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原 著 透析会誌 : ,2010 透析中の循環血液量モニタリングによる新しいドライウエイト設定法の評価 吉 田 1 泉 安藤 3 康宏 古谷 6 裕章 10 梶谷雅春 NIKKNAVI 研究会 駒田 1 敬則 草野 3 英二 飯 村 7 修 田部井 1 薫 森 穂 1 波 大

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(1)

New method to set dry weight by monitoring blood volume during

hemodialysis

Izumi Yoshida

1

, Takanori Komada

1

, Honami Mori

1

, Katsunobu Ando

2

, Yasuhiro Ando

3

, Eiji Kusano

3

,

Susumu Ookawara

4

, Masayuki Suzuki

5

, Hiroaki Furuya

6

, Osamu Iimura

7

, Yoshihiro Obara

8

,

Daisuke Takada

9

, Masaharu Kajiya

10

and Kaoru Tabei

1

Division of Nephrology, First Department of Integrated Medicine, Saitama Medical Center, Jichi Medical University1;Department of Medical Engineering, Saitama Medical Center, Jichi Medical University2;Department

われわれは,透析患者の除水による循環血液量の変化をモニターする機器(Blood Volume Monitoring system: BVM)を日機装社(静岡)と共同開発し,多施設共同研究において臨床的にドライウエイト(DW)が適正と判断さ れた患者の循環血液量の変化(BV%)の予想範囲を設定し,すでに報告した(Ther. Apher. Dial. in press).本論文 では,その予想範囲が適正な除水量設定に有用か否かを検討した.維持透析を行っている 9 施設の 144 名を対象と し,採血日を含む 3 回の透析日に,BVM 搭載装置を用いて透析を行った.DW が適正と判断された患者の BV%予 / / 想範囲は,上限ライン:BV%/BW%後=−0.437t−0.005 下限ライン:BV%/BW%後=−0.245ln(t)−0.645t− 0.810.BV%は循環血液量変化率,BW%後は透析による除水量の前体重に対する比率,t は透析時間(h).今回の 検討では,DW 適正の可否を問わずに 144 例を抽出し,430 データを集積した.プロトコール違反の 94 データを除 外した 336 データを解析対象症例とした.各施設の判断により DW 適正と判断された 230 データで,BVM でも適 正と判断された適正合致率は 167 データ(72.6%)であった.臨床的に DW を上げる必要があると判断された 45 データで,BVM でも DW を上げる必要があると判断されたのは 10 データ,逆に臨床的に DW を下げる必要がある と判断された 61 データで,BVM でも下げる必要があると判断されたのは 37 データであった.その結果,BVM に よる判定と臨床的判定の適合率は 63.7%であった.不適合の原因としては,バスキュラーアクセスの再循環率 (VARR),体位変換,体重増加量が 1.0 kg 以下などであった.PWI(Plasma water index)による判定との適正合致 率は 71.6%で,適合率は 58.0%であった.hANP による判定との適正合致率は 68.8%で,適合率は 48.7%であっ た.循環血液量のモニターは,透析患者の除水設定管理の一助になり,われわれが設定した BV%予想範囲は臨床 的にも妥当性が高いと考えられた. 〈要旨〉 キーワード:

吉 田

1

駒 田 敬 則

1

穂 波

1

安 藤 勝 信

2

安 藤 康 宏

3

草 野 英 二

3

大河原

4

鈴 木 正 幸

5

古 谷 裕 章

6

飯 村

7

小 原 功 裕

8

高 田 大 輔

9

梶 谷 雅 春

10

田部井

1

NIKKNAVI 研究会

自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学第一講座腎臓科1 自治医科大学附属さいたま医療センター臨床工学部2 自治医科大学腎臓内科3 西川町立病院4 山形県立中央病院5 小金井中央病院6 真岡くまくらクリニック7 さくら記念病院8 北朝霞駅前クリニック9 蓮田クリニック10

透析中の循環血液量モニタリングによる

新しいドライウエイト設定法の評価

循環血液量,ドライウエイト,循環血液量モニター 吉田 泉 自治医科大学附属さいたま医療センター腎臓科 〒 330-8503 埼玉県さいたま市大宮区天沼町 1-847 Izumi Yoshida Tel:048-647-2111 Fax:048-648-5188

