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<論文>偶発事象の会計 利用統計を見る

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著者

穐山 幹夫

著者別名

Akiyama Mikio

雑誌名

経営論集

21

ページ

67-78

発行年

1983-03-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005807/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

偶 発 事 象 の 会 計

穐  山  幹  夫

〔I 〕 は じ め に  昭 和56 年6 月 の商 法 改正に と もない ,昭 和57 年4 月 企業 会計 原則 も一部 修 正さ れた ことは周知 の とお りであ る。 これら一 連 の改 正や修正 を通じ て 特筆 さ れるべ き会社 の計 算に 関す る点 は引当に かかお る事 項 であ る とい え るだろ う。 商 法 の 改 正 で は, 従来 とか く批判 の多 かった287 条 ノ2 の規定 か 整備 さ れ, 企業 会計原則 上 でい うい わゆ る特定引当 金 とい われ る利 益 留保性 の引 当 金が計上さ れる 余地 が全 くな くな るこ とに な った。 他 方,企 業 会計原則に おい ても引当 金概念 を一 層 明確に す ると ともに, 従来 負債性引 当金 と評 価性 引当 金 とに区 分さ れてい た引 当 金を引 当金 とし て一 本 化し , さら に これまで 引 当金 の一つ とされ てい た減 価 償却引 当金 が企業 会 計 原則でい う引 当金 の範 聊 から除 外され るに至 った。 こ のよ うな点 では, 昭和37 年の 商法 改正に より287 条 ノ2 の引 当金規定 が新 設さ れ て以来 , 理 論上お よび実 務上生じ た多 く の議論や 混 乱も一応 ぱ 落着し た といい うるであ ろ う。  こ のよ うな混 乱 の生じ た原囚 とし て黒沢 教授 は次 の よ うに 指摘し ておら れ る。「 わが国 の場合, 昭 和37 年 改正 商法 の287 条 ノ2 に 引当 金 の規 定を新設 す るに 際し て, 上記 の ご とき偶発 事象 の会計に 関す る 法会計 学的 認 識が欠如 し てい たために, 引 当金 に関 す る法解 釈論 がひ とり歩 きをはじ め てし まい, や が て商 法287 条 ノ2 の引当 金は, 商 法特有 の引 当金 で あ って, 利 益 留保性 引 当金を許 容す るも の であ るとい うごとき 独断 論にお ち い ってし まった。こ の法解 釈論 から, 特定 引当 金 とい う新し い カテ ゴ リーが 生 み 出 さ れ, わが 国 の引当金 会計 は世 界に 類を みない ような混迷 の実 情を 現 出 し た の であ っ た1)。」そし て さらに 続け て, 引当 金 会計 の原点 は偶 発事 象の会計 にあ るこ と を 指摘し て,「 周知 の ように ,昭 和56 年6 月 の商 法改正 に よって287 条 ノ2 は 根本的に 改正 さ れ, 特定引 当 金なら びに利 益留保 性引当 金は排除 さ れ るにい

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たったけ れども,引当金の本質を 明確に認識するためには,偶発事象の会計 の根本から見直さなければならない2)。」と述べられてい る。  この論述の意味するところは一 言でい うならば,引当 金会計の原点は偶発 事象の会計にあ るとい うことであろう。事実,黒沢教授はこの論文で明確に 「偶発事 象の会計問題を解決し た後でなければ,引当 金問題を解決す る こ と はできない。」と断言し ておられる。  引当金に関す る規定が制度的に整備された今こそ引当金会計の原点に立戻 って引当金に関し て思いをめぐらすことがわれわれに課された重要な課題な のではないだろ うか。 このような問題意識にもとづき, 本稿では引当金会計 の原点たる偶発事象の会計についての考察を試みることにする。 〔l 〕 偶 発事 象の概念  偶発 事象 の会計を 考察す るにあ た って, わ れ われは問 題 解決 の手がか りを 既 に公 表 されてい る偶発 事象 の会計に 関す るい くつ か の会計原則 に求 めてみ

たい と思 う。これ ら 会計 原則 の例 とし ては 財務 会計審 議 会(Financial・Accoun-ting Standards Board) が1975 年3 月に公 表し たStatement of Financial Ac-counting Standards No. 5

