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民主主義の条件

  

目次

序章

 

  9 本書のポイント   13 本書の構成   18

第Ⅰ部

 

選挙制度

第1章

 

ダメ、ゼッタイ

罪深き中選挙区制     24 「 定 数 」 が ひ と つ 違 う と 別 の 選 挙 制 度 に な る   24  / 定 数 に よ る 選 挙 制 度 の 分 類   26  / 中 選 挙 区 制 が 政 治 腐 敗 と 結 び つ く ワ ケ   28  / 議 員 た ち が 組 織 を 作 り に く い 中 選 挙 区 制   31  / 「 い ち ば ん い い 候 補 」 を 選 べ る か   32  / コ ラ ム : 町 村 議 会 議 員 は な ぜ「 無 所 属 」 ば か り な のか?   35  / 第1章のまとめ   37

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目 次 目 次

第Ⅱ部

 

政党組織

第4章

 

ヒーローなんていらない

政党組織     78 組織としての政党   78  / 個人ではダメな理由   80  / 「松下政経塾」や「維新政治塾」 、政治 塾は組織か   82  / 政党=ブランド価値を共有する組織   84  / 政党ラベルの価値を上げるに は   86  / コラム: 「経験不足の新人」は問題か?   88  / 第4章のまとめ   90

第5章

 

先立つものはカネ

政治資金と政党規制     92 政党は忌むべきものなのか   92  / 日本の政党は資金の受け皿にすぎない   94  / 政党に関す る ル ー ル が 緩 す ぎ る   96  / コ ラ ム : 政 党 の 名 称

ま ぎ ら わ し い「 ラ ベ ル 」  98  / 政 党 運 営にはお金がかかる

政党の財政   100  / コラム:企業献金   102  / 第5章のまとめ   104

第6章

 

ケンカをやめて

政党内デモクラシー     105 政党のリーダーをどう選ぶか   105  / 自民党は総裁をどのように選んできたか   107  / ダメな リ ー ダ ー を ど う や っ て 辞 め さ せ る か   109  / 政 党 リ ー ダ ー の 任 期 に は ど ん な 意 味 が あ る の か   110  / 政党の名前を背負って選挙に立候補できるのは誰か   112  / 予備選挙で候補者を民 主的に選ぶ   114  / コラム:ジェンダー・クォータ   116  / 第6章のまとめ   119

第2章

 

あちらを立てればこちらが立たず

多数制と比例制     39 「 中 選 挙 区 制 」 は 世 界 的 に 珍 し い 制 度   39  / 1 人 を 選 ぶ「 多 数 制 」: 勝 者 総 取 り で 死 票 が 多 い   42  / コラム:フランスの小さな自治体のちょっと変わった多数制選挙   43  / 議席を配 分 す る「 比 例 制 」: 少 数 派 の 意 思 を 取 り こ ぼ し に く い   45  / 比 例 制 な の に タ レ ン ト 候 補?

個 人 に 投 票 す る 非 拘 束 名 簿 式 比 例 制   47  / コ ラ ム : 比 例 獲 得 議 席 数 の 決 ま り 方   50  / 「選び方」が政党のあり方を変える   53  / 第2章のまとめ   55

第3章

 

混ぜるなキケン

!?

混合制     58 制 度 を 組 み 合 わ せ て「 い い と こ 取 り 」 を 狙 う   58  / 「 並 立 制 」: そ れ ぞ れ 独 立 し た 多 数 制 と 比 例 制 の 選 挙 を 同 時 に 行 う   60  / 「 ゾ ン ビ 議 員 」

小 選 挙 区 で 負 け て も 比 例 制 で「 復 活 」 す れ ば よ い   62  / 混 合 制 が 選 挙 を「 汚 染 」 す る   64  / 「 併 用 制 」: ほ と ん ど 比 例 制   66  / 不 思 議 な 混 合 制 の 提 案

幻 の 選 挙 制 度 改 革   69  / コ ラ ム : 参 議 院 も 混 合 制

農 村 を 制 するものが参議院を制する   72  / 第3章のまとめ   74

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目 次 目 次

第Ⅳ部

 

選挙管理

10章

 

審判との戦い?