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はじめに

維持透析患者では,除水管理は最も重要な目的の一 つである.しかし,除水を行うことにより循環血液量 (CBV)が減少するため,血圧が低下することは周知 の事実である1) ドライウエイト(DW)とは,体内水分量が至適な 状態で,透析中の血圧変動が至適で,溢水がなく,目 標体重までの除水に患者が耐えられる状態と定義され ている2) DW の設定には,透析中の血圧変化,心胸郭比,浮 腫の有無,うっ血の有無,心房性 Na 利尿ホルモン (hANP)3),下大静脈系4),インピーダンス法5)などが用 いられているが,ゴールデンスタンダードはなく,透 析療法に携わる医療従事者にとっては日常臨床におい て常に頭を悩ませる問題である. 透析中の血圧低下を予防するには,透析中の循環血 液量をモニターすることは有用な指標となりうる.わ れわれは,循環血液量の変化を知るために,下大静脈 径の測定4),総蛋白濃縮度による循環血漿量の変化

(PWI:Plasma Weight Index)6),CRIT-LINE を用い

ての連続ヘマトクリット(Ht)測定による循環血液量 のモニター7)などを研究してきた.

近年われわれは,日機装社(静岡)と循環血液量を

モニターする機器(BVM:Blood Volume Monitoring system)を共同開発し,臨床的に DW が適正と判断さ れた症例の循環血液量変化率から,予想循環血液量変 化の範囲を設定した8) 本研究では,この予想循環血液量変化の範囲を用い て除水量を設定することの妥当性と問題点を明らかに するために,多施設共同研究を行った.

Ⅰ.対象ならびに方法

ઃ.対象患者 対象は,維持透析を行っている 9 施設で,安定維持 血液透析を行っている 144 名である.患者選択は,本 人がインフォームド・コンセントを受けることができ る成人の患者で,本研究に同意した患者である.選択 基準としては,年齢・性別・原疾患は問わず,DW の 適否も問わない. 対象患者の背景は,男性が 91 名,女性が 53 名,平 均年齢は 64.5±12.6 歳(平均値±SD),平均透析歴は 6.9±6.7 年である.原疾患は糖尿病性腎症 59 名,慢 性糸球体腎炎 41 名,その他が 44 名である.透析条件 は,週 2 回以上かつ 1 回あたり 3 時間以上の透析を受 ける外来通院患者とした. ઄.循環血液量モニター 循環血液量のモニターは,本研究用ソフトウェア 吉田ほか:循環血液量の変化と除水量設定 910

of Nephrology, Jichi Medical University3;Nishikawa Chouritsu Hospital4;Department of Internal Medicine,

Yamagata Prefectural General Hospital5;Koganei Chuo Hospital6;Mooka Kumakura Clinic7;Sakura Kinen

Hospital8;Kitaasaka-ekimae Clinic9;Hasuda Clinic10

Key words:circulating blood volume, dry weight, blood volume monitoring(BVM) 〈Abstract〉

We developed a new optical device(Nikkiso Co., Ltd.)to assess changes through blood volume monitoring (BVM)during hemodialysis and were able to determine the ideal levels when changes in blood volume(BV%) occur in hemodialysis patients. We evaluated the significance of BVM for setting the post-dialytic body weight in a multicenter group. Previously, we obtained the ideal level of BV% in patients whose dry weight was suitable.

/ /

Upper limit line:BV%/BW% end=−0.437t−0.005. Lower limit line:BV%/BW% end=−0.245ln(t)−0.645t −0.810. When BV% is within this range, we can consider the dry weight suitable. BV was monitored three times in each patient. Of 430 measurements obtained from 144 hemodialysis patients from nine hemodialysis centers, 94 measurements were excluded because they were outside the protocol. A total of 230 of 336 measurements were obtained from patients whose dry weights were considered suitable under the criteria established by each center. For 167 measurements(72.6%), post-dialytic body weight was also considered suitable by BVM. The causes of inconsistencies between findings on BVM and clinical evaluation were blood access recirculation, positional changes during monitoring, and body weight gain of less than 1.0 kg. There was a consistent ratio of 71.6% between the evaluation by BVM and that by PWI(plasma weight index:index of the ratio of circulating plasma volume change per body weight change).There was a consistent ratio of 68.8% between the evaluation by BVM

and that by hANP(25≦ANP≦75(pg/mL).We conclude that BVM is a useful index for setting post-dialytic body weight in clinical practice, and the greatest benefit is that BVM facilitates the visualization of blood volume changes in real time.

