営業譲渡・譲受と成果の分配
原
秀 六
1 はじめに
営業譲渡は,採算の悪い事業からの撤退・事 業転換の目的,経営危機状態にある会社が第二 会社として再生するという目的や,倒産会社の 私的整理という目的のみならず,事業規模の拡 大・事業の多角化・製造工程の一貫化による効 率化・新事業分野への効率的な進出という目的 り のためにも,行われることがある。このような 後者の目的でもって行われた営業譲渡において は,その譲受会社において,取得された営業が 既存の他の部門の収益に好影響を転ばすことに より,あるいは,譲受会社の有する運営方法・ 技術力・市場支配力等により,譲渡対価さらに は譲渡後の追加投資額を越える成果,いわば, シナジー,それも,プラスのシナジーが生み出 されるということもある。このような場合,譲 受会社にとっては,この営業譲受は成功であっ たということになろう。逆に,当初の見込みが はずれてマイナスのシナジーが発生した場合, それが多額にのぼれば,譲受会社が傾くという 事態も発生しえよう。 合併もこのようなシナジーを生み出しえ,そ 1)宇田一明『営業譲渡法の研究』1頁(1993), 北沢正啓『会社法〔第四版〕』671頁(1994), 龍田節『会社法〔第五版〕』389頁(1995),田 辺光政『商法総則・商行為法』142頁(1995), 中野敏和「第三章 営業譲渡・譲受の実務手続」 商事法務研究会編『営業譲渡・譲受ハンドブック』 50頁以下(1991),営業譲渡・譲受の経済的機能 と共通するところが多い合併に関してではあるが, 龍田・前掲書374頁,田辺光政『会社法要説第四 版』373頁(1994)等参照。 の分配の要否・方法等につきわが国においても 議論がではじめてきており,基本的には,貢献 度・出資額等に応じた合併当事会社株主へのシ ナジーの公正分配を実現すべきと主張する分配 必要説と,他の投資家を合併取引以前の状態よ りも不利な状態に追いやるということがないと いう制約のもと合併推進側はシナジーを独占し のてもよいと主張する分配不要説とが,対立する。 合併の場合には,合供される会社は当然に解散 し,清算を経ないで消滅し,その株主は存続会 ヨラ 社または新設会社に収容されるので,仮に分配 必要説に立脚して法制度の設計をしょうとする ならば,基本的には合併前の合併当事会社の企 業価値に比例して合併シナジーが分配されうる ような合併比率の設定を義務づければ,合併シ ナジーの額の推計という実務上困難な作業を義 の 務づけなくとも,株式(合併新株も含まれる) 2)江頭憲治郎「会社の支配・従属関係と従属会社 少数株主の保護一アメリカ法を中心として一(八・ 完)」法学協会雑誌99巻2号145頁以下(1982), 神田秀樹「合併と株主間の利害調整基ge 一アメリ カ法一」鴻先生還暦記念『八十年代商事法の諸相』 334頁以下(1985),原秀六「支配従属会社間合 併における「共働的効果」の分配問題(1×2)」名古 屋商科大学論集35巻1号および2号(1991),江 頭憲治郎『結合企業法の立法と解釈』272頁以下 (1995)参照。 3)北沢・前掲注(1)672頁参照。 4)このような合併シナジー分配必要説(Bru− dney & Chirelstein, Fair Shares in Corpo− rate Mergers and Takeovers, 88 Harv. L. Rev.297,308(1974))という考え方に対して, 合併シナジー分配不要説(Easterbrook&Fisc hel, Corporate Control Transactions, 91 Yale L. J.698,712−728(1982))もある。の価値の上昇を通じて,合併シナジーはある程 6) 度は自動的にその合併当事会社株主間へ分配さ れうるようにして,分配必要説を実現すること ができよう。これに対して,分配不要説に立脚 して法制度の設計をしょうとするならば,基本 的には,一部株主によるシナジーの独占を可能 にする合併比率に反対する株主に対しては株式 買取請求権を手当てすることで分配不要説を実 現しえよう。 これに対して,営業譲渡はどうであろうか。 7) 合併の経済的機能と共通するところが多く,営 業譲渡後に譲渡会社が解散清算すればあたかも 譲受会社が譲渡会社を吸収合併したのと同じに なってしまう点を考慮すれば,営業譲渡におい ても,譲受会社におけるシナジーの発生も考え られ,基本的には,合併の場合同様,シナジー の分配に関して,分配必要説と分配不要説との ラ 対立が考えられよう。しかし,たとえ営業の全 部を譲渡した会社といえども当然に消滅すると いうことはなく,譲渡後も両当事会社は存続し うるので,合併両当事会社の株主の間でのシナ ジーの分配の規制とは異なり,当事会社の株主 5)しかし,全く必要ないということにはならない と考えている。というのは,株主が合併に応じる べきなのか,あるいは,シナジーはマイナスにな ると判断するので合併には応じずに株式買取請求 権を行使すべきなのか,に関して,株主が判断で きる資料の提供・説明・その他開示が会社からな される必要があると考えられるからである。その ような開示においては,どの程度の精度を法的に 要求すべきかに関して問題は残るものの,なんら かの形での合併シナジーの推計が義務づけられる ことが必要となってこよう。 6)合併交付金が存在する分だけ理論的な意味での 合併シナジーの完全分配は実現できない。あるい は,例えば,親子会社間合併において合併手続と 同時並行的に実質上の減資が行われるに際して, シナジー発生源の資産が親会社に払い戻される場 合には,シナジーの完全分配は実現できない(原・ 前掲注(2),名古屋三二大学論集35巻2号138頁注 (86),同「合併における「共働的効果」の分配」 私法56号226頁(1994)参照)。 7)龍田・前掲注(1)389頁。 の問で営業譲渡により発生するであろうシナジー う の分配に関して分配必要説を採用しようとする ならば,直接規制を加えるというよりも,基本 的には,営業譲渡におけるシナジーの中の相当 部分を譲渡対価の額に含めて譲受入に支払わせ るような交渉を通じて,シナジーは当事会社間 において分配されるという方式に依拠すること になろう。しかし,その際シナジー総額の予測・ 分配の比率および方法の設定が非常に困難となっ てくる。 また,営業譲渡・譲受の規制の際に,分配必 要説を採用しようとも,分配不要説を採用しよ うとも,営業の評価め問題は関係してくる。す なわち,対価の公正性の問題に直結してくる。 不公正な営業の評価は,不公正な対価をもたら し,その不公正性を甘受しなければならない側 の会社の企業価値の減少を引き起こしかねず, ひいては,その株主の持分の価値が減少してし まったり,その利益配当請求権が侵害されてし まうことになるし,もちろん,債権者の債権の 回収可能性をも低下させかねないので,営業譲 渡・譲受のいずれの当事会社の株主・債権者に とっても,営業の評価が自らにとり公正である と考えられるかどうかは,重大関心事といえよ う。しかし,譲渡対象の営業の評価は,難しい 作業である。すなわち,営業を構成する個々の 財産を譲渡後の活用目的に応じてどのように評 8)第三者割当増資による支配従属会社関係の形成 により発生しうるシナジーの分配問題については, 座談会「第三者割当増資をめぐる諸問題(一)」 民商法雑誌99巻6号743頁,759頁[森本滋発言] (1989),江頭・前掲注(2)結合企業法の立法と解 釈227頁,支配株式の譲渡の際に発生しうるシナ ジーの分配問題については,江頭・前掲旧く2)結合 企業法の立法と解釈251頁を参照。 9)なお,取引後においても当事会社が消滅しない という意味において営業譲渡と共通点のある第三 者割当増資について,その増資による支配従属会 社関係の形成から発生しうるシナジーにつき,発 行会社と新株引受入との間の分配を考慮する議論 が,存する(江頭・前掲注(2)結合企業法の立法と 解釈227頁以下)。
