二元系ナノ粒子触媒のXAFS解析
自己紹介
仁谷 浩明 (にたに ひろあき)
高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 助教
放射光科学研究施設(PhotonFactory)の
硬X線XAFS:9A, 9C, 12C, 15A1, NW2A, NW10A担当
これまでに測定したもの
ナノ粒子材料(AuPd)、燃料電池用電極(PtRu)、希土類磁性材料、
高レベル放射性廃棄物処理、リチウムイオン電池電極(LiCoNiOx)、などなど
近年のXAFS動向
“Synchrotron radiation is now just part of the everyday
tool kit of many scientists, and is no longer just the frontier
research tool for the few”(Nature 387, 539(1997))
PFでは様々な分野で放射光XAFSの実験が行われている
硬X線XAFSだけで約200の有効課題数(G型:2年間有効)
XAFSビームラインの利用率はほぼ100%
分野別トップ3は地球惑星、触媒、エネルギー
本日の内容
テーマ:二元系ナノ粒子のXAFS解析
実習1:AuPdナノ粒子の構造解析
Au L3端EXAFS
実習2:PtRuナノ粒子の構造解析
Pt L3端EXAFS、Ru K端EXAFS
共に触媒として利用可能な材料
XAFS解析結果を新たな材料開発にどう結びつけるか
材料開発と構造解析
ナノ粒子とXAFS解析
XAFSから何が分かるのか?
×形状
△粒子径(超微細粒子のみ)
○結晶構造
○粒子構造
△表面状態(表面の情報のみ得られるとき)
×凝集状態
×担体
△組成(均一な粒子のみ)
他の手法と組み合わせて解析を行うことが必須!
XAFS測定の注意事項
ビームラインは適切か?
測定元素と手法によってビームライン(施設)を使い分けな
いと非効率的
測定手法は適切か?
基本は透過法
蛍光法はなんでも測定できるわけではないし、検出器によっ
ては補正が必要
EXAFS解析をまじめにやるのなら冷やして測定
測定パラメータは適切か?
XANES解析しかしない場合でもEXAFS領域までとっておか
ないと規格化の時に困る
測定元素と見たい構造によって吸収端から何eV必要かは変
わってくる
二元系ナノ粒子の合成 • 超音波によるナノ粒子の合成(AuPd) • アルコール還元法によるナノ粒子の合成(PtRu) 合成したナノ粒子の特性と構造の評価 • 触媒活性の評価 • 原子レベルでの粒子の内部構造の解析 材料設計へのフィードバック • ナノ粒子の内部構造と触媒活性の相関の評価 • 高活性触媒合成の方向性の決定 クラスター結合構造 ランダム合金構造 コアシェル構造 単独粒子構造
コアシェル構造二元系ナノ粒子の開発
超音波によるAuPd二元系ナノ粒子の合成
触媒活性の評価
(シクロヘキセンの水素化反応) 粒子の内部構造の解析 (XAFS, XRD, TEM, ICP, UV-vis)
ナノ粒子の内部構造と 触媒活性の相関の評価 触媒活性の変化の評価 粒子の内部構造の変化の解析 熱処理によるナノ粒子の内部構造と 触媒活性の変化の評価 100℃~400℃での熱処理 Au Pd Au Pd 熱処理 AuPd 合金 AuPdコアシェル構造 → 触媒活性の促進 高活性 低活性
AuPd二元系ナノ粒子の開発と構造解析
超音波によるナノ粒子合成プロセス • 合成装置、手順が簡便 • 金属イオンの還元から担体への担持までone-podで行うことができる AuPd複合ナノ粒子合成手順 HAuCl4水溶液 Na2PdCl4水溶液 Au:Pd = 1:1 g-Fe2O3微粒子(平均粒径29 nm) PEG-MS(分散剤) 2-プロパノール(還元補助剤) 超音波照射 200 kHz, 200W, 20℃, 1h Au/Pd二元系ナノ粒子 磁気分離により液相から回収,乾燥 超音波振動子 恒温槽 20℃ 混合溶液 (原子比) 出発溶液 図. 合成装置概略図 • 超音波によって生じるキャビテーション反応場で金属イオンを還元 Arガス
AuPd二元系ナノ粒子の合成