(3)

バージョンの日機装社製 DCG-03 に搭載したブラッ ドボリューム計(BVM)を用いて行った.この装置は, CRIT-LINE(Hema Metrics, Inc.)のような特殊なチャ ンバーを必要とせず,所定の血液回路に光学的装置を 取り付け,血流に特殊な周波数の光を当て,その反射 波を利用する方法である(図 1).モジュールの中に は,2 つの LED と受光素子が内蔵されている.測定 原理の概要は,チューブ内の血流に向かって光を当て, 血球からの反射波を感知するものである7).反射波の 強さが Ht と相関することを利用し,循環血液量の変 化を計算した.循環血液量の変化率は 20 秒ごとに測 定される. 循環血液量の測定は,透析操作開始後 5 分から開始 され,同時に除水も開始される. われわれは,この BVM 装置によって測定した循環 血液量変化と Ht を実測して計算した循環血液量変化 が密な相関があることを確認している8).CRIT-LINE による循環血液量変化率と BVM による循環血液量の 変化も検討し,再現性が同等であることを確認してい る9) અ.除水による循環血液量変化の予想範囲の設定 われわれは,DW 設定を自動的に行うことを最終目 的として,まず DW が適正な患者の BV 変化を検討 し,除水による循環血液量の変化の予想範囲を設定し, すでに報告した8).その結果,以下のような予想範囲 を得た(図 2). / 上限ライン:BV%/BW% end=−0.437t−0.005 / 下限ライン:BV%/BW% end =−0.245ln(t)−0.645t−0.810 t:treatment time[h] 実際の画面には,透析施行日の透析前体重と除水予 定量を入力し,上記の計算式から予想曲線が表示され る(図 3). 本研究では,これらの予想範囲の妥当性を検討する ために,DW が適正に設定されていない症例を含め, 臨床的評価と BVM による評価を比較検討した. આ.検討項目 血圧測定は,透析前,透析開始 1h 後,除水完了 5 分 前を必須とした.バスキュラーアクセスの再循環率 (VARR:vascular access recirculation rate)は運転開 始 1 時間後の測定を必須とした.VARR 測定もわれ われが共同開発したもので,動脈側と静脈側に BVM を装着し,1 秒間で 10 mL 程度の除水を行い,濃縮さ れた血液が Ht の急激な上昇となって反映され,それ を静脈側で測定する.その後,動脈側でも測定して VARR を計算した10) 血液検査項目(採血日のみ)は,透析前は Ht 値,血 清総蛋白値,血清 Na 値を必須項目とした.透析後は Ht 値,血清総蛋白値,血清 Na 値に加え,hANP を測 定した. 各患者で,血液検査日を 1 回含む 2 回以上の透析に おいて,BV データを取得した. ઇ.予想範囲と BVM 推移の分類方法 DW 設定の適否の判断は,運転開始 1 時間以降とし 図 1 BVM 測定の原理 左図は循環血液量モニターの装着された様子を表す.光学的装置(矢印)に血 液回路を挟みこむ.BV 測定のみの場合には,動脈側 1 本を設置するのみであ るが,シャント再循環を測定する機能をもつものは,動静脈 2 本を設置する. 右図は,測定原理である.光学的装置内の血流に特殊な周波数の光を当て,そ の反射波を内蔵した受光素子で感知して,反射波の強さから Ht を計算する.

