地域学習集団の法的研究
−公民館使用条例を中心として−
田崎秀和*
I.問題の所在
社会教育施設の使用については,「住民の生涯にわたる学習権の保障」の観点から,より積極 的な学習権の権利内容として考えたい。
本稿においては,地方自治体における社会教育施設の使用につき,学習権保障の観点から,そ の現状と問題点を踏まえ,地方自治法の「公の施設」の管理,使用の法的側面を考察することに ある。
II.学習権と施設の使用権
生涯学習権を基本的人権として位置づけることは,小川氏をはじめ指摘されているが,(1)さら に積極的に学習権の権利内容に施設使用権も包含され得るかを検討する必要がある。なぜならば,
住民の学習活動の一環として,公民館をはじめとする社会教育施設を使用することは,一体不可 分の関係にあるからである。当然の帰結として,施設の使用は,権利行使の一形態をなす。
ここでいう「施設」とは,地方自治法第2条および第244条における「公の施設」,地方教育行 政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)第23条1項にある「学校その他の 教育機関」の総称をいう。
施設使用権が学習権に含まれるかを考察するにあたっては,権利とは何かをまず明確にしてお く必要がある。
一般に権利とは,「相手方に対し,ある作為,不作為を求めることができる権能」をいうのが 通説である。(2)権利として成立するためには,①利益または価値の存在,②利益または価値の配 分をめぐる紛争解決のための社会的期待性の存在,③強制力の発動にあたっては,正当性を持つ 客観的な基準にのっとって行われる観念の存在が三要素として要請される。(3)
①の「利益」,「価値」については「学問の自由」,「教育を受ける権利」と「住民の学習活動」
の存在。②の「紛争解決のための社会的期待性」については施設の使用にあたっての地方自治法,
地数行法,国家賠償法の存在。③の「基準・観念」については,地方公共団体の使用条例,使用 規則の存在がある。
*西彼町教育委員会社会教育主事
さらに,住民の学習活動に対し,国および地方公共団体は,教育基本法第2条,第3条,第7 条により,施設の使用等を含めて教育の目的実現のために努めなければならないことは法文上明
らかであるo
したがって,住民の生涯学習権の権利内容には,権利行使の一形態として「施設使用権」を含 むと解すべきである。
111.施設使用権と自治体条例 1.施設使用と契約関係
前章において,学習権と施設使用権について考察したが,地方公共団体における住民の学習諸 活動の公民館をはじめとする施設の使用については,次の問題点が存在する。
第1点、は,営造物理論が依然として行政権力作用として存在するということo 第2点、は施設の 使用にあたっては施設の管理権を行使の段階において,監督命令権を含む幅広い解釈適用を行っ ている現状。第3は,自治体条例と規則のありかたである。
この章においては,これらの点を踏まえつつ,判例や自治体条例を参考にしつつ考察を試みた
し) 0
まず,公の施設の使用にあたっては,使用者と自治体または管理者との聞にどのような法的関 係が存在するかということである。
一般的にいえば,公民館をふくめて施設使用の場合,無償のときは,使用者が使用する施設や 部屋を貸主から受け取ることによって成立する民法593条の使用貸借契約関係となる。
冷暖房料や使用料を徴収する場合,その施設の目的内使用であり,多少の金額の負担を伴う公 租公課の負担のときも使用貸借となるのが判例である。(大判昭和8年11月)
この使用貸借契約には,借主の使用収益権,すなわち,その施設を使用し,何らかの用に供し たり,何かの益を収める権利を認めている。
また,目的外使用を含めて,有償の場合には民法第601条の賃貸借契約関係が成立するo使用 貸借と賃貸借契約関係では次の2点において異なるo
第1点、は,使用貸借は要物契約であるのに対し,賃貸借は諾成契約である。使用貸借にあたっ ては,目的物(施設)を引渡してはじめて契約は成立する。したがって使用貸借の契約成立の効 果として目的物を引渡す債務を負うものではない。これに対し,賃貸借では,貸主と借主の賃貸 借契約の成立が先行し,賃貸人はまず,目的物を賃借人に引き渡す義務を負う。
