イソベンゾフランの連続的環付加反応を駆使した置 換ポリアセン類の合成
著者 荒谷 真佐登
URL http://hdl.handle.net/10236/11165
2012 年度 修士論文要旨
イソベンゾフランの連続的環付加反応を駆使した 置換ポリアセン類の合成
関西学院大学大学院理工学研究科 化学専攻 羽村研究室 荒谷 真佐登
ポリアセンは複数のベンゼン環が直線状に縮環した構造を有し,その特徴的なπ電子構造に由 来する興味深い化学的性質を示す。しかし,一般的にポリアセンは,溶解性に乏しく,光や酸素 に不安定であることから,その合成例は少なく,多様性のある一般性に優れた合成手法の開発が 望まれている。このような背景の下、本修士課程研究では,イソベンゾフランの高い反応性に着 目し,これにベンザイン発生部位を導入したドナー・アクセプター分子をコアとする連続的環付 加反応を利用した,新しい多環式構造の構築法の開発を目的として研究を行った。また,この反 応を基盤とした応用・展開として新奇π電子化合物の合成にも取り組んだ。
1.
ベンザインとイソベンゾフランの連続的環付加反応の開発先に当研究室では,ヨードスルホナートをベンザインドナー部位として持つイソベンゾフラン の連続的環付加反応によって多環式骨格が構築できることを見出している。この方法では、脱離 基を適切に選択することによって環を連続的に導入できるという特徴を持つが,双方向に環を伸 長する場合,位置異性体が生じるなどの問題も有していた。そこで,本研究ではベンザイン発生 部位として隣接位にジブロモ基を有するイソベンゾフラン
2
を設計し,その可能性を探求するこ とにした。すなわち,ジフルオロジブロモベンゼン1
とイソベンゾフラン2
のトルエン溶液中に -15
℃でn-BuLi
を作用させたところ,[4+2]
環付加反応がきれいに進行し、環付加体3
を得た。次に,この環付加体
3
とフラン4
の共存下,再度n-BuLi
を作用させたところ,多重環付加体5
を収率良く得ることができた。一方,フッ素原子の代わりに臭素原子を持つテトラブロモベンゼン
6
を用いて同様の条件で反 応を行ったところ,目的の環付加体7
を首尾よく得ることができた。このようにして得られる環 付加体7
はビスベンザイン9
に相当し、双方向への環の伸長が可能な点で合成的に有用である。実際に、環付加体
7
とフラン4
との共存下,n-BuLi
を2
倍モル量作用させたところ,双方向に伸 長した多重環付加体8
を収率良く得ることができた。Br
Br F
F
Br
Br O
Br
Br O
F
F PhLi
toluene –15 → 25 °C
73%
O
n-BuLi –15 → 25 °C
O F
F
O
79%
1
2
3
5 toluene,
4
また、この連続的環付加反応をワンポットで行えることもわかった。すなわち,ジフルオロジ ブロモベンゼン
1
とイソベンゾフラン2
との共存下,n-BuLi
を1
倍モル量作用させたところ,ジ フルオロジブロモベンゼン1
の選択的なハロゲン-リチウム交換を鍵とするベンザインの発生と それに引き続く環付加反応が起こった。その後、環付加体3
を単離精製することなくフラン4
を加え,–
15
℃で再度n-BuLi
を作用させたところ,多重環付加体5
が得られた。このワンポット反応を利用して
12
〜14
の合成を行うこともできた。2.
新奇π電子系分子の創製次に、上述の反応で合成した多重環付加体
13
の更なる骨格の伸長と芳香族化を検討した。す なわち、多重環付加体13
とジピリジルテトラジン15
との共存下,クロロベンゼン溶液中で加熱 したところ、イソベンゾフラン16
を得ることができ、次に,テトラブロモベンゼン6
より発生 させたジブロモベンザインとの環付加反応により多重環付加体17
を得た後,ジフェニルフラン18
との環付加反応を連続的に行うことによって、多重環付加体19
を合成できた。さらに,この 化合物19
とジピリジルテトラジン15
との共存下,先程と同様の条件で反応を行うことにより,多環式化合物
20
を合成した。Br
Br Br
Br
Br Br
+ toluene, –15 →� 25 °C
n-BuLi
85% Br
Br O
Br Br O
toluene / THF, –15 → 25 °C , n-BuLi
57%
O
O O O
6 2 7
8
O 9
4
Br Br F F
Br Br O
PhLi –15 → 25 °C
Br Br O F F
O
n-BuLi toluene, –15 → 25 °C
O F F
O
42% (2 steps)
O F F
O Ph
Ph 12(37%)
O F F
O Ph
Ph Ph Ph
14(41%) Br
Br O
Ph
Ph
O Ph Ph 1
2
3
5
10 11
toluene,
O F F
O Ph
Ph 13(37%)
Ph
Ph 4
F
F
Ph
O
Ph Ph
O Ph
N N N
N N
N
chlorobenzene, reflux F
F
Ph
O
Ph O Ph
Ph
13 16
Br Br Br Br
, n-BuLi toluene, –15 →� 25 °C
F
F
Ph
O
Ph Ph
Ph O
Br
Br
, n-BuLi toluene, –15 →� 25 °C
O Ph
Ph
F
F
Ph
O
Ph Ph
Ph O
Ph
Ph
O chlorobenzene, reflux F
F
Ph
O
Ph Ph
Ph
O O
Ph
Ph 65%
17 42%
29%
19 20
62%
15 6
18
N N N
N N
N
15