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た.これは,われわれの検討により,透析開始後 30 分 間は,透析患者の立位から臥位への体位の変化11),低 Na 血症,低蛋白血症12)により循環血液量変化が大き な影響を受けるためである. 評価分類区分:下記 ①〜③ の場合,DW 設定が「適 切」と判断した ① 完全適合…経過中,予想範囲から逸脱しない. ② 部分不適合…部分的に逸脱がある. ②-1 食事による逸脱 ②-2 補液による逸脱 ②-3 逸脱が 5 分以内に復帰(食事・補液以外) ②-4 逸脱が軽微(逸脱量の積算値が 1[bBV%]以下) ②-5 逸脱がやや軽微(逸脱量の積算値が 吉田ほか:循環血液量の変化と除水量設定 912 図 2 予想範囲の設定 / / / DW 適正と判断された維持透析患者 201 例,1,126 透析において BVM を測定 し,5 分ごとに除水量/透析終了時体重(BW% end)と循環血液量変化率(BV%) の比率を求め,全症例をプロットし,上下 10%を除外した 80%のプロットから 範囲を決定した. 上限ライン:BV%/BW% end=−0.437t−0.005 下限ライン:BV%/BW% end=−0.245ln(t)−0.645t−0.810 t:treatment time[h] 図 3 BVM 測定の実際 図 2 から求められた予想範囲を,実際のコンソール画面に表示したもの.表示 をする場合には,患者のその日の前体重と透析で除水する予定量を設定し,計 算された上限ラインと下限ラインが表示される.さらに,そこに当日の実測さ れた BV,血圧,脈拍が表示される.

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5[bBV%]以下) ③ 部分適合…予想範囲を逸脱,しかし透析終了直近 1 時間は bBV 予想範囲に入る. ④ 完全不適合…上記 ①②③ に該当しないもの ઈ.BVM による DW 設定の有用性と問題点の 検討方法 DW 設定の適否の判断は,各施設の基準に任せた が,概ね,心胸郭比が 50%以下(女性 55%以下)で, 臨床的に溢水がなく,透析中の著明な血圧低下がなく, 筋痙攣などの苦痛のない状態とした. ① BVM における DW の適否と各施設の担当医に よる臨床的な DW の適否の判断を比較した. ② 予想範囲から逸脱した症例の原因検索を行った. 予想範囲から逸脱した症例に関しては,その時点 で,以下の事項が発生したか否かをシグナルとし てコンソールの画面から入力した.1)仰臥位か ら側臥位になったか,2)食事を摂取したか,3) 生食を注入したかである. ③ PWI による DW 設定の判定と BVM による DW 設定の判定の比較

PWI とは,Plasma Weight Index で,われわれが 開発した DW 設定の指標である.透析前後の総蛋 白濃度を測定し,循環血漿量変化率(CPV%)を以 下の式により計算する6) / CPV%=(1−TPB/TPA)×100 同日の体重変化から,体重変化率(BW%)を計算す る. / BW%=(BWB−BWA)/BWB そこで,PWI とは,体重の 1%を除水したときに, 循環血漿量がどの程度減少するかの指標であり,以 下のように計算した. / PWI=CPV%/BW% われわれの検討では,2≦PWI≦4 の範囲では DW が適正で,PWI>4 は,除水量にくらべて循環 血漿量が減少しすぎている,つまり,plasma refill-ing が不十分な状態で,DW を上げる必要があると 判断する.逆に PWI<2 では,除水量にくらべて循 環血漿量が減少していない状態,つまり,plasma refilling にまだ余裕があり,DW を下げる必要があ ると判断する6) ④ hANP による DW 設定の判定と BVM における DW 設定の判定の比較 hANP も DW 設定によく用いられる指標である が,その設定値は明らかではない.今回われわれは, / 25≦ANP≦75(pg/mL)を DW 設定が適正と判断 / した.hANP<25 pg/mL では,DW 設定を上げる / 必要があり,hANP>75 pg/mL では,DW 設定を下 げる必要があると判断した. 判定基準として適正合致率と適合率を用いた.適 正合致率とは各々の指標で DW が適正と判断され た症例のうち BVM でも DW が適正と判断され症 例数を表す.適合率は,全症例を対象として各々の 指標で DW が適正と判断され BVM でも適正と判 断された症例数と,各々の指標で DW を上げる必 要性,下げる必要性があると判断され,BVM でも 同様に判断された症例数の合計を表した. ઉ.インフォームドコンセント 本研究は自治医科大学疫学調査倫理委員会の承認 (RIN A 07-54),および,山形県立中央病院倫理委員 会の承認(第 30 号)を得た.患者には文書により同意 を得た. ઊ.透析処理

統計学的処理は,Regression analysis は Stat View Ver. 5 により行い,p 値が 5%以下を有意差ありとし た.

