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Vol. 141, No. 2 YAKUGAKU ZASSHI 141, (2021) 255 Regular Article 高齢者に対するリナクロチドの有効性と安全性の検討 石郷友之, 下坪達人, 田遼, 中野敬太, 藤居賢, 北川学, 木明智子, 中田浩雅, 福土将秀 E ca

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札幌医科大学附属病院薬剤部 e-mail: ishigo@sapmed.ac.jp

2021 The Pharmaceutical Society of Japan ―Regular Article―

高齢者に対するリナクロチドの有効性と安全性の検討

石郷友之,下坪達人,田 遼,中野敬太,藤居 賢,

北川 学,木明智子,中田浩雅,福土将秀

E‹cacy and Safety of Linaclotide in Elderly Patients

Tomoyuki Ishigo,Tatsuto Shimotsubo, Ryo Takada, Keita Nakano, Satoshi Fujii, Manabu Kitagawa, Tomoko Kimyo, Hiromasa Nakata, and Masahide Fukudo

Department of Pharmacy, Sapporo Medical University Hospital; South-1, West-16, Chuo-ku, Sapporo 0608543, Japan.

(Received July 27, 2020; Accepted October 23, 2020)

The e‹cacy and safety of linaclotide in elderly patients are poorly understood. Herein, we aimed to assess the e‹ca-cy and safety of linaclotide in elderly patients in real-world setting. We retrospectively enrolled consecutive patients who started linaclotide therapy at Sapporo Medical University Hospital from October 1, 2017 to December 31, 2019. The e‹cacy and safety of linaclotide were examined in relation to various factors, including age(< 65 or  65 years) and dose (0.25 or 0.5 mg/d). Fifty-two patients were enrolled, 60% of whom were over 65 years old and 40% were female. Thirty-six patients received a linaclotide dose of 0.25 mg/d. The most common side eŠect was diarrhea, but there was no diŠerence in the incidence of diarrhea between the elderly(64.5%) and non-elderly patients (42.9%,p = 0.130). No sig-niˆcant diŠerence was observed with respect to improvement in constipation in the elderly(83.9%) and non-elderly patients (71.4%,p = 0.318). Additionally, the diŠerence in e‹cacy of linaclotide in patients who received a reduced dose(80.6%)vs. those who received the recommended dose (75.0%) was not statistically signiˆcant ( p = 0.719). Mul-tivariate analysis revealed that age, gender, and dose were not associated with diarrhea induced by linaclotide treatment. However, concurrent treatment with constipation-inducing medications[odds ratio (OR) 5.79,p = 0.047] and linaclo-tide monotherapy(OR 11.1,p = 0.040) were both risk factors contributing to diarrhea. Linaclotide is eŠective and safe for use in elderly patients. The incidence of diarrhea may increase when linaclotide is administered alone or concurrently used with medications that cause constipation.

Key words―linaclotide; elderly patient; diarrhea; chronic constipation

緒 言 便秘を有する患者は生活の満足度が低く慢性的な 便秘は QOL を低下させる.1)便秘の改善は QOL の 向上につながるため,2)適切な排便コントロールを 維持することは重要である.わが国における慢性便 秘症の有病率は,2%3)程度と諸外国の 1219%4) 比較すると低い値であるが,厚生労働省の平成 28 年国民生活基礎調査では加齢とともに有病率は増加 し,65 歳以上では 6.5%,80 歳以上では 10%以上 となることが報告されている.5)また,医療者と患 者で便秘の認識が異なることが報告されており,患 者アンケートによる 65 歳以上での便秘の訴えは 50%以上となる.6)便秘への介入方法には,食事や 運動など日々の生活環境の改善に加え薬物療法があ り,これまで刺激性下剤やマグネシウム製剤などの 浸透圧性下剤が主に用いられてきた.しかし,刺激 性下剤については長期使用による耐性化の問題があ り,マグネシウム製剤については腎機能低下例にお ける高マグネシウム血症の問題があった.7)2012 年 には,新規作用機序の粘膜上皮機能変容薬クロライ ドチャネル・アクチベーターであるルビプロストン が使用可能となり,これまでの薬物療法に加え慢性 便秘症の治療選択の一つとして有効性が示されてい る.8)その一方で腸管内容物の増加や二次性の腸管 拡張による嘔気の有害事象が一定の割合で報告され ている.911)ルビプロストンと同様,粘膜上皮機能 変容薬に分類されるリナクロチドが,2017 年より わが国で使用可能となった.リナクロチドは,腸管

