Ⅰ.本研究の目的
本稿では,女性の勤続年数の長期化傾向に着目し, 長期勤務が見込める地方公務員を進路選択する要因に ついて,女性公務員の転職コーホート別データ(初職 者群および再就職者群)を用いて実証分析を行った。 従来,初職で雇用条件のよい職業に就く場合,退職す ることによる雇用条件の低下が定着効果として働くこ とが知られている。また,働き続ける意思を持って初 職に就くことが継続就業にとって重要な要因であるこ とや学卒時に長期的な就労選好をもって公務員や教員 になる場合ほど初職に満足する傾向が強まることが明 かされてきた(日本労働研究機構 2000;青島 2001; 冨田 2001,西川 2001)。一方で,期待就業期間の短さ や高転職率から企業側の人材育成投資インセンティブ が働きにくく,職業能力形成機会に恵まれにくいとさ れる女性の観点から,継続就業の意識を正確に汲み取 る作業は,女性の雇用促進のみならず,様々な困難が 予測される女性のキャリアにおいても重要な視座であ る。 既存の女性の継続就業に関する実証研究の多くは, 結婚/出産段階および再就職選択段階における,家族 要因(結婚・出産・育児・夫の所得など)や政策的要 因(企業内外の女性就業促進のための法律・制度や諸 政策)の影響を分析したものに偏重してきた(Waldfo-gel et al. 1999;黒沢 2001;西川 2001;Barnett et al. 2005;高橋・仲神 2007;武石 2009)。高学歴化により 女性労働者の意識が多様化するなかで,個人の入職時 (学卒時点)の就業意識そのものが少なからずキャリ ア形成に影響を与え得ることを鑑みると,入職段階の 意識要因の影響の持続性を検討することは重要である (日本労働研究機構 2000;神田 2000;青島 2001;平野 2005)。例えば,神田(2000)は,大卒女性が初職に 就くときの職業に対する意識やキャリアの展望がその 後の就業行動に影響を与えると指摘する。一方,青島 (2001)は,初職に就く時点での働き続ける意思の存 在が継続就業に寄与するとしている。だが,継続就業 に対する制約が多い女性にとって,入職時の状況が固 定化しがちな職業であるほど埋没コストを生じるリス クが高まることも考えられる。しかしながら,既存研 究では,初職を継続するうえで無視できない入職前の 進路選択要因の影響まで考慮した分析にはなっておら ず,初職入職時から働き続ける意思をもつに至った背 景要因の具体的検討やそれらがキャリア形成に及ぼす 影響に関する分析は十分であるとは言い難かった。1) そこで,本稿では,継続就業や職場復帰が見込まれ やすい女性公務員の個票データ2)を用いて,初職時か ら継続就業の意思をもつ者(以下,初職継続者)の進 路選択要因と継続就業意思の決定要因の関係性を通じ てキャリア形成の観点から女性の継続就業を検証する ことが目的である。3)安定職種では将来のキャリア形 成において入職段階の影響がより強く作用するからで ある。たとえば,地方公務員は昇進・昇給の制度面で 男女差はなく,職住近隣者にとって仕事と家庭の両立 (WLB)が図りやすいとの指摘はその重要性を端的に 示している(内閣府男女共同参画局 2011,小林 2009)。 加えて,長期キャリアを見据えた初職継続就業と就 業満足度との関連についても確認する。日本労働研究 機構(2007・2000)や武石(2009)では,継続就業型 の職業の方が再就職型よりも働き方への満足度を高め ることが示されており,もともとの継続選好と就業満 足度との正の相関関係が予想されるが,そのことを明 確に示した先行研究はみられない。 本稿の構成は以下の通りである。次章では,本研究 で用いるデータを多角的に分析し,女性公務員の入職 意思と継続就業の関係を検討する。3 では,転職コー ホート別に女性公務員における継続就業の規定要因を 統計的に検証する。最後に,4 では,結果の要約と今 後の研究課題について言及する。女性公務員の
継続就業意思の決定要因
The Journal of Economic Education No.32, September, 2013 Determining Factors for Female Public Servant’sIntention of Continued Employment
Nakashima, Tsuyoshi
Ⅱ.データ
