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1.政治学初年次教育:これまでの取組について

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第一部  研究論文・実践報告

政治学初年次教育に関する実践報告:

法学部政治学科での取り組み

同志社大学 法学部嘱託講師  

小出輝章

はじめに

1.政治学初年次教育:これまでの取り組みについて 2.アクティブ・ラーニングについての取り組み 3.成果と課題

おわりに

はじめに

筆者は、本学法学部政治学科で政治学入門(以下「入門」と表記する)および政治 学基礎A(以下「基礎A」と表記する)という初年次教育科目を担当している。本稿は、

春学期科目「入門」・秋学期科目である「基礎A」における筆者のこの三年間の取り 組みについての報告である。

まず、本稿は、政治学という学問の初年次教育についての取り組みであるというこ とについてあらかじめ断っておきたい。その理由は後述するように政治学という学問 と初年教育が不可分のシラバスになっているからである。したがって、政治学という 学問上の特質についてもある程度触れる必要があり、初年次教育と区分しなければな らない点についても述べなければならない。

1.政治学初年次教育:これまでの取組について

(1) 初年次教育の定義およびシラバス

初年次教育については、さまざまな定義がなされており、各々の大学や学部・学科 レヴェルでその必要性に応じてプログラムが組まれているのが現状であろう1

政治学科では以下のような統一シラバスによってその概要を把握できるが、シラバ スからもわかるように発表の作法・レジュメの作成、レポートの書き方といったスタ ディ・スキルと専門である政治学への導入に力点を置いている。

(2)

両科目の相違点を摘記すると以下のようになる。

第一に、「入門」が文字通り初学者を対象とした導入部分の科目であるのに対して、

「基礎A」は一通り受講した経験者を対象とした発展科目であるという位置づけであ る。これに関連して成績評価も春学期が合否判定のみに対して、秋学期ではGPAの計 算の対象に含まれているように、学生の取組課題の内容についても成績評価の対象と なっているのである。

表1:2015年度政治学入門・政治学基礎Aシラバス 政治学入門

〈概要〉

 およそ「学ぶ」に際しては,何を学ぶかということばかりでなく,どのように学ぶのかという ことがとても重要です。政治学も決して例外ではありません。政治学がひとつの学問としての 枠組みをもつものである以上,これを学ぶには,それなりの「ルール」を身につける必要があり ます。政治学入門は,政治学科の一年次生を対象にして,その「ルール」を学習するための場と して,8つのクラスに分けて開講されます。

 本講では,大学の学びにおいて必要とされるもの,たとえば,講義の聴き方,資料探索の方 法,研究書の読み方,発表のやり方,レポートの書き方など,いわゆるアカデミック・リテラシ ーとよばれるものを紹介します。ただし,これらのスキルは実践を積み重ねなければ身につき ません。そこで担当者による説明を最小限にとどめ,受講者一人ひとりが実際に資料を読み込 み,レポートを書き,発表をするという一連のトレーニングの場とします。また,グループワー クの機会も設けていますので,積極的に互いを刺激しあう場としても活用してもらえればと 考えます。

 カリキュラム上は必修科目ではありません。ただ,今後の学習の基礎となる内容を学びます ので,政治学科の一年次生には履修をつよくお勧めします。

〈到達目標〉

 政治学を学ぶための基礎的な能力を涵養すること。

〈授業計画〉

(実施回)(内容) (授業時間外の学習)

1 オリエンテーション 

2−15 アカデミック・リテラシーなどの学習 レジュメの作成,報告の準備,レポート の作成などの予習

〈成績評価基準〉

平常点(出席,クラス参加,グルー プ作業の成果等) 100%

(1)出席,(2)演習への取り組み,(3)課題の提出及びその内容をもとに,「合格・不合格」とい う形式で評価します。したがって,卒業必要単位に含まれますが,GPAの計算の対象にはなり ません。

〈テキスト〉

 開講時に担当教員が指示します。

(3)