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管腔表面のグアニル酸シクラーゼ C 受容体の活性 化により細胞内の cGMP 濃度を増加させ12)腸管分 泌及び腸管輸送能を亢進させることで便秘を改善 し,嘔気の有害事象も少ないことが報告されてい る.1316)しかし,わが国における臨床試験では高齢 者が 3%程度しか含まれておらず,13,14)慢性的な便 秘の割合が増加する高齢者に対しての有効性や安全 性については十分な検討はなされていない.また, リナクロチドの主な有害事象には下痢が挙げられる ため,1316)電解質の変化や脱水などに対する忍容性 の低い高齢者では初回から減量して投与されること がある.そこで,リナクロチドの高齢者に対する有 効性及び安全性を明らかにすることを目的として調 査した. 方 法 1. 調査期間及び調査対象 調査期間は 2017 年 10 月 1 日から 2019 年 12 月 31 日までとした. Rome IV基準17)では,過敏性腸症候群(irritable

bowel syndrome; IBS)を慢性便秘症から除外して いるが,実際の日常診療において,両者を明瞭に分 別することは難しい.そのため,慢性便秘症ガイド ライン 2017 では,機能性便秘と器質性排便障害を 区別せず,これらを包括して慢性便秘症として取り 扱っている.よって,本研究における研究対象は, 札幌医科大学附属病院に入院中の症例で IBS の有 無に関係なく「本来体外に排出すべき糞便を十分量 かつ快適に排出できない状態」が続くために日常生 活に支障が出ており,新規にリナクロチドが開始と なった症例とした. 2. 調 査 項 目 調 査 項 目 は , 年 齢 , 性 別 ,

body mass index(BMI),血清クレアチニン(serum

creatinine; Scr),Scr から算出した推算糸球体濾過 量(creatinine-based estimated glomerular ˆltration

rate; eGFRcre),リナクロチドの用量,リナクロチ ド開始前後の使用便秘治療薬,便秘のリスクとなる 併用薬(抗コリン薬,オピオイド,カリウム吸着薬) の有無,便性状,有効性,有害事象の発現の有無と した.併存疾患については,糖尿病が便秘のリスク 因子となることが報告されており,18)糖尿病の有無 を調査した.便性状については,ブリストル便性状 スケール(bristol stool form scale; BSFS)を用いて 評価した.19) BSFS: タ イ プ 1 , 硬 く て コ ロ コ ロ の 兔 糞 状 の (排便困難な)便.タイプ 2,ソーセージ状である がでこぼこした(塊状の)便.タイプ 3,表面にひ び割れのあるソーセージ状の便.タイプ 4,表面が 滑らかで柔らかいソーセージ状,あるいは蛇のよう なとぐろを巻く便.タイプ 5,はっきりとした断面 のある柔らかい半固形の(容易に排便できる)便. タイプ 6,端がほぐれて,ふにゃふにゃの不定形の 小片便,泥状の便.タイプ 7,水様で,固形物を含 ま な い 液 状 の 便 . eGFRcre は 以 下 の 日 本 人 向 け GFR 推算式 Eq.(1)にて算出した. eGFRcre(mL/ min / 1.73 m2) = 194 × Scr-1.094× age-0.287(× 0.739 if female) (1) 有効性の評価については,毎週の自発排便の頻度 (spontaneous bowel movement; SBM)が 3 回以上 あり,かつ便性状の改善(BSFS: 35)が得られた 場合を有効とした.また,有害事象については,電 子カルテの記載を基に評価した.有害事象のうち下 痢については,カルテの記載に加え BSFS が 6,7 の場合も含めた.有効性・安全性の評価期間は,入 院期間中としリナクロチド開始後最大 4 週間フォ ローした. 3. 統計学的解析 年齢や BMI などの連続変 数 の 検 定 は Student's t-test を 用 い , 性 別 や 合 併 症,併用薬,有効性や安全性などの名義尺度の比較 には Fisher's exact test を用いた.なお,安全性に ついては,下痢の発生頻度を評価した.年齢は 65 歳以上と 65 歳未満の 2 群に分類し解析した.投与 量は個々の患者の状態に合わせて治療の経過で様々 に変更される可能性があり,すべてを分類すること は困難である.よって,投与量による有効性・安全 性の評価については,開始時の用量で 0.25 mg/d (減量用量群),0.5 mg/d(通常用量群)の 2 群に分 け解析した.多変量解析については,リナクロチド による効果の有無を目的変数とし,第一に説明変数 を年齢,性別,リナクロチドの用量の 3 因子とした 多重ロジスティック回帰分析を行った(Model 1). さらに,3 因子の説明変数に糖尿病の有無,リナク ロチドの使用方法(単剤使用,他剤への追加,他剤 からの変更),便秘のリスクとなる併用薬の有無の 因子を追加した解析を行った(Model 2).また, 下痢の有害事象の発現についても同様に年齢,性 別,リナクロチドの用量による多重ロジスティック