“Accounting for Contingencies" (以下SFASNo. 5

と略称する)') 国際 会計翁 準委員会(International Accounting StandardsCommittee) が1978 年10 月に公 表し たInternational Accounting Standard10,

"Contingencies and Events Occuring After the Balance Sheet Date ”( 以下IAS No. 10 と略称する)お よび イン グラン ド・ウ ェー ルズ勅許会計士 協会(The

Institute of Chartered Accountants in England and Wales) が1980年8

月に公表し たStatement of Standard Accounting Practie No. 18 “Ac-counting for Contingencies" (以下SSAP No. 18 と略称する)があ る。 

そ こで先 ず,「 偶発事 象」 の概念を これ ら会 計原則に おけ る定 義を よ り ど ころ とし て考 えて み よ う。 ノSFAS No. 5 は パラ グラフ1 で 以下 の よ うに 定義し てい る。「イ高発事 象 と は, 究 局的 に は, 将来におけ る一つ 以 上 の事象 が発生 もし くは発生し なか っ た こ とに より解 消す る ものであ って,企業 に とって利得 や 損失 の発生 の可 能 性があ るが, そ の発生が不 確実 であ る既 存 の条件, 状 況あ るい は一群 め環境 と定義 さ れる。万不 確実 性は資 産の取 得 または 負債 のの減 少, もし くは資 産O

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減少, または 負債の発生 が確実に なる ことに よって解 消す る。」  またIAS No. 10 では パラ グラフ3 におい て以下 の ように定 義 を し て い る。「 偶 発事象 とは,あ る状態 または状況 であ って,そ の 最終的 な結末 とし て の利得 または損失 が, 不 確定 な事 象 の発生 または不発 生に よってのみ確認 さ れる ものをい う。」さら に パ ラ グラフ4 に おい てはっ ぎの ような 説明が 加 え られ てい る。「 本基 準書にお い て用 い られ る偶 発事象 とい う用語 は, 貸借対 照表 日において 存在す る状態 またぱ状 況 であ って, そ の財務的 影 響が, 将 来 発生す るかもし れ ないし , あ るい は発生し ない か もし れない 事象 に よって決 定され るよ うな ものに 限定 され る。 その よ うな状態 またぱ状況 の多 くは, 発 生 とい う基本的 な概 念に 従 って, 財務諸表に おけ る引 当金計上 項 目とし て反 映さ れ る。」  他方SSAP No. 18 では パラ グラフ 艮 に おい て つ ぎ のよ うな定義をし て い る。「 偶発事象は 貸 借対照表 目に 存在す る状況 であ って, そ の結果は一 つ またはそ れ以上 の不確実 な将 来 の事象 が発生す ることに よりあ るい は発 生し ない ことに よっての み確 認され る。」  これら の定 義 はいず れ も大 同 小異 であ る とい ってよい 。そ の原因 は, 基 本 的 には これら の基準 言はSFAS No. 5 を基 軸 とし て 展開さ れた もので あ る とい う点 に求 めら れ るであ ろ う。 これ ら の定 義から共 通的 に導 きだ される偶 発事 象の特質 とし ては, 基本的 に は「 不確 実 性」を と もな う事 象 であ る とい う点 であ る。 そし てこ の不 確実 性 は, (1)将来 の利 得 もし くは 損失 の発生 の 可能性に かかお る もの であ って,(2)その原因 が当期 もし くは 貸借対 照表 目 現在存在し ,(3)そ の最 終的 な 結果 は,将来 の特定 の 事象 の発生に よ って の み確 認し うる, ものであ る。不 確実 性を と もな うとい うこ とは, そ の存在 に 関し て予測な いし は見積 の介 入す る余地 があ る ことを 物語 ってい るが, た ん な る予 測ないし 見 積だけ では偶 発事 象 とはいい えない といわ れてい る。 た と えば, 有形 固定 資産の原 価 の配 分に あ だ っては,耐用 年数 や残 存価 額は通常, 予測に も とづい て決定 され る のであ る が, この場合, 有 形固定資 産 の効用 の 消滅 ぼ確 実で あ るので偶発 事象 だ りえ な ない のであ る。 また,支 払利息や光 熱費等す でに享受し たサ ービ スに対し て支払 うべき金 額 が見積に も とづい て 決定 された とし て 乱 それ は債 務 の発 生 とい う事実に は 何ら の不確 実性が と もな うわけ ではない ので, 偶 発債務 とは され ない こ とに な る4)。