第一部  研究論文・実践報告 政治学基礎A

〈概要〉

 この授業は,政治学科の1年次生を対象に春学期に開講される「政治学入門」の続編的な科 目として位置付けられています。具体的には,「政治学入門」で学んだアカデミック・リテラシ ーを踏まえた上で,レジュメ作成・報告・レポート作成の技術をさらに向上させていくことを 目的としています。実際,大学での「学問」においては,様々な知的作業を「一人」で行っていか なければならない場面が多々あります。そうして自らが発表したものは,今度は自分以外の多 くの人から様々に評価されていくものです。

 『論語』の有名な一節に「学びて思わざれば則ち罔し(くらし),思いて学ばざれば則ち殆し

(あやうし)」とあるように,自ら考えることと他者から学ぶことは,ともに車の両輪のごとく 大切な学問的態度です。受講生には,この授業を学問成果のアウトプットと,学問的批判のイ ンプットに関するトレーニングの場として活用してほしいと思います。

〈到達目標〉

 政治学を学ぶ上での基礎的な能力の向上

〈授業計画〉

(実施回)(内容) (授業時間外の学習)

1 オリエンテーション

2−15 レジュメ作成・報告・レポート作成等の 技術的向上についての学習

レジュメの作成・報告の準備・レポート の作成などの予習

〈成績評価基準〉

平常点(出席,クラス参加,グルー プ作業の成果等) 100%

①出席,②演習への取り組み,③課題の提出及びその内容をもとにして評価を行います。

〈備考〉

 前期の講義内容を復習しておくこと。

第二に、入門はクラス指定制であり学生にクラス選択の余地はなかったが、秋学期 クラスは学生の任意に委ねられているので、春学期の学生と入れ替わりもあり得る。

また春学期受講学生数が30名程度であるのに対して、基礎Aでは最大30名までとされ ているだけで受講者数に年度・クラスごとに差異がみられる2

第三に、スチューデント・アシスタント(SA)が1名講義に参加する。SAは原則 1学年の上の2年生学生が担当する。教員によって役割が異なることもあろうが、基 本的には出欠確認や学生からの相談などに乗ることである3

(2) これまでの取り組み

取り組みにあたってまず、政治学系統の諸学問について、政治学科の方針を確認す る必要がある。政治学科では、政治学を現代政治科目、歴史・思想科目、国際政治科

(4)

目の3系統に分類し、それぞれ入門科目、基礎科目、発展科目の3段階に区分して体 系的にカリキュラムが編成されている4。科目の目的が異なるので、初年次教育のカリ キュラムと基本的には重複しないが、ある程度の重なりはやむを得ない部分もある。

学生の取り組む課題が政治に関わるものである以上、政治学の知識・考え方や学問上 の方法論について触れるのはやむを得ないのである。この点については春学期の取り 組みのところで詳述する。

シラバスの枠組みにしたがって、以下のような取り組みをしてきた5

表2:授業計画

授業回数 授業内容等

政治学入門 政治学基礎A

第1回 オリエンテーション+講義(大学と学問) オリエンテーション+講義概要 第2回 問いの立て方 春学期の復習1 問いを立てる 第3回 検証―何を調べるのか+課題1(新聞記事) 春学期の復習2 問いを立てる 第4回 パソコン実習1 新聞記事の読み方1(練習)+課題付与

第5回 茶話会 新聞記事の読み方2 チームビルディング

第6回 発表の作法 新聞記事の読み方3 作業

第7回 発表準備 新聞記事の読み方4 発表

第8回 発表1 新聞記事の読み方5 発表

第9回 発表2 新聞記事の読み方6 発表

第10回 発表3+課題2(レポート用論文) 春学期の復習3 レポートの作法 第11回 パソコン実習2 背景知識を得る1 ドイツ史概観 第12回 リーディングとレポートの書き方 背景知識を得る2 ウェーバーを知る 第13回 レポートの書き方(作業) レポートに関する質疑応答

