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クロロマイセチ7耐性腸チフス菌について
2、電子顯微鏡的研究
東京女子医科大学細菌学教室(主任平野憲正教授) 小 コ 林 バヤシ千
チ 鶴’ ズ(受付昭和31年12月7日)
私は先Dにクロロマイセチン(以下クVマイと 略す)耐性腸チフス菌について,原株との相異を種 々検討したが今回は電子顕微鏡的所見について検 討を行ったので報告する。細菌の電子顕微鏡的研 究についてはRalph W.G。 Wyckoff2♪, A.」. Shan−ahan et al.5), S. mudd et al.4), 」. Hilier5), T.
Yamamoto6), S..lnoue7),篠原等8),武谷9),寺 田ゆ等により種々の菌について行われて来たが腸 チフス菌に関するものは少い様である11・12)。 実験二三及び電子顕微鏡的所見 使用菌株は腸チフス菌相原株(VW型)とその クロマイ200γ/cc耐性株であって使用電子顕微鏡 は日本電子光学研究所製」.E.M. T一・1型である。 まず旧株の12時間培養並に耐性株の36時間培養 について比較した。耐性株を36時閥培養iとしたの は耐性株では発育が遅く,12時間では殆んど認め 難い様な小さな集落であり36時聞でやっと原町と 同程度の発育を示したからである。これらの菌を 柔かい普通塞天斜面に培養しその一白金耳を出来 るだけ静かに滅菌蒸溜水に浮游させ予め用意した コロジオン膜を張ったシートメッシュにのせ,40Q C10分位で乾燥きせ白金パラジウムで適当にシャ ドウイングを行い鏡検した。鏡検の結果は原株で は図1の如く周囲多毛性の鞭毛を多数認めたが耐 性株では図2の如く菌体周囲に鞭毛を全く認めず 且つ菌休の電子線透過度が原株の様に均一ではな かった。この菌体の電子線透過状態の相異が培養 時問の相異によるものか,菌表面の構造によるも のか又は細胞質内の構造の相異に由来するものか を確める為更に次の実験を行った。 培養10時聞の原株と耐性株とを前述の如くにし てメッシュにのせて乾燥し,シャドウを施さない もの,軽くシャドウを施したもの,更に強くシャ ドウしたものの三種類の試料を作り鏡検した。そ の結果は子株では非シャドウ写真図3と直径0.2
mm,長さ約8cmの白金パラジウム線でシャド
ウを施した写真図4との間に大なる相異を認めな かったが耐性株ではシャドウの強弱により異った 像の写真が得られた。即ちシャドウを施さないも の及び白金パラジウム線約4cmでシャドウした ものは図5,図6の如く菌体の電子線透過度の不 均一の部分が認められたが,白金パラジウム線 8cmでシャドウしたものは図7の如く略均一の 透過像を示していた。樹耐性株の鞭毛は全く認め られなかった。この事は原株と耐性株の36時間培 養についても同様であった。 次に細菌菌膜だけの試料を得て原株と耐性株の 相異を検討してみたいと思い,吉田等ユ5)の方法に ならって次の実験を行った。即ち普通寒天斜面に 12時闇培養した原株と耐性株を出来るだけ多:量か きとり,蒸溜水で3回洗粘し,硬質ガラス管中に 洗瀞菌を入れ,約3m1の蒸溜水に浮游せしめ, それにクローム硫酸でよく洗った微小ガラス球を 等量加え,試験管を熔融密封した後,1分間約 140回の割で1∼2時聞振猛して菌体を破壊し,後 2000r.P.m.10分間遠心して沈渣を約0。5m1の蒸 溜水に再浮游させて,乾燥し,クnムでシャドウ イングを行って鏡検した。 原株の三二は振盈1時聞の揚戸は図8の如く細 かい鐡をもつた略一様の構造を示した。球形の比Ch伽KOBAYAS理(Department of Bacteriology, Tokyo Women’s Medical College):On the chlo・
romycetin resistant Typhoid bacilli 2. The electronmicroskopic studies.