第2点は,貸主の責務として,使用貸借は借主の使用収益を認容するという消極的な内容であ るのに対し,賃貸借の貸主は,積極的に目的物を使用収益に適した状態におかねばならない。そ の結果,使用貸借では使用等に必要な費用は使用者の負担となるのに対し,賃貸借では貸主が負
t
旦することになるoしかし,現実においては,有償・無償の違いが即,契約関係の違いとはならず,両者は諾成契 約の形式を取りつつ,その結果として,対価債務関係の有無を生じさせるようになっているのが
‑53‑
実情であるロ
公民館施設の使用にあたっては,有料,無料,また使用者負担の公租公課負担の金額等により,
使用貸借が賃貸借かに分かれることとなるD
したがって,公民館使用の際の使用申込みは,法的には「予約」と「本契約」の2つに分かれ ることになるo すなわち使用申込み後の許可条項として無償の場合は,使用申込みは, I予約J
であり,施設のカギ,又は部屋の引渡しがあって契約が成立する。有償の場合は「本契約Jであ り即,契約の成立となる。
2.施設使用と受益者負担
次に,公民館等施設における有償,無償については,使用貸借における公租公課の一部負担を 容認した判例と相まって受益者負担の原則がある。(4)
受益者負担とは, I人的公用負担の一種で,原因者負担とともに,公用負担の課される根拠・
負担義務者等からみた分類の一つ」であり (5)利益を受ける者が,その利益の限度において,金 銭給付義務を課せるとするものであるD 地方自治法22条の地方自治体の課する分担金もこれの一 種である。また,施設の使用料については地方自治法225条に法的根拠をもつo この条項は,収 入の一種として使用料を認めたものであって,公民館等使用料の徴収を積極的に義務づけている のではない。特に,公民館使用にあたっては,学習権利内容としての施設使用権の行使として公 民館使用無料の原則が貫かれねばならない。
3.営造物理論と使用許可および不許可,取消し (1) 営造物理論と施設の使用
公民館施設等の教育施設を使用する場合,その使用,運用について問題となるのは,営造物理 論と特別権力関係論であるo
営造物とは「固または,地方公共団体の行政主体により公の目的に供される人的手段および物 的施設の総合体Jを総称する法律用語として用いられている。(6)そして営造物は,行政客体の利 用に供せられる公共用営造物(例,公民館,図書館等社会教育施設および学校教育施設,公立病 院など。)と行政主体が自ら使用する公用営造物(官公署など)に分けられるo
この営造物なる語については, 1933年の自治法改正により,地方自治法2編 第10章を新設し,
「営造物」から「公の施設」という語句に改正した経緯がある。そして,行政権力作用の適切な 遂行のため,国および地方公共団体の営造物の設置管理については,必ずしも具体的な法律の根 拠を要せず,予算の範囲内において設置管理することができ,その営造物の目的達成のために営 造物管理権(公共用物管理権)を持つという考えが営造物理論であるo
この考え方は,先述した地方自治法改正後も「公の施設」の管理にあたっては,行政権力作用 の主な考え方となっている。
(2) 営造物管理権,特別権力関係と使用許可,不許可および取消し
① 公民館使用の法的関係
公民館{吏用の契約関係についてはIII‑1において述べたが,使用中におけるもう一つの法的関 係について述べたい。
公民館の使用管理については,地方自治法244条二により,各自治体の条例や規則に拠ること になるが,行政法上の使用者と管理者の法的関係は,営造物(公の施設)利用の特別権力関係に あるということである。
特別権力関係とは,一般法による国民支配のような一般権力関係に対し,公法上の特定の目的 に必要な限度において,包括的に一方が他方を支配し,他方がこれに特殊な拘束として服従すべ きことを内容とする関係をいい,公務員の勤務関係および営造物利用関係も含まれる。(7)
したがって,公民館の使用についても,この特別権力関係となり,管理者は地方自治体の条例 と規則等に基づく,使用者に対する包括的支配権=営造物管理権を持つことになる。この権利内 容には,命令権と懲戒権を含むものであるo ここに,使用に関し,管理者の裁量に委ねられる部 分が存在することとなる。このことが,施設使用に関する使用許可,不許可,取消しの問題が存 在する。(表‑1参照)
② 使用許可等の類型
公民館使用の場合,管理は使用申込者に対し,①使用許可,②使用の制限および条件付許可,
