文献語学における対立諸項目について[日本独文学 会,昭和47年,秋季研究発表会―10月12日,於岡山 大学―にての発表要旨)
その他のタイトル Zur dichotomischen Betrachtung in der Textlinguistik
著者 平川 信弘
雑誌名 独逸文学
巻 18
ページ 127‑138
発行年 1973‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00017850
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文献語学における対立諸項目について
〔日本独文学会,昭和47年,秋季研究発表会 一,0月,2日,於岡山大学一にての発表要旨〕
平 川 信 弘
0. 近年文献言語学においてとりあげられている若干の論点を考察してみ たいと思う. 方法論的には必ずしも首尾一貫しないかもしれないが
、S上z"ss"γgがしたように,対立する二つの項目を直角に交叉させて座標を
形成する手法で進めて行きたい1). S卿伽〃CO"オγ9 s靭蛎,〃αc〃0"
CO"かeSy"c"0"/2,γα"0γオassocjα〃CO"かeγ加γオSjノ"オαgシ"α吻"g等と
彼の伽"0加棚gが構造主義的な言語諸現象の解明に貢献した功績は弦に申すまでもない.〃"s肋z"2は此の様な数理論理的な方法論が文献また文 芸資料のようなgW"畑"な領域に進出して来た径路を帝政時代の凡オgγs‐
6"γgのFbγ加α娩加"S,〃昭派のSか"〃"γα脆沈"S, またD""gαγル のG"ssgα雌に次いで英米陣営の人類学派, Dぷγ鋤"物"α"S","sさ らに生成変形理論に至るまで鮪激して行く2). このような行程は各陣営主 流の立場を超えて在来の文芸科学の機能を強化し得る新しい手法を文芸
作品の分析に提供するものである.他面肋"eが言うように経験的資材と数理的な方法論の接触という精神活動の型は偶然にも17世紀以降の自
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然界と力学とのふれあいという欧州の近代自然科学の開発と技術社会の形 成に展開されて行く道程を設計した推進力と同じ形を示すものである3).
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この言語科学と文芸科学のふれあう切点において言語科学は微視から巨視
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へと解放されることであろう. 〃00幼〃gw@isc〃には語から語と語のつなが
●
りへ, さらに句から文へ, また文の積み重ねより作品へ, その盛るG2‑
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池e〃gへ雀). その上で一人の作家の経歴と成長を追う視野へ,また作家
● ● ● ● ● ●
の群像と社会的歴史的なかかわりあいに連なる e"gng脚"e"オヘ. '肋"0‐
ん恥c〃に考えても音素から語群の句構成へと拡大して〃osodie,肋オ0"‐
α物〃殊に韻文にあってはM@か娩の課題に遭遇しなければならない.
このように拡大かつ多様化されてゆく使命に直面し得る程,言語科学の諸
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分域は今世紀初頭以来そだって来た次第であるが,重く垂れる穂のかたわ
●
らに研ぎすまされた鎌が用意されているとすれば情報的に豊かな収獲は約 束されているのである. ということは一応社会と歴史から抽象的に遊離さ
れて言語それ自身の本質を求心的に究めて来た伝統の生態に思を致すとき,
社会的(共時的)歴史的(通時的)な諸資料は言語という想定された中心
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に吸収集積されるのであった. このような原料的な資源をこまぎれ的に取
材することによって生長をとげた言語科学は新しい能力をそなえた強大な
装置として完成されて行くためには一方的に求心的に資料を摂取するだけであってはならない. 自己の開発し得た理論的な手法を文芸科学に援用し,
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或は適用を試み,寧ろ遠心的に蓄積された諸業績の性能を拡散する段階に
達しているのではないか.勿論このような拡散と伝統的な求心的摂取とは弁証法的に感応交流すべきものであろう.言語科学が文献語学という領域
において更に業績を開発して行くならば例えば作家達の中には従来無意識に(単に偶発的な才幹によって)施していた運筆上の文体的特性等を科学 的に検討され実証された諸要素によって更に効果的に再編成する手がかり