価するのか,無形固定資産とりわけ営業権をど のように評価するのか,さらには,営業を構成 する財産の個々の評価が営業の評価となるわけ ではないので個々の財産が有機的に一体化した ものをどのように評価するのか,特有の難しい 問題を内包しているのである。 現行法上,特に,営業譲渡・譲受の局面にお いてシナジーの分配を考慮した規制が,手当て されているわけではない状況に鑑み,本稿にお いては,わが国現行法(二において),および, 資産売却規制・再構成規制という,類似した法 規制があるアメリカ法を概観した(三において) 上で,制度設計上株主は営業譲渡の際に何らか の形でシナジーの分配を受けることができると すべきなのかあるいは全くできないとすべきな のか,制度設計上シナジーの分配に関して分配 必要説を採用するにせよ分配不要説を採用する にせよ,営業譲渡の際の対価が自らにとって公 正であるであると考えられるのかかどうかに関 して,チェックできる機会が.法制混晶適切に 手当てされているのか,対価が不公正であると 考えられる場合株主に自己の利益を守ることが できる適切な法的手段が制度上手当てされてい るのかという観点から,両者を比較し検:討を加 えることを目的とする(四において)。 なお,本稿においては,わが国経済において 中心的役割を果たしている株式会社間の営業譲 渡に関して,検討を加えるものとする。また, そもそも,営業譲渡・譲受におけるシナジーの 分配に関しては,シナジーを両当事会社へ分配 することを通して企業価値を高め債権回収可能 性を高めることを問題にするならまだしも,シ ナジーを債権者へ直接に分配するということは 問題になるわけではなく,むしろ,営業譲渡・ 譲受の際の債権者への通知・弁済責任の配分, あるいは,より一般的には担保制度などの観点 から検討される性質のものであると考えられる ので,ここでは,営業譲渡・譲受の成果の分配 という問題を株主の権利という観点から検討を 加えることとする。
H 現 行 法
まず,重要な財産の処分にあたるということ で,譲渡会社取締役会にて譲渡対象となってい る。営業に対する評価の公正性が厳密にチェッ ラクされることが,期待されていよう。ただ,例 えば,取締役会において代表取締役のもと厳格 なヒエラルキーが存在するような場合は,厳密 なチェックがいつも期待できるとは思われない。 営業の全部または重要なる一部の譲渡,および, 他の会社の営業全部の譲受に当たる場合には, 譲渡会社・譲受会社の株主総会にてチェックさ ユエう れることになる。 この商法245条1項目規定する営業の譲渡の 意味に関して,おおよそ,一定の営業目的のた めに組織化され,有機的一体として機能する財 産の全部または重要な一部を譲渡し,これによっ て,譲渡会社がその財産によって営んでいた営 業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受 け継がせ,譲渡会社がその譲渡の限度に応じて 法律上当然に商法25条に定める競業避止義務を 負う結果を伴うものと解し,従って,譲受人が 譲渡人の行っていた営業と異なる営業を営む場 合・譲渡人が競業避止義務を負わない旨の約定 がある場合は,商法245条1項に定める営業譲 ユ ラ 渡がないと解する見解、有機的一体性のある組 織的財産の譲渡が同条の営業の譲渡であると解 するものの,営業的活動の承継・競業避止義務 ユヨラの負担は不可欠の要件ではないとする見解,営 業活動の承継・競業避止義務の原則的存在とい 10)商法260条2項1号。 11)商法245条1項。 12)最大判昭和40年9月2日民集19巻6号1600頁, 最大判昭和41年2月23日民集20巻2号302頁の多 数意見,石井照久「営業の譲渡と株主総会の決議」 田中(誠)古稀記念『現代商法学の諸問題』1頁 (1967),上柳克郎「営業譲渡」鈴木竹雄ほか編 『新商法演習1』241頁以下(1974),四辺・前掲 注(1)商法総則・商行為法ユ39頁以下等参照。 13)大隅健一郎・判例評論87号19頁,蓮井良憲「営 業譲渡」ジュリスト500号265頁等参照。う要件は要らないと考え,また, 「営業」を客 観的みて組織的・機能的な一体としての会社財 産と考え,特別決議を要する場合であることを 譲受人が知っていたことを譲渡人が立証しなけ れば,特別決議の欠鉄を理由として営業譲渡の ラ 無効を主張することはできない見解,ここでの 営業の譲渡とは,基本的には,有機的一体陛の ある組織的財産の譲渡をさすとするものの,重 要な工場における重要な機械のような個別資産 の譲渡も,組織的財産の機能を発揮するために, きわめて重要性を有するものであるならば,総 ゆ 会決議が必要であるとする見解,営業用財産の 譲渡であっても商法343条の決議の対象となり うるとするが,譲渡会社が譲受人または第三者 が営業譲渡にあたることについて悪意であった ことを立証しない限り,譲渡会社は譲渡の無効 を主張しえないとする見解が,対立している。 これら見解の対立を,譲渡会社・株主の保護と いう要請と法解釈の統一・安定および取引の安 全の要請との間の対立というふうにとらえるこ とができよう。 また,商法245条1項1号にいう「営業の重 要なる一部」とは,どの程度をいうのか。現行 法上,商法246条と異なり,明確な数値をもっ て基準が設定されているわけではなく,その判 断にあたっては,売上高・全資産・利益・収益・ 従業員数等の要素に対する譲渡対象の貢献度の 割合というように数量化可能な要素を問題にす る定量的分析のみならず,当該譲渡のもたらす であろう将来への影響等数量化不可能な要素を ユリも考慮する必要があると思われる。 この株主総会特別決議を経なかった場合には, 14)竹内昭夫「重要財産の譲渡と特別決議」会社判 例百選(第5版)59頁(1992)。 15)前掲注(12)の最高裁大法廷判決における少数 意見,喜多川篤典『株式会社の法理』 235頁 (1966),同「営業譲渡と株主総会の特別決議一 商法245条1項1号の意義一」商法の判例56頁 (1967)等参照。 16)鈴木竹堆「株式会社法と取引の安全」 『商法研 究II』47頁(1971),北沢・前掲注(1)673頁。 営業の全部または重要な一部の譲渡・他の会社 の営業全部の譲受は基本的には無効となると解 される。 この株主総会の招集通知においては,株主に 議案の主な内容を知らせ検討機会を与えるため に,さらに,株式買取請求権行使のためには株 主は総会に先立ち反対の意思を通知しなければ ならないので,そのための判断材料を提供する のために,議案の要領が記載されねばならない。 ここでは,譲渡や譲受が必要な理由・譲渡や譲 受の相手方・時期・範囲・対価・その他重要な 条件が記載されることになろう。また,株主数 1000人以上の大会社においては,参考書類に, 譲渡や譲受が必要な理由・当該行為に関する契 約書の内容・最近営業年度の損益の状況が記載 されることになる。さらには,上場会社は,議 決権の代理行使の勧誘を行う場合においては, 勧誘を行う会社や代表取締役に委任する際の賛 否または白紙委任の判断材料を提供するために, その事項の要旨を記載した参考書類を添付しな ければならず,そこには商法で求められる行為 の要領とほぼ同じ記載が要求されることになろ 17)大隅健一郎=大森忠夫『逐条改正会社法解説』 219頁(1951),山下真弘「株式会社における営 業の重要なる一部譲渡」島大法学22巻1号38頁, 同「営業の重要なる一部譲渡の具体的検討」島大 法学24巻1号(1980)参照。 18)当該譲渡が譲渡会社にとって営業の重要な一一一一部 の譲渡であることを知らずかつ知らなかったこと に重大な過失もない相手方に対しては,会社はそ の無効を主張しえないとの見解に対して,この場 合には譲渡会社株主の利益を優先させるべきであ るとする見解もある(田村諄之輔「重要財産の譲 渡と特別決議」商法の争点〔第=二三〕104頁 (1983),竹内・前掲注(14)59頁,山下真弘「株式 会社法上の営業譲渡に関する一考察(2)」法学論集 (関西大学)25巻3号211頁(1975)参照)。 19)商法245条2項目 20)株式会社の監査等に関する商法の特例に関する 法律21条の2,大会杜の株主総会に添付すべき参 考書類等に関する規則3条1項9号。 21)上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する規 則2条10号。