図. g-Fe2O3上に担持されたAuPd二元系ナノ粒子 平均粒径 8.3 nm の貴金属ナノ粒子が坦体上に分散して存在 20 nm 貴金属 ナノ粒子 坦体:g-Fe2O3粒子 0 5 10 15 20 25 30 2 4 6 8 10 12 14 16 F re qu en cy [% ] Particle size [nm] Average 8.3 nm 図. 貴金属ナノ粒子の粒度分布 クラスター結合構造 ランダム合金構造 コアシェル構造 単独粒子構造 内部構造を区別 することは出来ない 考えられるナノ粒子の内部構造モデル
TEM観察結果
Photon Factory BL-12C Au LIII端(11913 eV) モノクロメータ : Si(111)面 XAFS測定条件 透過法、室温 電離箱 試料保持位置 放射光 図. 透過法によるX線吸収スペクトルの測定 11600 12000 12400 12800 Photon energy [eV]
μ t Au-L III edge 図. 測定で得られた試料のX線吸収スペクトル XANES領域 12000 12400 12800 Photon energy [eV]
μ
t
EXAFS領域
XAFS測定
合成した試料のXANESスペクトルはAuフォイル(0価)のものと一致 試料中のAuはメタル(0価)で存在 11880 11900 11920 11940 11960 11980 g-Fe 2O3担持Au/Pd Auフォイル Au 2O3 Ab so rp tio n co ef ficie n t [ar b . u n it] Energy [eV] 図. 合成した試料と標準試料のXANESスペクトル 標準試料とのスペクトル比較で価数を同定 (0価) (+3価)
XANES解析結果
12000 12500 Ab sorpt ion c oe ffic ient [a rb. un it] Energy [eV] 0 40 80 120 160 k 3 χ (k ) k (nm-1) 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 r [nm] |F T| X線吸収スペクトル EXAFS振動 動径構造関数 • 測定で得られた吸収スペクトルからバックグラウンドを除去 • 抽出したEXAFS振動をフーリエ変換して動径構造関数(RSF)を得る • 横軸をX線エネルギーEから光電子の波数kへ変換 e 0 2 ( ) m k EE max min 2 ( ) ( ) ( ) ( ) n k ikr i k k k k w k FT e dk F k
EXAFS解析(1)
0 20 40 60 80 100 120 140 160 Experimental Calculated k [nm-1] (k )k 3 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 r [nm] |F T | → RDFの逆フーリエ変換で最近接のAu-Au、Au-Pd結合の情報を得る 動径構造関数 第一配位圏のEXAFS振動 Fitting range 逆フーリエ変換 最適化パラメータ : 結合距離rと配位数N (Au-Au, Au-Pd結合それぞれ), エネルギー端の補正値DE0, デバイワラー因子s2 • 抽出したEXAFS振動をEXAFS公式を用いたフィッティングにより解析 2 2 2 2 / ( ) 2 ( ) j j ( ) jk Rj j k sin(2 ( )) j j ij j j S N k F k e e kR k kR s
※その他のパラメータはFEFF7による計算結果を使用 X線 X線吸収原子 散乱原子 干渉波 EXAFSEXAFS解析(2)
• Auに配位しているAuとPdの割合 Au/Pd = 10.2/1.4 = 7.3 • Au-Au間距離とAu-Pd間距離に差がある AuとPdはランダム合金化していない • Au-Au間距離はバルクのAuとほぼ一致 表. EXAFS解析により決定した構造パラメータ Au-Au結合 Au-Pd結合 DE 0 [eV] s2 [nm2] R-factor
rAu-Au [nm] NAu-Au rAu-Pd [nm] NAu-Pd
0.287±0.001 10.2±2.6 0.281±0.004 1.4±0.7 2.77 8.9×10-5 0.0396 ※Auバルク = 0.288 nm 元素分析(ICP)結果 Au/Pd = 1.1 AuとPdが均等に混ざり合っていれば両者は一致するはず Au Pd Au 0.287 nm 0.281 nm 1.4個 10.2個
EXAFS解析(3)
