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目次 1. ガイドラインの目的と活用 ガイドラインの目的 ガイドラインの活用方法 ストックマネジメントに取り組むための技術上の課題 水産基盤施設ストックマネジメントの考え方 基本的な考え方 水産

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水産基盤施設ストックマネジメントのためのガイドライン(案)

平成 24 年 10 月

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目 次 1. ガイドラインの目的と活用 ... 1 1.1 ガイドラインの目的... 1 1.2 ガイドラインの活用方法 ... 3 1.3 ストックマネジメントに取り組むための技術上の課題 ... 4 2. 水産基盤施設ストックマネジメントの考え方 ... 6 2.1 基本的な考え方 ... 6 2.2 水産基盤施設ストックマネジメントの概要 ... 9 3. 水産基盤施設ストックマネジメントの実施手順 ... 12 3.1 機能保全方針の設定... 12 3.2 機能診断 ... 14 3.2.1 簡易調査 ... 15 3.2.2 健全度の評価... 18 3.2.3 詳細調査 ... 21 3.3 機能保全対策の検討... 22 3.3.1 供用期間および機能保全レベルの水準の設定 ... 22 3.3.2 老朽化予測... 23 3.3.3 保全対策の検討 ... 24 3.3.4 施設優先度の設定 ... 28 3.3.5 費用対効果分析 ... 29 3.4 機能保全計画の策定... 30 3.5 日常管理計画に基づく点検の実施 ... 31 3.5.1 基本事項 ... 31 3.5.2 留意事項 ... 32 3.6 施設情報の管理 ... 34 3.6.1 情報の保存・蓄積 ... 34 3.6.2 施設情報の活用 ... 35 4. 各種構造物への詳細調査と老朽化予測の適用 ... 36 4.1 鉄筋コンクリート構造物 ... 37 4.2 無筋コンクリート構造物 ... 42 4.3 鋼構造物 ... 43

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【参考資料】 参考資料- 1 機能診断事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 1 参考資料- 2 詳細調査項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 3 参考資料- 3 非破壊試験手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 6 参考資料- 4 老朽化予測事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 13 参考資料- 5 老朽化と対策工法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 18 参考資料- 6 構造種類別対策工法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 20 参考資料- 7 LCC算定事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 23 参考資料- 8 施設優先度の設定例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 26 参考資料- 9 データベース事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・参 30

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【本ガイドラインの位置付け】

機能保全計画策定の手引き(案)は水産物供給基盤機能保全事業における機能保全計画の策定 にあたっての記載事項の解説版であるのに対し、本ガイドラインは機能保全計画策定の前提とな る既存施設の適切な機能維持のための管理手法であるストックマネジメントの実践にあたっての 基本的考え方や検討手順、検討内容、施設情報の管理のあり方等を包括的に取りまとめたもので ある。 本ガイドラインが、ストックマネジメントによる既存施設の適切な機能維持を計画的に実践し ていくための一助となることを期待するものである。

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【用語の定義】

本ガイドラインでは、次のとおり用語を定義する。 ・ 保全:施設の機能の維持あるいは回復を行う行為。 ・ ライフサイクルコスト(LCC):施設の企画設計段階、建設段階、管理運用段階、 および廃棄処分段階における施設の供用期間に生じる総費用。 ・ ストックマネジメント:既存施設の有効利用と更新コストの縮減対策の推進を図るため に、既存施設を対象としたLCCの縮減や対策コストの平準化を目的とした管理手法。 ・ 老朽化:経年的に構造物、部材、材料の機能が低下すること。 ・ 補修:老朽化により性能が低下した部材或いは構造物の力学的性能や耐久性を当初の水 準まで回復させる行為。 ・ 更新:施設を全面的に造り替える工事。 ・ アセットマネジメント:国民の共有財産である社会資本を国民の利益向上のために、長 期的視点に立って、効率的、効果的に管理・運営する体系化された実践活動。工学、 経済学、経営学などの分野における知見を総合的に用いながら、継続して(ねばりづ よく)行うものである※1 ・ ライフサイクルマネジメント:既存施設のほか、新規施設を含むLCCの縮減や対策コ ストの平準化を目的とした管理手法。 ・ 事後保全:施設に損傷が生じる等、老朽化が顕在化した状態になった後に対策を講 じる。 ・ 予防保全:施設の老朽化が顕在化する前に保全対策を実施し、施設が保有している機能 の低下を極力抑える。 ・ PDCAサイクル:典型的なマネジメントサイクルの 1 つで、計画(plan)、実行(do)、 評価(check)、改善(action)のプロセスを順に実施する。これらプロセスを繰り返 すことによって、品質の維持・向上等を推進するマネジメント手法。 ・ 機能診断:簡易調査や詳細調査による老朽化調査により、老朽化度および健全度、老朽 化要因の特定、保全対策の必要性について検討すること。 ・ 老朽化度:部材の老朽化状態を表す指標。本ガイドラインでは、a,b,c,d の 4 段階で評 価することを基本とする。 ・ 安全性に及ぼす影響度:部材が施設の安全性能に対して及ぼす影響度合を表す指標。本 ガイドラインでは、Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの 3 段階で評価することを基本とする。 ・ 健全度:施設の総合的な老朽化状態を表す指標。本ガイドラインでは、施設ごとに A,B,C,D の 4 段階で評価することを基本とする。 ・ 簡易調査(簡易項目):目視により変状の有無を確認する調査。 ・ 簡易調査(重点項目):目視または簡易値計測により変状の規模を確認する調査。 ・ 詳細調査:簡易調査及び重点調査で老朽化状況が判定できない場合、または老朽化の要 因を特定するために実施する調査。 ・ 機能保全レベル:対象とする施設の機能保全に対する管理方針(機能保全の水準)を明 示したもの。

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※1:土木学会編:アセットマネジメント導入への挑戦,技報堂出版,2005. ・ 事前対応型:施設の機能保全レベルを要求性能限界よりも高く設定し、設計段階での高 水準な保全対策により性能低下を防止し、基本的には供用期間内に追加的な保全対策 は行わずに要求性能を維持すること。 ・ 予防保全型:機能保全レベルを要求性能限界よりも高く設定し、老朽化の程度が軽微な 段階で小規模な保全対策を供用期間中こまめに実施することにより、性能低下を予防 し、要求性能を維持すること。 ・ 事後保全型:機能保全レベルを要求性能限界程度に下げて設定し、ある程度の老朽化を 許容し、大規模な保全対策を供用期間内に 2~3 回程度実施することにより、要求性能 を維持すること。 ・ 観察保全型:機能保全レベルを使用限界程度、または安全限界程度に下げて設定し、そ れらの限界に達する前に保全対策を実施し、所定の性能を維持すること。 ・ 要求性能限界:供用期間中に対象施設に要求している性能の下限値を示す。 ・ 使用限界:対象施設が使用できなくなる程度の下限値を示す。 ・ 安全限界:対象施設が安全でなくなる程度の下限値を示す。 ・ 老朽化予測:施設が機能保全レベルを下回らないよう対策の実施時期を適切に設定する ため、老朽化状態の進行予測を行うもの。

