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発 達 心 理 学 研 究 1996,第7巻,第1号,1−11 原 著

絵本場面における母親と子どもの対話分析:

フォーマットの獲得と個人差

石 崎 理 恵

(七尾短期大学) 本研究は,絵本を媒介とした母親と子どもの対話を縦断的に分析することによって,①フォーマット はどのように形成されて,変化するのか②フォーマットの使用に第一子と第二子の個人差はあるのか について調べることを目的とした。第一子は8カ月から3歳0カ月まで,第二子は1歳0カ月から3歳 0ヵ月まで観察した。その結果次のことが明らかになった。①フォーマットの獲得は,形成期(母親が 主導する),習得期(子どもが参加する),使用期(母親と子どもが役割交替をする)へと進むが,2歳 台では文化差の存在が示唆された。②第一子と第二子に対して使用されるフォーマットには違いがみら れた。第一子との対話には質問反応型が多く,第二子との対話には情報提供型が多く使用された。その 要因として,第一子と第二子に対する母親の子育て観の違い,第二子と母親の対話への第一子の同席状 況,子どもの言語習得スタイルなどが考えられた。 【キー・ワード】母親と子どもの対話,絵本場面,フォーマット,個人差,出生順位差

問 題 と 目 的

幼児の言語習得過程を説明するため,様々な理論が展 開されてきた。その中で最近関心を集めているものに, 子どもと大人との社会的相互作用に注目した研究がある。 Bruner(1975)は,母親と子どもの間にみられる言語を 獲得する以前のやりとり遊びが,非常に儀式化されたも のであることを指摘し,それが言語構造を理解しやすい 状況を作り出していると述べた。Ninio,&Bruner(1978) は,絵本を媒介とした母親と子ども(0;8∼1;6) のやりとりを分析し,そこに一定のフォーマット(format) が形成されることを見出した。母親の発話は,注意喚起, 質問,ラベルづけ,フィードバックという4つのキー発 話に限られており,それらの生起順序に厳密な規則があ るというものである。このフォーマットはまだ言語能力 の未熟な子どもに,会話の展開を予測しやすくさせる便 利な教授システムである。フォーマットの形成は最初母 親が主導権を握り,やがて子どもも同等に参加できるよ うになり,ついには子どもが主導権をとるようになる。 その後もフォーマットは必要に応じて変化し,複雑なも のになっていく(Bruner,1985)。このようなフォーマッ トの形成が,言語習得のために必須のものと考えられる。 言語習得過程として母子相互作用に注目した研究は, いくつか考慮しなければならない問題を見出した。第一 に,子どもの能動的な役割についてである。母子相互作 用はもっぱら母親が子どもに合わせて会話を維持してい ると思われるため,子どもの能動的な役割は軽視されが ちであった。しかしMurray,&Trevarthen(1986)は, 子どもが母親に敏感に反応することが,母親の言語内容 と文体の特徴に一貫した変化をもたらすことを明らかに した。 第二に,生得的な言語習得仮説では扱われなかった個 人差の問題である。具体的には,言語習得スタイルに個 人差があるとするものが多い。たとえばNelson(1981) は,子どもがもっている語童の種類からreferentialchildren とexpressivechildrenに分類し,この2つのスタイルは 一貫したものではなく,文脈や発達的に移行が生じるよ うだと述べている。このような個人差を説明する要因と して,子どもの気質や認知スタイル,教育程度,出生順 位,社会階層,学習課題へのアプローチをあげている。 言語発達を考えるうえで考慮しなければならないもう一 つの個人差は,対話スタイル(interactionalstyle)の個人 差である。Kaye,&Charney(1981)は,母親が子どもに 反応を要求する程度には個人差があると述べており,別 の研究(Kaye,1982)において,母親の対話スタイルの 個人差は母親の子どもに対するイメージの相違によって 生じるのではないかとしている。 第三に,母子相互作用以外の社会的相互作用の問題で ある。子どもの言語発達環境を考えた場合,必然的に母 子相互作用の占める割合が高いので,多くの研究がそれ に集中してきた。ところが最近家族をベースにした研究 の重要性が注目され,父親ときょうだいの影響を扱った 研究も現われるようになった。特に母親と年長児,母親 と年少児の相互作用を比較したものが目立つ。それらの 研究は,年長児が一緒にいる状況では母親が年少児に話 しかけることは少なくなるという結果で一致している (Woollett,1986;Jones,&Adamson,1987)。そのうえ, 母親は年少児の反応を引き出すことばをあまり使用しな くなり,このようなことばの使用が子どもの言語能力と 関連があったとする研究もある(Jones,&Adamson,1987)。

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分09赤 2 第四に,母子相互作用の文脈設定の問題である。母子 相互作用は文脈によって非常に影響を受ける(Snowbl977; Levin,&Snowう1985;Kaye,&Chameyb1981;Jones,& Adamson,1987)ので,言語習得システムとして重要な 慣例化されたやりとりを分析するためには,研究の文脈 を一定にする必要がある。これまでの研究をみると,book readingとfreeplayのいずれかまたは両方を分析したもの がほとんどである。どちらの文脈も家庭で一般的にみら れる母親と子どものやりとり遊びであることから,子ど もの言語発達を研究するうえで適切な文脈といえるだろ う。ここでは,より言語習得システムとして機能しやす いbookreadingの文脈を取り上げることにする。 これまでのbookreadingに関する研究では,フォーマッ トが形成されること(Ninio,&Bruner,1978),子どもの 言語レベルに合わせて母親が教授システムを調節するこ と(Niniobl983;Wheeler,1983),母親自身が自分のペー スで読み進めていく過程に子どもが自然に巻き込まれて 名称を習得していくこと(外山,1989),bookreadingの もつ慣例化された性質と何度も特定の本を繰り返し読む 機会が子どもの言語習得に影響を与えること(Snow,& Goldfield,1983)などが論じられてきた。しかしまだ日本 では,フォーマットを通した言語習得過程について詳し い研究はない。また,先に述べた個人差の問題はここで も重要である。つまりbookreadingはどの母子について も慣例化されているが,ルーティーン(routine)の性質 はそれぞれの母子によって異なるということである。た とえばNinio(1980)は,母親のWhatQuestionとWhere Questionの使用について社会階層間に有意な差がみられ ると述べている。さらにSnow,Nathan,&Perlmann (1985)は,子どもが母親のbookreadingstyleの特性を 学んでいくかどうかを調べた。かつて母親がトピックを 導入する際使用した方略(情報提供,質問,注意喚起) は,母親によって異なるが,子どもの方略は母親のもの と一致しなかった。しかし,この研究の対象児は1歳8ヵ 月から1歳11ヵ月で,2歳以降の子どもと母親のbook readingstyleに関連がないかどうかは明らかではない。ま た,出生順位によるbookreadingstyleの個人差を扱った 研究もない。 そこで本研究は,絵本を媒介とした母親と子どもの対 話を縦断的に分析することによって,次の問題点を調べ ることを目的とする。 1.フォーマットはどのように形成されて,変化する のか。 2.フォーマットの使用に第一子と第二子の個人差は あるのか。あるとすれば,その要因は何か。