第14回 大学の期末試験について(レポート提出) レポート提出 第15回 総括・課題返却と講評 総括

①春学期の取り組み

春学期・秋学期ともに指定テキスト等はないので、一定の認識共有の下担当教員が 講義の具体的な内容や必要な教材を準備するなど裁量が与えられている。シラバスの 枠にしたがって、筆者は「学生が自分で考える」ということを講義の原則にしてプロ グラムを作成した。具体的には政治関連の新聞記事を用いて調査の作法を修得させる ための課題に取り組ませることであり、ここでいう調査の作法とは、「問いを立てる」・

「答えを考える」・「仮説にする」・「調査する」・「検証する」という学問の方法である。

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第一部  研究論文・実践報告 無論高校までの教育体系と異なるので、学生の理解がスムーズに進むとは考えにくく、

様々な教材を用意して学生の理解を促すように工夫をした。たとえば最初の「問いを 立てる」段階では、まず疑問を作ることからはじめる「問い立て用の教材」を準備した。

この教材は、新聞のベタ記事を学生に読ませた後、疑問個所に下線を引かせてその疑 問の内容を5W1Hで表現させるものである。教材そのものはいたって単純なもので あるが、取り組み後学生にどのような問いを考えたのかを発表させてコメントをする、

あるいは学生同士で教材を交換させて他人がどのような問いを立てているのかを知る ことによって、学生の視点の多角化を図った6。さらに、より高次の問いを作るために、

市販本を教材として活用し因果関係を考察する方法を説明し、それを図示させる練習 を行った7

以上のような調査の作法の取り組みを説明した後、それを発表(レジュメの作成も 含む)およびレポートで実践させた。レポートが個人課題であったのに対して、クラ スの人数の都合上発表についてはグループ発表(1グループあたり5〜6名)にした。

2015年度の発表では経済誌の中の政治に関する特集記事を教材として利用し、記事か ら調査を行い発表するという流れにした。またレポートについては、学術論文をこち らで選定して、それに関する調査をレポートにまとめさせた。

課題の内容は政治に関わることであり、したがって政治に関する調査研究を実践さ せたことになるが、政治学の調査研究の方法論については因果関係の説明する際、こ れと関連させて学生に伝えた。初年次教育の目的を周知させ、政治学における調査方 法を定量的な研究と定性的な研究のふたつに簡潔に区分して、各々の特徴を比較した8。 二つの方法論を一度ずつ経験できるように、二つの課題をそれぞれ定性的方法と定量 的方法に合ったテーマになるべく割り振るように企図した。春学期・秋学期の課題は 以下の表3のとおりである。

表3 「入門」・「基礎A」課題

「入門」課題テーマ 「基礎A」課題テーマ

発表 EUに関する政治経済記事 オバマ政権のSNS戦略についての新聞記事 レポート 戦後日本の内閣総理大臣についての学術論文 マックス・ウェーバー『職業としての政治』

これらの取り組みの成果については全体としてほとんどの学生がこなしており、完 成レヴェルに差異は見られたものの、課題の意図を学生なりに把握して取り組んでい ることがよくわかるものであった。ただしグループ発表では、グループで作成するレ

(6)

ジュメを分担制にしたためか十分にまとめきれていないものも散見され、調査内容に 関してもメンバー間で理解度に差があるように感じられた9

発表およびレポートともに、学生の課題をやりっぱなしにさせておくのではなく、

教員が口頭もしくは文章でコメントをするようにした。このため発表では1回の講義 につき2グループの発表が限界であり、レポートでは課題提出後翌週講義で添削とコ メントを付して返却するので、レポートの文字数を2000〜3000字程度に止めた。

講義の終了前には授業の振り返りをさせるために予め項目を記入してある定型用紙 を配布して記入させ、学生が取り組んだことを考え直す機会を設けた。毎回の提出に はさせなかったが、時折提出させ学生の理解の程度を把握するように努めた。その際 必要があれば翌週の講義で全体に向けてコメントするなどした。