Ⅱ.結

今回の研究対象は,9 施設から 144 症例で,全取得 BV データは 430 データ(1 症例あたり 3 回,ただし 2 例のみ 2 回)であったが,DW 設定の可否判定の記載 がなかったものが 48 データ(11%),血圧低下などに より除水速度が変更されたものが 38 データ,その他 の不備が 8 データあり,それらはプロトコール違反と して検討から除外し,336 データを解析対象症例とし た. ઃ.臨床的 DW 設定の適否 各施設の判定で,DW 設定が適正であると判断され たのは 230 データで,BVM でも適合と判断された適 正合致率は 72.6%であった.臨床的に DW を上げら れる可能性があると判断された 45 データで,BVM で も DW を上げられる可能性があると判断された症例 は 10 データ,逆に臨床的に DW を下げられる可能性 があると判断された 61 データで,BVM でも DW を 下げられる可能性があると判断された症例は 37 デー タであった(表 1).その結果,BVM による判定と臨 床的判定の適合率は 63.7%であった. ઄.予想範囲への適合性 DW が適正と判定された 230 データにおいて,その 内訳は,適正区分 ① 完全適合は 47.0%,②-1 食事に よる逸脱が 2 補液による逸脱が 1.3%,②-3 5 分以内に予想範囲内に復したものが 0.4%,②-4

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逸脱が軽微で 1BV%以内が 8.3%,②-5 逸脱がやや 軽微で,5BV%以内が 7.8%,③ の部分適合が 6.5%, 予想範囲からの逸脱により DW 設定の変更の必要性 があると判断される区分 ④ に分類されたデータは, 27.4%であった. 部分的適合までを含めると,DW 設定の適合率は 63.7%であった. અ.不適合原因の特定 不適合となったデータの原因検索を行うために,各 施設の医師によるデータ記載内容から評価した.臨床 的に DW 設定は適正と判断されながら,区分 ④ の完 全逸脱と評価された 61 データを解析した.その結果, 逸脱の原因が特定できたのは 17 データで,バスキュ ラーアクセスの再循環率(VARR)が 5%以上であっ たのが 2 データあった.また,体位変換が 9 データ, 体重増加量が 1.0 kg 以下であったものが 6 データ あった.残りの原因を特定できなかった 44 データの うち,われわれが開発した PWI により DW 設定が適 正であると考えられる,2≦PWI≦4 ではないものが 20 データあった.したがって,臨床的に DW 設定が 適正と判断されながら,BVM では DW 設定不適合と 判断されたデータは 24 データであった. આ.PWI と適合率 PWI による DW 設定の適否と BVM による適否に ついて検討した. PWI では,PWI により DW 設定が適正と判断され た 190 データで,BVM でも DW 設定が適合と判定さ れた適正合致率は 71.6%であった.PWI 4 以上で, DW を上げられると判断された 78 データでは,BVM でも DW を上げられると判断されたのは,27 データ, PWI 2 以下で,DW を下げられると判断された 87 データ中 BVM でも DW を下げられると判断された のは,43 データで,適合率は,58.0%であった(表 2). ઇ.hANP による判定と適合率 hANP は,115 症例で測定された.hANP による DW 設定の適否と BVM による適否について検討し た. / hANP では,25≦ANP≦75(pg/mL)で DW 設定が 適正と判断したが,hANP によって DW 設定が適正 と判断された 64 データで,BVM でも DW 設定が適 合 と 判 定 さ れ た 適 正 合 致 率 は 68.8% で あ っ た. / hANP 25 pg/mL 以下の DW を上げられると判断さ れた 11 データ中 BVM でも DW を上げられると判断 / されたのは,2 データ,hANP が 75 pg/mL 以上で, DW を下げられると判断された 40 データ中 BVM で も DW を下げられると判断されたのは,10 データで あった.すべてのデータでの適合率は,68.8%であっ た(表 3).

