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Academic year: 2021

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(1)

Yutaka Morita,M.D.

「食物アレルギーの最近の話題」

お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻 森田 寛

2011. 11. 13

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Yutaka Morita,M.D.

(3)

1796年ジェンナーは「牛痘にかかった 乳搾り娘の手の腫れ物から取り出した 物質」を8歳の少年に接種した。6週間 後、その少年に天然痘の膿疱からとっ た試料を接種した。少年は天然痘に はかからなかった。

(4)

Pasteur は酵母により糖がアルコー ルに変化してワインができることを明 らかにした。 その後、彼の興味は有害な微生物 の研究に向かい、微生物が病気の 原因となることを発見した。 そして、ニワトリコレラの研究によりワ クチンによる免疫の基本原理を確立 し、狂犬病のワクチンを開発した。

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RichetとPortierはクラゲ毒素をイヌに注射するという実験によ りアナフィラキシーという現象を発見した(1902)。

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Clemens von Pirquet

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Yutaka Morita,M.D.

免疫と過敏症という一見矛盾するようにみえる

現象に“反応能力の変化”という共通点を見出し、

両者を包括する概念としてアレルギー (allergy;

allos (other, 変じた)、ergo(action, 作用、機能)と

いう用語を提唱した。

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Yutaka Morita,M.D.

免疫反応

アレルギー

免疫反応 過敏症 アレルギー 過敏症

アレルギー

の概念の変遷

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Yutaka Morita,M.D.

アレルギーとは免疫反応に基づく

生体に対する全身的または局所的な

障害である(広義)。

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Yutaka Morita,M.D.

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タラのアレルギーを持っていた Küstnerの血清をPrausnitzの皮膚 に注射して24時間後に同じ部位に タラの抽出液を注射したところアレ ルギー反応が起こった。 この現象からアレルギーの原因物 質は血清中にあり、転移可能で、 しかも皮膚に固着することが明ら かになった。この原因物質は後に レアギンと名付けられた。この反応 はPrausnitz- Küstner (P-K)反応と 呼ばれている。

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Yutaka Morita, M.D.

ヒトIgEの構造

不変領域 可変領域 VL CL VH H鎖 (CDR) 相補性決定領域 Cε 1 Cε 3 Cε 2 Cε 4 Fab Fc L 鎖 Fcε RⅠ、RⅡに結合

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IgEを介する炎症性メディエーターの放出

IgE Allergens FcRI Over Minutes Lipid mediators: Prostaglandins Leukotrienes Wheezing Bronchoconstriction Over Hours Cytokine production: Specifically IL-4, IL-13

Mucus production Eosinophil recruitment Immediate Release Granule contents: Histamine, TNF-, Proteases, Heparin Sneezing Nasal congestion Itchy, runny nose Watery eyes

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FcεRI 【抗原・IgEによる高親和性 IgE受容体からのシグナル伝達 経路】 Lynから開始され、LATを介し てPLCγの活性化に至る主経路 と、Fynから開始され、Gab2を 介してPI3キナーゼの活性化に 至る副経路があり、これらの 経路は独立しながらも協調し て、マスト細胞の脱顆粒、脂 質メディエーターの放出、サ イトカインの産生を制御して いる。さらに、Bcl10; Malt1 を介してNF-κBの活性化に至 る経路はサイトカイン産生に 関与している。

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ダニ

わが国で最も重要な アレルゲン

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なぜアレルギー疾患が増えているのか?

1. 自然淘汰説 寄生虫感染に対する免疫系による防御はTh2系のシステ ム(IgE、マスト細胞、好酸球)が担っている。Th2系が強い 遺伝素因をもった者は生き延びる確率が高かったので近 年アレルギー疾患が増加したという説。 2. 衛生仮説 清潔過ぎる環境によりTh2系が優位になり、アレルギー 疾患が増加したという説。

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Th2

Th2

Th2

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Th1, Th2のバランス

乳幼児期の細菌および

ウイルス感染

Th1

Th2

生体防御 (ウイルス、 細菌、腫瘍) アレルギー

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Yutaka Morita,M.D.