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1. ガイドラインの目的と活用

1.1 ガイドラインの目的 「水産基盤施設ストックのためのマネジメントガイドライン(案)」(以下、「ガイドライン」 と言う。)は、既存の水産基盤施設の適切な機能保全を通じて、施設の長寿命化や更新コスト の縮減を図るため、既存施設に対する管理・運営の最適化手法であるストックマネジメント を導入・推進することを目的としている。 【解説】 1.社会背景 我が国における水産業の基盤である漁港施設は、これまでの着実な整備によって、総額 10 兆円を上回る規模に達している。これらの既存ストックは、高度経済成長期に建設された施 設が多く、建設後の時間経過に伴って、老朽化が進行し、改良・更新すべき時期を迎えた施 設が増加しており、現状予算の3分の1程度は維持・更新コストに充てられている状況であ る。このような傾向は、今後ますます加速することが予想される。また、今般の厳しい財政 状況の中で、漁港施設が水産基盤施設として適切な機能を発揮していくためには、効果的か つ効率的な維持管理により施設の長寿命化や更新コストの縮減が強く求められる。 2.ストックマネジメントの導入 社会資本の機能保全を効果的かつ効率的に実施していくために、既存施設の管理・運営の 最適化手法である「ストックマネジメント」の導入が進められている。ストックマネジメン トにおいては、統一的な管理方針に基づく機能保全計画により、計画的な保全対策を行う必 要がある1-1) 既存の水産基盤施設の機能保全にあたりストックマネジメントの導入を図るものである。 3.ガイドラインの目的 本ガイドラインは、既存の水産基盤施設の機能保全に対するストックマネジメントの導入 にあたっての基本的考え方や検討の手順および内容、施設情報の管理のあり方等の基本的事 項をとりまとめたものである。 このガイドラインにより、既存施設のストックマネジメントの基本的な枠組みを共通化し、 その実践上にあたっての技術水準の確保や各施設管理者のストックマネジメントに対する技 術向上に資することを目的とする。

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2 【参考】漁港施設の更新需要予測 我が国の水産基盤は 1960 年代以降,特に高度経済成長期に整備された施設が多く、建設 時の材料の経年変化による劣化や波浪等の外力による変状発生・疲労蓄積など老朽化進行が 進んでおり、機能性・利用性を維持するための施設の維持・更新が喫緊の課題となっている。 この様な状況のもと、漁港施設を管理する地方公共団体は、厳しい財政状況の中で漁港施 設を効率的に老朽化診断し、適切に機能向上や維持管理を進めていくことが求められてい る。また、今後数年のうちに新規整備予算と維持保全予算が逆転することが考えられる1-1) 漁港施設の更新需要予測 【参考】ストックマネジメントとアセットマネジメント・ライフサイクルマネジメント 多くの社会資本で効果的かつ効率的な維持管理による施設の長寿命化や補修・更新コスト の縮減が強く求められる状況は共通しており、これらの課題解決策として資産管理の考え方 を用いたアセットマネジメント(Asset Management)が注目されている。アセットマネジ メントは、一般的には金融資産や不動産などを管理・運用することを指すが、近年では公共 事業により造成された施設について、効率的な維持管理や補修などをどのように効率的に行 うかといった技術体型や管理手法の総称としても用いられるようになっている1-2),1-3) 一方、港湾施設や農業施設等では施設管理に主眼をおき、既存施設や新規施設の機能の維 持とLCCの低減を目指した「ライフサイクルマネジメント」、あるいは既存施設に対象を 限定した「ストックマネジメント」としてその適用を図っている1-4) 水産基盤施設においても「既存ストックの有効利用と更新コストの縮減対策の推進」を図 ることを目的として、既存ストックを対象としたストックマネジメントが採用されている 1-6)

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4 1.3 ストックマネジメントに取り組むための技術上の課題 ストックマネジメントに取り組むためには、様々な技術上の課題を解決する必要がある。 現状ではストックマネジメントに必要な技術が十分に確立されているとは言えず、今後の実 践と調査データの蓄積、分析を通じ、ストックマネジメントに関する技術の向上を図ってい く必要がある。 【解説】 1.水産基盤施設の維持管理をとりまく背景 これまでの水産基盤施設の維持管理は、主要構造形式が無筋コンクリートであることや新 規・改良による整備が主であったため、問題が顕在化してから対策を講じる事後保全的な考 え方が浸透し、機能診断に基づく老朽化予測により施設の老朽化が顕在化する前に保全対策 を施すといった予防保全的な対策が十分には取られてこなかった。また、沿岸域に設置され る水産基盤施設は、施設数量が多く、多様な構造形式である一方、特に漁港施設にあっては 管理者の大部分が市町村管理であり、専門的知識を有する技術者を確保し難い状況にある。 このことから、水産基盤施設の維持管理における技術体系を確立していく必要がある。ま た、水産基盤施設に求められる機能は多様化している。漁船の係留や水揚げ等の漁業活動の 根拠基地としての機能以外にも、地域住民の生活基盤、消費者ニーズに対応した水産物の高 度衛生管理、防波堤等を利用した藻場造成など環境調和、海洋性レクリエーションなど交流 拠点、災害時における防災拠点といった多様な機能が具備しており、各施設の特徴に応じて、 機能を適切に維持していくことが求められている。 2.ストックマネジメントにおける技術上の課題と本ガイドラインにおける対応 既存の水産基盤施設に対するストックマネジメントに関する主な技術上の課題として、図 -1.2 に示す課題が挙げられる。同図には本ガイドラインでの対応と将来的課題を合わせて示 している。同図に示すとおり、諸課題に対応するよう本ガイドラインをとりまとめているが、 将来的課題として今後も取り組んでいく必要がある事項もある。 既存の水産基盤施設に対するストックマネジメントにあたっては、本ガイドラインを基本 とするが、各施設の構造や環境・立地条件等に応じ、適切に対応していく必要がある。また、 各施設管理者は調査データの継続的な蓄積・分析を通じて、ストックマネジメントの効率化 や技術向上に努めていく必要がある1-1)

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5 ・予防保全による対策の考え方が不明確で、 供用期間中の長 期的な機能保全対策のシナリオ設定が難しい ・対象施設の保全対策(特に現段階での対策不要施設)の検 討が徹底されず、LCCの積上げが不十分となる恐れがある ・水産基盤施設の主要構造形式であるコンクリ ート構造物( 特に無筋コンクリート)に対する老朽化予測手法が十分に 確立されておらず、将来的な性能低下やそれに伴う適切 な保全対策時期の設定が難しい ・更新時期を迎える施設の増大に伴い、保全対策の実施時 期が集中した場合における対策コス トの平準化方法が確立 されていない 計画策定における課題 本ガイドラインにおける対応 機能診断における課題 ・施設管理者における維持管理の専門的技術者が少なく、ス トックマネジメントの知見を有する技術者不足 ・施設の基本情報や機能診断や日常点検に関する調査デー タの蓄積が不十分で、有効活用されていない ・対策工法の選定やLCC算定が複雑であり、対策費用の作 業が煩雑 施設管理における課題 将来的課題 ストックマネジメントにおける主な技術上の課題 ・簡便な機能診断方法が十分に確立されて おらず、機能診断 の実施にあたり高度な技術や高額な費用、時間を要する ・水産基盤施設の特性※を踏まえた機能や性能(特に使用 性)に関する評価方法が確立されていな い ・対象施設毎に機能保全レベルを設定す ることを提示 ・現段階で保全対策が不要な施設に対し ても保全対策を検討することを提示 ・機能診断結果に応じて適切な老朽化予 測手法を適用することを提示 ・施設優先度を設定することを提示 ・本ガイドラインによりストックマネジメント の知見の普及を図ることを提示 ・施設情報の管理のあり方について提示 ・解決策の一つとしてのデータベース化 とその活用手法について提示 ・研究・開発の進展に応じ て、関連技術の集積・普 及を図る ※水産基盤施設の主な特性 【構造面】 ・長大な構造物が多く、多様な 構造形式(その多くがコンク リート構造物)である ・波浪による物理的な老朽化、 海水による化学的腐食に起 因した表層部の老朽化が生 じやすい 【利用面】 ・地域住民の生活基盤、遊漁 者をはじめとする海洋性レク リエーションなどの交流拠点、 災害時における防災拠点な どとしても多様に利用され、 施設の老朽化が、第三者被 害を及ぼすことがある 【管理面】 ・管理者の多くは、専門的な知 識を有する技術者が不足し ており、施設の日常管理を専 門的技術者が実施しない場 合がある 図-1.2 ストックマネジメントにおける技術上の課題と本ガイドラインにおける対応