30 45 60 75 90 g-Fe 2O3担持Au/Pd二元系ナノ粒子 g-Fe 2O3微粒子 2[degree] Int en sit y [a rb. uni t] 図. 試料のX線回折パターン • fcc構造のAuのピークが存在 • Pdのピークは観測されない PdはAuに比べて小さい・薄い A u (1 11 ) A u (2 00 ) A u (2 20 ) A u (3 11 ) A u (2 22 ) • ICP測定ではPdの存在を確認 Auナノ粒子:表面プラズモン吸収有 Au/Pdナノ粒子:表面プラズモン吸収無 Auの表面は露出していない 400 500 600 700 g-Fe 2O3担持Au/Pd二元系ナノ粒子 g-Fe 2O3担持Auナノ粒子 Wave length [nm] A b so rb an ce [ ar b . u n it ] 図. 合成した試料の吸光度スペクトル Auの表面プラズモン吸収 Au : Pd : Fe = 3.3 : 2.9 : 93.8 (Atomic ratio) AuPd二元系ナノ粒子
XRD、紫外可視吸光度測定結果
UV-vis吸光度分析 EXAFS解析 XRD解析 コアシェルモデル Au Pd 作成したAuPd二元系ナノ粒子は コアシェル型構造を持っている可能性が高い AuとPdは粒子内で均一に存在していない AuとPdはランダム合金化していない PdはAuに比べて小さい・薄い Auの表面は露出していない クラスター結合構造 ランダム合金構造 単独粒子構造 コアシェル構造
AuPdナノ粒子の構造
Au Pd 8.3 nm Au:Pd = 1:1で構成されているとすると • Auコアの直径 : 6.6 nm • Pdシェルの厚さ : 0.86 nm • Pd層が非常に薄いためXRD測定時の回折ピーク強度が弱くなる • AuはPd層によって覆われているため 吸光度測定においてプラズモンピークが観測されない • 粒径6.6 nmのAu粒子における平均配位数 = 11.2 EXAFS解析で得られた NAu-Au = 10.2±2.6 の範囲内 コアシェル型モデルは実験結果と矛盾がない 粒径8.3 nmのコアシェル構造のAu/Pd二元系ナノ粒子を考える 実験データとの比較
コアシェルモデルの検証
触媒活性の測定方法 真空計 Valve H2 gas 試料 シクロヘキセン 1-プロパノール • シクロヘキセンの水素化反応実験 C6H10 + H2 + Pd → C6H12 + Pd • 水素化によって消費されたH2分圧を測定 0.0 0.5 1.0 0 10 20 30 40 50 60
The present sample (AuPd)
Pd nanoparticle Kt per P d ato m [ mol -1 ]
Reaction time [min]
Pd原子1個あたりの反応係数を算出 H2 0
( )
1
ln
P
P
t
kt
m
P
P
m: 触媒濃度 P0:初期H2分圧 :最終H2分圧P
Pd単体のナノ粒子と比べて2.4倍の活性 粒子の内部構造がコアシェル構造 となることで多くのPdが表面に露出し Pd原子あたりの触媒活性が向上AuPd二元系コアシェル型ナノ粒子の触媒活性
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0 10 20 30 40 50 60 熱処理なし400℃ Kt per P d ato m [ mol -1 ]
Reaction time [min]
シリカ担持Au/Pd二元系ナノ粒子をそれぞれ違う温度で熱処理(H2気流中) •400℃で熱処理すると 顕著に触媒活性が低下 高活性 構造解析から失活の原因を探る 400℃ 熱処理なし
熱処理による触媒活性の変化
• 超音波照射 200 kHz, 200W, 20℃, 1h • テトラエトキシシランを添加 • pH 10, 75℃で2時間還流 AuPdコアシェル粒子 ポーラスシリカ熱処理なし 400℃ TEM観察では顕著な粒径変化は見られない AuPdナノ粒子がシリカマトリクス中によく分散しているため 粒子同士の凝集が起こらなかった 熱処理による触媒活性の失活の原因は粒子の内部構造の変化にある
TEM観察
11900 11910 11920 11930 11940 11950 400℃ 300℃ 200℃ 100℃ 熱処理なし Au(metal) Au 2O3
Photon energy [eV]
