アラカシ林における落下種子数の年変動-香川大学学術情報リポジトリ

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アラカシ林における落下種子数の年変動 奥 田 真 弓・末 広 喜代一・ 〒760−8522 高松市幸町1−1 香川大学教育学部生物学教室

AnnualfluctuationofseedproductioninaQuercusglaucaforest

MayⅦmiOhlda&鮎yokazⅦSuehiro,βわわg∼cα比dム0′αわ′弟fbc〟砂〃g血cα血均助卵棚と玩gve/5よ如 才−Jふ扇附加−Cゐorbたα肌α出〟乃0−g・ガスノ呼α〝 要樹木における落下種子数の年変動の実際を 明らかにすることが目的である。 マスティングの要因としてさまざまな仮説 がある(田中,1995)が,その中でも最も考 えやすいことから,気候因子と開花・結実の

関係が多くの研究者によって検討されてい

る。そのため,気温・降水量・日射量などの

関係を検討することによって,気象条件の観 点から年変動の要因を明らかにしたい。 材料と方法 1‖ 調査地概要 本調査地は,高松市西植田町の南部の丘陵 部に位置する藤尾山自然環境保全地域内にあ

る。1993年8月8日,末広ほか(1994)に

よって行われた群落調査によると,この地域 は全体としてアラカシの多い森林であり,香 川県では琴平山に次ぐ広い面積をもった常緑 広葉樹林となっている。 調査は藤尾山の藤尾神社内の南西部に設置 されたコドラ・−ト内で行った。このコドケー トは,1993年に,傾斜が270 で北から540 西 向きの斜面に設置されたもので,水平面積20m

X20mである。20mX20mのコドラートは,

10mXlOmのコドラートに4分割され,Ql,

は じ め に 植物は.種子や果実を生産して子孫を残して いる。特に樹木においては,年によって−種子

生産量を変動させているものが多く見られ

る。豊作年もあれば,まったく,あるいはほ とんど結実しない凶作年があるというこの現 象は,マスティング(masting)と呼ばれてお り,世界のさまざまな個体群でかなり以前か ら知られている(柴田,2006)。このマスティ ングの原因の解明には,長期観測に基づく定

量的なデータが必要である。しかし,長期観

測が難しいこともあり,仮説を実証できる

チータは不十分で,依然として明らかにされ てないことも多い。ブナやナラ類に関する年 変動の研究は比較的よく報告されているが, アラカシについての研究事例は少ないという のが現状である。 著者らは,高松市西植田町にある藤尾神社

内のアラカシ林において,20mX20mのコド

ラ・−トを設け,1995年11月のシードトラップ 設置以来,林内の植物について落下種子数の 調査を行ってきた。本研究では,1996年から 2007年まで12年間の調査をもとに,アラカシ elJe′C払Sg血化〃¶unb..をはじめとする林内の主 ー 45 −

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種の種子,落ち葉,枝,芽,花,果実,昆虫

など動物の死骸,鳥や虫の排泄物などであっ た。その中から種子や果実のみを選び分け, 日付・シードトラップ・種別にチャック付ポ リ袋に保存した。 その中で特に,アラカシ,コナラ,ナラガ シワ,クスノキ,ヤマザタラの5種について 種の同定を行った。さらに,アラカシ,コナ ラ,ナラガシワは外見上で健全・未熟・虫食

い・腐敗に分けて個数を数えた。コナラ,ナ

ラガシワは判別が難しいために一緒にまとめ て個数を数えた。ブナ科の堅果およびヤマザ クラの核果は果実であるが,ここでは便宜上 種子と呼ぶことにする。また,クスノキ,ヤ マザタラについては果肉のついた果実と種子 に分けて個数を数えた。 種子や果実の同定のために,末広が1997年 から1999年にかけて採集したサンプル,中山 ほか(2000),茂木ほか(2000)の図鑑類を参

考にした。また,未熟種子の分類や細部の観

察のために,Nikon双眼実体顕微鏡を用いた。 シードトラップのひもが何らかの理由で外 れていた場合,そのシードトラップの落下種 子はデータなしとした。そのような状態が多 く見られたのが2005年11月から12月にかけて