選挙管理機関     168 「 架 空 転 入 」 で 選 挙 結 果 を 変 え る   168  / コ ラ ム : A K B 総 選 挙   170  / ネ ッ ト 選 挙 は な ぜ 禁 止されてきたか   172  / 選挙運動の規制で現職が有利になる   174  / どうすれば公平な選挙を 実 現 で き る の か

独 立 し た 選 挙 管 理 機 関 の 必 要 性   176  / コ ラ ム : 誰 が 有 権 者 に な る の か   178  / 第 10章のまとめ   181

11章

 

看板に偽りあり

一票の格差と定数不均衡     184 「 一 票 の 格 差 」 と は 何 か   184  / 「 一 票 の 格 差 」 是 正 で 問 題 は 解 決 し な い

真 の 問 題 は 定 数 不 均 衡   186  / 無 視 さ れ る 地 方 選 挙 の 区 割 り

人 口 集 中 地 域 と 過 疎 地 域 の 混 在 に よ る 複 雑 化   190  / 区 割 り の 難 し さ   193  / コ ラ ム : 選 挙 区 割 り と「 一 人 別 枠 方 式 」  195  / 第 11章 の ま とめ   197

12章

 

伝わらなければ意味がない

投票環境の整備     199 投 票 所 が 遠 い と 選 挙 に 行 か な い?

投 票 の コ ス ト   199  / 「 投 票 時 間 の 延 長 」 と「 期 日 前 投 票 の 導 入 」 の 効 果 と は   201  / 候 補 者 の 名 前 を 投 票 用 紙 に 書 く こ と で 失 わ れ る も の   204  /

第Ⅲ部

 

権力分立

第7章

 

つかず離れず

二院制の役割     122 選 挙 制 度 の 組 み 合 わ せ が、 政 党 の あ り 方 を 変 え る   122  / 第 二 院 は な ん の た め に あ る の か   124  / 強 い 日 本 の 参 議 院   126  / 衆 議 院 と 参 議 院 の「 ね じ れ 」 の 構 造   128  / コ ラ ム : 2010年参議院通常選挙   131  / 第7章のまとめ   134

第8章

 

てんでバラバラ

多様な地方政治     136 地 方 で 決 め る こ と、 国 で 決 め る こ と

地 方 の 政 治 と 選 挙   136  / 二 元 代 表 制、 あ る い は 大 統 領 制 の 困 難   138  / 日 本 の「 相 乗 り 」

結 局、 ま と め る の は 国 の 政 権 党 = 自 民 党   140  / 地 方 分 権 の 効 果

都 市 的 な 地 方、 農 村 的 な 地 方   143  / コ ラ ム :「 政 党 」 で は な い 地 方 政 党   146  / 第8章のまとめ   148

第9章

 

時は来た、それだけだ

選挙のタイミング     150 「 い つ 解 散 す る か 」、 決 定 者 が 持 つ 強 大 な 力   150  / 議 会 の 解 散 で 何 が で き る の か

信 任 を 問 う   152  / 同 時 選 挙 の 深 い 意 味   155  / コ ラ ム : イ タ リ ア の 同 日 選 挙   157  / 選 挙 サ イ ク ル の重要性   161  / コラム:副大統領・副知事   163  / 第9章のまとめ   165

(4)

目 次 名 前 を 書 く の を や め る と す れ ば?   207  / コ ラ ム : 有 権 者 の 勘 違 い 投 票?

2 0 1 3 年 神 戸市長選挙の 「 ひさもと 」 票   210  / 第 12章のまとめ   213

選挙制度改革

多数派をどのように作るか   216  / 参議院と地方議会

中選挙区制との決別   218  / 公的な 組織としての政党を確立する   221  / 選挙管理機関の独立性を保障する   223  / 改革を政治家 に委ねてはいけない   225  / まずは地方議会の選挙制度改革に着手せよ   228  / 憲法による政 治制度のデザインへ   230 あとがき     233 引用文献     237

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9

 

 

