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「流通近代化論」再考

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Academic year: 2021

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「流通近代化論」再考

* Ⅰ 初めに 日本で「流通近代化」が盛んに議論されるように なったのは,高度成長が軌道に乗った 1960 年代以降 である。50 年代後半になると,技術革新により生産 が高度化し「少品種多量生産」が行われるようにな り,一方で,国民一人あたりの実質所得が上昇し,基 本的な衣・食・住費を超える裁量所得の増加により消 費を自由に行えるようになり,「高度大衆消費社会」 (high mass consumption society)が到達した(ロス

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ければならない(堤[1979]53―121 頁)。 堤 清二は「近代化」の否定しているのではなく, 「近代化」至上主義からの解放であり,生活の多様性 や消費生活の場における人間の個性の確保を踏まえた うえでの近代化・合理化を主張している(堤[1979] 333―4 頁)。そのためにこれからの流通産業は,「近代 化」をうちに含んだ「現代化」が必要であり,資本の 論理と人間の論理の境界に位置する流通産業は,社 会・政治・文化など,経済のシステムを含む全体の中 で検討されなければならないとしている(堤[1979] 344―5 頁)。「人間のための経済」とか「人間の論理」 とか,やや時代を反映した言葉が使われているが,こ れを資本の論理としての「近代化」に加えて「現代 化」をしなければならないというのが主張のポイント である。「資本の論理」と「人間の論理」については 次のような説明がなされている。 「資本の論理」は最小の費用で最大の効果を上げる という効率の論理です。「人間の論理」は効率ではな く満足です。ある人が,どんなにカネをかけてもこれ をしたいというのを,ばかげていると他人が批判して も意味がないでしょう。その人が満足すればいいんで す。ですから,「人間の論理」は 多 様 性 を も つ の で す。これに対して資本の論理は単一的です(日本経済 新聞)。 しかしながら,チェーンストアも人間の論理を無視 して,マニュアル化,標準化し徹底した中央統制だけ では生産性は上がらないのも事実である。チェーンス トアでも「毎日違う人が買いに来るので,店と商売は 変わります。チェーンストアと個店主義と両立すべき で,売場担当者はマニュアルを十分理解した上で,自 分の良識による判断をしなければならない」(柳井 [2007])。そのために知恵や経験があり,倫理観をも ち臨機応変の対応ができる人材が必要となる。 チェーンストアにも,合理的な「資本の論理」だけ ではなく,フェイスツーフェイスのサービス業に共通 した人間の論理が必要だということができるが,さら に小売業は「文化」とも密接な関係をもつ。 Ⅳ 流通近代化と文化の承継と発展 かつてマックネア(M.P.McNair[1968])は,マー ケティングを「生活標準の創造と伝達」と定義した が,流通業は,生産された商品やサービスをできるだ け効率的に消費者に送り届けるということとともに, 消費者のライフスタイル(生活標準)の確立に資する ことが役割である。 (1) 生活文化と都市文化 われわれは所得が増え生活水準が向上しても,どう オシャレをして,どう新しい食品を取り入れて,どう 住まいを改善するのかという具体的な生活を描くこと が不得手である。消費者は,欧米風リビングのダイニ ング・キッチンで,家族揃って食事や団欒する光景 や,若いカップ ル が 週 末 に 郊 外 に ド ラ イ ブ し た り ショッピングしたりする姿を,活字,写真,映像など で読んだり,見たりすることによって,抽象的レベル にとどまっていた生活の理想図を明らかにすることが できることが多い。 従って,ライフスタイルを提案するマーケティング 戦略,すなわち製品コンセプトを実際の生活シーンで 価値付けする広告や,ライフスタイルを提案する商品 展示などが重要になる。いわば疑似「デモンストレー ション効果」(あるいは,見せびらかしの効果)とい うべきもので,流通とマーケティングはこうした生活 文化や都市文化の承継と発展に貢献することになる。 サーモンは,消費者の購買動機を基準にして生活用 品 を 個 性 的 商 品 と 非 個 性 的 商 品 に 分 類 し て い る (Salmon, 1974)。個 性 的 商 品(ego−intensive goods)

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中牧弘允・飯笹佐代子[2007]「文化を軸に地方活性化」日本 経済新聞(7 月 6 日)。 林 周二[1962]『流通革命論』中公新書。 林 周二[1964]『流通革命新論』中公新書。 林 信太郎[1966]「流通経済政策−考え方と進め方」(深見 義一編『マーケティング講座 3−流通問題』有斐閣)。 ホービング,W[1962]『流通革命』(田島義博訳)日本能率協

会(Walter Hoving, 1960, The Distribution Revolution, Ives Washburn Inco.)。 向山雅夫[2001]「中小商業と流通その構造的側面」(渡辺幸 夫・小川正博・黒瀬直宏・向山雅夫『新版 21 世紀中小企 業論−多様性と可能性を探る』有斐閣)。 柳井 正[2007]「Prof. 矢作敏行対談 日本チェーンストア経 営は世界水準に達するか−グローバルの大変化に対応する 再ベンチャー化に進路をとる」『販売革新』7 月号。 矢作敏行[1997]「リベート」(鈴木安昭・関根 孝・矢作敏 行『マテリアル流通と商業 第 2 版,有斐閣)。 矢作敏行[2007]『小売国際化プロセス−理論とケースで考え る』有斐閣。 吉田信邦・欧州中小企業金融調査団[1970]『ヨーロッパにお ける流通革新―欧州中小企業金融調査団報告書』。 流通システム開発センター「SCM の推進のための商慣行改善 調査研究」経済産業研究所。 ロストウ,W.W.[1961]『経済成長の諸段階』(木村健康・久 保まち子・村上泰亮訳)ダイヤモンド社。

Drucker,P.F., 1962, ”Economy’s Dark Continent,” Fortune, April, Time Inco.

McNair,M.P.,1968,”Marketing and the Social Challenge of Our Times, ”in A New Measure of Responsibility for Marketing, K.K.Cox and B.M.Enis,ed.

参照

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