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以上 み てき た ように, 偶 発事象は不 確実 性を ともなっ て将 来発 生し うる利 益 または損失 とし て 存在す るこ とにな る。し たが って偶 発事 象は , 具体的に は利 益 の発生 の可能 性に か かお る「 偶 発利 得」(contingency gain)と「 偶発損 失 」(contingency loss)5)とに 区 分され るこ とに な る。 偶発 利 得に かかお る不 確 実性 は資 産 の取 得 ま たは 負債の減 少に よ り確 かめら れ, また 偶 発損失に かか お る不 確実 性は 資産 の消滅 または 負債 の発生 に よ り確 か めら れ るこ とになる。 こ のこ とは,偶 発事象 を会 計的に認 識す るこ とは, 先ず , 偶 発 利得 または偶 発損 失 の存在を 認 識す るこ とであ って・, そ の結果 とし て 資産 の取 得 もし くは 負債 の発生 とい う事態 認識 され るとい うこ とであ る。 端 的に い うならば,偶 発事 象 の会計を 偶発資 産や偶 発債 務の存在 の認識 とし て の み考え るのは, 明 ら かに 本末 転 倒の議論 であ る とい うこ とである。 従来 の 偶 発事象 の会計にお い て はこ の点に 関す る認 識が不十 分だ った のでは ない だ ろ うか^)。  ところ で,偶 発事象 の うち, 通常は偶 発 損失の みが認 識さ れる こ と に な り, 偶発利 得は 認識さ れな ねヽ。 こ れは ,現 行の会 計原 則 が実 現主 義を 収益認

識 の基 本原 則 とし てい るこ とから すれば当 然であ ろ う。SFAS No. 5, IASNo.

10, SSAP No. 18 のい ずれ もが 偶発利 得の認 識を 排 除し て い る7)。 し た がっ て, 偶発 事象 の会計は偶 発利 得へ の言及 が なされ る こ とはあ って も実 質的 に は,偶 発損失 の会計 とそ の結果 とし て の偶 発 債務に 焦点 があ てられ る ことに なる。 このた め,以下 では「 偶発 損失」 とそ の結 果 とし て の「 偶発 債 務」 につい て 述べ るこ とに す る。 〔Ⅲ〕 偶発事象の会計処理      ニ  その発生の可能性に不確実性がともな うとはい うものの,その発生の原因 が当期に存在す る以上,偶発事象の存在を何らかの形で財務諸表上に反映さ せることは√財務諸表に よる情報提供機能を向上させる とい う観点からは必 然的な帰結であ る。  この場合,財務諸表への反映にあだっての具体的な方法とし て は 二 つ あ る。  第一の方法は,偶発事象の存在のみを財務諸表に注記する方法である。こ の方法に よれば,偶発損失の可能性もし くはその結果とし ての偶発債務が財 務諸表の脚注として示されることになる。一般的実務とし ては,割引手形や

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保証債務 等の 会計処理に みら れ る ように, 対照 勘定 で期 中は当 該取 引を備 忘 的に記録し てお き,貸 借対照表 に脚 注 とし て開示 す る とい う方法 が とら れ る 場合が多 い。し かし ながら この方 法ぱた んな る偶発 損失 の発生 の可能性を知 ら せる のみ であ って, それが具 体的 に企業 の経営活 動 の中に どの よ うに かか お りを もつ も のかについ て 明ら か にし て くれない。 た とえば, 沼田教授は こ の方 法を つ ぎの よ うに批 判し てお ら れる。「し かし こ の ような対 照勘定 に よ る記 入はあ る取引 売買契約の存在,手形の裏書譲渡- が存在し たこと を示すのみで, その結果 とし て企業がどのような有利又は不利な状況にある かを計算的に示すものではない。会計はある記入の結果,それに よって財産 計算及び損益計算が影響されなければならない。対照勘定は単にある取引の 行なわれたこ とを示すのみで,損益計算に影響がない。このこ とは,無意味 な記入であり,簿記学者の小手先細工である8)。」  第二の方法は,偶発損失の存在を認識するにとどまらず,モの存在を発生 主義の観点から積極的に認識し,これを当期の損益計算の中に反映させる方 法である。すなわち,将来におけ る損失の発生可能性の原因の当期帰属分を 当期費用 とし て見越計上するとともにこれに対応させて引当金を設定するも のである。たとえば, SFAS No. 5 はこの立場をとっており,偶発損失計上 を一定 の条件のもとに認め, その論拠を「 たんに原価(cost)を 各会計期間に 配分する方法9)」であ るとい う点に求めてい る。 他方, IAS No. 10, SSAPNo.