最近の日本の政治に納得いかない、という人は多いでしょう。いや、納得できると考え ている人なんてほとんどいないと言っていいかもしれません。しかし政治による決定が多 くの人の財産や生活に関係するものであるかぎり、重要なのは、私たちがその決定に納得 した上で、それを受け入れるということです。だとすれば、そもそも納得できる政治とは どのようなものでしょうか。 政治に「納得」するということは、家の近くまで道路が来たとか、年金が増えたとか、 あるいは保育園の費用が無料になったとか、自分にとって有利な決定が行われて、それに 「 満 足 」 す る こ と と は 少 し 違 い ま す。 自 分 に は あ ま り 関 係 な い 決 定 で あ っ た り、 時 に は 不 利 を も た ら す も の で あ っ た り し て も、 最 後 に は そ れ を 受 け 入 れ る こ と が で き る と い う の が 「納得」の意味なのです。

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11 10 序 章 序 章 の人が「納得」できないと感じるプロセスであれば、その前提となるしくみを自分たち自 身で考えて、少しずつでも変えていかないといけません。それが、民主主義を民主主義た らしめる条件になるのです。 本書では、多くの読者にとって記憶に新しいであろう事例を盛り込みながら、現在の日 本政治をとりまくさまざまなしくみを検討して、それが「納得」できる意思決定をもたら しづらいしくみになっていることを示します。その上で、どうやったら納得できるしくみ を作ることができるか考えるための材料を提供することを目指しています。 「 こ れ が 正 解 」 と い う し く み を 提 案 で き れ ば よ い の か も し れ ま せ ん が、 残 念 な が ら 唯 一 の正解はありません。なぜなら、提案できるいくつかの決め方にはそれぞれ特徴があり、 どんな点を重視するかによって望ましいしくみが違ってくるからです。そのため、本書で 示すことができるのは、政治のしくみをデザインするときに考えるべきポイントがどこに あるかを明らかにするところまで、ということになります。 政治って堅苦しいし、自分とは縁遠い。そう思われる方は多いかもしれません。でも、 なぜ現実の政治は多くの人の考えを無視して動いているのだろう、と思うたくさんの方々 に、ぜひ本書を読んでほしいと思っています。政治に「納得」できず、そこで決定された ことなど受け入れたくないと考えても、民主主義のもとでは私たち1人ひとりがさまざま なぜ自分に不利な決定に「納得」できるというのでしょうか。それは、自分が「満足」 できる決定が行われる可能性があったからです。可能性はあり、しかし公平なルールのも と で 議 論 さ れ た 結 果、 自 分 に と っ て 不 利 な 決 定 が 行 わ れ た。 「 納 得 」 に は、 こ の プ ロ セ ス が必要です。これはスポーツと比べて考えてみるとわかりやすいでしょう。公平なルール でゲームを行うという前提があるからこそ、 選手たちは、 彼ら自身「満足」できる結果(= 勝利)でなくてもそれを受け入れることが求められますし、受け入れることができない選 手はゲームに参加する資格を失うこともあります。 とはいえ、スポーツでも、結果に「納得」できないことはあります。審判が対戦相手を えこひいきしたとか、自分たちに不利なかたちでルールが変更されたとか、そういったこ とはオリンピックや世界選手権のような場面でも問題になることがあり、結果を受け入れ られないと訴える人々も出てきます。そして、 これは政治をめぐる問題でも同じことです。 自分たちが何をやっても不利な決定が行われるばかりだとか、公平なプロセスで決定が行 われてないと思えば、政治に対する「納得」が生まれるはずはありません。 ス ポ ー ツ で は、 「 納 得 」 し て 結 果 を 受 け 入 れ る こ と が で き な い と き に、 第 三 者 に 仲 裁 裁 判を申し立てて、そこで判断してもらうということがありますが、民主主義のもとではな かなかそういうことができません。みんなが平等に政治にかかわることが前提になってい るので、特権的にそんな判断を下す権利を持つ機関を認めないからです。そのため、多く

