100 かえって増加して400mg/dlを越える例もあり,ケ トーシスの存在も疑われ,高血糖下での運動負荷の危 険性が示唆された.インスリン不足による筋へのグル コースの取り込み低下に加えて,カテコラミソ増加に よる血糖上昇作用が強くなるものと考えられ,運動療 法は,ある程度内の血糖コントロールであることを前 提に行われるべき『ものと思われた. 次に,合併症に関して,初期腎症の指標となる尿中 アルブミン排泄率(AER)を運動前後で測定した.安 静時AER》25μg/minのIDDM 6例で,前記の運動 を負荷したところ,129十98.9μg/minとAERの増大 を認め,運動制限の必要性が考えられた.臨床的タン パク尿陰性のIDDM31例で同様の運動負荷を行った ところ,罹病期間が長くなるにつれてAERが増大す る傾向が伺われた.また,肥満した若年インスリン非
依存型糖尿病(NIDDM)7例でも,安静時よりAER
高値の者が多く(56.3+83.3μg/min),運動後著名な AERの増大(116十155μg/min)を認めた.これまで, 明かな合併症がない場合,若年糖尿病老には積極的な 運動が勧められてきたが,合併症の進行予防の観点か ら,運動療法指導の見直しが必要と思われた. 8.運動負荷による筋エネルギー代謝よりみた年齢 要因 (産科婦人科)角田 新一・井口登美子・ 村井加奈枝・塩田 真理・武田 佳彦 目的:筋収縮運動に伴うエネルギー代謝の変動を末 梢循環抑制の負荷のもとで核磁気共鳴スペクト三七ト リー(MRS)を用い, in vivoでリン酸化合物を測定 し,年齢要因による差について検討した. 対象:23∼63歳の健康婦人で2群に分け,若年A群 30±1.4歳(M±SE)(n=13)と高年B群49±2.0歳 (n=8)とした. 方法:MRSのマグネット内に右前腕部を固定し, 安静の後平均血圧で駆血したまま握力15kg 2秒間歓 で2分間掌握運動を行ない経時的に31PMRスペクト ルを得た.そのスペクトルからクレアチンリン酸 (Pcr),無機リソ(Pi), ATP一βを測定し,またPcrと Piとの位置関係から組織内pHを求めた. 結果:Pcrは運動で低下し, A群では心計の65.3± 3.1%,B群61.5±9.3%となり,以後経時的に漸増し 運動前壷に戻る傾向を示した.回復2分と5分ではA 群(2分67.9±3.1%,5分80.9±3.7%)に比しB群 (2分57.7±9.3%,5分67.2±7.0%)ではその実測値 は有意に低く(p〈0.05),B群で回復遅延が認められ 984 た.一方PiはPcrとは逆に運動で上昇し,以後経時的 に漸減し,前面に戻る傾向を示した.経過中上痴話は B群で低く(2分値p〈0.05),代謝効率に差が認めら れた.ATPおよびpHは運動と低下し,回復5分値は A群に比しB群で低値を示し,B群で回復遅延を認め た. 結論:1.31P MRSは非侵襲的連続的に生体組織中 の高エネルギーリン酸化合物の変動を測定できた.2. 高年群ではPcr, ATP一βおよび組織内pHに回復遅延 が認められ,またPiの代謝に差が認められた.3.31P MRSは筋の代謝効率と回復過程を指標とした末梢循 環機能の評価への有用性が示唆された. 9.小児の運動負荷試験一平滑化スプライン関数を 用いた各種パラメーターの速度曲線の検討一 (第二病院小児科) 多田羅勝義・藤野 訓世・片海 優子・ 木藤香代子・伊藤けい子・李 慶嘉・ 山崎 公恵・浅井 利夫・村田 光範 近年小児においても運動負荷試験が行われる機会が 多くなってきた.その応用範囲,有用性は心疾患,呼 吸器疾患,代謝疾患など,多岐にわたる.従来これら の運動負荷試験においてモニターされるパラメーター としては,心電図測定により最大心拍数,また呼気ガ ス分析による最大酸素摂取量などが用いられることが 多かった.一方,小児において運動負荷試験を実施す る際には常に充分な負荷をかけることができたか否か といった,被験者側の努力に依存する問題がつきまと う.最大心拍数,最大酸素摂取量といったパラメーター を用いてその運動能を評価するにあたっては充分な注 意が必要である.そこで今回われわれは運動負荷試験 評価の新しいパラメーターとして,従来の酸素摂取量, 心拍数といったパラメーターの単位時間あたりの変化 量に注目し,それを平滑化スプライン関数を用い速度 曲線として求めて検討した.その結果,肥満児におけ る酸素摂取量速度曲線で興味ある高度単純性肥満児 (肥満度50%以上)である.なおコントロールとして10 名の非肥満児についても同様にトレッドミルにより運 動負荷試験を行った.肥満児では酸素摂取量速度曲線 の運動開始後最初のピーク値がコントロールに比較し て有意に高いことが判明した(肥満児:14.6ml/min2, コントロール:6.3ml/min2, p=0.0001).