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Voltage of primary coilム: 1 st Quench (Positive value  :2nd Quench (Negative value)
1片手主
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5 6 7 8 9 10Current of load coil
o : 1 st Quench (Positive value
・:2nd Quench (Negative value)
(>)
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ハUハunJ 十一oυ刀のO 0 にJ
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キJcu
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dlt 十一
。
Quench heater ON
図3 - 7
クエンチヒータによる超伝導マグネットの励磁電流減衰特性
- 66-
Time
: Current of primary coil : Current of load coil
�
: Quench heater ON 1 st Quenchj l /
2nd QuenchJ I�ふ\ Iふんl
\
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l._.J Sequence of
operatìon
::t 800 士8
oυ〉」ωε一」(いちω05一o>
5 4 3 2
+一十一十一+一 value )
value)
Voltage of primary coil
: Î 5t Quench (Po5itive value ) : 2nd Quench (Negative value) Current of load coil
: Î 5t Ouench (Po5itive : 2nd Ouench (Negative 0
•
ム A
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ハUnU ハO
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ハU ハU nu nU ハu nu nu nu にd λ吋 つu q/』
十一+一+一十一
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ιjoo. ゼト』八 --迫....-- ... ----Â-一--.t.-一ー吋&ー一一 r_:r._�ふー-&ーーも一一 合一一ろ一一之so
3 4 5 6 7 8 5 1 0
クエンチヒータによる超伝導マグネットの励磁電流減衰特性
t
(sec) Time
2 土100
。 o
Quench heater ON
図3 - 8
- 67-
一一一 : Current of primary coil
一一: Current of load coil
� : Ouench heater ON Time
fl
jん\
�����
red for/
L.一一-一一一一.J Sequence of
operatíon
(〈)二
Combination of coils
k
。 Secondary One-Iayer coil One-Iayer Load coil• Four-Iayer Four-Iayer
300
200 0υ力回O一』0いにωとコO
100
。。 60
トの電流減衰特性 50
40
ドでの超伝導マグネッ 30
t (min) Time
418 ハU 20
永久電流モー 図3 - 9
- 68-
1.3 磁気冷凍法による水素液化に関する研究
1.3.1 磁気冷凍サイクルの選定
磁気冷凍機は、 従来のガス圧縮式冷凍機と比較すると図3- 1 0に示 すように冷媒である磁性体, 磁性体に強磁場を加える超伝導マグネット,
磁性体から吸熱, 排熱を行う二つの熱スイッチで構成される。 ここで図 3 - 1 1により磁気冷凍サイクルの動作を簡単に説明する。 断熱された 磁性体に磁場を加えると温度が上昇する(断熱励磁過程:A→B)。 引 き続き磁場を励磁し、 ある温度において排熱スイッチを閉じて高温熱源
に等温的に排熱する(等温励磁過程:B→C)。 次に排熱スイッチを開 いて、 磁場を消磁していく(断熱消磁過程:C→D)。 ある温度におい て吸熱スイッチを閉じると、 冷却負荷より熱を吸熱できる(等温消磁過 程:D→A)。 以上4つの過程からなる磁気カルノーサイクルを繰り返 して、 周期的に寒冷を発生することができる。 磁気冷凍は排熱と吸熱を 等温条件に近い形で実現できるので、 カルノーサイクル が比較的容易に
実現でき、 従来のガス圧縮式冷凍に比べ高効率が期待できる。
3.3.2 磁性体GGGの熱物性値測定実験
磁性体のエントロピ特性については分子場近似理論に基づく計算法が 提案されているが、 実験値との比較による検証は液体ヘリウム温度付近 までしかなされていない。(3�) そこで液体水素温度付近での磁気冷凍試 験を実施する上で必要となるGGGのエントロピ特性を計測した。 GG Gのエントロピ特性は、 比熱 が温度と磁場に依存することから求められ る。 計測方法としては、 図3 - 1 2に示すように後述する磁気冷凍装置 の一部を改造し、 磁気冷凍サイクルを繰り返して磁性体を冷却した後、
一定の磁場を引加した状態で磁性体にヒータで熱を加え、 温度上昇から 比熱を測定する。 測定した比熱を温度で積分してエントロピ変化を求め た。 (3lJ) 図3- 1 3に計測したGGGのエントロピ特性を示す。 実線は 分子場近似理論により計算した値である。 (3り)計測値と計算値は良く一 致しており、例えば4テスラにおけるエントロピ変化の誤差は20 Kで2%
-69-
�
熱交換器 (寒冷回収)
ガス圧縮式冷凍機
圧縮機
↑
(吸熱)膨張機
超伝導マグネット
磁気冷凍機
冷媒:ガス
圧縮→排熱→膨張→温度降下 冷媒:磁性休
磁場印加→排熱→消磁→温度降下
磁気冷凍とガス冷凍の比較
1 。
図3 -
B=Oテスラ
B :等磁場線
(ピ・一oE\勺)ω
A-B:断熱励磁過程 BーC:等温励磁過程 C-D:断熱消磁過程 D-A:等温消磁過程 D
Uロム入H
T (K)
磁気冷凍サイクル 温 度
1 1
図3 -
- 70一
G-M
OのO?