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13 12 序 章 序 章 本書のポイント 本 書 の ポ イ ン ト は、 き、 を考えるところにあります。決定に参加する権利を持つ人々が直接投票を行って、多数決 で 決 め る と い う の が お そ ら く 最 も 単 純 な 考 え 方 で し ょ う。 多 数 決 が 全 て で は あ り ま せ ん が、多くの人々が望む決定を実現に移すというのは奇妙な話ではないですし、多くの人の 要求を吸い上げるのが政治に期待される役割だと考えられます。 現実には、全ての有権者が決定に参加するのは難しいですから、国や地方自治体で意思 決定を行うときには、 代表を選んで議会に参加させ、そこで決めるというしくみ がありま す。私たちの代わりを務める政治家を選んで、彼らに議会の中での多数派を形成させ、決 定を行うしくみです。議会の中での多数派は、多くの有権者の考えを取り入れて、それを 実現に移すことが求められます。 ところが最近では、議会に対する不満が高まっています。理由は、多くの有権者の思い を議会が受け止めていないのではないか、議会で形成された多数派は有権者の多数派とズ レているのではないか、 という不信感にありそうです。 有権者の意思と関係ないところで、 議会が勝手な政治を行い、本来、必要なことが決められていないのではないか、という感 覚です。 す。 れを前提として政治のしくみ、政治制度というものに関わることが求められているからで な決定の最終的な責任を問われることになります。それゆえに私たちにはどうしても、そ また本書は、政治の現場にいる人々、政治家やメディアの関係者をはじめとして官公庁 で働く人々、政治学を学びたいと考えるビジネスパーソンや学生のみなさんのように、政 治のしくみに関心を持ち、そこに何か問題があると考える人が参照できる考え方を示すこ とを目指しています。たとえば今の日本では衆議院・参議院の選挙制度改革が問題になっ て い ま す が、 改 革 を 議 論 す る と き に 参 照 さ れ る 考 え 方 は、 通 常、 「 一 票 の 格 差 」 の 公 平 性 くらいで、それはあくまでもひとつの(しかもおそらくマイナーな)ものでしかありませ ん。 単 に「 一 票 の 格 差 」 の 問 題 を 是 正 し て い け ば、 「 納 得 」 で き る 決 定 が で き る か と い う と、そういうものではないのです。 政治のしくみに関心を持つ人が、自分自身の価値観に照らして望ましいのはどのような しくみかを理解し、相互に議論できるようになる、それは私たちが政治のしくみに関与す るための基礎になるはずです。そして、本書で紹介する政治学の知見が、その助けになる のは間違いありません。

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15 14 序 章 序 章 い代表を選ぶためには、その選び方を絶えず考え続けることが必要なはずです。 そ う い う 見 方 で 政 治 の し く み を 構 成 す る 個 々 の 制 度 を 考 え る と き 、 党」 です。政党は、私たちの代表が作り出す、政治における組織であって、議会で多数派 を作りだすときの基礎になるものです。政治家個人が多数派として決定に合意する前提に は、共通の利益を追求する政党というまとまりが必要なのです。1人ひとりの政治家が、 決定すべき問題ごとに有権者のことを考えて判断するのが重要だとしても、個人でできる ことは限られます。 多数派を作るためには、小さな違いを認め合いながら共通の利益を持 つ仲間を増やしていかなくてはいけない わけで、そのような仲間がある程度持続的にまと まったものが政党であり、政党を基盤に多数派の形成を目指すことが政治家の仕事なので す。小さな違いをめぐって小競り合いすることを政治家に求める人はいないでしょう。 組織としての政党は、 企業とか学校、 公的な機関などと同様に、 実現すべき目的を掲げ、 手続きを経てそれを果たそうとする、という性格を持ちます。何をするにしても個人でで きることは限られますが、多くの人の能力を集め、決められた手続きに基づいて決定を行 う組織を活用すれば、さまざまなことができるようになります。社会のいたるところに存 在している組織が、政治の場にかぎって存在しないということはありません。政治の場で は政党という組織が人々を代表することで、個人では不可能なことを可能にすることがで 多くの有権者の意思をきちんと汲もうとしない政治家は努力が足りない、とか、政治に 無関心な有権者は意識が低い、と責めるのは簡単です。でも、政治家にとって、有権者が 選挙でどういう投票をするかというのは、政治家でない人が想像できないくらい強く意識 されることであり、有権者の意思は確実に政治に影響を与えます。もし政治家が有権者の 多数派の意見を聞いていないとしたら、その意見を自分の選挙にとってたいして重要では ないものととらえているためです。 そこで考えたいのは、今の日本には多くの有権者が考える常識的な要求が、政治の決定 に反映されにくい政治のしくみがあるのではないか、その意思が政治に反映されない結果 として、多くの有権者が政治と関わることを避けるようになるのではないか、ということ です。これが正しいとすれば、政治に関わっても意味がない、政治は私たち有権者のこと を考えない、と諦めてしまう前に、もっと効果的に多くの有権者が考えていること、実現 してほしいことを政治に伝えられるしくみを模索できるのではないでしょうか。 「 一 国 の 政 治 は、 国 民 を 映 し 出 す 鏡 に 過 ぎ な い。 立 派 な 国 民 に は 立 派 な 政 治、 無 知 で 腐 敗した国民には腐り果てた政治しかあり得ない」 (サミュエルズ『自助論』 )という言葉が あります。悪い代表が「腐り果てた政治」をしたとすれば、もちろん、私たちがその程度 の代表しか選び出せなかったということかもしれません。しかし、それだけではなく、代 表の選び方や手続きが悪いという可能性もあるのです。だから、自分たちにとってよりよ