18 も同様に,一定の条件のも とに偶発損失の計上を要求し て い る。し たがって, この方法は近年におけ る偶発損失の会計処理法の新し い動向であ るといえるだろ う。  これら二つの方法は,財務諸表上でのたんなる開示 方法の差異 とい う以上 に, より本質的には損益計算の内容モのものに大きな差異を もたらす。すな わち,第一 の方法に よれば,偶発事象の実現のときに偶発事象にかかおる損 益の発生が認識されるのに対し,第二の方法によれば,偶発事象の原因発生 のときに,偶発事象に かかおる損益の発生が認識され ることにな る の で あ り,偶発事象にかかお る損益の期間帰属の認識が全く異なるといえるのであ る10)。発生主義にもとづき損益計算を行な うとい う現行の一般に認められた 会計原則ないし 会計理論の立場からは,第二の方法こそが偶発事象に関する 首尾一貫し た方法であるといえ る。

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し かし ながら この方法が発生主義会計の観点からは適切であ るにし て 乱 実行可能性の点で大きな難点があるとい うことは容易に理解し う る で あ ろ う。この方法が成立し うる条件 とし て,川口教授は以下の諸点を指摘し てお られる11)。  ( イ) 偶発事象の成 り行きと結末を見通すことができること  し ) 結末の会計事象を金額的に測定 できること  (ハ) 当期末現在の状態が,かかる未来事象と密接にかかお っていること (ニ) その関係の程度を金額的に測定できること  要するに,この方法が有効に機能を果すためには「 精確な予測」が前提で あるとい うことである。  この方法にもとづき偶発損失を処理する立場を とるSFAS No. 5 の内容を 以下検討し てみることにし よう。 〔F 〕 財 務会 計審議会 基準書第5 号 にお け る偶 発損失 の処 理 SFAS No. 5 に おい ては将来 におけ る偶 発損失 の発生 の可 能性を ,以下 の 用 語を 用い て三 段階に区 分し てい る12)。 a) 発 生 の可能性 がほぼ 確実 であ る(probable) b) 発 生 の可能性 が合 理的に 見込 まれ る(reasonably possible) c) 発生 の可 能性が 僅かであ る(remote)  これら の用 語につい て は, probableこ 将来 ,偶 発事象 が 発生す る見込 みで あ る, reasonably possible = 将来, 偶 発事象 が発 生す る機 会は見 込みがあ る とい うほ ど で は な い が, そ の機 会は 僅か でも ない, remote = 将来,偶発事 象 の発 生 す る機 会はほ んの僅 か であ るとい った 説 明が そ れぞ れ な さ れ て い る。 つ ま り, 将来におけ る偶 発事象 の発 生 の 可 能 性0 高 さ は, proiDable>reasonably possible>remote と順位 づけ ら れ るこ とに な るのであ る。 SFASNo. 5 におい て は, こ の三 段階 の うち,偶 発 損失の発 生 がprobable な状況に お い て の み当 期におけ る損失 の計上を 許 容し てい る。し かし , 発生 の可能性 がprobable であ るとい うこ とだけ では 損 失の計 上 の条件 とし ては主 観的に す ぎ, また莫 然 とし す ぎてい る ように 思 われ る。 そ こで,SFAS N0. 5 では,probable な状況 であ って,以下 の二つ の条 件に 合致し た 場合に の み偶 発事象 に かかお る見 積損失を 利益 への チ ャージに より計上す る こ とを認 めてい る13)。