③使用不許可の決定をし,通知するのが通例である。
この決定について,地方自治法244条の2による地方自治体の施設の管理使用規定等および営 造物理論と特別権力関係による営造物管理権による裁量権が問題となるo
「使用許可JI使用不許可」については,①社教法23条違反かどうか,②公序良俗を乱したり,
反する恐れはないか,また③条例,規則違反ではないか,④施設の管理運営上,支障はないか等 が主な判断基準となっている。
「使用の制限JI使用条件」については,入館者の制限条項として,①伝染病患者又は酪町者,
②館内の風紀を害し,又は迷惑となる物品の携行者等がある。また,③備品使用の制限,④施設 の造作等の制限,⑤使用時間および使用期限の制限がある。
また,使用中においては,①使用許可の取消し,停止,②使用者の尊守事項,③使用中の事故 および施設破損による使用者の賠償責任等を条例,規則で定めるo
しかし,ここで問題となるのは,住民が使用し,学習活動等をおこなう公教育の場としての公 民館の管理および使用については,地方自治法の「公の施設jとして一律にとらえることが妥当 かどうかという問題点が残る。これについては,次に考えてみたい。
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公民館使用における法的関係 表一 l
日本国憲法
地方自治法244条
教育基本法
"
"
らうニ
244条の 2
行
習 社会教育法 法
21,22,23,24,29,30条
体 系
『地教行法J
政
23,25,30,32,33条
公民館設置管理条例 法
体
系
国 家 賠 償 法 公民館使用規則
(管理権者) 使 契
特別権力関係 用約
民法593条
営造物管理権 関
民法601条 関
係 係 イ 民 主
(使用者) 4 .自治体条例運用の事例
N郡の事例
(1)
N郡における公民館管理条例,規則などのようなものであろうか。表 ‑2に示すと次の点が問 題点として考えられる。
① 条例による明確な規定より,規則への委任。
8町のうち 4町が住民の使用条項を条例でなく,使用規則で具体的な条項を定めていることで あるo これは,管理権者たる教育委員会の規則に委ねることが,実情に即した管理規定が期待で きるという反面,上位法令たる条例が実算的に形骸化し,このため営造物管理権の裁量範囲を広 げる危険性を招くことにもなる。
② 規制条項のあいまいさと厳格さ。
条文のうち「その他必要のあるときJの不許可,
r
館長の指示に従わないときJの使用の取消 し等,その内容は管理者の大幅な裁量権を認める内容となっているo③ 管理者に使用者への指示命令権の付与。
営造物管理権の行使の一形態としての指示命令権であるが,使用者にとっては,
r
上からの社 会教育jの場としての公民館,r
お上のための公民館」的感がするのではないか。④ 規制条文の「公序良俗に反する行為Jのあいまい性。
「公序良俗」という語句は民法90条, 132条等にみられる。「公の秩序,善良な風俗」に反する 法律行為は無効とされ(民法90条),これにより他人に損害を与えた場合は不法行為の責任を負
う(民法709条)。
したがって,公民館使用の場合も「公序良俗に反する」使用目的は無効となる。しかし何が「公 序良俗に反する」行為にあたるかは必ずしも明確ではない。ましてや「公序良俗Jに合する行為 が何にあたるかを具体的に内容を規定することは不可能である。(通説)(8)
なぜなら,社会秩序や道徳観念,風俗や社会通念は時代によって変遷するものであり,法文と して明確に規定するのは困難だからであるo公民館使用に関していうならば「公序良俗に反する 行為」は, (a)人倫に反する行為, (b)犯罪を犯すことを内容とする行為, (c)個人の自由を侵害する 行為, (d)不当な利を博する行為, (e)著しく射幸的なもの等を内容とする行為があげられるが,い ずれにしても,その判断は困難なことが多く,極めて具体性を欠く規定といわねばならない。
⑤ 公的行事ないし公民館事業の優位性。
社会教育施設である公民館は公教育の事業を推進するが,それは住民の学習活動を援助し,奨 励するものであって,行政の行事や公民館事業が即、優位性を持つものではない。
条例や規則において,
r