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44 較的大きい粒子も認められたがこれは撚量2時間 の揚合図9の如く認められなくなる一合もあるの で菌膜の隆起している部分等ではない様である。 しかし2時間振毒した揚代には図10の様に殆ど霰 のない薄い膜として認められるものもあった。こ・ れに反して耐性株の鼓膜は1時間振盈でも2時間 振盟の揚合でも図11,図12の如く大きく凹凸のあ る鍛を持っている像として認められ,原論とは異 った様子を示していた。 総括及び考按. 私の:先の実験によれば1),クロマイ耐性腸チフ ス菌は形態学的にも,免疫学的にも叉生物学的に も義絶と著しい相異が認められたが,殊に耐性株 の鞭毛の消失と,H抗原の減少並びにマウスに対 する毒力の低下は,興味ある事と思われた。 今回電子顕微鏡的検討を行うに際して従来云わ れた如く14),電子線の通過により試料の変化する 事を憂え,観察は出来るだけ電子線を弱くして行 ったが,私の得た菌体電子線透過度の不均一像が こうした副産物ではないかとの懸念もあるわけで ある。しかしR.W,G. Wycoff2)は「熱処理した 細菌の電子顕微鏡的写真」の中で,大腸菌の試料 を作る揚合蒸溜水で稀釈したものは50QCで既に 菌体が穎粒化するが,40。Cでは原形質の均一性 は失われないと述べている。私も実験的にいろい ろ試みたが,結局電子線による細菌体の変形より もむしろ試料を作る際の菌浮游液の乾燥の温度と 時間による変形の方が著しい様に思われた。80。C で乾燥したものでは図13の如く原形質が凝固しtt 様な全く不均一の像がみられたが,40。C 10分叉 は37。C 15∼20分で乾燥したものでは1回もこの 様な像は見られなかった。 爾近来,一般に使用されているコロジオン膜に カーボンをごく薄く蒸着して膜を補強しておく事 が鏡検能率を高める手段として用いられているの で15),後半の実験にはこの方法を用いて観察を行 った。 R.B. Fischeri6)によれば「生物学的標本を完全 に観察しようとすれば3枚の写真を撮:らねばなら ない。即ち1枚は識別されるべき内容構造の如何 を問わず,非シャドウ標本の写真,1枚は構造細 部及び背景を強調するために軽くシャドウした標 本の写真,1枚は表面構造をさらに詳しく教える ために強くシャドウした標本の写真。もし蒸着層 がうすすぎるとシャドウイングの過程によって何 もうるところはない。また一方厚すぎると細部は かくれてしまう。」と。即ち電子線透過度の不均 一性が表面構造に由来するものであればシャドウ のかけ方で影響を受けるのではないかと思われ る。 私の作った標本では原株はシャドウを施さない ものでも,面体の電子線透過度は略;均一一・であって, シャドウしたものとの間に差が認められなかった が,耐性株では非シャドウ標本において電子線透 過度が不均一一一Aであり,これは軽くシャドウする事 によって強調され,強くシャドウしたものでは不 均一性が認められなくなった。この事は菌膜の構 造の相異によるものではないかと考えられる。そ れで更に原形質を破壊して油膜だけとして比較し てみた。 細菌細胞膜に関しては吉田1了,,吉井!8),N. Yo−
shida et a119’, T. Yamamoto6), S. Mudd4)等の
研究があり,此等は細胞膜の二重被膜様の構造と か,トリプシンで処理した細胞膜には150A位の 粒子が見えるとか,叉はその粒子と化学的性状の 関係について報告している。私の揚合は吉田15,の 方法に依って原形質を破壊し義膜だけの標本を作 ったのであるが,前述の如く原株と耐性株との間 には明らかな相異が認められた。しかし詳細な観 察は不充分であったし,この相異が原形質電子線 透過度不均一性の原因のすべてであると結論する 事は出来ないと思う。只細菌の鞭毛は細胞膜より 出ていると云われ,私も図14の様な所見を得てい るので鞭毛の消失した耐性株が原株と異った性質 の菌膜を持つ事は興味ある事と考えられる。更に H抗原の減少及びマウスに対する毒力の低下につ いても,この細胞膜の変化が何等か影響している ものと思われる。 結 論 クロマイ耐性腸チフス菌の電子顕微鏡的研究を 行い次の結論をえた。 1. クロマイ200γ/cc耐性腸チフス菌において は電子顕微鏡的に鞭毛を全く認めない。 2・ クロマイ耐性腸チフス菌の義膜は原株の菌 膜と異り大きな凹凸のある添状をなしている。 3. クロマイ耐性腸チフス菌の頭体は電子線の 透過が不均一である。 4. クロマイ耐性腸チフス菌が電子顕微鏡的に 一一一一 44 一一