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財務諸 表 の発行に 先立 って 入手し え た情 報に よ って, 財務 諸表 日14)現 在 までに 資産 の減 少またぱ 負債の発生 がほぼ 確 実 であ る とい うことが 明らか であ るこ と。 この条件 のもとでは ,損 失 の発生 の事 実を確実 な もの とす る一つ またはそ れ以 上 の事 象の発生 か ほ ぼ確 実 でなけ れば な らない とい うこ とが不 可欠 である。 b) 損失 の金額を 合 理的に見積 りうること。 こ の条件a) は,損 失は当期あ るいは過年 度に かかお る場 合に の みその仕 上 が許 容され うるとい うこ とを意 図し てい る。 この こ とはSFAS No. 5 に お け る財務会 計観お よび 財務諸表観 から導 き出さ れた も のであ る。 すなわち,SFAS No. 5 では会計 原則審 議会(Accounting Priaciples Board) の ステ イト

メン ト第4 号“Basic Concepts and Accounting Principles UnderlyingFinancial Statements of Business Enterprises" (October, 1970)のパラ グラ フ35 の「 す でに生 起し た事象につ い ての情報は , 財務 会計 お よび財務諸表 の 基礎的 デ ー タを提供 す る とい う意味 で, 財務 会計お よび財 務諸表 は本質的に 歴史的 なも のであ る。」 とい う文章を 引用 す る こ とに よ り, 財務 会計お よ び 財務 諸表は, 将来 の取引や 状況 ではな く, 本質的 に 過 去 の取 引お よび既 存 の 状況 の結果を 明ら かに す るものであ る, といy 点 が強 調さ れてい る の で あ る15)。し た が って,偶 発損失 は,資 産の減 少し てい る こと,あ るい は負債 の 発生し てい るこ とがほぼ 確実に な るまでは,す な わち ,過 去 の取 引お よび既 存 の状 況に 準じ たも のとな るまでは, 計上さ れ るべ き では ない とされ るので あ る。 b) の条 件は, 上に 述べた 財務会 計観お よび 財務 諸表 観 と も関 連!し て い る が, 財務諸表 の真 実性を 歪 曲す るほ どの不 確 実な 金額 が財 務諸 表に計上 され ることを 阻 止す る ことを 意図し てい るとい え るだ ろ う。 a) の条件が 偶発損 失 の計上に かかお る質 的な も ので あ る とす るならば, b) の条 件は量的 なも のであ る といい うるだろ う。  ところ で, 偶発 損失 の計上 は, これらa), b)の条件 を 充足し なけ れば計上 され えない のであ るから, a), b) の条件 が充 足 さ れえ ない 場合 がreasonablypossible もし くはremote な状 況 とい え るのでは ない だ ろう か。 逆にいえば,a), b) の条件 が充 足 されてい る場合 がprobable とい え る だろ う。 そ こで,a), b)の条 件 が満 たされ ない場 合に つ い て,SFAS No. 5 はそ れら の偶 発