を見出す者も現われようし,その上で此のような啓発された意識的企図は交流的に文献語学の更に新しい資料にもなり得ることであろう.肋沈α〃
ん肋6〃が言うように文芸に理解の無い語学者も言語学の諸業績を活用 しようとしない文学者も今は時代にとりのこされて行く5). しかも此のよ
うな見解カミ池がα"#isc〃に読みとられない為には発言者がFbγ加α"S加"sの伝統に所属していた事実を認めねばなるまい.〃肋6so〃は弁別的素性
の設定において両極的な(+対一)二項の対立をD幼oオ0沈彪として導入−128−
}
することにより吻馳"SS"γgの構造主義的な手法に新しい断面を裁った 次第であるが, このような対立項目の認知には少くとも,その対立が同一
の次元助e"eに現われるものであるという厳しい条件が前提となろう.〃eオα〃乃伽γ0〃はこのような次元の設定について或る見解を表明してい
る6).そして一つの次元助e"eの両極の間には(対立という質的な背反
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を科学的に処理する為にも)量化α"オ""''g〃された連鎖諸項目の配分 Wγオg伽"gが算出されている. このような理論構成は構造主義のあり方に 少なからぬ情報価値を提供することを筆者は疑わない.そして本稿におい ては対立諸項をこのような連鎖の両端に措定する次元の幾つかを究明して
ゆきたい.1.1. 0ルルα卿"g〃片0"かα"s"g〃
B〃〃の肋γノル62埴の交易価値理論によれば,情報市場において需要 度の向上するにつれて,特定情報の核となる概念に対応する語彙次元の在 庫目録の条項は整備される7).如何なる言語集団にあっても情報機能はこ のように尖鋭且つ精綴なWo"とBegシ〃の整備された対応, また今秋 来日したル鋤〃gのH"gりsオg配γのA"s〃"c〃と加加〃との社会的に 樹立された連関に依存するのである.〃687'gは勿論助γ加α"〃m"ノの用
いた偶発的対慣習的という言語集団内においての表現対意味の連関の定着度を示す対極法を踏襲してはいるが, A"わ〃M"γなの考え方を掛酌した 上で彼自身の修正を提案している.交易価値の高い情報資料は上限の慣習 的表現に定着する為にはSbzja伽"e""z(Srggw')のHi'γαγc"eにおい
て日常頻繁に必要な表現ほど高位の階に進み,そのような高位の情報資料ほど交流に際してエネルギーの節減を可能とするのである8)(図解は筆者)
("""加賊) (RZ"/) (MZ伽) (ん62②
〃gり〃 〃s"g〃
↑・鯏刎1撫柵繍緬" ↑瀞〃
↑
助efgW"
1.2.助〃gをの原動力と集団内の情報機構として,その力が形成して
I
行く流動的な生態には相互依存的な連関があるとともに,上に図示された
● ● ●
ように形成の過程が進むにつれて語とその指向する概念の対応は偶発的な 流動性から慣習的な定着性を具現してゆくものである.或る様相において 此の流れは"、Sb"ss"γgの"γ0〃が ""gWe'へと昇華されてゆく過 程であり得よう.個人的言語行為の集積は統合整備されて社会的な規範の
機構を形成する.そしてこの借在的な機構は再び歴史的現実的な個人の言 語行為を制約するように機能するものである.HHZ,勅はこの様な凡オe""g〃な機構を砂γαc"ze"e",α〃"g〃な言語行為を肋dezeiC"e〃と呼 んで一つの次元においての対極関係を開発している9). この考えによれば
肋吻zeMe〃は疑いもなく創作活動の領域に所在し,作家の語彙,統辞的文体の選択と操作すなわち創作的技法の行使D鋤0"伽〃〃の躍動する場 所の象兆であろう10).
2.1. 助γαc伽0γ加'た0"かα 助γαc"Sp"
言語科学的に創作的技法を対象とする試みは殊に伽γ0〃と ""gWe' の対極空間を架橋する肋0彪肘の発案に負うところが多い血).語彙の次元 にあっても発音の次元にあっても,尚また統辞や文体の面においても発話
者の個人的性癖が歴史的現実的な言語活動を可能にするものである. lt"O‑● ● ● ●
賊オは常に個人と, その所属する言語集団のつながりの領域に,また Dわん〃とHbc"妙γαc"gとの中間に, さらに自由裁量と制約的規範との振 幅の範囲に羽ばたき鼓動している. この間隙を縫って躍動する生態は既に ギリシャの頃から思索する人の脳裡に課題を提起したものである.言語が 自然に即した模写伽びe であるか,人工の社会規約βgoE であるかという 古典的疑惑はA〃"α"〃 の〃航αγCOSと〃増""00〃のK)'αオ2s〃α A""sの対立にも,Mzγc"s乃γg"""s肋γγ0のDe〃"gWaZ,α伽αの 内容にも伺われるようにα"αノbgiaとα"o加α"αの対極として&肋"s航
に継承されたのであった.