②秋学期の取り組み

秋学期については「基礎A」が春学期の発展科目であり、春学期の枠組みを概ね維 持しつつ、学生の理解度をより高められるようにプログラムを組んだ。まず春学期の 取り組みを復習した後、発表については春学期同様グループ発表とした。次いでレポー トについては、二冊の本を読ませて、レポートにするように指示した。

春学期と大きく異なる点は、第一にレポートに力点を置いていることである。すな わち春学期では指定した論文に関するレポート作成であったのに対して、秋学期では 二冊の本にした。二冊の本の内訳は、一冊が古典であり、二冊目がその背景について 知るための本である。その意図は学生が専門書を読解する能力を向上させ、最高目標 として一定レヴェルのレポートを完成させることにある。このためレポート作成準備 のために第10〜13週までの4回の授業を充当した。とくに第11週と第12週は背景知識 を学生に付与するための講義とした。レポートを重視した理由は、学生の考える力を 養うためである。発表およびレジュメの作成もたしかに学生の考える力を身につけさ せる課題ではあるが、より精度の高い思考は、人口に膾炙したモンテーニュの格言を 挙げるまでもなく、書くことで養えるからである。第二に、春学期の復習についてさ らにレヴェルアップを図ったことである。秋学期では因果関係など基本的な考え方を 受講生は多少なりとも知識を有していると考えられるので、政治学的な考え方を春学 期以上に詳説した10

以上の取り組みで政治学初年次教育の目標をある程度達成できたと考えられる。た だしシラバスの概要にも触れられているように、実際の成果の確認は2年次後半から 始まるゼミナールでのみできることであり、2年次以降の追跡調査をしていない。し

(7)

第一部  研究論文・実践報告 たがって現状では、筆者による学生課題のチェックと受講学生のアンケート調査が成

果を確認する主たる方法である。

2.アクティブ・ラーニングについての取り組み

(1) 取り組みへの経緯

先述したようにグループ発表について、学生の取り組みにバラつきがあった。準備 時間の関係もあるが、学生への取組アンケートを実施したところグループでのリハー サルや話し合いが十分でないように思われることを知った11。何らかの策を講ずる必 要性があったが、そもそも5名程度のグループで全員がそろって何度も打ち合わせを するのは時間の都合上困難であろう。少ない回数で調整ができるように工夫をする必 要があると判断するに至った。

グループのメンバーを仲の良い者同士で組ませることは、必ずしも仲の良い学生同 士が組めるとは限らず除外された学生が孤立してしまう可能性があること、仲の良い 学生同士であればかえって適当にしてしまうことも考えられることなどの理由から除 外した。つまり相互によく知らない学生同士を極力組ませるようにしたのである。こ うなると学生はコミュニケーションをとる必要性に迫られるので、それを促すゲーム・

プログラムを準備することとした。ただしいくつかの条件があった。ひとつは、相互 のコミュニケーションを促すことを目的とするプログラムは科目の目的には直接つな がらないので、導入するとしても最小限にとどめるべきであることである。ふたつめ は、学生が当該プログラムの目的をきちんと把握して取り組めるように準備をするこ とである。最後に学生が余裕をもって時間内にプログラムを達成できるようなものに することである。

以上のことを踏まえて、学生相互のコミュニケーションの促進に寄与するゲームを、

本年度秋学期の「基礎A」で実施することにした。コミュニケーションのツールとし てのゲームには様々なものがあり、市販もされているが、今回のプログラムに合致す るようなものを選定した12

(2) アクティブ・ラーニングについて

このようなゲームによる取り組みは、一般的にはアクティブ・ラーニングに分類さ れるが、アクティブ・ラーニングついては、さまざまな取り組みがなされており、そ の成果報告もされてきている。その定義については一様ではないが13、たとえば文部

