はじめに
第1章 労働者年金保険法の創設から国年創設前まで
第1節 船員保険法と労働者年金保険法における障害年金の目的 第2節 障害の程度表
第1款 廃疾程度表 第2款 程度表の成り立ち 第3款 程度表の改正 第3節 実際の認定と認定基準 第1款 1953年認定基準策定前 第2款 1953年肺結核認定基準等 第3款 1955年認定基準等 第4款 1958年認定基準 第5款 労働能力減退率 第4節 小括
第2章 国年の障害年金創設
第1節 国年法創設の目的 (以上、本誌176号)
第2節 包括条項を除く等級表 第3節 包括条項
第1款 対象障害と包括条項の規定経緯 第2款 「日常生活能力」採用理由 第4節 小括
第3章 2つの障害年金─国年と厚年 第1節 国年の障害認定の変遷 第1款 創設時認定基準等
第2款 1966年までの法別表等の改正 第3款 病状判定
第4款 障害等級調整問題研究会報告 第5款 1966年認定基準等
第6款 1979年認定基準等 第7款 総合認定 第8款 実地調査
障害年金における等級認定(2)
─その歴史的変遷─
安 部 敬 太
第 2 節 包括条項を除く等級表
医師である障害等級委員6名により、1958年11月29日に初会合が開かれ、
障害等級表が同年12月18日に答申された。同日、座長は「主として厚生年金 保険制度と身体障害者福祉制度の障害等級表を参考にして両者の比較考量を 行い、各種障害を逐次吟味してその軽量(ママ)を判定し、障害種類別に等 級の配列を行った。特に聴覚障害の取扱、音声言語機能障害の取扱及び肢体 不自由の取扱については慎重審議を行い、その配列には充分に公平を期し た」と述べた(72)。等級表のうち包括条項を除く障害事項については、若干の補 正がなされ(73)、1959年4月に国年法が成立する。
等級表である法別表のうち、包括条項を除く、外部障害に関する各号を、
1954年9月身体障害者福祉法施行規則(以下「身障則」)別表5号の2および
1954年厚年法別表に照らしてみていく。まず、国年1級①(以下、国年の
「号」を表す)〜⑧は、「⑤両上肢のすべての指の機能に著しい障害」を除い 第2節 厚年の障害認定の変遷
第1款 1961年認定基準
第1項 基準の概要 (以上、本号)
第2項 実際の認定 第2款 1977年認定基準等 第3款 1979年認定基準等 第3節 小括
第4章 基礎年金創設
第1節 1985年改正までの経緯 第2節 1986年認定基準等 第3節 小括
第5章 基礎年金創設後から現在まで 第1節 2002年認定基準
第2節 精神障害と就労 第3節 その他の認定基準改正等 第4節 小括
おわりに
て、身障則に依拠しているものと捉えられる。「①両眼の視力の和が0.04以 下」、「②両耳の聴力損失(74)が90デシベル以上」、「③両上肢の機能に著しい障 害」、「④両上肢のすべての指を欠く」および「⑥両下肢の機能に著しい障 害」は身障則2級に同一の障害事項が存在する。「⑦両下肢を足関節以上で 欠く」は制定後の認定基準(75)によれば、身障則3級「両下肢をショパー関節以 上で欠く」と同一の障害を指し、「⑧体幹の機能にすわっていることができ ない程度または立ち上がることのできない程度」は身障則1級「体幹の機能 障害により座っていることができないもの」を含む内容である。厚年法と は、「⑦両下肢を足関節以上で欠く」が同一で、「②両耳の聴力損失が90デシ ベル以上」が厚年2級「両耳の聴力が耳殻に接して大声による話をしてもこ れを解することができない程度」に(後に作成された厚年認定基準(76)も含めれば)
該当し、「⑤両上肢のすべての指の機能に著しい障害」が、厚年2級「両上 肢のすべての指の用を廃したもの」よりも軽めの規定となっている点に関連 性がみられる程度である。次に、国年2級①〜⑭も、「④咀嚼の機能を欠く(77)」 および「⑬一下肢を足関節以上で欠く(78)」を除いて、身障則に依拠しているも のと考えられる。「①両眼の視力の和が0.05以上0.08以下」、「②両耳の聴力損 失が80デシベル以上」、「③平衡機能の著しい障害」、「⑤音声または言語機能 に著しい障害」、「⑧一上肢の機能に著しい障害」、「⑨一上肢のすべての指を 欠く」、「⑪両下肢のすべての指を欠く」および「⑫一下肢の機能に著しい障 害」が、身障則3級または4級に同一の障害事項が存在する。「⑥両上肢の おや指及びひとさし指又は中指を欠く」は身障則3級「両上肢のおや指及び ひとさし指を欠く」を含む。「⑩一上肢のすべての指の機能に著しい障害」
は身障則4級「おや指又はひとさし指を含めて一上肢の四指の機能の著しい 障害」に比して、「⑭体幹の機能に歩くことができない程度」は身障則3級
「体幹の機能障害により歩行が困難」に比して、それぞれ一定重く、「⑦両上 肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害」は身障則3級「両 上肢のおや指及びひとさし指の機能を全廃」よりも一定軽めの規定となって いる。厚年法とは、「⑪両下肢のすべての指を欠く」および「⑬一下肢を足
関節以上で欠く」が厚年2級と同一で、「④咀嚼の機能を欠く」が厚年2級
「咀嚼または言語機能を廃したもの」と、「⑤音声または言語機能に著しい障 害」が厚年3級「咀嚼または言語機能に著しい障害」と重なるほかは、「② 両耳の聴力損失が80デシベル以上」に対して厚年3級は「両耳の聴力が 40cm以上では通常の話声を解することができない程度」(79)である等、相違の ある事項が目立つ。すなわち、国年の障害等級表は、厚年法に比して身障則 との相関が強く、先行していた同じ公的年金制度の等級認定よりも、身体障 害者福祉法の等級認定を重視して策定されたといえる。
また、2級は厚年3級に近づいている。上記のとおり2級⑤が厚年3級に 重なるほか、2級「⑩一上肢のすべての指の機能に著しい障害」は、厚年2 級「両上肢のすべての指の用を廃したもの」および「一上肢を腕関節(手関 節の意 ※筆者注)以上で失つたもの」ならびに同3級「おや指及びひとさ し指をあわせ一上肢の四指の用を廃したもの」に照らすと、厚年3級に近い といえよう。
第 3 節 包括条項
第 1 款 対象障害と包括条項の規定経緯
社会保障制度審議会は、1958年6月の答申で、障害年金について「障害の 種類には、外部障害と内部障害とを含めるし、疾病の種類は制限しないが、
その疾病に対する医療効果が、その症状の改善に寄与することが期待できな い完全な固定状態になったのちに年金を支給する」とし「障害の程度は、そ の症状が常時介護を要する状態にあるか否かによって区分」する(80)とした。こ れは厚年1級程度の障害が完全に症状固定となった(廃疾となった)場合だ けを対象とするという内容だった。
一方、1958年9月24日の厚生省第一次案(81)は、拠出制の障害年金について、
厚年1級または2級程度の障害を対象にする(82)とし、その等級表において、具 体的な障害事項を列記した1級①〜⑤および2級①〜⑫は厚年法別表の1級 および2級と同一であり、包括条項も、1級⑥「前各号に掲げるもののほ
か、身体の機能に労働することを不能ならしめ、かつ、常時の介護を必要と する程度の障害を有するもの」および2級⑬「前各号に掲げるもののほか、