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回帰分析を行った(Model 3).さらに,糖尿病の 有無,リナクロチドの使用方法(単剤使用,他剤へ の追加,他剤からの変更),便秘のリスクとなる併 用薬の有無の因子を追加した解析を行った(Model 4).統計解析には EZR ver 1.41, Excel 2013 を用い p 値 0.05 未満を有意とした. 4. 倫理的事項 本研究は,「人を対象とする 医学系研究に関する倫理指針」を遵守し,札幌医科 大学附属病院臨床研究審査委員会の承認を得て実施 した(承認番号 322-1006). 結 果 1. 患者背景 期間中にリナクロチドが新規に 開始された症例は 52 例,年齢 64.8 ± 14.9 歳,65 歳以上 31 例(59.6%),男性 31 例(59.6%),女性 21 例(40.4%),BMI 21.7 ± 4.3 kg/m2であった. 0.25 mg/d の減量用量例は 36 例(69.2%)であり, 0.5 mg/d の通常用量例は 16 例(30.8%)であった. リナクロチド開始時の eGFRcre は 58.4 ± 25.0 mL/ min / 1.73 m2で あ っ た . 糖 尿 病 合 併 症 例 は 13 例 (25.0%),抗コリン薬使用例は 21 例(40.4%),オ ピオイド使用例は 17 例(32.7%),カリウム吸着薬 使用例は 2 例(3.8%)であった.リナクロチド開 始前にルビプロストンを使用していた症例は 13 例 (25.0%),そのうち切り替え症例は 9 例(17.3%) であった.リナクロチド開始前に他剤を使用してい なかった症例は 14 例(26.9%),他剤へのリナクロ チド追加が 22 例(42.3%),他剤からの変更が 16 例(30.8%)であった(Table 1).また,期間中に 0.25 mg/d から 0.5 mg/d に増量された症例は 4 例 であり,そのうち 1 例は増量後に排便の改善を認め た.一方,0.5 mg/d から 0.25 mg/d に減量された 症例はみられなかった. リナクロチド開始後,週 3 回以上の排便は 86.5% (45/52 例)に認められ,BSFS の改善と合わせて評 価した有効率は 78.8%(41/52 例)であった.有害 事象は下痢が 29/52 例(55.8%)に認められ,その うち 8 例が中止又は他剤に変更された.下痢以外の 有害事象はみられなかった. 1-1. 高齢者と非高齢者における患者背景の比較 65 歳未満(男性:38.1%,女性:61.9%)では女 性の割合が高いのに対し 65 歳以上(男性:74.2%, 女性:25.8%)では有意に男性の割合が高かった ( p = 0.020).身長や体重,BMI,糖尿病の合併率 や便秘に関連する併用薬については年齢による差は 認められなかった.0.25 mg/d の減量用量例は,65 歳未満では 52.4%(11/21 例)であったのに対し, 65 歳以上では 80.6%(25/31)と高齢者で有意に減 量用量されていた( p = 0.038).リナクロチド開始 前の下剤については,ラクツロースやソルビトール の使用率が 65 歳未満で有意に高かったが( p = 0.008),他剤の使用率に差は認められなかった.リ ナクロチド開始後の下剤についても,ラクツロース やソルビトールの使用率は 65 歳未満で有意に高 かったが( p = 0.022),他剤の使用率には差は認め られなかった(Table 1). 2. 年齢別での有効率・有害事象発現率の比較 65 歳未満で効果が認められた症例は 15/21 例 (71.4%)であり,65 歳以上では 26/31 例(83.9%) に効果が認められ,有効率に関しては年齢による有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た [ p = 0.318: Fig. 1 (A)].有害事象については,65 歳未満では 9/21 例(42.9%)に下痢が認められた.また,65 歳以 上では 20/31 例(64.5%)に下痢が認められ,頻度 は 65 歳未満で少ないものの統計学的な差は認めら れなかった[p = 0.160: Fig. 1(B)].下痢によりリ ナクロチドが中止又は他剤に変更されたのは 8 例で あったが,65 歳未満では 2/21 例(9.5%),65 歳以 上では 6/31 例(19.4%)と頻度は 65 歳以上で多い ものの有意な差は認められなかった(p = 0.449). 3. 用量別での有効率・有害事象発現率の比較 リナクロチドの用量が 0.25 mg/d の減量用量群で 効果が認められたのは 29/36 例(80.6%)であり, 0.5 mg/d の通常用量群では 12/16 例(75.0%)に 効果が認められ,リナクロチドの用量による有効率 の差は認められなかった[p = 0.719: Fig. 2(A)]. また,有害事象の頻度については,減量用量群では 19/36 例(52.8%)に下痢が認められ,通常用量群 では 10/16 例(62.5%)に認められ,有意な差は認 められなかった[p = 0.560: Fig. 2(B)]. 4. 有効性,有害事象の発現に関連する因子の検 討多変量解析 有効性についての検討では, Table 2(Model 1)より 65 歳以上の高齢者におけ る有意な効果増強は認められなかった[odds ratio (OR) 1.68, 95% conˆdence interval (95% CI): 0.38