(8)

科学省では以下のようになされている。

  教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参 加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認 知的、倫理的、社会的能力、 教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。

発見学習、問題解決学習、体験学習、調査 学習等が含まれるが、教室内でのグルー プ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク 等も有効なアクティブ・ラー ニングの方法である14

今回の授業(第5回講義)では、「コンセンサスによるグループ決定」ゲームの体 験によってグループのコミュニケーションを円滑化・促進させることを学修するとい う目標を掲げた。学生主体で取り組むために、筆者はファシリテーター役に徹し、結 節時に必要最小限の指示・連絡をするにとどめた。ゲームを円滑に進めるために自己 紹介のゲームをアイスブレーキングとして最初に行わせ15、その後準備していたゲー ムを実施した。取り組み自体は滞りなく終了した。

第6回講義では、発表のためのグループワークを実施させた。作業時間やグループ で話し合ったことや今後の計画について予め配布した報告用紙に記入させ提出させた こと以外は、グループの裁量に委ねた。グループ作業中巡回したが、各グループは積 極的に議論していた。また最後に提出させた報告用紙についてもきちんと取り組んで いることがわかった。

第7回講義では、二つのグループに発表させた。準備期間が短かったにもかかわら ず、発表に問題はなく、またレジュメについても体系的にまとめられていた。

第8〜第9回講義でも何ら問題もなくスムーズにすすんだ。

以上の第7〜第9回までの取り組みについて筆者の主観であるが、グループの課題 取り組みはグループとしてのまとまりを感じさせるものであった。先述したようにグ ループ発表では例年まとまりを欠く、いいかえれば打ち合わせ不足のグループが散 見されたが、今回の発表ではそのようなことは少なくなった。もっともこれはたんな る偶然の可能性も排除できないので、以上のプログラムの取り組について学生にアン ケートを取って集計してみた(表4−1、表4−2、相関図)。

まず、質問項目についての分類を説明する。質問項目は三つに区分でき、それぞれ ゲームの過程を評価する(質問①および②)、ゲームの結果を評価する(質問③)、グルー プ発表を評価する(質問④)となる。このうち最後のグループ発表評価がゲームの目

(9)

第一部  研究論文・実践報告 的となり、ゲームの直接評価ではない。

つぎに、平均値を見るとゲーム自体が優れているので、高い値となっているが、こ れは報告者の過去の知見からも予想できたことである。

グループ発表評価とゲームの直接評価との関係を見ると(表3−2、相関図)、グルー プ発表評価が高い学生はゲームの過程評価および結果評価ともに高くなっている。逆 に、グループ発表評価が低い学生はゲーム評価も相対的に低い。二つの評価には相関 関係がみられるといえる。

表4−1 平均値

質問項目 平均値(6段階評価で数字が高い方が成果大)

質問①:自分の意見を主張できたか。 5

質問②:相互に意見を聞けたか。 5.6

質問③:コンセンサスは形成できたか。 5.1 質問④:ゲームがグループ発表に役立ったか。 5.2

表4−2 ゲーム評価とグループ発表評価の相関

質問番号 高評価(質問④の値が6) 中評価(同5) 低評価(同4)

質問① 5.4 4.9 4.5

質問② 5.8 5.6 5.3

質問③ 5.7 4.9 4.5

質問④ 6 5 4

図 ゲーム評価とグループ発表評価の相関図

0 1 2 3 4 5 6

質問① 質問② 質問③ 質問④ 高評価 中評価 低評価

(10)

今後の課題は、低い評価をする学生をいかにして減らすかということになろう。90 分授業という制約の中で、コミュニケーションを促進させるためには現在の6名グ ループをより少人数編成にすることが考えられる16。事実、低い評価をした学生が、「人 数が6人と多く、4人くらいで構成されていたほうがコミュニケーションの促進に役 立ったのではないか」というコメントを寄せている。学生の間に存在するであろうコ ミュニケーション能力の差異を無視してグループ分けをする以上、こうした配慮は必 要となろう。もっとも、ゲームについて否定的評価をくだしたわけではなく、ゲーム の取り組みを否定する学生は少なくともアンケート結果には表れていない。