身体の機能に労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加える ことを必要とする程度の障害を有するもの」とされ、精神障害を除いている ものの、労働能力の程度を規定する厚年1級および2級の包括条項と同じ内 容であった。そして、等級表の欄外に「別案」として「(1)内部障害につ いては、精神障害を加えるものとする。」と「(2)内部障害については、精 神障害のほか、結核性疾患も除くものとする。」との2案が記され、この段 階では、拠出制については、内部障害を対象にする可能性があった。なお、
無拠出制の障害年金(成立した法では障害福祉年金)については厚年1級のう ち外部障害の全事項(別表1の1級①〜⑥)を対象とした。
同年9月29日には、上記の併記の部分に関しては「精神障害を除く」とし
(83)た
。これは、初診日が明らかにし難いこと、障害の固定する時期も認定し難 い等が理由であった(84)。続いて、内部障害についても、㋐症状が治ったという 判定が困難であること、㋑症状が固定しなくとも、障害の状態が固定した場 合には年金を支給すべきものである(厚年は治療後3年で支給対象としている)
ことおよび㋒「内部障害を含めると、支給対象者が厖大な数にのぼるので、
年金額を引き下げるか、保険料を引き上げる必要が生じてくる。ちなみに厚 生年金保険の実績によると、結核等内科的疾患による障害年金受給者は外科 的疾患に基づく障害年金受給者の十倍となっている。従って、将来国民皆保 険が実現し、医療内容が向上することによって、右のような困難性が相当程 度緩和されると思われるので、その時期に至ったならば、改めて検討する」(85)
との3点により、支給対象から除かれた。
同年12月18日、障害等級委員が答申した等級表は、包括条項を、厚生省第 一次案どおり、1級「…身体の機能に労働することを不能ならしめ、かつ、
常時の介護を必要とする程度の障害…」、2級「…身体の機能に労働が高度 の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度の 障害…」としていた(86)。にもかかわらず、約1か月半後の1959年2月4日に国
会に提出された法案では、1級が「前各号に掲げるもののほか、これらと同 程度以上と認められる身体障害であつて、日常生活の用を弁ずることを不能 ならしめる程度のもの(内科的疾患に基く身体障害であつて、前各号のいずれに も該当しないものを除く。)」に、2級が「前各号に掲げるもののほか、これら と同程度以上と認められる身体障害であつて、日常生活に著しい制限を加え ることを必要とする程度のもの(内科的疾患に基く身体障害であつて、前各号 のいずれにも該当しないものを除く。)」に変わっていた。
第 2 款 「日常生活能力」採用理由
障害年金の認定尺度を、法案提出直前に労働能力から日常生活能力に変え たのはなぜなのか。国は、1959年4月の法成立後に、日常生活能力(社会人 として平均的な環境のもとにおいて日々の生活を他人の力に頼ることなく送れる 能力)を尺度としたのは、国年は被保険者を被用者ではない一般国民とした ためであると説明している(87)。国は「障害年金や障害福祉年金は、被保険者等 が廃疾となって、ⓐ日常生活の用を弁ずることができなくなったり、あるい は、日常生活に著しい制限を受けたりして、ⓑ所得活動が制限された場合 に、その生活の安定が損われることを防止する目的で設けられた給付である ので、ⓒ廃疾の状態が一定の程度以上であること、その廃疾の状態が医学的 見地からみて永続するものであることが受給権取得の最も大きな条件となっ ている。」(記号付記は引用者)ともいう(88)。しかし、ⓐとⓑとの連関が問題と なる。日常生活の制限があるからといって、それと同程度の所得活動の制限 を受けるとは限らず、日常生活はできても、所得活動が不能な場合があるた め、日常生活能力(ⓐ)により、廃疾の程度(ⓒ)を認定することは、所得 活動の制限による生活破壊の防止という目的(ⓑ)にそぐわない場合があり うる。
確かに国年は障害の原因となった疾病や負傷を負った時には就労していな かった人を被保険者として多く含む。国年法制定から数年以内の時期に、厚 年は賠償の意味を含んでいるという障害等級委員の論説(89)や厚年は損害補償で ある労災と所得保障である国年という二つの制度の目的を包含した中間的制
度であるという厚生省官僚の説明(90)がある。これらは、厚年が労災法と近い位 置にあり(1章)、業務外であっても被用者期間に生じた傷病に起因する障 害についての事業主による一定の補償が厚年法の立法趣旨に含まれていると 解されていたことによるものであろう。無業者を対象とする国年はそのよう な厚年と区別をするために、認定尺度を厚年の労働能力から日常生活能力に 言い換えた可能性がある。これは国の事後的な説明につながるものである。
しかし、国年法制定を主導した小山が説明した、障害による所得の喪失に 対する所得保障という法目的は明確であった(本章1節)。そして、当初案 のように、被保険者が無業者であっても、この目的からすれば、稼得能力ま たはその基礎となる労働能力を認定尺度とすることにこそ整合性があったの ではないか。この目的に日常生活能力尺度が適うとすれば、日常生活能力が なければ当然に稼得能力もないという理由付け以外には考え難いものの、こ こで問われるのは、「日常生活はできるけれども、稼ぐことができない場合」
に支給対象とするのかどうか、という点であり、ここで制度目的との整合性 が問われうる。にもかかわらず、当初案の労働能力を、あえて日常生活能力 に変更したのにはそうしなければならない相応の理由があった、と考えるほ かないのではないだろうか。
理由として考えられるのは、厚年に比して、内部障害と精神障害について は対象を絞ろうとした、つまり「日常生活はできるけれども、稼ぐことがで きない場合」は対象としないということだったのではないか。法公布の1年 後に作られた2級の認定基準(91)の一般的事項には、「2級障害とは、日常生活 に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害、即ち、日常生活におい て高度の制約となる障害であって、他人の助けをかりる必要はないが、日常 の生活は極めて困難で、労働によりその収入を得ることができない程度の障 害をいう」とある。「労働によりその収入を得ることができない程度」は、
厚年2級の「高度の労働制限(労働能力7割喪失)」より重度である。さらに
「日常生活において高度の制約となる障害であって、他人の助けをかりる必 要はないが、日常の生活は極めて困難」とは、身辺処理に通常人の何倍もの
時間を要するような状態であろう。高度の制約(厚年は「制限」)の対象は、
厚年の労働能力から日常生活に置き換えられ、労働不能は当然で、それより 重度の身辺処理が極めて困難な状態を2級とするというのである(92)。社会保障 制度審議会答申が「日常生活の自用を弁ずることができない」全介護状態の 者だけを対象としたのに対して、それより一段対象を広げ、「日常生活の著 しい障害」までも2級の対象としたとされている(93)。しかし、それは同時に、
