香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号125∼128,1987
麦わらのサイレ、−ジ原料としての利用
上 田 博 史
THEUSEOF NAKED BARLEY OR WHEAT
STRAW AS ENSILAGED MATERIAL
Hir・OShiUEDA
Theobjectiveofthepresentexperimentwastoinventigatethepossibilityofpreparingsilagefromstraw
residueInthefirsttrial,nakedbarleyorwheatstrawwasensilagedintheexperimentalsiloimmediatelyor
2daysafterharveStingandtheirnutritivequalitywascomparedwithwholecrqpsilagemadeofnakedbarley
orwheatatthemilkstage,AlthoughnutritivequalitydeterminedfrompHandlacticacidcontentwasmuch
lowinthestrawsilagesthaninthewholecropsilage,SenSuOuSObservationshowedthatthestrawcouldbeused
astheensilagedmaterial
Theresultofthefirsttrialindicatedthatthequalityofstrawsilageswasaffectedbythemoisturecontent
ortheextentofconsolidationattheensilingThus,inthesecondtrial,theequalortwo.foldamountofwaterwithorwithout5%ricebranwasaddedtothenakedbarleystrawattheensiling Thewateradditionwas
effectivein reducing pH apdincreasinglactic acid content,irrespective of the added amount,but the
Supplementaryricebranunaffectedonthesilagequality
StrawwasalsoensilagedinvinyltrenchsilosforthepracticalpurposeThesilagequalitywasnotsogood
asthatpreparedintheexperimentalsilos,butthefeedingvaluewassimi1artoor betterthanricestrawas
supplementaryfeedinautumntowinterseasonifsufficientair.tighteningandsealingweredone
ハダカムギとコムギのわらから実験婁頴模および実用規模でサイレージを調製し,麦わらのサイレ・−ジ原料として の可能性を検討した。その結果,麦わらサイレージの品質は当然ホールクロップサイレージより劣るが,排気および 密封に留意すればサイレー・ジとしての利用に十分たえることが明らかになった。また,麦わらほ水分含量が低く,硬 い中空の茎のため空気混入率が高いが,詰め込み時に水を加えて詰め込み密度を高めることにより品質の改善が認め られた。 縮 日 稲わらは,古くから粗飼料あるいほ敷料として利用されてきたが,米の生産調整や機械化にともなう焼却の増加な とで,その生産屋は減少しつつある。一方,麦頬を飼料として利用する場合でも種実の収穫を目的に栽培しており, さらに収穫後の高温多湿は麦わらの保存にも支障をきたし,変わら自体が飼料として利用される例はきわめて少な かった。しかし,近年,麦煩の栽培増加にともなってホールクPップサイレージの調製など飼料としての利用も高まっ てきた1)。麦わらの栄養価はホールクロップに比べて著しく低いが,サイレージとして貯蔵できれば,稲わら同様,秋 から冬にかけての補助飼料として活用できるほずである。本試験では麦わらのサイレージ原料としての可能性につい て検討した。 材料 と 方法 サイレージ原料は香jl卜大学農学部附属農場内で収穫されたハダカムギ(品種名サヌキ/、ダカ)およびコムギ(品種OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