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17 16 序 章 序 章 ち有権者にとって意味あるものにはなかなかなりません。 日本では、政党を自分たちのことしか考えていない腐敗した存在であるとして、どの政 党も支持しない、いわゆる無党派層が増大するなど、政党の機能不全が深刻だと思われて います。しかしそれはどこの国でも同じです。重要なのは、選挙を通じて有権者の意思を 政治に伝えるには、政党の存在が不可欠であり、有権者と政党のつながりがうまく作れて いないなら、それをきちんと構築できるように 政党に進化をうながす ことです。他の多く の国々では、日本と同様の政党不信に悩みながらも、有権者と政党の関係を再構築するよ うな努力が進められています。 有権者の意思を軽視する政党は衰え、有権者の意思を政治に伝えようとする政党が成長 するという当たり前のことが起こらず、有権者のことを考えない政党や政治家が変わらず にその地位を維持できるとすれば、政治に対して「納得」ができないのはやむをえないこ とでしょう。しかし逆に言えば、民主主義社会において「納得」できる意思決定を行って いくためには、有権者の側が政党を重視し、評価を与えていくしかないのです。 きるはずです。 残念ながら日本では、他の先進国と比べても、政党という組織が十分に活用されてきた とは言えません。もし日本の政党が組織と呼べるものであるならば、リーダーが思いつき で発言をしたところでたいした意味はないはずです。企業などに属している人はイメージ しやすいと思いますが、組織たるものが一回決めたことを変えるには面倒な手続きが必要 で、これまでの決定をひっくり返すことは、そう簡単にはできないものです。リーダーが 方針の変更を発表するまでには面倒な手続きや根回しがあるもので、そもそも軽々しく思 いつきを語るような人がリーダーになることはなかなかないでしょう。ところが、話が政 党となると、リーダーの思いつきの発言が組織的な決定であるかのように扱われ、また、 政治家は必ずしも所属する政党の決定に従おうとせず、個人として有権者にアピールする ことを優先しがちです。本書でたびたび触れるように、2009年に政権をとった民主党 は、この点で多くの問題を抱えていました。 これは、裏返して言えば、日本にはまだまだ政党を活用して政治を改善する余地が残さ れているということです。そんなことは自分に関係ないよ、自分だけではどうにもならな いよ、と思われるかもしれません。実際、個人にできることが限られているのはその通り ですが、私たちの意思を政治に反映させるためのしくみが必要なら、多くの人がそのしく みをつくろうとするしかないわけです。そして、そのようなしくみなしには、政治は私た