【参考文献】

1-1) 土木学会編:アセットマネジメント導入への挑戦,技報堂出版,2005. 1-2) 宮川豊章,保田敬一,岩城一郎,横田弘,服部篤史;“土木技術者のためのアセットマネジメ ント-コンクリート構造物を中心として-”,土木学会論文集 F,Vol.64,NO.1,pp.24-43, 2008. 1-3) 財団法人沿岸域技術研究センター:港湾の維持管理技術マニュアル,2007. 1-4) 食料・農業・農村政策審議会農村振興分科会,農業農村整備部会技術小委員会:農業水利 施設の機能保全の手引き,平成 19 年3月 1-5) 水産庁漁港漁場整備部:機能保全計画策定の手引き(案),平成 24 年 10 月改訂

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8 4. PDCAサイクルによる機能保全 水産基盤施設のストックマネジメントにおける機能保全計画は、将来的な施設の老朽化や 性能低下を一定の不確実性を許容した上で予測したシナリオに基づくものである。現場では 実際の状況を確認しながら対応する必要があり、計画策定後も継続的な、モニタリングによ り計画内容を点検・再評価できる仕組みが必要である。このような実際の状況をフィードバ ックさせながら順応的に対応するマネジメントが必要であり、「PDCAサイクル」によるス テップアップにより取組みを進めていくことが重要である。 また、このPDCAサイクルは、機能診断結果に基づく機能保全計画の策定(更新)(PL AN)、機能保全計画に基づく保全対策の実施・日常点検(DO)、施設の状態を継続的に把 握するための定期的な機能診断(CHECK)、機能診断に基づいて機能保全計画を見直しか 否かの確認(ACTION)のそれぞれについて、関係者が連携・情報の共有を図りつつ継 続的に行わなければならない。その際、調査結果や対策の実施内容などの情報を蓄積し、整 理・分析することにより、より高度な機能診断等の技術の向上を図ることが望ましい。 水産基盤施設ストックマネジメントにおけるPDCAサイクルのイメージを図-2.4 に示す。 図-2.4 PDCAサイクルによる機能保全のイメージ ①機能保全計画の策定※1(更新) (PLAN) ②保全対策の実 施・日常点検 (DO) ③機能診断 (CHECK) ④機能保全計画の 見直し※2 (ACTION) ⑤データの蓄積 補修等情報 活 用 等 診 断 情 報 変 更 ※1:ここでの「策定」は、当初の機能保全計画の策定を意味する。 ※2:ここでの「見直し」は、変更する必要があるか否かを点検することを意味する。

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【参考文献】

2-1) 農林水産省:水産基本計画,2012 2-2) 三上信雄:漁港構造物へのストックマネジメントの適用と運用システムの開発に関する研 究,東海大学平成 23 年度博士論文 2-3) 水産庁漁港漁場整備部:機能保全計画策定の手引き(案),平成 24 年 10 月改訂 2-4) 財団法人沿岸域技術研究センター:港湾の維持管理技術マニュアル,2007.

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3. 水産基盤施設ストックマネジメントの実施手順

「2.2 水産基盤施設ストックマネジメントの概要」の図-2.4 や図-2.5 で示した主要な実施手順 について解説する(「漁港概要等の整理」「施設の現況把握」「保全対策工事の実施」を除く)。 3.1 機能保全方針の設定 機能保全方針は、機能保全の目的、意義、管理方針を総括的にとりまとめるものである。 【解説】 1. 機能保全方針 機能保全方針は、対象施設に対する管理者としての機能保全の目的、意義、管理方針を総 括的に述べるものとする。例えば、対象施設の機能保全の目的や意義については、LCCの 低減、年度予算の平準化を通じて、機能保全を実施し、施設の長寿命化に資する等が挙げら れる。対象施設の管理方針については、機能保全レベルの設定について言及すること等が挙 げられる。 2. 機能保全レベルの設定 機能保全レベルは、水産基盤施設が保持すべき機能保全の管理方針(機能保全の水準)を 示すものである。水産基盤施設の重要性(利用状況等)や構造特性、施設の供用期間や保全 対策工法の難易度等を踏まえた上で、水産基盤施設毎の機能保全レベルを設定する。 機能保全レベルの概要を表-3.1 および機能保全レベルに応じた機能保全対策のパタンの 一例を図-3.1、主要施設における機能保全レベルの設定例を表-3.2 に示す3-1)、3-2)、3-3)など 機能保全レベルを上げれば予防保全型で対策を早期に実施することとなり、機能保全レベル を下げれば事後保全型となり、対策の時期は遅くなる3-3) 表-3.1 機能保全レベルの概要 機能保全 レベル 機能保全の考え方及び保全対策の内容 備考 (適用例) 事前対応 型 ・機能保全レベルを要求性能限界※よりも高く設定する。設計段階で高水準の保 全対策を行うことで性能低下を防止し、供用期間中の要求性能を維持する。 ・基本的に供用期間内に保全対策は行わない。 耐震強化岸壁 など 予防保全 型 ・機能保全レベルを要求性能限界よりも高く設定する。老朽化の程度が軽微な 段階で保全対策することにより性能低下を予防し、要求性能を維持する。 ・要求性能限界を超えない範囲において、供用期間中に頻繁に小規模な保全対 策を実施する。 鋼構造物、鉄 筋コンクリート構造 物など 事後保全 型 ・機能保全レベルを要求性能限界程度に下げて設定する。ある程度の老朽化は 許容した保全対策により要求性能を維持する。 ・要求性能限界を超えない範囲において、供用期間内に2~3回程度の大規模 な保全対策を実施する。 無筋コンクリート構 造物 など 観察保全 型 ・機能保全レベルを使用限界程度に下げて設定する。直接的に老朽化状態を把 握できないため、要求性能限界を超える可能性もあるが、周辺の地盤や構造物 の変状などを観察し間接的に性能の低下を把握することにより使用限界を維持 する。 ・機能保全レベルを安全限界程度に下げて設定する。安全限界を超えないよう に監視し、老朽化による第三者への影響など安全性のみ確保する。 供用終了構造 物など ※:要求性能限界;供用期間中に対象施設に要求している性能の下限値を示す。

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13 図-3.1 機能保全レベルに応じた機能保全対策のパタン例 表-3.2 主要施設における機能保全レベルの設定例 構造形式 外郭施設 係留施設 輸送施設 (道路等) 鋼構造物 予防保全型 予防保全型 - 鉄筋コンクリート 構造物 予防保全型 予防保全型 事後保全型 無筋コンクリート 構造物 事後保全型 事後保全型 (予防保全型) 事後保全型 【Q&A】 ・近接漁港の異なる管理者間の対応について Q:近接する県管理漁港と市町村管理漁港との間で、機能保全レベル等を統一する必要があ るでしょうか。 A:施設の重要度や勘案すべき条件によって、機能保全方針、機能保全計画、保全対策工事 の手法が異なりますが、事業の実施にあたっては、技術的知見の集積や情報の共有化の ため連携を図るとともに、同種施設にて類似した条件下にあっては、統一した対応を図 ることが望ましいです。 観察保全型による機能保全 事後保全型による機能保全 予防保全型による機能保全 事前対応型による機能保全

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14 3.2 機能診断 機能診断とは、部材の老朽化度や施設の健全度を評価し、老朽化要因の特定や保全対策の 必要性について検討するものである。 【解説】 1. 機能診断フロー 機能診断は、目的に応じた段階的な手順に基づき、健全度を評価し、老朽化要因の特定や 保全対策の必要性について検討するものである。 機能診断の手順としては、先ず、簡易調査(簡易項目)及び簡易調査(重点項目)を実施 し、老朽化度の評価を行う。その上で施設の安全性に及ぼす影響度を踏まえて、施設の健全 度の評価を行う。その後、老朽化要因の特定等するための詳細調査を必要に応じて実施し、 保全対策の必要性を検討する3-1) 機能診断フローを図-3.2 に示す。 図-3.2 機能診断フロー 簡易調査(簡易項目): 老朽化の有無の確認 簡易調査(重点項目): 老朽化の程度の把握 老朽化度の評価(a,b,c,d) 施設の安全性に及ぼす影響度 (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ) 健全度の評価(A、B、C、D) 老朽化要因の特定など 詳細調査

