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マインドフルネスと怒りの関係―媒介要因の検討―

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-21 338

-マインドフルネスと怒りの関係―媒介要因の検討―

○松浦 可苗1)、佐藤 健二2) 1 )徳島大学病院精神科神経科、 2 )徳島大学大学院社会産業理工学研究部 社会総合科学域 問題 怒りは高血圧・冠状動脈疾患(鈴木・春木,1994) など,様々な問題の原因となりえる。怒りを適切にコ ントロールすることが身体的・心理的健康および社会 的関係性の維持に重要であると考えられる。 怒りへ対処する場合にはまず自己の感情から注意を そらす必要があるが,怒り感情から注意をそらすこと に失敗した場合には,繰り返し感情に注意を向ける反 すうとなり,怒りが高まってしまう可能性が示唆され ている(日比野・吉田,2006)。反すうから抜け出す ために重要なのは,情報を脱中心視・脱同一視パター ンで処理することである(勝倉ら,2009)。このパター ンは,マインドフルネスと呼ばれる方法を用いること で身につけることができる。つまりマインドフルネス トレーニング(MT)を行うことで,怒り感情に対して 脱中心化・脱同一化した視点を獲得することができ, 結果的に反すうが減少し,怒りが低減すると考えるこ とが出来る。 Bordersら(2010)では,マインドフルネスが反す うおよび怒り・敵意・攻撃性と有意な負の相関を示し たほか,マインドフルネスと怒り・敵意との関係に反 すうが媒介していることが明らかになった。一方で, 平野・湯川(2013)では,マインドフルネスと怒りの 反すう,怒りの喚起・持続傾向との関連について, 1 週間の継続的なマインドフルネス瞑想を通した検討が 行われた。その結果,怒りの喚起・持続傾向は実験群 と統制群の間に有意な差はなく,全体的に介入期前か ら 4 週間後のフォローアップにかけて有意に低減して いた。怒りの喚起・持続傾向について,統制群と実験 群の間に差が見られなかった理由として,平野・湯川 (2013)は,介入期間の短さ( 1 週間)と怒りの喚起 傾向・持続傾向を規定する反すう以外の要因の存在が あるのではないかと考察している。 反すう以外にマインドフルネスと怒りの媒介変数と な り う る 変 数 に 共 感 性 が あ る。Block-Lernerら (2007)は,マインドフルネスには,自分の感情プロ セスへの気づきが含まれており,この自己の感情への 気づきは,他者の経験を理解する能力(視点取得能力) の発達に必要不可欠であるとした。さらに日比野・湯 川(2004)では,怒りを積極的にコントロールしてい くためには,相手への配慮や共感性といった認知処理 過程をいかに迅速かつ適切に生じさせ得るかが重要な 鍵であることが示唆されている。 以上より、マインドフルネスと怒りとの間に共感性 が媒介していることが予想されるが、マインドフルネ ス・共感性・怒りを同時に検討した研究はなく,マイ ンドフルネスが怒り感情を低減させるプロセスには不 明な点も多い。よって,本研究では,マインドフルネ スと怒りを媒介する新たな要因として共感性を挙げ, その関係性を探索する。それとともに,従来から着目 されてきた反すうと併せて,マインドフルネスが怒り 感情に及ぼす効果についてモデルを作成する。これに より,マインドフルネスが怒り感情にどのように影響 を及ぼしているのかを知る事ができれば,マインドフ ルネスを使った怒り感情のコントロール方法の手続き をより精緻化することが可能である。 方法 対象  A 大学に通う大学生373名を対象に,質問紙調 査を行った。使用した尺度のうち,いずれか 1 つでも 無回答のものがあった25名を除き,348名(男性165名, 女性176名,不明 7 名)を分析対象とした。欠損値は 平均値で補った。調査対象者の平均年齢は20.20± 2.16歳であった。 使 用 し た 質 問 紙 F i v e F a c e t s M i n d f u l n e s s Questionnaires日 本 語 版( 以 下FFMQ;Sugiura,et al., 2012),青年期用多次元的共感性尺度(登張, 2003),怒り喚起・持続尺度(渡辺・小玉,2001),日 本版怒り反すう尺度(八田・大渕・八田,2013) 倫理的配慮 本研究は倫理委員会の承認を受けてはい ないものの、研究協力者に,文書と口頭で,研究の内 容,研究協力は自由である旨を説明し,同意を得た。 結果 スピアマンの順位相関係数を算出した(表)。さら に,Bordersら(2010)の結果を参考に,マインドフ ルネスが反すうと共感性を媒介し怒りを低減させるモ デルを作成し,適合度を調べた結果,採択可能である と 考 え ら れ る モ デ ル が 構 築 さ れ た(χ2 (17)=17。 664,p=.478,GFI=.990,AGFI=.971,RMSEA=.000;図)。 マインドフルネスと怒りの間の媒介効果を検討した結 果,FFMQの下位尺度のうち「判断しないこと」・「反応 しないこと」・「意識した行動」が反すうを媒介して怒 りを低減させることがわかった。さらにFFMQの下位検 査のうち「観察」「描写」と「怒りの喚起」との間を 共感性の下位尺度のうち,「気持ちの想像」が媒介し ていることが分かった。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-21 339 -考察 「判断しないこと」,「反応しないこと」は,いずれ の尺度も自分の考えや体験を受容することを表す尺度 である。また,「意識した行動」は“現在の行動に注 意を向けていること”(杉浦,2009)であると言われ ている。つまり,現在の経験や感情に注意を向け,そ こから距離を置き,あるがままを受容する態度が,怒 り経験に対する反すうの状態を低減させ,怒りを低減 させたことが示唆された。 さらに、FFMQの下位尺度ごとに見ていくと,「観察」 「描写」は,どちらも自分の内的な体験(感情・認知) に注意を向ける尺度である。「気持ちの想像」には“他 者の感情を認知する”(登張,2003)という内容が含 まれており,Bremsら(1992)が指摘するように,自 己の認知・感情に気付く傾向が,他者の認知・感情に 気付くことに繋がることが示唆された。そして,他者 の認知・感情に気付くことが出来ることは,自分の置 かれている状況を生じさせた要因に気付くことでもあ り,それを理解し,受け入れることで怒りが生じにく くなると考えられる。 限界と展望 本研究では脱中心化・脱同一化を測定しておらず, 理論通りにこれらが促進されたことにより怒りの反す うが低減したのかが明らかになっていない。マインド フルネスを怒りの反すう・怒りに関連すると考えられ る変数を精査し,マインドフルネスが怒りを低減させ るプロセスをさらに精緻化する必要がある。 本研究は,マインドフルネスがどのようなプロセス を経て怒り感情を低減させるのかを探索することを目 的として,マインドフルネスを共感性,怒りの反すう, 怒りの関係を調査した。怒りを鎮めるためにMTなどの マインドフルネス的な介入を行うことは,精神的健 康・身体的健康の維持に役立つのみならず,司法矯正 分野での犯罪者・非行少年への更生プログラムへの活 用も期待できる。 主な引用文献 平野美紗・湯川進太郎(2013). マインドフルネス瞑 想の怒り低減効果に関する実験的検討 心理学研究 84 ( 2 ), 93-102.

参照

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