公民館事業を阻害すると思われる場合」や「緊急な公共的行事又はや むを得ない必要が生じたとき」を不許可や取消し,中止事項として明文化する必要があるのか甚 だ疑問であろう。住民の学習権保障の立場から,不明確な条文や,いつ生じるかも知れない事態 を予測し,使用に対し,一定の条件を附すことは妥当ではないと考える。⑥ 施設の維持管理権の優位性。
特別権力関係論の見地から営造物管理権を前面に出した事項といえる。これも⑤と合わせて,
条文に盛り込む必要性があるのか甚だ疑問と思われるo
⑦ 政治的,宗教的教育事業への消極性。
この点に関しては労働組合活動と学習活動,宗教団体の学習活動の許可がしばしば問題となる。
B町においては労働組合の使用は一切禁止。宗教団体の演劇上演や集会に関しては実情を聞いた うえで判断し,条件を附して許可。文,政治・政治的団体は,現職議員の町政,県政報告会ない し学習会に限って許可し,立候補予定者の場合は不許可という事例もあるo
この他にも,企業の学習活動の公民館使用については否定的な場合が多い。
‑57一
表‑2 N郡における公民館使用条例内容
使 用 許 可 ①使用者の特別の設備装置をなすとき
①公益を害し,善良な風俗を乱す。
②建築物,設備の段損,汚染 使 用 制 限 ③条例,規則違反
④続けて2日以上の使用禁止
⑤その他,必要があるとき
①社教法上不適当と認められる政治的,宗教的催し
②専ら営利を目的とするもの
③宿泊を目的とするもの
④単に遊興飲食の場とするもの
使 用 不 許 可 ⑤公民館事業を阻害すると認められるとき
⑥公民館の管理上必要があると認めるとき
⑦公共の秩序,善良な風俗を乱すおそれ
③建物,付属物を破損するおそれ
⑨社教法23条違反
⑩館長において必要と認めたとき
①条例,規則違反
②公民館の管理運営に支障があると認められるとき
③本館に必要が生じたとき
④使用者に不都合な行為があったとき 使 用 取 り 消 ⑤館長の指示に従わないとき
し , 中 止 , ⑥管理上,支障があるばあい
または使用の ⑦公の秩序,善良な風俗を乱すおそれ 停 止 ③許可目的外用途使用
⑨転貸
⑩ 規 則 違 反 (1火気の使用 2施設等への張り紙 3物品の販売・配布,館 長の指示事項違反)
⑪社教法23条違反
(2) 公民館使用不許可処分の判例
公民館使用不許可処分に対する判例を考察してみたい。これについては,鹿児島地裁1983年10 月21日判決がある。(9)
係争事実は,教職員組合が主任制反対運動で積み立てた主任制手当を資金にしてミュージカル
公演を計画。中央公民館に使用許可を申請したが,公民館はこれを許可後取り消したため,原告 は違憲として損害賠償を請求。
判決は,被告が使用許可をしなかったことは,地方自治法244条2項違反,憲法21条違反とし て原告主張を一部容認したものである。その理由として,組合の公演会場として公民館を使用す ることは,公民館の設置目的に合し,公民館の事業に該当するD 主任制反対運動の一環であると の理由での不許可自体が,地方自治法・憲法違反であるという判旨である。
この判決は,住民の公民館使用は,憲法の基本的人権を尊重した点で評価できるが,公民館使 用については専ら地方自治法244条2項を主な判断根拠に求めている。このうちには,
r
公の施設J,営造物管理の地方自治体の責務と住民の施設利用の保障の面から重要視するため,住民の「集会 の自由」という受益権の尊重という法理論展開となっている点もいなめない。これに対し,教育 関係法規に照らし,住民の公民館使用が憲法および教育基本法に基づく「生涯学習権」の行使と いう積極的法理論も考えられる。
〔判旨の要説〕
a 憲法第21条(国民=住民の権利)→b 地方自治法第244条2 (公の施設の利用,差別的取 扱いの禁止)→公民館不許可の判断は aおよびbに照し過失有り。
つまり,表‑1の学習法体系の方向をとり,次のような法的観点、から判断すべきではなかろう カユ。
① 住民の公民館使用の権利関係
学習権の内容をなす施設の使用は基本的人権の国民の文化的発達と人間性の全面発達の権利で あり,最大限尊重されなければならない。(憲法11,21, 23, 26条)
この学習権保障として教育基本法,社会教育法であり,公民館は住民の学習権を保障する責務 を当然持っているといわねばならない。
② 地方自治法244条, 244条の2と社会教育関係法規について