Ⅲ.考

透析療法において除水管理は重要であるが,除水管 理において DW 設定は透析に携わるスタッフにとっ て大きな問題である.DW とは,透析患者での過剰な 体液貯留傾向のない状態の体重であり,具体的にはこ れ以上水分を除去すると急激に血圧が低下する限界の 吉田ほか:循環血液量の変化と除水量設定 914 33 167 区分 ①〜③ DW 適切 DW 甘い DW 厳しい DW 適切 臨床評価 BVM 評価 10 41 区分 ④ DW 厳しい 37 2 22 区分 ④ DW 甘い 表 1 BVM による DW 適否の評価と臨床的 DW 適否の評価の検討 / / 適正合致率 167/230=72.6 適合率=(167+10+37)/336=63.7 1 61 45 230 合計 23 336 61 52 223 合計 51 136 区分 ①〜③ DW 適切 PWI<2 (DW 甘) PWI>4 (DW 厳) 2≦PWI≦4 (DW 適) PWI 評価 BVM 評価 27 37 区分 ④ DW 厳しい 43 0 17 区分 ④ DW 甘い 表 2PWI による DW 適否の評価と BVM による DW 適否の評価の検討 / / 適正合致率 136/190=71.6 適合率=(136+27+43)/355=58.0 3 87 78 190 合計 41 355 60 67 228 合計

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体重をいう15).KDOQI ガイドライン2)でも,DW と は,体内水分量が至適な状態で,血圧が至適な状態で あり,溢水がなく,目標体重までの除水に患者が耐え られる状態と定義されている2)が,確実な指標はない. われわれは,以前より透析中の循環血液量の変化に 注目し,当初は下大静脈径の変化から DW 設定を検 討してきた4).次に,1 時間ごとに Ht を測定して循環 血液量の変化を計算した12).さらに,透析前後の総蛋 白濃度を測定し,循環血漿量の変化を計算して,DW 設定の指標とした PWI を開発した6).しかし,最終的 には,持続的 Ht 測定装置(CRIT-LINE)の導入によ り経時的に循環血液量の変化を観察することができる ようになり7) ,さらに安全な透析が行えるようになっ た.しかし,CRIT-LINE では,透析のたびにダイア ライザー直前にキュベットを装着しなければならず, また,実費で透析ごとに 300 円の費用がかかるが保険 適応はないため,研究的にしか使用できない. 今回われわれが開発した BVM は,通常の透析回路 を装置に装着させるだけで自動的に循環血液量がモニ ターできるもので,簡便性,経済性に優れている. BVM は本来透析中の循環血液量の変化をモニターす る装置であり,除水速度が速すぎるのか,遅すぎるの かを監視することができる装置である.しかし,この ことを利用することにより透析後体重が適正であるか 否かを判定することができる.つまり,予定除水量を 体重当たりの変化率で表現することにより,除水によ る予想 BV 変化の範囲を設定できる.この予想範囲か らの逸脱が,除水速度が速すぎるのか,遅すぎるかの 指標となる可能性がある. さらに,本研究では詳細は述べないが,この装置を 応用することによりバスキュラーアクセスの再循環率 (VARR)も自動で測定できる10).シャント再循環率 は,CRIT-LINE でも測定できるが,生食を 20 mL,動 脈側と静脈側に注入しなければならず,臨床の場では なかなか利用できなかった.しかし,バスキュラーア クセスの再循環の存在は,血液の過剰濃縮を局所で起 こすため,Ht や総蛋白による循環血液量の検討では, 大きな問題となる. しかし,この装置にはいくつかの欠点がある.最大 のものは,患者が立位で透析施設に来院し,その後ベッ ドに仰臥位になった場合,下肢の間質から血管内に浮 腫を起こしていた水分が流入するために,仰臥位に なってから 30 分にわたって循環血液量が 5〜7%も増 加することである11) .また,プライミングに使用した 200 mL 程度の生理的食塩水が体内に入るため,当然 血液は希釈される.その結果,透析前の Ht 値とくら べ,透析開始直後には Ht はかなり低下しており,ま たその程度は個人により大きく異なる13).本装置で は,血液を回転させた後 5 分待ってから測定を開始し ているが,当然 0 時間での循環血液量は,真の循環血 液量を表していないことになる.また,低 Na 血症や 低アルブミン血症がある場合には,血管透過性が低下 するためか,除水開始直後に急激に循環血液量が減少 する14).また,1.0 kg 未満の除水症例では,除水によ る循環血液量の変化が少なく,予想範囲が狭くなり, BVM では DW 設定の評価が難しい場合が多いため, 今回の研究では除外した.このような症例は,尿量が 確保されている症例に多く,透析前に溢水所見がなけ ればその体重が適正体重と考えてよいと思われる. そのため,病態の変化により,透析開始後 1 時間は, 極めて不安定な循環血液量の変化を表してしまうた め,本研究のような循環血液量予想範囲の設定では, さまざまな因子が関与していることに配慮する必要が ある. しかし,われわれの施設では全透析監視装置に BVM を装着して透析を行っているが,病態の安定し た症例では,ほとんどの症例で予想範囲内を推移して いる.このことを確認するために本研究では,透析液, 透析開始状況,体重増加状況,DW 設定の基準が異な る可能性のある 9 施設において症例を集め,解析をし た. その結果,臨床的な DW 設定の判定と BVM による DW 設定の判定は,適正合致率は 72.6%であった. 不適合の原因としては,バスキュラーアクセスの再循 環,体位変換,体重増加量が 1.0 kg 以下などの因子が 関与していることが明らかとなった. 6 44 区分 ①〜③ DW 適切 ANP>75 (DW 甘い) ANP<25 (DW 厳) 25≦ANP≦75 (DW 適切) hANP 評価 BVM 評価 2 12 区分 ④ DW 厳しい 10 3 8 区分 ④ DW 甘い 表 3 hANP による DW 適否の評価と BVM による DW 適否の評価の検討 / / 適正合致率 44/64=68.8 適合率=(44+2+10)/115=48.7 2 40 11 64 合計 28 115 21 16 78 合計