また同一肥 満児における減量前後の同値の比較でも,減量前の同 値は減量後のものより有意に高かった(減量前:14.6 ml/min2,減量後:8.1ml/min2, p=0.0001).酸素摂101 取留速度曲線におけるファーストピーク値の異常は肥 満に起因すると思われ,今後肥満児の運動能力評価に 利用できると思われた.さらにこのように平滑化スプ ライン関数を用いて求めた各種パラメーターの速度曲 線は小児の運動能をみる指標として充分応用できる可 能性がある. 10.閉塞性肺疾患における運動負荷時の呼吸筋の動 態 (第一内科)山口美沙子・吉村 章子・ 北村 暁子・朝戸 裕子・石原 祥子・ 阿久津敏恵。渡辺 敏恵・永野 秋雄・ 吉野 克樹・金野 公郎・滝沢 敬夫 慢性閉塞性肺疾患患者は基本的日常動作時にも息切 れをきたし,患者のもつ呼吸機能の最大限を強いてい る可能性がある.では一体呼吸機能のどのプロセスに おいて健常者と異なるのか,今回運動負荷にみる呼吸 筋の動態とこれに対応する運動能力の改善対策につい て検討したので報告する. 実験目的:1.健常例と疾患例の運動時の呼吸筋の 動態を明らかにする.2.呼吸筋不全の基礎病因の一つ である低酸素血症の改善が運動時の呼吸筋に及ぼす影 響を明らかにする. 方法:被験者は自転車エルゴメーターで各人の日常 生活最強動作の約8割程度の運動負荷をかけ最大耐久 時間を計測.同様の実験を空気呼吸と100%02吸入下 で行った.測定パラメーターは食道・胃バルーン法に よる胸腔内圧(Ppl),腹腔内圧を表わす胃内圧(Pga), これらの差圧より経横隔膜圧(Pdi)ニューモタコメー タにより気流量,換気量を測定した. 成績および考察:健常者では運動時,換気量の増大 と共に吸気時のPdiは著増した. 閉塞性肺疾患症例では安静時,すでにPdiは増加傾 向にあり運動負荷で換気量の増大と共に多少増加は認 めるが円滑ではなく,むしろPgaが呼気終末時に目立 ち,腹筋の活動性の増大を認めた.これは限界に達し た横隔膜収縮開始直前に受動的伸展をはかる効果があ ると考えられ,次の吸気が効率よく行われることにな る. さて同じ運動負荷条件を酸素吸入下で行った場合, 耐久時間の延長が明らかで,Pdiの変化から横隔膜の 収縮は円滑に且つ安定して認められた. まとめ:閉塞性肺疾患において運動負荷時呼吸筋は 換気量増加に対応し活動性の増大を認めるが容易に疲 労し,酸素吸入時は呼吸筋活動は安定し運動耐久時間 も明らかに延長した. 11.当科における過去1年4カ月の眼外傷一特にス ポーツ眼外傷について一 (第二病院眼科)中編 祥子・宮永 嘉隆 (牛久愛寵総合病院眼科)山内 啓子 当病院における最近の眼外傷,特にスポーツ外傷に ついて検討した. 期間は1988年11月始めより1990年2月末までの1年 4ヵ月間で総数は208件であり,その他に角膜異物59 件,結膜異物22件であった. このうちスポーツ外傷は63件で,眼外傷の30%を占 める.男女比では4:1と男性に多く,年齢別では10 歳代が最:も多く,0歳代がこれに続いている.季節別 では大きな特徴は認められないが比較的12月に多い. 受傷機転はボールによるものが57%で最も多い.特 に野球ボールとサッカーボールが目立つ,ほとんどが 心的打撲であった. 病態で最も多いのは虹彩炎23件で,続いて網膜振盤 面14件,角膜びらん10件となっている.これらは比較 的軽症と言える.サッカーで重症例が多いとの報告も あるが,今回その傾向は認められなかった.むしろ例 数は少ないがハンドボールで網膜裂孔や網膜硝子体出 血等の比較的重症な例がみられた. スポーツ眼外傷では件数の多い野球ボール(特に軟 式やソフトボール)に加え,盛んになりつつあるサッ カーボール,また,ハンドボール等,ボールによる外 傷が重要と思われる. 12.15歳少年が遭遇した野球ボールによる眼外傷 (第二病院眼科)図師 郁子・ 宮永 嘉隆・亀井 裕子 スポーツ眼外傷には様々なものがあるが,球技によ る眼外傷,特にボールの直接打撲による素的眼外傷は しぼしぼ遭遇する。これ等はボールの種類や打撲の強 さにもよるが,さしたる後遺症もなく回復することが 多い.今回,私達は眼鏡を使用していたためボールの 打撃によりレンズが破損し,眼球破裂をきたして失明 に至った症例を経験したので報告する. 症例は15歳の少年で高校の硬式野球部に属してい た.平成1年7月27日間部活の最中に野球ボールが左 眼に当たり,かけていた眼鏡のレンズが割れ,その破 片によって穿孔凡眼外傷を起こした.すぐに当科へ搬 送されたが,初診時より左眼の眼内容物が漏出してい る状態で,視力はすでに光覚もなかった.緊急手術後, ステ山イドで消炎に務め,約半月ほど入院させた.受 一985一