Magnetic Material
(GGG)
uc g
ø
910図3 - 1 2 磁気冷凍装置断面図
(G G Gのエントロ ピー測定の場合)
- 71-
R:Gas Constant 8.314(J/mol. K)
3
- ・ - - ー ー ー ‘ - - - - - ー ι ー ー ・ ・・ ・_ _ J _ _ .. _ _ _ ..J・ ー ー ーー ー ・1・ ー _
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2.51'
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0.5
•
Calculation by Molecular Field Approximation Experiment
Experiment by Ref.
(38)
庄内\\ω 〉 丘 O L H C U
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_ ー ー ー ー ー凡℃
10 20 30
T emperature T
(K)
図3 - 1 3 GGGのエントロ ピ測定結果
「乙 寸/
以下と小さく、 分子場近似理論による計算値が後述する磁気冷凍装置の 設計や磁気冷凍サイクル計算に実用上問題なく使用できることが明らか
となった。
3.3.3 磁気冷凍装置の熱設計
(a)実験装置構成
磁気冷凍を用いて水素を液化することを目的として、 図3 - 1 4に示 す磁気冷凍装置を試作した。 磁性体および実験装置を図3 - 1 5に示す。
本研究では磁性体を磁場中に静置して磁場を変動させる静止型を採用し た。
磁性体には円柱形状(直径 0.035 ill, 高さ 0.1 ill, 0.7 illol) のGGG ( Gd3Gas012) 単結晶を用いた。
超伝導マグネットには励磁時間を短縮し、冷凍出力の向上を図るため、
磁場励磁速度の大きいパルス作動型の超伝導マグネット(外径0.116 ill,
ボア径0.085 ill, 高さ0.2 ill)を用いた。 このマグネットは、 励磁電流150 Aにおいて最大磁場5 T (テスラ)を発生し、 磁場励磁速度は最大で0.36 T/sである。
(b) 排熱及び吸熱スイッチの熱設計
図3 - 1 6に磁性体と熱スイッチの詳細構造図を示す。 磁気冷凍では 冷媒が固体であるため、 固体表面からの直接吸排熱方式について検討す る必要がある。 また単位体積当りの寒冷発生量が、 ガス冷凍方式に比べ 大きく、 冷凍機をコンパクトにできる反面、 限られた伝熱面積から一度 に多くの熱量を磁性体より吸排熱する必要があり、 熱スイッチの性能向
上が課題である。
(1)排熱スイッチ
磁性体の上方には人工水晶 ( Si02) と無酸素銅で構成された排熱スイ ッチが設置されて おり、 さらに排熱用のG-M冷凍機 (蓄冷式の小型冷 凍機) に結合されている。 磁性体と熱接触する排熱スイッチ部には渦電 流に起因するジュール発熱損失を低減するため、 絶縁体でかつ、 熱伝導
司、d勺/
率が大きいSi02を使用した。例えば20KにおけるGGG,無酸素銅,Si02 の熱伝導率はそれぞれ5, 9, 4 W/cm.K である。 排熱スイッチは図3 -
1 4に示すようにG-M冷凍機の寒冷ヘッドに固定された銅ブロックに 接触したまま上下動し、 磁性体に接触して、 磁性体の熱をG-M冷凍機 に排熱する。 また、 排熱スイッチを収めた容器内には、 ヘリウムガス(60
torr )を封入しており、 狭い接触伝熱面間でのガスの熱伝導効果を利用
して、 伝熱性能の向上を図った。 この熱伝導効果は、 接触面聞の距離が 狭いほど大きくなるため、 磁性体および排熱スイッチの接触面は0.5μm の鏡面仕上げを施し、 さらにベローズとバネを使って、 接触面圧力を大 きくしている。