包括条項が適用される障害については、厚年2級(高度な労働制限)までに は対象を広げないということだったのではないか。前款のとおり、厚年では 結核等内部疾患による障害年金受給者が外科的疾患受給者の10倍となってい ることをにらみ、等級表のうち、給付対象者が内部障害に比して少数である と予想される外部障害の機能障害は厚年2級より範囲を広げ規定した一方 で、将来対象としたときに受給者が膨大となると見込まれる内部障害および 精神障害について、財政的理由で、厚年2級(高度な労働制限)よりも対象 を絞ろうとしたために、別表に列記した外部障害以外を認定する包括条項に おいて、制定時に日常生活能力尺度を採用した可能性があると考える(94)(95)。
第 4 節 小括
国民皆年金の名のもとに創設された国年は、外部障害については、「身体 障害者の更生の援助と更生のために必要な保護」(当時の身体障害者福祉法1 条)の度合いを区分する身体障害者福祉法を重視して等級表を策定した。こ の点、障害による稼得能力喪失への所得保障という国の説明する制度目的と の整合性が問われうる。包括条項については、法案提出の1か月半前までは 厚年と同様の労働能力を認定尺度としていたものの、法案段階で日常生活能 力を採用した。法案審議過程において、どうして労働能力ではなく、日常生 活能力を採用したのかについての説明はなされなかった。国の説明する制度 目的との整合性が問われうる認定は、客観的に明示可能な機能障害を重視す る認定とともに、国年創設時における日常生活能力尺度の採用によってもた らされたものと考えられる。
第 3 章 2 つの障害年金─国年と厚年
国年と厚年という2つの障害年金について、1985年改正前までの変遷をた どる。
第 1 節 国年の障害認定の変遷 第 1 款 創設時認定基準等
対象を外部障害に限った国年創設時の認定基準(96)と診断書様式について、要 点を挙げる。
第一に、国年創設時の2級認定基準の一般的事項には、前章3節2款でみ た「日常の生活は極めて困難で、労働によりその収入を得ることができない 程度」との記載に続けて、「なお、厚生年金法による障害級の2級及び3級 及び身体障害者福祉法による障害等級3級及び4級がほぼ法別表2級に相当 する」とある。「労働によりその収入を得ることができない程度」という記 載は、日常生活に著しい制限があれば、通常は労働不能であろうという当時 の時代背景があったであろう(97)。また、国年2級の範囲を厚年3級までとして いるのは制定時、対象が外部障害だけであったことを前提としたものと思わ れる。すべての傷病が対象となった1966年認定基準ではこの記載は削除され た。
第二に、認定基準は、視力、聴力、平衡機能、咀嚼、音声・言語、上肢、
下肢および体幹の各部位別に記載されている。検査数値が明示されている視 力や聴力は検査方法について記され、肢体の一部を「欠くもの」については どの関節から欠く状態なのか(98)という記載がある。また、法別表において「著 しい障害を有するもの」等の抽象的な規定が含まれる、1級では③両上肢、
⑥両下肢等、2級では⑧一上肢、⑫一下肢等に関しては、具体的にその内容 を記載している。たとえば、1級「③両上肢の機能に著しい障害を有するも の」とは、両上肢の肩、肘および手の3大関節中いずれか2関節以上が用を
廃する程度(99)であり、「関節が用を廃する程度」とは不良肢位で強直、関節運 動の自動統御が不能、「関節他動範囲が管理的運動領域の2分の1以下に制 限かつ筋力半減」または筋力が著減等の場合をいうとされ、日常生活動作と の関係は、上肢装具等の補助具を使用しない状態で、日常生活において、
「かぶりシヤツをきたり、ぬいだりする」、「顔を洗ったり、化粧をしたり、
髪を洗う」等の動作を行うことができないものであるとする。また、この認 定基準により、国年2級「⑧一上肢の機能に著しい障害を有するもの」は、
一上肢の3大関節中いずれか2関節以上が用を廃する程度であるとされ、厚 年法3級「⑤一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と文理上 は同一の内容であることが示された。これは一下肢障害の2級⑫も同様であ った。
第三に、2級認定基準は、包括条項である法別表2級「⑮日常生活に著し い制限を加えることを必要とする程度のもの(内科的疾患に基く身体障害であ つて、前各号のいずれにも該当しないものを除く。)」について、「法別表2級の 第1号から第14号までに該当するような障害がない場合であつても、総体的 に身体に日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害がある ものをいう…障害の程度が日常生活に著しい制限を加えることを必要とする 程度のものであるかどうかは、実際に日常生活上の動作4 4を行なわせて認定す べきである」(傍点引用者)(100)とする。1級認定基準でも、包括条項⑨について
「実際に日常生活上の動作を行わせて認定すべきである」とした。国は外部 障害のみを対象とした創設時、包括条項の「日常生活」を「日常生活動作」
と解し、包括条項に基づく判定は、実際に動作を行わせて認定(後述8款)
すべきという基準を策定した。
第四に、診断書様式の変遷は次のとおりである。1959年11月にまず給付が 始まった障害福祉年金の診断書様式は福祉年金支給規則(以下「福年則」)に 定められ、様式は「視覚・聴覚障害用」と「肢体不自由用」の2様式であっ た。1961年に、同規則の改正により、診断書様式は「視覚障害用」、「聴力・
平衡機能・咀嚼機能・音声言語機能障害用」および「肢体不自由用」の3様
式になった。視覚障害には視野の記載欄が、聴力障害には語音明瞭度欄が、
肢体不自由には上下肢の各3大関節についての関節可動域の記載欄が加わっ た。記載欄の追加は、1961年の国年法改正(30条2項)により、20歳前また は1960年4月1日前の障害と一定の程度に該当する後発障害とを併合して2 級以上となれば支給対象とされた(後述7款)ことから、後発障害の程度を 判定するために設けられた。1962年4月、拠出制の障害年金の給付が始ま り、国年法施行規則(以下「国年則」)に福年則と同様の3様式が規定され る。これ以後、無拠出制と拠出制の診断書様式は同一となる。
第 2 款 1966年までの法別表等の改正
国年法成立時の「障害年金及び障害福祉年金は、内科的疾患に基く障害者 並びに精神障害者にも適用すること。」との国会の付帯決議(101)に則り、法別表 の改正が行われていく。1964年8月に「結核性疾患による機能障害(非結核 性疾患による呼吸器の機能障害を含む)または病状」および「精神の障害(精 神病質、神経症及び精神薄弱によるものを除く)」が、1965年8月に「精神病 質、神経症及び精神薄弱によるものを除く」が削除され精神障害すべてが、
1966年12月にすべての傷病が、国年の対象とされることになる(102)。診断書様式 については、1964年に結核等の呼吸器障害と精神障害が認定の対象とされた ことで、国年則および福年則に「結核及び換気機能障害用」(次款)と「精 神障害用」の様式が追加され、計5様式となる。
第 3 款 病状判定
1964年に、内部障害(結核性疾患およびそれ以外の呼吸器の機能障害)を初 めて給付対象としたときに、2級⑮は「身体の機能の障害又は長期にわたる 安静を必要とする病状が、前各号と同程度以上と認められる状態であつて、