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15 3.2.1 簡易調査 簡易調査における簡易項目は、目視による老朽化の有無を確認するものであり、重点項目 は、簡易な計測器による調査によって、老朽化の程度を把握するものである。これらは、老 朽化度評価のために段階的に実施するものとする。 【解説】 1.簡易調査の流れ 簡易調査は、簡易調査(簡易項目)と簡易調査(重点項目)に分かれる。簡易調査(簡易 項目)は、目視による調査であり、調査項目に応じた施設の老朽化の有無を把握する。また、 簡易調査(重点項目)は、簡易な計測器等を用いた調査であり、調査項目に応じた老朽化の 程度について評価する3-1) 簡易調査の流れを図-3.3 に示す。また、表-3.3 には老朽化度における部位・部材の状態 を示す。 図-3.3 簡易調査のフロー 表-3.3 老朽化度における部位・部材の状態 老朽化度 部位・部材の状態 a 部材の性能が著しく低下している状態 b 部位の性能が低下している状態 c 部材の性能低下はないが、変状が発生している状態 d 変状が認められない状態 簡易調査(簡易項目): 老朽化の有無の確認 簡易調査(重点項目): 老朽化の程度の把握 老朽化度の評価(a,b,c,d)

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16 2.簡易調査(簡易項目) 簡易調査(簡易項目)は、調査の省力化のための初期段階のスクリーニングのために行う ものであり、調査項目に従って、「移動」、「沈下」、「劣化」、「損傷」といった部材の変状に着 目した老朽化状態の有無を確認するものである。その結果、老朽化が確認された場合には、 次の段階の簡易調査(重点項目)に進む。なお、具体的調査内容については、機能保全計画 策定の手引き(案)を参照されたい。 3.簡易調査(重点項目) 簡易調査(重点項目)は、老朽化状態の規模や程度を把握するものである。また、この結 果は、健全度の評価、老朽化予測及びLCCの算定などにも活用する情報であることから、 できるだけ客観的に評価する必要がある。なお、具体的調査内容については、機能保全計画 策定の手引き(案)を参照されたい。 4.調査結果記入シート 簡易調査(簡易項目)及び簡易調査(重点項目)の調査結果は、定型の調査結果記入シー トに記録するものとする。巻末の参考資料-1 に機能診断結果事例を示しているので参照さ れたい。

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17 【Q&A】 ・簡易調査の調査結果記入シート作成 Q:簡易調査(簡易項目)における調査結果記入シート(様式5※)は、例えば対象施設の 上部工の目地ごとにスパン割を行うと膨大な資料枚数となる可能性があります。簡易調 査(重点項目)における施設のスパン割は、上部工の目地ごとなど細かく区分する必要 があると思いますが、簡易調査(簡易項目)においても、同様なスパン割が必要でしょ うか。 A:簡易調査(簡易項目)は漁港管理者が日常点検等において実施することを想定しており、 実効性のあるスパン割とすることが重要です。したがって、簡易調査(簡易項目)にお ける対象施設のスパン割は、構造形式や施工区分(打設単位)、施工年度などによって、 簡易調査(重点項目)よりもスパン割を大きくすることも含めて、具体的なスパン割を 設定してください。なお、様式5※は設定したスパン割の数に応じて作成してください。 ・簡易調査における水中部の調査 Q:簡易調査(重点項目)は水中部の施設(被覆ブロック、根固めブロック、被覆石等)の 調査項目がないが、水中部の調査は必須ではないと考えてよいですか。 A:ダイバー等による水中の目視調査項目は、対象となる施設のおかれている状況ごとに大 きく異なることから、管理者の判断により必要と考えられる調査項目を適宜詳細調査の 中で実施して下さい(例えば、矢板の腐食分布、はらみ出し、被覆ブロックやマウンド の状況など)。 ・補修の必要性 Q:調査結果記入シートにおける様式9※において、スパン毎の老朽化度の調査で、1箇所 でも a や b があれば、施設全体で補修の必要性ありとなるのですか。 A:ここはあくまで施設の老朽化度を把握するものであり、補修の必要性については、その 都度判断することとなります。 ・臨港道路の評価手法 Q:機能保全計画においては、臨港道路の舗装に関して、路面性状調査の評価手法である 「MCI」(国土交通省が作成した路面の維持管理指標)の管理水準値と整合が図られてい ますか。また、その調査結果を用いて機能保全計画を作成してもよろしいですか。 A:機能保全計画においては、漁港と港湾の利用車輌の違いを考慮の上、独自に判断したも のです。また、調査結果記入シートは様式1~9※に統一して提出願います。ただし、 管理者の判断で「MCI」等の他の管理基準を参考として採用することを行うことを妨げ てはいないので、参考資料として別途添付して提出願います。 ※:「漁港漁場整備部:機能保全計画策定の手引き(案),平成 24 年 10 月改訂」参照

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18 3.2.2 健全度の評価 健全度の評価は、施設の総合的な老朽化状態を評価したものである。 【解説】 1. 健全度の評価 健全度評価は、施設の安全性に及ぼす影響度を踏まえ、施設の総合的な老朽化状態(施設 の機能低下の程度)を推定(A,B,C,D の 4 段階評価を基本とする)したものであり、詳細 調査の実施の要否や保全対策の必要性を検討するものである3-2) 2. 施設の安全性に及ぼす影響度 老朽化状態が施設の安全性能に及ぼす影響の程度を、部材単位で分類(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの 3 つの 区分を基本とする)したものであり、主要施設の設定を表-3.4 に示す。 漁場施設など同表中に記載のない施設に対しては、同表に示す類似施設を参考とする。 3. 健全度の評価方法 部材毎に設定した安全性に及ぼす影響度の分類に応じて、高い老朽化度(a または b)の 占有率から健全度を判定することを基本とする。表-3.5 は安全性に及ぼす影響を踏まえた健 全度の判定基準を示したものである。部材によっては老朽化度が即座に機能低下に結びつく 訳ではないことから、老朽化度と安全性能に関する影響度の相関性を考慮したものである。