1.調査概要 本稿で使用するデータは,筆者が独自に実施した 『若手公務員の就業意識調査(以下,本調査)』により 収集した。本調査は,2011 年 5 〜 8 月に全国 43 都道 府県(一部,東日本大震災被災区域を除く)の市役所 区役所等(236 箇所)の入職 15 年目程度までの若手職 員を対象に郵送法(スノーボールサンプリング法)及 び電子メール法により実施した。サンプル数は,配布 数 6,181,有効回答数 4,015(うち女性は 1,410 名,男 性 2,597 名,不明 8 名)であり,有効回答率は 64.9% であった。また,女性公務員のうち転職コーホート別 では,初職者群と再就職者群は 2:1(初職者 953 名, 再就職者 452 名,不明 5 名)であった。 表 1 女性公務員の継続就業意思 (%) 女性公務員 [参考] 男性公務員 (n = 2,597) 初職者群 (n = 953) (n = 452)再就職者群 継続就業意思 (入職前) 78.9 78.7 53.3 継続就業意思 (現在) 55.0 54.8 58.5 注 1:【継続就業意思(入職前)】は,「5. かなりあった」「4. 少 しあった」「3. どちらでもない」「2. ほとんどなかった」「1. 全 くなかった」の 5 件法の質問うち,「5」または「4」を回答し た者の割合。 注 2:【継続就業意思(現在)】は,将来の職業進路として「定 年まで今の公務員として働きたい」「他の公務員として働きた い」と答えた者の合計割合。 資料出所:筆者による『若手公務員の就業意識調査』(2011) 表 2 主成分分析による 7 成分(回転後) 設問: 「地方公務員進路の選択要因」 主成分第 1 主成分第 2 主成分第 3 主成分第 4 主成分第 5 主成分第 6 主成分第 7 安定している .668 .179 .028 -.050 -.089 -.097 .088 待遇が良い .620 .193 .036 -.016 -.033 .033 .063 勤務を継続しやすい .792 -.045 -.108 .065 .010 .042 -.012 福利厚生面がよい .734 -.079 -.060 -.031 -.076 .116 .059 社会経済情勢に左右されない .456 .313 .035 -.043 -.083 -.077 .002 いち早く安心したかった .134 .531 .213 -.008 .063 .063 -.046 競争社会から抜け出したかった -.100 .500 .190 .065 .006 .199 -.103 第 1 志望の企業/資格試験に失敗した -.180 .444 -.407 .102 .010 .128 .136 就職活動は絶対に成功させたかった -.086 .431 .258 .036 .168 -.004 -.103 公務員の勉強を無駄にしたくなかった -.091 -.015 .560 .001 -.156 -.061 .117 どうしても公務員になりたかった -.012 .064 .785 -.038 .040 .031 -.009 公務員になるという夢の実現 -.067 -.015 .794 .043 -.010 .008 .048 人の役に立てる仕事がしたかった .145 -.064 -.044 .600 -.103 -.100 -.048 もっと社会/地元を良くしたかった .019 -.008 .009 .782 .030 -.018 -.077 地元に恩返しがしたかった -.104 .133 .009 .685 .054 -.041 .080 町づくりや産業振興に関心があった -.033 .010 .026 .599 -.086 .091 .038 親や家族を養う必要があった -.054 .023 .013 -.073 .747 -.105 -.003 自分が後を継ぐ必要があった -.098 -.034 -.052 .020 .604 -.006 .215 親や家族の世話をしながら働ける .010 -.036 -.041 .001 .764 .077 -.085 ノルマや利益追求がない .074 .087 .105 .050 -.053 .519 -.084 仕事が楽そう -.118 .247 -.090 -.077 -.059 .667 .071 プライベートの自由時間がもてる .137 .004 -.028 -.036 -.013 .574 .072 親や家族からの強い勧め .028 -.010 -.085 -.051 .033 -.026 .801 親や家族に公務員がいた .083 -.211 .289 .056 -.070 .177 .600 親や家族を安心させたかった .135 .163 .059 .062 .278 -.148 .461 固有値 4.69 2.13 1.75 1.65 1.44 1.32 1.18 注 1:因子抽出法:主成分分析。