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臨床的指標の一つとしての PWI との比較では,適 正合致率は 71.6%であった.さらに,比較的客観的評 価ができる可能性がある hANP との比較では適正合 致率は 66.7%であった.hANP は心疾患がある症例 では DW の指標となりにくいことから考えると,当 然の結果かもしれない. 今回の BVM の予想範囲の利用法としては,① 透析 開始後 30 分以内に予想範囲の下限を下回る場合,つ まり,BV の減少が大きい場合には,低 Na 血症,低蛋 白血症,透析膜の生体不適合などを疑う.② BV の変 化が予想範囲内であるにもかかわらず血圧が低下する ような症例の場合には,循環血液量の減少以外の原因, たとえば心機能低下,酢酸不耐症,低血糖などを考え る必要がある.③ BV の変化が予想範囲の上限を上回 る場合,つまり,BV の減少が小さい場合には,DW が 下げられる可能性があり,検討する必要がある.④ BV の変化が予想範囲の下限を下回る場合,つまり, BV の減少が大きい場合には,DW を上げられる可能 性があり,検討する必要がある.今回設定した BV 予 想範囲は理論的根拠のあるものではなく,あくまでも 経験的な設定で確定的なものではない.今後,この予 想範囲を用いて DW 設定した場合の問題点をさらに 検討したいと考えている.

循環血液量のモニターは,除水量の設定の一助にな ると考えられた.われわれが設定した BV%予想範囲 は臨床的にも妥当性が高く,臨床的に利用可能と考え られた. 謝辞:本研究は,第 54 回日本透析医学会学術集会・総 会において発表した.また,NIKKNAVI 研究会のメン バーとして,以下の臨床工学技士の絶大なるご協力に感 謝する. 1)自治医科大学附属さいたま医療センター臨床工学 部:堀口敦史,内田隆行,後藤 悟,小久保領,草浦理 恵,中島逸郎.2)自治医科大学附属病院臨床工学部:嶋 中公夫,前田孝雄,鈴木孝雄,大舘孝幸.3)山形県立中 央病院人工透析室:武田久登志,高橋倫彦,佐藤広也. 4)小金井中央病院:佐藤成人.5)真岡くまくら診療所: 菅沼 剛,本川直人.6)さくら記念病院臨床工学部:廣 澤満義.7)北朝霞駅前クリニック臨床工学部:加藤勇貴. 8)蓮田クリニック透析室:岩浪輝行,柴田英里子,中島 要. 文献