日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えること を必要とする程度のもの」と規定した。この規定は、「身体の機能の障害」
が「日常生活が著しい制限を受ける」か、または「長期にわたる安静を必要 とする病状」が「日常生活に著しい制限を加えることを必要とする」かのど ちらかに該当すれば2級と認定する、すなわち、機能判定と病状判定のどち
らかでみるとの趣旨である(103)と説明されている。具体的には以下である。
等級表改正に関わった呼吸器科医師は「一つの柱は…働く意思があっても 機能障害のため働けない人であり、他の一つの柱は、働いてはいけない人、
すなわち、働こうと思えば働けるのだが、病勢(病状と同義と考えられる※引 用者注)判定で、働いては、本人の生命維持上、または社会衛生上つごうが 悪い人である。」(104)、「肺機能が相当おかされていて『日常生活に著しい制限を 受けている』者か、病勢の方から考えて『日常生活に著しい制限を加えるこ とが必要である』というようなものが2級となる」という2本立てである(105)と し、「病気がなおらず、空洞があり菌がでていると、たとえ呼吸機能は普通 であっても、そのために体を動かすわけにはいかない。動かすと悪くなる。
そういう状態に対して、国民年金が考えられることになった」(106)、「心肺機能が 悪くなくても、大きな空洞をもっていて、菌をだしているため、世の中にで てはいけない人、そういうような人は、病状の方で考えて年金の対象とす
(107)る」
という。すなわち、肺機能が低下している人のほか、病状判定で、働こ うと思えば働けるが生命維持のため働いてはいけない人や排菌があるために 社会参加ができない人等も、年金の支給対象とする(108)ということであり、社会 参加制約を含めた全般的能力障害により等級を認定しようとしたといえよ う。
ただし、病状判定においても、医学的に確認可能な客観的根拠を求めた。
法改正に伴い追加された結核及び換気機能障害用診断書様式は「機能判定に よる廃疾認定」欄と「病状判定による廃疾認定」欄に区分けされ(109)、前者に、
身体計測(身長、体重)、「活動能力(生活能力)の程度」(110)、胸部X線所見(胸 膜癒着、気腫化、繊維化、不透明肺等)および換気機能(%肺活量、1秒率等)
の記載欄が、後者に、胸部X線所見(学会分類〔1979年国年則および福年則で は「病巣の性状」〕、病巣の拡がり等)、結核菌検査成績(排菌の有無)、自覚症 状(栄養状態、脈拍数、呼吸数、検尿、血圧、胸痛、せき、たん、ぜんめい)お よび安静度の記載欄があった。病状判定であっても、診断書に胸部X線所 見(学会分類、病巣の広がり)や排菌の有無という客観的所見を書かせたので
ある。認定基準の病状判定の項でも、等級ごとにこれら所見の程度を例示し
(111)た
。このことが、この後、認定実務上、病状判定と機能判定との区別が明確 でなくなっていく要因であったと考えられる。
第 4 款 障害等級調整問題研究会報告
国年法成立後に内部障害や精神障害の取り込みが図られる過程(本節2 款)のなかで、1964年1月、厚生大臣から「年金制度における障害等級の段 階区分と認定基準を再検討し、最近の医学の進歩をとり入れる」ことをテー マとする研究が医師による障害等級調整問題研究会に委嘱された(112)。
1966年8月、厚生大臣に提出された報告書は、「障害評価のあるべき姿は、
生理・解剖学的能力欠損(一次能力障害)と、稼得能力欠損(二次能力障害)
とを総合して評価すべきである」(113)とし、「まず臨床医学的に日常生活活動能 力の欠損状態を評価するとともに、社会経済的に職業的リハビリテーシヨン を経て改善された稼得能力について評価するということである。」と述べ(114)、 その後、一次能力(稼得に関係のない日常生活活動能力)の詳細な評価表が記 されている。
二次能力(稼得能力)評価については、「この評価は…代償機能を含めた 残存機能の総合的評価であり、その際の評価基準となるものは経済活動状態 ということになる。…一次能力は純粋に医学的に評価される身体状態であ り、二次能力は社会経済的に評価される身体状態であるといえる。そのた め、二次能力は身体の状態が基礎にはなるが、職業や教育的背景その地方の 労働事情(経済力、産業内容など)、当該者の努力などによっても影響をうけ る…一次能力の評価にあたって、その任務は医学に重点が存するが、二次能 力のそれは医学のみならず行政の参画が期待される…二次能力障害評価の方 が社会経済的背景のもとに評価する必要があり、問題がより錯そうしてくる ことは理解される。従来、稼得能力の欠損度に比例して所得保障を行なう建 前である年金制度においてさえ、一次能力の欠損度を測定する障害評価方法 をもって認定し、これに基づいて対象者の処遇を決定してきた…しかし、本 研究会が持たれた一つの理由は、その一次能力の欠損度をもつて稼得能力欠
損の所得保障措置を決定していたことが、実情に合わなくなってきつつある ところにある。…障害評価は一次能力障害評価と二次能力障害評価が不可分 の構成要素であ…る。…ただちに本研究会の報告を基礎に二次能力障害評価 の具体的検討が早急にはじめられることを期待する」(115)とした。医学により評 価される「稼得に関係のない日常生活活動能力」評価のみならず、稼得能力 による等級認定の必要性が明確に厚生大臣に答申されたのである。しかし、
この骨格部分はその後の政策立案に生かされず、日本の障害年金が稼得能力 を等級認定のもう一つの柱とする道へと歩みだすことはなかった。報告書の うち、日常生活活動能力との関係でその基本をまとめた「一次能力障害評価 基本表」と障害部位別の「一次能力障害部位別評価基準表」という一次能力 障害についての二つの評価表だけが採用された。1966年10月の「国民年金 障害等級認定基準」のうち、前者が一般的事項に反映され、後者が包括条項 が適用される障害別の認定基準に大きな影響を与えた(次款)。
第 5 款 1966年認定基準等
1966年10月、全ての傷病が国年の対象とされたことに伴い、厚年も含め、
初めて、種々の傷病・障害について網羅的に記載した認定基準(116)が発出され る。これは、「第1 一般的事項」と「第2 個別基準」から構成されてい る。この認定基準および診断書様式について、要点を述べる。
第一に、「第1一般的事項」の「日常生活能力の程度」において、2級は
「極めて温和な家庭内活動(軽い補食作り、ハンカチ程度の洗濯等)」以上がで きず、おおむね活動範囲が家屋内に限られるもの等との記載が初めて登場し
(117)た
。この障害の程度は、障害等級調整問題研究会報告(前款)の「一次能力 障害評価基本表」の中等度障害である3種「家庭内での日常生活活動が著し く障害されているもの」および4種「家庭内または家庭周辺での日常活動が 障害されているもの」に相応しているといえ、次に軽い5種「社会での日常 生活が著しく障害されているもの」は2級には該当しないとされたことにな る。4種の例示には「肺結核症のため、一定期間の治療でも治ゆせず、病巣 が不安定で、安静度4度の状態を続けなければならないもの」が挙げられて
(118)いる