(2)吸熱スイッチ
水素液化の場合、 図3 - 1 0に示した冷却負荷は水素ガス液化の際に 発生する凝縮潜熱であり、 吸熱スイッチは潜熱を磁性体へと伝える機構 である。
図3 - 1 6に示すように、 吸熱スイッチはL H 2容器を蒸発部, 磁性 体壁面を凝縮部とする熱サイフォン型ヒートパイプとした。
ヒートパイフ設計において最も重要な点は、 凝縮面である磁性体側面 と磁性体を納める容器の聞の隙問、 即ちヒートパイプ凝縮部隙間の大き さである。 磁性体温度が水素ガスの沸点(20.3 K)以下になると、 磁性 体側面に水素ガスが凝縮し、 この凝縮量に相当するガスが液体水素容器 から供給される。 このとき磁性体の表面に凝縮した流下液膜と磁性体容 器壁の隙間に高速の水素ガスが上昇すると、 流下液膜に乱れが発生し、
隙間が閉塞して、 水素ガスがスムーズに供給され難くなり、 液化量が低 下する。
また磁性体の周りには、 磁性体容器や凝縮部隙聞に断熱励磁 ・ 等温励 磁・断熱消磁の三つの過程において、 凝縮されない水素ガスが存在する。
磁気冷凍サイクルのうち、 断熱励磁中は、 周囲に先行して温度が上がる 磁性体から周囲の容器や水素ガスへ熱が流れ、 断熱消磁中は、 周囲に先 行して温度が下がる磁性体へ周囲の容器や水素ガスから熱が流れる。 そ
A『勺/
の結果、 サイクルは理想的な矩形から変形し、 冷凍出力が低下する。
以上のことから、 ヒートパイプ凝縮部隙間大きさは、L H 2容器(蒸 発部)から凝縮部隙間へ供給される水素ガスと凝縮流下液膜の干渉およ び、 二つの断熱過程において、 磁性体周囲の水素ガスと磁性体容器から 磁性体へ流入する熱量を考慮して決定する必要がある。 表3 - 2に水素 液化用ヒートパイプの設計条件を示す。
(c) 凝縮部におけるフラッディングの発生限界
管壁に沿って液が膜状に流下し、 蒸気が上向きに流れる対向二相流で は、 上向きの蒸気速度がある値に達すると、 液膜に乱れが発生し、 液の 一部が上昇を開始する。 このときの蒸気速度をフラッディング速度と呼 ぶ。 凝縮部隙聞が小さくなると、 水素ガス速度は増大し、 フラッディン グが発生しやすくなる。 そこで、 フラッディングが発生しない凝縮部隙 間の大きさについて検討した。
垂直管内で発生する気液対向環状流のフラッディング現象に対し、 従 来二つの異なる考え方が報告されている。(40)
(i) 上昇する蒸気が流下液膜の流量を制限 することによってフラッデ ィングが発生する。
(ii)気液対向流の気液界面が不安定になった時、 フラッディングが発 生する。
(i)の考え方から導かれたフラッディング条件として次のWallisの式が使 用されている。
Ut *l/2+uf l/2=C (B{}1/2<10) 一(3-8)
ここで、 Ug *, Uf牢は蒸気, 液体の見掛け速度Ug, Ufに基づく無次元速 度で次式で求められる。
Ug * = Ug ,o!; 1/2 / [gD(ρfーの)] 1/2 一(3-9)
Uf * = Uf ,0/12/ [gD(ρ'f - ,oJ:)] 1/2 一(3-10)
C は実験による定数(0.725'"'"'0.75), Dは垂直管内径, B()はボンド数で ある。
-75一
(i i)の考え方に従えば、 気液対向流において安定な気液界面が存在す るためには、 界面波の波長 は、 Helmholtz の不安定理論より決定される 次の関係式を満足する必要がある。
λ 三二 σ 2π(1 + 令 /
正予)
令(U g+Uf)2ここでλは界面波の波長, σは表面張力, ριは蒸気密度, ρf は液体密 度, Ugは蒸気速度, Ufは液体速度である。
一(3 -11)
また界面波長λと液膜厚さδには次の関係がある。
λ=4π(1 +ρg/ρf)kδ - (3-12)