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Table 1. Baseline Characteristics

All patients (n = 52) Age < 65 yrs (n = 21) Age  65 yrs (n = 31) p-value Age, years 64.8 ± 14.9 53.1 ± 9.1 76.6 ± 6.2 < 0.001 Male 31(59.6%) 8(38.1%) 23(74.2%) 0.020 Female 21(40.4%) 13(61.9%) 8(25.8%) Height, cm 161.9 ± 7.9 163.0 ± 7.7 161.1 ± 8.1 0.391 Body weight, kg 57.3 ± 14.3 61.5 ± 18.2 54.4 ± 10.3 0.080 BMI, kg/m2 21.7 ± 4.3 22.8 ± 5.4 20.9 ± 3.3 0.120 Dose of linaclotide 0.5 mg/d 16(30.8%) 10(47.6%) 6(19.4%) 0.038 0.25 mg/d 36(69.2%) 11(52.4%) 25(80.6%) Linaclotide monotherapy 14(26.9%) 5(23.8%) 9(29.0%) 0.892 Linaclotide with other laxatives 22(42.3%) 10(47.6%) 12(38.7%)

Switch from other laxatives 16(30.8%) 6(28.5%) 10(32.2%) Complications Diabetes mellitus 13(25.0%) 5(23.8%) 8(25.8%) 1.000 Laboratory data Serum creatinine, mg/dL 1.3 ± 1.1 1.2 ± 1.0 1.3 ± 1.2 0.766 eGFRcre, mL/min/1.73 m2 58.4 ± 25.0 60.0 ± 26.8 57.6 ± 24.1 0.768 Medications Anticholinergics 21(40.4%) 10(47.6%) 11(35.5%) 0.405 Opioids 17(32.7%) 6(28.6%) 11(35.5%) 0.765 Potassium binders 2(3.8%) 1(4.8%) 1(3.2%) 1.000 Use of laxatives

