• 検索結果がありません。

焼成貝殻粉末を混入したモルタルの膨張量の評価 Evaluation of mortar expansion containing burnt shell powder

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "焼成貝殻粉末を混入したモルタルの膨張量の評価 Evaluation of mortar expansion containing burnt shell powder"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

焼成貝殻粉末を混入したモルタルの膨張量の評価

Evaluation of mortar expansion containing burnt shell powder

苫小牧工業高等専門学校 環境都市工学科 ○学生員 篠原将也 (Masaya Shinohara) 苫小牧工業高等専門学校 環境都市工学科 正 員 廣川一巳 (Kazumi Hirokawa) 苫小牧工業高等専門学校 環境都市工学科 正 員 渡辺暁央 (Akio Watanabe) 苫小牧工業高等専門学校 専攻科 環境システム工学専攻 学生員 石井允都 (Masato Ishii)

1. はじめに

著者らは、地産地消の観点から苫小牧市の特産物であ るホッキ貝に着目し、コンクリート材料への適用性を検 討している。既往の研究により、粉末化したホッキ貝殻 を 1000℃で焼成し、焼成貝殻粉末をセメントの一部と 置換したモルタルが膨張する現象が認められた。膨張原

因はCaCO₃が CaOに変化し、これが水と化学反応して

生成されたCa(OH)₂によるものであることが確認された。

一方、水産系廃棄物として発生量の多いホタテ貝殻に関 しても1000℃で焼成するとCaOに変化し、ホッキ貝殻 と同様に膨張することが明らかになっている¹⁾。

本研究では、ホッキおよびホタテの焼成貝殻粉末によ る膨張量を定量評価するために、ASTM C 1698-09に準 じたコルゲートチューブを用いたモルタルの長さ変化試 験およびJIS A 6202コンクリート用膨張材の規格に従い モルタルの拘束膨張試験を行い、膨張特性の違いを検討 することを目的とした。

2. 実験概要

2.1 焼成貝殻粉末の作製

本研究で使用するホッキ貝殻およびホタテ貝殻は、実 験前に洗浄および乾燥後、粉砕し75µmふるいを通過し たものをホッキパウダー(以下、HP)およびホタテパウダ ー(以下、SP)とした。これを 1000℃で 1 時間焼成した ものを焼成HP および焼成SPとする。なお、焼成した 貝殻は焼成後に再度粉砕して、再び粉末状に加工し、セ メントの一部と置換してモルタルを作製した。

2.2 使用材料および配合

普通ポルトランドセメント(密度:3.14g/cm³)および厚 真産陸砂(表乾密度:2.77g/cm³、吸水率:1.96%)を使用 したモルタル供試体を作製した(以下、N)。また、セメ ント質量に対して焼成 HP(密度:2.95g/cm³)および焼成 SP(密度:3.05g/cm³)を 10%置換したモルタル供試体を 作製した(以下、HP10 および SP10)。比較のために低添 加型の石灰系膨張材を用いたモルタル供試体も同様の配 合で作製した(以下、B10)。配合を表-1に示す。

2.3 コルゲートチューブを用いた長さ変化試験¹⁾

練混ぜ直後からの膨張量の定量評価をする手法として、

ASTM C 1698-09に準じたコルゲートチューブを用いた 長さ変化試験を実施した。

直径約30mm、長さ約425mmのポリエチレン製コル ゲートチューブを振動台の上に設置し、振動を加えなが

-1 配合表 置換率

(%) W/C

(%) 水 (g)

セメント (g)

置換量 (g)

細骨材 (g)

0 50 218 436 0

1113

10 392 44

ら、モルタルを上部から注ぎこんだ。その後、テフロン 製の栓をして、長さ変化測定用の供試体とした。これを

20℃の恒温室で 30°の角度に固定した台に設置し、長

さ変化測定装置を用いてレーザー変位計で長さ変化を測 定した。供試体本数はそれぞれの配合に対して3本ずつ 測定した。なお、測定範囲は+10~-10mmである。

2.4 拘束膨張試験

水中養生による膨張特性を定量評価する手法として、

JIS A 6202 コンクリート用膨張材の規格に従いモルタル の拘束膨張試験を実施した。

全長約 158mm(モルタル部分、約 135mm)の拘束器具 を型枠に設置し、モルタルを流し込んだ。拘束器具を設 置する際には、振動台の振動による拘束器具の浮き上が りおよびゲージの先端へのモルタル付着を防止するため に、型枠と拘束器具とのすきまにパッキンを挟みこんだ。

材齢 1 日で脱型し、これを長さ変化測定用の供試体(40

×40×135mm)とした。これを 20℃の恒温室でダイヤル ゲージを用いて測長を行う。測長後、20±1℃の水槽に 入れて養生し、材齢7日目まで測長を行い、長さ変化率 を求める。供試体本数はそれぞれの配合に対して3本ず つ測定した。

3. 結果および考察

3.1 コルゲートチューブを用いた長さ変化試験結果 モルタル供試体の長さ変化試験結果を図-1 に示す。

変位はコルゲートチューブの初期の長さ 425mm からの 長さ変化を示している。各供試体共に打設直後から 4~5 時間の間までに著しい収縮を示した。これはセメントの 水和反応による収縮であると考えられる。Nにおいては それ以降ほとんど長さ変化が見られなかった。SP10 に おいても収縮量は N と比較して少ないが収縮後ほとん ど長さ変化は見られなかった。HP10 は収縮後、材齢 1 日経過するまで著しい膨張を示し、1 日経過以降ほとん ど長さ変化は見られなかった。これは、コルゲートチュ ーブという密閉空間内では反応する水の量が限られてい るためであると考えられる。また、B10は材齢1日経過 以降から、徐々に膨張していることを確認した。