ここで δ は液膜厚さ k は空気-水系実験により求められた値で1 '"'-' 3 の値である。
フラッディングは、 蒸気速度内(上向きを正)が最も大きくなる凝縮面 最下部で発生しやすいと考え、 また気液界面の相互作用が問題となるた め、Uf (下向きを正)には最下部での液膜平均流速 Uðを用いた。 液膜厚 さδ, 液膜平均流速 Uð は第2章の実験結果から、 Nusselt の層流理論式 から予測できることが明らかとなったので、 次式の(3-13), (3-14)および (3 -15)の hの値はNusseltの理論式(2-4)を用いて計算した。
δ=
(
_4い
fL!J..�11/4
�gρパ々f -令)hfg
J
g(ρlーの )δ2 Ur J =u... - =---' u
2μf
(1 !l)( 19)
一(3-13) 一(3-1 4)
一 伊〉 一 41n一 A一418 叩A一 T一h fj 一
一ρ30
一一ob u 一(3-15)
ここでわは液体の熱伝導率, Lは伝熱面長さ, ;j Tは磁性体と蒸気の温 度差, g は重力加速度, hfgは凝縮潜熱, μ/は液体の粘性係数, h は平均 凝縮熱伝達率, A は伝熱面積, Aga[Jは凝縮部隙間面積である。 ここで、
凝縮部隙間面積Ag(/[Jは磁性体凝縮部外径Dgとヒートパイプ内径D"より
Agl/p ==π(D/-D/) /4である。
図 3
-
1 7に上昇水素ガスの流下液膜に対する相対速度 Urcl(=Ug + Ur) と凝縮部隙聞大きさLg(/[J= (Dh -Dg) /2 の関係を示す。 図中にはWallisの- 7 6-
式(3-8)とHelmholtzの式(3-11)から計算したフラッディング発生限界を示 す。 凝縮部隙間の大きさを0.4 mm以上にすると、 フラッディングが発 生せず、 凝縮部隙間の閉塞は発生しないと考えられる。
(d)磁性体周囲熱容量損失の検討
図3 - 1 8に凝縮部隙間大きさとLgap断熱消磁過程における磁性体へ の流入熱量( 熱損失) Qの関係を示す。隙間を大きくとればフラッディ ングの発生は抑えられるが、 熱損失は増大し、 液化効率は低下する。 流 入熱量の計算は以下のように行った。 磁気冷凍サイクルの吸熱温度が 20
K, 排熱温度25 Kの場合、 磁性体周囲に存在する熱容量( 凝縮部隙間の 水素ガスおよびSUS304L製ステンレス容器) も同様に20- 25 Kの間で 温度が変化すると考えて計算した。
以上、 図3 - 1 7 , 図3 - 1 8 に示した検討結果より凝縮部隙聞大き さを製作上 の容易さも考慮して常温において1.5 mmにした(20 K で は1.4 mmに熱収縮する)。 この大きさは、 フラッディングが発生しない 十分な大きさであり、 またこのとき流入熱量の磁気冷凍サイクル吸熱量
に対する割合は、 25%程 度に抑えられる。
従来のヘリウム液化用磁気冷凍機では、 凝縮部隙間を0.2 mm�l mm に変えて実験を行ない、 0.5 mm�0.7 mmで最大液化効率が得られたと報 告しているが、 (32)本解析のような検討は行っていない。(c), (d)の解析 方法によりフラッディング発生限界と熱容量損失を考慮した、 凝縮部隙 間大きさの最適化が可能と考えられる。
3.3.4 実験方法
はじめに磁気冷凍装置の液化試験開始までのセットアップについて説 明する。 排熱スイッチを液体窒素(LN 2) で熱交換したヘリウムガス で予冷し、 続いてG-M冷凍機で冷却して20 Kレベルまで温度を下げ、
予冷終了後 ヘリウムガスを封入する。 超伝導マグネットを設置した液体 ヘリウム(LH e)槽もLN 2予冷の後、 LHeを溜め る。 予冷終了後、
磁気冷凍サイクルを開始する。 図3 - 1 9 に20.3 K (T,) から25 K (�,)
-77一
G-M
。のO?