2.2. deSb"ss"γeの伽γ0〃に対する わ"gWe'の優位措置はDescαγオ8s
1
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の考えたような個人の先在に修正動議を提唱している、、砂γαc〃0γ郷を支 える普遍妥当性は国語次元においてのわ"gW9'の特性であり, その規範 的な支配力はα"0"、α伽(βα) として人工的な体系である故に反自然で
あろう. しかし此の制約に支配される言語集団内の各個人の背後には,興味深いことに異なった次元の普遍が実在していることを忘れてはならな い. この普遍は各個人が集団の一成員である以前に既に自然の一部とし て,一生物として他の生物と更に彼の属する集団の内部において他の成員
● ●
達と共有する普遍である. 従って自然的な普遍α"α/bgitz(伽。唇f)に支え られる各個人の社会的上限には,反自然的な言語規範の普遍が(国語の次 元にあって)君臨し,更にdeStz"ss"γeが〃"gWe'の上位に〃"g"g膠'を 置いたように,国語次元の上空にはノM"g"s"Sc"e[/i@伽γsα"e〃としての論 理的普遍が想定されねばならない. (図解筆者)
LANGAGE論理的に思考を支配する普遍一→ 。
Lα"gWe
国語次元における反自然的普遍一→
〃γ0〃 生理的心理的な自然的普遍 一→個
私↓も品M凸も
2.3. 自然言語は国語次元にあって相異なる様相を呈するが,その根底 に人類共通の普遍的論理力:布陣されているという考え方は甚だ皮肉にも母 国語が精神を形成し,その国語集団内の各成員の論理方式を決定するとい う見解によって強い刺戟を受けている. というのは〃2"αγdStZ"‑助〃z‐
"@"LegWho〃からLeoWeiSge762γに迄読まれる国語次元の差異の強調 は,ある普遍的な背景を想定して,その予知のもとにのみ可能であった'2)
差異とか相違とか言われる概念は比較を前提とし,比較は或る共通の規準
● ● ●
(普遍)を,そのような尺度の先在を予想するものである.先ず物指しが なければ二本の鉛筆の長さの差は測定出来ず,共通の目盛りをそなえた秤 がなければ二つの石の重さの違いはわからない. しかも交流と交易の瀕度 が増大し,情報量が幾何級数的に膨脹してゆく今日,ますます多くの人が
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他国語を理解したり,他の国民の「論理」でものを考えたりするようにな
った.W"0がの時代に自分の種族的文化の中に閉じこめられていた原住 民も現在では英語で思考していることを認めねばなるまい.2.4. Sbγ加""gのGeγ加α"航であるんα〃Fb"γ9"〃はり0〃H"加加賊
以来母国語の精神形成の威力を唱導して来たドイツ文化の伝統の中に不思 議な作家間の個人差を感知している. ドイツ文学の諸作品の間に彼は「母国語の栄光」がそれほど誰歌されないフランス文学界においてよりも遙か に顕著な鋤e"α"加の専断を見ると言う'3).規範が厳しければそれほど,
規範への反抗または規範よりの逸脱が刺戟誘発されるという言語的諸事実 の観察に怠慢であってはならない.筆者は5月(72)の日本独文学会第26
回のシムポジウムにて発表を許された際にも愚考を開陳させていただいた次第であるが,規範が許容する範囲においての戯動, さらには規範の外域 への逸脱が文学の生態を写経のような日常陳腐から救うものであると思 う. しかしこの様な助jeノがNbγ加を前提としていることを再び認めね
ばならない.3.1. 'A"0秒加'ル0"かαrSb"伽γ,
ajgg"j0 seγ〃は肋"""""娩α伽〃αん脇""""gと肋加沈""娩α物〃
加〃ん郷α"吻沈を対立させているユ4).前者は識別され得ない聞手に対する
● ● ● ●
話しかけであり,後者は特定の聞手に狙撃的に的をしぼった通信である.