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19 表-3.4 施設の安全性に及ぼす影響度 施設 部材 施設の安全性 に及ぼす影響度 備考 本体工(コンクリート単塊、方塊ブロック等) Ⅰ 本体工(ケーソン、セルラーブロック、L型ブロック等) Ⅰ 本体工(鋼管杭、鋼管矢板、鋼矢板) Ⅰ 本体工(被覆防食工) Ⅱ 本体工(電気防食工) Ⅱ 上部工(上部工) Ⅱ 上部工(床版) Ⅱ 斜路工(斜路部、船置部) Ⅱ エプロン工(1) Ⅰ 吸い出し、空洞化、沈下・陥没 エプロン工(2) Ⅱ 舗装の劣化・損傷 付帯工(防舷材、係船柱、車止め、すべり材等) Ⅲ 排水工(排水設備) Ⅲ 本体工(コンクリート単塊、方塊ブロック等) Ⅰ 本体工(ケーソン、セルラーブロック、L型ブロック等) Ⅰ 本体工(鋼管杭、鋼管矢板、鋼矢板) Ⅰ 本体工(被覆防食工) Ⅱ 本体工(電気防食工) Ⅱ 上部工(上部工) Ⅱ エプロン工(水叩き)(1) Ⅰ 吸い出し、空洞化、沈下・陥没 エプロン工(水叩き)(2) Ⅱ 舗装の劣化・損傷 消波工 Ⅱ 付帯工(車止め、係船環等) Ⅲ 排水工(排水設備) Ⅲ 舗装工(アスファルト舗装) Ⅰ 付帯工(照明設備、ガードレール等) Ⅲ 排水工(排水設備) Ⅲ 本体工(コンクリート単塊、方塊ブロック等) Ⅰ 本体工(ケーソン、セルラーブロック、L型ブロック等) Ⅰ 本体工(鋼管杭、鋼管矢板、鋼矢板) Ⅰ 本体工(被覆防食工) Ⅱ 本体工(電気防食工) Ⅱ 上部工(上部工) Ⅱ エプロン工(水叩き、背後地)(1) Ⅰ 吸い出し、空洞化、沈下・陥没 エプロン工(水叩き、背後地)(2) Ⅱ 舗装の劣化・損傷 付帯工(車止め) Ⅲ 排水工(排水設備) Ⅲ ※2:上表の分類については、「港湾の施設の維持管理マニュアル,平成19年10月」等を参考に設定した。 係留施設 外郭施設 輸送施設 (道路) 用地護岸 ※1:エプロン工については、変状の形態別に調査項目を「Ⅰ」、「Ⅱ」に区分する。 安全性に及ぼす 影響度 施設の安全性に及ぼす影響 Ⅰ a が全数の 2 割以上あると、施設の安全性に影響を及ぼす Ⅱ a が全数の 5 割以上あると、施設の安全性に影響を及ぼす Ⅲ 施設の安全性に直接的には影響を及ぼさない

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20 表-3.5 健全度の判定基準 健全度 A B C D 安 全 性 に 及 ぼ す 影 響 度 Ⅰ 「aが全数の2割以上」を占 めており、既に施設の機能が 低下している。 「aが全数の2割未満」、かつ「a +bが全数の2割以上」占めてお り、対策を施さないと施設の機能 の低下が懸念される。 A、B、D 以外 すべてd のもの Ⅱ 「aが全数の5割以上」、もし くは「a+bが全数の8割以 上」占めており、既に施設の 機能が低下している。 「aが全数の5割未満」、かつ「a +bが全数の5割以上」占めてお り、対策を施さないと施設の機能 の低下が懸念される。 A、B、D 以外 すべてd のもの Ⅲ - D以外 すべてd のもの 表-3.6 健全度における施設の状態 健全度 施設の状態 A 施設の主要部に大きな老朽化が発生しており、施設の機能が低下している状態。 B 施設の主要部に老朽化が発生しており、対策を施さないと施設の機能の低下が懸 念される。 C 施設の機能に関わる老朽化は認められず、機能を保持している状態。(今後、機能 が低下する可能性もある状態) D 施設に老朽化はほぼ認められず、十分な機能を保持している状態。(当面、機能の 低下の可能性がない状態) 【Q&A】 ・耐震性能に関する診断の補助採択 Q:機能診断において、耐震性能に関する診断に要する経費については補助の対象となりま すか。 A:対象となります。なお、機能診断においては、ひび割れや変状等の老朽化項目の調査を 主体にした老朽化度や健全度の評価だけでなく、耐震性能の点検・評価も重要(特に耐 震強化岸壁)ですので、必要応じて詳細調査等により診断を行って下さい。 ・健全度評価の準拠基準 Q:最近の技術的知見(腐食発生限界塩化物イオン濃度等)として、「港湾の施設の維持管 理技術マニュアル(平成 19 年 10 月)」が発行されていますが、評価及び評価の基準等 の設定の際、上記マニュアルを基本としてもよいですか。 A:基本的には、本ガイドラインに基づいてください。ただし、「港湾の施設の維持管理技 術マニュアル」を参照しても構いません。最終的にしかるべき技術的知見に裏打ちされ た機能保全計画が策定できればよいです。

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21 3.2.3 詳細調査 詳細調査は、簡易調査の結果を踏まえて、老朽化要因の特定等のために実施する。 【解説】 1.詳細調査 詳細調査は、老朽化要因や老朽化箇所・範囲の特定及び保全対策の必要性の検討等のため に実施するものである3-2) 2.詳細調査の実施 詳細調査は、高度な技術的判断が必要であるため、老朽化に関する専門知識に基づいて実 施することが望ましい。 3.詳細調査項目 コンクリート構造物及び鋼構造物における老朽化要因ごとの詳細調査項目を巻末の参考 資料-2 に示しているので参照されたい。また、巻末の参考資料-3 として、非破壊試験手法 を示しているので併せて参照されたい。 写真-3.1 実構造物における表面 P 波(非破壊検査)の測定状況 ・詳細調査の補助採択 Q:詳細調査で異常が確認されなかった場合も、その詳細調査は補助の対象となりますか。 A:機能保全計画の策定のために必要な調査として実施したものであれば、対象となります。

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22 3.3 機能保全対策の検討 3.3.1 供用期間および機能保全レベルの水準の設定 供用期間は、機能保全計画策定時から 50 年間を基本とする。また、機能保全レベルに対 する水準は、機能診断結果を踏まえた適切な水準を設定するものとする。 【解説】 1. 供用期間 機能保全対策の検討(保全対策別のライフサイクルコストの比較)にあたっては、供用期 間を設定する必要がある。その供用期間として、機能保全計画策定時から 50 年間を基本とす る。 2. 機能保全レベルの水準の設定 対象施設の管理方針として設定した機能保全レベルに対し、機能診断結果を踏まえ、適切 な水準を設定する。この水準は、機能診断結果を踏まえた老朽化予測にあたって、保全対策 の実施時期を検討する際に必要となるものである。 具体的には、以下の水準が想定される。 ・老朽化度(部材[上部工、本体工等]に対して設定する場合など) ・健全度(施設に対して設定する場合など) ・腐食発生限界濃度(鉄筋コンクリート構造物の場合) ・限界腐食量(鋼構造物の場合) など

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23 3.3.2 老朽化予測 老朽化予測は、施設が機能保全レベルを下回らないよう対策の実施時期を適切に設定する ため、老朽化状態の進行予測を行うものである。 【解説】 1. 老朽化予測 ストックマネジメントによる機能保全においては、施設の最低限保持すべき機能の水準で ある機能保全レベルを設定し、施設の保有機能がそのレベルを下回らないよう的確に対策を 講じなければならない。長い供用期間の間でこのような対応を実行するためには、将来的な 保有機能の低下を予測し、機能保全レベルに則って、機能保全対策の実施時期を適切に設定 する必要がある。そのためには、現状の老朽化の有無に関わらず、老朽化状態の進行を予測 することが必須であり、対象となる施設の構造形式や機能診断結果等を踏まえ、適切な老朽 化予測手法を選定し予測することが重要となる3-1) 2. 老朽化予測手法 老朽化予測手法は、施設別の老朽化機構に基づいた理論式により予測することが望ましい。 水産基盤施設に適合性が高いと考えられる老朽化予測手法は、①寿命推定、②理論モデル、 ③統計モデル、④確率モデルなどが挙げられる。各種老朽化予測手法の特徴を表-3.7 に示す。 表-3.7 各種老朽化予測手法の特徴3-4)を基に編集 【Q&A】 ・機能保全計画における老朽化予測 Q:機能保全計画策定において、老朽化予測は必要ですか。 A:対策の実施時期の検討及びLCC算定等において、老朽化予測は必須となります。 長所 短所 ①寿命推定 モデル 耐用 年数法 施設毎或いは部材毎に寿命(耐用 年数)を設定し、建設から寿命まで を直線または曲線の予測式で近似 し、老朽化の進行を予測 ・便利で分かりやすい ・施設毎、部材毎の予測が可能 ・費用対効果分析(B/C)に対応 ・設定寿命と老朽化進行速度の根 拠に課題(特に保全対策の実績が 乏しく、精度劣る) 橋梁・樋門 (北海道) ②理論 モデル 理論式 物理的、化学的な老朽化メカニズ ムに基づく予測式(拡散方程式な ど)を利用し、老朽化の進行を予測 ・部材毎の予測が可能 ・理論的根拠が明快 ・適用可能な老朽化要因が限定さ れる(無筋コンクリートは適用外) ・調査・点検データが必要 コンクリートの中 性化・塩化物の 浸透、鉄筋の 腐食 ③統計 モデル 回帰分析 点検結果に対応する変位量や健 全度と経過年数の関係を統計分析 することで、直線または曲線による 予測式を作成(例:点検結果の回 帰分析)し、老朽化の進行を予測 ・点検結果が反映可能(設定根拠が 明確、予測精度の向上が可能) ・経年的な点検結果の蓄積により予 測精度の向上が可能 ・部材毎の予測が可能 ・予測精度は点検データに依存 農業水利施設 ④確率 モデル マルコフ 連鎖 老朽化度の遷移確率を用いて、そ の比率の推移をマルコフ過程によ り計算し、老朽化の進行を予測 ・マクロ的な対策時期の検討に便利 ・部材毎の予測が可能 ・点検結果の反映可能(設定根拠 が明確) ・過去の点検結果が考慮されない ・遷移確率の設定が不可欠(老朽化 度が進行している施設[c以上]に 限定される) ・予測精度は点検データに依存 桟橋(港湾) 種類 手法 手法の概要 手法の特徴 適用事例