う。現行法の枠組みのなかでは,これらの開示 により,譲渡会社株主は,営業に対する評価の 公正二等をチェックすることになるが,当該営 業譲渡が会社・株主に対していかなる影響・意 義を有するかを判断できる詳細な裏付け資料, 経営陣が当該営業譲渡が必要であるとの結論に 達した根拠,営業を構成する財産の範囲に関す る詳細な情報,それら各財産に対する評価に関 する詳細な情報,対価の中にシナジー分が含ま れているかどうか,含まれているとすればどの ように見積もられたのか,全体として見た場合 当該営業に対する評価が公正であること,すな わち対価の公正性に関する一応の証明等が提供 される実務が行われるという保証は何一つなく, 実際に簡略化された実務が行われた場合には, 確信を持たせずにいわば盲判を押させるという ように,非合理的な決断を株主に迫るという状 況を法が容認することになってしまいうる。現 行法がそこまで詳細な実務を要求していると解 することには,無理があろう。 営業の全部の譲受に関しても,同様のことが いえよう。ただ,営業全部の譲受に当たらない 場合であっても,当該譲受財産が譲受会社の成 立前から存在する財産であり,かつ会社の営業 のために継続使用するものであるならば,その 成立二年以内に,資本の二十分の一以上の対価 で譲り受ける契約を締結する場合には,事後設 立として,株主総会の特別決議が必要となり, さらには,当該営業が不当に高価格で取得され るときには,会社の財産的基盤を危うくしうる ので,裁判所選任の検査役の調査が要求される ことになってこよう。この場合には,株主総会 における活発な議論と,検査役の独立した立場 からの誠実な職務遂行により,一応,対価の公 正性が確保されることが期待されえよう。しか し,株主総会における議論に関しては,前述の ごとくいつも活発になるとは限らないし,検査 役の調査に関しても,債権者は自己に利害に関 する問題であるにもかかわらず他人の判断に依 存せざるを得ないことになり,現実問題として 検査役が常にそれも確実に自己の職務に忠実に 独立した立場から判断を下すという保証はなに ひとつとしてない。また,この場合には,譲受 会社にて前述のいわゆるシナジーが発生しうる ので,譲受会社にとっての当該譲受の必要性・ 意義に関して,すでに述べたように,株主が合 理的な判断ができるよう,より精緻な見積資料 の添付が求めれてもよいはずである。しかし, 現行法がそこまで要求していると解することに は,やはり無理があろう。 特別決議を要求する営業の全部または重要な 一部の譲渡あるいは他の会社の営業全部に関す る特別決議が行われる場合には,株主総会に先 立ち,会社に対して書面でこの行為に反対する 旨の意思を通知し,かつ株主総会にてこの決議 に反対の意思表示をなした株主は,会社に対し て決議の日から二十日以内に自己の有する株式 の額面無額面の別・種類・数を記した書面を提 出することにより,株式買取の請求をなすこと ができる。この制度により,当該行為の必要性・ 意義を理解し信じることができない株主は,当 該決議がなければ有したであろう公正な価格を
受け取り,理論的には,以前よりも不利な
(worse−off)状態に陥らずに,会社との関係 を絶つことができることになるはずである。し かし,前述の如く,たとえば招集通知・参考書 類への開示に関して現行法が要求すると解され る程度・範囲に鑑みて,当該譲渡あるいは譲受 の情報の入手に関して不利な立場にある考えら れる株主は,合理的な判断を下すことができな ういのではないかと思われる。 皿 アメリカ法 ここで,わが国の商法245条1項1号の営業 譲渡規制に近似する,全部の資産あるいは実質 22)商法246条1。 23)商法245条の2。的に全部の資産の売買(sale of all or substan− tially all of assets)に対する規制,あるいは, より一般的には合併とともに資産売買がそのた めの一手段として利用されてきた企業の再構成 (reorganization)に対する規制,を有するア メリカ法に目を転じてみる。 (ア)改正事業会社法(Revised Model Busi− ness Corporation Act)の資産譲渡規制 同法§12.01は,会社は,取締役会が決定し た条件・対価により,通例かつ通常の営業過程 において(in the usual and regular course of business)ee>,その保有する財産のすべての財 産あるいは実質的にすべての(substantially all)財産を,売却・リース・交換・その他処 27) 分をなしえ,また,100%子会社への全資産の 圏) 移転をなしえ,定款において別途定めなき限り, この取引に関して株主の承認は不要であると, 規定する。すべての会社財産の移転あるいは実 質的にすべての財産の移転の多くは通例かつ通 常の営業過程では生じないという認識のもと, この規定は,不動産会社による売却や事業清算 24)銀行法子宮の法律にはあるものの,商法は, 245条1項の営業譲渡・譲受に関して,債権者に よる異議を認める特別な手続きを手当てしていな い(落合誠一『新版注釈会社法㈲』〔上柳克郎ほ か編〕281頁(1986))。これは,現行商法上, 譲渡後も譲渡人は引き続きその債務につき責任を 負い,営業の譲受人が譲渡入の商号を続用する場 合譲渡人の営業上の債務については譲受人もまた 譲渡人とともに弁済の責に任ずる,すなわち譲渡 人と譲受人とは不真正連帯債務の関係に立つこと になるとの規定,および,このような商号続用が ない場合においても譲受人が譲渡人の営業上の債 務を引き受ける旨の広告をしたときは譲受人は債 権者の請求に応じなければならない,すなわち譲 渡人と譲受人との問に不真正連帯債務の関係が生 じるとの規定が,手当てされているからである。 しかし,合併に関して手当てされている,債権者 による異義を認める手続きにも問題があることは 周知の事実といってよい。 25) Hills, Consolidation of corporations by sale of assets, 19 Calif. L. Rev. 349 (1931) , Ballantine, On Corporations, 663 (1946) . のための会社による売却を念頭において,設け られたものである。ここでいう“実質的にすべ ての”とは, “ほとんどすべての(nearly all)” と同義語であり,売却後において本来の資産が わずかしか残らない場合には適用されないとい 31)う事態がないように,設けられた文言である。 一つあるいは数個の生産ラインを保有しつつい くつかの別個の生産ラインの売却は,たとえ価 値があり重要であったとしても,すべての財産 の売却あるいは実質的にすべての財産の売却に 32) はあたらない。しかし,その保有ラインが一時 的な操業のためであるとみなされる場合,“す べてのあるいは実質的にすべての”という要件 を回避するための口実であるとみなされる場合 26)この点に関する州レベルでのいくつかの判例を みてみると,Caroll v. Wyoming Production Credit Association, 755 P. 2d 869 (Wyo. 1988)においては,ワイオミング州法上,すべて の抵当権の設定は通常の営業過程の範囲内にある と解される,と判示され,Sailer v. Land Livestock Recreation, lnc., 268 Or. 531, 522 P.2d214(1974)においては,土地を購入し, それを細分化し,販売するのを目的とする会社の 実質的に全ての資産を構成する土地に抵当権を設 定するのは,通例かつ通常の営業過程の範囲内に あり,株主の承認は不要であると,判示された。 これに対して,Calnpbell v。 Vose,515 F。2d 256(10th Cir.1975)においては,帳簿価格上 会社の全資産の三分の一を構成する実質的に全て の営業用資産の子会社への移転につき,諸事情か らして,オクラホマ州法上,当該取引は株主の承 認が要求される,と判示された。 27) Revised Model Bus. Corp. Act g 12. 01 (aXl). 28) Revised Model Bus. Corp. Act g 12. 01 (aX3). 29) Revised Model Bus. Corp. Aet g l2. 01 (b>. 30) Revised Model Bus. Corp. Act E 12. 01 0fficial Comment 2 . 31) Revised Model Bus. Corp. Aet g 12. 01 0fficial Comment 1 . 32) Revised Model Bus. Corp. Act g 12. 01 0fficial Comment 1 .
