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新しい内因性レチノイド9, 13-di-cis-レチノイン酸によるtransforming growth factor-β活性化を介した肝線維化の発症機序に関する研究

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Academic year: 2021

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Title

新しい内因性レチノイド9, 13-di-cis-レチノイン酸による

transforming growth factor-β活性化を介した肝線維化の発症

機序に関する研究( 内容の要旨(Summary) )

Author(s)

長瀬, 清亮

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(医学)甲 第414号

Issue Date

1999-03-25

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/14708

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 長 瀬 清

亮(岐阜県)

博 士(医学) 甲第 414 号

平成11年

3

25 日

学位規則第4粂第1項該当

新しい内因性レチノイド9,13-di-Cis-レチノイン酸によるtransforming growth factoトβ活性化を介した肝線推化の発症機序に関する研究 (主査)教授 森 脇 久 隆 (副査)教授 森 秀

教授 岡 野 幸 雄 論 文 内 容 の 旨 Transforminggrowth factor-β(TGF-β)は,肝再生不全などの病魚 あるいほ肝実質細胞の機能および増殖 の抑制において重要な役割を果たすサイトカインであり,これまでに明らかにされた増殖抑制因子で最も強力なもの とされる。また,伊東細胞(星細胞)を介して肝線維化を促進する作用も有しており,細胞外マトリックスの産生元 進についても,他のサイトカインと比較して最も強く刺激することが知られている。 一方,レチノールの酸化的代謝産物であるレチノイン酸は,TGF-βを活性化させ肝線維化を促進するという報告 がある。また,肝線維化の進行に伴い主に肝伊東細胞に貯蔵されているレチニルエステルが減少することも知られて いる。しかしレチニルエステルおよびその代謝産物の体内における動態とともに,伊東細胞の脂肪滴(レチニルエス テル)が減少する詳細なメカニズムについてまだ十分な検討はなされていない。最近,ラット肝線維症モデルの肝組 織で,レチノールが著明に減少し,逆に9,13-di-Cね-レチノイン酸(9,13dcレチノイン酸)が著明に増加していること を観察している。レチノールが減少していることから伊東細胞が活性化していることが推察され,そこで申請者は, 伊東細胞培養系において9,13dcレチノイン酸がTGF-βを活性化させ肝線推化を促進するかを検討した。さらにレチ ノイン酸が促進する肝線維化は.伊東細胞においてプロテアーゼを介して活性化されたTGF-βによるという報告を ふまえ,プロテアーゼ阻害剤による伊東細胞の増殖抑軌 TGF-βの活性化の抑制についても検討した。 対象および方法 9,13dcレチノイン酸によるTGF-βの活性化 肝線維化の促進についての検討は,ヒト肝伊東細胞であるLI90細胞 を用いて実験を行った。レチノイドはエタノールで調製し,培養液のエタノール最終表皮は0.防%となるように希釈 した。培養液中のTGF-βは,ミンク肺上皮細胞由来のCCL-64細胞を用いたbioassayによって測定した。RNAは培 養細胞からacidguanidinium・thiocyanate-phenol-Chloroform法により抽出し,ノーザンプロット法により解析した。 レチノイン酸レセプター(RAR)a,β,γ,plasminogen activator(PA),TGF-β2,prOa2(I)collagenの各 ブロープのcDNAを丑Pにてラベルして用いた。合成されたコラーゲン量は[Ⅵ]プロリンの取り込みによって測定し た。 プロテアーゼ阻害剤による伊東細胞の増殖抑軌 TGF-βの活性化の抑制についての検討は,Wistar系雄性ラット の肝臓より分離したラット初代培養伊東細胞を用いて実験を行った。門脈よりカニュレーションし,コラゲナーゼ/ プロナーゼ培養液を濯流し細胞を分散させた後,比重遠心法により伊東細胞を単離精製した。実験には精製率,生細 胞率ともに90%以上の精製伊東細胞を供した。プラスチックプレート上で2日間培養し.トリバンプルー染色試験に より生細胞数を計測し,位相差顕微鏡にて形態を観察した。その後9日目まで広域プロテアーゼ阻害剤であるFOY 305の添加群と非添加群に分け.伊東細胞の生細胞数と,位相差顕微鏡による形態の変化をそれぞれ比較した。さら にFOY305を添加することによって伊東細胞における活性型TGF-β量が抑制されるかについて検討した。 結 果 1)9,13dcレチノイン酸無添加のLI90細胞では活性型TGF-βは微量であったが.9,13dcレチノイン酸を添加すると 活性型TGF-βは約20倍に増加していた(p<0.01)。一方,プラスミンの作用を阻害するアブロチニンを同時に添加 すると活性型TGF-βは約70%が抑制された(p<0.01)。 2)LI90細胞に9,13dcレチノイン酸およびRARa,β.γにそれぞれ特異的に結合する合成レチノイド(アゴニス ト)を添加すると,無添加のLI90細胞に比し,9,13dcレチノイン酸とRARa選択的レチノイドで活性型TGF-βが有 意に(p<0.01)増加したが,RARβ.γのそれぞれ選択的レチノイドではいずれも活性型TGF-βは全く増加しな