回転法:Kaiser の正規化に伴うプロマックス法(7 回の反復で回転が収束)。 注 2:因子負荷 0.40 以上に網掛け。 注 3:サンプルは女性公務員全体(n = 1,410)。 資料出所:表 1 と同じ。なお,継続就業の意識について,初職者群の中で 「定年まで公務員として働きたい」と考える初職継続 者は 497 名(52.1%)であり,再就職群や男性公務員 との比率差はみられなかった。4)しかし,入職前と現 在との継続就業意思の差からは,男性公務員が微増で あるのに対し,女性公務員では両群とも 20 ポイント 以上も大きく低下しており,公務員職でも勤続の長期 化に伴って継続就業意欲を低減させるさまざまな要因 が働いている可能性が高いことが明らかになった。 2.公務員進路選択理由についての主成分分析 本調査では,学校から職業社会への移行段階を公務 員進路選択という切り口から捉えるため,公務員進路 選択要因について「就労面」「家庭面」「学校面」「環 境面」の 4 つの次元から計 43 個の質問をした。この 4 側面は小杉(2004)の分析枠組みを援用した。ここで は,上記 43 個の回答データ(5 段階尺度)について, 平均値および標準偏差から天井効果とフロア効果がみ られた4項目を除去した。つぎに,残りの39個に対し て主成分析を行ったところ,十分な因子負荷量を示さ なかった 5 個を除外し,再度,Promax 回転による主 成分分析を行った。固有値が 1 以上の解は 7 つ得られ た。それらに対応する固有ベクトルを回転させた回転 後のベクトルは表 2 の通りであるが,第 1 主成分で 5 項目,第 2 主成分と第 4 主成分で 4 項目,第 3 主成分 と第 5 〜 7 主成分で 3 項目ずつが該当することが示さ れている。第 1 主成分は内容が多岐にわたるため厚遇 志向,第 2 主成分として,「いち早く安心したい」「競 争社会から抜け出したかった」から安楽/安心志向, 第3主成分は公務員志向,第4主成分として,「人の役 に立てる仕事がしたかった」「もっと社会/地元を良 くしたかった」から地域貢献志向,第 5 主成分は家族 志向,第 6 主成分は自由志向,第 7 主成分は他人志向 と呼ぶ。 3.抽出された因子と継続就業意思との相関 継続就業の意思については,本調査の今後の職業進 路に関する質問項目で,「定年まで公務員」「他の公務 員」「民間企業に転職」「独立開業」「特になし」のう ち,前者 2 つを継続就業意思が「あり」,それ以外を 「なし」としてダミー変換した。転職コーホート別に 継続就業意思と 7 つの因子との相関をみたものが表 3 表 3 因子と継続就業意思の相関(初職者群) No. 1 2 3 4 5 6 7 8 1 継続就業意思 1 2 厚遇志向 .151** 1 3 安心/安楽志向 .100* .190** 1 4 公務員志向 .206** .188** .171** 1 5 地域貢献志向 .087** .047 .019 .160** 1 6 家族志向 .115** .596 .181** .197** .027 1 7 自由志向 .018 .227** .157** .128** .114 .172** 1 8 他人志向 .080* .212** .146** .131** -.006 .261** .099** 1 注:** は 1%有意,* は 5%有意。 資料出所:表 1 と同じ。 表 4 因子と継続就業意思の相関(再就職者群) No. 1 2 3 4 5 6 7 8 1 継続就業意思 1 2 厚遇志向 .198** 1 3 安心/安楽志向 .045 .229** 1 4 公務員志向 .220** .234** .267** 1 5 地域貢献志向 .076 .027 .065 .126** 1 6 家族志向 .155** .160** .081 .081 .046 1 7 自由志向 -.052 .134** .182** .182** -.051 .032 1 8 他人志向 .108* .193** .173** .173** .085 .142** .075 1 注:** は 1%有意,* は 5%有意。 資料出所:表 1 と同じ。
と表 4 である。両群比較より,初職者群の方が継続就 業意思との関連が強いこと,また両群に共通して継続 就業意思と有意な正の相関を示した因子は,「厚遇志 向」「公務員志向」「家族志向」であり,職業安定性に 基づき継続就業へのインセンティブが働くことが明ら かとなった。