2 G o u d am.mω
IM九め沿
lMMα
uc�ir}g
High Vacuum Can
tir--
否否lO
ラi図3 -
1 4磁気冷凍装置断面図
- 78-
磁性体( G G G )
LHe Bath for Superconducting Magnet
実験装置
図3 - 1 5 磁性体と磁気冷凍実験装置
ハツ勺I
( W LH2 W j
ーーll1111j
/一
/'
一
J/一
/'
一
d/一
Heat Pipe Rejection Heat Switch
Magnetic Material
(GGG)
High Vacuum Can Bellows
Sj02
LHe
Vapor Layer
Liquid Film
Supe
ふ1
ductinf
Magnet Liquid Helium
Bath
Liquid Hydrogen Bath
vt、,崎町い凶抗 u・比叫 s Mh 『laEl 一一一一『』lE」
Heater
ッチ部の詳細図 磁性体および熱スイ
⑦
ThermometerO
Hall pro(C G Ri
-be6
図3 1
- 80一
Size of GGG D=0.035m in diameter, L=O.l m in height
Heat transfer area A=0.01143 m2
Heat transfer coefficient h=1757 W/m2K Temperature difference ムT=1. 3 K
(
Tmper……�J
Temperature of GH2
[
19K〕
20.3 K
00
Operating temperature 20.3 K- 25 K
表3
-
2 水素液化用ヒートパイプの設計条件k=1
k=3 ._.-.-._._.-.-._.-._._.-._._.-.一一
5 4
3
2
一一一一
Helm holtzEq. (3-11) _._._.
WallisEq. (3-8)
制制寂回特
ー∞M|
4 Lgap
(mm)
フラッディング発生限界
(ω\ε)一ω」コ
3 2
凝縮部隙聞大きさ
図3 - 1 7
。
100
(ま)比
仙一一仰の吋1下寂け一宍司時受G
酬続 ベ俣
nu
nu
nu
nu no
no
s斗
ηζ
企: 水素ガス
園:磁性体容器(SUS304L)
・:合計( 水素ガスー磁性体容器)
�:冷凍出力に対する割合
ー 一一 ーー- ーーーーーーーーーー守一一一+
ーーーーーー守ーーーーーーー四ーー-
�- ー ー ー
つ
σ
ml闘 志足
立10
ベ 隠 さを 岩
本語ト..çx
。 20
。。
w
3 4
Lgap (mm)
磁性体への流入熱量 2
凝縮部隙間大きさ
図3 - 1 8
。
の問で動作する磁気冷凍サイクルでのGGG温度, 磁場(最大5 T), L
Hっ槽圧力の経時変化を示す。 励磁過程では、 磁性体が発熱すると排熱 スイッチを接触させて排熱し、 消磁過程では、 磁性体の温度が水素液化 温度(20.3 K)以下になると、 磁性体表面で水素ガスが凝縮し液化する。
このサイクルを繰り返し、 L H 2槽の圧力, 温度が整定するように、 冷 凍出力計測用ヒータの調整を行い水素液化量を測定する。
3.3.5 実験結果と考察
(a)熱スイッチ特性
図3 - 1 9に磁気冷凍サイクルにおける排熱スイッチ温度を示す。 本 研究で以前試作した排熱スイッチでは、 磁性体と熱スイッチの接触が不 十分なため、 熱スイッチの伝熱性能(単位温度差当たり排熱される熱量) は 0.07 W/Kであった。 (39) 図3 - 1 5に示す排熱スイッチでは、 ベロ
ーズとバネを用いて接触機構を改良し、 伝熱性能が0.34 W/K まで改善 された。
一方、吸熱スイッチであるヒートパイプの性能は実験結果より、6 W/K と推定される。 また液化効率(実験における吸熱量の理想サイクル吸熱 量に対する割合) は磁場励磁速度が0.36 T/sのとき78%であり、 磁性体 周囲の熱負荷による冷凍出力損失及びフラッディングの影響は低く抑え
られていると考えられ、 ヒートパイプの設計手法が妥当であったことを 示している。
(b)水素液化特性
磁場励磁速度をパラメータとして、 水素液化実験を実施した。 実験条 件は、 最大磁場5 T, 磁場励磁速度0.08 T/sから0.36 T/s, 排熱温度25 K である。 また磁場励磁速度, 熱スイッチ伝熱性能等の実測値を用いて、
液化サイクル計算を実施した。
図3 - 2 0 (a)は水素液化実験時に時間の経過と共にサイクルが整定
する様子を示している。 図3 - 2 0 (b)は整定条件で液化サイクル計算を 実施した結果である。 整定時の実験結果と計算結果が良く一致しており、
-84-
排熱スイッチ等の性能データが得られれば、 実際の液化状況を充分予測 できることが判った。
図3 - 2 1は実験及び計算によって得られたカルノーサイクルをGG Gの温度- エ ントロ ピ線図上に示したもので ある。 実験と計算結果がサ イクル上でも良く一致すること、 磁性体への流入熱の影響によるサイク ルの歪みを良く表わしていることが確認された。
図3 - 2 2 に磁場励磁速度が冷凍サイクルに及ぼす影響について示す。
磁場励磁速度が遅い場合、 サイクルの歪みが大きくなり、 排熱温度が低 下して吸熱(液化)過程におけるエントロピ変化も減少し、 冷凍出力が 低下する。
図3 - 2 3は 最大磁場を5 T, 排熱温度を25 Kに固定し、 磁場励磁速 度Rを変化させたときの冷凍出力
Q
(液化量ジ)の影響を示している。実験結果は液化サイクル計算より算出した性能予測値とほぼ一致してい る。 磁場励磁速度の増加に伴って、 冷凍出力も増大し、 冷凍出力は 、 磁 場励磁速度が最も速い0.36 T/sのとき、 最大0.4 Wが得られた。 これは 液化量に換算すると3. 55 g/h (50 cc/h)に相当し、 このときのカルノー 効率は37%であった。
戸、JQO
1
(ト)白万一ωロo一芯COの一注ハU
5
。
磁場 80
圧力,
60 t (sec)
磁気冷凍サイクルにおける温度,
40
Elapsed Time 20
9 ー、\nU
R Z.