。本節2款のとおり、創設時に外部障害だけを対象とした国年が、最初 に取り込んだ内部障害は1965年まで受療率が最も高かった結核(119)であった。そ の安静度4度は歩行について「室内のほか庭先ならば短時間はよい」とされ ていて、これと「活動範囲はおおむね家屋内に限られる」というこの「日常 生活能力の程度」の記載は重なる。上記の活動範囲の記述は当時、疾病障害 者の多くを占めていた結核の療養者を主にイメージして作られたものである ことがうかがえる(120)。
第二に、「第1 一般的事項」で、「障害の程度については、第2 『個別 基準』にもとづき認定するものであるが、切断等の場合を除いて認定の困難 な事例もあるので必要に応じ、照会・再診断・実地調査等を行なって必要な 資料を集め、適正に認定する」とされ、実地調査が記された(後述8款)。 第三に、「第2 個別基準」には、部位別、傷病別の基準が掲げられ、前 半で、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、咀嚼機能障害、音声又は言語機 能障害および肢体不自由(指の機能障害、上肢の機能障害、下肢の機能障害、
体幹の機能障害)という、法別表1級①〜⑧および2級①〜⑭に列記された 障害について具体的基準が記載され、後半で、包括条項が適用される、結核 性疾患、呼吸器の機能障害、精神障害、心機能障害、腎臓疾患、肝臓疾患、
血液疾患、その他の障害および総合認定についての各基準が記載されてい る。この後半は、障害等級調整問題研究会報告(前款)の「一次能力障害部 位別評価基準表」との関連性が明確で、結核性疾患、呼吸器の機能障害およ び血液疾患では同表が認定基準の基礎となっていると考えられ、精神障害、
心機能障害、腎臓疾患、肝臓疾患では、同表の内容がほぼそのまま認定基準 となっている。
第四に、後半の内部障害に関する基準のうち、結核性疾患、腎臓疾患、肝 臓疾患および血液疾患については、病状判定(本節3款)であると明記され た。いずれも㋐「病状の程度についての判定は廃疾認定日以後少なくとも1 年以上の療養を必要とし」に続けて、㋑結核性疾患については、排菌状態、
胸部X線所見、一般状態および理学的所見等により、㋒腎臓疾患、肝臓疾
患および血液疾患については、各疾患の臨床症状、検査成績、一般状態およ び治療・病状経過等により、㋓それぞれ「安静度表の1度又は2度のものを 法別表1級に、3度又は4度のものを法別表2級に該当するものとする」と 安静度と等級認定との関係が示されたうえで、㋔各等級の検査成績および異 常所見等が記載された。一方、心機能障害については、心機能障害の判定で あるとされたうえで、上記㋐および㋒〜㋔の構成は同様であったものの、㋓
では安静度に代わって5段階の心臓病重症度区分表(121)が示され、重症度5また は4が1級に、重症度3が2級に該当するとされ、㋔では各等級についての
「病状」の例として、検査成績や異常所見等が記載された。また、「呼吸器の 機能障害」は機能障害判定であるとされたうえで、%肺活量と1秒率による とされ、各等級の数値が記された。
第五に、精神障害については、一般的事項として、日常生活の用を弁ずる ことを不能ならしめる程度のものが1級に、日常生活が著しい制限を受ける か、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものが2級 に該当するとされ、かつ、精神疾患(障害)ごとに疾患・障害の特性と「病 状」が、たとえば、精神分裂病による2級は「欠陥状態又は病状があるた め、人格崩壊、思考障害、その他もう想、幻覚等の異常体験があるもの」等 と記載された。また、本節2款のとおり、1965年8月、法別表上は「精神病 質、神経症及び精神薄弱によるものを除く」が削除されたものの、この認定 基準には、厚年の1961年認定基準(次節1款)と同様に「精神病質及び神経 症については、原則として、法別表に定める障害の状態に該当しないものと する」との記載がなされた。この点は、神経症等の除外規定を削除した法に 反するとの指摘がなされうる。
第六に、診断書様式については、1966年にすべての傷病が対象とされたの に伴い、国年則および福年則が改正され、「心臓・腎臓・肝臓・血液疾患及 びその他の障害用」様式が追加され計6様式となり、同様式において、前述 の認定基準の記載を受けて、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患の記載箇所には 安静度の評価欄が、心臓疾患の記載箇所には認定基準にある「活動能力の程
度」の評価欄がそれぞれ設けられた。また、「精神の障害用」様式に「日常 生活能力の程度」という選択式評価欄(122)が加えられた。この後、1969年の国年 則および福年則改正により、「精神の障害用」様式に、日常生活における8 つの場面についての選択式評価である「日常生活能力の判定」欄(123)が追加され た。
第 6 款 1979年認定基準等
1979年に認定基準が改正される(124)。診断書様式も含め、以下、改正点を述べ ていく。
第一に、機能障害で認定する「呼吸器疾患のうち非結核性疾患」を除く、
呼吸器疾患のうち結核性疾患(125)、心臓疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液・造血 器疾患および「『その他の障害』のうち疾患によるもの」については、「病状 の程度についての判定」(本節3款)であることが、1966年と同様に記載さ れ、心臓疾患については心臓疾患重症度区分表の評価と等級との関係に変化 はなかったものの、それ以外の疾患については変更があった。結核性疾患に ついては、「医学の進歩に伴い、安静度により認定を行うのは、妥当性に欠 けるため」(126)との理由で、「安静度表…3度又は4度に該当するものは2級に おおむね相当4 4 4 4 4 4するので、認定にあたって参考資料として用いる4 4 4 4 4 4 4 4 4 4」(傍点引用 者)とされた。腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患およびその他の障害につ いては、安静度に替えて、全般的能力障害を5段階で評価する一般状態区分
(127)表
が初めて採用され、「軽労働はできない」または「自力では外出はほぼ不 可能となった」ものが「2級におおむね相当するので…参考資料として用い る」とされた。認定基準改正に合わせ、国による認定の解説書である1968年 の『障害等級の認定指針』における「病状判定」の解説が、「廃疾の原因と なる疾病に医学的治療を施こしているにもかかわらず、治ゆせず、本人の生 命維持上又は社会衛生上引続き療養の必要性が認められる場合のその疾病に 基づく病状障害について、法別表に該当する程度の廃疾の状態にあるかどう かを、臨床所見、諸検査成績、一般状態、治療及び病状の経過等を勘案して4 4 4 4 課せられる安静度によって4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4認定する判定方法をいう」(58頁、傍点引用者)か
ら、認定基準改正後の1981年の同書においては、傍点部分について「勘案 し、一般状態区分表を参考として」(49頁)に改訂された(128)。安静度と一般状 態区分はともに全般的能力評価と解され、それに依拠する認定から参考とす る認定に変ったのである。