には,第12章が適用される。同様に,別の地に おいて操業を続けるという見込みで,機械や装 置等の操業資産・売掛金・暖簾のようなものは 保有し続けるものの,工場設備は売却するとい う場合には,会社財産すべての売却あるいは実 質的にすべての売却には当たらない。 また,同法§12.02(a)は,取締役会が提案し 株主が承認するならば,会社は,通例かつ通常 きゆ の営業の過程外で,取締役会により決定された 条件・対価により,会社財産(グッドウイルを 伴うあるいは伴わないとにかかわらず)のすべ てあるいは実質的にすべてを,売却・リース・ 交換・その他処分することができると,規定す ヨの る。会社は株主総会日の十日乃至六十日前まで には,議決権有る無しにかかわらず,提案され た株主総会の株主すべてに知らせなければなら ず,招集通知には,総会の目的がすべての会社財 産あるいは実質的にすべての会社財産の売却あ るいはリースまたは交換もしくはその他処分の 検討であることが述べられていなければならず, 当該取引に関する説明が伴っていなければなら ない。当該取引に関して,定款の別途規定あるい は取締役会の別途決定がない限り,当該事項に 4e)つき認められたすべての議決権の過半数により 決せられる。ただ,財産の売却・リース・交換・ その他の処分に関して授権があった後において は,株主によるそれ以上の行為なしに,当該取 引は放棄されうる(ただし,契約上の権利には 33) Revised Model Bus. Corp. Act g 12. 01 0fficial Comment 1 . 34) Revised Model Bus. Corp. Act g 12. 01 0fficial Comment 1 . 35)いくつかの州法は,通常の営業過程においてな される売却とそうではない売却とを区別せず,全 てあるいは実質的に全ての会社資産の処分につき 株主の承認を,要求しているが,多くの州におい ては,通常の営業過程における全てのあるいは実 質的に全ての会社資産の処分につき株主の承認を 必要とせず取締役会決議によりなされうる,とし ているようである (3 Model Business Corporation Act Annotated, Seetion 12. 01 (3d ed. Supp. 1990) ) . 服する)。また,分配(distribution)を構成 する取引は§12.02ではなく,分配会杜に関し て支払不能に陥らせるあるいは債務超過に類す 36)何が全てのあるいは実質的に全ての会社資産の 売却に当たるのかに関して,Governing Board v. Panmll, 561 S. W. 2d 517 (Tex. Civ. App. mTexarkana 1977, writref’dn. r. e. ) においては,当該資産の額・価値によって決まる のではなく,取引の性質,当該売却が明示された 会社目的を押し進めることになるのかどうかによっ て決まる,と判示されたが,Gi皿bel v. Signal Companies, lnc. , 316 A. 2d 599 (Del. Ch. 1974) , aff’d per curiam, 316 A. 2d 619 (Del. 1974)においては,会社の営業にとって量的にみ て重大である会社資産かどうかによって決まる, と判示された。なお,ニュ・一・9一ク州では,かつ て,財産・権利・特権・一手販売権などの会社全 体のうち,絶対必要な部分であるかどうかという テストが採用されていたが,このテストによれば, どのように小さい部分でも会社営業にとって絶対 必要な部分の売却であるということになってしま いうるという欠点があった(lrL re Timmis,93 N,E.522(N. E. Ct. of App.1910,工n re Mckay, 19 A. D. 2d 815, 243 N. Y. S. 2d 591 (1963))。その後,何が絶対必要な部分なのか 判断が難しくこのようなテストは訴訟の種(hti− gation breeder)となるとの批判(Manning, The Shareh older’s Appraisal Remedy:An Essay for Frank Coker, 72 Yale L. J. 233 255(1962))もあり,このテストを廃棄した。 37) Revised Model Bus. Corp. Act E 12.02(a). 38) Revised Model Bus. Corp. Act E 7.05(a). 39) Revised Model Bus. Corp. Act g !2.02(d>. 40)多くの州法は,議決権ある社外株式の過半数と いう要件を定めているが,議決権があるかないか を問わず全ての社外株式の過半数という要件を定 める州法,議決権ある株式の三分の二という要件 を定める州法,議決権があるかないかを問わず全 ての社外株式の三分野二という要件を定める州法, がある(3 Model Business Corporation Act Annotated, Section 12. 02 (3d ed. Supp. 1990))。なお,100%子会社がその資産の全て あるいは実質的に全てを売却する際,その親会社 株主が承認しなければならないかどうかにつき、 議論がある(Eisenberg, Megasubsidiaries. The Effect of Corporate Structure on Corporate Control, 84 Harv. L. Rev. 1577 1589r1602 (1971)). 41) Revised Model Bus. Corp. Act g 12. 02(e).