この特定な聞手と自分とが共有する "α""gWs"sc〃な先行状況が狭く
有効な交信の通路を確保してくれる.同じような結論に導かれると思われ● ● ● ● ● ●
るがH"γα〃W珍伽γ姉は状況と文脈内容の相補性を述べて話手と聞手が
S伽α"0〃を共有する程度が高ければ高い程,話の内容は質的には深まり 量的には節減されると言う.鮒"α伽〃の共有度が低い場合にはKb"オ オが当然量的には増大を強いられる15).このような言語外の状況を更に対極
的に分析したのは比""電〃j城獅α"〃の 肋γ如鰄'肋"かα@""s""α伽"
であった.同教授に長年師事された岸谷女史の御説明を個人的に承わるこ
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とも出来たが,既にエネルゲィア第1号(69)に千谷喬氏が紹介されてい る通り, '"des伽α物"はA"sseγ妙γαc"励肋e"e〃の外郭に置かれ, 'Hbγノー
ZO"#'はW@j"γjc〃の@SV〃α伽",の内部でも@Kb"オe"'に近い所に位置を占めるものであろう'6).
3.2. 文学作品の場合,今日においては脇""9sグ"9Fγの「詠み人知ら ず」的な意味においてのA"0〃"、伽オは考えられない. あらゆる作家が自 己の作品に自己の名を明示している. しかし今日においては(殊にマスプ ロ的大衆作家の場合)新しい様相においてのA"0岬沈"〃が感知されよう.
即ち作家は自己の作品を読んだり,賞玩したり,或いは批評する人々が誰 と誰であるかを知り得ないのであって, このような状況下で,たとえば或 る作家が自分の作品を特定の人に読んでもらう為に書いたとしても,その 作品が社会層に公開出版され上梓される場合,期待されなかった多くの読 者が此のような通信を傍受することになる. もし作家が此のような傍受者 達を予期した場合,当然A"0叩加"〃が作家の言語活動の一つの基礎条件
となることであろう.
3.3. そしてL勅が言うように,文芸的創作行為が助γαc"ze3c"e〃で
はなくて肋deze2c"2〃である限り, このようなmdezeib"g〃には, も一つの規定詞がほしい.換言すれば文芸作品はA"0岬加"〃に支えられてい る以上,作家が自身に話しかける肋"0ノひgとして受けとめられなければ
"dezeMe〃にはなり得ない. たとえ彼の作品が売れず,また読まれなか
ったとしても,その結果経済的な報酬は得られない場合においても,その 作家は誰かに話しかける言葉を活字にしたことによって自己に対しては或
る行為を完了したことになろう. このような対自的な心理的要請は巴里の セーヌ河畔に屯する無名の画家達,また売れない楽譜を書く作曲学生等にも共通な行動を励起しているのではないか.文献言語学の一つの課題は,
まさに此の一点に例示される.文芸作品は「傍受された独語」であるのか,
それとも誰にも聴取されようとしない「拡声機の怒号」に終るものか.
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4.1. 励吻"オ"噌加"かαA〃〃""g'
先述のaseγ〃の考え方に徹して見れば,肋"、柳""焼α物〃αムハ〃#e"L
""gはW"γ幼の言う 助〃"〃"g'を求めるもので, cKb沈沈""娩α幼〃
"、〃ん加α"虎"@"はW"伽γ紬の言うA〃伽""g'の交流であろうユ7).c比虎"‐
""g'の極にあっては言語は〃g"9Fα"〃, 〃α92, soz〃またα6s〃α彫 であった.Wgj"伽〃はこのような言語の特質が人間的な現実に更に近接 する為には実在的諸条件を含有し,感情的に意志的に人間を触発し,その 行動を決定する要素を言語に求めてA"伽"噸と定義したのであろう.
肋""g'の極にあっては,上述の描写から進展して言語的諸表現はe"9 69gy'e"z#,'γ伽純,伽伽妨gノz々0"〃gオの相貌を呈する18)換言すれば表現 は狭窄され,精徹密度を高め,対個人的に照準され,尚歴史的現実的な状 況に適して具体的な内究の伝達となるのである. この「意味」から 「意 見」への進展はGeorgSソぴオノのBEgγと馳鹿〃""gの対極を前提と するものであった'9). K"γオB上z"""2γが述べるように比〃"噸は Wりγ雄ぴゆeγに結ばれている. <"gγ〃は多数の諸事実より抽象された概 念であって必ずしもWbγ雄ヴ""には関連しない20). この問題は必然的
にO"0"、αS"ノbgieと馳沈αS"ノbg形の対極に導かれるであろう21).