2
225ω♀εωト
イl
nu nu
nu
(何色一ミ)仏5caf」』oω」コωωω」仏
。
図3
。。
。\
排熱スイッチ温度
(ト)
∞
野鐙
�
回目
100
時間
t(sec)
(a)液化実験結果
-計算条件最大磁場5T磁場励磁速度O.35(丁Is) 緋熱温度25K硲性体GGG(O.7mol) 15 3
協;ヒ過程Jイ ムム五三
∞η/』
(V4)ト
注目 �
土持
100
時間
t(sec)
(b)液化計算結果
図3 - 2 0 液化実験結果と計算結果の比較
- 87-
磁気冷凍サイクルの実験結果と計算結果の比較 Sweep råte
0.35 T/s -・--- Experiment
-一一ーCalculation
Ideal Carnot Cycle
58
56
54
52
50 (V十一oε弓)ω
。。。』
O〉己O」OWCU
ー∞∞|
26 28
T(K)
22
Temperature
48 20 18
図3 - 2 1
28 26
T(K)
22
Temperature
20 54
48 18 52
50 (X・一oε弓)ω
000』
O〉丘O」OWC凶
Cぬ 叫コ
磁性体の励磁速度によるサイクルの影響
2 2
図3 -
s
.0
�
E。
言ω
L c 0.5
4c。 L-u -d
〈コ
o ω
0) 匂L
ω
ー -
Cピ
00 .05
• Experiment o Calculation
� ,
8=5T Th=25K
0.1 0.5
Sweep Rate R
(T/5)
図3 - 2 3 磁性体の励磁速度による冷凍出力変化 (実験条件:最大磁場5 T , 排熱温度2 5 Kを固定)
--、
h工h。二、
、、,_.;ι3
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50 切ー。
4c 圃d コ。
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。
,,� 三と込
3.4 ホ白 百冊
超伝導変圧器と超伝導マグネットを組合せた励磁システムを製作し、 性 能評価実験を実施し、 以下の結論を得た。
(1)超伝導変圧器の電流増幅率は電源駆動モード運転時 , 永久電流モード 運転時共にほぼ理論値に一致することを確認した。
(2)超伝導マグネットの電源駆動モード運転から永久電流モード運転への 移行方法が確認でき、 永久電流モード運転が可能であることを確認し た。
(3)超伝導マグネットの永久電流モード運転時の発生磁場について時間依 存性を測定した。 発生磁場減衰の原因は半田接続によるものと判明し た。 超伝導接続により必要な磁場の時間安定性が充分実現できると考 える。
磁気冷凍法による水素液化を目的として、 磁気冷凍装置を製作し、 水素 液化実験を実施した。 その結果、 以下の結論を得た。
(1)水素液化に使用する磁性体GGGの液体水素温度付近でのエントロピ 一特性を測定した。 測定値と分子場近似理論により計算した値は良く 一致しており、 例えば、 4テスラ, 20 Kでの両者の差は2%以下と小 さく、 分子場近似理論による計算値が実用上問題のないことが判った。
(2)水素液化に使用する熱サイフォン型ヒートパイプの設計において、 フ ラッディング発生限界と磁性体の熱容量損失を考慮して凝縮部隙聞を 決定する最適化手法を提案し、 実験にてその妥当性を確認した。
(3)ヒートパイプ方式にて水素の連続的な液化を確認した。 実験 で得られ た液化効率の最大値は78%, 最大カルノー効率は37%であり、 その時
の冷凍能力はGG G 0.7 molで0.4 W (液化量50cc/h)であった。
(4)熱スイッチの性能は高温排熱側0.34 W/K,低温吸熱側6 W/Kであり、
実用機のレベルに到達させるためには高温側排熱スイッチと磁性体の ンンフルな熱リンク機能の開発が更なる性能向上を図る 上で必要 であ る。
(5)液化サイクル計算と実験結果との比較を行なった結果、 サイクルを良 くシミュレートしており、 定量的によく一致することを確認した。
oj
第4章 スラッシュ水素用高精度密度計の開発とスラッシュ水素流動 特性に関する研究
4.1 緒 言
スラッシュ水素用密度計については1970年代から静電容量型も含め、 ベ ータ線, ガンマ線の減衰量や超音波の伝播速度を測定する方法が検討され