方 法

被験者K市内に在住する母親と2人の女児。W児(第 一子)とS児(第二子)は,1歳9ヵ月違いの姉妹。家 族は父親,兄を含め5人。観察はW児が8ヵ月から3歳 0ヵ月まで,S児が1歳0ヵ月から3歳0ヵ月まで行わ れた。調査年は1983年1月から1987年2月までであった。 ただし,1984年2月にS児出産のため2ヵ月中断したの で,W児の1歳9ヵ月と1歳10ヵ月のデータはない。ま た,S児が1歳1ヵ月,1歳5ヵ月,1歳10ヵ月の時は, 絵本を媒介とした母子相互交渉場面が観察されなかった。 S児が2歳8ヵ月の時は,家庭訪問ができなかった。W 児の初語および指さしの出現は10ヵ月,二語発話の出現 は1歳4ヵ月。S児の初語および指さしの出現は1歳1ヵ 月,二語発話の出現は1歳8ヵ月であった。 手続き約1ヵ月間隔で,観察者が家庭を訪問し,絵本 を媒介とした自然な母子相互交渉場面をVTR撮影した。 W児については母親との二人場面で観察したが,S児に ついてはW児を同席させないで観察を行うことができな かったので,母親とW児の三人場面で観察した。ただし, S児と母親との絵本場面にW児が割り込んでくることは ほとんどなかった。絵本は次のものが使用された。「どう ぶつのおやこ」「じどうしや」(共に福音館)「おどうぐ」「あ かずきんちゃん」(共に小学館),W児1歳2ヵ月時から「ぼ くのうちのどうぶつえん」「いただきまあす」「いってきま あす」「どうすればいいのかな」(共に福音館)も併用され た。S児は撮影開始の1歳0ヵ月時から8冊全部が用意 Tablel総対話サイクル数仕段ノと分析録画時間(下段ブ 州一Ⅷ 等‘M壬 発 達 心 理 学 研 究 第 7 巻 第 1 号 53 − 8分04秒

児齢児

月W

S児 ■■■■■■■■■■■■■■■■ 1;9 39 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 3;0 11 3分34秒 5分09秒 0;8 O;9 O;10 0;11 1;0 l;1 l;2 1;3 l;4 1;5 1;6 1;7 1;8 1 4 2分11秒 1 1 1分30秒 27 4分53秒 23 4分01秒 70 10分16秒 62 9分14秒 49 6分14秒 79 10分23秒 79 11分13秒 116 14分06秒 106 12分05秒 113 15分14秒 108 11分59秒 1 1 1分11秒 47 6分39秒 22 1分53秒 8 1分42秒 26 4分03秒 21 2分50秒 7 0分27秒 1;11 2;0 2;1 2;2 2;3 2;4 2;5 2;6 2;7 2;8 2;9 2;10 2;11 85 18分48秒 64 16分29秒 105 25分35秒 87 16分09秒 46 13分15秒 72 20分06秒 75 24分19秒 42 14分31秒 64 22分22秒 72 21分45秒 30 5分35秒 86 16分37秒 38 9分09秒 14 2分05秒 13 2分27秒 4 0分39秒 107 19分09秒 41 6分05秒 19 2分56秒 86 14分31秒 38 7分26秒 55 9分04秒 26 5分41秒 43 8分57秒 77 12分31秒

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絵本場面における母親と子どもの対話分析 3 された。絵本の選択は母親の自由にまかせられた。母親 には「いつもしているように絵本を読んであげてくださ い。」という教示が与えられた。 分析方法VTR録画を再生し,母親と子どものすべての 発話,発声および行動(指さし,視線の方向,ページを めくること等)を文字化した後,次のようなNinio,&Bruner (1978)の対話サイクルの定義に従い,対話サイクルの評 定を行った。 (1)対話サイクルの始まり①絵本がある絵に開かれた時 ②母親か子どもが絵に注意し,指さしをしたり,身振 りをしたり,本の内容について発声した時 (2)対話サイクルの終わり①絵が閉じられた時②新し い絵が紹介された時(新しい対話サイクルの始まり) ③子どもの注意が絵から離れた時(大人へ向けた子ど もの視線は,子どもが数秒内に絵へもどり,他の活動 をしないなら,対話サイクルの終わりとはみなされな い)④母親の注意が2∼3秒以上の間,絵本から離 れ た 時 本研究と関係のない第三者に評定基準を渡し,対話サ イクルの評定を行ったところ,その一致度は95.4%であっ た。各月齢における総対話サイクル数と分析録画時間を Tablelに示した。S児の対話サイクルが1歳4ヵ月,1 歳8カ月,2歳1カ月で少ないのは,W児に母親と本を 独占されたことと,別の遊びに熱中していたためである。 どのようなフォーマットが形成され,フォーマットの 内容がどのように変化するのかを分析するため,対話サ イクルに含まれる発話および発声と行動を,母親と子ど も両方について次のカテゴリーに分類した。 (1)注意喚起相手の注意を喚起する発話,発声および行 動(名前を呼ぶ,ほら,ンン,指さし等) (2)命名対象にラベルづけをする(例:これワンワンよ) (3)質問絵本内の事柄およびそれに関連する事柄につい ての質問①What型質問(例:これなに?)②Which