Ⅲ.実証分析
1.推定モデル 本稿では,女性公務員の継続就業意思に影響を与え る要因について,下記の黒沢(2001)の分析フレーム ワークに基づき,2 段階推定で分析する。5) 〈定義式:継続就業確率の分解〉 「同一企業で継続して働く確率」 =「当該企業の労働力として留まる確率」 ×「それを条件とした上で就業を継続する確率」 出所:黒沢(2001) 上式の右辺の第 1 項は経済学の枠組みでは機会費用 (期待賃金)に該当し,第 2 項は職種や仕事内容との 適合度(マッチング)に相当する。そこで,前者の代 理変数として,入職前時点における地方公務員進路の 選択要因を用いる。後者については,現在(調査時 点)における就業満足度,および,やりがいに関する ダミー変数を使用する。まず,前章の因子分析で抽出 された 7 因子を用いて入職前要因の影響を検討し(表 5),さらに就業満足度等の現在要因を追加投入して同 様の推定をする(表 6)。説明変数には,上記分析で 抽出された 7 因子に加えて,勤続年数,勤続年数の 2 乗,出生順位であり,AIC基準に基づくステップワイ ズ法により絞り込んだものである。6)被説明変数には, 本調査の今後の職業進路に関する設問で「定年まで公 務員として働きたい」「他の公務員に転職したい」を 選んだ場合を「あり」,それ以外の選択肢を回答した 場合を「なし」とした二値変数を用いるため,推定方 法にはプロビットモデル(Probit Model)を採用した。 2.推定結果 表 5 より,推定 1 および推定 3 の方が推定 2 よりも モデルの当てはまりが良く,初職者や民間からの公務 員転職者において,入職前要因(志望動機)の影響が 就業を継続する意思に繋がりやすいことがわかる。初 職者モデルで統計的に有意な係数をとっているのは勤 続年数,出生順位,および 4 つの志向性(厚遇志向, 公務員志向,地域貢献志向,家族志向)である。すな わち,新卒で公務員として就業する場合,勤続年数が 長くなるほど継続就業の確率が高まり,就業を辞める 人は少なくなる。これは公務員採用試験における受験 表 5 継続就業意思の規定要因(第 1 段階) 説明変数 推定 1 推定 2 推定 3 【初職者群】 【再就職者群(全体)】 【再就職者群(民間→公務員)】 限界効果 t 値 限界効果 t 値 限界効果 t 値 (定数) .309** 4.810 .301** 2.581 .067 .269 勤続年数 .038* 2.416 .001 .148 -.185* -2.203 勤続年数×勤続年数 .002 1.207 .002 .337 .013** 2.259 出生順位(第 1 子) .006* 2.329 -.001 -.043 -.216 -1.063 入職前 1)厚遇志向 -.004** -2.415 .006 .201 -.062 -.299 2)安定/安心志向 .002 .906 -.002 -.273 .137 .522 3)公務員志向 -.005* -2.435 -.001 -.028 .733** 3.179 4)地域貢献志向 -.005* -2.409 -.282* 2.440 .170 .871 5)家族志向 .017** 4.547 .015* 2.005 .520** 2.687 6)自由志向 -.001 -.303 -.001 -.256 -.119 -1.068 7)他人志向 -.001 -.373 -.002 -1.092 .013 1.301 Loglikelihood -479.616 -236.604 -121.437 ScaledR-squared .130 .027 .141 N 953 452 371 注:***:p<0.001,**:0.001<p<0.01,*:0.01<p<0.05 資料出所:表 1 と同じ。年齢上限(通常,大学卒区分で 30 歳前後)に起因す るものと思われる。第 1 子である場合には,こうした 傾向はさらに強まる。ここでは,初職の公務員から他 の公務員に移って就業している転職者も継続就業者と みなし,再就職者群のうち,民間から公務員への転職 者のみを抽出して再推定を行った(推定 3)。その結 果,疑似決定係数は推定 2 よりも大きく改善し,勤続 年数,勤続年数×勤続年数,公務員志向,家族志向で 有意な結果を得た。7)すなわち,民間からの公務員転 職者(n = 371)では,転職後の勤続年数が浅い時期 ほど継続就業の意思が高まりやすく,かつ,公務員へ の転職を夢・人生目標とする場合や家庭の事情等によ る転職の場合に定年まで勤め上げたいと考える者が多 くなるという結果になっている。