であり,最大で8カ所のデータなしとなっ

た。シ}ドトラップ全16個(8d)に合わせ

るため,次のようにデータ補正を行い,落下 Q2,Q3,Q4という番号が付けられた。 1993年に調査された,各コドラート内にあ る2m以上の上層木の胸高断面積合計で比較す ると,Qlでは常緑広葉樹が多く,その中でも 特にアラカシが大部分を占めていた。Q2では 落葉広葉樹のコナラe‘JerC〟∫∫errαJα≠unb.が多 く,それに次いで常緑広葉樹のアラカシ,カ クレミノ伽〃dr呼α〃以け申血∫(Thunb・)Makino が多かった。Q3では常緑広葉樹が多く,その 中でも特にアラカシが大部分を占めていた。 また,落葉樹のネムノキA払出滋。転帰雨お血 Durazz.,ナラガシワe〟αC〟∫αJ′e朋Blumeの大 木が見られた。Q4では落葉樹が多く,その中 でもコナラが5分の2を占めていた。

本研究で主に対象としたアラカシ,コナ

ラ,ナラガシワ,クスノキC′〝朋J7∽椚〟椚Cα研一 クんor〟(L)presl,ヤマザクラダrf′乃〟∫ノα〝‡α腑 た〟rαSieb.のうち,クスノキはコドラート内に

は存在しないが,藤尾山内には存在した。ア

ラカシはQl∼Q4すべてに,コナラはQl,Q2, Q4に,ナラガシワはQ3に,ヤマザタラはQl, Q4に存在した。 2.材料と調査方法 落下種子を回収するため,Ql∼Q4の各コド

ラート内にほぼ5m間隔になるように4つの

シードトラップを設置し,シードトラップに No.1からNo.16の番号を付けた。シードトラッ プは,50%遮光用の黒寒冷紗を漏斗状にした もので,受け口の面積が0.51誠になっており, 3本の塩化ビニルパイプ製の支柱で固定した (図1)。漏斗状の網の下部をひもで縛り,回 収の際には下にバケツを置き,ひもを外して

内容物を回収した。さらに,鳥やネズミ等の

捕食者からの食害を防ぐため,亀甲の1辺が 16mmの金属製ビニール被膜の亀甲網で,シー ドトラップの口を覆った。 シードトラップ内の内容物の回収をはぼ2 週間に1回の間隔で行い.十分に自然乾燥さ せた後,種の同定を行った。落下物は,各樹 図1.シードトラップ − 46 一