ている。 (8)
しかしながらベータ線, ガンマ線の方法は放射性物質の取扱いやロケッ ト等への搭載を考えた場合、 一般的ではなく、 また、 超音波を使用する方 法についても固体粒の影響が明確でないため実用に至っていない。 静電容 量型については、 後述するように液体と固体の比誘電率差が小さいため、
固体重量率の変化に対し静電容量出力が大きくとれる電極構造が望ましい。
極低温分野で静電容量変化を利用したセンサとして、 LNG用密度計,
LNGタンク用液面計, 液体ロケット用の液体水素, 液体酸素液面計が実 用化されている。 例えば、 LNG用密度計の場合、 通常二重円筒型が採用 されており、 測定物が単相の液体であるため、 液体が電極問に入り込み易 く、 従って、 電極面積を広くとって電極問距離を狭くすれば測定精度を上 げることが可能である。
しかしながら、 スラッシュ水素のように液体中に固体粒が共存する場合 の静電容量型密度計については、 高精度化を図る上で重要となる固体粒子 の挙動を考慮した電極構造や、 搭載を前提とした密度計の小型, コンパク
ト化等について十分に検討されていない状況にある。
このような背景のもと、 平行平板を利用した静電容量型密度計を製作し、
スラッシュ水素中で密度測定および固体重量率を変化させた場合の密度計 の特性を測定した。 (41)(42)その結果、 測定精度が固体粒の挙動と相倹って、
供試密度計の電極形状、 電極間距離等に影響されることが示唆された。
本研究では極低温の液体中に固体粒が共存するというスラッシュ水素特 有の性質を考慮して、 水素の固体粒が電極聞に入り難い問題を解決し、 構 造が簡単で高精度が期待できる平板と2個の円筒を組み合せた平板 ・ 円筒 型を提案, 試作し、 密度計測実験を行った。
フu
nuノ
即ち、 円筒直径, 電極間距離を変えた3種類の平板 ・ 円筒型と1種類の 平行平板型について、 固体重量率(固化率)約30%までのスラッシュ水素 中での密度計測実験を実施した。 その結果、 型式の違いによる特性, 電極 問距離による特性が明らかとなり、 密度換算でおよそ::t 0.5 %以内の高精度 を満足するスラッシュ水素用密度計を開発した。 (43)(44)
また、 フリーズ ・ ソ一法により製造したスラッシュ水素を使用して配管 内流動実験を実施し、 圧力損失の測定を行った。 (42)
-9 3-
4.2 スラッシュ水素用高精度密度計の設計
4.2.1 スラッシュ水素の物性値
実験に使用した液体水素はパラ濃度95%以上のパラ水素で、 パラ水 素の主な物性値を表4 - 1に示す。
物性値は米国N 1 S T (旧N B S)より公表されている値を使用した。
(2())静電容量変化から密度測定を行う場合、パラ水素の三重状態 (P(=52.82 Torr, T(二13.803 K)での比誘電率変化は、 表4 - 1に示すように液体 ( C/
= 1.252)から固体 ( Cs = 1.286)に変化する場合、 2.7%の増加に過ぎず、
密度計の設計に際し、 静電容量変化が大きく、 かつ水素の固体粒が電極 聞に入り易い構造が望ましい。
4.2.2 静電容量型密度計の動作原理
静電容量型密度計では静電容量が電極間物質の誘電率に比例するので 静電容量Cと比誘電率Eの関係は次式で表される。
c = C()C + Cd 一(4-1)
C()は電極の大きさや形状によって決まる定数であり、 比誘電率に対す る静電容量感度に相当する。 Cdは密度計の電極以外の構造物等から発生 する無効静電容量で、 各々の密度計に固有の値であり比誘電率変化に関 係なく定数である。
従って、 C(), Cdの値が既知であれば、 スラッシュ水素中に設置した密 度計の出力 (静電容量C ) を計測することにより、 三重状態 での固体と 液体水素の比誘電率 (既知、 表4 - 1参照) から電極内の液体と固体の
占有体積比が算出でき、 密度が測定できる。
即ち、 スラッシュ水素中の固体の占有体積比をfとすると、 式(4-1)か ら求めたスラッシュ水素の比誘電率Eの聞には次式が成立する。
ε=
(
l-/)
c/+[.εx 一(4-2)fについて解くと
f===三二三L
εx一ε!