Before the initiation of linaclotide

Stimulant laxatives 37(71.2%) 12(57.1%) 25(80.7%) 0.179 Magnesium oxide 22(42.3%) 11(52.4%) 11(35.5%) 0.304 Lactulose or sorbitol 5(9.6%) 5(23.8%) 0(0%) 0.008 Lubiprostone 13(25.0%) 3(14.3%) 10(32.3%) 0.198 After the initiation of linaclotide

Stimulant laxatives 35(67.3%) 12(57.1%) 23(74.2%) 0.360 Magnesium oxide 14(26.9%) 7(33.4%) 7(22.6%) 0.502 Lactulose or sorbitol 6(11.5%) 5(23.8%) 1(3.2%) 0.022

Lubiprostone 4(7.7%) 1(4.8%) 3(9.7%) 0.639

The data are presented as the mean ± S.D., or the median (interquartile range), or by numbers (with percentages). Values of p < 0.05 were considered to be statistically signiˆcant. Abbreviations: BMI, body mass index; eGFRcre, creatinine-based estimated glomerular ˆltration rate.

減弱もみられなかった(OR 0.91, 95%CI: 0.21 4.03,p =0.903).さらに,糖尿病の有無やリナクロ チドの開始方法,便秘のリスクとなる併用薬の有無 の因子を調整しても 65 歳以上の高齢者や減量用量 による効果の増強や減弱は認められなかった(Ta-ble 2, Model 2). 下痢の発現に関連する因子の解析では,Table 3 (Model 3)より,65 歳以上の高齢者であること (OR 2.30, p = 0.213)や初期用量が 0.5 mg/d であ ること(OR 2.49, p = 0.187)は有意なリスク因子 ではなかった.また,糖尿病の合併やリナクロチド の開始方法,便秘のリスクとなる併用薬の有無を加 えた Model 4 では,高齢者や初回用量は,Model 3 と同様に有意なリスク因子ではなかった(Table 3).一方,他剤からのリナクロチドへの変更と比較 してリナクロチド単独での新規開始は有意に下痢の リスクが高く(OR: 11.10, p = 0.040),便秘のリス ク因子となる併用薬を有することは有意に下痢の発 現を増加させる結果であった(OR: 5.79, p =0.047: Table 3). 考 察 本研究におけるリナクロチドの有効率は 71.4 83.9%であり,これまでの報告の 5086%13,14,20) 概ね同様の結果であった.一方,有害事象について は,海外の報告やわが国の臨床試験における下痢の

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Fig. 1. The Association of Age with the E‹cacy and Safety of Linaclotide

aFisher's exact test.

Fig. 2. The Association of the Dose of Linaclotide with the E‹cacy and Safety

aFisher's exact test.

発現率は 417%程度であるが,1315,2023)本研究での 下痢の発現率は 55.8%とこれまでの報告と比べて 頻度が高い結果であった.これは,これまでの試験 は外来での経過が主であるため,一度下痢を起こし てもその後改善がみられた際には,下痢と評価され ていない可能性がある.一方,本研究では入院中の 症例を対象としており一度でも下痢を経験した症例 では看護師による記録やアセスメントがなされるた め,一過性の下痢やごく軽度なものまで評価してい ることが一部影響したと考えられる.また,これま での研究による下痢での中止は 3%程度13)であった のに対し,本研究での下痢による中止又は他剤への 変更は 15.4%(8/52 例)と頻度が高い傾向を認め ている.これは,入院患者にリナクロチドが使用さ れる場合には,重症の下痢による脱水や電解質異常 のリスクが高い症例が多く,早期に中止が検討され たことが考えられる.排便の改善が得られた割合に ついては,統計学的な差はないものの非高齢者の 71.4%と比較し,高齢者で 83.9%と 10%程度高い 結果であり同等若しくは高齢者でより有効である可

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Table 2. Multivariate Logistic Regression Analysis for Eval-uating the E‹cacy of Linaclotide