μ t Au L III edge 24340 24360 24380 24400 24420 24440 XANES 11:20:34 2003/02/17 400℃ 300℃ 200℃ 100℃ 熱処理なし Pd(metal) PdO
Photon energy [eV]
μ
t
Pd K edge
Au LIII端XANESスペクトル Pd K端XANESスペクトル
Au : すべての試料において金属の状態で存在(変化なし) Pd : 高温で熱処理したものはほぼ金属の状態で存在
熱処理前・低温で熱処理したものは酸化物のように応答するものが存在
Au-LIII端およびPd-K端におけるXANES測定結果
粒子表面で酸化していたPdが還元された
XANES解析
• Au-Au間距離が徐々に減少 原子間距離 R 0.279 0.280 0.281 0.282 0.283 0.284 0.285 0.286 0 100 200 300 400 R : Dist anc e [ nm ] Treated temperature [oC] R Au-Au R Au-Pd 熱処理無し Au原子近傍のAuおよびPdシェルの原子間距離、配位数を決定
RAu-Au (nm) RAu-Pd (nm) NAu-Au NAu-Pd
熱処理なし 0.285 0.280 9.38+0.58 1.17+0.17 100℃ 0.285 0.281 8.68+0.93 1.44+0.23 200℃ 0.284 0.280 7.69+0.40 2.41+0.16 300℃ 0.283 0.280 6.18+0.51 3.54+0.28 400℃ 0.283 0.280 6.01+0.48 3.91+0.31 表 フィッティングによって得られたパラメータ Auコアの格子定数が減少 Auよりも原子半径の小さいPdが 粒子表面から内部に移動? Pd層
EXAFS解析結果(1)
RAu-Au (nm) RAu-Pd (nm) NAu-Au NAu-Pd 熱処理なし 0.285 0.280 9.38+0.58 1.17+0.17 100℃ 0.285 0.281 8.68+0.93 1.44+0.23 200℃ 0.284 0.280 7.69+0.40 2.41+0.16 300℃ 0.283 0.280 6.18+0.51 3.54+0.28 400℃ 0.283 0.280 6.01+0.48 3.91+0.31 表 得られた構造パラメータ • 400℃の配位数比はAu/Pd = 1.5+0.24 → 元素分析(Au/Pd = 1.3)と一致 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 0 100 200 300 400 N : Coo din a ti on n umbe r Treated temperature [oC] N Au→Au NAu→Pd Au原子近傍のAuおよびPd原子との原子間距離、配位数を決定 配位数 N • 熱処理温度の上昇とともに Au-Auは減少、Au-Pdは増加 コアシェル型からランダム合金構造に変化した → 原子の偏在が緩和
EXAFS解析結果(2)
メインピークの位置が熱処理によって高 角度側へシフトしている 熱処理によりAuとPdは合金化している 20 30 40 50 60 70 80 90 1 1 -4 0 0 2θ [degree] In ten sit y 400oC 200oC 100oC 300oC 熱処理前 各試料のXRD測定結果 35 36 37 38 39 40 41 42 2θ [degree]
In
ten
si
ty
400oC 300oC 200oC 100oC 熱処理前 Au(111)付近の拡大図 Au(111) Pd(111)XRD測定結果
AuPd二元系ナノ粒子触媒を合成し、
XAFS法を用いた構造解析結果から、
粒子の内部構造と触媒活性との関係の評価を試みた
超音波による合成法で作成したAuPd二元系ナノ粒子は コアシェル型の内部構造を持ち、単体のPdよりも触媒活性が向上する 300℃以上での熱処理によりコアシェル型構造はランダム合金構造へと変化 し、表面のPdサイトが減少することにより触媒活性は失活する Au Pd Au Pd 高温熱処理 AuPd 合金 ナノ粒子表面により多くのPdが露出している粒子構造が有効AuPd二元系ナノ粒子構造解析のまとめ