しかし,公務員間 (公務員→公務員)の転職者(n = 81)を含めた推定 2 では地域貢献志向・家族志向を除き有意な結果は得ら れなかった。8) つぎに,現在要因として,「仕事内容満足」「待遇満 足」「職場環境満足」「やりがい」の 4 変数を追加投入 して推定した結果が表 6(推定 4 〜 6)である。再就職 者群である推定 5 と推定 6 の疑似決定係数が大幅に改 善したが,追加した変数のうち統計的に有意な結果で あったものは仕事内容満足(推定 5・推定 6)と待遇 満足(推定 4)であった。これらの効果のすべてがマ イナスであり,冨田(2001)や高橋・仲神(2007)や 武石(2009)を始めとする多くの先行研究ではみられ なかった効果であるが,就業満足度の低下が継続就業 意思を高めるということを意味しない。9)むしろ,公 務員就業による継続就業の見込みの高さが,初職者の 待遇面満足に対するハードル(基準)を緩和させなが ら継続就業意思を高めること,および,再就職者ほど 仕事内容満足に対するハードルを下げながら継続就業 につながる傾向があるという解釈ができる。この論点 は,日本労働研究機構(1997)が確認する「継続就業 型ほど給与よりも仕事内容や勤務地を重視する傾向」 が初職者群においても認められる可能性を表している。 しかしながら,これらの就業満足が下がる中で継続就 業意思を高めるための代替要因やそのメカニズムの精 緻な検証についてはデータの制約上,一定の限界と言 える。10)
Ⅳ.おわりに
以上,本稿では女性公務員を対象として,長期勤務 表 6 継続就業意思の規定要因(第 2 段階) 説明変数 推定 4 推定 5 推定 6 【初職者群】 【再就職者群(全体)】 【再就職者群(民間→公務員)】 限界効果 t 値 限界効果 t 値 限界効果 t 値 (定数) -.108 -.739 .313* 1.979 .508* 2.536 勤続年数 .006 1.87 -.001 -.193 .018** 2.671 勤続年数×勤続年数 .001 .543 .001 .101 -.002 -.762 出生順位(第 1 子) .079 .777 .242 1.726 -.175 -1.067 入職前 1)厚遇志向 .099 .945 .080 .584 .220 1.183 2)安定/安心志向 -.151 -1.411 -.169 -1.176 -.053 -.318 3)公務員志向 -.001 -.022 .296** 3.341 .316 1.894 4)地域貢献志向 .163 1.517 -.019** -2.782 -.315 -1.894 5)家族志向 .183 1.753 .405** 3.442 .431* 2.567 6)自由志向 .039 .632 .032* 2.509 .299 1.756 7)他人志向 -.003 -.554 -.005 -1.834 -.015 -.088 現在 仕事内容満足待遇満足 -.011*.004 -2.5781.270 -.236*.013 -2.0441.706 -.221*.005 -2.209.516 職場環境満足 .001 .778 -.003 -.705 .020 .568 やりがい -.001 -1.060 -.001 -.388 -.002 -.721 Loglikelihood -465.596 -248.504 -184.263 ScaledR-squared .039 .125 .265 N 953 452 371 注:***:p<0.001,**:0.001<p<0.01,*:0.01<p<0.05が見込める公務員職の進路選択要因や就業満足が継続 就業にどのくらいの影響を与えているのかをプロビッ トモデルを用いて二段階推定により検討した。転職 コーホート別に推定した結果,初職者群では勤続年数 が長いほど継続就業意思が高まるという従来の先行研 究と同様の結果に加えて,家庭の事情により入職する 場合に就業を継続する確率が高まることが確認された。 一方,転職者群では家庭要因で入職する者だけでなく, 公務員就職を人生目標と捉える者が継続就業者に多い ことが明らかになった。しかし,再就職者群における 公務員間(公務員→公務員)の転職者については有意 な結果が得られなかったことからも,高橋・仲神 (2007)と同様,リスクに対する敏感さから民間から 公務員へと再就業選択をする場合に継続就業確率が高 まる可能性が指摘できる。 