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事象を財務諸表上開示することを要求し てい る。この場合には( イ)財務諸表 に損失又は偶発損失の性格を表示し, ( ○ 損失又は可能性のある金額又はそ の上限と下限の見積りを 行な うか,あるいはモのような見積りが不可能なこ とを記すべきである, と規定し ている16)。       十  偶発損失の発生す る場合とし て様 々な状況が想定されるであろ うが,SFASNo. 5 では偶発損失の発生する具体的な例 とし て,以下の場合を列挙し て い る17)。もちろん,これらの状況が無条件 で偶発損失を発生させるものではな く, 先に述べたa), b) の条件に合致し てのみ偶発損失が計上されるのであ る。 a )b )c )d )e )f )g )h ) j j .>-(      " ︱> 受取勘定の回収可能性 製品保証お よび欠陥製品に関する責務 火災,爆発,その他災害に よる企業財産の損害もし くは損失の危険性 資産接 収のおそれ 未決の訴訟 または訴訟 の可能性 現実のあるいは可能性のある賠償請求お よび追徴金額 再保険会社を含めた損害保険会社が引受け た大災害に よる損失の危険 他人 の債務の保証 「 スタンドバイ」信用状に関す る商業銀行の責務 買戻し 付債権 〔V 〕 現行制度会計と 偶発損央  以上みてきた偶発事象の会計に照らし てわが国の偶発事象の会計の実体は どうであろ うか6 わが国の現行制度会計においてはどちらかというと偶発債 務 の注記にもっぱら重点がおかれており,偶発債務を生 ぜせし める偶発損失 に対する関心はきわめて稀薄なように思われる。この点 は商法計算書類規則 第32条,財務諸表規則第58条お よび59条,企業会計原則貸借対照表原則一,C にみられ るように,それぞれの規定が偶発債務の注記を要求し ているにも かかわらず,偶発損失については企業会計原則注解18でわずかに言及されて いるにすぎないとい う点からも窺い知 ることができるであろう。先にも述べ たように,発生主義会計の論理を 徹底さ せるならば,偶発損失の認識は当期 の損益計算の中で十分に行なわれるべきであると思われ る。

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し かし ながら注 解18 で偶発 損失につい て 言及 はされ てい る もの の, その 内 容に つい ては 何ら述 べら れていず, 企 業会 計原 則でい う偶 発 損失 の実体 が把 握で きない。 他方, 注解18 に おけ る引 当金計 上 の要件を 考 慮す るとき,引 当 損 と偶 発 損失 の境 界線が定 か でなく な って く るよ うな 気が す る。 注解18 に お け る引当 損計上 の要件は以下 の点に 要約 で きる であろ う。  (1) 将来 の特定 の損失 また は費用 であ る こと  (2) そ の発生 原因 が当期以 前に 起 因し てい ること  (S ) 発生 の可 能性 の高い こと  (4) 金額 の合理的 見積 りが可 能 なこ と  こ れら の要件は, これ までみて きた偶発 損失 の概念 とそ の費用化 の条件 と を総合的 に包 括し てい るとい い うる。 かつ て,中島教 授 はSFAS No. 5 の内 容を 考 慮され た うえ で,偶 発 損失 と企業 会 計原 則 の負 債性 引当金 計上の要件 を区別 す る鍵 ぱ,SFAS No. 5 第8 項 のprobable と旧 企業 会計原 則注 解18 の 「 確実に 起 る と予 想さ れ」 とい う表 現 との差 異い かんに か かお って い る こと を指摘 され た18)。 し かし なが ら旧企業 会計 原則 の注 解18 の意 味 す る と こ ろ が「 発生 の可能l生か高 く」 と解 釈さ れ うる よ うに改 めら れ た今,両 者の差 異 は全 くなく な った と認 識す る ことが できる。 また, 黒沢 教 授も「 引当め計上 は,偶発 事象(contingency)に 対し て備え る とい う性格を もつ19)」 と明言し て おら れ る。 これら の状況を 考え た場 合, 企業 会計 原貝Uの引 当金規 定 はその実 体におい て, す でに偶発 損失 の規定 と化し てい る と考 え て よい のではないだ ろ うか。 それ ゆえ, あえ て偶 発損 失 の規定を 設け る必 要 もなくな ってく る よ うに考え られ る。  ただ,企 業 会計原 則が 引当 金 とし て列挙し てい る各 種 の項 目が 果たし て全 て偶発損失 に 対応し うるもの であ るか どうかが問 題 であ る。 た とえば,黒沢 教授 も指摘し てお られ る よ うに, 退 職給与 引当 金 な どに つい ては, モの繰 入 額が偶発 損失 とし ての性 格を もち うるものか ど うかは 大い に疑問 とし なけ れ ばならない2o)。し たが って, 各項 目別 に, 偶発 損失 た り うるか ど うかを検討 し てみ る必 要があ る であ ろ う。 これら の個別的 検討 は 稿を 改め, 他 日を 期し たい と思 ってい る。       (1983年1 月29日)

