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学術情報
第37回東京女子医科大学高血圧研究会
日 時 平成5年9月2日(木)
会場第二臨床講堂
6:00∼7:30PM
開会の辞
第1部 症例
第2部 講演
閉会の辞
「側萎縮腎を伴った腎血管性高血圧症の1例」
「カルシウムと血管系細胞の収縮」
世話人 出村 博(第二内科,
藤井 潤(循環器内科)・二瓶
(第四内科)
(第四内科)
(東京大学第一内科)
(循環器内科)
代表)・細田
二瓶 宏
安藤 明利
奥田 俊洋
細田 瑳一
瑳一(循環器内科)・
宏(第四内科,当番)
一側萎縮腎を伴った腎血管性高血圧症の1例
(第四内科) 西 園子・
安藤明利。二瓶宏
症例は,22歳男性.1992年10月会社の検診で初めて
200/140mmHgと高血圧を指摘.1993年2月他院にて
高血圧,高レニン,高アルドステロン血症,前腎の萎
縮を認め,腎血管性高血圧(以下RVH)を疑われて,
5.月1日当科紹介入院となった.入院時,血圧162/94
mmHgで左右差なし.眼底は, Scheie H、一2S。.代謝
性アルカローシス,低K血症,GFRの低下, PRA 5。7
ng/ml/h, PAC 52.4ng/d1の上昇を認めた.腹部CT,
エコーでは黒血が萎縮し,立位負荷試験,captopril負
荷試験では,PRAの過大反応を示した. venous sam−
plingでは,左右差はなかったが, angiographyにて右
回動脈基幹部より5cmに90%の,さらに第1分岐部よ
り1cm末梢にも75%の狭窄を認め, RVHと診断.90%
狭窄部に対し,percutaneous translumina星renal an.
gioprasty(以下PTA)を施行し,25%の狭窄まで改善
を認めた.PTA後血圧に著変はなかったが, PRA,
PACの低下,レノグラム,captopril負荷試験の改善…を
みた.RVHの原因としては,年齢,狭窄部位等より,
線維筋性過形成が予測された.
近年技術の進歩により,RVHの治療としてPTAの
頻度が高くなっている.当センターでのPTAの成績
を含め,RVHの治療と予後につき,簡単にまとめた.
力膨シウムと血管系細胞:腎メサンギウム細胞を中
心に
(東京大学第一内科) 奥田 俊洋
高血圧の発症には腎の機能異常が重要な働きをして
いる.メサンギウム細胞(MC)は糸球体の中心に存在
する平滑筋類似の細胞であり,アンギオテンシンII
(AII)などの血管作動性物質に反応して収縮し糸球体
の血行動態の調節に重要な役割をする.我々はMCに
AIIにより刺激されるClに対する透過性が存在する
こと,細胞診Cl濃度(〔Cl〕o)の低下はPGE2産生の増
加を介してMCの機能を修飾することを示し, MCの
機能の調節にClが重要な役割を持つことを報告し,こ
れが尿細管糸球体フィードバック(TGF)のシグナル
伝達に意義を持つ可能性を提唱している.一方自然発
症高血圧ラット(SHR)ではTGFの活動度の異常が
あり,これが高血圧の発症機転に関与する可能性が指
摘されている.このような観点からSHRのMCの
〔Cl〕oの変化に対する反応につぎ検討した.コント
ロールのWKY−MCでは〔Cl〕oを低下させるとMC
によるPGE2の産生が増加し,基礎細胞内Ca(〔Ca〕i)
値は低下し,AIIによる〔Ca〕iの上昇・細胞収縮は抑
制された.対照的にSHR・MCでは〔Cl〕oを低下させ
てもPGE2の産生増加は認められずAIIによる〔Ca〕i
の上昇・細胞収縮の抑制は減弱していた.このことは
SHR・MCではC1に対する反応性が欠落していること
を示す.この異常がTGF活性の変化を介して体液量
の調節異常を引起し,結果的にSHRにおける高血圧
発症機序の一つとして働いている可能性がある.更に
最近我々はインスリンがMCのAIIを始めとする血
管作動性物質による細胞収縮・〔Ca〕iの上昇を抑制す
ることを見出した.しかしながらSHR−MCではこの
ような血管作動性物質に対する反応のインスリンによ
る抑制が認められず,SHR−MCの血管作動性物質への
反応性は充進していると考えられる.SHRのメサソギ
ウム細胞やその他メサンギウム細胞と類似した性格を
持つと考えられる血管系細胞の,血管作動性物質への
反応性の充進は糸球体血行動態の変化や血管抵抗の上
昇を介してSHRの高血圧発症に役割を持つかも知れ
ない.
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