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は未熟種子,4・5月には成熟種子が,数は 少ないが回収された。2007年の合計は1356 個,そのうち健全種子319個,未熟種子1004 個,虫食い種子29個,腐敗種子4個であっ た。 コナラ・ナラガシワの落下種子量は,図2b に示した。コナラ・ナラガシワは,アラカシ と同様2007年5月5日に未熟種子が落ち始め た。アラカシに比べその量は多く,5月から 8月までは100個以上回収され,8月以降に数 が減少した。2007年5月19日は612個と極めて 多くの未熟種子が回収された。一・方,成熟種 子は2007年9月8日から落ち始め,10月から 11月にかけて緩やかに増加・減少した。アラ カシが12月に増加していることと比べても明 らかなように,コナラ・ナラガシワの成熟種 子は12月には回収されなかった。そのはか, 2007年1月14日の未熟種子が,数は少ないが 回収された。2007年の合計は1705個,そのう ち健全種子78個,未熟種子1567個,虫食い種 子38個,腐敗種子22個であった。 ヤマザクラは種子・果実ともに2007年5月 5日から落ち始めた(図2c)。2007年5月19 日に種子が89個,果実が148個と最も多くなっ た。その後,種子は6月30日,果実は6月2 日まで回収された。他の樹種と比べると種子 が落下する時期は短期間であった。2007年の 合討は287個,そのうち種子120個,果実167個 であった。 クスノキは落下時期が1月から4月と,11 月以降に分かれていた(図2d)。前者では, 2007年1月14日が種子31個と最も多く,4月 にかけて個数が減少した。後者では,2007年 11月3日から種子・果実ともに落ち始め,12月 1日に種子60個と最も多くなり,その後減少 した。種子と果実は落下時期がはぼ同じであ るが,果実は1個から3個と個数に変動が見 られず,種子の方が大きな変動の幅が見られ た。2007年合計では169個,そのうち種子154 個,果実15個となっており,種子の方が多 表1.サンプル回収・整理担当者 回収期間(年月日) 担当者名 中西由美 長安直樹 /ト田ひとみ 河田英子 金子武史 末広喜代一・(回収) 井上健(整理) 井上健 井上健(回収) 奥田真弓(整理) 末広宮代一・(回収) 奥田真弓(整理) 奥田真弓 末広育代一・ 1995/12/7∼1996/12/5 1996/12/20∼1997/12/6 19g7/12/27∼1998/12/6 1998/12/1g∼1999/12/18 2000/1/1∼2001/1/20 2001/2/3∼2002/3/9 2002/3/23∼2003/1/29 2003/2/14∼2005/3/13 2005/3/25∼2006/12/30 2007/1/14∼2007/12/29 2008/1/11∼2008/1/26 種子数を算出した。回収できたシードトラッ プの落下種子数からシードトラップ1個あた りの平均落下種子数を求め,それを16倍して シードトラップ16個8Ⅰポあたりの落下種子数 とした。 1995年以降12年間における落下種子サンプ ル回収・整理の担当者名を表1に示した。そ れぞれの担当者が香川大学教育学部生物教室 での卒業研究として,サンプルの回収・整理 を行った。 結 果 1..2007年における落下種子数の季節変化 落下種子数の季節変化の例として,2007年 1月14日から2007年12月29日における落下種 子数の季節変化の結果を図2に示した。 アラカシの落下種子数は,図2aに示した。 アラカシは,2007年5月5日に未熟種子が落 ち始め,12月まで続いて回収された。2007年 6月17日に182個,8月11日に240個と2つの ど−クが見られた。その後8月から12月にか けては数が少なくなり,代わって成熟種子が 回収され始めた。健全種子は2007年10月6日 から落ち始め,12月に向けて個数が増加し た。虫食い種子・腐敗種子はともに10月以降 回収された。そのほかに,2007年1月14日に − 47 −

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∧U O O O 5 0 2 1 ▲l 落下種子数 b700 600 ロ未熟‘】 ̄−■ 田腐敗_ 田虫食い ■健全 。.。声「且,風早戸 0 0 0 0 0 0 5 4 3 落下種子数 0 5 2 C 落下種子数 0 0 0 0 0 0 5 4 3 2 1 落下種子数 功N\N︻ のl\N︻ ︻\N︻ 卜︻\〓 C\〓 ON\○︻ り\Or NN\の の\¢ のN\の 〓\の のN\ト ⋮卜朋 ○の\¢回 〓\¢ N\¢ ¢ての ∽\の ︻N\寸 卜\寸 寸N\の ○︻\の 寸N\N OくN トN\L 寸L\︻ 図2..2007年の落下種子数の季節変化落下種子数の単位は,個/8Ⅰポ. A:アラカシ,b:コナラ・ナラガシワ,C:ヤマザクラ,d:クスノキ − 48 −

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かった。 5種を比べると,特にクスノキは個数変動 の幅が/トさく,最多の個数も他と比べればそ れほど多くなかった。ブナ科の種子は7・8 カ月間にわたって回収されたが,ヤマザクラ とクスノキは短期間で回収された。 2..1996年から2007年までの落下種子数の年 変動 クスノキやアラカシで秋にできた種子が翌 年の1,2月頃まで落下す−ることから,落下 種子数は,1月から12月の区切りではなく,

年度別(4月から翌年3月)にまとめ,合計

の落下種子数を出した。また,2003年以降5 年間と2002年以前7年間ではサンプル整理に 違いが見られることから,次のようなデー・夕 補正を行った。2003年から2007年における5

