修 士 論 文 の 和 文 要 旨
研究科・専攻 大学院 電気通信 学研究科 量子・物質工学 専攻 博士前期課程 氏 名四柳 智司
学籍番号0633047
論 文 題 目不規則系の臨界現象の普遍性に関する非平衡緩和解析
要 旨 シミュレーションによって熱平衡状態を実現し、その熱平衡状態を使って解析を行う相転移の 研究は多く行われています。しかし、ランダム系などフラストレーションの強い系では、緩和時 間が非常に大きくなり熱平衡状態の実現が難しくなります。このような困難を解決する方法の一 つに非平衡緩和法[1]があります。非平衡緩和法とは、熱平衡状態に至る緩和過程を用いて解析を 行うため熱平衡状態を実現する必要がない効率的なシミュレーションです。このため、熱平衡状 態の実現が困難な系においてもシミュレーションによる解析が可能になりました。例えば Kosterlitz-Thouless(KT)転移では相関距離が転移温度に向かって指数関数的に発散するため平 衡化が困難したが、非平衡緩和法とスケーリング解析によって解析が可能になりました[2]。 本研究の目的はランダム系の一つの例として、二次元および三次元ゲージグラス模型の転移温 度や臨界現象を非平衡緩和法によって解析することです。ゲージグラス模型のハミルトニアンはcos(
)
(
はクエンチランダム変
数
)
ij ij i j ijA
A
J
H
と与えられ、このクエンチランダム変数はガウス分布的に分布するランダムな値をとります。こ の模型はランダム磁性体や磁場中の超伝導粒子を記述します。このようなランダムな系は、フラ ストレーションの影響が強く出るため緩和時間が非常に大きくなり、平衡状態の実現が困難にな ります。そのため非平衡緩和法による解析が効果的です。 この模型について以下の二点について解析を行います。一つ目はスピン離散性による影響につ いてです。特に二次元離散スピン系ゲージグラス模型においては、常磁性相―KT 相―強磁性相 という逐次相転移することが指摘されています。そこで、非平衡緩和法による解析によってこの 点について解析し、また相図の決定もしたいと思います。二つ目は臨界現象の不規則性による影 響についてです。これについてはHarris criterion から、規則系の比熱の臨界指数αが正ならば ランダム系では異なる普遍性を示し、αが負なら規則系と同じ普遍性を示すことが予想されてい ます。そこでαの符号とHarris criterion の関係の整合性を非平衡緩和法の立場から調べたいと 思います。[1]Y. Ozeki and N. Ito, J. Phys. A: Math. Theor. 40 R149-R203 (2007) [2]Y. Ozeki, K. Ogawa and N. Ito, Phys. Rev. E 67 026702 (2003)