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注 

1) 黒沢清稿「新しい計 算・開示 の体系につい て一 法会計学的 パラダイムからO  検討」企業 会計 34 巻7 号 2

) 黒沢清稿  前掲論文 3

)SFAS No. 5 以前に存 在し た偶発事象に関す る会計原則 とし ては,ア メリカ公

認会計士協会が1958年10 月に公表し た会計研究公報第50 号「偶発事 象」(Account-  ing Research Bulletins No. 50, “Contingencies" )お よび同協会が1961 年

9 月に公表し た会計研究公報「 改訂版」, 第6 章「偶発損失 準備金」(Accounting  Research Bulletins No 43, “Restatement and Revision of Accounting Re-  

search. Bulletins," Chapter 6 “Contingency Reserves" )があるが,SFAS  No. 5 の公表に よりこれら二つ の原 則は 廃棄されることとなった(SFAS No. 5,  par. 7 )。   

また,FASB は1975 年12 月にSFAS No. n "Accounting for Contingen-  cies −Transition Method: an Amendment of FASB Statement No. 5" を 公表し ているが, これはそ のサブタイトルに もあ るように, SFAS No. 5 を適 用七 たさいに生ずる会計原則 の変更に ともなう処理法に関し てのみ言及し たもの であ って, SFAS No. 5 におけ る偶発事 象の会計の本質に対する変更を意図し た ものでは全 くない。 その内 容を 一言でい うならば, SFAS No. 5 では 会計 の 変更 に ともない これを「累積的影響法」(cumulative‘effect method )に より処

理 することを勧告し た のであ るが,SFAS No. n では「 過年度修正法」(prior  period adjustment method )を採 用することを 勧告し てい る。 これら の点 の 詳

細につい ては 穐山幹夫 稿「FASB ステ イト メソ ト第11 号・偶発事 象の会計」(企 業 会計28 巻7 号)を 参照されたい。 4

)SFAS No. 5, para. 2 5

)SFAS No. 5 ではgain contingency お よびloss contingency とい う用語を

用い て い る が, そ の意味する ところはcontingency gain お よびcontingency  loss と全 く同じ であ ると考えていであろ う。 6 ) こめうな点に関し て,偶発債務 の定義 との関連において, 細田末吉氏はつぎの ように 述べておら れる(細田末吉稿 「偶発債務・保証 債務の会計実務」 税務弘報 29 巻8 号付録所収)。    「偶発傾務には二つ の種類のものがある。 その一つは, 保 証債務や手形裏書義 務のように現実 の支払債務が 生じ るとともに,求 償権が生じ ,この求償権が満足 さ れないときに ,はじ め て損失 を生ずる ものであ り,他の一つは,工事補 償や 製 品,商品の保証 ・損害賠 償のように現実 の債務が生じ ても,そ れに対応する借方 科 目とし て求 償権が発 生せず,直接に 費用 又は 損失が生ず るものである。いずれ 十にし ても,企業会計で 偶発 債務を問題 にする趣 旨からすれば,そ れは決し て『債 務』 の認識ではな く,将来 の費 用 又は 損失 の認識にあ る。 この意味におい て,偶 発 債務を もって『将来生ず る可能性あ る債務』と考える定義 よりは『将来 の負担

(12)

(損 失 )可 能 性 』 と す る定 義 の 方 が ず っ と す ぐ れ て お り , 現 実 的 な も の で あ る 。』 7 )SFAS No. 5, para. 17   IAS No. 10,

para. 29  SSAP No. 18, para. 17 8

) 沼 田 嘉 穂 稿 「 会 計 に お け る 将 来 の 見 越 計 算 一 引 当 金 の 実 体 に つ い て ー 」 会

計 ジ ャ ー ナ ル 10 巻13 号 9)

