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人間科学研究 Vol. 27, Supplement(2014)
修士論文要旨
1.序論
医療現場における検査・治療の領域は常にリスクとの隣 合わせであり,薬剤による副作用や予期せぬ急変など,さ まざまな偶発症が起こる可能性がある.そのため,検査・
治療部門に配属されたスタッフは,患者急変時に的確かつ 迅速に対応できる能力を身につける必要がある.
2.研究1:GBSに基づく造影剤副作用発現時対応研修の効果 2.1.目的
ゴールベースシナリオ(Goal-Based Scenarios,以下,
GBS)に基づく造影剤副作用発現時の対応研修は,講義の みの教育方法よりも効果的なのか,また職種や学習スタイ ルの違いによって効果に差があるのか明らかにする.
2.2.方法
講義資料およびビデオ教材は「造影剤血管内投与のリス クマネジメント」に基づき作成した.テストは再認法15問,
再生法5問とし,研修前,研修直後,半年後に実施した.ま た,学習者の具体的な学習方法の好みを測るための質問を 6項目作成し,研修前に調査した.対象者は,X総合病院 放射線科に従事する看護師26名(GBS群:12名,非GBS 群:14名),放射線技師26名(GBS群:14名,非GBS群:
12名)であった.GBS群には,ビデオ教材と実習を組み合 わせた研修を行い,非GBS群には講義のみのレクチャー型 研修を行った.
2.3.結果
学習方法の好みに関する因子分析を行い,3因子4項目 が得られ,「実習型」「視聴覚型」「独学型」と命名した.
テスト得点を分析した結果,再生法で群による差がみら れなかったため,再認法の得点によって検討した.実験条 件,学習スタイル,テスト時期の3要因によって分散分析 した結果,看護師では実習型(
F
(2,44)=5.28,p
<.05),視 聴覚型(F
(2,44)=5.60,p
<.05),独学型(F
(2,44)=4.78,p
<.05)いずれも,実験条件とテスト時期の交互作用は有意であった.一方,放射線技師では,いずれの学習スタイ ルにおいても交互作用は有意ではなかった.
3.研究2:eラーニングを活用した急変時対応研修の効果 3.1.目的
eラーニング(以下,eL)を活用した患者急変時対応研 修を行い,eL教材における問題と解説の提示方法,職種,
eL指向性の違いによる効果を明らかにする.
3.2.方法
X総合病院内視鏡センターに従事する,看護師13名,消 化器内科医師10名,臨床工学技士と放射線技師(以下,コ メディカル)38名であった.eLは,すべての動画を配信後, テスト問題と解説をまとめて提示する「まとめテスト群」,
単元ごとにテスト問題と解説を提示する「単元テスト群」
の2種類の教材を作成した.筆記テストは,再生法15問,再 認法5問とし,研修前,eL後,シミュレーション後に実施
した.また,eL指向性による効果を検討するために,向 後・冨永(2010)による「eL指向性尺度」に基づき質問14 項目を作成した.
3.3.結果
テスト得点を分析した結果,テスト条件で群による差が みられなかったため,まとめテスト群と単元テスト群の得 点を合算して検討した(図1).職種の違いによる主効果は 有意であり(
F
(2,55)=19.0,p
<.01),多重比較では,看護 師の平均が他の職種よりも有意に高かった(MSe
=14.4,p
<.05).テスト時期による主効果は有意であり(F
(2,110)=201.01,
p
<.01),シミュレーション後の平均が,すべて の組み合わせで有意に高かった(MSe
=3.11,p
<.05).eL指向性に関する質問14項目を得点化し,全体得点50 点以上31名を高群,49点以下30名を低群とした.eL指向性,
テスト時期の2要因によって分散分析した結果,eL指向性
(
F
(1,59)=5.94,p
<.05),テスト時期(F
(2,118)=273.08,p
<.01)の主効果は有意であったが,交互作用は有意では なかった(F
(2,118)=1.81,ns
).4.考察
GBSに基づく研修は,放射線技師でいずれの学習スタイ ルにおいても効果的ではなかった.看護師教育の特徴は実 践で学ぶことであり,カリキュラムの約3分の1が実習で ある.一方,放射線技師の実習時間は10分の1程度であり,
実習しながら学ぶことに慣れていない.基礎教育における 学習形態の違いが,その後の学習スタイルの好みに影響を 及ぼす可能性があることが示された.このような中,eLと シミュレーションを組み合わせた研修では,職種によるテ スト得点の平均に差はみられたものの,学習効果に大きな 差はみられなかった.仕事場で研修をする場合,トレーニ ング環境と実践環境の互換性が重要となる中,eLの活用と 当該現場におけるシミュレーションは,覚えやすく思い出 しやすい形で習得できる.eLで前提知識を身につけ現場で シミュレーションを行い,日常業務との関連性を高めたこ とが,効果が得られた要因のひとつと推察される.
5.結論
マルチメディア教材を活用した患者急変時対応研修は一 定の効果が得られ,さまざまな部門において応用できる可 能性があることが示された.
マルチメディア教材を活用した急変時対応研修の開発と効果の検証
Effectiveness of the Training Multimedia Instructional Materials toward Sudden Changes of Patients
杉浦 真由美(Mayumi Sugiura) 指導:向後 千春
図1 職種の違いによるテスト得点