代表的なアレルギー疾患

・ アナフィラキシー

・ 気管支喘息

・ 花粉症

・ アレルギー性鼻炎

・ アレルギー性結膜炎

・ アトピー性皮膚炎

・ 蕁麻疹

・ アレルギー性接触皮膚炎

・ 食物アレルギー

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アナフィラキシーとアナフィラキシーショック

さまざまな症状がいくつか同時に生じ、急に悪化していく状 態をアナフィラキシーと呼びます。特に呼吸困難、血圧が下 がる、意識を失うなどショック状態を伴う反応をアナフィラキ シーショックと呼び、時に命を失いかねません。 エピネフリン自己注射薬を使用したり、救急車を呼ぶなどを してすぐに医療機関を受診する必要があります。

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Yutaka Morita,M.D.

アナフィラキシー anaphylaxis

IgEに仲介される全身性のⅠ型アレルギー反応

・ マスト細胞、好塩基球から遊離されるメディエ ーター (ヒスタミン、システイニルロイコトリ エンなど)が関与 ・ 多臓器系が侵される

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Yutaka Morita,M.D.

アナフィラキシーの原因

1) 食物、食品・薬剤の添加物 甲殻類(エビ、カニ)、魚介類、卵白、ソバ、小麦、牛乳、ピーナッツなど、 亜硫酸塩(sulfite)、防腐剤(パラベンなど)、着色剤、アニサキス(魚類やイカに寄生)、 アルコール飲料 2) 薬剤・医療行為 抗生物質・合成抗菌薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、造影剤、局所麻酔薬、消毒薬、 筋弛緩薬、インスリン、その他のホルモン製剤、生物学的製剤、抗悪性腫瘍薬、 抗血清、麻薬、ステロイド静注薬、血液製剤、減感作療法、ワクチン接種、輸血 3) 虫刺症、刺咬症 ハチ、その他の昆虫、ヘビ、クラゲ、イソギンチャク、ウニ ペット:イヌ、ネコ、ハムスターなど 4) ラテックス製品 ゴム製品、ゴム手袋のパウダー(コーンスターチがラテックス蛋白を吸着) 5) 運動 (特定の)食物摂取後の運動 食物摂取と関連のない運動 6) 物理的要因 寒冷、温熱、紫外線 7) 特発性 原因不明

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Yutaka Morita,M.D.

アナフィラキシー(広義)の症状の出現頻度

症状 % 皮膚症状 >90 蕁麻疹/血管浮腫 85-90 潮紅 45-55 皮疹を伴わないかゆみ 2-5 呼吸器症状 40-60 呼吸困難、喘鳴 45-50 上気道浮腫 50-60 鼻炎症状 15-20 めまい、失神、低血圧 30-35 腹部症状 嘔気、嘔吐、下痢、腹痚 25-30 その他 頭痚 5-8 胸骨下痚 4-6 痙攣 1-2

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原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して生体

にとって不利益な症状

(

皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、

アナフィラキシー反応など

)

が惹起される現象である。

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食物アレルギー

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加工食品のアレルギー表示を確かめましょう

義務

卵、乳、小麦、そば、落花生、エビ、カニ

推奨 あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、 牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、 豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

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代表的な食物の精製アレルゲン

アレルゲン名 分子量 (kDa)

タラ

卵白

牛乳

エビ

リンゴ

Gad c 1

Gal d 1

Bos d 5

Pen a 1

Mal d 1

12

28

20

36

17

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食物抗原の交差抗原性によ る臨床症状の確立

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食物アレルギーの検査の種類

•血液一般検査 IgE抗体などを調べます。 •皮膚テスト 疑いのある食物から抽出したエキスを皮膚に 直接つけて反応をみます。 •食物除去試験 アレルギーを起していると思われる食物を 1〜2週間食べないようにして症状が治まるか どうかを調べます。 •食物負荷試験 食べてみて症状が現れるかどうかを調べます。 • 安全かつ正しく診断するために原則として 医療機関で行ないます。 • 除去を続ける必要があるのかを調べるため の大事な検査です。 *IgEとは:血液中にあり、アレルギー反応に関わっている物質で診断の参考にします。

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セルフナビケア 食物アレルギー・ 厚生労働科学研究より

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食物依存性運動誘発

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Yutaka Morita,M.D.

食物依存性運動誘発アナフィラキシー (1)

Food-dependent exercise-induced anaphylaxis

(FDEIA)

特定の食餌摂取後に運動負荷が加わると蕁麻疹、 血管浮腫、呼吸困難、血圧低下、意識消失などの アナフィラキシー症状を呈する疾患。

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Yutaka Morita,M.D.