アルコール還元法によるPtRu二元系ナノ粒子の合成 触媒活性の評価 (メタノールの酸化反応) 粒子の内部構造の解析 (XAFS, XRD, TEM, XRF) ナノ粒子の内部構造と 触媒活性の相関の評価 Au Pd Pt Ru •コアシェル型ナノ粒子触媒 •組成:AuPd → PtRu •活性サイト:Pd → Pt •粒径:10 nm → 2 nm
PtRu二元系ナノ粒子の開発
•アルコール還元法による試料作成 Pt源: Pt(acac)2 Ru源: Ru(acac)3 坦体: カーボンナノ粒子(Vulcan XC72R) P源:ホスフィン酸ナトリウム(NaPH2O2) エチレングリコール中、200℃、窒素雰囲気で還流還元 • 触媒活性測定
Lnear Sweep Voltanmetry
試 料 投入モル比 (Pt : Ru : P ) 還流時間 (hours) A 1.0 : 1.0 : 0.0 4 B 1.0 : 1.0 : 0.2 4 C 1.0 : 1.0 : 1.0 4 D 1.2: 0.8: 1.0 4 E 1.2 : 0.8 : 1.0 1.5 メタノール酸化活性を評価 (15 vol.% メタノール水溶液) 0 10 20 30 40 50 0 0.1 0.2 0.3 0.4 Sample E Sample D Sample C Sample B Sample A 市販品 A no de curre nt [m A] Potential [V vs Ag/AgCl] A → E 約6倍 N2 gas 298 K Potentiostat Range: 0-0.4 V 活性: A < B < C < D < E
PtRu二元系ナノ粒子の合成と触媒活性
10 nm 10 nm 10 nm 10 nm 10 nm (A) 各試料のTEM写真 平均粒径 4 nm 粒度分布 2-10 nm 平均粒径 2 nm 狭い粒度分布 (B) (C) (E) (D) • 直径2 nmの均一なナノ粒子の合成に成功 • B-Eの粒径に差異は見られない 活性: A < B < C < D < E
TEM観察結果
Intensi ty [arb. uni t] A B C D E Pt metal 20 30 40 50 60 70 80 90 Ru metal
Diffraction angle 2 [degree]
各試料のXRDパターン • A-Eすべての試料において Pt metalの回折ピークのみ観測 • Ru由来の回折ピークは観測されない 活性: A < B < C < D < E
XRD分析結果
標準試料のスペクトルを線形結合し 試料のスペクトルを再現 各触媒中のPtとRuの 原子価を見積もる 11500 11520 11540 11560 11580 11600 A bsorp ti on co ef fi cien t [arb. un it ] Energy [eV] A B C D Pt metal K 2PtCl4 PtO 2 Pt-LIII edge E 21950 22000 22050 22100 22150 22200 A bsorp ti on co ef fi cien t [arb. un it ] A B C D Ru metal RuCl3 RuO 2 Ru-K edge Energy [eV] E 試料 Pt0 : Pt2+ : Pt4+ Pt平均原子価 Ru0 : Ru3+ : Ru4+ Ru平均原子価 A 0.78 : 0.03 : 0.19 1.1 0.63 : 0.04 : 0.33 1.4 B 0.38 : 0.30 : 0.32 0.82 0.35 : 0.02 : 0.63 2.6 C 0.28 : 0.40 : 0.32 1.9 0.20 : 0.07 : 0.73 3.1 D 0.44 : 0.25 : 0.31 2.1 0.19 : 0.06 : 0.75 3.2 E 0.41 : 0.35 : 0.24 1.7 0.21 : 0.07 : 0.72 3.1 Ruは表面に存在 Ruの原子価が Ptより大きい 活性: A < B < C < D < E
XANES測定結果
フーリエ変換で得られた 動径構造関数 逆フーリエ変換後の(k)k 3 とフィッティング結果 • 動径分布関数の第1~3ピーク の範囲を逆フーリエ変換し Pt、Ru、Oの3シェルで理論EXAFSフィッティング • 最適化したパラメータ : 各シェルの結合距離Rと配位数N, E0補正DE0, デバイワラー因子s2
