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Vol.50 , No.2(2002)051後藤 義乗「計量文献学による漢訳者推定」

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Academic year: 2021

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(244) 印度學 佛 教學 研究第50巻 第2号 平成14年3月 計 量 文 献 学 に よ る 漢 訳 者 推 定 後 藤 義 乗 Ⅰ 問 題 の 所 在 中 国訳 経 史 の 研 究 に お い て訳 者 の 推 定 は大 変 に 重 要 で,そ の訳 者 を推 定 す る に は ま ず経 序,経 録,高 僧 伝 な ど に よ つ て推 定 す るの が 通 常 で あ る.最 初 に経 録 を 著 わ した の は釈 道 安 で あ るが,そ の 時 代 は支 讖 よ り約 二 百 年 経 つ て い る.そ れ も 支 讖 訳 経 典 の 多 くは,そ の 道 安 の 「似 支 讖 出」 とす る判 断 に根 拠 を置 い て い る. ま た訳 語 の 特 徴 に よ つ て訳 者 を定 め る の も一 つ の 方 法 で あ る.し か し,こ れ に は現 蔵 経 が書 き換 え られ て い る とい う重 大 な 問題 点 が あ る.即 ち,僧 祐 は 『出 三 蔵 記 集 』 の 「前後 出 経 異 記 」 で 旧経(古 訳)と 新 経(旧 訳)の 訳 語 の相 違 の リス ト を掲 出 して い るが,現 在 の蔵 経 を検 す る も,古 訳 語 とされ る も の は あ ま りみ る こ とが で きな い.宇 井 伯 寿 博 士 は 『康 煕 辞 典 』 や 『続 高 僧 伝 』 の記 述 に よつ て,こ の蔵 経 の書 き換 え が 梁 武 帝 の 頃 か ら唐 代 初 期 に か け て行 わ れ た と され る1).若 し こ れ が事 実 な ら ば,そ の書 き換 え の マ ニ ュ アル は 「前後 出 経 異 記 」 と想 像 す る こ と が で き る.事 実,こ の リス トに含 まれ な い 「天 中天 」 は書 き換 え の対 象 か ら外 れ て い る.こ の蔵 経 の改 変 の こ とは従 来 あ ま り考 慮 さ れ て い な い よ うで あ る. 私 は これ らの従 来 の 方 法 に加 えて 計 量 文 献 学 の活 用 を提 案 す るの で あ る2). Ⅱ 漢 訳 者 推 定 方 法 及 び そ の 信 用 度 計 量 文 献 学 とは文 章 中 の語 の 出 現 度 数 な どを計 算 して,統 計 学 的 な分 析 を加 え て,そ の文 章 の 特 徴 をつ か む の で あ る.で は漢 文 経 典 の 場 合 は何 を 以 つ て訳 文 の 特 徴 を つ か む こ とが 出来 るの で あ ろ うか.私 は そ れ は 助 字 で あ る と思 う.な ぜ な らば,名 詞 な どで あれ ば原 典 に 有 す る も の を そ の ま ま訳 さ ざ る を得 な い が,助 字 で あ れ ば よ り自 由で あ る.そ こで こ の助 字 の 出現 度 数 を 統 計 学 的 に処 理 して み よ う.対 象 と した経 典 は42で,そ れ らの 経 に用 い られ た訳 者 の判 別 に意 味 の あ る と 考 え られ る50の 助 字 を用 い た3). 793

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(245) 計 量文 献学 に よる漢訳者 推定(後 藤) さ て助 字 が 経 典 の 中 に 出現 す る度 数 は ポ リヤ エ ゲ ンベ ル ガ ー 分 布 に従 う と考 え られ る.こ の こ とを利 用 して一 つ の 経 典 の 助 字 の 出現 度 数 が別 の 経 典 の 出現 度 数 に どの よ うに近 い か(確 率 比)を 計 算 す る ので あ る. 例 え ば,竺 法 護 訳 とされ る 『文 殊 仏 土 厳 浄 経 』 の計 算 結 果 の うち,そ の順 位 の み を掲 出す れ ば,下 記 の如 くで あ る. ①正法華経 ②普超経 ③漸備 一切 智徳経 ④維摩羅 什訳 ⑤度世品経 ⑥無量寿経 ⑦維摩支謙訳 ⑧太子瑞応本起 経 ⑨ 妙法華経 ⑩光讃経∼ こ こ に並 べ られ た経 典 で,①,②,③,⑤,⑩ の経 典 が竺 法 護 訳 と され て い る. こ の順 位 は,『 文 殊 経 』 の助 字 の 出現 度 数 に近 い の は どの経 典 か を表 す の で あ る. こ こで,『 正 法 華 経 』 の訳 者 は,②,③,④ ∼41の41の 各 経 典 よ りも 『文 殊 経 』 の訳 者 に近 い とい う こ とに な る.し か し①,②,③ の各 経 典 は竺 法 護 訳 で あ る と考 え られ て い るか ら,ど れ が一 番 近 くて も良 い.し か し⑤ の 『度 世 品 経 』 の 場 合 は羅 什 訳 『維 摩 経 』 が 間 に 入 つ て い るか ら,す こ し問題 が あ る.即 ち,『 文 殊 経 』 以 外 に41の 経 典 が あ るが,そ の うち竺 法 護 訳 とさ れ る5経 典 を除 い た36経 典 で考 え る と,そ の 中 で 『維 摩 経 』 羅什 訳 の み が 『文 殊 経 』 に 『度 世 品 経 』 よ り 近 い こ とに な る.す る と,35経 典 に対 して は正 しい判 定 を行 つ た ので あ るか ら, 判 定 が 正 し か つ た 率 は(36-1)÷36=97%と な る.続 い て 『光 讃 経 』 の 場 合 は⑥,⑦,⑧,⑨ の 経典 にお い て も誤 判 定 を して い る.故 に合 計5つ の誤 判 定 が あ つ た こ とに な る.判 定 が 正 しか つ た率 は(36-5)÷36=83%と な る.こ の よ うな 結 果 を す べ て 合 計 す る と,『 文 殊 経 』 の 場 合,該 当 率(正 しい判 定 を した率)は (180-6)÷180-97%と な る.こ の数 値 は この判 定 の信 用 度 を表 して い る と考 え る. しか し,こ の 信 用 度 は水 増 し した値 とい え よ う.な ぜ な ら,我 々 は少 な く とも 唐 代 の訳 と西晋 の 訳 を見 分 け るの は簡 単 で あ り,何 も計 量 文 献 学 の 力 を借 りな く とも よ い.事 実,漢 訳 者 の判 別 で 異説 が あ るの は西 晋 の訳 か,ま た 東 晋 の訳 か と い う程 度 で あ る.ま た我 々 の 目指 す の は,5世 紀 頃 まで の 訳 経 の訳 者 判 別 で あ る か ら,そ の 意 味 で 五 世 紀 ま で の漢 訳 お よび そ の 経 の異 訳 を対 象 と した 信 用 度 を用 い るべ き で あ る.『 文 殊 経 』 の 場 合 は異 訳 で あ る実 叉 難 陀 の 『文 殊 授 記 会 』 も入 れ る と,竺 法 護 以 外 の 訳 出 経 典 は27と な る か ら,先 の 信 用 度 を 計 算 す る と, (27-1)÷27-96%と な る.文 殊 経 の全 体 で は(125-6)÷125-95%と な る. この よ うに して 先 の 結 果 を五 世 紀 まで の 訳 経 と玄 奘 訳 に つ い て再 度 計 算 した結 果 が次 頁 の表 で あ る.な お この 数 値 は該 当 率 で左 よ り順 に①95%下 限,②95%下 限,③ 中央 値,④95%上 限 で あ る4). 792