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19 18 序 章 序 章 れた目的のもとに色々な仕事をメンバーに割り振って、分担して仕事をすることで、1人 ではできないような業績を上げることができるからです。しかし強い組織となった政党が 暴走すれば、私たちの生活に悪い影響を及ぼす可能性もあります。そのような可能性に備 えて、政党が暴走できないようなルールを設定し、政党を監視するメカニズムを考えてい く必要があるのです。 第Ⅲ部では、ひとつの国の中で複数の選挙が行われるとき、政党がどのような影響を受 けるかを考えます。選ばれた代表に権力を与える選挙が複数、しかも異なる選挙制度や異 なるタイミングで行われると、それぞれの権力が個々に有権者のことを考えて行動するの で、多数派としてまとめるのが難しくなります。第Ⅰ部の議論では、政党がひとつの選挙 制度に対応して作られるものであるかのように説明していますが、日本には衆議院総選挙 のほか、参議院通常選挙やたくさんの地方選挙があります。ひとつしか選挙がなければ、 政党としてのまとまりを考えやすいですが、日本のように選挙制度の異なる複数の選挙が バ ラ バ ラ の タ イ ミ ン グ で 行 わ れ る 場 合、 政 党 と し て の ま と ま り を 維 持 す る こ と が 難 し く なってしまうのです。そのために、複数の選挙がある場合には、どのように政党のまとま りを作るかを特別に考えなくてはいけません。なお、第Ⅲ部は多少複雑な議論が展開され ていますので、難しいと感じられた読者は読み飛ばして第Ⅳ部に進むことも可能です。 第Ⅳ部では、選挙管理を扱います。選挙管理とは、適切な手続きで選挙を実施すること 本書の構成 本書は、4部構成で、それぞれが3つの章からなっています。各章には、章ごとのテー マに関連するコラムを配置していますが、それぞれ独立したものとなっているので、読み 飛ばして進むこともできます。 まず第Ⅰ部では、選挙制度と政党の関係を扱います。選挙制度とは、有権者が政治家を 選ぶしくみのことです。どんな選挙制度であれ選ばれる政治家は同じだろうと思いきや、 選挙制度が違えば、選挙に立候補する政治家の行動に違いが出てきます。第Ⅰ部では、日 本で長らく採用されてきた「中選挙区制」と呼ばれる選挙制度が、政党という組織、まと まりを作りにくい制度となっていることを説明した上で、多くの国で採用されている、政 党を前提とした選挙制度について説明します。そこで強調されるのは、多数派の支持を集 めて決定を行うためには、政党というまとまりを中心に考えなくてはならないということ です。 第Ⅱ部では、政党を組織としてとらえることにどのような意味があるのか、そして政党 という組織をどのようにコントロールするべきかについて議論します。政党が、政治家の みならず有権者を含めた組織であるならば、多くのメンバーが一定の目的のもとに協業す ることで、大きな成果を挙げる可能性が期待できます。それは、組織のリーダーが与えら

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21 20 序 章 序 章 作り出す個々の制度を考え直すこともできるはずです。そこで 重要なのは、私たちとその 代表が、細かいところで意見は違っていても、大きく多数としてまとまることができるし くみを意識的に作り出すこと だと考えています。 本書で議論したいのは、 具体的な道具、民主主義をよりよいものにするための道具とし ての政治制度 です。本書では基本的な政治制度しかご紹介できませんし、その内容はあく までもひとつの見方に過ぎません。読者のみなさんには、本書の内容を踏まえて、より民 主主義的な政治制度はどのようなものだろうか、という問題についてぜひ思いを巡らせて いただきたいと思います。 が 選挙管理の観点からは、不正を防止する選挙のルールを作り出すことだけでなく、有権者 の点はまさに、スポーツにおいて審判が公平な判定をしているのと同じようなものです。 を指し、それがなされるからこそ、選挙の結果は正しいものとして受け入れられます。こ 公 平 に 選 挙 に 参 加 で き る よ う 環 境 を 整 え る こ と ま で 考 え な く て は い け ま せ ん。 日 本 で は、投票所の設営や開票作業といった事務的な手続きが注目されますが、選挙はそれ自体 が政治的な営みであり、ともすると現職が有利になるようにルールが設定されてしまいま す。選挙のルールが結果にも影響することを理解し、どのようにルールを決めればよいか を考えなくてはいけないのです。 本書の最後で考えるのは、選挙制度改革についてです。そこまでの議論を踏まえて、現 在の日本の制度から改革すべき点を抽出し、必要な改革について具体的に説明していきま す。さらに、単純に改革の内容だけではなく、改革の進め方についての議論にも触れたい と思います。 最近の日本では議会や政党に対する失望があふれているように思われます。代表が頼り にならないので、デモや直接投票といった直接的な行動を起こすべきだという主張が強く なっているように思われます。確かにそのような直接行動も重要ですが、民主主義をより ましなものにするためには、少しでもよい代表を選ぶことができるよう、政治のしくみを

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