型質問(例:ワンワンどれ?)③What-doing型質問

(例:くまさんなにしてるの?)④その他 (4)説明絵本内の事柄およびそれに関連する事柄につい ての説明(例:くまさんこぼしちやった) (5)フィードバック質問をした人が与える正答,承認(あ いづち,模倣),訂正 これら5種類の発話をキー(key)発話と呼ぶことにす る。対話サイクルの分析は,どちらの被験児にもすべて のキー発話が出揃うまでの期間を対象にした。結果とし て対話方略の拡充が遅かったS児にキー発話が出揃った 年齢が2歳2カ月だったので,両被験児の2歳2ヵ月ま での対話サイクルを月毎に分類し,その実数とパーセン トを求めた。分析は主にパーセントにもとづいて行われ た。それは,被験児によって月齢ごとの総対話サイクル 数が異なるため,実数よりもパーセントの方が変化を見 やすく,W児とS児の比較もしやすいからである。さら に,パーセントの高い方略の組合せが,フォーマットと 考えられるからである。 フォーマットの個人差を詳しく分析するため,2歳以 母親主導型 母子交替型 子 ど も 主 導 型 Table2キー発話の使用者による対話サイクルの分類 <W児2歳0カ月〉 母:(指さして)これなんだろう? 子:しんご。 母:(指さして)しんごうね。信号が赤だから止まってるのよ・ <W児2歳4カ月〉 母:(指さして)くまさんどうして立ってるの?どうして歩かないの? 子:(指さして)アー,しんごうがあかだからとまってる。 母:そうだね。信号が赤だから止まってるのね。 <W児2歳3カ月〉 母:はしをわたってだって。(指さして)これベンチだね。 子:わこんちベンチある。 母:わこんちベンチないでしよ。 子:ある1 母 : ど こ に あ る の ? 子:(指さして)あそこ。 母:あれおいす。ベンチ,ほらえっと,まさきくんのおうちんとこベンチあ るでしよ。ね,あれベンチ。 <W児2歳4カ月〉 子:(指さして)これ,これなに? 母:へい・ 子 : こ れ へ い ? 母:そうよ,へい・ 子:(指さして)くましやんへいのぼってる。 母:そうだね。 子:(指さして)これ。 母:ん,へい・

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4 発 達 心 理 学 研 究 第 7 巻 第 1 号 Table3キー発話の内容による対話サイクルの分類 情報提供型 質 問 反 応 型 情 報 質 問 型 <S児2歳10カ月〉 母:あれあれ。くまさんこぼしちゃった。 子:ジャムこぼしちやった。 母:ん。ジャムこぼしちやった。 <W児2歳10カ月〉 母:はい。どうしたの? 子:ジャムこぼしたの。 母:ジャムこぼしたの。 <W児2歳11カ月〉 母:あれあれ。ジャムこぼしちやった。 わこちやんはジャムこぼさなかった? 子:ん。 母:こぼさなかった? 子:ん。 母:ほんと? 子:ん。 降の対話サイクルについては,キー発話を誰が使用した かによって,次の3つに分類した。 (1)母親主導型母親がキー発話を使用する (2)母子交替型母親と子どもが交替でキー発話を使用す る (3)子ども主導型子どもがキー発話を使用する それぞれの例をTable2に示した。また,母親と子ども がどのようなキー発話を使用したかによって,次の3つ に分類した。 (1)'情報提供型情報のキー発話(命名,説明)を使用する (2)質問反応型質問のキー発話を使用する (3)情報質問型情報と質問のキー発話を使用する それぞれの例をTable3に示した。

結 果

1.フォーマットの変化 対話を始めるには,まず母親と子どものどちらかがきっ かけを作らなければならない。しかもこの最初のきっか

けが,その後の対話の内容を決定するうえで重要である。

対話サイクルの開始者を示したのがTable4である。母親 が始めた対話サイクルと子どもが始めた対話サイクルで は,フォーマットの内容が異なるので,両者を別々に分 析する。 (1)母親が対話サイクルを開始する場合 ①母親の注意喚起 母親が注意喚起で始めた対話サイクルの割合は,絵本 を媒介とした母子相互交渉の観察開始から4∼5カ月は 50%を越えていたが,徐々に少なくなった。 ②母親のキー発話の種類 母親が使用した注意喚起とフィードバック以外のキー 発話を示したのがTable5である。最初は命名の使用が一 番多く,次に質問の使用が多くなり,2歳になると説明 の使用が以前と比べて目立って多くなっていた。 ③母親の質問の種類と子どもの正答率 子どもの言語発達に伴い,母親はどのような質問をし ているのだろうか。母親の質問の種類と子どもの正答率 を示したのがTable6である。母親が適切と判断した応答 を正答とみなした。What型質問は絵本を使用し始めた時 からみられ,Which型質問と共に1歳台で代表的な質問

だった。Whaトdoing型質問はごくわずかしかみられなかっ

た。 What型質問よりWhich型質問の正答率の方が高かっ た。これは子どもにとって物の名前を理解することの方 が,産出することより簡単であるためと考えられる。 母親からの質問が少なかったs児との対話場面では確 認できなかったが,母親からの質問が多かったW児との 対話場面では,母親はWhat型質問とWhich型質問の正 答率が上がるにつれ,それらの質問を増やしていき,Which 型質問の正答率が高い水準で維持されるようになると, Which型質問を減らしていくことが確認された。 ④母親のフィードバック 母親は質問のキー発話を使用することが多いが,質問 を含む対話サイクルにおいて,子どもの反応にかかわら ずフィードバックをするかどうかを分析した。母親はど の月齢においても比較的高い割合(平均;W児75.1%, S児69.4%)でフィードバックを返していた。つまり母 親は,自分の質問→子どもの反応または無反応→母親の Table4対話サイクルの開始者 ■■■■■■■■■■■■ − 月 齢 0;8 0;9 0;10 0;11 1;0 1;1 1;2 l;3 1;4 1;5 1;6 1;7 1;8 1;9 l;11 2;0 2;1 2;2 8 W 児 90.8% 9.2% 8 79 母 親 子 ど も 14 100.0% 0 0.0% 11 100.0% 0 0.0% 22 81.5% 5 18.5% 20 95.7% 3 4.3% 64 91.4% 6 8.6% 54 87.1% 8 12.9% 40 81.6% 9 18.4% 59 74.7% 20 25.3% 66 83.5% 13 16.5% 82 70.7% 34 29.3% 83 78.3% 23 21.7% 90 79.6% 23 20.4% 97 89.8% 11 10.2% 59 69.4% 26 30.6% 61 95.3% 3 4.7% 104 99.0% 1 1.0% 1 24 10 2 25 20 4 17 9 13 2 99M 母親 9.1% 51.1% 45.5% 25.0% 96.2% 95.2% 57.1% 32.1% 64.3% 100.0% 50.0% 87.9%87.99 S児 10 23 12 6 1 1 3 36 5 0 2 13 子 ど も 90.9% 48.9% 54.5%75.0% 3.8% 4.8%42.9%67.9%35.7%0.0% 50.0% 12.1%