る状態に陥らせる分配を規制する§6.40の適用 べ がある。それにより,既存会社により新たに設 立された会社に一部の資産を譲渡した既存会社 が対価としてその新設会社の株式を取得した後 に既存会社株主に対して持ち株数に応じて分配 するというようなスピンオフ(spin offs)取 引,既存会社により新たに設立された会社に一 部の資産を譲渡した既存会社が対価としてその 新設会社の株式を取得した後に既存会社株主は 自らの既存会社株式を引さ渡す分に応じてその 新設会社株式を分配されるというようなスプリッ トオフ(split offs)取弓L二つ以上の新設会 社に分割され消滅する既存会社の株主には持ち 分に応じて新設会社株式が分配されるというよ うなスプリットアップ(split ups)取引に関し ては,形式にもかかわらず,株主総会の承認が 不要となるかもしれないのである。 ゆ 株主は,通例かつ通常の営業過程以外でのす べてのあるいは実質的にすべての会社財産の売 却・交換に関して,当該事項につき議決権を有 するならば,反対し,会社決定の実施直前の株 式価値(原則として当該決定が及ぼすであろう 将来における影響の分は排除される)の支払い の を得ることができる。他の会社決定からの影響 42) Revised Model Bus. Corp. Act g 12. 02(g). 43) Revised Model Bus. Corp. Act g 12. 02 0fficial Comment. 44) Flarsheim v. Twenty Five Thirty Two Broadway Corp. ,432 S. W. 2d 245 (Mo. 1968)においては,すべての会社資産の売却の際 に発生する反対者の権利(dlssenters’rights) は,解散の際の全資産の売却の際にも発生する, と判示された。 45) Waters v. Double L, lnc.,114 ldaho 256, 755P.2d 1294(ldaho Ct. App。1987)におい ては,実質的に全ての会社資産につき通例あるい は通常の営業過程においてではない売却を会社が 取決めた場合に,この反対者の権利が発生すると し,当該取引が株主の承認が要求されないならば この権利は発生しえないという主張は,退けられた。 46) Revised Model Bus. Corp. Act g 13, Ol (3), g13. 02(aX3). 分は考慮できるが,ただ過去のこれらの影響分 は株価等に織り込みずみの場合が多いと,考え られている。 (イ〉カルフォルニア会社法典(California Corporations Code)の資産譲渡規制 主たる条件に関して,取締役会の承認があり, かつ,当該取引が通例かつ通常の営業過程にお けるものでないときは,取締役会の承認の前後 および当該取引の前後における“社外株式の承 認”があるならば,会社は,すべてのあるいは 実質的にすべての会社資産を,売却・リース・ 譲渡・交換・移転・他の処分をなすことができ う る。“社外株式の承認”とは,議決権のある社 外株式の過半数の賛成票による承認を意味し, このような承認には,案件事項につき定款また はこの編の規定により種類または組として議決 権が与えられている各種類または組の社外株式 の過半数の賛成票や,定款またはこの編がより 大きい比率を要求するときはある種類または組 の社外株式のそのようなより大きい比率(すべ てを含む)の賛成票もが,含まれる。“社外株 式の承認”にもかかわらず,株主によるそれ以 上の行為なしに,取締役会は,第三者の契約上 の権利には服するという条件で,その提案され た取引を放棄できる。当該売却・リース・譲渡・ 交換・移転・その他処分は,取締役会が会社の 47) Revised Model Bus. Corp. Act g I3. el Official Comment. 48) Cal. Corp. Code g IOOI〈a). 49)基本的には,譲渡会社株主の承認は要求される が,譲受会社株主の承認は要求されない(2 Marsh & Finkle, Marsh’s Cahfornia Cor− poration Law, g 18. 7 (3d ed. Supp. 1995)). 50) McDermott v. Bear Film Co. , 219 Cal. App.2d 607,33 Cal. Rptr.486(1963)にお いては,正式の株主総会招集通知がなくとも,事 実上75%の承認があるので,法を遵守している, と判示された。Lost Burros Gold Mining Co. v. lnyo County Bank, 83 Cal. App. 679, 257 P.209(1927)事件判決も,Associates Discount Corporation v. Tobb Co., lnc., 241 Cal. App.2d 541,50 Ca1. Rptr.738(1966)事 件判決も,同様の趣旨であると解せられる。
最善の利益になると認めた条件・対価で,行わ れることができ,そして,対価は,現金・財産・ 他の州内会社もしくは一身会社の証券,または そのいずれかであることができる。もし本条(a) 項または第2001条(解散における資産売却につ いての規定)(9)項による資産売却の買主が売主 を支配(control)するかあるいは共通の支配 (control)に服する場合には,当該売却の主た る条件は,買受会社またはその親会社の非償還 普通株式を対価とする場合を除いて,少なくと も議決権の90%により承認されなければならな い。ここでいう支配(contro1)とは,会社の 経営・政策を指示しまたは指示させる力の直接 あるいは間接の保有ではなく,議決権の50%を こえて有する株式の直接あるいは間接の保有を 意味する。この(d)項は,会社局長官,銀行局長 官,保険局長官または公益事業委員会が取引書 件を承認したときは,適用されない。 ただし,再構成(Reorganization)を構成 する取引は,第12章(第1200条以下)の規定に 服し,第1001条((d)項以外)には服さない。こ こで特に関係する再構成とは,ある会社がその 会社の持分証券(または取得会社を支配する会 社の持分証券),もしくは,担保が不十分であ りかつ再構成実現後五年をこえる支払期日を有 する債務証券(または取得会社を支配する会社 の債務証券),またはその双方と,全部または 一部,交換になす,他の会社のすべてのあるい 51)Cal. Corp. Code §1001(b).ただし,会社 の最善の利益になるように,放棄されねばならな い (2Marsh&Finkle, supra note 49, at §18.12)。例えば社外株式総数の20から30%が 株式買取請求を行った場合,おそらくはその請求 に会社は応じられなくなり,放棄されることにな ると考えられている(3Marsh&Finkle, Marsh’s California Corporation Law, g 19. 21 (3d ed. Supp. 1995) ) . 52)Cal. Corp. Code §1001(b).ただし,対価 が譲受会社株式より成り立っている場合には,第 12章の再構成(§1200(c))に該当することになる ( 2 Marsh & Finkle, supra note 49, at g 18. 1) o ちのは実質的にすべての資産の取得,である。§ 1200により,再構成を行うには,①譲渡会社・ 譲受会社,②それらの会社を支配し再構成の際 にその持分証券が発行または移転される会社 (親当事者;parent party),の取締役会の承認 が必要となってくる。また,再構成の主たる条 件は,原則として,§1200により取締役会承認 が要求される会社の,各種類の“渉外株式の承 認”を得る必要があるが,その種類の株式に付 与されまたは課される権利・優先権・特権・制 限が変更を受けないときは存続会社・取得会社・ 親当事者のいかなる種類の社外優先株の承認も 53)Ca1. Corp. Code §1001(d).本条の背景に は,以下のような配慮がある。すなわち,例えば ある会社の株式の80%を保有する過半数株主は, 100%所有する会社を新たに設立し,銀行から借 金しその金銭をその新会社に貸し付け,新会社は その金銭でもって当該既存会社の全資産を買い受 けるという計画をたてることができるとする。こ の過半数株主は,その資本参加比率からして,他 の少数株主の意向を考慮しなくとも,当該計画を 敢行できることになろう。この新会社が,既存会 社全資産の売却の対価たる金銭を,自己をも含む 既存会社全株主へ分配すれば,当該過半数株主は 銀行より借りた金銭の80%を当該銀行へ返還でき るようになろう。かりに買い受けた資産の中に現 金が十分あった場合には,譲受会社たる新会社が 当該過半数株主に銀行借入のうちの残額を返還す れば,当該過半数株主は銀行にかつて借り入れた 金額を返すことができるようになろう。結果的に は,他の少数株主は,既存会社の全資産を所有で きなくなったことになり,現金で追い出された形 になってしまう。このような現金追い出し (cash−out)に配慮して,社外株式の90%以上 を保有するため略式合併を実行できるような場合 を除いて,§1001(d)は,ある会社の全てのあるい は実質的に全ての資産を買い受ける者が,その会 社を支配するか,その会社と共通の支配に服する 場合には,当該取引は90%の承認が必要であると, 規定された(2Marsh&Finkle, supra note 49, at g 18. 2) . 54) Cal. Corp. Code g 160(a). 55) Cal. Corp. Code g 160(b). 56) Cal. Corp. Code g IOOI(e). 57) Cal. Corp. Code g 181(c). 58)§1200 Legislative Comエnittee Comment.