4.2. 既にこの問題は福本喜之助博士の紹介によってHg"sSb伽αγz と馳加伽G伽gγの@H@"肋"c〃において解明されているので本稿にお いては言及を控えたいと思う.唯この対極は果して「言語」に具現されな い「思惟」が存在し得るか否かというdeSb"ss"γg‑Z,. l恥加s伽の対立 を究明することになるであろう22).この時点において感知,思惟,作文か
ら著作に至る作家の言語活動を捕捉し得るであろうか.言語学者は冷たく観察するであろう, しかし個人的体験を「意味」の通じる(理解し得る)
表現によって公共の場に上場し, 自己の所属する言語集団の各成員に(借
在的に)呼びかけることが文芸活動であるとも言えよう.彼の発言は,或
いは誰にも聴取されないかも知れない.多くの文学作品が読まれずに過ぎ
「
去って行く.他面,恐らく作者が夢想さえしなかったような時代と国境を
越えて彼の作品が賞玩され検討されるかも知れず,作者と読者の間の通信
の回路は通常のKり"、"、""焼α物〃に経験され得ない変則を含むことを無 視してはならない.通信の時間を話手と聞手が共有するものであるという原則は文学作品においては通用しないのである.従って作家は自身との通 信という内面化された時間的体験に沈潜して乃ガオsかo加を追う23).今 日の文献語学はこの作品を構成する文脈の流れを究明する装置を備えてい
る.
● ● ● ● ● ● ● ●
4.3. 巨視的な文献語学においては,語の配置による文という次元の 砂"オではなく,文の積集による話の展開という高次の刀"卿αg
加α雌が究明されている.作品の或る箇所において話の流れを決定する要 素群が分析される.前述の部分と同質な連続と延長に対して異和感を与える逸脱と断絶は特殊な効果を可能にする. そして'Kb"オg〃オeγ"α伽"
た0"オγα,Kb"γ〃たγ加伽α肋",' 'I30""' "o"かα 伽加"gγ"e"Z"といった 対立が〃"αγオ""93e69"gの舞台の上で話の流れを演出してゆくものである 24).殊に不調和,逸脱の諸現象に関しては71年の秋季及び72年の春季の筆
者の日本独文学会における研究発表に述べた所であり,今回は重復を避けたいと思う.W""""γ魂のfZ"eSg""城g馳弛〃"ge"'に代表されるFeld‑
theorieの肋"97'"e"gJは上記の期待の次元における文脈の流れを対象とす
る程,巨視的に操作されるまでに展開されている.近年の意味論領域の諸
業績が個別的に或いは体系的に文献語学にとり入れられて行く様相は, こ
の若いDis鋤加の抱える多くの課題に多彩な照射を投げているのである.
Zur dichotomischen Betrachtungen in der Textlinguistik
Nobuhiro Hirakawa In diesem kleinen Aufsatz wird die Textlinguistik unter einigen dichotomischen Gesichtspunkten betrachtet. Seit Ferdinand de Saussure, wohl nachdem Wilhelm von Humboldt „energeia"
kontra „ergon" in einer Polarität gegenübergestellt hatte, dem modernen Strukturalismus seine mathematisch-logischen Grund- züge gegeben hat, dürfte nun bei der Betrachtung menschlicher Sprachen, bei den Forschungsmethoden verschiedenster Art der eine Aspekt Ausgangspunkt sein ; Ordinate und Abszisse kreuzen sich jeweils auf einer spezifischen Ebene. De Saussure's „Diachro- nie", um nur ein Beispiel hier anzugeben, vertritt seine Ordinate, die in seiner „Synchronie" ihre Abszisse findet. Auf diese Weise könnte die verwirrende Vielfalt des sprachwissenschaftlichen Vorgehens bei Literaturwerken bzw. sonstigen Textinhalten mit g~meinsamen oder wenigstens ähnlichen Merkmalen innerhalb der bipolaren Logik leichter zu Übersichtlichkeit gebracht werden.
Einige Literaturquellen, denen ich wesentliche Klärung meines Standpunkts verdanke, werden im folgenden aufgeführt.
5. 1.
Verlag Verzeichnisnummer u.-titel Verfasser bzw. Herausgeber 1972 Athenäum
71 w.o.
w.o.
Wilhelm Fink w.o.