3.成果と課題

この3年間の取り組みについて述べてきたが、報告者の主観的に見ても一定の成果 があったと考える。また学生アンケートの結果でも、学生自身も役立っていると考え ているようである。

しかしながら、課題も残されていると考える。第一に、ディベートなど学生が発言 する機会を増やすことが挙げられる。とくに「基礎A」では発表そのものについて学 生は経験済みであるので、異なるやり方を経験させる必要性はある。レポートを重視 しながらも、講義計画の変更などで対応できよう。第二に、レポートと関連するが、

課題記事や図書の要約に十分に取り組ませていないことが挙げられる。要約は何が要 点かを把握することである。研究書籍・論文の要点をつかむトレーニングとなろう17。 第三に、学生の取り組んだ課題の評価基準について明確化できていないことである。

発表やレポートの客観的基準を定めることは困難であるが、ある程度の基準を明示す ることは学生にとって有用ではないかと考える。第四に、学生の取り組んだ課題のレ ヴェルをこれまで以上に向上させることである。政治学の方法論の入門的な説明をし たことは「取り組み」の中で述べたが、説明に費やせる時間に限りがある中で平易で 密度の濃い説明をするかが問われている。これは報告者の力量にかかっており、今後 の研鑽が必要なことでもある。

おわりに

本稿は、政治学導入教育の工夫とグループ・ワークによるアクティブ・ラーニング の実践について報告した。講義についての課題は本文中で触れたが、授業支援のため

(11)

第一部  研究論文・実践報告 に参加しているSAの積極的な活用を個人的に出来る範囲で検討したい18。過去のSA経

験者の中には、SAにとっても初年次教育が有用だとコメントする者が散見されたか らである。

  たとえば川島啓二は、初年次教育の領域を①スタディ・スキル系、②スチューデント・ス キル系、③オリエンテーション(ガイダンス)、④専門教育への導入、⑤学びへの導入目 的、⑥情報リテラシー、⑦自校教育、⑧キャリアデザインに区分する。「初年次教育の諸領 域とその広がり」『初年次教育学会誌』第1巻1号。また初年次教育を包括的にまとめた ものとして、初年次教育学会編『初年次教育の現状と未来』(2013年  世界思想社)が挙げ られる。

  要因は、クラスごとの曜日・時限の相違が大きいのではないかと考えられる。他の担当者 に聞くと、とくに1限目の場合受講者数が極端に少ないようである。

  SAについての定義は「SA制度は、大学院学生、学部学生に対し、学部あるいは大学院教 育等におけるきめ細かい指導の実現を目的としており、正課科目の教育活動において基 本的な補助業務を担当する」とされている。『同志社大学自己点検・評価報告書2013(平 成25)年4月  Ⅶ教育研究等環境』 384頁。(http://www.doshisha.ac.jp/accredit/attach/

page/ACCREDIT-PAGE-JA-14/19633/fi le/eval2012̲07.pdf)を参照。

  「4年間のカリキュラム」同志社大学法学部政治学科HP参照。(http://law.doshisha.

ac.jp/politics/curriculum/)

  授業計画作成に際して一部ではあるが以下のような文献を使用した。大学での学び全体 について溝上慎一『大学生の学び・入門 大学での勉強は役立つ』(2006年 有斐閣アルマ)、

小林康夫/船曳建夫編『知の技法』(1994年  東京大学出版会)、佐藤望編著・湯川武・横山千 晶・近藤明彦『アカデミック・スキルズ  大学生のための知的技法入門』(2006年  慶應義塾 出版会)。教材等については、たとえば以下のような書籍類を参考にした。佐藤智明・矢島 彰・安保克也編『新版  大学学びのことはじめ  初年次セミナーワークブック』(2011年  ナ カニシヤ出版)、世界思想社編集部編『大学生学びのハンドブック  改訂版』(2011年  世界 思想社)。