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25 表-3.9 複数案の保全対策によるLCCの比較例(矢板式係船岸) 合 計 初回(0年後) 有機ライニング工法+電気防 食 41百万円 2回(15年後) 有機ライニング工法 36百万円 3回(20年後) 電気防食 5百万円 4回(30年後) 有機ライニング工法 36百万円 5回(40年後) 電気防食 5百万円 6回(45年後) 有機ライニング工法 36百万円 初回(5年後) 鋼板溶接工法+有機ライニン グ工法+電気防食 119百万円 2回(10年後) 有機ライニング工法 36百万円 3回(20年後) 電気防食 5百万円 4回(30年後) 有機ライニング工法 36百万円 5回(40年後) 電気防食 5百万円 シナリオ3 初回(5年後) 施設の更新 750百万円 750百万円 × 159百万円 ○ シナリオ2 201百万円 △ 実施時期 対策内容 対策コスト 評価 シナリオ1 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 10 20 30 40 50 コ ス ト ( 百万 円) 調査後経過年数(年) シナリオ1 シナリオ2 シナリオ3 159百万円 201百万円 750百万円 図-3.4 複数案の保全対策によるLCCの比較例(矢板式係船岸) 2. 事後保全と予防保全におけるLCC 一般的に、事後保全的に大規模な対策を実施するよりも予防保全的に小規模な補修工事を 繰り返す対策の方が、ライフサイクルコストが小さくなることが多いと言われている。しか し、老朽化の進行状態、老朽化の発生部位やその要因によっては大規模な改良工事を事後保 全として行う方が、予防保全を繰り返し行うよりもLCCが安価となる場合もある。1 回あ たりの費用が安価な工法であっても、延命効果が短い工法の場合には保全工事の回数が多く なり、結果的に割高となる場合もあるため留意が必要である。

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26 3. 対策工法の選定 対策工法の選定は、構造形式、調査項目の構造特性、材料種別、及びコストを考慮して行 うものとする。また、施設の利用状況や財政状況、安全性、現場の施工条件、施工中の代替 施設の有無、施設供用への支障などを考慮して、複数案(2~3案程度)を選定する3-1) また、老朽化要因に応じた対策工法を適切に実施することが必要である。例えば、鉄筋コ ンクリート構造物の鉄筋の腐食が塩害によるものであると想定される場合、コンクリートの 塩分含有量試験による鉄筋腐食状況やその進行予測をもとに、対策工法、及び実施時期の検 討を実施する。 4. 対策工法の選定にあたっての留意事項 対策工法は、対象とする施設の老朽化機構や老朽化要因により異なるため、その工法によ り機能を延命する効果(期間)も異なる。また、老朽化が進行するほど対策工法は大規模に なるため、コストが増大するだけでなく、対策工事による影響も大きくなり工事期間中の供 用停止による便益逸失額も膨らむことになる。 保全工事では、漁獲物の水揚げ作業等の漁業活動確保のための制約を受けた作業スペース での施工や水産動植物への影響低減を図るために限定された工法での施工となる場合がある ことから、対策工法の選定にあたっては留意が必要である。 5. 対策工法例 対策工法の実施にあたっては、詳細調査等を行った上で具体的な施工方法、工事費等の検 討を行うものとする。 巻末の参考資料-5 に老朽化と対策工法、参考資料-6 に構造種類別対策工法を示している ので参照されたい。 6. 日常管理計画の検討 日常管理計画として、下記を基本とした点検に関する実施時期や頻度、点検内容、留意事 項について検討する。表-3.10 に日常点検の調査シートの例を示した。また、日常管理計画を 策定する際は、漁港管理条例に基づき定める維持運営計画の中で、施設の補修に関する記述 がある場合は、その内容を考慮する必要がある。 ・ 日常点検 ・ 定期点検 ・ 詳細点検 ・ 臨時点検 ・ 日常管理における留意事項 など

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28 3.3.4 施設優先度の設定 施設優先度は、水産基盤施設の保全対策を効率的・効果的に実施するため、客観的な判断 基準に基づいた保全対策の優先順位を設定するものである。 【解説】 1.施設優先度の設定 施設優先度は、対象施設の漁港内や管理する複数の漁港内(或いは圏域内の漁港)に対す る保全対策の実施時期の優先順位を決定する際に活用するものである。特に、同時期に保全 対策が必要となる施設が複数発生し、かつ、一定の枠組み(例えば、予算額)の中で保全対 策の実施時期を考える必要がある場合に活用する(2.3 複数の管理施設を対象とした水産基 盤施設ストックマネジメントを参照)。 施設優先度は、図-3.5 に示すように、施設重要度、漁港重要度、施設の老朽化レベルを総 合的に勘案し、総合評価点を算出して保全対策の優先順位を決めるものとする。 なお、それぞれの評価項目は、計画作成担当者の主観的な要素に影響される可能性がある。 そこで、施設優先度の各評価項目における指標値は、可能な限り、定量的な数値を使用し、 定性的な項目も数値的なランク分けを行う等、できるだけ客観性を持たせることが望ましい 3-3)。巻末の参考資料-8 に施設優先度の設定例を示しているので参照されたい。 図-3.5 施設優先度の設定フロー 施設重要度 施設の機能 施設の要求性能・水産 重要施策との関連性 項目・配点に基づく評価 漁港重要度 漁港の役割・特性 漁港の種類・港勢 ・地域特性等 項目・配点に基づく評価 施設の老朽化レベル 履歴調査・機能診断等 施設の老朽化度・安全性 に及ぼす影響度等 項目・配点に基づく評価 総合評価点の算定 施設優先度の設定

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30 3.4 機能保全計画の策定 各種検討事項をとりまとめ、対象施設の機能保全計画を策定する。 【解説】 1.機能保全計画の策定 機能保全計画の策定にあたっては、対象施設に対して実施した各種検討事項を簡潔に、要 領よくとりまとめるものとする。なお、機能保全計画書の作成にあたっては、機能保全計画 策定の手引き(案)3-1)を参照されたい。 機能保全計画書 ○○漁港(第○種) 平成○○年○○月 漁港管理者:○○県 図-3.7 機能保全計画書の策定