126 香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987) 名セトコムギ)のわらを用いた。なお,収穫にほコンバインを使用し,刈り取りは地上部から10−15cmで行った。 試験1では,1/2000aのワグネルポットの内部に005mmのビニ1−ルを敷きつめた試験用サイロを用いて麦わらサイ レー・ジ調製の可能性を検討した。供試材料にはハダカムギおよびコムギのわらを用いた。詰め込みほ実用面での作業 を考慮して,刈り取り直後と2日間原料を晴天下に放置したのちに行った。原料ほ手動のカッターで3−5cmに細切 し,十分に排気をしたのち約30kgのコンクリ、−トブロックで加重をした。詰め込み量はサイロの容量の許す限りとし, 作業着の任意とした。同一・処割こ5個のサイロを割り当てた。詰め込み時の麦わらの水分含量ほ,刈り取り直後のハ ダカムギとコムギば635%および564%,2日間放置ではそれぞれ496%および519%であった。また,比較のため に乳熟期のハダカムギおよびコムギを用いて上と同じ方法でホー・ルクロヅプサイレージの調製も行った。原料の水分 含量は/、ダカムギで63“7%,コムギで653%であった。 試験2では詰め込み時の水分含量と米ヌカ添加の影響を,水分含量59.1%のハダカムギのわらを用いて調べた。対 照の無処理サイレージは試験用サイロを用いて試験1と同様の方法で調製し,これに等量あるいほ2倍量の水を加え たもの,さらに5%の米ヌカを等量あるいほ2倍量の水に溶かして添加した計5種類のサイレージを調製した。詰め 込み量ほすべて25kgとし,水添加は500gごとに別の容器で所定量の水と十分に混合してから詰め込んだ。各処理区 には4個のサイロを割り当てた。 また上記試験とほ別に,試験用サイロでえられた結果をふまえて,1981年から1986年まで毎年,農場内に設置した 約45mきのビニールトレンチサイロを用いて,実用面での可能性を検討した。麦わらはフォー・レー・ジカツタ・−で5cm前 後に細切し直接サイロ内に吹き込み,散水を吹き込みと同時に行った。適当畳を詰め込んだのち踏圧を行い,これら の作業を数回繰り返したのち覆土して密封した。 サイレ1−ジの水分含量はトルエン蒸留法(2),pHはガラス電極pHメータ、−,乳酸ほ.BARNETの改装したBAKERand SuMMERSONの比色法(2〉でそれぞれ測定した。平均値の差の検定はTuKEYの多重検定(3)によって行った。 結果 と 考察 衰1に試験1の結果を示した。麦わらサイレージはホー・ルクロップサイレージに比べ調製時の詰め込み畳が少なく, 開封時の水分含畳も低かった。pHと乳酸含畳を指標にした品質も麦わらサイレージで著しく劣った。また,麦わらを 2日間放置したのちサイレ・−・ジ調製したもの(StraW−2)は,刈り取り直後に調製したもの(straw−1)に比較して詰 め込み畳と水分含量はさらに減少し,pHほ増加した。しかし,乳酸含量には原料放置の影響ほみられなか・?た。 麦わらは牧草に比べサイレージ発酵に必要な乳酸の基質が少なく,茎ほ中空であるため空気の保葡率が高い。さら に材質が粗剛で詰め込み密度を高めて空気を排除することが困難である。したがって,麦わらから良質のサイレージ 生産を期待することはできないが,試験1でえられた麦わらサイレージは,臭いはよわいものの,一応,サイレ・→ジ 特有の甘酸臭をもち,色も明るく,触感もサラサラしていて,pHや乳酸含量から想像するより見かけはよかった。こ
TablelEnsilaged amount,mOisture,pH andlactic acid concentration of whole crop and straw Silagesmadeofnakedbarleyor wheat Ensilagedmateriall) Mre pH 。 C C d一+β ・〇 C ム ■0 2 4 6 6 4 2 ︵‖0 4 7 2 3 1 5 1 6 5 4 3 4 3 0 Nakedbar.1eywholecrop Wheatwholecr’Op Nakedbarleystraw−1 Nakedbarelystraw−2 Wheat strawTI Wheat straw−2 Pooled SE 413e 4232α 446d 3174α 476ぞ 187b 531α 141わ 4。87¢ 196∂ 500ゐ 194わ 006 302ム 696α 701α 660∂ 58 2d 61 8C 555e O3 1)Strawsland2wer・eenSilagedimmediatelyand2daysafterharveSting,reSpeCtively 2)Value are mean for five replicatesMeanswith differ・ent SuperSCriptletter’S are Significantly
different at 5%1evel