45 も原株と異った構造を示す事は,その免疫学的性 状,生物学的性状,毒力の低下が原株と異る事と 関聯して興味ある事と思われる。 (本論女の要旨は第22回東京女子医科大学学会総会に おいて講演したものである。) 終りに御指導,御校閲を賜わりました平野憲正教 授,種々御助言を頂きました中西清子助教授,並びに 電子顕微鏡写真撮影に関して協力を惜しまれなかった 本学電子顕微鏡研究室亀割健彦技師に厚く御礼申し上 げます。 交 献 1)小林千鶴:東京女子医大誌,25,171(昭30) 2) Wyckoff, R.W.G.:」. Bact. 58, 153(1949)
3) Shanaham A. J., et al.: J. Bact. 54, 183
(1947)
4) Mudd, S., et al:J. Bact. 41, 415(1941)
5)Hil!er・」・:エBact.56,569(1948)
6) Yamttmeoto, T.:J. Electromicroscopy, 2, 26
(1954)
7) Takeya, et al.:J. Electromicroscopy, 2, 29
(1954) 8)篠原近知他:抗酸菌病研究雑誌,8,70(昭27) 9)武谷健二他:電子顕微鏡,3,68(1954) 10)寺田正中:総合研究報告集録医学取薬学編。423 (昭28) 11)設楽芸夫:東京医事新誌,68,7,3(昭26) 12)谷野輝雄他;電子顕微鏡,3,50(昭28) 13)吉田長之他:日本細菌学誌,9,973(1954) 14)金谷光一:電気試験所研究報告,509,30(昭24) 15)深見章他:電子顕微鏡,4,166(1956) 16)R.B.フイシヤー著:東昇訳,応用電子顕微鏡 学,(1954) 17)吉田長之他:日本細菌学誌,9,1059(1954) 18)吉井善作他:東京医事新誌,73,459(昭31)
19) Yoshida, N., et al.:J. Electromicroscopy, 3, 52 (1955)
ca 図1 腸チフス菌原株の12時間培養 白金パラジウムシャドウ×4,500 図2 クロー9 / 200 7/cc耐性株の36時聞培養 白金パラジウムシャドウ×4,500 図3 腸チフス菌原盤の10時間培養 シャドウせず×4,500 図4 腸チフス菌原株の10時間培養 白金パラジウムシ・ヤドゥ×13,000 図5 クロマ / 200γ/cc耐性株の10時間培養 シャドウせず×3,200 図6 クnマイ200γ/cc耐性株の10時間培養 白金パラジウムシャドウ×17,000 図7 ク・マイ200γ/cc耐性株の10時間培養 白金パラジウムシャドウ×8,900 図8 腸チフス菌原株の振ee 1時間後の菌膜 クロムシャドウ×14,000 図9 腸チフス菌原株の振盗2時間後の菌膜 クロムシャドウ×13,000 図10腸チフス三原株の振va 2時間後の菌膜 クロムシャドウ×7,800 図11 クロマイ200γ/cc耐性株の1時間振崖後の菌膜 クロムシャドウ×4,500 図12 クロマイ200γ/cc耐性株の2時間振盗後の菌膜 クロムシャドウ×13,000 図13腸チフス三原株の12時間培養80。Cで乾燥 白金パラジウムシャドウ×4,100 図14腸チフス三原株の36時間培養 クロムシヤドゥ×17,000 図 1
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凸乎 〆 壷 Sx + v ff t 図 3難
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