月の未熟種子数をすべて0とした。この時期

は大きさ数皿の未熟種子が多数落ちてきてい るが,過去7年間ではこれらを数に入れてお らず,12年間でまとめる際は過去7年間の基 準に合わせた方が適当と考えたためである。 また,1998年以前は腐敗種子を分類しておら ず,その後の卒業研究では虫食い種子と腐敗 種子の合計を扱っていた。本研究でも「虫食

い・腐敗種子」として合計した数値を用い

た。12年間の年変動を図3に示した。 (1)総落下種子数の年変動 総落下種子数の12年間の平均値は,アラカ

シで745個,コナラ・ナラガシワで718個で

あった(図3a,3b)。平均値と各年度の数値

を比較すると,1997年度,2002年度,2006年

度の総落下種子数はアラカシ,コナラ・ナラ ガシワともに少なかった。逆に総落下種子数 が多い年は,アラカシでは1996年度,2004年 度,2007年度であり,コナラ・ナラガシワで は1999年度,2000年度,2007年度であった。

総落下種子数の少ない年はアラカシ,コナ

ラ・ナラガシワでの一・致が見られるのに対 し,多い年は2007年度を除いて一・致していな かった。 ヤマザクラの総落下種子数の平均値は179個 であった。2005年度に総落下種子数が最も多

く,2001年度,2006年度,2007年度も多かっ

た。また,2001年度を頂点とし,前後4年間の 増減の山が見られた(図3c)。 クスノキの総落下種子数の平均値は186個で あった。クスノキはヤマザクラと比較すると 増減の幅が大きく,多い年と少ない年の差が

目立った(図3d)。1997年度,2001年度,

2003年度の総落下種子数が平均値と比べて多

く,1996年度,1998年度,2000年度,2004年

度は少なかった。落下種子数の多い年の前後 は少ないという傾向が見られた。 ヤマザクラとクスノキでは,1996年度, 1998年度,2004年度という少ない年で共通が

見られた。この年をアラカシ,コナラ・ナラ

ガシワで見ると,必ずしも少ないという現象 は見られず,逆にアラカシは1996年度,2004 年度が多い年であった。ブナ科とそれ以外の 2種で,総落下種子の多い年・少ない年とい う共通点が異なっていた。 (2)総落下種子数と成熟種子数・健全種子数 の相関関係 12年間の年変動を表した図3を見ると,ア ラカシでは総落下種子数の多い1996年度, 2004年度,2007年度はともに健全・虫食い・ 腐敗種子を合わせた成熟種子数が300個を超え

ている。そこで,アラカシにおける総落下種

子数と成熟種子数の関係を調べると,相関係 数は0..798となった。α=0..01で,有意な相関 があることが分かった。 一・方,コナラ・ナラガシワにおける総落下 種子数と成熟種子数の関係を調べると,相関 係数は0.511となり,α=0一1では相関が見られ たが,α=0り05のときは相関が見られず,アラ カシより相関は低かった。

同様に,健全種子数との相関を調べた。ア

ー 49 −

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1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 回収時期(年度) 0 0 0 0 ︵U O O O n︶ 0 ■U O 4 2 0 8 6 ・4 b 落下種子数 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2008 2004 2005 2006 2007 回収時期(年度) 0 0 4 C 落下種子数 ︵U O O O 2 1 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 回収時期(年度) 0 0 ▲U O 32 落下種子数

1996 1997 柑98 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

回収時期(年度) 図3日1996年度から2007年度までの12年間における落下種子数の年変軌 落下種子数の単位は,個/8Ⅱf.. A:アラカシ,b:コナラ・ナラガシワ,C‥ヤマザクラ,d:クスノキ − 50 −

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を合計して成熟種子の個数とした。 成熟種子の割合は2001年度に最大,その前 年の2000年度に最小であり,アラカシ,コナ ラ・ナラガシワで共通していた∴アラカシは 2001年度に最大の49,.4%,2000年度には最小 の2小8%が成熟種子であった。コナラ・ナラガ シワは,同じく2001年度に最大の2臥9%, 2000年度と2006年度に最小の3.7%が成熟種子

であった。1997年度,2001年度,2004年度,

2007年度では,前年からの増加が見られるこ とも共通して−いた。各年度のアラカシとコナ ラカシにおける総落下種子数と健全種子数の 関係は,相関係数0い760となり,α=0..01で相 関があることから,高い相関関係があるとい う結果になった。コナラ・ナラガシワにおけ