EXAFS解析 (使用ソフトウェア : Artemis 0.7.015, FEFF 7.02)
4 6 8 10 12 Experimental Calculated EX A FS os cilla ti on k 3 (k ) [arb. u ni t] Pt-L III edge Sample A Wave vector k [Ao-1] 0 1 2 3 4 5 F .T . m agnit ud e [arb. un it ] Distance R [A] Hanning window
function Pt-LIII edge
Sample A
o
表 EXAFSフィッティングにより決定した貴金属間結合パラメータ
試料 Pt-Pt配位 Pt-Ru 配位 Ru-Pt配位 Ru-Ru 配位
R [nm] N R [nm] N R [nm] N R [nm] N A 0.274 +0.002 4.3+0.5 0.273 +0.003 1.7+0.2 0.273 +0.003 1.9+0.5 0.268 +0.001 6.7+0.5 B 0.272 +0.002 1.9+0.5 0.272 +0.003 1.2+0.5 0.271 +0.003 2.1+0.5 0.268 +0.002 2.9+0.5 C 0.273 +0.002 2.0+0.5 0.273 +0.004 0.9+0.5 0.273 +0.003 1.7+0.5 0.268 +0.003 1.5+0.5 D 0.273 +0.001 2.6+0.5 0.273 +0.004 0.7+0.5 0.273 +0.003 1.8+0.5 0.268 +0.003 1.0+0.5 E 0.273 +0.002 2.8+0.5 0.273 +0.003 0.9+0.5 0.273 +0.002 2.2+0.5 0.267 +0.003 1.0+0.5 配位数の違いに注目 各試料の原子間距離は同じ 粒子内部の結晶構造に大きな違いはない
EXAFS解析(2)
両者が一致しない → PtRuナノ粒子は偏りのある原子配置を持つ PtとRuの酸化還元電位 Pt 2+/Pt = 1.18 V Ru3+/Ru = 0.69 V Ptの方が還元されやすい 還元反応の時間差によりコアシェル型構造のナノ粒子が生成 Pt2+ Ru3+ Pt2+ Pt2+ Pt2+ Ru3+ Ru3+ Ru3+ Ru3+ Ru3+ Ru3+ Ru 3+ Pt Pt Pt Pt Pt Pt Pt Pt Ru Ru Ru Ru Pt Ru 粒子がランダム合金構造である場合 PtおよびRu周囲のPtとRuの配位数比は組成比に一致するはず 試料A: 組成比 xPt/xRu = 1.5 NPt-Pt/NPt-Ru = 2.5 NRu-Pt/NRu-Ru = 0.28 配位数比
PtRuナノ粒子の内部構造
直径2 nm、fcc構造のPtナノ粒子モデル • 球内の原子数249個 粒子内部の原子数143個 表面第1層の原子数106個 • 表面がすべてRuと仮定すると Pt : Ru = 57 : 43 どの試料もRuの組成比が43%以下 表面のRu層は1層以下 x y z 1/8粒子構造モデル = PtRuナノ粒子表面にはPtとRuがともに露出している 蛍光X線分析による元素分析結果 試料 A B C D E Pt (%) 60 60 69 78 79 Ru (%) 40 40 31 22 21 (Atmic ratio) 活性: A < B < C < D < E
PtRuコアシェル型粒子の表面構造
Ru近傍におけるPt-Ru結合の割合を示す指標PRuを導入 EXAFS解析で求めた 貴金属間の配位数を用いて、 Ru-Pt Ru Ru-Pt Ru-Ru
N
P
N
N
粒子表面のPtとRuの混合状態が触媒活性に影響する 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 10 20 30 40 50 A B C D E Ru原子近傍 Cu rrent at 0 .4 V [mA /mg] • PRuと触媒活性の間には非常に高い相関関係が認められた PRu Ptと Ruが隣り合って表面に存在する試料ほど触媒活性が大きい PRuが大きいほど PtとRuが隣り合う確率が高いナノ粒子の表面構造と触媒活性
PtRu二元系ナノ粒子触媒を合成し、
XAFS法を用いた構造解析結果から、
粒子の内部構造と触媒活性の関係を評価を試みた