食物依存性運動誘発アナフィラキシー (2)

1) 食物アレルゲンの種類:小麦、セロリ(欧米)、エビ、カニ、イカなど 2) 運動の種類:テニス、ランニングなどの運動負荷が大きいもの。 歩行などでも起こる。 3) 誘発までの時間:食後1〜2時間 4) 発症機序: 運動による①食物アレルゲンの吸収の増加 ②マスト細胞からの化学伝達物質の遊離の促進 ③化学伝達物質に対する血管などの組織の反応性の亢進 5) 診断:問診、皮膚テスト、試験管内IgE抗体測定法、誘発試験 6) 治療: ① 原因アレルゲンの除去、食後の運動禁止 ② 薬物療法:抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬

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Yutaka Morita,M.D.

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口腔アレルギー症候群

生の果物、野菜、ナッツ、スパイスなどの原因食物を食べ てすぐに、くちびるや口の中がはれたり、かゆくなったり、 イガイガしたりします。まれにショック症状を起すこともあり、 注意が必要です。 花粉症の人が果物を食べることで、花粉と果物が関連し あって症状を起すものや、ラテックスアレルギー(天然ゴム アレルギー)と関連して発症するものなどがあります。

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Yutaka Morita, M.D.

Oral allergy syndrome (OAS)

● 症状 原因食物摂取後、15分以内に口腔、口唇、咽頭部粘膜 に刺激感、痒み、ひりひり感、突っ張り感が出現する。 時に咽喉頭浮腫、蕁麻疹、消化器症状、鼻炎症状、喘息 様症状、アナフィラキシー症状を伴う。 ● 花粉症と関連したOAS 花粉食物アレルギー症候群

(pollen-food allergy syndrome:PFAS) ● ラテックスアレルギーに関連したOAS

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Yutaka Morita, M.D.

pollen-food allergy syndrome (PFAS)

花粉食物アレルギー症候群

● シラカバ花粉症では

OASの合併率は40〜50%

原因食物:リンゴ、サクランボ、モモ、ナシ、プラム、

イチゴ (バラ科の果物)

シラカバ花粉の主要抗原であるBetv1のなかにバラ科

果物抗原と交差反応を示す分子が含まれている。

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Yutaka Morita, M.D.

ラテックスアレルギー

● 天然ゴム製品に含まれる蛋白質抗原と特異的IgE抗体との 反応によるアレルギー ● 症状: 接触蕁麻疹、アナフィラキシー、鼻炎・喘息・結膜炎 の症状 ● 原因物質:家庭用ゴム手袋、ゴム風船、手術・検査用手袋、 カテーテルなど ● アレルゲンはHevb1〜Hevb13 生体防御蛋白質群が重要 ヘベイン(Hevb6.02)は主要アレルゲン

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Yutaka Morita, M.D.

ラテックス・フルーツ症候群 (LFS)

● ラテックスアレルギーにOASが合併した場合をいう。 バナナ、アボカド、クリ、キウイなどでOASが生じる。 ● これらに含まれるクラスⅠキチナーゼのN末端部に ヘベイン類似ドメインが存在する → 交差反応

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食物アレルギーと

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乳児のアトピー性皮膚炎と食物アレルギー

乳児のときに湿疹がなかなか治らなかったり、食事やミルク (母乳を含む)の後に皮膚が赤くなったり、かゆがったりする場 合は食物アレルギー症状の疑いがあります。また、アトピー 性皮膚炎を併発している場合も多く、その場合は食物アレル ギーの治療と併せてスキンケアと外用療法をしていきます。

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Yutaka Morita,M.D.

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Yutaka Morita, M.D.

〈この問題に対する対策〉

2010.10.15 厚労省医薬食品局安全対策課が「お茶石鹸」による 小麦アレルギーについて公表し、注意を喚起 2010.12.8 (株)悠香が加水分解小麦を含まない製品の販売を開始 2011.5.20 同石鹸の回収を開始(約4,650万個) 2011.8 厚労省が医療関係者に健康被害の報告を促す通知

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Yutaka Morita, M.D. ● 加水分解小麦は泡立ちをよくして、手触りをなめら かにするために石鹸に加えられていた。 ● 患者さんは加水分解小麦を含むお茶石鹸の使用に よりそれに対して経皮、あるいは経粘膜感作された と考えられる。 ● その結果、小麦を摂取すると食物アレルギーの症状 がみられるようになった。 ● WDEIAが起こりやすいのも特徴的である。

〈まとめ〉

参照

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