  「問い立て教材」を用いた分析については以下にまとめた。小出輝章「学生の考察力を高 める実践報告−「問い立てドリル」の取り組み」『「学生の参加意欲を喚起する授業方法に 関する研究・実践」(平成24年度および平成25年度大阪商業大学教育活動奨励助成費)報 告書』(2014年)

  高根正昭『創造の方法学』(1979年 講談社現代新書)

(12)

  ふたつの方法については、G.キング、 R.O.コヘイン、S.ヴァーバ/真渕勝(監訳)『社会科 学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論』(勁草書房  2004年)や、ス ティーヴン・ヴァン・エヴェラ、野口和彦・渡辺紫乃(訳)『政治学のリサーチ・メソッド』

(勁草書房  2009年)などを参照。ただしこれらの書籍は学部学生レヴェルではないので 簡単なポイント説明にとどめた。

  その一因は、フリー・ライダー発生を認めないことを厳達したために、完全分業制になっ てしまったことが考えられる。

10  たとえば、久米郁男『原因を推論する−政治分析方法論のすゝめ』(2013年  有斐閣)を紹 介した。ただし前掲の『創造の方法学』と本書はともに因果的推論の方法を中心に説明し たもので、歴史思想といった解釈を深く論じたものではない。前述した定量的研究と定 性的研究は、それぞれ理論・モデル分析と歴史・思想解釈に分類することもできる。授業 の中では両系統を説明する必要があるが、歴史・思想系統の(因果関係以外)の解釈方法 については例を挙げて簡潔に説明するにとどめており、因果関係の説明と比較して不十 分であった。この点については今後の課題である。

11  リハーサル回数についてアンケートでの学生の回答は1回が最も多かった。

12  他大学の取り組みについても調査した。たとえば体験学習として教材を公表して い る 大 学 も あ る。「 体 験 学 習 実 習 教 材 公 開  -  南 山 大 学 」(https://www.ic.nanzan-u.

ac.jp/~tsumura/kyouzaikoukai/kyouzaikoukai.html)なおこれについては利用してい ない。

13  理論的に整理された研究として、たとえば、溝上慎一『アクティブ・ラーニングと教授学 習パラダイムの転換』(2014年 東進堂)が挙げられる。

14  文部科学省HP「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて〜生涯学び続 け、主体的に考える力を育成する大学へ〜(答申)」(平成24年8月28日  中央教育審議会)

の用語集 (http://www.mext.go.jp/component/b̲menu/shingi/toushin/̲ ̲icsFiles/

afi eldfi le/2012/10/04/1325048̲3.pdf)

15  今回の授業では使用しなかったが、平易に取り組めるゲームとしてたとえば、ブライア ン・コール・ミラー/  富樫  奈美子(翻訳)『15分でできるチーム・ビルディング・ゲーム  』

(2005年 ディスカヴァー・トゥエンティワン)が挙げられる。

16  ただし個人発表にする余裕はなさそうなので、若干減らすことで対応することになろ う。

17  講義内で取り組めなくて、翌週までの課題とすることで対応可能と考える。

18  SAを活用した取り組み事例として、杉田一真「大学事例報告④(大阪会場)初年次教育を

(13)

第一部  研究論文・実践報告 テコに大学改革を推進:嘉悦大学(経営経済学部)河合塾編著『初年次教育でなぜ学生が

成長するのか―全国大学調査からみえてきたこと』(東信堂  2010年) 137〜153頁。ピア・

サポーターについて論考として、川島啓二「初年次におけるピア・サポートの役割と今後 の課題」初年次教育学会編『初年次教育の現状と未来』(世界思想社 2013年)を参照。

参照

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