Multivariate model 1 OR (95%CI) p value Age;  65 years 1.68(0.387.48) 0.499 Sex; male 1.72(0.417.26) 0.463 Dose of linaclotide; 0.5 mg/d 0.91(0.214.03) 0.903 Multivariate model 2 OR (95%CI) p value Age;  65 years 2.01(0.419.78) 0.387 Sex; male 1.92(0.419.10) 0.409 Dose of linaclotide; 0.5 mg/d 1.05(0.225.02) 0.950 Diabetes mellitus; yes 0.39(0.091.81) 0.230 Medications (opioids,

anti-cholinergics, and potassium binders); yes

0.55(0.093.35) 0.518

Mode of linaclotide administration Combination therapy with other agents (vs. switch from other laxatives)

1.01(0.128.33) 0.995

Linaclotide alone (vs. switch

from other laxatives) 1.41(0.166.25) 0.759

OR: odds ratio, 95%CI: 95% conˆdence interval.

Table 3. Multivariate Logistic Regression Analysis for Eval-uating the Safety of Linaclotide (Incidence of Diarrhea)

Multivariate model 3 OR (95%CI) p value Age;  65 years 2.30(0.628.50) 0.213 Sex; male 1.82(0.536.23) 0.341 Dose of linaclotide; 0.5 mg/d 2.49(0.649.62) 0.187 Multivariate model 4 OR (95%CI) p value Age;  65 years 2.12(0.528.60) 0.295 Sex; male 1.07(0.254.53) 0.925 Dose of linaclotide; 0.5 mg/d 1.99(0.488.23) 0.343 Diabetes mellitus; yes 2.80(0.6412.20) 0.173 Medications (opioids,

anti-cholinergics, and potassium binders); yes

5.79(1.0232.70) 0.047

Mode of linaclotide administration Combination with other agents (vs. switch from other laxatives)

4.76(0.6420.60) 0.128

Linaclotide alone (vs. switch

from other laxatives) 11.10(1.1148.70) 0.040

OR: odds ratio, 95%CI: 95% conˆdence interval.

能性が示唆された.また,主な有害事象である下痢 については,非高齢者と高齢者で発現頻度に統計学 的な差はないものの,非高齢者の 42.9%と比較し 高齢者では 64.5%と 20%程度発現が多く,下痢に よる中止も非高齢者の 10%と比較し高齢者では 19%と頻度が高い結果であり,高齢者での下痢の頻 度増加の可能性もあるため今後更なる検討の余地が ある. 用量別での検討では,有効率は 0.5 mg/d の通常 用量群では 75.0%,0.25 mg/d の減量用量群では 80.6%と同等の値を示した(p = 0.719).また,有 害事象の発現率の検討では,主な有害事象は下痢で あ り, 通 常 用量 群 で は 62.5 % , 減量 用 量群 で は 52.8%と有害事象については減量用量群で 10%程 度低いものの用量による統計学的差異は認められな かった( p = 0.560).よって,リナクロチドの減量 用量は下痢の頻度を低下させないものの,通常用量 と同様の効果が得られることが示唆された.これま でのリナクロチドの用量に関する報告では,わが国 ではリナクロチド 0.5 mg/d の有効性・安全性が示 されているが,海外で有効性が示されている 0.072 mg/d,21)0.145 mg/d, 0.29 mg/d22,23)と比較して高 用量となっている.その要因の 1 つとして,日本人 は白人や黒人などと比較しビフィドバクテリウムの 割合が多いことが報告されおり,24)腸内細菌叢のう ちビフィドバクテリウムがリナクロチドを代謝する ペプチダーゼを産生するため,25)リナクロチドの代 謝が亢進され,より高用量のリナクロチドを必要と することが考えられている.14)そのため,食生活や 併用薬の違いによっては,より少量のリナクロチド で効果が得られる可能性が示唆される. さらに,リナクロチドが開始された症例のうち 65 歳以上の高齢者では,男性の割合が多く,減量 で開始された症例も多かった.このことから年齢や 投与量による有効性,安全性の単変量の比較では交 絡が介在している可能性があり,他の因子を考慮し た多変量での解析を行った.有効性の検討では,年 齢や性別,リナクロチドの投与量に加え,便秘のリ スクとなる糖尿病18)の併存や抗コリン薬やオピオイ ドなどの併用薬の有無,リナクロチドの開始方法 (単剤使用,他剤への追加,他剤からの変更)で調 整したが,加齢による効果の増強や減弱は認められ ず,非高齢者と同様に 65 歳以上の高齢者への有効