1
2 4
5 6
Literaturwissenschaft u. J. Ihwe Linguistik Bd 3
w.o. Bd 2 (1-2) w.o.
Linguistik u. natürliche Logik G. Lakoff (übersetzt)
Beiträge zur Textlinguistik W-D. Stempel Strurktuelle Semantik u. H. Geckeler Wortfeldtheorie
-136-
w.o. 7 Internationale Bibliothek E. Coseriu für Allgemeine Linguistik Bd12
(S. Saumjan : Strukturale Linguistik)
Max Niemeyer 8 Walther von Wartburg K. Baldinger Schwann 9 Die deutsche Sprache H. Brinkmann
(Gestalt u. Leistung)
W. Kohlhammer 10 Tempus (Besprochene u. H. Weinrich erzählte Welt)
70 w.o. 11 Sprachstadium u. H-H. Lieb
Sprachsystem
C.H. Beck 12 Der deutsche Sprachbau W. Admoni Max Hueber 13 Linguistische Reihe 3 K. Baumgärtner
(G. Stötzel: Ausdrucksseite P. v. Polenz u. Inhaltsseite der Sprache) Hugo Steger Friedr. Vieweg 14 Schriften zur Linguistik Bd 1 P. Hartmann
(G. Stickel: Untersuchungen zur Negation im heut. Deutsch)
Lambert-Schneider 15 Linguistik der Lüge H. Weinrich
Schwann 16 Der deutsche Satz H. Glinz
68 w.o. 17 Sprache der Gegenwart H. Moser Jahrbuch 66/67
(Sprachnorm, -pflege, -kritik)
Univ. Texas 18 Directions for Historical Y. Maikiel Linguistics (W. P. Lehmann:
Saussure's Dichotomy) 67 Johns Hopkins 19 Modern Language Note vol 82
No.5 (E. Donato : Of Structuralism
& Literature)
66 Harper & Row 20 Cartesian Linguistics N. Chomsky 65 A. Francke 21 Romanica Helvetica vol. 6 J. Jud
(K. Jaberg: Sprachwissenschaft- A. Steiger liehe Forschungen u. Erlebnisse)
57 Springer 22 Das Wahrheitsproblem u. die W. Stegmüller Idee der Semantik
49 International 23 Science & Sanity A. Korzybsky Non-Aristotelian
Library
-137-
46 Prentice Hall 24 Signs, Language & Behavior C. Morris
5. 2. Anmerkungen (s. das obige Quellenverzeichnis für VN) 1. Verzeichnis Nummer (VN) 18 S.3-20. (Lehmann 1968) 2. VN 1 S. 8 (Ihwe 1972)
3. a. a. 0.
4. Hans Glinz: Worttheorie auf strukturalischer u. inhaltbezogener Grund- lage. In : Proceedings of the Ninth International Congrress of Linguists
(Cambridge/Mass. 1962) The Hague 1964, pp. 1060
Ziele u. Arbeitsweisen der modernen Grammatik. In: Archiv für das Studium der neueren Sprachen u. Literaturen, 1963, 3. pp. 172 5. VN. 23 S. 323 ff. (Ihwe 1971) (Jakobson 1956)
6. · VN 1 S. 120 ff. (Ihwe 1972) (Todorov 1964) 7. VN 21S.137 (Jaberg 1917)
8. VN 21 S. 143 (w. o.)
9. VN 23 S. 334 ff. (Ihwe 1971) (Lieb 1967)
10. Festschrift für Hugo Moser, Schwann, 1969 S. 224 (Mario Wandruszka) 11. Stephen Ullmann : Semantics, Basil Blackwell, 1967 S. 22-23
12. VN 10 S. 303 (Weinrich 1971) 13. VN 17 S. 98-99 (Moser 1968) 14. VN 5S. 288 (Stempel 1971)
15. VN 10 S. 95 VN 15 S. 31 (Weinrich 1970-71) 16. VN9 S. 728 (Brinkmann 1971)
17. VN 15 S. 20 (Weinrich 1970) 18. VN 15 S. 16-21 (w. o.) 19. VN 13 S. 3& (Stötzel 1970) 20. VN 13 S. 37 (w. o.) 21. VN 13 S. 55 ff. (w. o.) 22. VN 13 S. 34-35 (w. o.) 23. VN 5 S. 48 (Stempel 1971) 24. VN 5 S. 255 (w. o.)
-138-