る総落下種子数と健全種子数の相関係数は

0。.411となり,α=0.1でも相関がないことか ら,両者の相関は低かった。 アラカシ,コナラ・ナラガシワについては

総落下種子数に対する成熟種子の割合を求

め,図4に示した。成熟種子とは,健全・虫 食い・腐敗種子を合わせたものとし,各個数 a lOO% 80% 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 200t; 2007 回収時期(年度) ■成熟 口未熟

blOO%

1996 199了 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

■成熟 □未熟 回収時期(年度) 図4い 総落下種子数に対する成熟種子の割合(a:アラカシ,b:コナラ・ナラガシワ) ー 51−

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はアラカシが約206個,コナラ・ナラガシワが 約89個となり,アラカシの方が種子数と割合 の両方の観点で成熟種子が多いという結果に なった。 3.、気象条件と落下種子数の関係 落下種子数の年変動の至近要因として考え られる気象条件との関係について検討した。 気象条件として,気象庁発表の気象データか ら,高松市における月別の平均気温,降水量

合計,全天日射量を用いた。気象条件が重大

な意■味を持つと考えられる,花芽形成(分 化)期,開花・受粉期,成熟期の3つの時期

で,気象条件と落下種子数との関係を調べ

た。 (1)花芽形成期 橋詰(1987)によると,樹木の花芽分化は 開花の前年の夏から秋にかけて行われるもの が多く,コナラの花芽分化期は7月から8月で ある。 前年7・8月の降水量合計と総落下種子数

の関係を,図6a,6bに示した。回帰直線を

比較してみると,アラカシの直線は右上が

り,コナラ・ナラガシワは右下がりであっ

ラ・ナラガシワについて,成熟種子数の割合 の間で相関係数を求めたところ,0..780とな り,α=0。.01で,有意な相関があるという結果 になった(図5)。 また,アラカシにおける成熟種子の割合の 平均値は26..6%,コナラ・ナラガシワの平均 値は13い0%であった。2000年度と2002年度を 除いたほとんどの年で,成熟種子の割合はア ラカシの方が高かった。成熟種子数の平均値 5 ︵U ■h︶ 0 5 0 2211

コナラーナラガシワ期

0 10 20 30 40 50 60

アラカシ(%) 図5小 アラカシとコナラ・ナラガシワにおける 成熟種子の割合 相関係数 r=0.780

a1600

1400 ◆ ▼ ▲ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 一′ ▲

ヽ /

◆ ▲ 0 0 0 0 0 人U O O O n﹀ 0 0 2 0 8 6 4 2 アラカシ総落下種子数 O 100 200 300 400 500 前年7・8月の降水量合計(mm) 0 100 200 300 400 500 前年7・8月の降水量合計(mm) 図6..総落下種子数と前年7・8月の降水量合計(a:アラカシ,b:コナラ・ナラガシワ) a:相関係数I・=0..510 b:相関係数 r=一0り329 ー 52 −

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た。相関係数を求めると,アラカシでは0一.510 となり,α=0い1で有意な相関が見られた。コ ナラ・ナラガシワでの相関係数は−0い329とな り,有意な相関は見られなかった。 前年7・8月の平均気温と総落下種子数の 関係は,アラカシ,コナラ・ナラガシワとも

