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新規 P2X4 受容体アンタゴニスト NCP-916 の鎮痛作用と薬物動態に関する検討 ( 分野名 : ライフイノベーション分野 ) ( 学籍番号 )3PS1333S ( 氏名 ) 小川亨 序論 神経障害性疼痛とは, 体性感覚神経系の損傷や疾患によって引き起こされる痛みと定義され, 自発痛やアロディ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

新規P2X4受容体アンタゴニストNCP-916の鎮痛作用と

薬物動態に関する検討

小川, 亨

http://hdl.handle.net/2324/1785378

出版情報:九州大学, 2016, 博士(創薬科学), 課程博士 バージョン: 権利関係:やむを得ない事由により本文ファイル非公開 (3)

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新規P2X4 受容体アンタゴニスト NCP-916 の鎮痛作用と薬物動態に関する検討 (分野名: ライフイノベーション分野) (学籍番号)3PS13033S (氏名)小川亨 【序論】 神経障害性疼痛とは,体性感覚神経系の損傷や疾患によって引き起こされる痛みと定義され, 自発痛やアロディニア(異痛症)などの症状を伴う.神経障害性疼痛は既存薬の有効性が低いこと や中枢抑制による副作用の発現頻度が高いことから,アンメット・メディカル・ニーズに分類さ れており,新規作用機序の薬剤が求められている.我々は末梢神経損傷に伴い,脊髄後角の活性 化型ミクログリアに発現するP2X4 受容体が神経障害性疼痛の発症メカニズムに大きく関与して いることを世界で初めて報告した 1)P2X4 受容体を阻害する新規低分子化合物は既存薬と一線 を画す神経障害性疼痛治療薬になると期待されるが,経口投与可能な選択的P2X4 受容体アンタ ゴニストは未だ報告されていない. P2X4 受容体阻害作用を有し臨床的に有効かつ安全な化合物を創製することにより,神経障害 性疼痛患者に対する新たな治療薬を提供することを最終目標とし,本研究はP2X4 受容体アンタ ゴニスト全身投与による病態モデルにおける薬効および副作用を明らかにすることを目的として 以下の試験を実施した. 1. P2X4 受容体選択的低分子アンタゴニスト NCP-916 の同定 2. ラット神経障害性疼痛モデルにおける NCP-916 の効果 3. 多発性硬化症モデルラット EAE モデルにおける NCP-916 の効果 【方法】 1. P2X4 受容体選択的低分子アンタゴニスト NCP-916 の同定 NCP-916 の P2X4 受容体阻害活性および P2X 受容体選択性は P2X4 受容体発現細胞株におけ る Ca2+指示薬 Fura 2-AM を用い細胞内 Ca2+反応を測定した.P2X4 受容体電流阻害活性は

whole-cell patch-clamp 法を用い 2 µmol/L ATP に誘発される P2X4 受容体電流を測定した. NCP-916 の代謝安定性試験は凍結肝細胞を用い,反応 0,1,2 および 4 時間後の NCP-916 の残 存率を測定した.NCP-916 のin vitro血液脳関門透過性評価はBBB kit(ファーマコセル株式会 社)を用いて評価した.

2. ラット神経障害性疼痛モデルにおける NCP-916 の効果

神経障害性疼痛モデルはWistar 系雄性ラットの L5 脊髄神経を損傷させることで作製し,モデ ル作製後7 日以降に von Frey test により疼痛閾値を測定した2)NCP-916 は単回(1~30 mg/kg)