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5 Table5母親のキー発話の種類 % 0% bjWi ’1 J j% ツ.4% % 注.その他には,注意喚起のみ,説明十質問,命名十質問,命名十説明,説明十命名十質問が含まれている。 Table6母親の質問の種類とその数(上段)及び子どもの正答率(下段ノ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ]4 』 【)0.(】 絵本場面における母親と子どもの対話分析 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ F1 L』 1 1 50.0 注.その他には,Where型,What-color型,Who型,How型,YesNo型,及び2種類以上の質問の組合せが含まれている。 フィードバックというフォーマットを繰り返していた。質問5,What-doing型質問1で,S児の質問は,Yes−No ( 2 ) 子 ど も が 対 話 サ イ ク ル を 開 始 す る 場 合 型 質 問 1 の み で あ っ た 。 説 明 の 使 用 は W 児 5 回 ( 絵 の 叙 ①子どもが対話サイクル開始に使用したキー発話述3,物の所有2),S児4回(絵の叙述3,自分のこと 子どもが対話サイクル開始に使用したキー発話を示し1)であった。 たのがTable7である。注意喚起において,S児の1歳子どもが注意喚起,命名,質問,説明のキー発話を使 0カ月では音声のみ,W児の10カ月,S児の1歳2カ月でえるようになったのは,W児が1歳11カ月,S児が2歳 は指さしあり,W児の1歳8ヵ月,S児の1歳9ヵ月で2ヵ月であった。 は指示語ありだった。命名において,W児の1歳11ヵ月②子どもの注意喚起に対する母親の反応 で は 「 こ れ ∼ よ 」 の 形 だ っ た 。 母 親 は 自 分 が 始 め た 対 話 サ イ ク ル だ け で な く , 子 ど も 子どもは注意喚起によって対話を始めることが多いが,が始めた対話サイクルにも規則的に対応した。子どもが 次第に命名によって対話を始めることが多くなった。2注意喚起で対話サイクルを始めた場合の母親の反応を示 歳前後になると,質問や説明で対話を始めることもみらしたのが,Table8である。W児の1歳2カ月と1歳4力 れた。W児の質問は,What型質問7(回),Yes−No型月の質問は,聞き返しだった。 10.1% 5 W 児 S 児 月齢 43.6% 2;2 1 1.3% 45 57.0% 25 31.6% 8 11.7%

S児

5.3% 41 13 25 52.0 14 57.1 10 60.0 3 37 39.4% 11

W児

100.0 0/ − 月齢 0;8 0;9 0;10 O;11 1;0 l;1 1;2 1;3 1;4 1;5 1;6 1;7 1;8 l;9 1;11 2;0 2;1 命 名 質 問 説 明 その他 8 57.1% 2 14.3% 0 0.0% 4 28.6% 7 63.6% 1 9.1% 2 18.2% 1 9.1% 19 86.4% 2 9.1% 0 0.0% 1 4.5% 11 55.0% 7 35.0% 2 10.0% 0 0.0% 38 59.4% 20 31.3% 2 3.1% 4 6.2% 28 51.9% 24 44.4% 1 1.9% 1 1.9% 22 55.0% 11 27.5% 6 15.0% 1 2.5% 19 32.2% 30 50.8% 9 15.3% 1 1.7% 12 18.2% 48 72.7% 6 9.1% 0 0.0% 17 20.7% 59 72.0% 5 6.1% 1 1.2% 36 43.4% 33 39.8% 10 12.0% 4 4.8% 9 10.0% 69 76.7% 12 13.3% 0 0.0% 11 11.3% 82 84.5% 4 4.1% 0 0.0% 1 1.7% 55 93.2% 1 1.7% 2 3.4% 0 0.0% 14 23.0% 37 60.7% 10 16.4% 0 0.0% 36 34.6% 45 43.3% 23 22.1% 命 名 質 問 説 明 その他 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 17 70.8% 3 12.5% 2 8.3% 2 8.3% 7 70.0% 2 20.0% 0 0.0% 1 10.0% 1 50.0% 1 50.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 25 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 5.0% 18 90.0% 0 0.0% 1 5.0% 0 0.0% 4 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 2 11.8% 7 41.2% 4 23.5% 4 23.5% 0 0.0% 5 55.6% 2 22.2% 2 22.2% 1 7.7% 3 23.1% 6 46.2% 3 23.1% 0 0.0% 2 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0;8 0;9 0;10 0;11 1;0 1;1 1;2 1;3 1;4 l;5 1;6 1;7 1;8 1;9 1;11 2;0 2;1 What型 Which型 What-doing 型 そ の 他 2 0.0 0/ 0 / 0 1 0.0 0 / 0 / 0 2 0.0 0/ 0 / 0 5 0.0 2 0.0 0 / 0 11 9.1 9 22.2 0 / 0 4 25.0 19 63.2 1 0.0 0 7 42.9 1 0.0 0 / 3 8 50.0 20 55.0 1 100.0 1 15 60.0 32 71.9 0 / 1 20 65.0 34 82.4 4 50.0 2 26 69.2 6 83.3 1 0.0 3 23 78.3 42 85.7 1 100.0 3 26 65.4 50 80.0 1 100.0 5 47 70.2 0 / 0 / 8 9 55.6 1 100.0 3 66.7 6 27 59.3 15 80.0 3 100.0 8 What型 Which型 What-doing 型 その他 0 / 0 / 0/ 0 1 0.0 3 33.3 0 / 0 0 / 2 0.0 0 / 0 1 0.0 0 / 0/ 0 0 / 25 52.0 0/ 0 2 0.0 15 60.0 0 / 2 4 0.0 0 / 0 / 0 2 0.0 2 100.0 0 / 3 0/ 1 0.0 1 0.0 3 1 0.0 5 60.0 0 / 0 0 / 2 100.0 0/ 0