に相関係数は0に近いものとなった。本研究

の結果では,花芽形成期の気温が総落下種子 数に影響するという結果にはならなかった。 (2)開花・受粉期 茂木はか(2000)によると,アラカシは4

月から5月,コナラは4月下旬,ナラガシワ

は4月に開花するとしている。

4・5月の降水量の合計と総落下種子数の

関係を調べた。回帰直線はアラカシ,コナ ラ・ナラガシワともに右下がりの傾向が見ら れた(図7a,7b)。相関係数を求めると,ア …・す…◆ ◆ 0 0 0 0 6 4 a ◆ Jて ◆ ▼ ア ラ カ シ 総 落 下 種 子 数 1200 1000 800 600 400 200 0 0 50 100 150 200 250 300 4・5月の降水量合計(mm) 図7り 総落下種子数と4・5月の降水量合計 a:相関係数 f =−0.281 0 50 100 150 200 250 300 4・5月の降水量合計(mm) (a:アラカシ,b:コナラ・ナラガシワ) b:相関係数Ⅰ・=−0い435 b1600 a1600 1400 ◆ ▼ 】■ ▲ ◆ ◆◆ ◆ ◆ 一一一一r ◆ ▲ ◆ ▼ 0 0 0 0 0 0 4 2 0 アラカシ総落下種子数 0 0 0 0 2 0 コナラ・ナラガシワ 総落下種子数 800 600 400 200 0 800 600 400 200 0 255 26 265 27 275 前年8・9月の平均気温(Oc) :アラカシ,b:コナラ・ナラガシワ) 255 26 265 27 275 前年8・9月の平均気温(℃) 図8パ 総落下種子数と前年8・9月の平均気温(a a:相関係数 r・=0い298 b:相関係数 r=0.、750 − 53 −

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表2 気象条件と落下種子数の関係 時 期 種子数の条件 気象条件 相関係数 相関の有無 前年7・8月 アラカシ総落下種子数 降水量合計 0..51α=0.1で相関あり (花芽形成期) コナラ・ナラガシワ総落下種子数 降水量合討 −0.329相関なし(傾向あり) アラカシ総落下種子数 平均気温 0相関なし コナラ・ナラガシワ総落下種子数 平均気温 0い063相関なし 4・5月 アラカシ総落下種子数 降水量合計 −0”281相関なし (開花・受粉期)コナラ・ナラガシワ総落下種子数 降水量合計 −0.435相関なし(傾向あり) アラカシ総落下種子数 平均気温 −0..105相関なし コナラ・ナラガシワ総落下種子数 平均気温 −0..184相関なし 5∼10月 アラカシ成熟種子の割合 全天日射量合計 0.071相関なし (成熟期) コナラ・ナラガシワ成熟種子の割合全天日射量合計 0‖298相関なし 相関なし 前年8・9月 アラカシ総落下種子数 平均気温 0一.298相関なし コナラ・ナラガシワ総落下種子数 平均気温 仇75 α=仇01で相関あり ラカシでは−0‖281,コナラ・ナラガシワでは −0り435といずれも値は基準値より/トさく,有 意な相関は見られなかった。また,4・5月 の平均気温と総落下種子数の関係を調べる と,アラカシ,コナラ・ナラガシワともに相 関係数の値は小さく,有意な相関は見られな かった。本研究では,開花期の降水量や気温 が総落下種子数に大きく影響するという結果 にはならなかった。 (3)成熟期 植物が成長し,種子や果実を成熟させるた めには光合成が盛んに行われる必要がある。 そこで,受粉後の5月から成熟種子が落ち始 める10月の全天日射量と総落下種子数の関係 を検討した。気象庁の月別データと,成熟種 子の少ない2000年度,成熟種子の多い2001年 度について日射量を比較したが大きな差は見 られなかった。そこで,5月から10月までの 全天日射量の月平均値の合計と,成熟種子の 割合の関係を調べた。アラカシ,コナラ・ナ ラガシワともに相関係数の値は′トさく,この 結果のみでは全天日射量が成熟に大きく関係 しているとは言えなかった。 (4)前年8・9月の平均気温 前年8・9月の平均気温と総落下種子数の

関係を,図8a,8bに示した。これは今まで

の文献では述べられていなかった項目である が,コナラ・ナうガシワでは相関係数が0..750 となり,α=0い01の有意水準でも認められるこ とから有意な相関関係があるという結果に なった。アラカシでは相関係数が0い298とな り,有意■な相関は見られなかった。 以上の結果からえられた気象条件と落下種 子数との相関関係を表2にまとめた。 考 察 マスティングの定義は一・般的に,「植物個体 群における同調して起こる年変動の大きな種 子生産」(Ke11y,2004)が知られている。多年 生植物にとって繁殖を開始してからは,毎年 資源に応じて比較的安定した種子生産を行う のが,−・般には最適な繁殖スケジュ1一ルであ ると考えられる(Iwasa&Cohen,1989)。それ なのに,なぜ多くの樹木はマスティングを行 うのだろうか。 − 54 −