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一47-かった。さらに,9,13dcレチノイン酸と同時にRARaを特異的に阻害するレチノイドアンタゴニストを添加すると 活性型TGF-βは約60%抑制された(p<0.01)。しかし,RARβ選択的アンタゴニストを添加しても活性型TGF-β は有意には抑制されなかった。

3)無添加のLI90細胞はRARβ.γ mRNAを発現しているが,RARa mRNAの発現は測定感度以下であった。 LI90細胞に9,13dcレチノイン酸を添加すると,RARa,PA.TGF-β2,prOa2(Ⅰ)collagen mRNAの発現が著明に 増強した。また,RARβmRNAの発現は増強したが.RARγ mRNAの発現ははとんど変化がなかった。 4)LI90細胞に9,13dcレチノイン酸を添加すると,l型コラーゲンは有意に(p<0.05)増加したが,9,13dcレチノ イン酸と同時に抗TGF一β中和抗体を添加すると,Ⅰ型コラーゲンは有意に(p<0.05)抑制された。 5)FOY305非添加群のラット初代培養伊東細胞の生細胞数は培養2日目から9日目まで有意に(p<0.05)が増加 したのに対し,FOY305添加群の伊東細胞の増殖は有意に(p<0.01)抑制された。培養2日目の伊東細胞は多くの 脂肪滴を有し.いわゆる静止期の像を呈していたが,FOY305非添加群の伊東細胞は培養9日日には脂肪滴を失い筋 線推芽様細胞に形質転換し,活性期の像を呈していた。一方,FOY305添加群の伊東細胞は培養9日目にもまだ多く の脂肪滴を有し,形態的にも培養2日目の伊東細胞に類似していた。また,伊東細胞にレチノイン酸あるいはbasic fibroblastgrowth factor(塩基性FGF)をそれぞれ添加するとプラスミンを介して活性型TGF-βが誘導されるが, これにFOY305を添加するといずれも有意に(p<0.01)活性型TGF-βが抑制された。 考 察 本研究において,9,13dcレチノイン酸は伊東細胞の核内のRARaに結合し,細胞表面のPA/プラスミンを介して 潜在型TGF-βを活性化し,引き続いてコラーゲンの産生が冗進することが明らかとなった。9,13dcレチノイン酸を 添加した伊東細胞では著明にRARa mRNAの発現が冗適しており.ラット肝線推症モデルで9,13dcレチノイン酸が 著明に増加している事実とあわせて考えると,このRARαの発現を制御することが一つの肝線維化を抑制する可能 性として示唆された。ただしRARa選択的レチノイドアンタゴニストを用いても,TGF-βの活性化を部分的(約60 %)にしか抑制されないことから,9,13dcレチノイン酸によるTGF-βの誘導は部分的(約40%)にはRARaに依存 的でないと推察された。また,9,13dcレチノイン酸で誘導されるTGF-βの活性化はプラスミン阻害剤であるアブロ チニンによって約70%が抑制されたものの.完全には抑制されなかったことにより,伊東細胞における潜在型TGF-βの活性化にはプラスミンに依存する系と依存しない系の二通りのメカニズムがあることが示唆された。ただし,レ チノイドによる伊東細胞でのTGF-βの活性化は,レチノイドの作用発現における核レセプター特異性という意味か らもプラスミンに依存する系がmajorpathwayであると考えられた。さらに9,13dcレチノイン酸によって有意に元 進したコラーゲンの産生が.同時に抗TGF-β中和抗体を添加することで有意に抑制された。これはTGF-βを中和し 抑えることで伊東細胞における活性型TGF-βによる自己刺激が抑制された結果と考えられる。活性型TGF-βと伊東 細胞表面のTGF-βレセプターの結合の制御は,TGF-βによる自己刺激を阻害することになり,RARaの制御とは 別の肝繚椎化を抑制する可能性として示唆された。 一方.すでに臨床で使用されている広域プロテアーゼ阻害剤であるFOY305を伊東細胞に添加すると,伊東細胞 の増殖.形質転換の抑制さらにTGF-βの活性化も抑制するという結果が得られた。プラスミンをはじめとするプロ テアーゼを介してTGF-βが活性化され,コラーゲンの産生が元適し肝線推化が促進するような病態においては,プ ロテアーゼの阻害も肝線維化の抑制につながる一つの有力な治療法と考えられた。 本研究による成績もふまえて.将来的には肝線椎化の治療法としてRARαをはじめとする遺伝子レベルでの制御, TGF一βに対する抗サイトカイン療法.プロテアーゼ阻害剤を用いた蛋白分解的活性抑制剤などの開発が期待される。 論文審査の結果の要旨 申請者 長瀬清亮は,肝伊東細胞におけるコラーゲンの産生が,9,13dcレチノイン酸が核RARαと結合すること に始まり,プラスミノーゲンのプラスミンへの活性化 プラスミンによるTGF-βの活性化という各ステップを経て 元進する犠序を解明した。さらに各ステップ毎に,RARαアンタゴニスト,蛋白分解酵素阻害凱抗TGF-β中和抗 体を用いて,線維合成を制御できることを発見した。この研究は肝硬変の病態形成と治療に新しい知見を与えるもの であり.消化器病学,肝臓病学の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] 新しい内因性レチノイド9,13-di-Cis-レチノイン酸によるtransforminggrowth factor-β活性化を介した肝線維化 の発症機序に関する研究 岐阜大医紀 47(1):25∼38,1999

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