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発 達 心 理 学 研 究 第 7 巻 第 1 号 Table7子どもが対話サイクル開始に使用したキー発話 L).0% ] 【).0% ]、0% J,8% Table8子どもの注意喚起に対する母親の反応 注.その他には,あいづち,模倣,子どもの気持ちの叙述が含まれている。 母親は子どもの注意喚起に対して命名で答えることが減るのがみられた(W児1歳11ヵ月)。

多かった。母親にとって子どもの注意喚起は,What型質母親は命名以外に質問でも答えていた。母親がW児に

問と同じ機能を果たすことになった。①でみられたよう行った質問は,What型質問4,What-doing型質問2,

に,W児では1歳8カ月,S児では1歳9カ月に指示語S児に行った質問は,What型質問3,What-color型質問 つきの注意喚起(「これ」と言って指さしをする)がみら1,How型質問2,Yes−No型質問1であった。 れ,What型質問(「これなに?」)と似た形となった。そ③子どもの命名に対する母親の反応

して注意喚起は子どもがWhat型質問をするようになると子どもが命名で対話サイクルを始めた場合の母親の反

rl L」 J、09( 【 1 J% ]0.0% 〕.0% J,0% 0 J、0% J、0% 6 1 J% 〕.0% ]0.0% W − W 児 S 児 月 齢 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 2;2 1 12.5% 4 50.0% 0 0.0% 3 37.5% 0.0% 7.7% 8 61.5% 0 0.0% 4 30.8% 100.0% 0 1 児 S 児 月 齢 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 2;2 0 0.0% 0 0.0% 1 0.0% 100.0% 0.0% 0 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0;8 0;9 0;10 O;11 l;0 l;1 1;2 1;3 1;4 l;5 l;6 1;7 l;8 1;9 l;11 2;0 2;1 命 名 質 問 説 明 反 応 な し そ の 他 0 /

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2 50.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 25.0% 1 25.0% 1 33.3% 0 0.0% 0 0.0% 1 33.3% 1 33.3% 0 / 0 /

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0 / 0 / 2 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 4 50.0% 1 12.5% 0 0.0% 3 37.5% 0 0.0% 3 75.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 25.0% 0 0.0% 6 66.7% 2 22.2% 0 0.0% 1 11.1% 0 0.0% 8 53.3% 2 13.3% 0 0.0% 4 26.7% 1 6.7% 1 50.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 50.0% 5 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 7 77.8% 2 22.2% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 3 75.0% 1 25.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 50.0% 1 50.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 /

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命 名 質 問 説 明 命名十説明 反 応 な し 3 30.0% 1 10.0% 6 60.0% 0 0.0% 0 0.0% 20 87.0% 0 0.0% 0 0.0% 2 8.7% 1 4.3% 11 91,7% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 8.3% 5 83.3% 1 16.7% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 7 26.9% 2 7.7% 13 50.0% 4 15.4% 0 0.0% 0 0.0% 2 66.7% 1 33.3% 0 0.0% 0 0.0%

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4 80.0% 1 20.0% 0 0.0% 0 0.0% 3 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 6 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 2 25.0% 6 75.0% 0 0.0% 0 0.0% 8 88.9% 1 11.1% 0 0.0% 0 0.0% 4 20.0% 16 80.0% 0 0.0% 0 0.0% 9 69.2% 4 30.8% 0 0.0% 0 0.0% 15 44.1% 19 55.9% 0 0.0% 0 0.0% 2 8.7% 21 91.3% 0 0.0% 0 0.0% 5 21.7% 18 78.3% 0 0.0% 0 0.0% 9 81.8% 2 18.2% 0 0.0% 0 0.0% 4 15.4% 7 26.9% 13 50.0% 2 7.7% 2 66.7% 1 33.3% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 注意喚起 命 名 質 問 説 明 10 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 23 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 12 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 6 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 33.3% 2 66.7% 0 0.0% 0 0.0% 26 72.2% 10 27.8% 0 0.0% 0 0.0% 3 60.0% 2 40.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 / 0 / 0 / 0 / 0 0.0% 1 50.0% 1 50.0% 0 0.0%

(7)