SFAS No. 11, paras. 61, 63   SFAS No. n

で は こ の よ う に , 偶 発 損 失 の 計 上 を 純 粋 に 期 間 損 益 計 算 の 観 点 か ら 論 拠 づ け て お り , 支 払 能 力 の 保 持 , 将 来 の 損 失 に 対 す る 基 金 の 設 定 , あ る い は 利 益 の 平 準 化 , ま た , 不 規 則 に 発 生 す る 原 価 を 各 会 計 期 間 に 配 分 す る こ と に よ っ て 各 会 計 期 間 の 顧 客 や 株 主 に 負 担 せ し め る べ き で あ る と い っ た 観 点 か ら , こ の 損 失 の 計 上 を 行 な わ し め る よ う な 考 え 方 を 一 切 否 定 し , こ れ を 排 除し てい る。10 ) 川 口 順 一 稿 「 偶 発 事 象 お よび 後 発 事 象( 案 )の 解 説 」 会 計 ジ ャ ー ナ ル 9 巻9 号11 ) 川 口 順 一 稿  前 掲 論 文  た だ し, ( イ ), (^) ,( ハ ),( ニ )と い う記 号 は 筆 者 が 便 宜 的 に 付 し た も の で あ る 。12 )SFAS No. 5, para. 313

)Ibid ・, para. 8   IAS No. 10

お よ びSSAP No. 18 も ほ ぼ こ れ と 同 様 の 条 件 を 偶 発 損 失 計 上 の 条 件 とし て い る 。 た と え ば , 工AS No. 10 で は 偶 発 損 失 の 引 当 計 上 に 関 し て 次 の よ うに 述 べ て い る 。「 偶 発 損 失 の 金 額 は ,(a )関 連 す る 回 収 可 能 性 を 考 慮 に 入 れ た 上 で も な お , 貸 借 対 照 表 日 現 在 に お け る 資 産 の 損 傷 や 価 値 減 少 あ るい は 負 債 の発 生 か 将 来 の事 象 に よ っ て 確 認 さ れ る 可 能 性 が か な り 大 き く , か つ ,(b )結 果 とし て 生 じ る 損 失 の 合 理 的 見 積 額 が 決 定 で き る 場 合 損 益 計 算 書 に 引 当 計 上 さ れ な け れ

ば な ら な い 。」(IAS No. 10, para. 27 )。な お , こ こ で 『 可 能 性 が か な り大 き く 』

とい う 表 現 は 英 文 で はprobable で あ る 。   

他 方SSAP No. 18 も 偶 発 損 失 の 計 上 に 関 し て 次 の よ うに 規 定 し てい る 。  

「 取 締 役 会 に よ り 財 務 諸 表 が 承 認 さ れ る 日 に お い て , 合 理 的 か つ 正 確 に 損 失 を 見 積 る こ と が , 将 来 の 事 象 に よ っ て ほ ぼ 確 実 に 確 認 す る こ とが で き る 場 合 , 偶 発

損 失 は 財 務 諸 表 上 計 上 さ れ る 。」(SSAP No. 18, para. 3)。 こ こ で い う「 ほ ぼ 確

実 に 」 は 英 文 で はprobable と い う 表 現 で あ る 。u

) 財 務 諸 表 目 と はdate of financial statements O 訳 で あ り , そ れ は 「 財 務 諸

表 の 表 示 対 象 と な る 直 近 の 会 計 期 間 の 期 末 」 を 意 味 す る(SFAS No. 5 , p. 4)。15

)SFAS No. 5, para. 6716

)Ibid ・,paras. 11,12   IAS No. 10

も 偶 発 損 失 が 当 期 に 計 上 さ れ る 条 件 が 不 充 分 な の で , 開 示 の み が

な さ れ る 場 合 に は ,次 の 情 報 を 開 示 す る こ と を 要 求 し て い る(IAS No. 10, para レ

33 )  

(13)

jj7 8 r-i r-i (b ) 将来の結末に影響を及ぼ す不確実な 要素 (c) 財務的影響 の見積金額 またはそ のような見 積りができない とい う事実  またSSAP No. 18 におい て も,偶発 事象の性格, 最終的な結果に影響を及ぼ す と思われる不 確実性 お よび 財務的影響につい での慎重な 見積りもし くはその よ うな 見積りができない とい う表 明のいず れかを開示することが要求さ れ て い る (SSAP No. 18, para. 5 )。 SFAS No. 5, para.

4 

中 島省吾稿「偶発事項 の会計的開示FAS 基準書5 号に関 連し て」 税経セ ミナ ー 21巻:L 号

19) 黒沢清稿 前掲論文20 ) 黒沢清稿 前掲論文

参照

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