一方で,就業満足がもたらす継続就業に対する影響 については,就業満足効果が継続就業を促進させると いう過去の先行研究とは逆の結果が得られた。初職者 群モデルでは待遇満足,2 つの再就業者群モデルで仕 事内容満足がそれぞれ有意なマイナスであり,公務員 就職による継続就業の見込みの高さが初職者では待遇 満足度のハードルを低下させ,再就職者群では仕事内 容満足のハードルを押し下げる効果が認められた。こ こでの新しい知見は,女性の継続就業を支援する対策 を充実させることはもとより,公務員のような相対的 に長期勤務が可能な職場にこそ,各個人のニーズに 合った柔軟な働き方を大胆に促進させることの重要性 を示唆している。 しかしながら,就業の継続に従って,それぞれの就 業満足がもつ意味合いが変化し,他の代替要因に取っ て代わる可能性は否定できない。こうした傾向を確認 するためには,今後,サンプルサイズの拡大やサンプ ル期間の延長とともに,新しいコーホートを追加し, 繰り返し分析を進めることが肝要である。そして,本 稿では,入職前の意識要因や入職後の状況が女性の継 続就業に有意な影響を与えているかどうかのファク ト・ファインディングを中心に検討を進めてきたが, 今後さらに社会経済変動などの外的要因を包摂した, 理論モデルを今回の分析結果をもとに構築し,実証分 析を重ねていく必要がある。 註 1) 日本労働研究機構(2000)では,就業前の意識や勤務先 を選んだ理由は初職継続期間にほとんど影響しないとす るが,サンプル対象が民間企業 51.1%,非営利組織(官 庁・学校・病院)が 39.8%,個人営業 8.6%と多様であり, 入職段階の影響を産業別で厳密に分析されたものとはい えない。 2) たとえば,西川(2001)や武石(2009)は,非営利組織 や官公庁での勤務で初職継続の傾向が強いことを実証し ており,仕事と家庭を両立しやすい環境が初職継続を促 進することが確認されている。 3) 公務員のキャリア形成という視座からの研究はそれほど 活発ではない。おおさか市町村職員研修センター(2006) では「これまで公務員の間ではキャリアを築きあげてい くものであるという認識は低かった。しかし,仕事上あ るいは生活上,いかに自分らしい生き方(キャリア)を 設計するかという戦略を持つことが,自立したプロ意識 を持つ公務員の育成を行っていく上で,今後重要性を増 してくると思われる」とあり,各自治体でも WLB 等と同 様に “ 個 ” を重視した取り組みが増えるものと思われる。 4) 黒沢(2001)では中途採用者の方が新卒者よりも入社時 点の継続就業意欲は高くなる傾向が示されている。 5) 本稿では,定義式の右辺のいずれかの項が満たされない 場合には継続就業は困難になるものと想定しているため, 定式化に積の法則を用いている。 6) 除去基準を 10%に設定した結果,「大卒区分」「就職活動 経験」「地域」の 3 変数が除外された。 7) 公務員間の転職者のみのデータを用いた推定は有意な結 果が得られなかったため割愛した。ちなみに,再就職者 群の内訳は,「公務員→公務員」(18.0%),「民間→公務 員」(82.0%)であり,公正な公務の運営や組織活性化を 目的とした官民人事交流の中で,後者が過去 5 年間で 3 倍増と飛躍的に増えている。 8) 公務員間(公務員→公務員)の転職者のみのデータを用 いた同様の推定でも,サンプル数の少なさからも統計的 に有意な結果は得られなかった。 9) 3 つの就業満足度のすべてで初職者群の方が再就業者群よ りも上回る傾向は武石(2009)と共通する。さらに,本 調査において,性別では就業満足度とやりがいのすべて で女性公務員(再就業者群)よりも男性公務員が下回っ た。 10) 筆者自身が 2007 年 9 月〜 2012 年 10 月にかけて,入職 1-10 年目の女性公務員 11 人に対して行った半構造化イン タビュー調査(1 人 30 分程度)では,黒沢(2001)を応 用した以下の定義式に従って確認した。 継続就業意思={自治体職員として留まる確率} ×{自治体職員としての適合度}………① ={「期待賃金」+「やりがい」} ×{「公務員適性」+「就業安定実感」}…② ①式の右辺第 1 項目の “ 労働力として留まる確率 ” は, ②式では期待賃金よりもやりがいの強さが目立ち,①式 の右辺第 2 項目の “ 自治体職員としての適合度 ” は,②式 の右辺第 2 項目では公務員適性の強さの方が顕著であった。 しかし,その詳細については,紙幅の制約上,稿を改め ることとしたい。 参考文献 [1] 青島祐子(2001)『女性のキャリアデザイン』学文社 [2] 神田道子・女子教育問題研究会編(2000)『女子学生の職 業意識』勁草書房 [3] おおさか市町村職員研修研究センター(2006)「自治体職 員とキャリアデザイン」『広域研究活動報告書』キャリア デザイン研究会,財団法人大阪府市町村振興協会 [4] 黒沢昌子(2001)「女性の就業継続意欲の決定要因」『Es