7 Table9子どもの命名に対する母親の反応 J9f Ⅷ︺ J、0% 『1 J J、0% ]% ].09 0 〕% 妬 ]% 』 〔).0% 抑f 絵本場面における母親と子どもの対話分析 1 rl L』 J,0% 注.その他には,子どもの気持ちの叙述,反応なしが含まれている。 応を示したのがTable9である。子どもが正しい命名をし た場合,母親は模倣またはあいづちを使用したが,あい づちより模倣で答えることが多かった。子どもの命名が 間違っていた場合,母親は訂正または説明を使用してい た。 2 . フ ォ ー マ ッ ト の 個 人 差 前節ではW児・母親間の対話とS児・母親間の対話に 共通してみられたフォーマットについて分析したが,こ こでは違いのみられたフォーマットについて分析する。 (1)1歳台の個人差 ①対話サイクルの開始者 W児・母親間の対話では,母親が対話サイクルを始め る割合が非常に高かった(Table4参照)。W児が対話サ イクルを始めることも次第に増加するが,2歳頃までは 母親が主に対話を始めていた。一方S児・母親間の対話 では,年少の時からS児が対話サイクルを始める割合が 高かった。またTablelをみると,S児の総対話サイクル 数は,W児と比べてかなり少なかった(平均;W児70, S児28)。これらはS児・母親間の対話にW児が同席して いたことが原因であり,S児が対話のきっかけを作らな いと,母親はW児とだけ話しがちであった。 ②母親の注意喚起 母親はW児よりS児に対して注意喚起で対話サイクル を始める割合が高かった(W児20.1%,S児29.4%;x2 =9.14,df=1,P<、01)。 ③母親のキー発話の種類 W児・母親間の対話では,命名の使用は1歳2ヵ月ま で多く,1歳3ヵ月から1歳11ヵ月までは質問の使用が 多く,2歳0ヵ月からは説明の使用も多くなっていた(Table 5参照)。一方S児・母親間の対話では,命名の使用は1 歳4カ月まで多く,1歳6カ月から1歳11ヵ月までは質 問の使用が多く,2歳0ヵ月からは説明の使用も多くなっ ていた。つまり,母親はW児に対してS児より早くから 多くの質問を使用していた。 ④母親の質問の種類と子どもの正答率 W児の正答は,What型質問,Which型質問共に1歳 0ヵ月からみられ,次第に正答率は上がっていった(Table 6参照)。What-doing型質問については1歳3カ月になる と正答がみられた。S児に対する母親の質問は少なく, S児の正答はW児に比べて遅かった。しかし,2歳台に なると正答率はあまりかわらなくなった(W児61.6%, S児58.3%)。その他の質問の正答率は,W児42.3%,S 75.0% ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ W 児 S 児 月齢 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 2;2 3 25.0% 0 0.0% 0 0.0% 3 25.0% 0 0.0% 0 0.0% 2 37.5% 2 25.0% 0 0.0% 1 0 0.0% 12.5% 0;8 0;9 O;10 O;11 1;0 1;1 1;2 l;3 l;4 1;5 l;6 1;7 1;8 l;9 1;11 2;0 2;1 模 倣 質 問 説 明 あ い づ ち 訂 正 そ の 他 0 /

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0 / 0 / 1 16.7% 2 33.3% 0 0.0% 0 0.0% 3 50.0% 0 0.0% 3 50.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 3 50.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 10 62.5% 0 0.0% 2 12.5% 3 18.8% 0 0.0% 1 6.3% 1 25.0% 1 25.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 25.0% 1 25.0% 8 42.1% 0 0.0% 6 31.6% 0 0.0% 5 26.3% 0 0.0% 14 66.7% 0 0.0% 0 0.0% 3 14.3% 3 14.3% 1 4.8% 10 55.6% 1 5.6% 0 0.0% 1 5.6% 6 33.3% 0 0.0% 2 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 5 71.4% 0 0.0% 0 0.0% 1 14.3% 1 14.3% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 模 倣 質 問 説 明 あ い づ ち 訂 正 そ の 他 0 /

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1 50.0% 0 0.0% 1 50.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 5 50.0% 1 10.0% 4 40.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 50.0% 0 0.0% 1 50.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%

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1 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%

(8)

8 発 達 心 理 学 研 究 第 7 巻 第 1 号 児54.5%だった。 ⑤母親のフィードバック W児とS児に対する母親のフィードバックの割合には 差がみられなかった。 ⑥子どもが対話サイクル開始に使用したキー発話 S児はW児に比べて,全体として注意喚起で対話サイ クルを始める割合が高く(W児35.2%,S児75.0%;x2 =44.89,df=1,p<、01),命名の使用が遅かった(Table 7参照)。 ⑦子どもの注意喚起に対する母親の反応 母親はW児の注意喚起に対して,S児に比べて反応し ない割合が高かった(W児16.2%,S児3.6%;X2=7.03, df=1,P<,01;Table8参照)。一方S児に対して母親は, W児に比べて説明で答える割合が高かった(W児2.9%, S児26.2%;X2=15.15,df=1,P<、01)。 ⑧子どもの命名に対する母親の反応 W児はS児よりも命名の間違いが多かった(W児31回, S児6回)。子どもの命名が間違っていた場合,母親はW 児に対して訂正を22回,説明を9回使用したが,S児に 対しては説明を6回使用し,訂正は使用しなかった(Table 9参照)。つまり母親はW児に対しては,はっきりと訂正 する(W:指さして「うさ」M:指さして「うさぎさん これ。耳が長いでしよ。」)ことが多く,S児に対しては, 説明で正しい答えを示していく(S:指さして「パンパ ン」M:「スパゲッティ食べてるね。」)のが特徴であっ た。 (2)2歳台の個人差 1歳台におけるW児・母親間の対話とS児・母親間の 対話には,フォーマットの使用にいくつかの違いがあっ た。ここではそのうちの2点に注目する。第1点は,誰 が対話サイクルを開始するかに差があったことである。 つまり,W児との対話では母親の方が,S児との対話で は子どもの方が対話サイクルを開始する割合が高かった。 第2点は,母親が対話サイクルの中で使用したキー発話の 種類が,W児に対する時とS児に対する時とでは違って いた点である。つまり,母親はW児に対しては質問を多 く使用し,S児に対しては説明を多く使用していた。1 歳台でみられたこれらの個人差が,2歳台でも維持され ていくのかどうかを調べるため,フォーマットの主導者 とフォーマットの種類を分析する。 ①フォーマットの主導者 フォーマットへの母親と子どもの関与の仕方を比較す るため,キー発話の使用者による対話サイクルの分類を, FigurelとFigure2に示した。W児の3歳0カ月とS児 の2歳1ヵ月は,データが極端に少ないため削除した。 S児の2歳8ヵ月は家庭訪問ができなかった。両児とも 2歳台では,母親主導型が大きな割合を占めていた。母 子交替型や子ども主導型がどの月齢でもみられたことか % 100 80 60 40 20 0 一 母 親 主 導 型 2;02;12;22;32;42;52;62;72;82;92;102;11月齢 Figurelキー発話の使用者による対話サイクノレの分 類(W児ノ % − 母 親 主 導 型 % lOO 80 60 40 20 0 2;02;22;32;42;52;62;72;92;102;113;0月齢 Figure2キー発話の使ノヲ者による対話サイクルの分 類(S児ノ ら,子どもに対話を構成する能力があることは間違いな い。しかし,絵本を媒介とした母子の対話では,母親は 依然として教示的な役割を果たし続けるのである。同じ 絵本であっても,母親は常に新しい情報を提供し,質問 内容を変えていくので,Table2のような母親主導型(同 じ絵本の同じページの発話例)のやりとりが中心であっ た。 1歳台のs児は自分で対話サイクルを始める割合が高 かったが,2歳台ではむしろW児よりも母親主導型の割 合 が 高 い ほ ど だ っ た 。 つ ま り , s 児 は 自 分 か ら 積 極 的 に キー発話を使わず,母親が読むのを聞くスタイルになっ たのである。誰がフォーマットの主導権を握るかについ ては,1歳台でみられた個人差(s児が対話サイクルを 始める割合が高かった)が,2歳台に入るとなくなって いた。 ②フォーマットの種類 使用されるフォーマットの種類を比較するため,キー 発話の内容による対話サイクルの分類をFigure3とFigure 4に,フォーマットの主導者別フォーマットの種類をTable lOに示した。W児・母親間の対話はS児・母親問の対話 ノ