第二に、特に内部障害について、1977年厚年認定基準(次節2款)を受け て、改正された点があった。呼吸器疾患のうち、「結核性疾患」(病状の程度 についての判定)については1966年認定基準から変更はなかった(2級は厚年 よりも緩めの基準があった(129))一方で、「非結核性疾患」(機能障害の程度につい ての判定)の基準は1977年厚年基準をそのまま採用し、それに動脈血ガス分 析値を加えた。腎臓疾患についても、異常検査数値は1977年厚年基準がその まま採用された。血液疾患は、厚年と同様に難治性貧血群、出血傾向群およ び造血器腫瘍群の3つに分類された。等級は明示されなかったとはいえ、人 工肛門および人工膀胱等ならびに難病に関する「その他の障害」基準が厚年 と同様に設けられた。しかし、なおも、厚年の認定基準とは、心臓疾患に関 する客観的重症度の基準に大きな相違があったほか、なにより厚年にはある 代謝疾患(糖尿病)、悪性新生物および高血圧ならびに外部障害のうち「肢 体の機能の障害」については基準を設定しなかった。
第三に、診断書様式は認定基準に連動して、「心臓・腎臓・肝臓・血液・
造血器疾患及びその他の障害用」様式において、安静度の評価欄に替えて、
一般状態区分欄が設けられ、「腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、その他 の障害」の各欄に記載する場合には、この一般状態区分(5段階)の評価選 択が指示された。結核および換気機能障害用の様式にだけは、結核に関する 安静度評価欄が残された。また、同様式の機能判定に動脈血ガス分析値欄が 加えられた。
第 7 款 総合認定
「総合認定」(130)はⓐ同一事故に基づく2以上の部位による障害を認定する場 合、ⓑ経過的に障害福祉年金を支給し、かつ2以上の障害(別傷病による障 害の場合を含む)を認定する場合(131)、およびⓒ併合認定で前後の廃疾の状態を
合わせて認定する場合(132)に、法別表1級⑪および2級⑰(両号ともに「身体の 機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前 各号と同程度以上と認められる程度のもの」)に基づいて行われる認定であり、
㋐2級に該当する程度の機能障害(内部障害による機能障害並びに精神の障害 を含む。以下同じ。)が2以上あるときは1級、㋑病状と機能障害が重複する 場合又は病状が重複する場合には、単純に合算せずいずれか重度の障害の程 度によるものとし、その状態が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめ る程度のものであるときは1級、および㋒機能障害又は病状が重複する場合
(前記㋐の場合を除く。)において、その状態が日常生活が著しい制限を受け るか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものである ときは2級に、それぞれ該当するとされた(133)。内部障害および精神障害を含め 機能障害2級が2つ以上ある場合には1級とし(㋐)、それ以外の場合は、
いずれか重い障害が包括条項1級かどうか(㋑)、または2以上の障害を併 せた状態が包括条項2級かどうか(㋒)により認定するというのであり、特 に㋒は全般的能力障害による認定といえよう。なお、国年には厚年の差引認 定基準(1章3節5款)は存在しなかった。
第 8 款 実地調査
実地調査は、1962年の通知(134)により、(1)偽病取扱い事件を解決する場合、
(2)審査請求又は再審査請求があり、新たに資料を必要とする場合および
(3)その他必要と認める場合に実施された。方法としては、㋐日常生活動 作検査表による調査、㋑写真又は映画による(変形、関節運動範囲、筋力、動 作の速度、巧緻性を表現する)資料作成および㋒第三者の証明による資料作成 が挙げられた。同通知は給付が外部障害に限定されていたときに発出された ものの、国による1981年の『国民年金 障害等級の認定指針』にも記載があ り、全傷病に給付対象が広げられた1966年後も維持された。
第 2 節 厚年の障害認定の変遷 第 1 款 1961年認定基準 第 1 項 基準の概要
厚年の1961年廃疾認定要領(135)の要点は以下のとおりである。
第一に、この認定基準においても、1955年および1958年の認定基準と同様 に、包括条項と安静度との相関は明確であった。2級は「労働が高度の制限 をうけるか又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度以上のもの であって、例えば結核性疾患にあっては『結核の治療指針』の安静度表にお ける安静度3度ないし4度をいい、その他の傷病についてもこれに準ずるも のとする」とあり、同じように、1級には1度ないし2度、3級には5度な いし6度が該当するとしている。
第二に、併合認定については、併合判定参考表の労働能力減退率および併 合(加重)認定表(1章3節3款)は、1958年認定基準と同一であったもの の、前者について、等級との関係が明示され、1級が併合判定参考表1号
(119%)、2級が同表2〜4号(79%)、3級が同表5号〜7号(56%)、障害 手当金が同表8号〜10号(27%)とされた。この労働能力減退率を基に、国 は、各等級の労働能力喪失割合(2級は70%以上、3級は50%以上喪失等)を 説明(1章3節3款)したものと考えられる。
第三に、1958年認定基準の結核症基準における、残存労働能力の判定に関 しての「現に仕事に従事している者については、その仕事の種類、内容、強 度、従事している期間、就労状況及びそれによる影響をも参考とする。」と の記載が結核症において維持されたほか、「精神及び脳疾患」および「高血 圧症」でも、ほぼ同様の記載がなされた(次款、次章2節)。
第四に、精神障害については、㋐内因性精神病(精神分裂病、そううつ病)
と㋑器質的脳疾患(痴呆、失語症、てんかん等)に分類し、各疾患の症状や障 害特性のため、㋐と㋑ともに、1級は「常時介護が必要」および2級は「労 務に服し得ないもの」、ならびに3級は㋐が「労働に制限」、㋑が「労働に著
しい制限」とし、2級と3級は労働能力と等級との関係を記した。また、
「精神薄弱(136)及び精神病質は、原則として認定の対象とならないものとする。
神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重篤なものであっても、
原則として廃疾の状態と認定しないものとする。」と記載された。これが認 定基準によって、障害年金の対象から人格障害と神経症を、原則として除外 する扱いの端緒である。
第五に、この認定基準は、1959年と1960年の国年認定基準を意識して策定 されたことは想像に難くない。しかし、厚年2級は国年の2級よりも対象を 絞っている。たとえば、国年法別表2級「一上(下)肢の機能に著しい障害 を有するもの」は、その認定基準によれば「一上(下)肢の3大関節中いず れか2関節以上が用を廃する程度(強直、「可動域が半減かつ筋力半減」または 筋力著減等)の障害を有するもの」(前節1款)であった。一方、厚年法別表 2級は「一上(下)肢の用を全く廃したもの」であり、3級が「一上(下)
肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」で、この認定基準により、