上田博史麦わらのサイレ・−・ジ原料としての利用
rable2Moisture,pH andlactic acid concentration of naked barley straw silages added with
moisture and rice br・anl)
127 加 Mre r pH
()
675わ2) 570α 0 0 0 125 125 む d α わ ¢ 5 2 6 2 4 9 1 3 2 3 0 1 1 2 2 2 3 704ム 767α 681わ 786α 5 0 5 0 2 5 2 5 447∂ 428わ 4 536 4 266 O15 Pooled SE l3 りAllsilageswereensiiagedat25kg 2)Valuesaremeanfor・fourreplicatesMeanswithdifferentsuperscriptlettersaresignificantlydifferent at5%1evel れほ,詰め込み時に十分な排気と密封を行ったためサイロ内がすみやかに嫌気的な状態になったことが主因と思われ る。さらに,低水分材料を用いたためサイレ・一ジの浸透圧が高まり比較的高いpHにおいても酪酸発酵が抑制された結 果(4)とも考えられる。なお,黒毛和種に給与してもその採食速度は速かった。以上の結果より,麦わらからサイレ、・−−・ ジを調製して補助飼料として活用することができると判断した。 表1に示したように,麦わらを2日間放置すると品質ほ劣イヒするが,これらは詰め込み時の水分含量が50%前後と 低く,詰め込み密度も刈り取り喧後に調製したものより低かった。また,放置中の養分損失も考えられる。そこで, 試験2でほサイレージ内の空気混入率を低下させて詰め込み密度を高め,さらに乳酸発酵を促進させるため,水およ び米ヌカを添加してサイレ・−ジの品質に及はす影響を調べた。 試験2の結果を表2に示した。麦わらと等量の水を添加することによってサイレ1一ジのpHほ奄意に減少し,乳酸含 量は有意に増加した。しかし,水添加盛を2倍にしても,さらに米ヌカを添加してもサイレージの品質にそれ以上の 改善はみられなか、つた。以上の結果は,米ヌカの添加量ほ少なすぎたとしても,水添加による効果は予想以上に大き く,麦わらサイレージの調製において原料の水分含量がサイレ・−ジの品質に大きな影響を及はしていることを示した。 これは水添加が直接,あるいほ茎の軟化を通してサイロ内の空気を置換し,その結果,初期の好気性発酵が抑制され たものと思われる。空気混入率の低下は詰め込み畳を増加させるという利点もある。 ヒニ1・・■▲・′レトレンチサイロによってえられた麦わらサイレー:ジの品質ほ,PH53−58でサイレージ特葡の臭いや触感 をもったものから,堆肥状で廃棄せざるをえないものまで年によって異なった。これらの違いほ主に選定したサイロ の構造に由来するものと思われる。トレソチサイロは必要に応じて設置でき,その費用も安く,詰め込み作業も容易 であるが,地下部に設置するため浸水に弱いという欠点をもつ。また,水分調整したにもかかわらず,麦わら単独で はpHを5以下に下げることはできなかった。これは試験用サイロに比べて踏圧や加重による排気と密封が不十分 だったためであろう。しかし,これらは原料の刈り取り高さや詰め込み時の切断長を制御することによってもある程 度改善されるものと思われる。 麦わらサイレージを稲わらとともに黒毛和種に給与すると選択性は麦わらサイレージのほうが高かった。また,原 料中の可溶性炭水化物が少なく,冬季に開封するため二次発酵が抑制されるという利点ももつ(乳酸発酵を促進させ る目的で麦わらとエソバクれ−ルクロップの混合サイレ・−ジを調製したが,かえって二次発酵が促進された)。さらに, 水分含量は通常の牧草サイレージよりも低く,取り出し後の水分の蒸散も速いので給与作業が容易という長所もみら れた。したがって,冬季の粗飼料不足時のためにも麦わらサイレージの調製は大きな意義をもつ。 謝 辞 本試験の遂行に際し,ご協力をいただいた香川大学農学部附属農場技官,大松潔および寺尾勇両氏に感謝の蕾を表 します。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
128 香川大学農学部学術報告 第39巻 第1弓(1987) 引 用 文 献 (1975) (4)大山寡信サイレ・−ジ発酵に関する諸問題,日畜 会報,42,301−307(1971) (1987年5月30日受理) (1)箭原信男農業技術体系畜産編7,飼料作物基礎 編,p505−512,農山漁村文化協会,(1979) (2)森本 宏監修 動物栄養試験法,p412−427,養賢 堂,(1971). (3)吉田 実 畜産を中心とする実験計画法,養賢堂,