(9)

9 % 100 差はみられなかった。母子交替型において,W児との対 話はS児との対話よりも質問反応型が多く,S児との対 話はW児との対話よりも情報提供型が多かった(X2=26.18, df=2,p<、01)。つまり,母親が主導したり,子どもと役

割交替する場合は,母親の子どもに対するbookreading

styleの違いが現われた。絵本の同じページでのW児とS 児の代表的な対話サイクル例は,Table3に示した。使用 されるフォーマットの個人差は,1歳台では母親がW児 に対して質問を多く使用し,S児に対して説明を多く使 用するという形でみられた。この個人差は,2歳台になっ てもW児・母親問の対話には質問反応型が多く,S児・ 母親間の対話には情報提供型が多いという形で維持され ていた。 一 情 報 提 供 型 2;02;22;32;42;52;62;72;92;102;113;0月齢 Figure4キー発話の内容による対話サイクノレの分類 (S児ノ 80 60

<

9ぐ、△

40 20 0 2;02;12;22;32;42;52;62;72;82;92;102;11月齢 Figure3キー発話の内容による対話サイクノレの分類 (W児ノ

考 察

1 . フ ォ ー マ ッ ト の 変 化 これまで分析してきたように,母子のやりとりには一 定のパターンがあった。そのうちW児とS児に共通して みられ,パーセントの高い方略の組合せを,1歳台の基 本的フォーマットとしてまとめると,次のようになる。 a注意喚起(母親)→命名(母親) b注意喚起(母親)→質問(母親)→反応または無反 応(子ども)→フィードバック(母親) c注意喚起(子ども)→命名(母親) d命名(子ども)→正しい場合は模倣,間違っている 場合は訂正または説明(母親) aとbは母親が対話サイクルを開始する場合を,cと dは子どもが対話サイクルを開始する場合を示している。 母親は子どもの言語発達レベルに応じて,これらの基本 的フォーマットを変化させていった。相互交渉の初期に は,母親は注意喚起で始めることが多く,命名を多用し, What型質問,Which型質問を行い,子どもが答えなくて もフィードバックを行っていた。また,子どもが注意喚 起を使うと母親は命名で答えていた。やがて子どもは自 ら命名をしたり,母親の質問に答えるようになった。母 親は子どもの命名が正しい時は模倣し,誤っていれば訂 正したり説明したりした。What型質問やWhich型質問 に対して子どもが多く正答するようになると,母親は命 名を減らし,質問を増やしていった。そして2歳頃にな ると,子どもは自ら質問できるようになるのがみられた。 基本的フォーマットにみられる変化から,子どもが命 名と質問のフォーマットを理解し,習得する過程をたど ると次のようになる。①母親がフォーマットを形成する が,子どもはフォーマットに参加できない(形成期)。② 子どもがフォーマットに参加することによって,フォー マットの規則を習得する(習得期)。③子どももすべての キー発話を使用してフォーマットを構成し,母親と役割 交替をする(使用期)。この3つの過程を通して,子ども 一 情 報 提 供 型 % 100

%89264

80 60 40 20 絵本場面における母親と子どもの対話分析 0 情 報 提 供 型 質問反応型 情 報 質 問 型 TablelOフォーマットの主導者別フォーマットの種類

249428

W 児 S児

“2妬

情 報 提 供 型 質問反応型 情 報 質 問 型

306妬羽7

46.2% 40.4% 13.4% 母子交替型 71.7% 16.5% 11.9% 母 親 主 導 型 66.7% 22.8% 10.5% 46 14 1 27.1% 15.5% 57.4% 38 13 6 61.4% 2.9% 35.7% 75.4% 23.0% 1.6% よりも質問反応型が多く(W児267,34.2%,S児84,

15.4%;X2=57.86,df=1,P<、01),S児・母親間の対

話はW児・母親問の対話よりも情報提供型が多かった (W児343,43.9%,S児385,70.8%;X2=93.40,df= 1,P<,01)。また母親主導型において,w児との対話は S児との対話よりも質問反応型が多く,S児との対話は W児との対話よりも情報提供型が多かった(X2=72.90, df=2,p<、01)。子ども主導型において,W児とS児に 情報提供型 子 ど も 主 導 型 質 問 反 応 型 情 報 質 問 型

(10)