前者は、「殆どその機能を喪失した意味で例えば上肢の完全麻痺または関節 の完全強直の場合等をいう」とされ、後者の「『用を廃したもの』とは関節 の運動可動範囲が生理的運動領域の2分の1以下に制限された場合、または これと同程度の障害を残すもの」とされた。厚年2級よりも、厚年3級のほ うが国年2級に近かったといえよう。
(72) 国民年金障害等級委員「国民年金障害等級に関する報告」『健康保険』
13巻2号(1959年)69─70頁。
(73) 1級から「音声又は言語機能を欠く」が削除されたほか実質的変更はな い。1級にあった「両上肢を手関節以上で欠く」が「④両上肢のすべての指 を欠く」に含まれる等、重複している障害事項が整理された。
(74) 現行認定基準の「聴力レベル」への換算式は聴力損失値+10=聴力レベ ル値。「オージオメータの日本工業規格改正に伴う聴力障害にかかる障害認 定事務処理について」(昭57・8・14庁保険発13号)。
(75) 「国民年金法における障害等級1級の認定基準について」(昭34・9・4 年発157号),厚生省『障害福祉年金廃疾認定指針』(1961年)19─27頁に「シ
ョパール関節で欠く」とある。
(76) 「厚生年金保険における廃疾の認定について」(昭36・7・11保発47号)
添付「廃疾認定要領」。この聴力は聴力損失値90デシベル以上である。
(77) 身障則にそしゃく障害が追記されたのは1984年9月26日改正。
(78) 身障則ではこれに近いのは4級「一下肢を大腿の半分以上で欠く」で、
大きな開きがある。
(79) 注76では、この聴力は聴力損失値60デシベル以上である。
(80) 1958年6年14日社会保障制度審議会「国民年金制度に関する答申」。厚 生省『国民年金の歩み 昭和34─36年度』(1962年)83─94頁など。その理由 は「労働不能の程度にしたがって賃金取得能力の喪失に対する補償という被 用者保険の場合の考え方をとらずに、老令年金における所得保障と同様の考 え方をとった。したがって無償で公的施設に収容されている場合には、年金 支給の対象にしないし、また補装具を使用できる場合などは、それを使用し た状態において廃疾の程度を判定することにした。そこで事実において年金 の範囲は非常にしぼられる」とする(同91頁)。
(81) 厚生省「国民年金制度要綱第一次案」。厚生省・前掲書(注80)102─110 頁など。発表の日付は「国民年金制度への動き 社会保障制度審議会から厚 生省第一次案まで」『健康保険』12巻10号(1958年)35頁など。
(82) 社会保険庁『国民年金三十年のあゆみ』(ぎょうせい、1990年)70頁は、
社会保障制度審議会答申が厚年法1級を対象としたのは、国年を老齢年金中 心とし、障害年金は後日財政状況により改善しようとしたからであった一 方、厚生省案は、国年は老齢年金支給が当分先であるなかで、障害年金や母 子年金への国民の熱望で実現したことから、すぐに支給される障害年金を実 質的なものにするため対象を厚年2級に広げた、とする。小山・前掲書(注 71)53頁も、成立法の説明として同旨。
(83) 厚生省「国民年金制度要綱の要点 第一次案」『健康保険』13巻2号
(1959年)60頁。
(84) 社会保険庁・前掲書(注82)69頁。
(85) 社会保険庁・前掲書(注82)69─70頁。小山・前掲書(注71)54頁にも、
内科的疾患を除外した理由として、症状固定がなくとも厚年は治療後3年で 給付していること、厚年では結核等内科的疾患による障害年金受給者は外科 的疾患に基づく受給者の十倍であること等、ほぼ同旨の記述がある。自民党 で国年法案立案の中心となった野田卯一『国民年金法と解説』(宝文館、
1959年)188頁も、内部障害除外の理由として、認定の困難性と取入れ方に
よっては相当な財政負担になることを挙げる。
(86) 社会保険庁・前掲書(注82)71頁。ほかに、国民年金障害等級委員・前 掲文(注72)70頁、「国民年金の障害等級を答申」『社会保険旬報』559号
(1959年)38頁。ただし、法案と同じ「日常生活」だったとする小山・前掲 書(注71)53頁、野田・前掲書(注85)62─64頁、寺脇隆夫『生活保障基本 資料 第7巻(国民皆年金2)』(1938年─)84─86頁,『復刻版:資料集 戦 後日本の社会福祉制度;2』(柏書房、2013年)所収もある。
(87) 社会保険庁・前掲書(注53)6頁,48頁。国は、国会会議録1977年4月 21日衆議院社会労働委員会でも、「厚生年金…は…労働者保険でございまし て、事業所とか会社等に雇用されておる…ので、労働能力の喪失、減退とい うことが一つの基準になる…国民年金の場合には、いろいろな方がおられま して…自営業者の方もございますし、また家庭の主婦のような方もおられま して…日常生活能力の制限度合いに着目するということが…適当ではない か」と述べる。
(88) 社会保険庁・前掲書(注53)12─13頁。
(89) 社会保険庁・前掲書(注53)207頁の整形外科医の稗田正虎の講演
(1959年10月)録に「厚生年金保険法の障害年金は、相互扶助とか…賠償の 意味を含んでおりますし、また労働能力の喪失とか低下…に対する補償であ りまして…在職中の業務外のいろいろな障害に対して出される」とある。
(90) 小島・前掲書(注65)9頁は、各障害年金の立法精神または給付目的に ついての考え方が異なり、「損害補償といった考え方を主体とするものと、
所得保障といった考え方を主体とするものと、この二つのものを包含して中 間をゆく考え方のものとがあります。それらの考え方を代表している制度と しては、第一のばあいが労災の障害補償であり、第二のばあいが国年の障害 年金であり、第三のばあいが厚年の障害年金です。」とする。
(91) 「国民年金法における障害等級(2級)の認定基準について」(昭35・
5・25年発169号),厚生省『障害福祉年金廃疾認定指針』(厚生省、1961年)
27─32頁。
(92) 身辺処理能力を主とした日常生活能力は、労働能力よりも基礎的な能力 であると当時も考えられた。身体障害者福祉法に関して、「身体障害者福祉 法の運用上の疑義について」(昭30・5・9更発76号)は「障害が著しく重 度な者…等の理由により更生(…社会的経済的に独立することを意味する)
の見込がまつたくないようなものに対して日常起居に他人の手を借りなけれ ばならないような者が自分の力でやつと日常生活を送ることができる程度の
更生見込があれば身体障害者手帳を交付して差支えないか」という疑義に対 して、「身体障害者福祉法は、身体障害者の更生援護を目的とする…この場 合の更生とは、必ずしも経済的社会的独立を意味するものではなく質問の如 く生活上の便宜を回復する程度の更生も含まれる」とする。
(93) 社会保険庁・前掲書(注82)71頁は「制定された障害等級表は、障害年 金の支給対象となる障害の程度を、身体障害者福祉法に定める障害等級の1 級から3級に相当する範囲まで、厚年法に定める障害等級の1級及び2級に 相当する程度の範囲までとしている。…社会保障制度審議会の答申に示され ている範囲を拡大して、『日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度 のもの』のほか『日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のも の』にまで支給範囲を及ぼしたもの」という。小山・前掲書(注71)53頁の 注82に続く記述も同旨。