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31 3.5 日常管理計画に基づく点検の実施 3.5.1 基本事項 施設管理者が行う日常管理を通じて、施設状態の把握を心がける必要がある。その際、 管理記録などの履歴は、適切に整理、保存する必要がある。 【解説】 1. 日常的な維持管理 施設管理者は、策定した日常管理計画に基づき、施設状態の把握に努め、適切な維持管理 を行う必要がある。また、施設管理者が行う日常管理で、大きな変状等を発見した場合には、 必要に応じて緊急の機能診断や保全対策の検討をする必要がある3-5) 2. 日常管理により取得した点検データ 日常管理により取得した点検データは、変状の発見や進行速度の推定に役立つばかりでは なく、定期的に行う機能診断の基礎的な情報として重要であり、適切に情報管理する必要が ある(詳細は、3.6 施設情報の管理を参照)。 写真-3.2 点検の様子

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32 3.5.2 留意事項 施設の日常管理は、機能保全計画における日常管理計画に基づき行うものとする。ま た、機能診断の結果、特に留意すべき項目が示された場合は、これを踏まえ適切に対応 を行うものとする。 【解説】 1. 日常管理の実施 日常管理においては、施設の変状に留意して管理する必要がある。具体的には、以下に示 す事項が考えられる。 ①施設構造の変状(変形、沈下、ひび割れ、変色等) ②施設機能の異常 ③周辺環境への影響 ④利用者や周辺住民からの指摘 写真-3.3 老朽化した漁港施設の事例

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34 3.6 施設情報の管理 3.6.1 情報の保存・蓄積 施設管理を効率的に実施するため、対象施設の設計・施工に関する既存データや調査結果 等、施設情報の保存・蓄積を適切に行うものとする。 【解説】 1.保存すべき施設情報 既存データは、漁港台帳、施設の補修・改良履歴、設計条件(安定計算書)、工事竣工検査 結果等を対象とする。また、策定(更新)した機能保全計画書や機能診断等も対象として保 存する。機能診断結果等は、簡易調査、老朽化度、健全度、老朽化予測、詳細調査、保全対 策の検討結果及び日常点検結果等を対象として保存する(図-3.6)。 2.施設情報の蓄積 施設管理を効率的に実施するためには、既存データや調査結果等を電子化しておくことが 重要である。また、ストックマネジメントの対象となる施設を明確にして、漁港別施設別に データを蓄積する。 3.機能保全計画の更新 保全対策工事を実施した場合、対象施設の機能保全計画の更新が必要となる。また、新設、 改良、更新等の変更が生じた場合も対象施設の機能保全計画の更新が必要となる。更新され た計画は、引き続き、管理者が適切に管理する必要がある3-1) ◆既存データ 漁港台帳 施設の補修・改良履歴 設計条件(安定計算書) 工事竣工検査結果 等 ・ ・ ◆ 策定(更新)した機能保全計画書 ◆ 機能診断結果等 簡易調査(調査結果記入シート) 老朽化度、健全度 老朽化予測 詳細調査 保全対策の検討結果 日常点検結果 等 図-3.6 管理すべき施設情報

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35 3.6.2 施設情報の活用 管理する施設情報は、水産基盤施設における日常的な点検作業の効率化や今後の老朽 化予測、LCC算定、及び対策コスト算出等の精度を向上に重要となる。効率的・効果 的に施設情報を活用するため、データベースや管理・運営システム等を整備することが 望ましい。 【解説】 1. 施設情報の活用 管理する施設情報は、適切に管理することにより、水産基盤施設における日常的な点検及 び管理を効率的に行うために活用する。また、不確実性を含む老朽化予測、LCC算定、及 び対策コスト算出等の精度を随時向上させるために活用する。 2. 施設情報の管理におけるデータベース等の活用 施設情報の管理にあたっては、電子情報としてデータベースを活用することにより、効率 的なマネジメントが可能となる。以下にデータベース活用のメリットを挙げる3-3) ①情報の一元化や統一的な施設管理。 ②蓄積した点検・調査結果等統計データに基づくマルコフ連鎖モデル等の老朽化進行予 測モデル導入。 ③老朽化状態の把握・予測の簡便化やデータの蓄積・活用による予測精度の向上 ④標準対策工法リストや老朽化予測システムとの有機的な連動による合理的な保全対策 シナリオの作成。 ⑤ライフサイクルコスト算出の簡略化。 ⑥膨大な組み合わせパタンの中からの保全対策の組み替えを伴う機能保全費用の平準 化。

【参考文献】

3-1) 水産庁漁港漁場整備部:機能保全計画策定の手引き(案),平成 24 年 10 月改訂 3-2) 財団法人沿岸域技術研究センター:港湾の維持管理技術マニュアル,2007. 3-3) 三上信雄:漁港構造物へのストックマネジメントの適用と運用システムの開発に関する研 究,東海大学平成 23 年度博士論文 3-4) 北海道建設部:公共土木施設長寿命化検討委員会報告書,pp.34-59,2006.

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37 4.1 鉄筋コンクリート構造物 鉄筋コンクリート構造物は、対象構造物の老朽化要因に対応した適切な調査を行い、 その結果に基づいて老朽化予測等を行うことが望ましい。 【解説】 1.鉄筋コンクリート構造物の主な老朽化機構 鉄筋コンクリート構造物の主な老朽化機構として、塩害、中性化、凍害、化学的侵食、ア ルカリ骨材反応等の環境作用が要因となるものや疲労や過大荷重等の荷重条件が要因となる ものがある4-2) 塩害による老朽化機構について、図-4.2 に示す。 図-4.2 塩害による老朽化機構

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38 2.鉄筋コンクリート構造物の主な変状項目と老朽化要因、及び詳細調査項目 鉄筋コンクリート構造物は、主な変状項目に該当する老朽化要因の推定を行い、要因ごと の調査項目の中から詳細調査の選定を行う。主な変状項目と老朽化要因を表-4.1、詳細調査 の主な項目を表-4.2 に示す4-3) 表-4.1 変状項目と老朽化要因 主な変状項目 老朽化要因 塩 害 中性化 アルカリ 骨材反応 凍 害 ①コンクリートのひび割れ 鉄筋軸方向のひび割れ ◎ ○ - - 微細なひび割れ - - - ◎ 膨張ひび割れ(亀甲状等) - - ◎ - ②コンクリート表面の状況 浮き・剥離 ○ ○ - - ③錆汁の滲出 ◎ - - - ④鉄筋の露出 ◎ - - - ⑤変形 - - ○ ○ 注)◎は特に関連が深いもの、○は関連があるものを示す。

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39 表-4.2 詳細調査の主な調査項目 調査項目 塩害 中性化 アルカリ骨 材反応 凍害 コンクリートのひび割れ 幅、長さ、深さ、進行状況 ◎ ◎ ◎ ◎ コンクリートの表面状況 浮き・剥落 ◎ ◎ ○ ○ スケーリング、ポップアウト △ △ △ ◎ 鉄筋の腐食状況 露出の程度、内部鉄筋の腐食状況 ◎ ◎ ○ ○ 配筋状況 かぶり厚さ、鋼材位置(配筋状態) ◎ ◎ △ △ コンクリートの物性 圧縮強度、ヤング係数など ○ ○ ◎ ○ 配合推定 ○ ○ ○ ○ 慘出物、内部組成(生成鉱物) ○ ○ ◎ △ 細孔径分布 △ △ ◎ ◎ 中性化深さ ○ ◎ ○ ○ 含有塩化物イオン量(塩化物イオン濃度分布) ◎ △ ○ ○ 残存膨張量 △ △ ◎ △ その他 内部欠陥 ○ ○ △ △ 異常な変位や変形 ○ ◎ ○ ○ 表面の変色 ○ ◎ △ △ 凡例)◎は有効なデータが得られるもの、○は参考となるデータが得られるもの、△は参考とな る場合があることを示す。 出典;平成10年度 設計技術基準検討調査(漁港構造物補修設計の手引きの作成), 水産庁漁港部,財団法人 漁港漁村建設技術研究所,平成11年