sor』Vol.88,(財)21 世紀職業財団 [5] 小杉礼子(2004)「若年無業者増加の実態と背景─学校か ら職業生活への移行の隘路としての無業の検討」『日本労 働研究雑誌』第 533 号,pp.4-16 [6] 小林敦子(2009)「ジェンダー・ハラスメントが達成動機 に及ぼす効果─地方公務員の女性を対象として」『応用 心理学研究』Vol.34, No.1, pp.10-22 [7] 総務省『労働力調査(平成 22 年)』 [8] 総務省自治行政局公務員課編(2009)『公務員月報』2009 年 9 月号,pp.69-78 [9] 高橋桂子・仲神八重子(2007)「女性の継続就業意欲に影 響を与える要因」『新潟大学教育人間科学部紀要─人文社 会科学編』第 9 巻第 2 号,pp.291-298 [10] 武石恵美子(2009)「キャリアパターン別にみた女性の就 業の特徴」『国立女性教育会館研究ジャーナル』Vol.13, pp.3-15 [11] 東京女性財団(1999)『大卒女性のキャリアパターンと就 業環境』 [12] 冨田安信(2001)「外資系で働く,官公庁で働く─民間 企業での働き方と比べて」脇坂明・冨田安信編『大卒女 性の働き方─女性が仕事をつづけるとき,やめるとき』 日本労働研究機構 [13] 内閣府男女共同参画局編(2011)『平成 23 年版 男女共同 参画白書』中和印刷株式会社 [14] 日本女子大学女子教育研究所編(1987)『女子の高等教 育』ぎょうせい [15] 西川真規子(2001)「高学歴女性と継続就労─就労選好 就労行動の関係を探る」脇坂明・冨田安信編『大卒女性 の働き方─女性が仕事をつづけるとき,やめるとき』 日本労働研究機構 [16] 日本労働研究機構(1997)「女性の職業・キャリア意識と 就業行動に関する研究」『JIL 調査研究報告書』第 99 号 [17] 日本労働研究機構(2000)「高学歴女性の労働力率の規定 要因に関する研究」『JIL 調査研究報告書』第 135 号 [18] 平尾桂子(1999)「女性の初期キャリア形成期における労 働市場への定着性─学歴と家族イベントをめぐって」 『日本労働研究雑誌』第 427 号,pp.29-41
[19] Bernett, R.C., K.C. Gareis and P.L. Cerr, (2005)”Career Satisfaction and Retention of a Sample of Women Physi-cians Who Work Rduced Hour,” Journal of Women’s Health, Vol.14, No.2, pp.146-153.
[20] Simpson, I.H., R.L. Simpson, M. Evers and S. S. Poss (1982)”Occupational Recruitment, Retention, and Labor Force Cohort Representation,”American Journal of Soci︲ ology, Vol.87, No.6, pp.1287-1313.
[21] Waite, L.J. and S. E. Berryman, (1986) ”Job Stability am-aon Young Women: A Comparison of Traditional and Nontraditional Occupations,” American Journal of Sociol︲ ogy, Vol.92, No.3, pp.568-595.
[22] Waldfogel, J., Y. Higuchi and M. Abe, (1999)”Family leave policies and women’s retention after childbirth: Evi-dence from the United States, Britain, and Japan,” Jour︲ nal of Population Economics, Vol.12, pp.523-545.