1) Lins LE, Hedenborg G, Jacobson SH, Samuelson K, Tedner B, Zetterholm UB, Ljungqvist O:Blood pressure reduction during hemodialysis correlates to intradialytic changes in plasma volume. Clin Nephrol 37:308-313, 1992

2) Chobanian AV, Bakris GL, Black HR, Cushman WC, Green LA, Izzo JL Jr, Jones DW, Materson BJ, Oparil S, Wright JT Jr, Roccella EJ:Joint National Commit-tee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treat-ment of High Blood Pressure. National Heart, Lung, and Blood Institute;National High Blood Pressure Education Program Coordinating Committee:Sev-enth report of the Joint National Committee on prevention, detection, evaluation, and treatment of high blood pressure. Hypertension 42:1206-1252, 2003

3) 赤井洋一,草野英二,古谷裕章,大野修一,江幡 理, 手塚俊文,安藤康宏,鈴木宗弥,田部井薫,浅野 泰: 透析患者の ANP は体液貯留の指標となりうるか? 透析会誌 24:1143-1148,1991

4) Ando Y, Yanagiba S, Asano Y:The inferior vena cava diameter as a marker of dry weight in chronic hemodialyzed patients. Artif Organs 19:1237-1242, 1995 5) 佐々木信博,上野幸司,白石 武,久野宗寛,中澤英 子,石井恵理子,安藤康宏,草野英二:高精度体成分 分析装置(InBodyS20)を用いた血液透析患者の体液 量評価 生体電気インピーダンス(BIA)法は DW の 指標になり得るか?.透析会誌 40:581-588,2007 6) 田部井薫,黒田 豊,高野隆一,増永義則,井上 真, 赤井洋一,浅野 泰:除水による蛋白濃縮度の意義の 検討.透析会誌 32:1071-1077,1999 7) 青木純一,上野幸司,後藤邦広,久野宗寛,丹波嘉一 郎,田部井薫,草野英二,浅野 泰:血液透析中にお ける持続 Ht 値測定装置の使用経験.腎と透析 40: 136-139,1996

8) Yoshida I, Ando K, Ando Y, Ookawara S, Suzuki M, Furuya H, Iimura O, Takada D, Kajiya M, Komada T, Mori H, Tabei K:A new device to monitor blood volume in hemodialysis patients. Ther Apher Dial(in press)

9) Ando K, Sakuma Y, Suzuki K, Mori H, Tabei K:New method of blood volume monitoring in hemodialysis patients. Nephrol Dial Transplant 21(Suppl):4, 2006 10) 安藤勝信,堀口敦史,内田隆行,後藤 悟,小久保領,

草浦理恵,中島逸郎,駒田敬則,佐久間由紀,吉田 泉,田部井薫:新しいバスキュラアクセス再循環率測 定方法とその評価.透析会誌 40(Suppl 1):486,2008 11) Ookawara S, Suzuki M, Yahagi T, Saitou M, Tabei K: Effect of postural change on blood volume in long-term hemodialysis patients. Nephron 87:27-34, 2001 吉田ほか:循環血液量の変化と除水量設定

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12) Tabei K, Nagashima H, Iimura O, Sakurai T, Asano Y:An index of plasma refilling in hemodialysis patients. Nephron 74:266-274, 1996

13) Iimura O, Tabei K, Nagashima H, Asano Y:A studyof regulating factors of plasma refilling during hemodial-ysis. Nephron 74:19-25, 1996 14) 安藤勝信,内田隆行,後藤 悟,小久保領,草浦理恵, 百瀬直樹,中島逸郎,駒田敬則,森 穂波,田部井薫: 低 ア ル ブ ミ ン 血 症 患 者 の 血 行 動 態.透 析 会 誌 40 (Suppl 1):480,2007 15) 横山啓太郎,川口良人:慢性透析療法.血液浄化療法 ハンドブック,改訂第 5 版(透析療法合同専門委員会 編集),pp 163-186,協同医書出版社,東京,2008

参照

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