10 発 達 心 理 学 研 究 第 7 巻 第 1 号 に対話を構成する能力ができると考えられる。 Ninio,&Bruner(1978)が絵本を媒介とした母親と子ど ものやりとりに見出したフォーマットは,最初母親が主 導権を握って形成され,やがて子どもも同等に参加でき るようになることが,本研究でも確認された。しかしBruner (1985)の結果とは異なり,2歳台でも子どもが主導権を とることはまれで,母親が主導権を維持していた。ここ には欧米と日本のコミュニケーション・スタイルの違い が読み取れる。一般に欧米では自己主張を重んじている ので,子どもがことばを話せるようになると,親は子ど もに自分の意見を言うことを求める。そのため欧米の母 親は,絵本場面へ同等に参加できるようになった子ども に,フォーマットの主導権を譲ると考えられる。一方日 本では,子どもの自己主張にあまり価値を置いておらず, 親の言うことをよく聞く子どもが良いとされる傾向があ る。そのため日本の母親は,子どもが役割交替可能になっ てもフォーマットの主導権を維持し,子どもの言語発達 に合った情報と質問を提供し続けるように思われる。し かし,本研究の結果とBruner(1985)の結果の違いがそ のような文化差であるかどうかを結論づけるには,もっ と多くのデータを集めなければならないだろう。 2 . フ ォ ー マ ッ ト の 個 人 差 Snow,Nathan,&Perlmann(1985)は,母親がトピッ クを導入する際使用する方略は,母親によって異なると 述べている。しかし本研究では,同一の母親でも第一子 と第二子によって使用する方略は異なることが明らかに なった。これには母親側の要因,きょうだいの同席,子 ども側の要因が相互に関連していると思われる。母親側 の要因としてあげられるのは,母親の子育て観である。 母親は第一子に対して,教育の強い義務感をもっている と思われる。母親は対話の主導権を握り,命名をしなが ら質問を繰り返し,子どもから反応を引き出そうとして いた。また,母親はW児の注意喚起に反応しないことが 多く,自分のフォーマットに子どもを組み込もうとする 態度が強いようである。一方,第二子に対しては,子育 ての経験と第一子の世話という負担があり,その分第二 子への関わり方は第一子とは異なり,距離をとったもの になったと思われる。Jones,&Adamson(1987)の研究 と同様に,母親は第一子に比べて第二子の反応を引き出 すことば(質問)をあまり使用せず,母親がS児自身の 注意喚起をとらえて説明するという関わり方であった。 そのため1歳台では,S児が主導権を握っているように みえた。また,子どもが命名に失敗した時の母親の教え ぶりも,W児に対してははっきり訂正したが,S児には 説明で正しい答えを教えようとしていたように,第一子 には直接的な方法を,第二子には間接的な方法をとって いた。このように第一子と第二子に対する母親の対話ス タイルの違い(自分のフォーマットに子どもを強く組み 込もうとするか否か)は,母親の子育て観によって生じ ているようであり,Kaye(1982)の結果とも一致してい る。 1歳台では,第一子との対話は母親の方が,第二子と の対話は子どもの方が対話サイクルを開始する割合が高 かったが,2歳台では第一子との対話も第二子との対話 も母親主導型となっていた。なぜこの個人差は解消され たのだろうか。S児・母親間の対話ではW児・母親間の 対話より総対話サイクル数が少なく,録画時間が短かっ た。これは第二子と母親の対話に第一子が同席したこと が原因と考えられる。きょうだいの影響を扱った研究 (Woollett,1986;Jones,&Adamson,1987)でもみられ たように,第一子が一緒にいる状況では母親が第二子に 話しかけることは少ないのである。本研究の被験児は1 歳9カ月違いの姉妹のため,S児が1歳台の時W児は3 歳台で言語発達が著しく,母親は対話の相手になりやす かった。そのためS児は最も簡単な注意喚起を多く使用 して,母親の反応を引き出そうとしたと思われる。S児 が2歳台になった時,4歳台になったW児はひとりで遊 びに熱中するようになり,母親を常に独占しなくなった。 その結果母親はS児の要求があれば応じるのではなく, 主体的にS児と関われるようになった。このように第二 子が2歳台になると,第一子の同席の影響が弱くなった ため,フォーマットの主導権に関しての違いが解消され たのかもしれない。 しかし,1歳台で母親が第一子に質問を多く使用し, 第二子には説明を多く使用するという個人差は,2歳台 でも維持され,第一子との対話に質問反応型が多く,第 二子との対話には情報提供型が多かった。なぜこの個人 差は固定化されたのだろうか。これには子ども側の要因 が関係しているように思われる。Nelson(1981)は第一 子にreferentialchildrenが多く,第二子にexpressive childrenが多いと述べているが,本研究でも第一子は対話 サイクルの中で命名の使用が早く,第二子は命名の使用 が遅く,注意喚起を使用して母親の反応を引き出そうと していた。第一子が間違いは多くても早くから命名をす ることは,母親に物の名前への質問行動を喚起させやす くし,第二子が正しい命名ができるまでなかなか命名を しないことは,母親に物の名前の説明の必要性を呼び起 こすように思われる。このように,子どもの言語習得ス タイルの違いが母親のbookreadingstyleに影響を与えた 結果,2歳台においても第一子との対話には質問反応型 が,第二子との対話には情報提供型がより多く形成され ることになったと考えられる。 第一子と母親の対話のフォーマットと第二子と母親の 対話のフォーマットには,様々な違いがみられた。その 要因として,第一子と第二子に対する母親の子育て観の 違い,第二子と母親の対話への第一子の同席状況,子ど

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絵本場面における母親と子どもの対話分析 11 もの言語習得スタイルなどが考えられた。今後これらの 要因の影響を特定するために,子育て観の差異や,第一 子のいない場面での第二子と母親の対話の分析が必要で

あると思われる。また,同‘性や異性のきょうだい,きょ

うだいの年齢差などの影響についても詳細な研究が望ま れる。

文 献

Bruner,』.S,(1975).Theontogenesisofspeechacts. 』ひ…αZq/、CMdLα"gwage,2,1−19. Bruner,』.S・(1985).Theroleofinteractionformatsin

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thelanguageenvironmentofyoungchildren.Bγi雄ノz ん呪r"αZq/DeUeZQp加e"taZHyc加Zq型4,235-245. 謝辞 本論文の作成にあたり,ご指導いただきました京都教育大 学岩田純一教授に深く感謝いたします。また,本研究にご協 力いただきました御家族の皆様に心より御礼申し上げます。

Ishizaki,Rie(NanaoJuniorCollege).TノZeA"α恥j:sq/、Mb伽γα"dCh〃SPeecノMzJb加Pル

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Individualdifferences,Birthorder 1993.1.13受稿,1995.8.11受理

参照

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2 当会社は、会社法第427 条第1項の規定により、取 締役(業務執行取締役等で ある者を除く。)との間

・ 改正後薬機法第9条の2第1項各号、第 18 条の2第1項各号及び第3項 各号、第 23 条の2の 15 の2第1項各号及び第3項各号、第 23 条の

第1条