アルコール還元法で作成したPtRu二元系ナノ粒子では 粒子表面にRuが偏在し、触媒活性はその表面組成に依存する 表面組成がランダム合金構造に近いほど触媒活性が向上する ことから、ナノ粒子においてもバイファンクショナル機構が成立することが示唆 された 粒子表面の構造情報はRu-K端EXAFS解析から選択的に得られ、 Pt-Ru結合の割合から表面組成を推測可能である ナノ粒子表面がランダム合金構造である粒子が有効PtRu二元系ナノ粒子構造解析のまとめ
PF 硬X線XAFSビームライン
PF 硬X線XAFSビームライン
・QXAFS(NW2A以外)、DXAFS(NW2A)対応
Q:~10秒、D:~2ミリ秒 or ~100ピコ秒・19素子Ge-SSD装備(BL9A、12C、NW10A)
デジタルシステムの導入により扱いが簡単になりました・一次元、二次元検出器によるイメージングXAFS
PDA、CCDによる測定システム・100試料自動試料交換装置
BL-12Cにこの春導入・新BL15Aの建設
最小9×16μ mのビームサイズ、1011オーダーの光子束 QXAFS対応で2.1~15keVが利用可能 2014年の春 完成予定 (現在調整中)AuPd複合ナノ粒子の解析
まずはXANES
その後FEFFでEXAFSシミュレート
本番のEXAFS解析
配布データ
AuFoilSP8.dat、Au2O3.dat:標準試料
Au100.dat、 Au200.dat、 Au300.dat、 Au400.dat、 :実試料データ(数
字は熱処理温度)
XANES解析
データオープン
読み込みプラグイン“PFBL12C”をONに
読み込みダイアログはデフォルトのままでOK
規格化処理
AuFoil.datをみてみる
Eプロットで範囲を-300~+1500にBackground-off, pre&post edge line-on
E0を11910に
K-weightを3に
Normalization rangeを300~1000に
Pre-edge lineを-250~-70に
Normalizedプロットで問題なければ他のデータにコピー
プロット範囲を-50~+100へ
まずは解析対象元素を“知る”
今回はAuPd複合ナノ粒子のAu側の解析
考えられるシェルは?Au-Au、Au-Pd、Au-O
まずはFEFFでシミュレートしてみる
Au(metal)の結晶構造はFm-3m(225)
最近接距離 0.288 nm、配位数 12AuとPdは区別できるか?
Quick First Shell Theoryで簡易チェック
実データに求められるクオリティ
Kの範囲はどこまで必要か Kの重み付けはいくつにするか
ではEXAFS解析へ
XANES解析のデータをさらに調整
どこまで有効データとするか
実は配布したデータはk=16~17付近にノイズがあるバックグラウンドがうまく引けないとき
Spline rangeを変更してみる(特にエッジ側) Spline clampsを変更してみる k-weightを大きくすると引けなくなるのは高k側のノイズのせいAthenaでフーリエ変換まで
変換範囲はシリーズのデータでそろえること
今回はk:2.4~15.9, r:1.8~3.3としますデータはAthenaプロジェクト形式で保存
パラメータのコピー機能を有効に使う
ArtemisでFEFF計算
Atoms入力パラメータ(金属Au)
S.G.=225, A=4.08, Edge=L3, Au(0, 0, 0)
FEFF入力パラメータ
NLEG=2 (1回散乱)試しにEXAFS関数を計算
Sum機能を使用する Amp=0.9, ss=0.008を指定する 実データ(AuFoil)を読み込んで比べてみようAuFoilのフィット
パス2以降はフィットから除外
何も考えずにこのままフィット実行
Fitting spaceを変えて実行
Kの重み付けを変えて実行
初期値を変えて実行
Amp=0.8, dE=+4.2, dR=-0.03, ss=0.0081 R空間でずれているように見えるがリップルの影響が大きい本番の解析へ
さらにAtoms入力(金属Au)
S.G.=225, A=4.08, Edge=L3, Pd(0, 0, 0)FEFF入力パラメータ
NLEG=2 (1回散乱) Ipot 0のZ=79, element=Au解析用データに差し替え
パスパラメータの設定
N=1 x S02:nau * amp (or npd * amp_1) Amp=0.8=amp_1 nauとnpdを作成、初期値をそれぞれ6に