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(246) 計量 文献学 に よる漢 訳者 推定(後 藤) 上 表 を 見 る と,支 謙,羅 什,玄 奘 の 該 当 率 が 低 い.羅 什 ・玄 奘 の 訳 場 は 大 変 大 規 模 で あ り,実 質 的 な 訳 者 が 多 数 い た た め5)で あ ろ う.支 謙 の 場 合 は,オ リ ジ ナ ル な 翻 訳 で あ る か 疑 問 で あ り6),そ れ の グ ル ー ピ ン グ は こ の 方 法 で 可 能 で あ ろ う. と こ ろ で,こ の 方 法 で,異 文 の あ る場 合 で も,結 果 が 変 わ ら な い か を 検 討 し て み よ う4).支 謙 訳 と さ れ る 『維 摩 経 』 の 校 異 は か な り 多 い 方 だ と 思 わ れ る.そ こ で,『 大 正 蔵 』 の 『維 摩 経 』(全 文 と略 称)の う ち,校 異 の 多 い と こ ろ,(大 正15巻 519a∼525c及 び531c∼536c)か ら 異 文 の 方 の み を 取 つ た 経 本 を 作 る.つ ま り, 大 正 蔵 経 本 文 と最 も離 れ た 経 本 を 仮 想 的 に 作 つ た(異 文).そ れ と大 正 蔵 経 の そ の 対 応 す る部 分(部 分),の2つ を 加 え て 訳 者 判 定 を 行 な つ た.紙 数 が 尽 き た の で, 説 明 無 し に 結 果 の み 示 す が,こ の 程 度 の 異 文 の 量 で は 影 響 が 少 な い こ と が 分 か る. 全 文 ① 異文0.41② 部 分0.48③ 維 摩 什2.57④ 文 殊 仏2.75⑤ 瑞 応3.77 異 文 ① 部 分0.06② 全 文0.38③ 維 摩 什2.60④ 文 殊 仏3.72∼ ⑦ 瑞 応4.19 部 分 ① 異文0.13② 全 文0.31③ 維 摩 什2.82④ 文 殊 仏3.85∼ ⑧ 瑞 応4.41 本 稿 の作 成 に 当 た つてSAS・FBUD・ 佐 藤 義 博 氏 作 成 の フ ァイ ル を利 用 した.フ ァイ ル 作 成 に 当 た られ た 方 々 に 甚 深 な る謝 意 を表 す る. 1)宇 井 伯 寿 「仏 菩 薩 の 音訳 に つ い て」『 大 乗 仏 典 の研 究 』815頁2)村 上 征 勝 『真 贋 の 科 学 』朝 倉 書 店 村 上 ・伊 藤 等 「サ ンス ク リ ッ ト法 華 経 の計 量 分 析 の展 望 」 印仏 研49-2. 3)助 字 の選 び方,確 率 の 計 算 方 法 な どは拙 稿 「計 量 文 献 学 に よ る漢 訳 者 推 定 」(印 度 哲 学 仏 教 学12号:平 成9年 北 海 道)お よ び村 上 前 掲 書 を 参 照 され た い.4)発 表 時 の質 問 に よ る.5)鎌 田 茂 雄 『中 国 仏 教 史 』 巻2小 田義 久 「玄 奘 三 蔵 とそ の 訳 場 」 仏 教 史 学 龍 谷 史 壇56・57.6)佐 藤義 博 「支謙 訳 経 典 の 特 徴 につ いて 」 印仏 研43-1, 〈 キー ワ ー ド〉 (広 島真 宗 学 寮 講 師) 791

参照

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