平成24年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第69号

E-15

(2)

3.2 拘束膨張試験結果

モルタル供試体の拘束膨張試験結果を図-2 に示す。

変化量は打設前の拘束器具をダイヤルゲージを用いて測 長したものを基準としている。打設直後から材齢1日ま での長さ変化率はHP10が約0.12%で大きく、B10 は約 0.02%であり小さい。その後、HP10 は材齢 2 日経過す

るまでに 0.17%まで膨張を示し、それ以降はほとんど長

さ変化が見られない。一方、SP10 および B10 は材齢 2~3 日経過するまでに 0.1~0.12%の膨張を示し、それ以 降も若干の膨張の継続が確認された。なお、Nは脱型後 収縮を示し、ほとんど長さ変化が見られなかった。

図-3 は、材齢 1 日を基準とした場合の長さ変化率を 示したものである。HP10、SP10、B10 の供試体共に、

水 中 養 生 を し て か ら は 1 日 程 度 経 過 す る ま で に

0.06~0.09%の著しい膨張を示している。すなわち、脱型

から水中養生することによる急激な膨張はいずれの供試 体も大きな差はないようである。

3.3 考察

焼成した貝殻は CaO であり、石灰系膨張材の主成分 と同じになる。しかし、焼成前はHP がアラゴナイト型、

SPがカルサイト型のCaCO₃である。そのため、SPは同 じカルサイト系の CaCO₃から製造されていると推定さ れる石灰系膨張材と類似した膨張特性を示したものと考 えられる。一方、アラゴナイト型のHPを焼成したもの は、SPおよび Bと明らかに膨張特性が異なっている。

すなわち、HP は練混ぜ直後等の水が多い環境で急激な 膨張を示すものの、新たな水分供給がない限り、膨張が 発生しない。一方、SPおよびB は継続的な膨張を示す。

この膨張特性の違いを利用することにより、水和過程の どの段階の体積変化を抑制するかといった綿密なコンク リートの体積制御ができる可能性があるといえる。

4. まとめ

本研究では、焼成HP および焼成SPをセメントの一 部と置換し作製したモルタルの膨張量の定量評価するた めに、コルゲートチューブを用いたモルタルの長さ変化 試験およびモルタルの拘束膨張試験を行い、密閉状況下 と水中養生下との膨張特性の違いについて検討を行った。

結果をまとめると以下のようになる。

(1) コルゲートチューブを用いたモルタルの長さ変化試 験およびモルタルの拘束膨張試験の結果共に、練混 ぜ直後から材齢1日経過までの膨張量はHP10が大 きい。

(2) コルゲートチューブを用いたモルタルの長さ変化試 験において、HP10およびSP10の供試体共に材齢1 日経過以降ほとんど長さ変化は認められないが、

B10は徐々に膨張していることが認められる。

(3) モルタルの拘束膨張試験において、材齢1日目から 水中養生を行うことにより、HP10、SP10、B10 の 供試体共に、水中養生をしてから1日経過するまで 大きな膨張を示す。その後、HP10は膨張を示さず

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

0 1 2 3 4 5 6 7

(mm)

経過時間(day)

SP10 N

HP10

B10

図-1 コルゲートチューブによる長さ変化試験結果

-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 0.2

1 2 3 4 5 6 7

変化率(%)

経過時間(day) N B10 SP10

HP10

図-2 拘束膨張試験結果

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 0.2

1 2 3 4 5 6 7

変化率(%)

経過時間(day) HP10

B10 SP10

N

図-3 拘束膨張試験結果(水中)

SP10およびB10は徐々に膨張する。

参考文献

1) 石井允都、渡辺暁央、廣川一巳:焼成貝殻粉末を使 用したモルタルの膨張特性について、プレストレス トコンクリート工学会 第 21 回シンポジウム論文 集、pp.541-544,2012

平成24年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第69号

参照

関連したドキュメント

(独)寒地土木研究所 正 員 今野久志 (Hisashi Konno) 三井住友建設 (株) フェロー 三上 浩 (Hiroshi Mikami) 釧路工業高等専門学校 フェロー

千葉工業大学 大学院 建築都市環境学専攻 学生会員 ○長沼 直人 千葉工業大学 工学部建築都市環境学科 正会員 内海

環境・エネルギー 大阪大学大学院 工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 助教 工学.. 近畿大学 理工学部

室蘭工業大学大学院 ○学生員 田中 優貴 (Yuuki Tanaka) 室蘭工業大学  正 員 小室 雅人 (Masato Komuro) ( 国研 ) 寒地土木研究所  正 員 今野 久志 (Hisashi Konno) ( 国研 )

名古屋大学工学部 ○澤山 皓亮 名古屋大学大学院社会基盤工学専攻 フェロー会員 伊藤 義人 名古屋大学大学院社会基盤工学専攻 正会員 北根

首都大学東京大学院 都市環境科学研究科(〒192-0397 東京都八王子市南大沢1-1) E-mail:takumasudo0705@yahoo.co.jp 首都大学東京大学院 助教

*** 学生会員 神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻 博士課程前期課程 ( 同上 ) In this paper, we analytically and experimentally investigated bottom friction effects on a

神戸大学大学院工学研究科 ○学生会員 衣笠 恭介 神戸大学大学院工学研究科 正会員 藤田 一郎 神戸大学大学院工学研究科 学生会員 谷 昂二郎 神戸大学大学院工学研究科 学生会員