不要となるなど,一定の場合には承認は必ずし も要求されない。 §1001(a)の資産売却のための書面による提案 (written proposal)あるいは§1200の再構成 の承認のための書面による提案が, “利害関係 のある当事者(interested party)”により, 会社の数人またはすべての株主に対して,なさ れる場合,その会社株主に対する対価の公正性 (fairness of the consideration)に関して,書 面による賛成意見が,伝達されなければならな い。ただ,本項は,提案の対象である会社が “100人以上の者により登録して所持される株 式”(§605により決定される)を有しない場 合等においては,利害関係のある当事者の提案 には,適用されない。ここで“利害関係のある 当事者”とは,その取引の当事者であり,かつ, (A)その提案の対象となった会社を直接・間接に ラ 支配するか,(B)その提案の対象となった会社の 役員あるいは取締役であるかもしくはその役員 あるいは取締役により直接・間接に支配されて いるか,または,(C)その提案の対象となった会 社のいずれかの取締役・業務執行投員(execu− tive officer;社長,販売・管理・研究もしく は開発,財務のような主たる営業単位・部門・ 機能を担当する副社長,政策立案機能を遂行す 59) Cal. Corp, Code g 1201(a). Bickson v. Federal Firearms Corp. , 227 Cal. App. 2d 574,38Cal. Rptr.793(1964)では,取締役・ 株主の承認を得ずに買受会社株の購入のために実 質的に全ての資産を用いることは無効である,と された。なお,この場合の承認とは,各種類の社 外株式の過半数を意味する。また,議決されない 場合には反対票としてカウントされることになる (3 Marsh & Fmkle, supra note 51, at g 19. 21) 0 60) Cal. Corp. Code g 12el(a). 61) Cal. Corp. Code g 1203(a). 62)譲受会社たる支配会社が従属会社に再構成を提 案ずる場合,支配会社が従属会社の株主に対価の 公正性に関する意見を提供しなければならないこ とになる(3Marsh&Finkle, supra note 51, at g 19. 28). るか社長・副社長と同じ義務を有する他の役員・ その他の者を意味する)が重要な経済的利害関 係(material financial interest)を有する組 織体である者を意味する。ここで要求されてい る意見は,申込人とは関係がなく,かつ,報酬 を得て財産・営業・証券の価値に関して他人に 助言する業務に従事する者が提供しなければな らないが,その意見陳述者が,以前にその申込 人・関係組織体に役務を提供したことがあると いう事実,または,この提案された取引の成功を 条件として報酬を得るということでこの取引に 関して助言・援助を提供することに同時に従事 しているという事実のために,その意見陳述者 は申込人と関係があるということにはならない。 この賛成意見は,当該取引の承認に関して株 主総会が開催される場合は,その総会の通知と ともにその株主に,伝えられなければならない。 また,この賛成意見は,議決権を有するすべて の株主の同意が書面により勧誘される場合は, その勧誘と同時に,伝えられなければならない。 さらには,すべての株主の同意が書面により勧 誘されるというわけではない場合には,勧誘さ れる各株主に対しては,同意がなされる前に, そして,その他のすべての株主に対しては,§ 603(b)の要求する通知がある時に,伝えられな フの ければならない。 §1201(a)および(b)または(e)に基づき再構成に 63)譲受会社が提案対象となった会社の役員あるい は取締役により支配されている場合,対価の公正 性に関する意見が伝達される必要性が生じてくる (3 Marsh & Finkle, supra note 51, at g 19. 28) 0 64)譲受会社が,提案対象となった会社の経営陣が 重大な経済的利害関係を有する組織体である場合, 対価の公正性に関する意見が伝達される必要性が 生じてくる(3Marsh&Finkle, supra note 51, at S 19. 28) . 65) Cal. Corp. Code g 1203(a). 66) Cal. Corp. Code g 1203(a). 67) Cal. Corp. Code g 1203(aX3). 68) Cal. Corp. Code g 1203(aX4).
つき会社の社外株式の承認が要求されるときは, 当該取引に関して議決権を有する各株主は,そ の会社に対して,その株主所有の反対株式を, アエラ 公正な市場価格での現金買取を,請求できる。 公正な市場価格とは,当該再構成等の条件を最 初に発表する前日にて決定されるが,この結果 としての価格上昇・下落は排除する一方で,そ の後効力を生ずる株式分割・株式併合・株式配 ア ラ 当については調整されなければならない。基本 的には,(1)再構成等の直前に(・)§251001(0)によ り会社局長官が認証した国法証券取引所に上場 されていたかまたは(ii)連邦準備制度理事会の発 行する店頭証拠金株式のリストに登録されてい たのではない株式で,再構成につき決定する株 主総会の通知が本条乃至§1304の規定を要約し ており,(2)再構成につき議決権を有する株主の 決定のための日において社外株式であり,かつ (・)再構成に賛成投票しなかったか,あるいは, (iiX1)の(i)または(・・)において定められるときは再 構成に反対投票し,(3)反対株主が§1301により 公正な市場価格での会社による買取を請求し, (4)§1302により裏書のために提出した場合には, 反対株式ということになろづ4込本章(Chapter 13)では,反対株主とは,反対株式の登録所持 アの人を意味し,登録譲受人も含まれる。 会社がその株式が反対株式であることを否定 するとき,または,会社・株主がその株式の公 69)総会が開催されずに全員一致ではない書面によ る同意がなされた場合は,議決権ある株主全員の 同意が書面により勧誘されていない限り,§1201 による株主承認の通知はその承認により授権され た行為の完成の少なくとも十日前になされなけれ ばならないと,規定する。 70) Cal. Corp. Code g 1203(aX5). 71) Cal. Corp. Code g 1300(a). 72) Cal. Corp. Code g 1300〈a). 73)反対株式および反対株主の定義,現金買取を請 貸する株主の踏むべさ手続き,会社の踏むべき手 続き,合意された価格の支払時期,協議が整わな い場合の提訴期間等につき,規定してある。 74) Cal. Corp. Code g 1300(b). 正な市場価格につき合意しないときは,反対株 式買取の請求を行う株主または利害関係ある会 社は,社外株式による承認の通知がその株主に 郵送された日の後の六ケ月以内に,その株式が 反対株式であるか否か,その反対株式の公正な 市場価格,の決定を裁判所に求める申立てをな アの すことができる。 自己の株式につき現金支払いを請求する権利 がある株主は,原則として,再構成を授権・承 認するのに必要な数の株式が適法に賛成投票し たか否かを審査する訴訟を除いて,再構成等の 有効性を攻撃しまたは再構成等を取消・無効に アの する普通法上・衡平法上の権利を有さない。再 75) Cal. Corp. Code g 1300(c). 76)自己の株式を現金で買い取ることを会社に請求 する場合,以下の手続きに服することになろう。 すなわち,自己の株式につき現金買取の請求権を 有しかつそれを欲する株主は,書面による請求を しなければならない(§1301(b))。ただし,再構 成に関して議決する株主総会の日より遅くなく, または,社外株式による承認の通知が株主に郵送 された日の後三十日以内において,会社・会社の 名義書換代理人がその書面による請求を受領しな いときは,その請求は効力を生じない(§1301 (b))。その請求は,会社買取のための請求揖象たる 株式の数・種類の提示と,再構成等の前の日の公 正な市場価格であると当該株主の主張する価格の 表明とを,含まなければならない(§1301(c))。 再構成の場合において,当該会社は,株主に自己 の株式の現金買取を請求する権利がある株主全員 に対して,再構成に関しての社外株式による承認 の通知を,当該承認後十日以内に,§1300乃至§ 1304の写し,反対株式の公正な市場価格を表す会 社の決定した価格の表明書,その株主がその権利 を行使する場合に従うべき手続の概略とともに, 郵送しなければならない(§1301(a))。社外株式 による承認の通知等が株主に郵送された日の後三 十日以内に, (取請求の対象たる株式が反対株式 である旨を押印・裏書されるかもしくはそのよう に押印・裏書された適切な名称の証明書と交換す るために)当該株式を引子する株券を,または, 買取請求対象たる株式の数の書面通知を,その会 社の主たる事務所等に提出しなければならない (S 13022) . 77) Cal. Corp. Code g 1304.