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40 3.鉄筋コンクリート構造物の老朽化予測 鉄筋コンクリート構造物の老朽化予測は、該当する老朽化要因を推定し、適切なモデルに より行う必要がある。塩害に対する鉄筋コンクリートの老朽化予測例を以下に示す。塩害の 場合は、建設後の経過年数と現況を勘案して潜伏期の老朽化期間を適切に推定し、その値を 用いて、潜伏期以外の老朽化過程の期間を設定する4-4) ○老朽化予測の方法 潜伏期における老朽化予測式 ・塩化物イオンの拡散方程式:フイックの第2 法則            2 2 x C Dc t C ここに、C:液相の塩化物イオン濃度 Dc:塩化物イオンの拡散係数 x:コンクリート表面からの距離 t:時間 ・鋼材位置における塩化物イオン濃度 C(x,0) t D 2 x erf -1 C0 t C(x,        ・ ) ここに、C(x,t):深さ x(cm)、時刻 t(年)のおける塩化物イオン濃度(kg/m3) C0 :表面における塩化物イオン濃度(kg/m3) D :塩化物イオンによる見かけの拡散係数(cm2/年) erf :誤差関数 C(x,0):初期含有塩化物イオン濃度(kg/m3) D:塩化物イオンの見かけの拡散係数(普通ポルトランドセメントを 使用した場合) ここに、W/C:水セメント比 C0:表面における塩化物イオン濃度(kg/m3) 表面における塩化物イオン濃度C0 (kg/m3) 飛沫 帯 海岸からの距離(km) 汀線付近 0.1 0.25 0.5 1.0 飛沫塩分が 多い地域 北海道、東北、 北陸、沖縄 13.0 9.0 4.5 3.0 2.0 1.5 飛沫塩分が 少ない地域 関東、東海、近畿、 中国、四国、九州 4.5 2.5 2.0 1.5 1.0

-3.9 W C 7.2 W C)-2.5

logD ( )2  (

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44 2. 鋼構造物の変状項目と老朽化要因、及び詳細調査項目 鋼構造物は、鋼材の腐食を老朽化要因とする鋼材の開孔、変形、及び発錆が主な変状項目 である。鋼構造物の詳細調査は、鋼材自体の腐食調査及び防食工の調査を行うものとし、主 な項目を表-4.3 に示す。 表-4.3 詳細調査の主な調査項目 調査項目 防食工無し 防食工有り 電気防食 (陽極) 電気防食 (外部電源) 被覆防食 ①鋼材の腐食調査 目視観察 ○ - - - 肉厚測定 ○ - - - ②電気防食(陽極)調査 目視観察 - ○ - - 電位測定 - ○ - - 陽極調査 - ○ - - テストピース調査 - ○ - - 環境調査 - ○ - - ③電気防食(外部電源)調査 電源装置の運転状況 - - ○ - 電位測定 - - ○ - 電極電流調査 - - ○ - テストピース調査 - - ○ - 環境調査 - - ○ - ③被覆防食調査 塗覆装調査 - - - ○

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【参考文献】

4-1) 水産庁漁港漁場整備部,財団法人漁港漁場漁村技術研究所:効率的な維持更新方策の検 討調査報告書,平成 18 年3月 4-2) 日 経 コ ン ス ト ラ ク シ ョ ン 編 : こ れ か ら 始 め る コ ン ク リ ー ト 補 修 講 座 , 日 経 BP,pp.6-26,2002. 4-3) 社 団 法 人 日 本 コ ン ク リ ー ト 工 学 協 会 : コ ン ク リ ー ト 診 断 技 術 ’09 [ 基 礎 編],pp.67-180,2009. 4-4) 土木学会編:コンクリート標準示方書[維持管理編],2007. 4-5) 森村英典,高橋幸雄:マルコフ解析,日科技連,pp.3-7,1979. 4-6) 古谷宏一,横田弘,橋本勝文,花田祥一:マルコフ連鎖モデルを用いた係留施設の劣化予測 の信頼性評価,土木学会論文集 F,Vol.67,NO.4,pp.Ⅰ_159-Ⅰ_168,2011. 4-7) 藤井哲雄:基礎からわかる金属腐食,日刊工業新聞社,2011.

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参1

参考資料-1

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参2 1.機能診断事例 ケーソン式防波堤において、簡易調査(重点項目)による変状規模の把握を行い、老朽 化度の評価を行った事例を以下に示す。 簡易調査結果の考察及び健全度評価結果およびを表-参 1.1 及び表-参 1.2 に示す。 表-参 1.1 簡易調査結果の考察 調査結果・考察等 対策の 要 否 移動 水平移動量 隣接ブロックとの間に小規模な移動が 確認 され た。最大で10cm程度(c判定)の移動であり、施設 の機能にかかわる変状ではないが、継続して観察 する必要がある。 - 沈下 目地ずれ、 段差 隣接ブロックとの間に段差が確認された。最大で 8cm程度(c判定)の段差であり、施設の機能にか かわる変状ではないが、継続して観察する必要が ある。 - 上部工 上部工でひび割れが確認された。最大で幅2cm程度 (b判定)のひび割れであり、放置した場合に、施 設の機能が低下する恐れがある状態である。 ○ 本体工 本体工でコンクリートのひび割れが確認された。 最大で幅5mm程度(c判定)のひび割れであり、施 設の機能にかかわる変状ではないが、継続して観 察する必要がある。 - 凡例 対策必要:○、対策不要:- コンクリートの 劣化、損傷 コンクリートの 劣化、損傷 調 査 項 目 施設全体 表-参 1.2 健全度評価結果

No.1 No.2 ・・・ No.15 a 本 体 の 一 部 が マ ウ ン ド から外れている。 b 隣 接 ケ - ソ ン と の 間 に 側 壁 厚 程 度 ( 40 ~ 50 c m)のずれがある。 c 小規模な移動がある。 d 変状なし。 a 目 視 で も著 しい 沈下 (1 m 程 度 ) が 確 認 で き る。 b 隣 接 ケ - ソ ン と の 間 に 数 十 c m 程 度 の 段 差 が ある。 c 隣 接 ケ - ソ ン と の 間 に 数 c m 程 度 の 段 差 が あ る d 変状なし。 幅 1 c m以 上の ひび 割れ がある。 小規模な欠損がある。 c 幅 1 c m未 満の ひび 割れ がある。 d 変状なし。 幅 1 c m以 上の ひび 割れ がある。 小規模な欠損がある。 c 幅 1 c m未 満の ひび 割れ がある。 d 変状なし。 健全度 施設全体 d c ・・・ 調 査 項 目 調 査 方 法 変状の程度 スパン毎の老朽化度 d D d c ・・・ d D b ・・・ c B 上部工 a 防 波 堤 の 性 能 に 影 響 を 及 ぼ す 程 度 の 欠 損 が あ る。 b b ・・・ d C 本体工 a 防 波 堤 の 性 能 に 影 響 を 及 ぼ す 程 度 の 欠 損 が あ る。 c b コンク リートの 劣化、損 傷 目視 ・ひび割れ、損傷、 欠損 ・老朽化の兆候 など B 移 動 沈 下 コンク リートの 劣化、損 傷 目 視( メジ ャ- 等に よ る計 測を 含む 、以 下同じ) ・水平移動量 目視 ・目地ずれ、段差 目視 ・ひび割れ、損傷、 欠損 ・老朽化の兆候 など c 部材毎の健全度が 最 も 低 いも の を 記 入し、施設としての 健全度の参考とす る。 ス パ ン 毎 の 老 朽 化 度を集計し、その割 合 と 施 設 の 安 全 性 に及ぼす影響度(Ⅰ ~Ⅲ)に応じて健全 度を評価する。

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参3

参考資料-2

参照

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