(11)

粉は小さぐて軽く,風によって遠方まで飛散 す−る」と述べていることから,風媒で受粉が 行われていると考えられる。受粉時期の降水 量が多いと花粉が飛散しにくく,受粉には不

都合であるという仮説が考えられる。図7の

回帰直線は右下がりであることから,降水量 が多いと受粉ができずに総落下種子数は少な くなったのではないかと予想できるが,この チータからは実証できない。 成熟期の全天日射量と成熟種子の割合は, アラカシ,コナラ・ナラガシワどちらにおい ても相関がなかった。 本研究では,気象デ・−・夕として月別の値を 用いたが,より詳しく日別や旬ごとの債を用

いる必要がある。また,降水量・気温・日射

量以外の気象との関連も調べることが必要で あった。橋詰(1987)によると,生殖器官の 生産は,同一・樹種でも年度,地域,海抜高, 立地条件,個体の年齢・大きさなどによって 異なる。本研究でも,単一・の気象条件だけで はなく様々な気象条件が複雑に関係し合って いること,本調査地である高松と文献で報告 されている地域の場所による違いがあるこ と,などが考えられる。そのため,相関係数

は低くとも全く関係がないと断定はできな

い。文献で述べられていることも仮説にすぎ ず,本研究で相関関係があるという結果が出

たものも,本当にそうかはわからない。田中

(1995)は,長期観測に基づく定量的なデー・ 夕を,様々な繁殖様式の樹種について蓄積す ることが,マスティング解明のためにまず必 要だと述べている。本研究で得られた定量的 な落下種子数データも,今後の種子生産の研 究に生かしていく必要がある。 主にアラカシ,コナラ・ナラガシワについ てほかの文献を手がかりに検討を行ってきた が,ヤマザクラとクスノキにも落下種子数の 年変動があることが分かった。ブナ科の樹種 とは違う年変動パタ・一ンが見られたが,本研 田中(1995)によると,大量の結実をもた らすためには,まず多数の花芽が形成されな ければならず,花芽形成期の何らかの気象条

件が至近要因である可能性が高い。はかに

も,花芽形成時期における降水量・気温の関 係が報告されている。また花芽形成だけでは なく,胚珠の成熟までの過程にも気象条件は

影響するという研究もある。Sork ef βJ

(1993)では,コナラ属3種で,胚珠の成長 と受精に春の気温が正,夏の乾燥が負の影響 をおよぼしていることが報告されている。本 研究でも花芽形成期,開花・受粉期,成熟期 という3つの観点から検討を行ったが,さま ざまな文献で実証されてきたこととは異なる 結果となった項目も多かった。

花芽形成期とされる前年7・8月では,降

水量が多いとアラカシの総落下種子数も多い という結果になった。降水量がアラカシの花

芽形成に.正の影響があると考えられる。ま

た,回帰直線に右上がりと右下がりの傾向が 見られたことから,相関は低いが,前年7・

8月の降水量がアラカシの種子生産に正の,

コナラ・ナラガシワの種子生産に負の影響が あると考えられる。

花芽形成期に近い前年8・9月では,平均

気温が高いとコナラ・ナラガシワの総落下種 子数が多いという結果になった。前年夏の気 温が高いと花芽形成が盛んに行われるのでは

ないかと考えられる。また,コナラ・ナラガ

シワのみに相関関係があったことから,本調

査地のコナラ・ナラガシワの花芽形成期は

8・9月なのではないか,という仮説も考え られる。これらの仮説を明らかにするために

は,前年7月から9月あたりの花芽を実際に

観察し,降水量や気温と花芽形成の関係を調 べる必要がある。

開花・受粉期にあたる4・5月では,相関

はないものの,降水量合計が多いと総落下種 子数は少なくなるという傾向が見られた。橋 詰(1987)では,ブナやコナラについて「花 − 55 −

(12)

究では年変動の要因についての検討が不十分 であった。今後さらに検討を進める必要があ る。

引用文献

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参照

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