構成等の当事者の一個が他の当事者により直接・ 間接に支配されているか共通の支配に服する場 合には,本章に従いその株式につき現金支払い を請求しなかったその当事者の株主には,§ ア ラ 1312(a>は適用されない。ただし,その株主がそ の再構成等の有効性を攻撃するかまたは再構成 等取消・無効にする訴訟を提起するときは,そ の株主は,その後,この章に従い自己の株式に つき現金支払いを請求する権利を有しない。ま た,再構成等の当事者の一個が他の当事者によ り直接・間接に支配されているか共通の支配に 服するときは,その再構成等を取消・無効にす るための訴訟においては,(1)他の当事者を支配 する当事者,(2)再構成の二個以上の当事者を支 配する者は,当該取引が支配される当事者の株 主に関して公正かつ合理的であることの立証責 ラ 任を負う。 (ウ)デラウエアー一般会社法(Delaware General Corporation Law)の資産譲渡規制 同法§271は.すべてのあるいは実質的にす 78)Ca1. Corp. Code §1312(a), なお, Sturgeon Petroleums, Ltd. v. Merchants Petroleum Company, 147 Cal. App. 3d 134, 195 Cal. Rptr.29(1983>,および, Steinberg v. Amplica, lnc., 42 Cal. 3d 1198, 233 Cal. Rptr.249(1986)においては,§1312(a)のもと では,どの種類の救済が認められるのか,第13章 に基づき株主の保有する株式につき現金の支払い を請求する権利の排他性が,争われた。 79)Cal. Corp. Code §1312(b).この規定は, 再構成の当事会社が共通の支配に服する場合には, この再構成に関しては,株式を現金で買い取るこ とを請求する権利の排他性を,排除している(3 Marsh & Finkle, supra note 51, at g l9. 32). 80)Cal. Corp. Code §1312(b>.また,ここで は,再構成の有効性を攻撃する訴訟するか再構成 を取消・無効にする訴訟においては,会社に対す る10日前の通知に基づき,かつ,明らかに他の救 済では申立株主またはその株主が一員である種類 の株主を十分に保護しない旨の裁判所決定に基づ く場合を除き,裁判所は,その取引の遂行を制限 したり禁止してはならないと、規定されている。 81) Cal. Corp. Code g 1312(c}. べての会社資産(暖簾・フランチャイズを含む) に関して,当該事項につき議決権ある社外株式 の過半数により株主総会において採択された決 議が授権した条件・対価(一部あるいは全部, 現金,他の会社の株式・証券等の財産でもよい) で,取締役会においての売却・リース・交換を なすことができると,規定する。この株主総会 は,最低二十日間の通知期間を設けて適法に招 集されねばならず,その通知には当該決議が案 件であることが記載されなければならない。し かし,会社財産の売却・リース・交換に関して 株主等による授権・同意があったとしても取締 役会は,株主等の決議なしにこれらの取引を放 棄してもよい(ただし,第三者の契約上の権利 があるときはそれに服する)と,規定されている。 82)何が実質的に全ての会社資産に当たるのかに関 して,正味価値の41%で総収入および税引前収益 のおおよそ15%しか生み出していない資産の売却 は実質的に全ての資産の売却に当たらないとされ たケース(Gimbel v. Signal Cos.,316 A.2d 599, (Del. Ch. ), aff’d in part, 316 A. 2d 619(Del.1974)),純売上の45%を生み出し ている資産の売却は271条のいう株主の承認が必 要であるとされたケース(Katz v. Bregman, 431 A. 2d 1274 (Del. Ch. ), appeal refused sub nom. Plant lndus. v. Katz, 435 A. 2d 1044(Del.1981))などがある。また, Moore, The Sale of All or Substantially All Corporate Assets Under Section 271 of the Delaware Code,1Del. J. Corp. L. 56, 58 (1976)は,50%以下の会社財産の売却は明らか に271丁目規制に服さないとする。 83)かつては,全株主の同意が必要であった(Al. lied Chem. & Dye Corp. v. Steel & Tube Co., 14 Del. Ch. 1, 120 A. 486 (Del. Ch. 1923) ) が,その後少数株主の拒否権を排除し経営者の会 社運営権限を制限しないように改められた (Warren v. Fitzgerald, 56 A. 2d 827 (Md. 1948), Moore, supra note 82, at 56). 84)全てあるいは実質的に全ての会社資産の売却が 提案されている場合,株主は271条のもとでは, 取締役会がたてた計画あるいは交渉した結果を審 議する権利を有するだけで,自ら条件を設定でき る権限はないと考えられている(Moore, supra note 82, at 57) .