(94) 福田素生「障害年金をめぐる政策課題」『社会保障研究』4巻1号
(2019年)93頁は、僅少な保険料であったため、厚年と同じ範囲への給付が 困難だったことも一因だったのではないか、とする。
(95) 筆者は、安部・前掲論文(注19)71頁において、国年創設後の2級認定 基準が、2級⑮「日常生活に著しい制限」について「実際に日常生活動作を 行わせて認定すべきこと」と指示している(次章1節1款)ため、国は日常 生活能力を日常生活動作4 4能力と解していて、創設時における支給対象の外部 障害への限定が日常生活能力尺度の採用根拠であった可能性を述べた。しか し、日常生活動作による認定は、日常生活能力採用の原因ではなく、外部障 害限定の結果4 4である可能性がある。
(96) 注75、注91。
(97) 杉原努「戦後我が国における障害者雇用対策の変遷と特徴その1〜障害 者雇用施策の内容と雇用理念の考察」『佛教大学社会福祉学部論集』4号
(2008年)98頁(日比野京子「障害者雇用の実現をめざして」『障害者雇用制 度の確立をめざして』〔法律文化社、1982年〕228頁により作成)は、1959年 の身体障害者雇用率は官公庁で0.69%、民間で0.65%であったとする。
(98) たとえば「足関節以上で欠く」とは、「ショパール関節以上で欠く」な ど。
(99) 1級認定基準には「2関節以上が全く4 4用を廃する程度…をいう…この…
関節が用を廃する程度とは〜」(傍点引用者)と記載されているものの、こ の「全く」は誤植であると考えられる。1966年認定基準では、「上肢の機能 に著しい障害…とは…2関節以上が用を廃する程度…をいう」とされてい
る。
(100) 「日常生活動作能力認定基準(参考)によることが便利であり、その
(A)の4及び(B)の1に掲げる程度の障害を有する場合には、日常生活に 著しい制限を加えることを必要とする程度のものと認定しうる」とし、同基 準は以下(下線引用者)。(A)独力で可能な動作に対する段階、(1)正常 の場合、(2)一寸どうかと思われる点があるが、速度、安全性、持久性及 び巧緻性について特に問題がない場合、(3)実際上特に問題がない場合、
(4)特殊の型、重さ、高さにより多少動作に制限されるものがあるが、ま ず可能である場合、(B)独力では不可能な動作に対する段階、(1)可能で はあるが速度や安全性からみて実用にならぬ場合、(2)動作が部分的に可 能である場合。たとえば、椅子に腰をおろすことはできても椅子から起立す る事ができないような場合、(3)動作をしてはいけない場合。
(101) 国会会議録1959年4月8日参議院社会労働委員会。1959年3月19日衆議 院社会労働委員会で同様の決議。
(102) このとき65歳までに障害状態となったときの事後重症制度(30条の2) がとり入れられた。
(103) 一方、厚年は1954年から「又は…必要とする」との障害事項を規定し、
2級⑮は「傷病がなおらないで、身体の機能又は精神に、労働が高度の制限 を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度の障害を 有するもの…」である。しかし、これは、国年のように、起因事象としては
「機能」と「病状」とを並列しておらず、「又は」以降は、身体の機能障害ま たは精神の機能障害により「労働に高度の制限を加えることを必要とする程 度」となった場合に2級にするというものにすぎず、機能障害認定の範囲に とどまるとも解しうる。
(104) 笹本浩の講演録,1964年6月。社会保険庁・前掲書(注53)253頁。
(105) 笹本浩の講演録,1964年6月。社会保険庁・前掲書(注53)262頁。
(106) 砂原茂一の講演録,1965年5月。社会保険庁・前掲書(注53)270頁。
(107) 砂原茂一の講演録,1965年5月。社会保険庁・前掲書(注53)271頁。
(108) 内部障害を対象にする改正のための国会会議録1964年4月22日衆議院社 会労働委員会でも、国は「障害専門委員会におきまして、呼吸器障害につき ましては、対象が動けない、働けないという、つまり機能判定の必要のもの と、動いてはいけない、働いてはいけないという、そういう病勢判定の必要 なものとに分けて考えるべきであって、そのように別表に表現すべきだとい う御意見がありました…結核性疾患及び呼吸器性の疾患につきましては、病
勢判定と機能判定とでやる」と説明している。この包括条項は結核に限ら ず、1966年12月からは全ての傷病に適用されている。
(109) ただし、この2つの区分けは、他の内科的疾患の診断書様式にはない。
(110) ヒュー・ジョーンズ分類,「イ 階段を人並みの速さで登れないが、ゆ っくりなら登れる。ロ 階段をゆっくりでも登れないが、途中休み休みなら 登れる。ハ 人並みの速さで歩くと息苦しくなるが、ゆっくりなら歩ける。
ニ ゆっくりでも少し歩くと息切れがする。ホ 息苦しくて身のまわりのこ ともできない。」。昭43・2・23庁文発2149号(社会保険庁・前掲書〔注53〕
246頁)は、活動能力の程度が、%肺活量(肺活量実測値の予測値に対す る%、同243頁)と1秒率(最大努力下の最初の1秒間の呼気量の肺活量実 測値に対する%、同)の測定値およびX線の機能的評価と食い違う場合、
特に活動能力の程度に対し機能的評価が軽度の場合は、照会、実地調査また は再診を指示する。
(111) 1966年認定基準(本節5款)は、結核性疾患の基準で、2級について、
安静度3度と4度が該当すると記すとともに、「廃疾認定日前6カ月以内に 排菌があり、かつ、胸部X線所見が学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1又 は2であるもの」等を例示する。制定に関わった医師も、病状判定は「安静 度の客観的妥当性を知るためにX線写真上空洞があるか無いか、病巣の拡 りがどうかをみ、また、同時に排菌の有無で、きめようということにした」
と説明する。社会保険庁・前掲書(注53)254頁。
(112) 豊島 泉(厚生省)「障害等級調整問題研究会の報告成る」『共済新報』
78巻10号(1966年)38頁。
(113) 厚生省年金局『障害等級調整問題研究会報告書』(1966年)2頁。
(114) 厚生省年金局・前掲書(注113)9頁。
(115) 厚生省年金局・前掲書(注113)67─68頁。
(116) 「国民年金 障害等級認定基準について」(昭41・10・22庁保発22号),
所収はたとえば社会保険庁・前掲書(注53)699─714頁。
(117) 「軽い補食作り、ハンカチ程度の洗濯等」が2002年改正で「軽食作り、
下着程度の洗濯等」に変わったのみで、内容的に現行認定基準(注11)と同 一。
(118) ほかに、脳の器質障害のため庭先散歩程度しか独り歩きができないも の、一下肢の弛緩性完全麻痺のもの、心肺機能障害のため階段を途中休み休 みしか昇れないもの、が挙げられている。
(119) 小林淳・北村諭「最近の肺結核と治療」『臨牀と研究』66巻12号(1989