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性が示された.また,抗コリン薬やオピオイド,カ リウム吸着薬などの便秘のリスクとなる薬剤の使用 がリナクロチドによる下痢のリスク因子となること が示唆された.便秘のリスクとなる薬剤の使用が下 痢のリスク因子にもなり得る要因として,本研究で は,カリウム吸着薬を使用していたのは 2 例のみで 抗コリン薬が 21 例,オピオイドが 17 例と消化管運 動の低下を引き起こす薬剤の使用が大半であったた め,便秘の原因が便の硬質化ではなく蠕動運動の低 下が主な状態であり,リナクロチドの主作用である 腸管分泌促進12)により腸管内の水分量が増加し下痢 となったことが考えられる.そのため,リナクロチ ド開始前に消化管運動を低下させる薬剤の使用の有 無や腸音などによる蠕動運動の状態の確認を行い, 薬剤使用の妥当性を確認することが重要である.ま た,他剤からリナクロチドに切り替えた場合に比 べ,新規にリナクロチド単剤で開始した場合には下 痢が有意に多いことが示されたが,これは切り替え 例の多くがルビプロストンからの変更であることが 一部影響していると考えられる.つまり,リナクロ チドの作用機序がルビプロストンの作用点であるク ロライドチャネルの上流のグアニル酸シクラーゼ C 受容体の活性化に関与するため,12)ルビプロストン からの変更例ではリナクロチド開始前に腸管内の浸 透圧が既に上昇している状態であり,急な下痢とな らなかったことが示唆される.一方,リナクロチド 単剤使用では,急な腸管内の水分量増加により下痢 の発現頻度が増加した可能性が考えられる.した がって,脱水や電解質異常がリスクとなる症例にお けるリナクロチド単剤での新規開始時には注意が必 要であり,必要に応じて薬剤師が医師や看護師と情 報共有し,薬剤選択や用法用量,有害事象のモニタ リングに係わることが重要であると考えられる. 研究限界 本研究は,単施設での後ろ向き調査 であり,対象も入院中に新規にリナクロチドが開始 となった症例に限定されているため外来で開始され た症例については調査できていない.そのため,患 者背景の偏りが効果や副作用に影響を与えた可能性 があり,本研究結果をそのまま外来の症例に当ては めることはできない.また,調査期間が入院中に限 られていることで,短期間の有効性・安全性につい ては調査できているものの,長期的な有効性・安全 性については評価できていない. 高齢者におけるリナクロチドの効果や有害事象の 評価については,非高齢者と統計学的な差はないも のの有効率については 10%,下痢の発現頻度につ いては 20%程度差があるため,症例数を増やした 際に臨床的に重要な差になる可能性が考えられる. 効果や有害事象については,調査期間中にリナクロ チドの用量が変更された症例や他剤の調整も行われ ており,リナクロチドの用量変更や他剤の作用が一 部影響している可能性が考えられる.便秘のリスク となる併存疾患や併用薬剤を調整して年齢や投与量 の効果や有害事象への影響を調査したが,本研究で 抽出した項目以外にも便秘のリスク因子となるもの が介在している可能性が考えられる.そのため,今 後は症例数を増やした解析や他の影響因子も含めた 多変量での追加解析が必要であると考えられるが, これまで十分には示されていなかった 65 歳以上の 高齢者に対するリナクロチドの有効性や安全性を調 査した研究であり,薬剤選択や有害事象モニタリン グの際の有用な知見となると考えられる. 結 論 65歳以上の高齢者においてもリナクロチドは有 効かつ安全に使用できる可能性が示唆された.一 方,他の便秘治療薬を使用していない患者へのリナ クロチド単剤使用や便秘のリスクとなる薬剤を使用 している症例では下痢の発現頻度が高いことが示さ れた. 利益相反 開示すべき利益相反はない. REFERENCES

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Table 1. Baseline Characteristics
Fig. 1. The Association of Age with the E‹cacy and Safety of Linaclotide
Table 2. Multivariate Logistic Regression Analysis for Eval- Eval-uating the E‹cacy of Linaclotide

参照

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