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および反復経口投与(10 mg/kg, b.i.d. 8 日間),pregabalin は単回投与(1~30 mg/kg)したときの 疼痛閾値に与える影響を評価した.ラット神経障害性疼痛モデルにおける NCP-916 の血漿,脳 脊髄液および脊髄実質濃度は,NCP-916 を 10 mg/kg の用量で単回経口投与し,投与 1,2,4 お よび 8 時間後に採取・採材し,NCP-916 濃度を測定した.NCP-916 の協調運動能はラットを 1 分間に10 回転(10 rpm)する rota-rod に乗せ,薬物投与 1,3 および 6 時間後落下時間から評価し た. 3. 多発性硬化症モデルラット EAE モデルにおける NCP-916 の効果 多 発 性 硬 化 症 病 態 モ デ ル(EAE モ デ ル ) は Lewis 系 雌 性 ラ ッ ト の 尾 部 に gpMBP(68-84) -adjuvant 投与液を皮内投与することで作製した.EAE モデルにおける P2X4 受容体の発現は EAE モデル作製後に経日的に L5 脊髄領域を採材し,定量的リアルタイム RT-PCR 法および免疫 組織化学的手法により評価した.EAE モデルでは症状スコア,体重および von Frey test による 50%疼痛閾値について経日的な推移を観察し,NCP-916 の予防的(EAE モデル作製日から 22 日 間)・治療的反復投与(EAE モデル作製後 10 日目から 21 日間)における影響を観察した. 【結果・考察】 1. P2X4 受容体選択的低分子アンタゴニスト NCP-916 の同定 新規 P2X4 受容体アンタゴニスト NCP-916 の in vitro 阻害活性および選択性を検討した. NCP-916 はヒト P2X4 受容体発現細胞における 2 µmol/L ATP 誘発 Ca2+反応およびP2X4 受容体 電流を濃度依存的に阻害し (IC50値:27.8 nmol/L),非選択的 P2X 受容体アンタゴニストとして 知られるTNP-ATP よりも 30 倍以上強い P2X4 受容体電流阻害活性を示した(図 1).次に P2X4 受容体選択性を評価した結果,NCP-916 は 30 µmol/L までの濃度において P2X1,P2X2,P2X3, P2X2/3 および P2X7 受容体に 50%以上の阻害作用は示さなかった.また,NCP-916 は 10 µmol/L の濃度において種々の受容体,イオンチャネル,トランスポーターおよびキナーゼに影響を及ぼ さなかった. 次にNCP-916 の薬物動態プロファイルを評価した.凍結肝細胞を用いて NCP-916 の代謝安定 性を検討した結果,凍結肝細胞に4 時間インキュベーションしたときの NCP-916 の残存率は 50% 以上となり,NCP-916 は代謝安定性の優れた化合物であることが明らかとなった.また,NCP-916 はin vitro血液脳関門透過性評価系から中枢移行性を有する化合物であると判定された. 本研究から,NCP-916 は強力かつ選択的な低分子 P2X4 受容体アンタゴニストであることを確 認した.さらに,in vitro薬物動態試験結果からNCP-916 は中枢移行性が高く代謝を受けづらい 薬物動態プロファイルの良好な化合物であることが判明した.

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2. ラット神経障害性疼痛モデルにおける NCP-916 の効果 ラット神経障害性疼痛モデルにおける NCP-916 の鎮痛作用を検証した.ラット神経障害性疼 痛モデルにおいてNCP-916 は 3 mg/kg 以上の単回経口投与により用量依存的にアロディニアを 抑制した(ED50値:3.0 mg/kg) (図 2).NCP-916 は薬効が認められたすべての用量において,投 与3 時間後以降に鎮痛作用が認められた.NCP-916 の血漿中濃度,脳脊髄液中濃度および脊髄実 質濃度を測定し,薬効と P2X4 受容体が発現する脊髄(標的器官)における濃度との関連を検証し た.その結果, NCP-916 は中枢移行性を有し,投与後 1 時間には目的濃度が脊髄に到達してい ることが判明した.この結果から,NCP-916 は薬効発現までに時間を要することが考えられた. 次に神経障害性疼痛治療薬の第一選択薬として使用される pregabalin の薬効を比較する目的 で,ラット神経障害性疼痛モデルにおける鎮痛作用を評価した.Pregabalin は単回経口投与によ りアロディニアを用量依存的に抑制した(ED50値:9.1 mg/kg).Pregabalin の鎮痛作用は NCP-916 のように頭打ちは観察されなかったが,統計学的に有意な鎮痛作用が認められた10 mg/kg 以上 の用量では鎮静および自発運動の抑制が観察されたことから,高用量では正確に疼痛閾値を測定 できていない可能性が考えられた.そこでNCP-916 および pregabalin の中枢抑制作用について rota-rod test を用いて評価した結果,pregabalin は 30 mg/kg において協調運動能に有意な影響 が観察されたが,NCP-916 は 60 mg/kg 投与においても影響は認められなかった(図 3).この結 果から,P2X4 受容体阻害は上位中枢における神経活動へ及ぼす影響は小さいと考えられた. 次に,NCP-916 のラット神経障害性疼痛モデルにおける反復経口投与における影響を評価した. その結果,NCP-916 は投与期間中,持続的な鎮痛作用が認められた. 本研究では,ラット神経障害性疼痛モデルにおける選択的P2X4 受容体アンタゴニストの経口 投与によるアロディニア抑制作用を初めて示した.NCP-916 はin vivoにおいても高い中枢移行 性を有していることを確認したが,pregabalin のような中枢抑制作用が無いことから,臨床で使 用しやすい新規神経障害性疼痛治療薬として有用である可能性が示された. 0 2 4 6 8 0 5 10 15 23 24 25 Vehicle 1 mg/kg 3 mg/kg 10 mg/kg 30 mg/kg $ *** **### *** ** * # ***## #