jv 検 討 ここで,以上概観してきた現行法・アメリカ 法につき,主な点を検討することとする。 第一に,営業譲渡・譲受により発生しうるシ 85)取締役会が売却の条件・対価が適切であり (expedient)会社の最善の利益ためになる(for the best interests of the corporation) ように 決定しなければならない(Del。 Gen. Corp. Law§ 271(a)。通常取締役は誠実であるとの 推定を享受できるので,受け取ることになってい る対価とその価値との間の格差に着目して取引を 差止・取消そうとする側に対価が不公正であるが ゆえに詐欺的であると解せられることを立証しな ければならないことになろう (Barron v. Pressed Metals of Am. , lnc. , 35 Del. Ch. 325, 332, 117 A. 2d 357, 361 (Del. Ch. 1955) aff’d. 35 Del. Ch. 581, 123 A. 2d 848 (Del. 1956))0 86)全体として見ると全てのあるいは実質的に全て の会社資産の売却にあたることになるにもかかわ らず,何回かの取引に分解して行った場合,株主 総会の承認は必要なのかという点につき,全ての あるいは実質的に全ての資産の売却であることが 合理的に明確になった段階でのみ株主の承認が必 要となってくることになろう(Sharon Steel Corp. v. Chase Manhattan Bank, 521 F. Supp. le4 (S. D. N. Y. 1981),aff’d in part and rev’d in part, 691 F. 2d 1039 (2d Cir. 1982) , cert. denied, 406 U. S. 1012 (1983) ) 0 87)資産売却と解散(dissolution)とを組み合わ せれば事実上の合併(de facto merger)となる が,合併の際付与される株式買取請求権(DeL Gen. Corp. Law §262)は反対株主には与 えられなくなる(Hariton v. Arco Elecs., Inc., 41 Del. Ch. 74, 188 A. 2d 123 (Del. 1963)). 88)De1. Gen. Corp. Law § 271(a).この20 日間という期間を計算する際には,投函日を含め ず,総会日を含めなければならないと解されてい る(Santow v. Ullman,39 Del. Ch.427,166 A.2d 135(Del.1960))e 89) Del. Gen. Corp. Law g 271(b). 90) なお, 1994年ドイツ法 (Umwand− lungsgesetz)は,譲渡人持分の所有者への譲渡 対価提供による,清算手続を経ない譲渡人の解散 に帰する全資産の譲渡を認める(同法174条)。 ナジーの分配に関しては,分配必要説を採用す べきか,あるいは,分配不要説を採用すべきな のであろうか。当初からシナジーの分配を直接 営業譲渡規制の射程範囲内の問題として考えて わいたとは思われない。すでに指摘したように, 営業譲渡の結果譲渡会社は当然には解散するこ とにはならない関係上,営業譲渡規制を設計す る上でシナジー分配必要説を実現しようとする ならば,発生しうるシナジー総額の予測・推計 を行ったうえで,譲渡会社に分配されるべきシ ナジーの額を譲渡対価に盛り込むよう,譲渡会 社は譲受会社に対して交渉する(以下,①の方 法と称する)必要がでてくる。しかし,このよ うな交渉の成功をいつも期待するのは,現実的 であるとは思われない。では,かりにシナジー の公正分配の実現を可能にしうる方法の手当て を諦めることになれば,たとえ合併局面こおい て制度設計上分戯画要説を採用したとしても, 合併を推進して合併シナジーを独占しようとす る者は,あるいは,より多くのシナジーを得よ うとする者は,合併の経済的機能と共通すると ころが多く,譲渡後の譲渡人の解散清算により 91)司法省民事局編『商法中改正法律案理由書(総 則会社)』133−134頁(1937),小野耕一『第七 十三回帝国議会商法中改正法律案委員会議事抄録』 131−132頁,奥野健一ほか『株式会社法釈義』 148−151頁(1939),山一証券株式会社調査課 『改正商法(第二編会社ノ中第四章株式会社)遂 条解説』63頁(1939),伊沢孝平『注解新会社法』 402−403頁(1950)等参照。なお,株式買取請求 権制度導入の際に,決議が問題になったとなった だけで生じる株式の市場価格の増減の存在が認識 されている(岡咲恕一『解説改正会社法』132頁 (1950),鈴木竹雄=石井昭久『改正株式会社法 解説』135頁(1951),大隅=大森・前掲注(17) 223頁(1951))が,このような増減は,株価に おけるシナジーの織り込みなのかあるいは市場に おける不安定な反応の現れなのか,解釈が分かれ うるところであろう (Lorne, A Reappraisal of Fair Shares in Controlled Mergers, 126 U. Pa. L. Rev.955(1978)参照)。 92)前掲注(9)を参照。
譲受人が譲渡人を吸収合併したのと同じ効果を もたらしうる営業譲渡をもっぱら利用すること になろう。このような者にとっては,営業譲渡 とは,シナジーの分配に関して分配必要説を採 用する合併規制を回避するための手段・道具で あるという位置付けになろう。換言すれば,合 併局面において分配必要説を実現するべく考慮 された具体的規制には,実効性がなくなってし まうことになろう。それでは,分配を実現でき る方法が,他にはないのであろうか。全くない ということはなかろう。すなわち,現行法上譲 渡会社が営業譲渡の際に対価として取得した譲 受会社株式を実質上の減資に伴う株式消却の対 価として株主に分配することが可能であると解 することが可能ならば,これら二つの取引を組 み合わせる(以下,②の方法と称する)ことによ り,シナジーの予測・それの分配額の決定とい う困難な作業をいちいち負担させずに,分配必 要説を営業譲渡規制に実現することがある程度 は可能となってこよう。プラスのシナジーの分 配は,譲渡対価たる譲受会社株式の値上がりに よって実現されうるからである。この場合,営 業譲渡に際して譲渡会社が譲り受ける譲受会社 株式は,いわば現物出資の対価として認識する ことができよう。もし経営陣が現金の形での対 価を主張するならば,譲受会社においてプラス のシナジーの発生を確信しその公正分配を主張 する譲渡会社株主は,株主総会において譲受会 社株式を営業譲渡の対価とすることによりシナ ジーの分配を受けれるように譲渡会社経営陣は 交渉すべきであることを主張するか,その主張 が総会にて排斥された場合には可能である時に 限り例えば善管義務違反行為を承認する総会決 議であるとしてその無効を主張する等して,対 93)一において指摘した。 94)企業動向「小糸製作所の動向」商事法務68号19 頁(1957),実務相談室「有償消却による減資の 対価として他会社の株式を与えることの可否」商 事法務]140号38頁(1988>。 抗することになろう。譲受会社株式を譲渡対価 とすることによりシナジーの分配を図ろうとす るこの②の方法は,譲受会社株式を譲渡対価と することに関して,譲渡会社において統一した 意思の形成ができるということ,さらには,譲 受会社が承諾を与えるということ,を前提とし ている。すなわち,法は,このような方法をあ くまで一つの選択肢として,提供できるにすぎ ない。もし譲渡会社において当該②の方法に関 して統一した意思形成ができなければ,あるい は,譲受会社が承諾しなければ,譲渡会社はこ の方法を営業譲渡に際して利用できなくなって しまう。その際には,譲渡会社あるいはその株 主は,当該営業譲渡を断念するか,シナジーの 額の予測をしたうえで譲渡対価に盛り込むよう 譲受会社に対して交渉すること,すなわち①の 方法によりシナジーの分配が実現されるように 譲受会社に対して交渉することを,譲渡会社経 営陣に要求するか,いずれかの方法の選択に迫 られることになろう。この①の方法が採用され る場合もあるということからして,シナジーの 額の予測という作業も制度設計上配慮される必 要があるということになろう。なお,この最初 に挙げた方法も,譲受会社の承諾を前提として いることはいうまでもなかろう。理論的には, さらにもう一つ方法が考えられよう。すなわち, 例えば譲受会社の都合により現実問題として現 金対価しか可能にならず,譲渡会社もどうして も当該条件を承諾せざるをえないという状況に ある場合において,当事会社が双方とも公開会 社であるという限りにおいて,株式市場の効率 性を前提とすることができる局面においてのみ, 株式市場に対する営業譲渡・譲受に関するアナ ウンスメント前の譲受会社の株価と当該アナウ のンスメント後の譲受会社の株価とを比較するこ とにより,例えば善管義務違反行為をしょうと しておりその結果回復困難な損害が会社に生ず 95)場合によっては,譲渡会社の株価をも考慮する 必要がでてくることも考えれなくはなかろう。