-94-
一(4-3)
〈コ tノ、
Temperature (K)
Pressure (Torr) Density (kg/m3) Enthalpy (kJ/kg) Dielectric constant
Normal boiling point
Vapor Liquid Vapor
20.268 760 (101325 Pa)
1 .338 70.79 0.1256
189.3 -256.2 140.3
1.0040 1 .230 1.0004
表4 - 1 パラ水素の熱物性値
Triple point
Liquid S 0 1 i d
13.803 52.82 (7042 Pa)
77.02 86.50
-308.9 -367.2
1 .252 1 .286
前述のように8, ' ムは既知、 εは測定値であるのでfが算出でき、 固 体と液体の密度( 既知 )からスラッシュ水素の密度んが次式で計算でき
る。
ん=
(1-
f)p, + fpλ4.2.3 密度計の電極形状検討と製作
一(4-4)
円筒を平板の両側に2個設置して感度向上を図った平板・円筒型と対 向平板を平行に配置した平行平板型について検討し、 試作を行った。 図 4 - 1に両型式の概略図を示す。 両型式共、 平板電極の大きさを 50 mm
X50 mmの正方形として検討した。
平行平板型密度計の静電容量は導体平板の距離をd, 平板の面積をS とすると近似的に次の式で表される。
c = =S80 一一一ε
d 一(4-5)
(4-5)式で計算した静電容量感度を図4-2に破線で示す。
導体平板からdの距離をおいて、 平板の両側に半径αの円筒導体を対 称的に2個置いたときの平板・円筒型密度計の静電容量は近似的に次の 式で表される。
c = 4πtεo ー
吋
d+必2ーの
α}
� 一(4-6)(4-6)式で計算した静電容量感度を図4-2に実線で示す。 図中タイプ I'""'illは円筒直径(2α)を各々3, 5, 8.5 mmとして計算した結果である。
図4 - 2より平板・円筒型の場合、 電極問距離(d)が一定の場合、 円 筒直径(2α)が大きい程静電容量感度が大きくなる。 しかし、 円筒直径 が大きくなると、 定性的には平板と円筒聞に固体水素が侵入し難い構造 になると考えら れる。 平行平板型の場合、 平板・円筒型と比較すると平 板間距離(d)が5 mmではタイプIより感度が大きくとれ、 タイプEと ほぼ同程度であるが、 固体水素が電極の中央部まで自由に侵入できるこ とが前提となる。 平板間距離を10 mmにとった場合、 固体水素は電極聞 にある程度容易に侵入できると予想されるが、 感度はタイプ!とほぼ同
-96-
程度であり、 タイフII, 1IIよりは劣っている。 以上のことから平板 ・ 円 筒型が密度計として優れた特性を持っていることが判る。
平行平板型密度計は、 文献(41)の結果より、 固体水素粒の侵入し易 さを 優先して、 電極間距離(d) を10 mmに選定して製作した。 式(4-5) より計算した設計上の感度は2.21 pFであり、 図4 - 2にム印で示す。
平板・ 円筒型密度計はタイプI'"'-'lIIの3種類について、 円筒直径(2α) を3, 5, 8.5 mm, 円筒中心から平板までの距離(d)を4.5, 7.5, 12.75 mm に選定して製作した。 式(4-6)で 計算した3種類の密度計の感度を図4-
2 にO印で示す。 3種類共に設計上の感度を3.16 pFと同一に選ぶこと により , 電極間距離(d)と円筒直径 (2α) が精度に及ぼす影響を把握 できることを目的とした。
図4-3に平板・ 円筒 型密度計の形状および寸法を示す。
参考までに、 タイフ1'"'-'皿の 円筒外周から平板までの最小電極間距離 (d一α)は各々3, 5, 8.5 mmである。 図4-4に外観写真を示す。 電極 の材質は平板, 円筒いずれも無酸素銅製とした。 また、 平板, 円筒の支 持体は絶縁性を考慮してベークライト製とした。
-97-