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視点伝承論への新たな試み : 「説話・伝承学会」 設立にむけて

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Academic year: 2021

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視点伝承論への新たな試み : 「説話・伝承学会」

設立にむけて

著者 谷口 広之

雑誌名 同志社国文学

号 20

ページ 56‑57

発行年 1982‑03

権利 同志社大学国文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004965

(2)

視点 五六

伝承論への新たた試み

 1﹁説話・伝承学会﹂設立にむげて1

       谷 口 広 之

 昨秋︑同志杜大学で開催された説話文学会地方大会は多数の

研究者︑学生の参加によって盛況裡に幕を閉じたが︑その会場

で関西を中心に︒した新しい伝承研究の会を切望する声が多く挙

がった︒これを契機にして組織と活動をあらたにする学会の設

立の気運が高まり︑あげて一月十五目︑立命館大学において設

立準備会が催され︑活動方針等の討議の結果︑ ﹁説話・伝承学

会﹂の名称をもって四月二十九目の設立大会及び第一回総会の

開催が決定された︒

 従来︑説話研究や伝承研究の分野には︑説話文学会をはじめ

として目本口承文芸学会︑伝承文学研究会などの組織があり︑

また国文学や民俗学などの領域でも説話や伝承の研究は︑主要

な分野のひとっを占め︑そのために各大学︑各地方に多様で相

当数の研究組織が存在する︒そのようた状況のたかで︑新しく 発足するこの学会の意義はどこにあるのか︒また︑この学会は伝承研究の分野においてどのような活動をめざすのか︒それらの間題は実は伝承研究の今目性と深くかかわっている︒ 神話や説話や語りものたどのジャソルを扱う国文学の研究は︑書承伝承︑つまり書かれた説話を主として進められ︑昔話や伝説などを対象とした民俗学の研究は︑語られる説話に比重を置くという傾向が以前からあった︒両者がどこでどう切り結びあうのか︑そして書承も口承も含めて︑それらを育み伝承してきた伝承杜会の構造とはどのようたものなのかという総体としての視点が今要求されている︒ そのためには︑個別の研究領域に自らを閉じ込めることをせず︑生きた生活伝承︑歴史的な伝承時空に研究を解放し︑広い視野とフィールドのたかにその方向性を求めていかなけれぱたらない︒フィー火ドワークは民俗学の基本的方法であるが︑たんなる踏査や採集ではたく︑フィールドのたかに伝承を求め︑フィールドのたかに伝承を意味づげようとする行為である︒従って︑説話・伝承学会は伝承研究を志す研究者だけの集団ではなく︑いわゆる郷土史家︑すたわち各地方で在地に根ざした調査研究を推し進めている在野の研究者の参加をも広く求める組

織である︒そして説話・伝承学会は定期の大会以外に︑年一回

(3)

視 地方を開催地とする大会を持つ︒伝承研究の蓄積された地に全国の研究者・郷土史家が集い︑実際の民俗に触れることを通じて︑各個の課題を深めていこうという構想である︒初年度の地方大会は︑伝承の地信州伊那谷︑飯田市において開かれる︒かつて柳田国男や折口信夫が熱く凝視した伝承の庫である︒ フィールドワークが説話・伝承学会の方法的視点としての一方の軸であるとするならぱ︑他方︑グローバルな視野のもとに伝承をとらえることがもうひとっの軸である︒従来からも︑伝承研究はもちろんのことさまざまな文化領域において国際的た比較研究はおこなわれてきたが︑フィールドワークを視点に据えた比較研究は必ずしも多いとはいえない︒文字化された伝承のみたらず︑その後背地としての広々としたフィールドまでをも視野に収めたけれぱ︑比較研究はその価値を半減する︒その意味で庵美・沖縄をはじめとする南西諸島は早くから注目を集めていたが︑近年︑朝鮮半島や東アジアを含めた広汎な比較文化論がとみに盛んであり︑そのような視点をもつことがわれわれの伝承研究をより活発に豊かにしていくことは明らかである︒

 ちなみに−︑一月十五目に開かれた設立準備会は︑講演会を同

時に兼ねたが︑講演者は︑武田太郎伊那谷民俗文化研究所次長 ︵﹁伊那谷の原風景﹂︶︑山下宏明名古屋大学助教授︵﹁叙事詩論をめぐって﹂︶︑松前健立命館大学教授︵﹁韓国の巫女の祭りとその伝承﹂︶であった︒武田氏の講演は︑文字通りフィールドからの報告であり︑伊那谷という風土が育んだ伝承を都との関違において論じられ︑山下氏は中世の語りものを念頭においた

ヨーロッバのギリシャ以来の叙事詩の伝統との比較文学論的視

点を展開され︑また松前氏は韓国各地の実地踏査に基づいた多

様なシャーマソたちの姿を紹介された︒説話.伝承学会が今後

めざそうとする方向が明示されていた講演会であった︒

 国文学︑民俗学はいうに及ぱず︑歴史学︑外国文学︑民族

学︑文化人類学などの諸研究の成果にのっとった学際的た伝承

をめざす学会として幅広い分野からの御参加を心より切望す

る︒ たお︑四月二十九日の設立大会及び第一回総会は︑同志杜大

学において開催される︒

五七

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