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学位論文の要旨 Abstract of Thesis

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Academic year: 2022

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R2:様式乙/Form Otsu 2-1

学位論文の要旨

Abstract of Thesis

研究科

School 自然科学研究科

氏 名

Name 山本 裕

学位論文題目 Title of Thesis(学位論文題目が英語の場合は和訳を付記)

島嶼性鳥類の地域個体群の変動要因と保全に関する基礎的研究

学位論文の要旨 Abstract of Thesis

近年、地球規模での生物多様性の消失が進み、種の絶滅の加速が報告されている。本論文では、特に 保全上の優先度が高い島嶼性鳥類を対象に、伊豆諸島に生息する鳥類の地域個体群の変動要因を調べる と共に、絶滅危惧種に関する現状把握と生態の基礎情報を集め、今後の保全に資することを目的とした。

調査地の伊豆諸島三宅島は、第4紀火山の一つであるが、複数の固有種と固有亜種の鳥類が生息する 生物多様性保全の観点から貴重な島である。この島の鳥類群集に影響を及ぼす要因と、絶滅危惧種アカ コッコとカンムリウミスズメに関して生態に関する基礎情報の収集を行なうとともに、三宅島の鳥類群 集を相対的に示すために本州西部(広島県山県郡芸北町及び佐伯郡大野町、山口県)、及び小笠原諸島西 之島、奄美群島喜界島の鳥類相との比較を行なった。

本州西部の広島県芸北町における鳥類相の調査では5目41科149 種の鳥類が記録され、地域を特徴 づける種としてシロハラとミヤマホオジロの繁殖が確認された。次いで、山口県内の 11 か所の調査地 において1973年から1995年の間に確認された種の出現率を期間別に夏鳥と留鳥間で比較した結果、夏 鳥の方が留鳥よりも減少率が高いことが明らかになった。

地域の鳥類群集の変動要因には自然要因と人為的要因がある。鳥類の場合、本来の分布域以外に鳥類 が分散、移入することは鳥の行動の一つであるが、本論文では自然要因として、自然移入と、2000年に 発生した三宅島の火山噴火による鳥類群集の変動について調査した。その結果、自然移入に関しては、亜種 オーストンヤマガラの分布域である三宅島で、本州亜種ヤマガラが観察され、また、インド、中国南部、

フィリピン等に生息するルリオハチクイが伊豆諸島八丈島で国内で初めて観察された。亜種ヤマガラの 移入は冬期のみで繁殖は確認されず、ルリオハチクイの観察も1回のみであったが、近年、伊豆諸島ではル リオハチクイ以外にも、三宅島でタカサゴクロサギ、オニカッコウなど南方系の鳥類が確認されており、気 候変動により本来の分布が変わりつつある可能性が示唆された。また、奄美群島喜界島ではモズが自然移 入し、個体群が確立されつつあるが、リスクを回避する傾向を調べるため、人が近づいた時の飛び立ち 距離を島の個体群と本土間で比較したところ、島の個体群の方が本土よりも約 2 倍長く、リスクを回避 し、島に定着していくうえで有利になる可能性が示唆された。

鳥類群集の変動の自然要因として、三宅島では火山活動による鳥類への影響が大きな要素であるが、

三宅島 2000 年噴火では、火山活動開始直後に、粒子の細かな火山灰の鳥類への付着、降灰による植生 への影響、食虫性鳥類や地上採食性鳥類の採餌環境の悪化が観察された。また、長期的なラインセンサ

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R2:様式乙/Form Otsu 2-2 Name 山本 裕

ス結果から、火山ガスにより植生が枯死した南西部の調査地で確認種数が減り、オーストンヤマガラ、ヒヨ ドリが減少し、シジュウカラが増加していることが明らかになった。これらの変化は、火山活動開始直後の 降灰による鳥類と採餌環境への直接的な被害や、山頂陥没による生息地消失の直接的な影響に加えて、山頂 火口からの火山ガス放出が長期間継続し、植生が枯死したことによる生息環境の悪化や採餌環境の変化等に よる間接的な影響によるものと考えられた。

三宅島では、地域個体群に影響を与える人為的要因として、交通事故によるロードキルが影響を与え ている可能性が挙げられた。車の前を横切る鳥類の種類と数を調査したところ、アカコッコ、ホオジロ、

ツグミ、ヒヨドリ、ハシブトガラス、イソヒヨドリ、メジロの個体数が多く、中でもアカコッコ、ホオ ジロ、ツグミは車高以下の低い位置を横切る割合が高かった。実際、これら3種のうち2種についてはロー ドキルによる死体が確認された。これらに加えて、ウグイス、ミソサザイなども低い場所を移動することか ら潜在的リスクがあると考えられた。道路を横切る鳥類個体数の経時変化は、日の出時刻が最も多く、日 の出時刻5時間、10時間となるにつれて数は減った。三宅島では、日の出時刻の時間帯は定期船の入港 時間にあたり交通量が多いため事故に遭っている可能性が高いことが考えられた。

絶滅危惧種に関する現状把握に関しては、アカコッコを調査対象とした基礎研究では、伊豆諸島とトカ ラ列島間の生息密度の比較では、伊豆諸島の方が高く、伊豆諸島における生息密度は三宅島で高いこと が明らかになり、本種の個体群の主要な生息地であることが示された。また、さえずりを構成するシラ ブル数に種内の地理的変異があり、八丈島の個体群では三宅島より少なく、青ヶ島やトカラ列島では多 いといった差があった。これらの結果から、島ごとに隔離された個体群では、種内変異が進みつつある ことが示唆された。

カンムリウミスズメを対象とした基礎研究では、卵殻に付着していた卵殻膜のDNA から同種の同定 を可能とする手法を確立した。この手法により、静岡県下田市神子元島での約 27年ぶりの繁殖の再確 認ができたが、この手法の応用により、卵殻や羽毛などの痕跡から新たな繁殖地を始めとして、本種が 利用する地域を把握できると期待される。また、本種の洋上分布調査のデータを用いて、海鳥を指標と して重要な海域を選定し、保護施策を進める日本のマリーンIBA(Marine Important Bird and Biodiversity

Areas)の選定に寄与することができた。

今後は本研究により得られた情報を基に、火山活動からの鳥類群集の回復過程、絶滅危惧種の個体群 変動や自然移入種の定着の有無等については継続的にモニタリングをしていくこと、また、個体群に負 の影響を及ぼす要因のうち人為的要因に関しては、軽減させるための施策に反映させる等の取り組みを 進め、島嶼性鳥類、特に絶滅危惧種の保全を図ることが必要である。

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