地方自治法244条, 244条の2は一般的包括規定条項であり,住民の学習活動等にともなう公民 館使用は教育基本法およびその特別法たる社会教育法により規定されるo
③ 基本的人権としての学習権と住民の文化活動
本係争事実は集会活動の面からだけでなく,憲法11,23, 25条による学問,文化活動の享有と 憲法21条の表現の自由の問題としてとらえるべきである。
④ 公民館使用不許可処分の適法性
公民館管理条例と管理権者の裁量については住民の学習権の保障の観点、から考えるべきで,社 会教育法23条は住民の使用については一律的,形式的に適用すべきでなく,社会教育法24条を受 けた条例および使用規則により住民の施設使用を,保障するとともに,その適用にあたっては,
故意又は過失,取庇による使用不許可のとき国家賠償法および民法709条を根拠として損害賠償 請求権が生ずる。
‑59‑
このように,単に地方自治法の「公の施設Jの管理権,営造物管理権(公共用物管理権)のみ にとらわれることなく,住民の学習権の保障義務を憲法,教育基本法,社会教育法の学習法体系 に求め,管理条例および使用規則は,この保障義務の行政手続き等を定めたものと解するのが妥 当と思われる。
IV.施設使用権と自治体条例の今日的課題
III‑3自治体条例運用の事例で述べたように,自治体においては,公民館は住民の学習権保障 のための社会教育施設という観点、よりも,
r
公の施設」をいかに維持管理していくかという観点 が強いことを指摘した。それでは公民館の使用にあたって現代的課題として,どのようなことを考えるべきか。
① 学習権保障の観点からの公民館使用を施設利用権としての法的位置づけ。
「学習権Jの概念は, 1971年7月の教育制度検討委員会報告のなかに「教育への権利」は生存 権的諸権利と深く結びついた権利であり,
r
探究の自由J,r
真実への権利」の確認のうえに立っ て,r
国民の学習権」として定立することを提言している。そして,それを「国民の生涯にわたっ ての自己教育の権利」と定義しているoum住民の施設使用は,この学習権の内容をなすものであり,これを保障する公民館施設として位置づけなければならない。
② 住民自治の原則に立脚した,公民館条例,規則の見直し
枚方テーゼに示すとおり,社会教育は住民自治と一体不可分である。そのために公民館運営審 議会の存在価値が評価される。
このことは,学習の主体は住民であり,自治体ではないことを意味するo
自治体は管理条例や使用規則を一方的な行政権力作用としてとらえるのではなく,住民の使用,
利用しやすい施設とするため,条例,規則を見直しをおこない,単なる施設維持管理のための条 項や,本来,住民の「公共道徳」的条項は削除してよいのではないか。
条例,規則が「公の施設」管理のための便法であってはならないと考える。
③ 学習権の確立のための社会教育関係者の役割
従来の社会教育論は,ややもすると学習活動や内容,方法論的側面に重きをなし,教育論と法 理論を結びつける学習権論として構築することは,学校教育と比して少ない傾向がみられる。ω
社会教育関係者は,住民の学習活動等を生涯学習権の保障という立場から施設の使用や事業の 展開をすべきであろう。
おわりに
学習権と施設使用権の定着には,住民の学習活動と運動,さらには多くの学説の積み重ねが必 要であり,これらの権利を憲法論および実定法との関係で法解釈を展開するには,研究者や社会 教育関係者のさらなる連携と研究がまたれる。
(注)
(1) 小川利夫編『住民の学習権と社会教育の自由J勤草書房P88以下に詳しい。
(2)
r
法律学小辞典.]P243参照。有斐閣1989年。 (3) 前注(2)参照。(4)大判昭和8年11月1日 1新報347号。
(5) 前掲『法律学小辞典.]P437参照。
(6)前注
ω
参照。(7) 田中二郎著『行政法総論J有斐閣P2230 1968年。
(8) 我妻栄著『新訂民法総則(民法講義1).]岩波書庖。 P270以下。 1969年。
(9)
r
社会教育』全日本社会教育連合会。1991年1月号。 P46以下。『公民館使用不許可処分事件』森部英生著。
(
10)
r
日本の教育はどうあるべきか。教育改革シリーズ1.]梅根倍編勤草書房。 1971年。 P115以 下。『四、国民の教育権と教育自由の原則J参照。ω
国民の学習権と教育論については,堀尾輝久著『現代教育の思想と構造』岩波書底。 1972年 に詳しい。‑61‑