Time after administration (hr)

50% paw w ithdr aw al thr es hol d ( g) 0 2 4 6 8 0 5 10 15 3 mg/kg 10 mg/kg 30 mg/kg Vehicle 1 mg/kg # *** ### *** *** ** * #

Time after administartion (hr)

50% paw w ithdr aw al thr es hol d ( g) NCP-916 0 1 3 6 0 50 100 150 Vehicle 10 mg/kg 30 mg/kg 60 mg/kg

Time after administration (hr)

D ur atio n tim e o n R ota R od (s ec ) Pregabalin 0 1 3 6 0 50 100 150 Vehicle 10 mg/kg 30 mg/kg 60 mg/kg ** ** ** *

Time after administration (hr)

D ur atio n tim e o n R ota R od (s ec ) 図1. ヒト P2X4 受容体発現細胞における 2 µmol/L ATP 誘発 P2X4 受容体 電流に対するNCP-916 および TNP-ATP の阻害活性 図2. ラット神経障害性疼痛モデルにおける NCP-916 およびpregabalin 経口投与による薬効評価 図 3. Rota-rod 試 験 に お け る NCP-916 お よ び pregabalin の影響

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3. 多発性硬化症モデルラット EAE モデルにおける NCP-916 の効果 多発性硬化症モデルであるEAE モデルでは症状スコアの回復期において 50%疼痛閾値が顕著 に低下した.多発性硬化症患者では回復期に神経障害性疼痛を伴うことが報告されていることか ら,本病態モデルは臨床の病態を反映した疼痛評価モデルであると考えられた. EAE モデルにおける P2X4 受容体の関与を検討するために,P2X4 受容体の発現を免疫組織染 色法にて確認した.その結果,P2X4 受容体の発現量増加と神経障害性疼痛の発症に経日的な変 化に相関性が認められたことから,疼痛閾値の低下にP2X4 受容体が関連していると考えられた. そこで,ラット EAE モデルにおける P2X4 受容体の痛みに対する寄与を薬理学的に明らかに するために,NCP-916 を反復経口投与し,症状スコアならびに 50%疼痛閾値に与える影響につ いて検討した.NCP-916 反復経口投与は症状スコアには影響が認められなかったが,EAE 発症 に伴って発現するアロディニアを抑制し(図 4),統計学的に有意差が認められた.NCP-916 によ って有意な鎮痛作用が認められたことから,EAE モデル動物は P2X4 受容体を介して神経障害性 疼痛の発症および維持に関与していることが示唆された. 0 10 20 30 40 50 0 5 10 15 ** *** * ** **

Day post immunization

50% p aw w it hd raw al th re sh ol d ( g) 【総括】 本研究ではP2X4 受容体を選択的かつ強力に阻害する NCP-916 を同定し,NCP-916 の経口投 与による神経障害性疼痛モデルにおける薬効および副作用を検討した.NCP-916 はラット神経障 害性疼痛モデルのアロディニアを抑制し,反復投与においても鎮痛耐性は認められなかった.既 存の神経障害性疼痛治療薬は副作用の発現,薬効不足および鎮痛耐性が問題となっている.本研 究からP2X4 受容体アンタゴニストは安全で有効性の高い画期的な神経障害性疼痛治療薬になる と考えられた. また,EAE モデルにおける検討から,P2X4 受容体アンタゴニストは神経障害性疼痛だけでな く慢性炎症性脱髄性疾患に起因する疼痛にも関与することが明らかとなり,幅広い疼痛への適用 の可能性が示唆された. 【引用文献】

1) Tsuda et al. (2003)

Nature.

424(6950):778-83.

0 10 20 30 40 50 0 5 10 15 * *** adjuvant : vehicle adjuvant : NCP-916 EAE : vehicle EAE : NCP-916

Day post immunization

50% p aw w it hd raw al th re sh ol d ( g) 図4. NCP-916 治療的投与におけるラット EAE モデルの疼痛閾値の経日的変化

図 1.  ヒト P2X4 受容体発現細胞における 2 µmol/L ATP 誘発 P2X4 受容体 電流に対する NCP-916 および TNP-ATP の阻害活性  図 2
図 4. NCP-916 治療的投与におけるラット EAE モデルの疼痛閾値の経日的変化

参照

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